説明

光源実装装置

【課題】採用する光源の発光量にばらつきがあっても、所定の視認位置における輝度を一定とすることができる光源実装装置を提供する。
【解決手段】ケース2の内部に設けられるLED9からの光を利用して、同ケース2に設けられる孔部3bを内側から照明する光源実装装置において、LED9は、ケース2の内部において設定される孔部3bまでの距離が異なる電極5a,5b,5cのうちいずれか一つに設けられる光源実装装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースの内部に設けられた光源からの光を、同ケースに形成された透光部に内側から照射することによって、透光部の視認性を確保する光源実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車には、ハザードスイッチに代表される様々なプッシュ式のスイッチが設けられている。これらプッシュ式のスイッチの多くは、夜間等の暗空間において使用されることを想定して、照明機能が設けられてなる。例えば、特許文献1のものでは、ケースの内部に設けられたLED等の光源に電力を供給して、外部に露出する操作部に形成された透光部に内側から光を照射する。光源からの光は、透光部を介して外部に漏洩することにより、暗空間におけるスイッチの視認性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−104959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、LEDなどの発光素子は、所定の電力が供給されると一定の光量を発するように製造されるが、通常、同じ製法で作られた製品であっても実際に発する光量にはばらつきが生じる。従って、無作為に抽出した発光素子を使用したスイッチを並べて目視した場合、その明るさが異なるおそれがある。この状態では、見栄えが良くないため、このスイッチを自動車に搭載する場合、同程度の光量を持つ発光素子を抽出しなければならない。このため、実際にスイッチに搭載できる発光素子は、同じ製法で製造されたもののうちの一部に限られる。これでは、搭載できない発光素子は無駄になるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、採用する光源の発光量にばらつきがあっても、所定の視認位置における輝度を一定とすることができる光源実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ケースの内部に設けられる光源からの光を利用して、同ケースに設けられる透光部を内側から照明する光源実装装置において、前記光源は、前記ケースの内部において設定される前記透光部までの距離が異なる複数の取付位置のいずれか一つに設けられることを要旨とする。
【0007】
人間の明暗の感じ方は、網膜に届く光束の量に比例する。すなわち、光源自体の発する光束の量が異なっていても、透光部を通過して網膜に届く光束の量が同じであれば、人間には、同じ明るさとして認識される。同構成によれば、光源から発せられて透光部をケースの内部における光源の設置位置、正確には透光部までの距離の調節を通じて、調節することができる。従って、光源から発せられる光束の量が少ない場合には、同光源と透光部釦部との距離を近くし、光源から発せられる光束の量が多い場合には、同光源と透光部との距離を遠ざける。このようにすることにより、採用する光源の発光量、すなわち、発する光束の量のばらつきによらず透光部は同じ明るさであると認識させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光源実装装置において、前記ケースの内部において、前記透光部に対して交わる態様で前記ケースの内部に固定される基板に設けられ、前記基板には、前記複数の取付位置として、前記透光部からの距離が異なる前記光源を接続するための複数の電極が設けられることを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、光源をどの電極に設置するかによって、透光部と光源との距離を変更することができる。このため、光源のもつ光束の量に応じて容易に同光源の設置を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の光源実装装置において、前記光源は、前記ケースの内部に支持戯れる基板に設けられ、前記ケースには、前記複数の取付位置として、前記透光部との距離が異なる前記基板の複数の固定位置が設けられることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、基板をどの位置に設置するかによって、透光部と光源との距離を変更することができる。このため、光源のもつ光束の量に応じて容易に同光源の設置を行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の光源実装装置において、前記透光部は、前記ケースの開口部を閉塞するとともに同ケースに対して摺動可能な操作部に設けられ、前記操作部が操作されたとき、前記光源に電力が供給されることを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、透光部を介する光の有無によって、操作部の操作の有無を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、採用する光源の発光量にばらつきがあっても、所定の視認位置における輝度を一定とすることができる光源実装装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のスイッチを分解した斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿って切断した断面図。
【図3】(a)は、図1のB−B線に沿って切断した断面図、(b)は、(a)に示すノブが押し操作された状態の断面図。
【図4】(a)は立体角が大きい場合、(b)は立体角が小さい場合における光束が孔を通過する態様を示すイメージ図。
【図5】他の実施の形態を示すスイッチの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の光源実装装置を車両の室内に設けられるプッシュ式のスイッチに具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示されるように、プッシュ式のスイッチ1は、その本体をなすケース2と、これに収容されるノブ3、ホルダ4、基板5、及びカバー6とを備えて構成される。ケース2は、合成樹脂材料により直方体状に形成されるとともに、その前側、右側、及び後側には、開口部2a,2b、2cが形成されている。なお、右側の開口部2bと後側の開口部2cとは連続している。ノブ3は、合成樹脂材料により直方体状に形成されるとともに、長方形状に形成された開口部2aの内周と摺接する態様で設けられる。ノブ3は、その前側に操作部3aが形成されるとともに、その後側が開放された有底筒状をなしている。操作部3aには、光を透過させる透過部としてT字状の孔部3bが形成されている。
【0017】
ホルダ4は、四角枠状の筒部4aとこれの左側の面から連続して後側に延びる延出部4bとを備えて構成されている。筒部4aは、ノブ3の後側から挿入されてその内周に密着される。延出部4bの右面には、板状をなす金属製のコンタクト7が固定される。コンタクト7の後側の一部は、右側に向かって円弧を描く態様で湾曲している。これらノブ3及びホルダ4は、一体となってケース2の内部を前後方向へ摺動することが可能とされている。
【0018】
基板5は、ケース2に収容されたホルダ4の延出部4bに対向する態様で、ケース2の内部に支持される。図3(a)及び図3(b)に示されるように、ホルダ4が前後方向に変位した際に、コンタクト7は、基板5の左面(延出部4bとの対向面)に摺接する。また、コンタクト7は、基板5の左面と面一に設けられる固定接点5dとの摺接が可能とされている。
【0019】
図1に示されるように、基板5の固定接点5dと反対側の面には、コネクタ8が固定されている。コネクタ8は、外部から電力供給を受けるための端子及び外部機器との間で電気信号を授受するための端子とを備える。図2に示されるように、基板5のコネクタ8の前側には、同コネクタ8と電気的に接続された3対の電極5a,5b,5cが設けられている。光源としてのLED9は、これら電極5a,5b,5cの一つと接続される。
【0020】
カバー6は、合成樹脂材料により矩形の板状に形成されている。カバー6は、開口部2cを閉塞する態様でケース2に固定される。以上説明したように、スイッチ1は、コネクタ8の後側が開放された状態で組みあがる。これは、図示しない外部電源及び図示しない車両の搭載機器と基板5とをコネクタ8を介して接続するためである。なお、車両の搭載機器としては、フォグランプ、フロントデフロスタ(フロントウインドウのくもり取り)等がある。
【0021】
このスイッチ1には、ノブ3が押し操作される毎に、図3(b)に示されるノブ3をケース2内に押し込んだ状態と、図3(a)に示されるノブ3の操作部3aがケース2から飛び出している通常の状態とを切り替えて維持する図示しないプッシュリフタ機構が設けられている。図3(b)に示される状態は、コンタクト7と固定接点5dとの接触が維持される状態である。図3(a)に示される状態は、コンタクト7と固定接点5dとが接触しない状態である。コンタクト7と固定接点5dとの接続状態は、コネクタ8を介してフォグランプ等の車載機器(正確には、その制御回路)に出力される。図3(b)に示されるノブ3が押し込まれてコンタクト7と固定接点5dとが接続された状態となったとき、当該スイッチに対応する様々な機器が作動される。例えば、フォグランプに対応するスイッチが操作されたときには、フォグランプが点灯される。また、コンタクト7と固定接点5dとが接続されることにより、外部電源からLED9への電力供給回路が閉じる。これにより、外部電源からの電力がLED9へ供給される。すなわち、LED9は点灯する。ユーザは、LED9の点灯の有無を通じて機器の作動状態を認識する。
【0022】
次に、基板5に設けられる3対の電極5a,5b,5cについて詳細に説明する。
図2に示されるように、3対の電極は、ノブ3側から電極5a,5b,5cの順で断面方向に一直線となるように且つ一定間隔をおいて設けられている。従って、透光部である孔部3bから電極5a,5b,5cまでのそれぞれの距離を距離A,B,Cとすると、その関係は、以下に示す式(1)の様に表される。
【0023】
距離A>距離B>距離C・・・(1)
ここで、人間の目は、網膜に届く光束の量によって明暗を認識する。すなわち、人間は、網膜に届く光束の量が多ければ明るく感じ、反対にこれが少なければ暗く感じる。光束の量は、立体角に比例する。すなわち、立体角が大きければ光束の量が多く、反対にこれが小さければ光束の量が少ない。例えば、同じ量の光束を発する光源から同じ大きさの孔に到達する光束の量について説明すると、図4(a)に示されるように、孔と光源との距離が近い場合には、立体角が大きくなる。逆に図4(b)に示されるように、孔と光源との距離が遠い場合には、立体角が小さくなる。従って、この孔を人間が同じ位置から見た場合、孔と光源との距離が近い場合の方が、孔と光源との距離が遠い場合よりも明るく見える。
【0024】
これを利用して、発する光束の量が異なる光源について考えると、光束の量が少ない光源と孔との距離を近づけて、光束の量が多い光源と孔との距離を遠ざけることで、孔を通過する光束の量とを等しくすることが可能となる。この場合、両方の孔を人間が同じ位置から見た場合、網膜に届く光束の量が等しくなるので、人間には、両者が、同じ明るさとして認識される。
【0025】
図2に示されるように、本例のスイッチ1では、LED9を設置することができる電極は、電極5a,5b、5cの3カ所設けられている。従って、光束の少ないLED9の場合は電極5aに、光束の多い場合は電極5cに、それらの中間の光束の量を有するLED9の場合は電極5bに、それぞれ設置する。こうすることにより、発光量、すなわち、発する光束の量にばらつきがあるLED9のどれを採用した場合であれ、図3(b)に示されるように、ノブ3が押し操作されてLED9に電力が供給された際に、ノブ3の操作部3aに形成された孔部3bを通過する光束の量のLED9毎のばらつきを低減することができる。すなわち、人間がこの孔部3bを見た場合に、これらを同じ明るさとして認識することができる。
【0026】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)孔部3bからの距離が異なる電極5a,5b,5cを設けた。そして、光束の少ないLED9の場合は孔部3bに近い電極5aに、光束の多いLED9の場合は孔部3bから遠い電極5cに、その中間の光束の量を有するLED9の場合は電極5aと電極5cとの間の電極5bに、それぞれ設置した。これにより、各LED9の発光量にばらつきがある場合であれ孔部3bを通過する光束の量のばらつきを抑制することができる。人間の明暗の感じ方は、網膜に届く光束の量に比例する。従って、人間がこの孔部3bを見た場合に、これらを同じ明るさとして認識することができる。
【0027】
(2)操作部3aを押し操作することで、対応する車載機器を作動させるとともに、LED9を発光させるようにした。これにより、車両ユーザは、LED9の発光を通じてスイッチ1のオンオフ状態、すなわち、フォグランプ等の車載機器の作動の有無を容易に確認することができる。
【0028】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、基板5は、そのLED9が設けられる面を操作部3aに対して垂直をなすようにケース2に固定したが、平行をなすように固定してもよい。すなわち、図5に示すように、スイッチ21のケース2は、その前後方向において設定される複数の取付位置のいずれか一つに基板25を支持可能とする。本例では、図5に実線で示される前側の位置と同じく2点鎖線で示される後側の位置との2カ所とする。そして、基板25の前面にLED9を、後面にコネクタ8をそれぞれ設ける。さらに基板25のLED9の左側に、固定接点25aを露出する態様で設ける。この固定接点25aは、延出部4bの先端の位置と対応する。そして、延出部4bの先端部にコンタクト22を設ける。
【0029】
このようにしても、LED9の発する光束の量に応じて基板25の設置位置を変化させることにより、LED9と孔部3bとの距離を2段階に調節することができる。このため、孔部3bを通過する光束の量、すなわち、ユーザの網膜に到達する光束の量のばらつきを抑えることができる。
【0030】
・上記実施形態において、LED9からの光を通過させる透光部として孔部3bを採用したが、透明樹脂材料等により形成してもよい。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、この場合には、ケース2の内部、ひいては、基板5への粉塵及び液体の進入が抑制される。
【0031】
・上記実施形態では、3カ所の電極5a,5b,5cを設けたが、電極は、孔部3bからの距離が異なる2つ以上であればよい。
・上記実施形態では、スイッチ1は、ノブ3の押し操作により作動状態を切り替えるプッシュスイッチとしたが、ノブ3に代えて静電センサを利用することにより、タッチ操作で車載機器の作動状態を切り替えてもよい。
【0032】
・上記実施形態では、ノブ3を押し操作したときにLED9が点灯した。しかし、例えば、前照灯スイッチ等に連動して点灯させてもよい。このようにすることにより、夜間等の暗空間においてもスイッチの位置を視認することができる。
【0033】
・上記実施形態では、照明実装装置の適用先としてスイッチ装置を示したが、これ以外にも適用することができる。例えば、車両の室内灯、各種インジケータ、メータパネルの各種表示装置などがある。
【0034】
・上記実施形態では、発光素子としてLED9を採用したが、電球などであってもよい。
・上記実施形態において、ケース2の内部に固定される基板5の固定位置を前後に調整してもよい。この場合、基板5に設ける電極は一対でよい。
【0035】
・上記実施形態では、スイッチ1の適用先が車両となっていたが、車両以外にも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
A,B,C…距離、1,21…スイッチ、2…ケース、2a,2b,2c…開口部、3…ノブ、3a…操作部、3b…孔部、4…ホルダ、4a…筒部、4b…延出部、4b…延出片、5,25…基板、5a,5b,5c…電極、5d,25a…固定接点、6…カバー、7,22…コンタクト、8…コネクタ、9…LED。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内部に設けられる光源からの光を利用して、同ケースに設けられる透光部を内側から照明する光源実装装置において、
前記光源は、前記ケースの内部において設定される前記透光部までの距離が異なる複数の取付位置のいずれか一つに設けられる光源実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源実装装置において、
前記ケースの内部において、前記透光部に対して交わる態様で前記ケースの内部に固定される基板に設けられ、
前記基板には、前記複数の取付位置として、前記透光部からの距離が異なる前記光源を接続するための複数の電極が設けられる光源実装装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光源実装装置において、
前記光源は、前記ケースの内部に支持戯れる基板に設けられ、
前記ケースには、前記複数の取付位置として、前記透光部との距離が異なる前記基板の複数の固定位置が設けられる光源実装装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の光源実装装置において、
前記透光部は、前記ケースの開口部を閉塞するとともに同ケースに対して摺動可能な操作部に設けられ、
前記操作部が操作されたとき、前記光源に電力が供給される光源実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−79662(P2012−79662A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226651(P2010−226651)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】