説明

光源装置およびこれを備えた投射型表示装置

【課題】光源装置から外部へ漏洩する電磁波の量を所定の規制値以下になるように維持しつつ、光源から照射された光の利用効率を向上させることが可能な光源装置およびこれを備えた投射型表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の光源装置1は、高周波によって放電発光する無電極放電ランプ2と、無電極放電ランプ2から出射された光の進行方向に開口部6aを有し、無電極放電ランプ2を内包して無電極放電ランプ2から放出される電磁波を遮蔽する導電性の筐体部5と、筐体部5における開口部6a側であって無電極放電ランプ2の下流側に配置され、少なくとも一方の面に曲面を有するとともに、少なくとも一方の面側に薄膜4が形成されているレンズ2eと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電極放電ランプを用いた光源装置およびこれを備えた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間光変調素子を用いた投射表示装置は、空間光変調素子を照明する光に映像信号に応じた光変調を与え、変調された変調光を拡大投影するものである。投射表示装置として高輝度が望まれるため、光源にメタルハライド、キセノンランプ等の高輝度な放電ランプが適用されている。
また、上記メタルハライド、キセノンランプ等の有電極放電ランプは、放電によって電極が消耗しランプの寿命が短いことから、近年、電極を有さない無電極放電ランプを用いた光源装置が提供されている。ところが、無電極放電ランプは、高周波で放電点灯することにより強い電磁波が発生する。このため、周辺電子機器への影響(いわゆる、不要輻射)等を防止するために、電磁波を遮蔽するための電磁波遮蔽手段が必要となる。
なお、このような不要輻射を防止するための漏洩した電磁波の量を規定した規格として、IEC(The International Electrotechnical Commission)や、FCC(Federal Communications Commission)、EMC(Electromagnetic Compatibility)等がある。よって、光源装置を製品化していくためには、光源装置からの電磁波の漏洩量を、このような規格において定められた所定値以下にすることが重要である。
【0003】
例えば、特許文献1は、所定の規制値を維持できる程度の開口部を設けた電磁波遮蔽手段によって無電極放電ランプを覆っている。そして、インテグレータを構成する上流側のレンズの焦点部近傍、すなわち、光源から出射される光線が収束する位置近傍に上記開口部を設け、開口部をできるだけ小さくすることによって漏洩する電磁波の量を極力少なくする光源装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−343103号公報(平成14年11月29日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の照明装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、電磁波遮蔽手段に形成された開口部は、電磁波の遮蔽効果を得ることができる程度の大きさとする必要があるため、光源から照射される光線についてその一部を遮断してしまい、光利用効率を低下させてしまうおそれがある。一方、光利用効率を上げるために開口部を大きくすると、電磁波遮蔽手段による電磁波の遮蔽効果が小さくなってしまうおそれがある。よって、上記公報に開示された構成では、このようなトレードオフの関係により、漏洩する電磁波を所定の規制値以下になるように維持したまま、光線の利用率を一定以上確保することは困難であった。
本発明の課題は、光源装置から外部へ漏洩する電磁波の量を所定の規制値以下になるように維持しつつ、光源から照射された光の利用効率を向上させることが可能な光源装置およびこれを備えた投射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係る光源装置は、無電極放電ランプと、筐体部と、レンズと、を備えている。無電極放電ランプは、高周波によって放電発光する。筐体部は、無電極放電ランプから出射された光の進行方向に開口部を有しており、無電極放電ランプを内包して無電極放電ランプから放出される電磁波を遮蔽する導電性の部材である。レンズは、筐体部における開口部側であって無電極放電ランプの下流側に配置され、少なくとも一方の面に曲面を有するとともに、少なくとも一方の面側に導電性膜が形成されている。
ここでは、無電極放電ランプから出射された光を略平行にするレンズを光の進行方向の下流側に備える光源装置において、レンズの少なくとも一方の面側に導電性膜が形成されている。
なお、無電極放電ランプとは、発光物質が封入されたバルブ、バルブの内部に電磁界を発生させる誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源回路、バルブを覆って配設された反射鏡等を含むものとする。すなわち、電磁波を遮蔽する効果を有する筐体部は、無電極放電ランプを形成するバルブ、高周波電源回路、反射鏡等の部材の全てを覆っている。また、レンズとは、通常光源装置において用いられるレンズであり、少なくとも片面に凸曲面を有するフィールドレンズ、重畳レンズ、および集光レンズ、さらに複数のレンズ群をマトリクス状に配置したレンズアレイ等も含まれ、このうち少なくとも1つのレンズに導電性膜が形成されていればよい。
【0006】
従来、光源として無電極放電ランプを用いた場合には、不要輻射の影響を低減するために、筐体部を導電性の材料によって形成し、かつ光路側の開口部の断面積をできる限り小さくしたりすることで、電磁波の漏洩を防止していた。しかし、この場合、開口部の断面積を絞ることにより光透過率が低下して、光利用効率が低下してしまうおそれがある。
そこで、電極放電ランプからの光透過を妨げず、かつ電磁波を遮断できるように、本発明の光源装置では、レンズの少なくとも一方の面側に導電性膜を形成する構成としている。
これにより、簡易な構成で、無電極放電ランプにおいて発生する電磁波を遮断しつつ、光を良好に透過させることが可能になる。
この結果、電磁波の漏洩が所定の規制値以下になるように維持しつつ、光の利用効率を向上させた光源装置を提供することができる。
【0007】
第2の発明に係る光源装置は、上記レンズを複数備えている。
ここでは、少なくとも一方の面側に導電性膜が形成されているレンズを複数有している構成を示す。
無電極放電ランプから出射された光を高精度に平行にするために、レンズを複数配置する構成を備えた光源装置もある。その場合、一定の光利用効率を維持できる限り、電磁波をより高精度に遮断するために複数のレンズに導電性膜を形成する構成とする。
これにより、無電極放電ランプにおいて発生する電磁波をより効果的に遮断することが可能になる。
この結果、電磁波の遮断効果をより向上させつつ、一定の光の利用効率を保つ光源装置を提供することができる。
【0008】
第3の発明に係る光源装置において、筐体部は、開口部側に光の断面と略等しい内径面積を有する導電性の筒状部を有している。
ここでは、筐体部における開口部側に、光の束の面積とほぼ同じか若干大きい内径面積を有する導電性の筒状部を設けている。
開口部から電磁波が漏洩することを防ぐために、開口部側に筒状部を設ける構成を備えた光源装置もある。その場合、電磁波がさらに筒状部を通過することを防ぐために、筒状部は導電性とする。
これにより、レンズに導電性膜を有する構成および筒状部の構成を組み合わせることで、電磁波をより効果的に遮断することができる。また、筐体部における開口部側に筒状部を設けた場合でも、光の進行を妨げることなく、電磁波を遮断することができる。
【0009】
この結果、電磁波の遮断効果をさらに向上させつつ、光の利用効率を向上させた光源装置を提供することができる。
第4の発明に係る光源装置において、レンズは、筒状部の内筒側において支持されている。
ここでは、筐体部の開口部側に設けられた導電性の筒状部によって、レンズを支持している構成を示す。
なお、レンズとは、例えば、集光レンズ等である。また、筒状部は、他の光学部品、例えば、格子状に配置されたレンズ群により形成されるレンズアレイを有する光インテグレータ、および光の偏光方向を変換する偏光変換部(PSコンバータ)等を支持することも可能である。
【0010】
これにより、筐体部内の閉空間を維持して開口部からの電磁波の漏洩を防止することができる。また、筒状部が光学部品の支持部材を兼ねることで、部品点数を増やす必要がない。
この結果、電磁波の遮断効果をさらに向上させつつ、光の利用効率を向上させた光源装置を提供することができる。
第5の発明に係る光源装置において、導電性膜は、透明導電性膜である。
ここでは、レンズの少なくとも一方の面側に形成された導電性膜を、透明導電性膜を用いて形成している。
本発明の導電性膜は、導電性と光透過性とを有することが好ましく、両方の性質を同時に安定して満たす透明性の材料、例えば、ITO膜や酸化亜鉛(ZnO)等を用いることができる。
【0011】
これにより、光を良好に透過させつつ、導電性も備えた導電性膜を実現することができる。
この結果、安定した光利用率および電磁波遮蔽効果を有する光源装置を提供することができる。
第6の発明に係る光源装置において、導電性膜は、筐体部と接触した状態で取り付けられている。
ここでは、導電性膜が、導電性の筐体部に対して直接または間接的に接触するように取り付けられている。
これにより、無電極ランプを用いた場合でも、筐体部と導電性膜との間から、電磁波が外部に漏洩することを防止できる。また、例えば、接地手段が筐体部に設けられている場合には、導電性膜を接地しなくても、電流を筐体部を介して流すことが可能となる。
【0012】
この結果、不要輻射の影響を効果的に低減することができる光源装置を提供することができる。
第7の発明に係る投射型表示装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る光源装置を備えている。
ここでは、液晶プロジェクションテレビ等の投射型表示装置が、上述した光源装置を搭載している。
これにより、光利用効率および電磁波遮断効果の高い光源装置を用いることで、不要輻射の影響を受けることがなくなる。
この結果、良質な表示を行うことが可能な投射型表示装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光源装置によれば、電磁波の漏洩が所定の規制値以下になるように維持しつつ、光の利用効率を向上させた光源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る光源装置1について、図1〜図5を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、光出射方向とは、バルブ2aで発光した光が反射鏡2cやレンズ2d,2e等によって調整された平行光の進行方向をいい、本実施形態においては、バルブ2aから開口部7bに向かう方向(一点鎖線矢印)を示すものとして、以下の説明を行う。
[光源装置1の構成]
本発明の一実施形態に係る光源装置1は、無電極放電ランプ2と、レンズ2d,2eと、光インテグレータ3と、筐体部5と、PSコンバータ8と、コンデンサレンズ9と、を備えている。
(無電極放電ランプ2)
無電極放電ランプ2は、600MHz〜1GHzの高周波電力を印加することにより発光する光源であって、図1に示すように、放電発光するバルブ2aと、高周波電源回路2bと、反射鏡2cと、を有している。
【0015】
バルブ2aは、上記高周波電源回路2bから高周波電力が付与されることで、水銀蒸気が封入されたバルブ2a内に高周波電磁界が発生し、この高周波電磁界により発生する誘導電界が水銀蒸気を励起させて生じた紫外線がバルブ2aの内面の蛍光体に当たって発光する。
高周波電源回路2bは、上記バルブ2aの内部に電磁界を発生させる誘導コイル(図示せず)に高周波電力を供給する。
反射鏡2cは、バルブ2aにおいて発光した光を所定の方向(出射方向)に送り出すために、バルブ2aの周りを覆うように配設されている。
(レンズ2d,2e)
レンズ2d,2eは、バルブ2aから照射された光を平行光に調整するために、バルブ2aから見た光の出射方向に配置されている。また、ここでは、レンズ2eは薄膜(導電性膜)4を有している。
【0016】
薄膜4は、図1に示すように、レンズ2eの光出射方向における下流側に向いた凸面全面を覆うように形成され、筐体部5(詳細は後述)と接触(すなわち、導通)した状態で取り付けられている。薄膜4は、無電極放電ランプ2から出射され、電磁波の漏洩を防ぎつつ、レンズ2eを通過した光を良好に透過させることができる透明の導電性膜であり、ここでは、ITO(Indium Tin Oxide)膜を用いている。
(光インテグレータ3)
光インテグレータ3は、無電極放電ランプ2から照射される光の照度を照射面方向において均一化するための光学系の部品であって、第1レンズアレイ21と、第2レンズアレイ22と、を有している。
第1レンズアレイ21は、無電極放電ランプ2の光出射側に配設されており、図2(a)〜図2(c)に示すように、複数の矩形状の微小レンズ(レンズ群)21aが、アレイ状に配列されている。
【0017】
第2レンズアレイ22は、図1に示すように、第1レンズアレイ21の焦点位置近傍に配置されており、図3(a)〜図3(c)に示すように、微小レンズ21aに対応して複数の微小レンズ22aが、アレイ状に配列されている。
(筐体部5)
筐体部5は、無電極放電ランプ2から放射される電磁波を遮蔽するための電磁波シールド部材であって、光源シールド部6を有している。具体的には、筐体部5は、グランドに接地されており、筐体部5で遮蔽した電磁波を電気的にグランドに放電させている。
筐体部5を構成する光源シールド部6は、図1に示すように、無電極放電ランプ2を形成するバルブ2a、高周波電源回路2b、反射鏡2c、レンズ2d,2e、および薄膜4を覆うように配置されている。そして、光源シールド部6は、無電極放電ランプ2の光出射方向側に筒状部7を取り付けるための開口部6aを有している。無電極放電ランプ2から照射された光は、この開口部6aを介して筒状部7内に出射される。なお、本実施形態の光源装置1においては、無電極放電ランプ2と、光源シールド部6とで、光源ユニット18を構成している。また、光源シールド部6は、導電性の良好なアルミニウムや銅等の金属によって形成されており、無電極放電ランプ2から放射される電磁波を遮蔽することが可能である。具体的には、光源シールド部6がグランドに接地されており、遮蔽した電磁波を電気的にグランドに導通させている。これにより、筐体部5から外部へ漏洩する電磁波の量を所定の規制値以下になるように維持することが可能となり、外部機器への不要輻射の影響を低減することができる。
【0018】
(筒状部7)
筒状部7は、図1に示すように、両端部(取付開口部7a,端部開口部7b)が開放された、光の束の面積とほぼ同じか若干大きい内径面積を有する略円筒状の部材であって、光インテグレータ3を形成する第1レンズアレイ21および第2レンズアレイ22と、PSコンバータ8と、コンデンサレンズ9と、を内周面側において支持している。また、筒状部7は、一方の端部である取付開口部7a側が光源シールド部6の開口部6a側に連結される。これにより、光源シールド部6に内包されている無電極放電ランプ2から照射された光は、開口部6a,取付開口部7aを通過し、光インテグレータ3等が配置された筒状部7内を通過して、もう一方の端部である端部開口部(開口部)7bから出射される。なお、本実施形態の光源装置1では、第1レンズアレイ21、第2レンズアレイ22、PSコンバータ8、およびコンデンサレンズ9が、この順に取付開口部7a側から配置され、筒状部7の内面側において支持された状態で取り付けられてインテグレータユニット19を構成している。そして、このインテグレータユニット19は、光源ユニット18に対して着脱可能に構成されている。筒状部7は、導電性を持たない、例えば、樹脂製の部材によって形成されていればよい。ここでは、光源シールド部6で電磁波を有効に遮断しているため、薄膜4より下流側において電磁波を遮断する必要がないため、薄膜4より下流側の光学部品は導電性の部材等で覆う必要がなくなる。そのため、光源装置の軽量化や低コスト化を図ることができる。
【0019】
(PSコンバータ8)
PSコンバータ8は、図1に示すように、光出射方向における第2レンズアレイ22の直下流側に隣接して配置されており、入射する光の偏光成分(P偏光、S偏光)を揃えて一方向の直線偏光成分、例えば、S偏光成分をP偏光成分に変換する。
また、PSコンバータ8は、図4(a)、図4(b)および図5に示すように、交互に配置された微小な偏光ビームスプリッタ(以下プリズムと示す)8a,8bの集合体として構成されている。プリズム8aとプリズム8bとの間には、交互に偏光分離膜8cと反射膜8dとが設けられている。そして、プリズム8bの光の出射側表面には、半波長板8eが配置されている。
これにより、P偏光成分については偏光分離膜8cを通過し、S偏光成分については偏光分離膜8cにおいて反射膜8d側へ反射して反射膜8dにおいて出射方向へと送られる。このとき、S偏光成分は、半波長板8eを通過することでP偏光成分へと変換されるため、出射される光の成分をP偏光成分のみに揃え、かつ光の利用効率を向上させることができる。
【0020】
偏光分離膜8cは、プリズム8bを通過して45度の角度で入射するランダム偏光をP偏光成分とS偏光成分とに分離するとともに、P偏光成分についてはそのまま通過させる一方、S偏光成分については反射させて光路を90度変えて隣接する反射膜8dの方向へ導く。
反射膜8dは、偏光分離膜8cにおいて分離されたS偏光成分を反射して再度90度光路を変換して、偏光分離膜8cをそのまま通過したP偏光成分と進行方向を揃えている。
半波長板8eは、PSコンバータ8の光出射側の表面上に短冊状に配置されており、偏光分離膜8cおよび反射膜8dにおいて光路を90度ずつ切り換えられてプリズム8bを通過してきたS偏光成分の偏光角を90度回転させる。これにより、半波長板8eを通過したS偏光成分を、P偏光成分へと変換することができる。
【0021】
(コンデンサレンズ9)
コンデンサレンズ9は、図1に示すように、PSコンバータ8によって偏光面が統一された直線偏光成分(ここでは、P偏光成分)を液晶表示バルブ等の空間光変調素子に導くレンズであって、PSコンバータ8の光出射方向における直下流側に配置されている。そして、第1レンズアレイ21に形成されている微小レンズ21aの矩形状の像を照明対象である、例えば、液晶表示バルブ10に重畳して結像させる。
以上、本実施形態の光源装置1は、上述した各構成を備えており、偏光変換光学系を備えた光源装置であって、例えば、液晶表示バルブ10を光シャッタとして用いて画像を投影する装置に、均一化、高輝度化された光を供給する。
<光源装置1における偏光変換および電磁波遮蔽作用>
次に、本実施形態における偏光変換および電磁波遮蔽の作用について、図1を用いて説明する。
【0022】
高周波電流を流すことによってバルブ2aにおいて放電発光した光は、まず、反射鏡2cによって出射方向を決められ、光出射方向に配置されたレンズ2d,2eによって平行光に調整される。平行光は薄膜4を通過して、第1レンズアレイ21に入射する。この際、薄膜4は透明性も有しているため、平行光は高透過性を保ったまま薄膜4を通過することができる。
第1レンズアレイ21に含まれる微小レンズ21a(図2参照)を透過した光は、図3に示すように、第1レンズアレイ21の微小レンズ21aに対応する第2レンズアレイ22に含まれる微小レンズ22aにおいて集束される。そして、微小レンズ22aを透過した集束光は、PSコンバータ8に入射する。
次に、PSコンバータ8に入射した光は、図4および図5に示すように、偏光分離膜8cによって透過光(P偏光成分、図5においては実線で示す)と、反射光(S偏光成分、図5においては破線で示す)と、に分離される。透過光は、偏光分離膜8cを透過してそのままPSコンバータ8から出射される。このとき、透過光は半波長板8eが形成されていない領域を通過するので、ここでは特に作用を受けることなく出射される。一方、反射光は、偏光分離膜8cに隣接するように平行に配置された反射膜8dにおいて再度反射される。そして、反射光は、入射光の偏光方向を90度変換するように設定された半波長板8eに入射する。ここで、偏光方向を90度変換されてP偏光成分として出射される。これにより、PSコンバータ8は、無電極放電ランプ2から出射された光の偏光成分を揃えて出射させることで、光の利用効率を向上させて高輝度化を図ることができる。
【0023】
次に、PSコンバータ8を出射した光は、コンデンサレンズ9によって照明対象である、例えば、液晶表示バルブ10上に微小レンズ22aに対応する微小レンズ21aの矩形状の像を結像する(図1を参照)。
[本光源装置1の特徴]
(1)
本実施形態の光源装置1は、図1に示すように、高周波電流を流すことで放電発光する無電極放電ランプ2を備えており、バルブ2aから照射された光を平行光に調整するレンズの1つであるレンズ2eの凸面側には、薄膜4が凸面表面を覆うように形成されている。
これにより、無電極放電ランプ2から発生する電磁波が、筐体部5に形成された開口部6aから外部に漏洩することを防ぐことができる。
【0024】
この結果、光源装置1から外部へ漏洩する電磁波の量を所定の規制値以下になるように維持しつつ、無電極放電ランプ2から照射された光の利用効率を向上させることができる。
(2)
本実施形態の光源装置1では、図1に示すように、第1レンズアレイ21および第2レンズアレイ22と、コンデンサレンズ9とが、筒状部7の内筒側において支持されている。
これにより、筒状部が各レンズの支持部材を兼ねることで、部品を新たに増やさずにレンズを支持することができる。
(3)
本実施形態の光源装置1では、筐体部5の開口部6aから漏洩する電磁波を遮蔽するための薄膜4は、透明で導電性を有するITO膜を用いている。
【0025】
これにより、バルブ2aから出射された光の進行を妨げることなく、無電極放電ランプ2から発生する電磁波が、筐体部5に形成された開口部6aから外部に漏洩することを防ぐことができる。
(4)
本実施形態の光源装置1では、薄膜4は筐体部5と接触して直接取り付けられている。
これにより、薄膜4が筐体部5と導通することが可能となり、接地手段が設けられている筐体部5を介して、薄膜4で収集した電流を間接的に逃すことが可能になる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0026】
(A)
上記実施形態の光源装置1では、図1に示すように、レンズ2eに薄膜4が形成されている例を挙げて説明した。しかし、薄膜4の形成箇所はこれに限定されるものではない。
薄膜4は、複数のレンズに形成されていてもよい。例えば、図6に示すように、レンズ2eの凸面のみならず、バルブ2aの光出射方向直下流側のレンズ2dに、同様の薄膜4が形成されていてもよい。図6では、レンズ2eと同様にレンズ2dの凸面に薄膜4を形成した例を示している。
これにより、電磁波をより高精度に遮断することができ、電磁波の漏洩をより効果的に防ぐことができる。
(B)
上記実施形態の光源装置1では、筒状部7が樹脂製の部材である例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
例えば、筒状部7が、筐体部5と同様の導電性のある部材であってもよい。
但し、上記実施形態のように、薄膜4が筐体部5に内包されるように筐体部5と導通して形成されている場合には、光源装置の軽量化や低コスト化を考慮すると、上記実施形態のようにすることが望ましい。
(C)
上記実施形態の光源装置1では、図1に示すように、レンズ2eの凸面に薄膜4が形成されている例を挙げて説明した。しかし、薄膜4の形成箇所はこれに限定されるものではなく、薄膜4が導通していて電磁波の漏洩を防ぐことができる構成であれば、形成箇所を変更してもよい。
例えば、図7に示すように、薄膜4は、レンズ2eの平面側に形成されていてもよい。また、例えば、図8に示すように、レンズ2eの凸面のみならず、平面側にも同様の薄膜4が形成されていてもよい。
【0028】
これによっても、上記の実施形態に係る光源装置1と同様の効果を得ることができる。
(D)
上記実施形態の光源装置1では、薄膜4がITO膜である例を挙げて説明した。しかし、薄膜4はこれに限定されるものではない。
電磁波の漏洩を防ぎつつ、光を良好に透過させる性質を有する導電性膜であれば、酸化亜鉛(ZnO)等のような他の材料であってもよい。
(E)
上記実施形態の光源装置1では、図1に示すように、レンズ2eの凸面に薄膜4が形成されている例を挙げて説明した。しかし、薄膜4の形成箇所はこれに限定されるものではない。
【0029】
例えば、図9に示すように、レンズ2eではなく、コンデンサレンズ9に薄膜4が形成されていてもよい。
但し、筒状部7の内筒側に支持されているコンデンサレンズ9に薄膜4が形成されている場合には、電磁波漏洩を防ぐ観点から、薄膜4は筐体部5に導通している必要があるため、筒状部7には導電性のある部材を用いる。そして、薄膜4を筒状部7に接触するように形成して、薄膜4が筐体部5に間接的に導通させる構成とすることが望ましい。
(F)
上記実施形態、および上記(A)、(C)〜(E)の光源装置1では、薄膜4を様々な箇所に形成する例を挙げた。その他、薄膜4の形成箇所は、各レンズの面、および各レンズの組み合わせによって、上記実施形態と同様の効果を奏する箇所に形成することができる。
【0030】
(G)
上記実施形態の光源装置1では、図1に示すように、レンズ2eの凸面を覆うように薄膜4が密着して形成されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、筐体部5と接触していれば、レンズ2eに密着させずに、レンズ2eとの間に隙間がある構成であってもよい。
これによっても、上記の実施形態に係る光源装置1と同様の効果を得ることができる。
(H)
上記実施形態に係る光源装置1は、各種投射型表示装置に適用することが可能である。 ここで、上記実施形態に係る光源装置1を備えた単板式液晶プロジェクタ(投射型表示装置)40について、図10を用いて説明すれば以下の通りである。
【0031】
単板式液晶プロジェクタ40は、光源装置1によって照明される透過型液晶表示素子42と、変調光を拡大投影する投射レンズ44と、透過型液晶表示素子42の光入射側と光出射側に配置された偏光板41,43とを備えている。偏光板41と偏光板43とは互いに、その透過軸が互いに直交する関係に配置されている。なお、光源装置1については上記実施形態と同様の構成であるので、ここではその説明は省略する。
無電極放電ランプ2より照射され、第1レンズアレイ21の微小レンズ21aを透過した光は、対応する第2レンズアレイ22の微小レンズ22aに入射する。そして、第2レンズアレイ22の各微小レンズ22aを透過した光は、コンデンサレンズ9によって照明対象である透過型液晶表示素子42上に微小レンズ22aの矩形形状の像を結像する。この場合、一般に、微小レンズ22aの矩形形状は透過型液晶表示素子42の表示領域の形状と相似形に形成される。透過型液晶表示素子42の前後には、透過軸を直交させた偏光板41,43が配置されているために、照明光のうち偏光板41の透過軸と一致した振動面を有する直線偏光のみが、偏光板41を透過して透過型液晶表示素子42に達する。透過型液晶表示素子42に入射した光は、この透過型液晶表示素子42で映像信号に対応した光変調を受けて出射される。そして、直線偏光の照明光と振動面が90度ずれた振動面を有する変調光成分のみが偏光板43を透過することで、投射レンズ44によって図示しないスクリーン等に映像が拡大表示される。
【0032】
このように、上記実施形態に係る光源装置1を備えた単板式液晶プロジェクタ40によれば、無電極放電ランプ2の使用によってランプ寿命を大幅に延長し、かつ光源装置1から外部へ漏洩する電磁波の量を所定の規制値以下になるように維持しつつ、無電極放電ランプ2から照射された光の利用効率を向上させた単板式液晶プロジェクタ40を提供することができる。
(I)
また、上記実施形態係る光源装置1を備えた単板式液晶プロジェクタ(投射型表示装置)50について、図11を用いて説明すれば以下の通りである。
単板式液晶プロジェクタ50は、光源装置1と、不定偏光を直線偏光に変換する偏光ビームスプリッタ51と、偏光ビームスプリッタ51の透光面51aに面して配置した反射型液晶表示素子52と、偏光ビームスプリッタ51を通過した反射型液晶表示素子52からの変調光を拡大投影する投射レンズ53と、を備えている。なお、光源装置1については上記実施形態と同様の構成であるので、ここではその説明は省略する。
【0033】
無電極放電ランプ2より照射された光は、反射型液晶表示素子52上に第1レンズアレイ21の各微小レンズ21aの矩形形状の像を重畳して結像するように入射する。その際、照明光は偏光ビームスプリッタ51の偏光分離面51bにおいて、この偏光分離面51bの入射面に平行な振動面を有するP偏光成分と、垂直な振動面を有するS偏光成分とに分離される。反射型液晶表示素子52に入射したP偏光成分は、この反射型液晶表示素子52において映像信号に対応した光変調を受け出射する。この場合、反射型液晶表示素子52を出射する変調光のうちP偏光成分のみが偏光ビームスプリッタ51の偏光分離面51bを透過することで、投射レンズ53によって図示しないスクリーンに映像が拡大表示される。
このように、上記実施形態に係る光源装置1を備えた単板式液晶プロジェクタ50によれば、無電極放電ランプ2の使用によってランプ寿命を大幅に延長し、かつ光源装置1から外部へ漏洩する電磁波の量を所定の規制値以下になるように維持しつつ、無電極放電ランプ2から照射された光の利用効率を向上させた単板式液晶プロジェクタ50を提供することができる。
【0034】
(J)
さらに、上記実施形態係る光源装置1を備えた三板式液晶プロジェクタ(投射型表示装置)60について、図12を用いて説明すれば以下の通りである。
無電極放電ランプ2より照射された光は、まず赤透過ダイクロイックミラー61において赤色光が透過し、青、緑色光は反射される。
赤色光は、反射ミラー62で反射され、第1液晶ライトバルブ63に達する。一方、赤透過ダイクロイックミラー61において反射された青色光および緑色光のうち緑色光は、緑反射ダイクロイックミラー64において反射され、第2液晶ライトバルブ65に達する。青色光は、緑反射ダイクロイックミラー64を透過した後、入射側レンズ66、リレーレンズ68、出射側レンズ70から形成されるリレーレンズ系に反射ミラー67,69を加えて構成された導光手段により第3液晶ライトバルブ71に導かれる。第1・第2・第3液晶ライトバルブ63,65,71において各色に対応した映像信号にあわせて変調された光は、ダイクロイックプリズム73に入射する。ダイクロイックプリズム73は、赤反射の誘電体多層膜と青反射の誘電体多層膜とを十字状に交差させて有しており、それぞれの変調光束を合成する。ここで合成された光は、投写レンズ74を透過して、図示しないスクリーン上に映像を形成する。なお、ダイクロイックミラー61とダイクロイックミラー64、ダイクロイックプリズム73のそれぞれの分光特性を変更することで、赤色、青色、緑色のルートを変更することができる。
【0035】
このように、上記実施形態に係る光源装置1を備えた三板式液晶プロジェクタ60によれば、無電極放電ランプ2の使用によってランプ寿命を大幅に延長し、かつ光源装置1から外部へ漏洩する電磁波の量を所定の規制値以下になるように維持しつつ、無電極放電ランプ2から照射された光の利用効率を向上させた三板式液晶プロジェクタ60を提供することができる。
(K)
なお、上記他の実施形態で説明した光源装置1を備えた各種投射型表示装置(単板式液晶プロジェクタ40,50、三板式液晶プロジェクタ60)をリアプロジェクションテレビの光学エンジンとして用いることが可能である。
これにより、無電極放電ランプ2の使用によってランプ寿命を大幅に延長し、かつ光利用率が高いリアプロジェクションテレビを提供することができる。また、外部へ漏洩する電磁波の量が所定の規制値以下になるように維持された安全なリアプロジェクションテレビを提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の光源装置は、光源装置から外部へ漏洩する電磁波の量を所定の規制値以下とし、かつ無電極放電ランプから照射された光の利用効率を向上させることができることから、液晶プロジェクタ、リアプロジェクションテレビ等に搭載される光源装置として広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る光源装置の構成を示す側断面図。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ図1の光源装置に含まれる第1レンズアレイの平面図、右側面図、下面図。
【図3】(a)〜(c)は、それぞれ図1の光源装置に含まれる第2レンズアレイの平面図、右側面図、下面図。
【図4】(a)、(b)は、それぞれ図1の光源装置に含まれるPSコンバータの平面図、下面図。
【図5】図1の光源装置に含まれるPSコンバータの構成を示す側断面図。
【図6】本発明の他の実施形態に係る光源装置の構成を示す側断面図。
【図7】本発明の他の実施形態に係る光源装置の構成を示す側断面図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る光源装置の構成を示す側断面図。
【図9】本発明の他の実施形態に係る光源装置の構成を示す側断面図。
【図10】本発明の一実施形態に係る光源装置を備えている単板式プロジェクタの平面図。
【図11】本発明の一実施形態に係る光源装置を備えている単板式プロジェクタの平面図。
【図12】本発明の一実施形態に係る光源装置を備えている三板式プロジェクタの平面図。
【符号の説明】
【0038】
1 光源装置
2 無電極放電ランプ
2a バルブ
2b 高周波電源回路
2c 反射鏡
2d,2e レンズ
3 光インテグレータ
4 薄膜(導電性膜)
5 筐体部
6 光源シールド部
6a 開口部
7 筒状部
7a 取付開口部
7b 端部開口部
8 PSコンバータ
8a,8b 光ビームスプリッタ
8c 偏光分離膜
8d 反射膜
8e 半波長板
9 コンデンサレンズ
10 液晶表示バルブ
18 光源ユニット
19 インテグレータユニット
21 第1レンズアレイ
21a 微小レンズ
22 第2レンズアレイ
22a 微小レンズ
40 単板式液晶プロジェクタ(投射型表示装置)
41 偏光板
42 透過型液晶表示素子
43 偏光板
44 投射レンズ
50 単板式液晶プロジェクタ(投射型表示装置)
51 偏光ビームスプリッタ
51a 透光面
51b 偏光分離面
52 反射型液晶表示素子
53 投射レンズ
60 三板式液晶プロジェクタ(投射型表示装置)
61,64 ダイクロイックミラー
62,67,69 反射ミラー
63 第1液晶ライトバルブ
65 第2液晶ライトバルブ
66 入射側レンズ
68 リレーレンズ
70 出射側レンズ
71 第3液晶ライトバルブ
73 ダイクロイックプリズム
74 投射レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波によって放電発光する無電極放電ランプと、
前記無電極放電ランプから出射された光の進行方向に開口部を有し、前記無電極放電ランプを内包して前記無電極放電ランプから放出される電磁波を遮蔽する導電性の筐体部と、
前記筐体部における前記開口部側であって前記無電極放電ランプの下流側に配置され、少なくとも一方の面に曲面を有するとともに、少なくとも一方の面側に導電性膜が形成されているレンズと、を備えている、
光源装置。
【請求項2】
前記レンズを複数備えている、
請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記筐体部は、前記開口部側に前記光の断面と略等しい内径面積を有する導電性の筒状部を有している、
請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記レンズは、前記筒状部の内筒側において支持されている、
請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記導電性膜は、透明導電性膜である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記導電性膜は、前記筐体部と接触した状態で取り付けられている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の光源装置を備えている、
投射型表示装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−210736(P2008−210736A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48458(P2007−48458)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】