説明

光源装置及び光源装置の調整方法

【課題】ホイルトラップを交換するタイミングを適切に判断することが可能な光源装置を提供する。
【解決手段】プラズマによる光を発生するプラズマ生成部(1、2、3)と、プラズマ生成部で発生した光を集光する集光鏡(6)と、プラズマ生成部で発生したデブリが集光鏡に到達することを抑制するホイルトラップ(8)と、ホイルトラップと接地部との間に流れる電流を測定する電流測定部(11)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光源装置及び光源装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の微細化に対応するため、露光光源に極端紫外(EUV:extreme ultraviolet)光を用いた反射型の露光装置が提案されている。EUV光は、プラズマ生成部によって発生され、集光鏡(collector mirror)によって集光される。
【0003】
EUV光を用いた光源装置では、プラズマを生成するための電極等から発生したデブリが集光鏡に衝突したり付着したりして、集光鏡の反射率が低下するといった問題がある。その結果、光源装置からのEUV光の出力が低下するという問題が生じる。
【0004】
上述した問題を防止するため、プラズマ生成部と集光鏡との間にホイルトラップを設けることが提案されている。この場合、ホイルトラップにデブリが付着することで、ホイルトラップでの光透過率が徐々に低下する。そのため、適当なタイミングでホイルトラップを交換する必要がある。
【0005】
しかしながら、従来は、ホイルトラップを交換するタイミングを適切に判断する方法が必ずしも提案されているとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−88439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ホイルトラップを交換するタイミングを適切に判断することが可能な光源装置及び光源装置の調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る光源装置は、プラズマによる光を発生するプラズマ生成部と、前記プラズマ生成部で発生した光を集光する集光鏡と、前記プラズマ生成部で発生したデブリが前記集光鏡に到達することを抑制するホイルトラップと、前記ホイルトラップと接地部との間に流れる電流を測定する電流測定部と、を備える。
【0009】
実施形態に係る光源装置は、プラズマによる光を発生するプラズマ生成部と、前記プラズマ生成部で発生した光を集光する集光鏡と、前記プラズマ生成部で発生したデブリが前記集光鏡に到達することを抑制するホイルトラップと、前記集光鏡と接地部との間に流れる電流を測定する電流測定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る光源装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】第2の実施形態に係る光源装置の構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、第1の実施形態に係る光源装置の構成を模式的に示した図である。本光源装置は、半導体装置のフォトリソグラフィにおける反射型の露光装置に用いられる。
【0013】
図1において、真空容器としてのチャンバ(図示せず)内には、電極1及び電極2が配置されており、電極1と電極2の間には絶縁部3が配置されている。これらの電極1、電極2及び絶縁部3によってプラズマ生成部が構成され、プラズマ生成部では高温プラズマによって極端紫外光(EUV光)が発生する。
【0014】
プラズマ生成部にはキセノン(Xe)ガスやスタナン(SnH4)等のEUV放射種4が供給される。EUV放射種4を供給しながら放電をさせると、EUV放射種が加熱されて励起され、放電部の略中心部(貫通穴の中心部)でプラズマ5が発生する。
【0015】
プラズマ5によって発生したEUV光は、チャンバ内に配置された集光鏡6を介してEUV光出力部から露光機側光学系(図示せず)に向けて放出される。集光鏡6は、回転楕円形状、回転放物形状或いは回転双曲面形状を有しており、ニッケル等の金属によって形成されている。集光鏡6の反射面には、EUV光を効率よく反射するために、ルテニウムやパラジウム等の金属がコーティングされており、25度以下の斜入射角度を有するEUV光を良好に反射させることができる。
【0016】
プラズマ生成部(放電部)からは、EUV光が発生するとともにデブリも発生し、デブリがチャンバ内に飛散する。デブリには、高温プラズマによって浸食された電極1、電極2及び絶縁部3の材料、放電に寄与して分解された原料、放電に寄与せずに排出された原料、及びそれらの反応生成物等が含まれる。
【0017】
すでに述べたように、デブリは、集光鏡6の反射面に付着したり集光鏡6の反射面に衝突して反射面を浸食したりして、集光鏡6の反射率を低下させる。その結果、光源装置からのEUV光の出力が低下してしまう。
【0018】
デブリが集光鏡6へ到達することを抑制するために、放電部と集光鏡6との間の領域にガスを供給するためのガス供給部7が設けられている。ガス供給部7から供給されるガスには、水素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、窒素、或いはそれらの混合ガスが用いられる。これらのガスのガス流は、ガス供給部7の先端に位置するノズルからデブリと交錯するように供給され、ガス排気部によって排気される。ガス流によって形成されたガスカーテンにより、局所的にガス圧力の高い領域が生成される。その結果、デブリが減速し、デブリが集光鏡6へ到達することが妨げられる。
【0019】
また、プラズマ生成部と集光鏡6との間にはホイルトラップ8が配置されている。ホイルトラップ8は、同心円状に配置された内部リング及び外部リングと、これらのリングによって両側が支持され、放射状に配置された複数の薄いプレート(ホイル)とによって構成されている。ホイルは、タングステンやモリブデン等の高融点金属によって形成されている。ホイルトラップ8のホイルを高温プラズマ5から見ると、ホイルの厚みしか見えない。そのため、EUV光のほとんどがホイルトラップ8を通過する。なお、集光鏡6とホイルトラップ8とは電気的に絶縁されている。
【0020】
ホイルトラップ8では、ホイルが配置された空間を細かく分割することにより該空間の圧力を上げ、デブリの運動エネルギーを低下させている。運動エネルギーの低下したデブリの多くは、ホイルトラップ8のホイルやリングに捕捉される。その結果、集光鏡6に到達するデブリを大幅に減少させることができる。
【0021】
上述したように、ホイルトラップ8によってデブリを捕捉することができ、集光鏡6へのデブリの到達を抑制することが可能である。ところが、ホイルトラップ8の表面にデブリが付着することで、ホイルトラップ8でのEUV光の光透過率(透過光量)が徐々に低下し、光源装置からのEUV光の出力が低下する。したがって、適切なタイミングでホイルトラップ8を交換する必要がある。そのためには、ホイルトラップ8の交換タイミングを判断するための適切な指標が必要となる。
【0022】
本実施形態では、ホイルトラップ8の交換タイミングを判断するための指標を得るために、ホイルトラップ8と接地部との間に流れる電流を測定する電流測定部11を設けている。また、電流測定部11で測定した電流に基づいてホイルトラップ8を交換するタイミングを判断する交換タイミング判断部12を設けている。以下、説明を加える。
【0023】
ホイルトラップ8の表面にデブリが付着すると、ホイルトラップ8を通過するEUV光の光量が徐々に低下するとともに、ホイルトラップ8を通過するデブリの量も減少する。すなわち、ホイルトラップ8に捕捉されるデブリの量が増加することになる。したがって、プラズマ5から放出される荷電粒子の量が一定であるとすると、ホイルトラップ8を通過するEUV光の光量(透過率)と、ホイルトラップ8への電荷の流入量(言い換えると、ホイルトラップ8と接地部との間の接地線に流れる電流)との間には、相関があると考えられる。例えば、ホイルトラップ8を通過するEUV光の光量が減少すると、ホイルトラップ8と接地部との間の接地線に流れる電流が増加する、といった相関が得られる。そこで、予め実験的に相関データを取得しておけば、接地線に流れる電流を電流測定部11によって測定することで、ホイルトラップ8を通過するEUV光の光量を推測することができる。すなわち、ホイルトラップ8と接地部との間の接地線に流れる電流に基づいて、ホイルトラップ8を交換するタイミングを判断することが可能である。例えば、接地線に流れる電流の変化量を求めることで、ホイルトラップ8を通過するEUV光の光量の変化量(透過率の変化量)を求めることができる。したがって、接地線に流れる電流の変化量が予め決められた値に達したことで、ホイルトラップ8の交換タイミングであると判断することが可能である。本実施形態では、交換タイミング判断部12によって、ホイルトラップ8の交換タイミングを適切に判断することが可能である。
【0024】
以上のように、本実施形態では、ホイルトラップ8と接地部との間に流れる電流を測定する電流測定部11を設けることで、ホイルトラップ8の交換タイミング(交換時期)を適切に判断することができる。その結果、光源装置からのEUV光の出力の低下を効果的に防止することができる。
【0025】
また、集光鏡6とホイルトラップ8とが電気的に絶縁されているため、集光鏡6に到達した電荷とホイルトラップ8に到達した電荷とを確実に分離して電流を測定することができ、ホイルトラップ8の交換タイミングを適切に判断することができる。
【0026】
(実施形態2)
図2は、第2の実施形態に係る光源装置の構成を模式的に示した図である。本実施形態の光源装置も、第1の実施形態の光源装置と同様、半導体装置のフォトリソグラフィにおける反射型の露光装置に用いられる。なお、本実施形態の光源装置の基本的な構成は、第1の実施形態の光源装置と同様であるため、第1の実施形態で説明した事項についての説明は省略する。
【0027】
本実施形態では、ホイルトラップ8の交換タイミングを判断するための指標を得るために、集光鏡6と接地部との間に流れる電流を測定する電流測定部13を設けている。また、電流測定部13で測定した電流に基づいてホイルトラップ8を交換するタイミングを判断する交換タイミング判断部14を設けている。以下、説明を加える。
【0028】
第1の実施形態で述べたように、ホイルトラップ8の表面にデブリが付着すると、ホイルトラップ8を通過するEUV光の光量が徐々に低下するとともに、ホイルトラップ8を通過するデブリの量も減少する。すなわち、ホイルトラップ8に捕捉されるデブリの量が増加し、集光鏡6に到達するデブリの量が減少することになる。したがって、プラズマ5から放出される荷電粒子の量が一定であるとすると、ホイルトラップ8を通過するEUV光の光量(透過率)と、集光鏡6への電荷の流入量(言い換えると、集光鏡6と接地部との間の接地線に流れる電流)との間には、相関があると考えられる。例えば、ホイルトラップ8を通過するEUV光の光量が減少すると、集光鏡6と接地部との間の接地線に流れる電流が減少する、といった相関が得られる。そこで、予め実験的に相関データを取得しておけば、接地線に流れる電流を電流測定部13によって測定することで、ホイルトラップ8を通過するEUV光の光量を推測することができる。すなわち、集光鏡6と接地部との間の接地線に流れる電流に基づいて、ホイルトラップ8を交換するタイミングを判断することが可能である。例えば、接地線に流れる電流の変化量を求めることで、ホイルトラップ8を通過するEUV光の光量の変化量(透過率の変化量)を求めることができる。したがって、接地線に流れる電流の変化量が予め決められた値に達したことで、ホイルトラップ8の交換タイミングであると判断することが可能である。本実施形態では、交換タイミング判断部14によって、ホイルトラップ8の交換タイミングを適切に判断することが可能である。
【0029】
以上のように、本実施形態では、集光鏡6と接地部との間に流れる電流を測定する電流測定部13を設けることで、ホイルトラップ8の交換タイミング(交換時期)を適切に判断することができる。その結果、光源装置からのEUV光の出力の低下を効果的に防止することができる。
【0030】
また、集光鏡6とホイルトラップ8とが電気的に絶縁されているため、集光鏡6に到達した電荷とホイルトラップ8に到達した電荷とを確実に分離して電流を測定することができ、ホイルトラップ8の交換タイミングを適切に判断することができる。
【0031】
なお、上述した第1及び第2の実施形態では、露光光として極端紫外光(EUV光)を用いたが、例えばX線等の他の光を用いてもよい。
【0032】
以上のように、第1及び第2の実施形態によれば、ホイルトラップを交換するタイミングを適切に判断することが可能となる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1…電極 2…電極 3…絶縁部
4…EUV放射種 5…プラズマ 6…集光鏡
7…ガス供給部 8…ホイルトラップ
11…電流測定部 12…交換タイミング判断部
13…電流測定部 14…交換タイミング判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマによる光を発生するプラズマ生成部と、
前記プラズマ生成部で発生した光を集光する集光鏡と、
前記プラズマ生成部で発生したデブリが前記集光鏡に到達することを抑制するホイルトラップと、
前記ホイルトラップと接地部との間に流れる電流を測定する電流測定部と、
を備えたことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
プラズマによる光を発生するプラズマ生成部と、
前記プラズマ生成部で発生した光を集光する集光鏡と、
前記プラズマ生成部で発生したデブリが前記集光鏡に到達することを抑制するホイルトラップと、
前記集光鏡と接地部との間に流れる電流を測定する電流測定部と、
を備えたことを特徴とする光源装置。
【請求項3】
前記光は極端紫外光である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記集光鏡と前記ホイルトラップとは電気的に絶縁されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項5】
プラズマによる光を発生するプラズマ生成部と、
前記プラズマ生成部で発生した光を集光する集光鏡と、
前記プラズマ生成部で発生したデブリが前記集光鏡に到達することを抑制するホイルトラップと、
を備えた光源装置の調整方法であって、
前記ホイルトラップと接地部との間に流れる電流に基づいて前記ホイルトラップを交換するタイミングを判断する
ことを特徴とする光源装置の調整方法。
【請求項6】
プラズマによる光を発生するプラズマ生成部と、
前記プラズマ生成部で発生した光を集光する集光鏡と、
前記プラズマ生成部で発生したデブリが前記集光鏡に到達することを抑制するホイルトラップと、
を備えた光源装置の調整方法であって、
前記集光鏡と接地部との間に流れる電流に基づいて前記ホイルトラップを交換するタイミングを判断する
ことを特徴とする光源装置の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−4385(P2012−4385A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138586(P2010−138586)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】