説明

光硬化型樹脂組成物及びそれを用いた光硬化型コーティング剤

【課題】溶剤揮発後の塗膜表面が平滑であり且つタックフリーとなりゴミや粉塵が付着することなく、硬化性に優れる塗膜が得られる光硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】1分子中に水酸基と重合性不飽和結合とを1個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a)及びイソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)を反応させて得られるイソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)と、1分子中に水酸基を2個以上有するヒドロキシル基含有アルキレングリコール系化合物(d)との反応により得られる、1分子中に重合性不飽和結合を10個以上含有する不飽和ウレタン化合物(A)、及び光重合性開始剤(B)を含むことを特徴とする光硬化型樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線又は電子線の照射によって硬化可能な光硬化型樹脂組成物及びそれを用いた光硬化型コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光硬化型樹脂組成物及びそれを用いた塗料は、1液型でポットライフが長く且つ硬化時間が短いことから生産性の飛躍的な向上が期待されており、木工、プラスチック、紙及び金属基材などの塗装に用いられている(例えば、特許文献1〜4)。しかしながら、光硬化型樹脂組成物の多くはオリゴマーと総称される分子量の低いアクリル酸エステル化合物、例えばエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、オリゴエステルアクリレート並びに反応性希釈モノマーと総称される液状の光硬化性単量体が混合されているため、光硬化するまでの塗膜は液状若しくは塗膜表面が未乾燥の状態である。この為、塗装工程中にゴミや粉塵等が塗膜に付着し外観不良を引き起こすことがある。
この問題を解決するため、重合性不飽和結合を1個以上有する水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物と、1分子中にイソシアネート基とイソシアヌレート環構造を有するイソシアネート含有化合物からなるイソシアネート基含有ウレタン化合物を、1分子中に水酸基とイソシアヌレート環構造を有する水酸基含有化合物と反応させて得られる1分子中に重合性不飽和基を6個以上含有する不飽和ウレタン化合物、及び光重合開始剤を必須成分とする光硬化型樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭61−000849号公報
【特許文献2】特公昭62−059136号公報
【特許文献3】特公昭63−297369号公報
【特許文献4】特開2001−098041号公報
【特許文献5】特開2005−281412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この光硬化型樹脂組成物は、不粘着性や硬度には優れるものの、塗装工程において当該光硬化型樹脂組成物を塗布後に溶剤を加熱乾燥させる際のレベリング性(平滑性)に改善の余地が残っていた。
【0005】
そこで本発明は、溶剤揮発後の塗膜表面が平滑であり且つタックフリーとなりゴミや粉塵が付着することなく、硬化性に優れる塗膜が得られる光硬化型樹脂組成物、それを用いた光硬化型コーティング剤を廉価な材料で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)1分子中に水酸基と重合性不飽和結合とを1個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a)及びイソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)を反応させて得られるイソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)と、1分子中に水酸基を2個以上有するヒドロキシル基含有アルキレングリコール系化合物(d)との反応により得られる、1分子中に重合性不飽和結合を10個以上含有する不飽和ウレタン化合物(A)、及び
光重合性開始剤(B)
を含むことを特徴とする光硬化型樹脂組成物。
【0007】
(2)1分子中に水酸基と重合性不飽和結合とを1個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a)が、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリル酸エステル及びこれらのエチレンオキサイド及びカプロラクトン変性物から選ばれる少なくとも1種である前記(1)に記載の光硬化型樹脂組成物。
【0008】
(3)イソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)が、下記一般式(I)で表される化合物である前記(1)または(2)に記載の光硬化型樹脂組成物。
【0009】
【化1】

(一般式(I)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12の脂肪族アルキレン基、又は炭素数3〜13の脂環式アルキレン基を示す。)
【0010】
(4)1分子中に水酸基を2個以上有するヒドロキシル基含有アルキレングリコール系化合物(d)が、下記一般式(II)で表される化合物である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の光硬化型樹脂組成物。
【0011】
【化2】

(一般式(II)中、Rは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の炭化水素基であり、置換基を有していてもよい。nは1〜20の整数である。)
【0012】
(5)イソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)が、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a)及びイソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)に加え、1分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物(e)を反応させて得られたものである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の光硬化型樹脂組成物。
【0013】
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光硬化型樹脂組成物を含有してなる光硬化型コーティング剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、タックフリーとなりゴミや粉塵が付着することなく、硬化性に優れる塗膜が得られ、且つ溶剤揮発後の塗膜表面が平滑(レベリング性に優れる)な光硬化型樹脂組成物、及びそれを用いた光硬化型コーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、1分子中に水酸基と重合性不飽和結合とを1個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a)及びイソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)を反応させて得られるイソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)と、1分子中に水酸基を2個以上有するヒドロキシル基含有アルキレングリコール系化合物(d)との反応により得られる、1分子中に重合性不飽和結合を10個以上含有する不飽和ウレタン化合物(A)、及び光重合性開始剤(B)を含むことを特徴としている。
【0016】
本発明で用いられる1分子中に重合性不飽和結合を10個以上含有する不飽和ウレタン化合物(A)は、1分子中に水酸基と重合性不飽和結合とを1個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a)、及びイソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)を反応させて得られるイソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)と、1分子中に水酸基を2個以上有するヒドロキシル基含有アルキレングリコール系化合物(d)との反応により得ることができる。以下に、これらの化合物(a)〜(d)について順次説明する。
【0017】
1分子中に重合性不飽和結合を1個以上(好ましくは重合性不飽和結合3個以上5個以下)有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリル酸エステル及びこれらのエチレンオキサイド及びカプロラクトン変性物などが挙げられるが、特に、優れた塗膜物性を与えるという理由から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリル酸エステル及びこれらのエチレンオキサイド及びカプロラクトン変性物を使用することが好ましい。これらの化合物(a)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
イソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)としては下記一般式(I)で表される化合物を使用することができる。
【0019】
【化3】

(一般式(I)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12の脂肪族アルキレン基又は炭素数3〜13の脂環式アルキレン基を示す。)
【0020】
このようなイソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)としては、1分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物を3量化させて得ることができ、そのような1分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加されたトリレンジイソシアネート、水素添加されたキシリレンジイソシアネート、水素添加されたジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれる単独のジイソシアネート化合物等が挙げられる。この中でも特に、優れた塗膜外観、物性を与えるという理由から、IPDIから得られる化合物を使用することが好ましく、市場で容易に入手可能なものとしてVESTANAT T1890E(デグサ社製、IPDIのイソシアヌレート体)やデスモジュールZ4470BA(住化バイエルウレタン社製、IPDIのイソシアヌレート体)などを挙げることができる。
【0021】
また、本発明で用いられる1分子中に重合性不飽和結合を10個以上含有する不飽和ウレタン化合物(A)の合成において、イソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)を得る際に、上記(a)及び(b)に加え、1分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物(e)を反応させることが、最終的に得られる光硬化型樹脂組成物のレベリング性が更に向上するため好ましい。このような1分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物(e)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加されたトリレンジイソシアネート、水素添加されたキシリレンジイソシアネート、水素添加されたジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられるが、優れた塗膜外観、物性を与えるという理由から、脂肪族ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0022】
また、1分子中に水酸基を2個以上有するヒドロキシル基含有アルキレングリコール系化合物(d)としては、例えば、下記一般式(II)で表される化合物を使用することができる。
【0023】
【化4】

(一般式(II)中、Rは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の炭化水素基であり、置換基を有していてもよい。nは1〜20の整数である。)
【0024】
一般式(II)中、Rが表す炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜10(好ましくは2〜8)のアルキレン基、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、Rが置換基を有する場合、該置換基としては、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。
nは1〜20を表すが、2〜8が好ましい。
【0025】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等が挙げられる。
【0026】
以上の1分子中に水酸基を2個以上有するヒドロキシル基含有アルキレングリコール系化合物(d)として、優れた塗膜外観、物性を与えるという理由から、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリンを使用することが好ましい。
【0027】
本発明で用いられる1分子中に重合性不飽和結合を10個以上含有する不飽和ウレタン化合物(A)を合成するには、まず上述した化合物(a)及び(b)、必要に応じて(e)を使用してイソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)を合成する。合成方法については特に制限はなく、例えば化合物(a)、重合禁止剤及びウレタン化触媒をフラスコに仕込み、好ましくは40〜80℃に加温し、(b)及び必要に応じて(e)を滴下しイソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)を合成することができる。重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用でき、例えばp−メトキシキノン、p−tert−ブチルカテコール、ヒドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。また、ウレタン化触媒としては、錫系、ビスマス系、チタン系、ジルコニウム系、アミン系等の公知のウレタン化触媒を使用できる。
【0028】
(a)と(b)の配合割合としては、重量比で(a)/(b)が60/40〜40/60であることが好ましく、55/45〜45/55であることがより好ましい。(a)成分が40重量%以上であれば硬度が十分であり、60重量%以下であれば不粘着性が十分となる。
【0029】
(e)を使用する場合には、(b)と(e)の配合割合としては、重量比で(b)/(e)=95/5〜85/15とするのが好ましく、93/7〜87/13とすることがより好ましい。(b)成分が85重量%以上であれば溶剤揮発後の塗膜表面の不粘着性が十分であり、95重量%以下であればレベリング性が十分となる。
【0030】
上述したようにイソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)を合成した後、40〜80℃での加温を継続し(d)成分を投入する方法を用いることができる。反応の完結は、IR測定により2270cm−1のイソシアネート基特性吸収帯の痕跡がなくなるまで加温を持続することにより達成できる。イソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)と、1分子中に水酸基を2個以上有するヒドロキシル基含有アルキレングリコール系化合物(d)成分の配合割合としては、当量比でイソシアネート基/水酸基=1/1〜1/1.2とするのが好ましく、1/1〜1/1.1とするのがより好ましい。水酸基の当量が1以上であれば未反応イソシアネート基が残存することなく塗膜物性が向上し、1.2以下であれば塗膜の不粘着性が良い傾向にある。
【0031】
本発明における不飽和ウレタン化合物(A)は、1分子中に重合性不飽和結合を10個以上含有するものであり、好ましくは10〜20個、より好ましくは12〜18個有するものである。
【0032】
1分子中に重合性不飽和結合を10個以上含有する不飽和ウレタン化合物(A)としては、樹脂組成物の不粘着性、レベリング性及び硬化したときの塗膜の表面硬度の面から、重合平均分子量が2,500〜50,000であるのが好ましく、4,000〜10,000であるのがより好ましく、6,000〜8,000であることが最も好ましい。重合平均分子量が2,500以上であれば、塗膜表面硬度が十分となる傾向にあり、一方、50,000以下であれば、レベリング性が十分となる傾向にある。
【0033】
さらに、本発明の光硬化型樹脂組成物は、(B)成分として光重合開始剤を含有する。この光重合開始剤としては、例えば、カルボニル系の光重合開始剤、例えば、ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、ベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−N,N’−ジメチルアセトフェノン類等、スルフィド系の光重合開始剤、例えば、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド等、キノン系の光重合開始剤、例えば、ベンゾキノン、アントラキノン等、アゾ系の光重合開始剤、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロパン、ヒドラジン等、スルホクロリド系の光重合開始剤、例えば、チオキサントン等、過酸化物系の光重合開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−tert−ブチルペルオキシド等、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2,4−ジエチルチオキサントン、その他o−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
これらの光重合開始剤(B)は、上記、1分子中に重合性不飽和結合を10個以上含有する不飽和ウレタン化合物(A)の固形分換算量に対して好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは3〜5重量%の量で使用される。この量が0.1重量%以上であれば、光硬化が十分である傾向にあり、10重量%以下であれば得られる塗膜の物性が向上する傾向にある。
【0035】
さらに本発明の光硬化型樹脂組成物は、1分子中に重合性不飽和結合を1個以上有する光重合性単量体を本発明の効果を低下させない範囲で配合することができる。光重合性単量体としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、メトキシアクリレート、エトキシアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエトキシアクリレート、2−エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールアクリレート、1,4−ブタンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、3−メチルペンタンジオールアクリレート、α,ω−ジアクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、α,ω−テトラアリルビストリメチロールプロパンテトラヒドロフタレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジアクリロキシエチルホスフェート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0036】
さらに本発明の光硬化型樹脂組成物には、目的に応じてトルエン、キシレン等の炭化水素系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤などの有機溶剤(C)、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、ビニルエステルウレタン樹脂、固形フェノール樹脂、ポリイソシアネート、ポリエポキシド、エポキシ末端ポリオキサゾリドン、アクリル樹脂類、アルキド樹脂類、飽和ポリエーテル類、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、アマニ油、桐油、大豆油、ヒマシ油、エポキシ化油等の油脂類等の天然及び合成高分子物質(D)、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、シリカパウダー、コロイダルシリカ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、亜鉛華、ベンガラ、アゾ顔料等の各種充填剤や顔料(E)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤(F)などを添加することができる。
【0037】
各成分の好ましい添加量は(C)の有機溶剤は、(A)成分と(B)成分の合計に対して好ましくは30〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%である。有機溶剤(C)の量が30重量%以上であれば粘度が高過ぎず塗装適性に優れる傾向にあり、80重量%以下であれば粘度が低過ぎず塗装適性に優れる傾向にある。
【0038】
天然及び合成高分子物質(D)は、(A)成分と(B)成分の合計に対して30重量%以下が好ましい。30重量%以下であれば硬化性が低下することなく好適に使用できる。
充填剤や顔料(E)は、(A)成分と(B)成分の合計に対して20重量%以下が好ましい。20重量%以下であれば塗装適性、硬化性が低下することなく好適に使用できる。
重合禁止剤(F)は、(A)成分と(B)成分の合計に対して0.5重量%以下が好ましい。0.5重量%以下であれば硬化時間が長くなり過ぎず作業性が良好である傾向にあり、硬化塗膜特性も優れる。
【0039】
<光硬化型コーティング剤>
本発明の光硬化型コーティング剤は、既述の本発明の光硬化型樹脂組成物を含有してなることを特徴としている。
本発明の光硬化型コーティング剤は、既述の本発明の光硬化型樹脂組成物と、必要に応じて添加剤、顔料、表面調整剤などを混合して調製される。
【0040】
本発明の光硬化型コーティング剤においては、通常の塗膜形成方法に従い、各種基材や物品の表面等に光硬化型コーティング剤を付与し、必要に応じて有機溶剤を乾燥することで光硬化型コーティングとすることができる。塗膜形成に際しては、例えば、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、回転塗布法、静電塗装法、ロールコーター、ハケ等を用いて塗膜を形成することができる。必要に応じて、基材に光硬化型コーティング剤を塗布する前にプライマー(アンダーコート剤)を基材に塗布してもよい。アンダーコート剤には、必要に応じて光安定剤や紫外線吸収剤を添加して使用してもよい。乾燥条件としては、基材に塗布後、20〜150℃で1〜100分間加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥条件は、塗膜形成条件等を考慮して適宜選択される。
【0041】
本発明の光硬化型コーティング剤による塗膜を形成した後、当該塗膜を硬化させる手法としては特に制限はないが、例えば、290nm未満の波長の紫外線を照射することにより硬化させることができる。紫外線の照射量は、光硬化型樹脂組成物の構成成分の種類、量、その塗膜の厚みにより大きく異なるが、一般的には、0.1〜5000mJ/cm程度である。硬化後の乾燥は、自然乾燥でも、乾燥器具を用いた乾燥でもよい。
なお、塗膜は基材上に複数層形成してもよく、略均一に塗膜の硬化することができる観点からは、形成する硬化塗膜の厚み(複数層の塗膜を一度に硬化させる場合においては各層の厚み合計)は、1〜100μmであることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
(製造例1)
[不飽和ウレタン化合物−1]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM305」;OH価=116mgKOH/g)243.0重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.23重量部、ジブチル錫ジラウレート0.13重量部、メチルエチルケトン164.0重量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」;%NCO=11.7,NCO当量=359)270.6重量部、メチルエチルケトン102.9重量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、エチレングリコール11.7重量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて固形分50重量%、重量平均分子量約5,000の1分子中に重合性不飽和結合を12個含有する不飽和ウレタン化合物(A)を得た。
【0044】
(製造例2)
[不飽和ウレタン化合物−2]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM305」;OH価=116mgKOH/g)240.8重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.23重量部、ジブチル錫ジラウレート0.13重量部、メチルエチルケトン177.5重量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」;%NCO=11.7,NCO当量=359)268.2重量部、メチルエチルケトン87.1重量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、ジエチレングリコール19.8重量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて固形分50重量%、重量平均分子量約6,000の1分子中に重合性不飽和結合を12個含有する不飽和ウレタン化合物(A)を得た。
【0045】
(製造例3)
[不飽和ウレタン化合物−3]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM305」;OH価=116mgKOH/g)247.0重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.23重量部、ジブチル錫ジラウレート0.13重量部、メチルエチルケトン166.8重量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」;%NCO=11.7,NCO当量=359)275.1重量部、メチルエチルケトン104.5重量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、グリセリン7.8重量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて固形分50重量%、重量平均分子量約9,000の1分子中に重合性不飽和結合を18個含有する不飽和ウレタン化合物(A)を得た。
【0046】
(製造例4)
[不飽和ウレタン化合物−4]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM305」;OH価=116mgKOH/g)203.0重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート16.2重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.23重量部、ジブチル錫ジラウレート0.13重量部、メチルエチルケトン167.9重量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」;%NCO=11.7,NCO当量=359)301.4重量部、メチルエチルケトン83.9重量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、ジエチレングリコール22.3重量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて固形分50重量%、重量平均分子量約5,000の1分子中に重合性不飽和結合を10個含有する不飽和ウレタン化合物(A)を得た。
【0047】
(製造例5)
[不飽和ウレタン化合物−5]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成株式会社製、商品名「アロニックスM305」、OH価=116mgKOH/g)310.9質量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.29質量部、ジブチル錫ジラウレート0.16質量部、メチルエチルケトン241.1質量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃で、IPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」、%NCO=11.7、NCO当量=359)294.4質量部、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「デスモジュールI」)17.9質量部、メチルエチルケトン120.5質量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、グリセリン14.8質量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート基吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて、固形分55質量%、重量平均分子量約6,000の1分子中に重合性不飽和結合を18個含有する不飽和ウレタン化合物(A)を得た。
【0048】
(製造例6)
[不飽和ウレタン化合物−6]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成株式会社製、商品名「アロニックスM305」、OH価=116mgKOH/g)305.2質量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.28質量部、ジブチル錫ジラウレート0.16質量部、メチルエチルケトン236.6質量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」、%NCO=11.7,NCO当量=359)288.9質量部、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「デスモジュールI」)17.5質量部、メチルエチルケトン126.2質量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、ジエチレングリコール25.1質量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて、固形分55質量%、重量平均分子量約6,000の1分子中に重合性不飽和結合を12個含有する不飽和ウレタン化合物(A)を得た。
【0049】
(製造例7)
[不飽和ウレタン化合物−7]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成株式会社製、商品名「アロニックスM305」、OH価=116mgKOH/g)362.2質量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.31質量部、ジブチル錫ジラウレート0.19質量部、メチルエチルケトン254.6質量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」、%NCO=11.7,NCO当量=359)225.9質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「HDI」)22.7質量部、メチルエチルケトン127.3質量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、グリセリン6.9質量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート基吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて、固形分55質量%、重量平均分子量約6,000の1分子中に重合性不飽和結合を18個含有する不飽和ウレタン化合物(A)を得た。
【0050】
(製造例8)
[不飽和ウレタン化合物−8]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社株式会製、商品名「アロニックスM305」、OH価=116mgKOH/g)360.4質量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.31質量部、ジブチル錫ジラウレート0.19質量部、メチルエチルケトン253.3質量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」、%NCO=11.7,NCO当量=359)224.8質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「HDI」)22.6質量部、メチルエチルケトン126.7質量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、ジエチレングリコール11.9質量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート基吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて、固形分55質量%、重量平均分子量約6,000の1分子中に重合性不飽和結合を12個含有する不飽和ウレタン化合物(A)を得た。
【0051】
(製造例9)
[不飽和ウレタン化合物−9]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM305」;OH価=116mgKOH/g)388.6重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.23重量部、ジブチル錫ジラウレート0.14重量部、メチルエチルケトン301.3重量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃で、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン社製、商品名デスモジュールI)89.3重量部、メチルエチルケトン120.5重量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行い、IR測定でイソシアネート吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて固形分50重量%、重量平均分子量約1,000の1分子中に重合性不飽和結合を6個含有する不飽和ウレタン化合物を得た。
【0052】
(製造例10)
[不飽和ウレタン化合物−10]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM305」;OH価=116mgKOH/g)294.8重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.23重量部、ジブチル錫ジラウレート0.14重量部、メチルエチルケトン203.0重量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」;%NCO=11.7,NCO当量=359)218.9重量部、メチルエチルケトン101.6重量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行い、IR測定でイソシアネート吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて固形分50重量%、重量平均分子量約5,000の1分子中に重合性不飽和結合を9個含有する不飽和ウレタン化合物を得た。
【0053】
(製造例11)
[不飽和ウレタン化合物−11]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM305」;OH価=116mgKOH/g)147.8重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート71.0重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.23重量部、ジブチル錫ジラウレート0.13重量部、メチルエチルケトン137.5重量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」;%NCO=11.7,NCO当量=359)329.3重量部、メチルエチルケトン122.2重量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行い、IR測定でイソシアネート吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて固形分50重量%、重量平均分子量約2,000の1分子中に重合性不飽和結合を5個含有する不飽和ウレタン化合物を得た。
【0054】
(製造例12)
[不飽和ウレタン化合物−12]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM305」;OH価=116mgKOH/g)151.0重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート36.2重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.23重量部、ジブチル錫ジラウレート0.13重量部、メチルエチルケトン156.1重量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」;%NCO=11.7,NCO当量=359)336.3重量部、メチルエチルケトン78.0重量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、ジエチレングリコール24.8重量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて固形分50重量%、重量平均分子量約4,000の1分子中に重合性不飽和結合を8個含有する不飽和ウレタン化合物を得た。
【0055】
(製造例13)
[不飽和ウレタン化合物−13]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製、商品名「アロニックスM305」;OH価=116mgKOH/g)243.0重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.23重量部、ジブチル錫ジラウレート0.13重量部、メチルエチルケトン164.2重量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」;%NCO=11.7,NCO当量=359)270.7重量部、メチルエチルケトン102.9重量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(日産化学工業社製、商品名「タナック」;分子量261)21.9重量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて固形分50重量%、重量平均分子量約15,000の1分子中に重合性不飽和結合を18個含有する不飽和ウレタン化合物(A)を得た。
【0056】
(製造例14)
[不飽和ウレタン化合物−14]
撹拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を装備した反応容器に、2−ヒドロキシエチルアクリレート126.6質量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.28質量部、ジブチル錫ジラウレート0.16質量部、メチルエチルケトン163.5質量部を仕込み、空気を吹き込みながら、75℃まで加熱した。その後、75℃でIPDIのイソシアヌレート体(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「デスモジュールZ4470BA」、%NCO=11.7,NCO当量=359)499.2質量部、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名「デスモジュールI」)30.3質量部、メチルエチルケトン136.3質量部の混合溶液を2時間に亘って滴下した。滴下終了後に4時間、75℃で反応を行った。次いで、ジエチレングリコール43.4質量部を投入し、更に75℃で4時間反応を行い、IR測定でイソシアネート基吸収帯(2270cm−1)のピークが消失したところで合成を完了させて、固形分55質量%、重量平均分子量約2,000の1分子中に重合性不飽和結合を4個含有する不飽和ウレタン化合物(A)を得た。
【0057】
製造例1〜14の不飽和ウレタン化合物の合成に用いた各成分の配合量(質量部)と各不飽和ウレタン化合物の重量平均分子量及び1分子中の重合性不飽和結合の数について表1及び表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
なお、分子量は次のようにして測定した。
(分子量の測定方法)
使用機器:日立製作所社製、日立L6000型高速液体クロマトグラフィー
カラム:ゲルパックR400、R450及びR400M(日立化成工業社製商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:25℃
液量:1.6ml/min
検出器:日立L3350型示差屈折率計
【0061】
(実施例1〜8、比較例1〜6)
上記の製造例1〜14で製造した不飽和ウレタン化合物を用いて、光重合開始剤(B)として1−ハイドロキシシクロフェノキシフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製、商品名「イルガキュア184」)を用い、表3及び表4に示す配合で光硬化型樹脂組成物を調製した。
これらの光硬化型樹脂組成物を各種基材上に硬化塗膜厚が10〜15μmになるように塗布した後、70℃の熱風乾燥機内で5分間放置して溶剤を揮発させた。得られた乾燥塗膜について、レベリング性、表面の不粘着性(指触によるタックフリー度合い)の評価を行った。その後、80W/cmの高圧水銀灯2灯を備えた10m/分の速度で移動するコンベアに乗せ、照射硬化させた。得られたUV硬化塗膜について鉛筆硬度、耐擦り傷性、プラスチック付着性の評価を行った。それらの結果を纏めて表3及び表4に示した。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
性能評価方法
(1)レベリング性
実施例1〜8及び比較例1〜6の光硬化型樹脂組成物をそれぞれシンナー(酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルイソブチルケトン/ブチルセロソルブ/シクロヘキサノン=50/20/15/10/5の質量比で混合した溶液)で、フォードカップ#4で12〜13秒/20℃になるように希釈し、調製したコーティング剤を、ポリカーボネート板(株式会社パルテック製、2×70×150mm寸法)に乾燥後の塗膜厚が10〜15μmとなるように低圧霧化ガンを用いてスプレー塗装し、室温で10分間放置した。その後、70℃の熱風乾燥機内で5分放置して乾燥し、得られた乾燥塗膜を目視により下記基準で評価した。判定基準は、塗膜表面にムラがない「◎」(最良)、ムラがほとんどない「○」(良好)、ムラがある「△」(やや劣る)、著しいムラがある「×」(劣る)とした。
【0065】
(2)不粘着性
実施例1〜8及び比較例1〜6の光硬化型樹脂組成物をそれぞれシンナー(酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルイソブチルケトン/ブチルセロソルブ/シクロヘキサノン=50/20/15/10/5の質量比で混合した溶液)で、フォードカップ#4で12〜13秒/20℃になるように希釈し、調製したコーティング剤を、ガラス板上に硬化後の塗膜厚が10〜15μmになるようにバーコータを用いて塗布した後、70℃の熱風乾燥機内で5分間放置して溶剤を揮発させた。塗膜表面の不粘着性(25℃雰囲気下)について、指触によって下記基準にて判定した。
判定基準:粘着性なし→○(合格) 粘着性あり→×(不合格)
【0066】
(3)鉛筆硬度
実施例1〜8及び比較例1〜6の光硬化型樹脂組成物をシンナー(酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルイソブチルケトン/ブチルセロソルブ/シクロヘキサノン=50/20/15/10/5の質量比で混合した溶液)で、フォードカップ#4で12〜13秒/20℃になるように希釈し、調製したコーティング剤を、ガラス板上に硬化後の塗膜厚が10〜15μmになるようにバーコータを用いて塗布した後、70℃の熱風乾燥機内で5分間放置して溶剤を揮発させた。その後、80W/cmの高圧水銀灯2灯を備えた10m/分の速度で移動するコンベアに乗せ、照射硬化させて硬化塗膜を作製した。鉛筆硬度は、JIS−K5600鉛筆引っかき試験に基づいて評価した。
【0067】
(4)耐擦り傷性
実施例1〜8及び比較例1〜6の光硬化型樹脂組成物をそれぞれシンナー(酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルイソブチルケトン/ブチルセロソルブ/シクロヘキサノン=50/20/15/10/5の質量比で混合した溶液)で、フォードカップ#4で12〜13秒/20℃になるように希釈し、調製したコーティング剤を、ガラス板上に硬化後の塗膜厚が10〜15μmになるようにバーコータを用いて塗布した後、70℃の熱風乾燥機内で5分間放置して溶剤を揮発させた。その後、80W/cmの高圧水銀灯2灯を備えた10m/分の速度で移動するコンベアに乗せ、照射硬化させて硬化塗膜を作製した。耐擦り傷性は、UV硬化塗膜表面をスチールウール(ボンスター社製、商品名「ボンスター#0000」)を用いて荷重約100gで10回擦り塗膜の擦り傷痕跡を目視により判定した。
判定基準:傷なし→○(良好) わずかに傷あり→△(やや劣る) 著しい傷あり→×(劣る)
【0068】
(5)プラスチック付着性
実施例1〜8及び比較例1〜6の光硬化型樹脂組成物をそれぞれシンナー(酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルイソブチルケトン/ブチルセロソルブ/シクロヘキサノン=50/20/15/10/5の質量比で混合した溶液)で、フォードカップ#4で12〜13秒/20℃になるように希釈し、調製したコーティング剤を、株式会社パルテック製のポリカーボネート板(2×70×150mm寸法)の上に硬化後の塗膜厚が10〜15μmになるようにバーコータを用いて塗布した後、70℃の熱風乾燥機内で5分間放置して溶剤を揮発させた。その後、80W/cmの高圧水銀灯2灯を備えた10m/分の速度で移動するコンベアに乗せ、照射硬化させて硬化塗膜を作製した。基材との付着性はJIS−K5600に準拠しセロテープ(登録商標)剥離付着性(クロスカット法)で、塗膜上に残存する碁盤目の数を測定し、下記基準にて判定した。
判定基準:100/100→○(良好) 51〜99/100→△(やや劣る)
0〜50/100→×(著しく劣る)
【0069】
表3及び表4から、実施例1〜8の光硬化型樹脂組成物を用いて作製した光硬化型コーティング剤は、溶剤揮発後に塗膜表面が平滑であり且つ塗膜の表面が25℃雰囲気下で指触乾燥(タックフリー)となってゴミや粉塵が付着することなく表面状態が良好で、硬化性が優れ、硬化膜の鉛筆硬度、耐擦り傷性、PC(ポリカーボネート)板付着性が良好であった。他方、比較例1〜6の光硬化型樹脂組成物を用いて作製した光硬化型コーティング剤は、レベリング性、不粘着性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、プラスチック付着性のいずれか1項目以上は課題が残る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、鉄、アルミニウム等の金属素材、ケイ酸カルシウム板、パルプセメント板、軽量コンクリート板、軽量気泡コンクリート板、石綿セメント板、モルタル等の無機建材、木材、紙、プラスチック基材等の光硬化性の塗料として使用できる。また、レベリング剤、その他の改質剤を添加することもできる。
【0071】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、塗料として好適であり廉価にて硬化性、硬度、耐汚染性、耐溶剤性に優れ、ゴミや粉塵による塗膜表面の外観不良が少ない塗膜が得られる。
本発明の光硬化型樹脂組成物は、装飾、保護を目的とする塗膜、コーティング剤、フィルムとして好適に使用でき、例えば、携帯電話、腕時計、光学ディスク、オーディオ機器、OA機器等の電気電子機器;タッチパネル、ブラウン管の反射防止板等の電子材料部品;冷蔵庫、掃除機、電子レンジ等の家電製品;自動車のメーターパネル、ダッシュボード等の内装;プレコートメタル鋼板;自動車のボディ、バンパー、スポイラー、ドアノブ、ハンドル、ヘッドランプ、オートバイのガソリンタンク;メッキ、蒸着、スパッタリングが施されたアルミホイールやドアミラー等の自動車用部品;カーポートの屋根、採光屋根;ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ABS樹脂等のプラスチック成形品、フィルム、シート;階段、床、机、椅子、タンス、その他の家具等の木工製品;布、紙等のシート状基材の表面等、特に耐擦傷性が要求される分野で用いられる。また、電気・電子部品のコーティング剤としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に重合性不飽和結合を1個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a)及びイソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)を反応させて得られるイソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)と、1分子中に水酸基を2個以上有するヒドロキシル基含有アルキレングリコール系化合物(d)との反応により得られる、1分子中に重合性不飽和結合を10個以上含有する不飽和ウレタン化合物(A)、及び
光重合性開始剤(B)
を含むことを特徴とする光硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
1分子中に水酸基と重合性不飽和結合とを1個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a)が、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリル酸エステル及びこれらのエチレンオキサイド及びカプロラクトン変性物から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
イソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)が、下記一般式(I)で表される化合物である請求項1または2に記載の光硬化型樹脂組成物。
【化1】

(一般式(I)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12の脂肪族アルキレン基、又は炭素数3〜13の脂環式アルキレン基を示す。)
【請求項4】
1分子中に水酸基を2個以上有するヒドロキシル基含有アルキレングリコール系化合物(d)が、下記一般式(II)で表される化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化型樹脂組成物。
【化2】

(一般式(II)中、Rは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖の炭化水素基であり、置換基を有していてもよい。nは1〜20の整数である。)
【請求項5】
イソシアネート基含有不飽和ウレタン化合物(c)が、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(a)及びイソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物(b)に加え、1分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物(e)を反応させて得られたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化型樹脂組成物を含有してなる光硬化型コーティング剤。

【公開番号】特開2012−17404(P2012−17404A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155501(P2010−155501)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】