説明

光硬化性含フッ素ポリマーを含む光学材料および光硬化性含フッ素樹脂組成物

【課題】光導波路や封止部材などの光デバイス用材料および反射防止膜などの表示デバイス用材料として好適な近赤外領域における透明性、耐吸湿性、耐熱性などに優れた各種の光学材料および硬化した部材を提供する。
【解決手段】式(1):


(式中、構造単位Mは架橋性環状エーテル構造を側鎖に有する含フッ素有機基に由来する構造単位、構造単位Aは該式(M)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である)で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である硬化性含フッ素ポリマー(I)を含む、またはさらに光酸発生剤(II)を含む光学材料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外領域における優れた透明性を有し、耐吸湿性、耐熱性などに優れた硬化性含フッ素ポリマー、特に架橋性環状エーテル構造を含む硬化性含フッ素ポリマーを利用する光学材料および光硬化性含フッ素樹脂組成物に関する。これらの材料および組成物は光導波路や封止部材などの光デバイス用材料および反射防止膜などの表示デバイス用材料として好適である。
【背景技術】
【0002】
光通信システムはすでに現実のものとなっている。これからは光通信システムの信頼性の向上、高精度化、多重化、高速化、経済性の向上が課題となり、これらの課題を実現するためのさまざまな光デバイスの開発が進められている。光デバイス分野においては、高密度光配線を可能にする導波路型光デバイスの実現が1つの課題となっている。
【0003】
現在、光導波路用材料としては、1300〜1550nmの近赤外域の波長で透明性が高く低光損失である石英が最もよく利用されている。しかし、製造プロセスが複雑で、大面積化が困難などの問題を有し、経済性、汎用性に優れる導波路型光デバイスの開発という方向には適切ではない。
【0004】
ポリスチレンやアクリル樹脂、ポリイミドなどの従来の透明性樹脂材料などの高分子化合物を用いた光導波路用材料もすでに提案されている(たとえば非特許文献1および非特許文献2参照)。こうした高分子化合物系の材料はスピンコート法などによる成膜プロセスが利用できるため、光導波路の作製プロセスが簡便で、大面積化も可能である。しかしながら、ポリスチレンやアクリル樹脂、ポリイミドなどの従来の透明性樹脂材料はC−H結合に基づく近赤外領域における吸収が大きい(透明性がわるい)ため、光損失が大きいという問題があるほか、吸湿性も高く経時的な吸水によって近赤外領域の吸収が増大し伝送損失が悪化してしまうという問題もある。
【0005】
そこで近赤外領域での透明性が良好で損失の比較的低くかつ低吸湿性の高分子化合物材料として、C−F結合を有する含フッ素ポリマーを使用することも提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
さらに結晶性の高いパーフルオロ系ポリマーの欠点である複屈折による光散乱の問題を解決するべく含フッ素ポリマーの主鎖中に環状エーテル構造を導入してポリマーの対称性を壊し非晶性にすることが提案されている(特許文献2参照)。このパーフルオロ系の非晶質含フッ素ポリマーは透明性の点では問題がないが、ガラス転移温度が低く、耐熱性に問題がある。また、耐熱性を向上させるべく構造単位や組成を変えてガラス転移温度を充分高くするとポリマー自体がもろくなり、導波路形成プロセスにおいてクラックを生じるなどの問題が生じてくる。また、パーフルオロ系の非晶質含フッ素ポリマー単独では制御できる屈折率の範囲が狭く、特に屈折率の異なる材料が必要なコア−クラッド型の導波路を設計する場合に大きな制限がある。たとえばパーフルオロ系の非晶質含フッ素ポリマーを光導波路のコア部(高屈折率)として用いた場合、パーフルオロ系を維持したまま屈折率を下げることが困難であり、適当なコア−クラッド型の光導波路を作製することが困難である。そのため、コア材料としてパーフルオロ系の非晶質含フッ素ポリマーに高屈折率化合物を別途配合してクラッドとの屈折率の差を出そうとしている(特許文献3参照)。
【0007】
前述の特許文献2記載のパーフルオロ系の非晶質含フッ素ポリマーは官能基を有していない。特許文献3記載の発明は特許文献2記載のパーフルオロ系の非晶質含フッ素ポリマーが他の材料との密着性に劣るという点を解決課題とし、密着性の向上を官能基の導入により解決することを提案している。そうした密着性を改善しうる官能基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、エステル結合を有する基、アルケニル基、加水分解性シリル基、水酸基、マレイミド基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基があげられている。しかし、この特許文献3記載の官能基含有含フッ素ポリマー材料もまた、硬化性(架橋性)の材料として使用されていない。
【0008】
光通信の分野と共に、光の透過性や光に対する耐久性(耐光性)が要求される分野として、表示デバイスの分野がある。その代表的な技術として反射防止膜がある。反射防止膜はCRTや液晶画面などの表示装置が表示する画像の視認性を向上させるために、表示装置の基板(ガラスまたはアクリルなど)上に設けられた低屈折率の材料からなる膜である。
【0009】
反射防止膜の材料としては、シリコーン系無機または有機材料、含フッ素アクリル系材料、フルオロカーボン系材料に大別される。
【0010】
そのうちアクリル系材料として低分子量の多官能含フッ素アクリレートと含フッ素アクリル系ポリマーからなる光硬化可能な材料が提案されている(たとえば特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。しかしこの系では硬化に寄与する成分は多官能含フッ素アクリレートであり含フッ素アクリル系ポリマー自身は架橋しておらず、したがって必要な表面硬度を得ようとして多官能含フッ素アクリレートの量を増やすと得られる塗膜の屈折率が高くなってしまうほか、未反応のアクリレートが残存してしまうという問題がある。
【0011】
フルオロカーボン系の材料としては、エチレン性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素アルキル基を主鎖末端または側鎖中に含む硬化性含フッ素ポリマーを反射防止膜用材料として用いることが提案されている(特許文献7参照)。かかる炭素−炭素二重結合を有する硬化性含フッ素ポリマーは、屈折率が低く、耐吸湿性、耐光性、耐熱性にも優れているが、硬化反応性を更に向上させることが望まれている。
【0012】
光デバイス関連の部材として封止部材がある。これは光デバイス間を充填するため、または光デバイスを塵や大気(酸素や水分など)、衝撃などの外的環境から保護するための部材であり、それ単独では機能素子とはならないが光デバイスを設計加工するうえで必要な部材である。
【0013】
光デバイスの封止部材には透明性および耐湿性、耐熱性、機械的強度などに優れることが要求され、この観点から、セラミック材料を使用する気密封止部材と樹脂材料を使用する樹脂封止部材があるが、現在は樹脂封止部材が主流となっている。
【0014】
樹脂封止部材用材料としては、透明性や耐熱性に優れている点でビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂系の材料が広く使用されている(たとえば特許文献8、特許文献9参照)。しかしエポキシ樹脂には耐吸湿性に劣るという問題があり、発光ダイオード(LED)、EL素子、非線形光学材料素子などの光機能素子を封止した場合、それらの機能素子の腐食を防止する能力に劣り、光デバイスそのものの寿命が短くなるという欠点がある。
【0015】
そこで透明性および耐湿性、耐熱性、機械的強度のいずれにも優れた封止部材用材料の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−16720号公報
【特許文献2】特開平4−19020号公報
【特許文献3】特開2000−81519号公報
【特許文献4】特開平7−126552号公報
【特許文献5】特開平7−188582号公報
【特許文献6】特開平8−48935号公報
【特許文献7】国際公開WO02/18457号パンフレット
【特許文献8】特開平8−27233号公報
【特許文献9】特開平7−21987号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】黒川ら、「アプライド・オプティクス(Applied Optics)」、第19号、1980年、p.3124
【非特許文献2】黒川ら、「アプライド・オプティクス(Applied Optics)」、第16号、1977年、p.1033
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、近赤外領域から紫外領域にわたる広範囲の波長領域での透明性を維持しながら光硬化可能な含フッ素ポリマー材料を見出したことにより完成されたものであり、硬化させることにより高弾性、耐擦傷性、耐磨耗性などの機械的物性、耐吸湿性および耐熱性を改善し、その紫外領域から近赤外領域にわたる広範な波長領域における透明性を利用して、光デバイス(光導波路、封止部材など)用光学材料を、またその屈折率の低さを利用して表示デバイス(反射防止膜など)用光学材料を提供することを目的とする。
【0019】
さらに、溶剤に可溶なことからスピンコート法などによる成膜プロセスが利用でき、光硬化や光リソグラフプロセスによる大面積での加工も可能で、また酸素による硬化の阻害を受けず大気中での硬化が可能なことから加工プロセスを簡便に実施できる光学材料を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を行なった結果、ポリマー側鎖中またはポリマー主鎖末端に架橋性の環状エーテル構造を有する非晶性含フッ素ポリマーが、屈折率・透明性を低下させることなく、耐熱性の高い硬化物を大気中で硬化させることによって与え得ることを見出した。
【0021】
また、ポリマー側鎖中またはポリマー主鎖末端に架橋性環状エーテル構造を有する特定の含フッ素ポリマーの硬化膜が近赤外領域から紫外領域にわたる広範囲の波長領域での透明性に優れ、かつ耐熱性にも優れており、光導波路や封止部材などの光デバイス用光学材料および反射防止膜などの表示デバイス用光学材料として特に有用であることをも見出した。
【0022】
さらに該特定の含フッ素ポリマーと光酸発生剤を組み合わせることにより、光硬化速度の大きい光硬化性含フッ素樹脂組成物が得られることも見出した。
【0023】
すなわち本発明は、
【化1】

[式中、構造単位Mは式(M):
【化2】

(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1(Y1は水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい架橋性環状エーテル構造を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Aは該式(M)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である硬化性含フッ素ポリマー(I)を利用する各種の発明に関する。
【0024】
そのうち本発明の第1は、(a)前記硬化性含フッ素ポリマー(I)、および(b)光酸発生剤(II)とからなる光硬化性含フッ素樹脂組成物に関する。
【0025】
本発明の第2は、前記硬化性含フッ素ポリマー(I)を含む光デバイス用光学材料に関する。
【0026】
本発明の光デバイス用光学材料は、(a)前記硬化性含フッ素ポリマー(I)、および(b)光酸発生剤(II)とからなる光デバイス用光学材料の形態をとることが好ましい。
【0027】
本発明の光デバイス用光学材料を硬化することにより得られる硬化物は光デバイス用光学部材を提供することができる。
【0028】
特に本発明の光デバイス用光学材料は光導波路用材料を提供でき、かかる光導波路用材料を硬化してなる硬化物は優れた光導波路用部材を与える。
【0029】
また本発明の光デバイス用光学材料は封止部材用光学材料を提供でき、かかる材料を硬化してなる硬化物は優れた封止部材を有する光デバイスを与える。
【0030】
本発明の第3は、前記式(1)で示される硬化性含フッ素ポリマー(I)を含む表示デバイス用光学材料に関する。
【0031】
本発明の表示デバイス用光学材料は、(a)前記硬化性含フッ素ポリマー(I)、および(b)光酸発生剤(II)とからなる表示デバイス用光学材料の形態をとることが好ましい。
【0032】
本発明の表示デバイス用光学材料を硬化することにより得られる硬化物は表示デバイス用光学部材を提供することができる。
【0033】
特に本発明の表示デバイス用光学材料は反射防止膜用材料を提供でき、かかる反射防止膜用材料を硬化してなる硬化物は優れた反射防止膜を与える。
【0034】
本発明の組成物および光学材料に配合する光酸発生剤(II)としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩およびメタロセン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の芳香族化合物が好ましく、かかる芳香族化合物のうちでも芳香環に1〜4個の有機基R(Rは同じかまたは異なり、エーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシル基、チオアルキル基またはチオフェノキシ基)が結合している化合物が好ましい。
【0035】
さらに光酸発生剤(II)がフッ素原子を含有する化合物であることが好ましい。
【0036】
上記含フッ素ポリマー(I)は新規なポリマー(Ia)および(Ib)を含んでいる。すなわち本発明の第4は、式(2):
−(M4)−(B)− (2)
[式中、構造単位M4は式(M4):
【化3】

(式中、X1、X2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY2(Y2は架橋性環状エーテル構造:
【化4】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数2〜100の有機基、または式:
【化5】

(式中、Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子が上記Xで置換されていてもよい1価または2価の有機基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Bは該式(M4)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位M4を0.1〜100モル%および構造単位Bを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である架橋基含有含フッ素ポリマー(Ia)、または式(2−1):
−(M4)−(B)− (2−1)
[式中、構造単位M4は式(M4−1):
【化6】

(式中、X1、X2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY2a(Y2aは架橋性環状エーテル構造:
【化7】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Bは該式(M4−1)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位M4を0.1〜100モル%および構造単位Bを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である架橋基含有含フッ素ポリマー(Ib)に関する。
【0037】
前記新規含フッ素ポリマー(Ia)を与える含フッ素エチレン性単量体も新規である。すなわち本発明の第5は、式(3):
【化8】

(式中、X1、X2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY2(Y2は架橋性環状エーテル構造:
【化9】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数2〜100の有機基、または式:
【化10】

(式中、Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子が上記Xで置換されていてもよい1価または2価の有機基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体、または式(3−1):
【化11】

(式中、X1、X2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY2a(Y2aは架橋性環状エーテル構造:
【化12】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数2〜100の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に関する。
【発明の効果】
【0038】
架橋性環状エーテル構造を含む硬化性含フッ素ポリマーを使用することにより、近赤外領域における透明性、耐吸湿性、耐熱性などに優れた各種の光学材料および硬化した部材を提供することができる。これらの材料および部材は光導波路や封止部材などの光デバイス用材料および反射防止膜などの表示デバイス用材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の光導波路用部材を使用する光導波路型素子の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の光導波路用部材を用いた光導波路型素子の作製工程を説明するための工程図である。
【図3】図3は、本発明の封止部材を用いた深紫外レンズの概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の封止部材を用いた有機EL素子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
まず、本発明の光学材料および組成物に使用する硬化性含フッ素ポリマー(I)について説明する。
【0041】
硬化性含フッ素ポリマー(I)は、前記のとおり、式(1):
【化13】

[式中、構造単位Mは式(M):
【化14】

(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1(Y1は水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい架橋性環状エーテル構造を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Aは該式(M)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である硬化性含フッ素ポリマーである。
【0042】
すなわち本発明で使用する硬化性含フッ素ポリマーは、架橋性環状エーテル構造を有する有機基Y1を含む含フッ素アルキル基Rfをもつ構造単位Mのホモポリマーまたは構造単位MとAの共重合体である。
【0043】
硬化性含フッ素ポリマー(I)は、そのフッ素含有率が25重量%以上、特に40重量%以上であることが、含フッ素ポリマー(I)の透明性を高く、かつ屈折率を低くすることが可能となり、特に硬化物の耐熱性や弾性率を高くする目的で硬化度(架橋密度)を高くしても低屈折率で高い透明性を維持できるため好ましい。また、高い透明性を維持するため、フッ素含有率が70重量%以下であることが好ましい。
【0044】
フッ素含有率は、19F−NMRおよび1H−NMRの測定から後記の装置および測定条件を使って、ポリマーの組成を解析し、フッ素含有率を算出する方法を一般的に用いることができる。構造解析が困難である場合はフッ素元素分析法(濾紙(東洋濾紙:No7)にてサンプル2mgと助燃剤(過酸化ソーダ10mg)を包み、その後白金バスケットにそれを入れ、25mlの純水で満たした500mlのフラスコ内で燃焼させる。燃焼後直ぐに、フラスコを振り純水にフッ素イオンを吸収させ、フッ素イオン電極にて吸収させた純水中のフッ素イオンを分析する方法)によって求める。
【0045】
好ましい硬化性含フッ素ポリマー(I)の具体的なポリマーとしては、式(1)において構造単位Mが式(M1):
【化15】

(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY1(Y1は水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい架橋性環状エーテル構造を1〜5個有する炭素数2〜100の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;cは0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位M1である含フッ素ポリマーがあげられる。
【0046】
この構造単位M1を含む含フッ素ポリマーは、特に近赤外領域から紫外領域にかけての透明性が高くかつ屈折率が低く、構造単位M1のホモポリマーに限らず、構造単位M1を増やした組成の共重合体においても透明性を高くかつ屈折率を低くすることができ、好ましいものである。
【0047】
さらに、式(1)において構造単位Mが式(M2):
【化16】

(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位M2である含フッ素ポリマーがあげられる。
【0048】
この構造単位M2は架橋性環状エーテル構造をRf中に有する含フッ素アリルエーテルの構造単位であり、透明性を高くかつ屈折率を低くできるだけでなく、重合性が良好であり、特にホモ重合性および他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好である点で好ましい。
【0049】
さらにまた好ましい硬化性含フッ素ポリマー(I)としては、式(1)において構造単位Mが式(M3):
【化17】

(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位M3である含フッ素ポリマーがあげられる。
【0050】
この構造単位M3は架橋性環状エーテル構造をRf中に有する含フッ素ビニルエーテルの構造単位であり、透明性を高くかつ屈折率を低くでき、また他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好である点で好ましい。
【0051】
前記式(M)、(M1)、(M2)および(M3)におけるRf中のY1の少なくとも1つは、Rfの末端に結合していることが好ましい。
【0052】
このY1中の環状エーテル構造は開環付加反応などを起こす能力を有し、硬化(架橋)体を与えることができるものである。詳しくは、たとえばカチオンの接触によって、含フッ素ポリマー(I)分子間で、または含フッ素ポリマー(I)と必要に応じて加えられる硬化(架橋)剤との間で開環付加反応を起こし、硬化(架橋)物を与えることができるものである。
【0053】
Rf中のY1が含む架橋性環状エーテル構造としては、エーテル結合を少なくとも1つ含む3〜6員環の架橋性環状エーテル構造(水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)が好ましくあげられる。
【0054】
3員環の架橋性環状エーテル構造であるオキシラン(エポキシ)構造(Y−a)としては、たとえば
【化18】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)または式:
【化19】

(式中、Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子が上記Xで置換されていてもよい1価または2価の有機基)があげられる。
【0055】
オキシラン構造(Y−a1)の具体例としては、たとえば
【化20】

などがあげられ、なかでも
【化21】

が、反応性が良好な点から好ましく、特に
【化22】

が好ましい。
【0056】
オキシラン構造(Y−a2)の具体例としては、たとえば
【化23】

などがあげられ、なかでも
【化24】

が、反応性が良好な点から好ましい。
【0057】
オキシラン構造(Y−a3)としては、たとえば
【化25】

などがあげられ、具体的には
【化26】

などがあげられ、なかでも
【化27】

などが反応性が良好な点および得られる被膜に機械的強度を付与できる点から好ましくあげられる。
【0058】
Y−a1〜Y−a3の構造を含み、それぞれがRf中に結合している形態としての好ましい具体例としては、たとえばつぎのものがあげられる。
【化28】

【0059】
4員環の架橋性環状エーテル構造であるオキセタン構造(Y−b)としては、たとえば
【化29】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)、または式:
【化30】

(式中、Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子が上記Xで置換されていてもよい1価または2価の有機基)などがあげられる。
【0060】
オキセタン構造(Y−b1)の具体例としては、たとえば
【化31】

などがあげられ、なかでも
【化32】

が、反応性が良好な点から好ましい。
【0061】
オキセタン構造(Y−b2)の具体例としては、たとえば
【化33】

などがあげられる。
【0062】
オキセタン構造(Y−b3)の具体例としては、たとえば
【化34】

などがあげられる。
【0063】
Y−b1〜Y−b3のなかでもY−b1が好ましく、特に前述した具体例のものがなかでも反応性が特に良好な点から好ましい。
【0064】
上記例示のY−b1〜Y−b3の構造を含み、それぞれがRf中に結合している形態としての好ましい具体例としては、
【化35】

などがあげられる。
【0065】
その他の架橋性環状エーテル構造としては、たとえばテトラヒドロフラン環(5員環)、ジオキソラン環(5員環、6員環)、トリオキサン環(6員環)、スピロオルトカーボナートなどがあげられる。
【0066】
具体的には、たとえば
【化36】

などがあげられる。
【0067】
また架橋性環状エーテル構造Y1が結合している有機基Rfは含フッ素ポリマー(I)の主鎖末端に存在していてもよい。
【0068】
架橋性環状エーテル構造Y1を除く有機基Rfの2価以上の残基(以下、「Rf残基」という)は、炭素数1〜40の2価以上の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価以上の含フッ素アルキレン基である。このRf残基は含まれる炭素原子にフッ素原子が結合していればよく、一般に、炭素原子にフッ素原子と水素原子または塩素原子が結合した2価以上の含フッ素アルキレン基、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基であるが、フッ素原子をより多く含有する(フッ素含有率が高い)ものが好ましく、より好ましくは2価以上のパーフルオロアルキレン基またはエーテル結合を有するパーフルオロアルキレン基である。含フッ素ポリマー(I)中のフッ素含有量率は前述のとおり25重量%以上、好ましくは40重量%以上である。
【0069】
Rf残基の炭素数は大きすぎると、含フッ素アルキレン基の場合は溶剤への溶解性を低下させたり透明性が低下したりすることがあり、またエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の場合はポリマー自身やその硬化物の硬度や機械特性を低下させることがあるため好ましくない。含フッ素アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20である。
【0070】
Rf残基の好ましい具体例としては、
【化37】

などがあげられる。
【0071】
前述のとおり、本発明で用いる含フッ素ポリマー(I)を構成する構造単位Mは構造単位M1が好ましく、構造単位M1としてはさらに構造単位M2または構造単位M3が好ましい。そこで、つぎに構造単位M2および構造単位M3の具体例について述べる。
【0072】
構造単位M2を与える単量体の好ましい具体例としては、
【化38】

(Y1は前記と同じ)があげられる。
【0073】
より詳しくは、
【化39】

(RはHまたはCH3、Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、nは0〜30の整数)などがあげられる。
【0074】
構造単位M3を与える単量体の好ましい具体例としては、
【化40】

(Y1は前記と同じ)などがあげられる。
【0075】
さらに詳しくは、
【化41】

(RはHまたはCH3、Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、nは0〜30の整数)などがあげられる。
【0076】
これらの構造単位M2およびM3以外に、含フッ素ポリマー(I)の構造単位Mを構成する単量体の好ましい具体例としては、たとえば、
【化42】

(Y1は前記と同じ。Rf3はRfから−CH2CHCH2−を除いた基)などがあげられる。
【0077】
より具体的には、
【化43】

(Y1は前記と同じ)などがあげられる。
【0078】
本発明で用いる含フッ素ポリマー(I)において、構造単位Aは任意成分であり、構造単位M(M1、M2またはM3)と共重合し得る単量体であれば特に限定されず、目的とする含フッ素ポリマー(I)やその硬化物の用途、要求特性などに応じて適宜選択すればよい。
【0079】
構造単位Aとしては、たとえば、つぎの構造単位が例示できる。
【0080】
(i)官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位:
(i)−1極性基(ただし、Y1が含む架橋性環状エーテル基は除く)を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位。
【0081】
(i)−2ラジカル反応性基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位。
【0082】
構造単位(i)は、含フッ素ポリマー(I)およびその硬化物の屈折率を低く、透明性を高く維持しながら、汎用溶剤への溶解性、基材への密着性等の物性、また、カチオン反応以外の反応性などを付与することができる。中でも構造単位(i)−1は架橋反応を促進し、基材への密着性や溶剤、汎用溶剤への溶解性を付与できる点で好ましい。構造単位(i)−2はラジカルを生成する光カチオン触媒を用いるか、または光ラジカル触媒と光カチオン触媒を併用し活性エネルギー線を照射すると硬化速度を速くすることができ、さらに硬化物の硬度など力学的強度を高めることができる点で好ましい。
【0083】
官能基を有する好ましい含フッ素エチレン性単量体の構造単位(i)は、式(4):
【化44】

(式中、X11、X12およびX13は同じかまたは異なり、HまたはF;X14はH、F、CF3;hは0〜2の整数;iは0または1;Rf4は炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;Z1は−OH、CH2OH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SO3H、スルホン酸誘導体およびシアノ基よりなる群から選ばれる極性官能基またはラジカル反応性炭素−炭素二重結合)で示される構造単位であり、なかでも、
CH2=CFCF2ORf4−Z1
(式中、Rf4およびZ1は前記と同じ)から誘導される構造単位が好ましい。
【0084】
より具体的には、
【化45】

(式中、Z1は前記と同じ)などの含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
【0085】
また、
CF2=CFORf4−Z1
(式中、Rf4およびZ1は前記と同じ)から誘導される構造単位も好ましく例示でき、より具体的には、
【化46】

(式中、Z1は前記と同じ)などの単量体から誘導される構造単位があげられる。
【0086】
その他の官能基含有含フッ素エチレン性単量体としては、
CF2=CFCF2−O−Rf4−Z1、CF2=CF−Rf4−Z1
CH2=CH−Rf4−Z1、CH2=CHO−Rf4−Z1
(式中、Rf4およびZ1は前記と同じ)などがあげられ、より具体的には、
【化47】

(式中、Z1は前記と同じ)などがあげられる。
【0087】
ただし、光デバイス用光学材料、特に光導波路用光学材料として−OH基、−COOH基、−SO3H基を有する単量体を用いる場合は、近赤外透明性を低下させない範囲の量であることが好ましい。
【0088】
(ii)官能基を含まない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位:
この構造単位(ii)は含フッ素ポリマー(I)またはその硬化物の屈折率を低くしかつ透明性をより一層高く維持できる点で好ましい。また単量体を選択することでポリマーの機械的特性やガラス転移温度などを調整でき、特に構造単位Mと共重合してガラス転移点を高くすることができる点で、好ましいものである。
【0089】
この含フッ素エチレン性単量体の構造単位(ii)としては、式(5):
【化48】

(式中、X15、X16およびX18は同じかまたは異なり、HまたはF;X17はH、FまたはCF3;h1、i1およびjは0または1;Z2はH、FまたはCl;Rf5は炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基)で示されるものが好ましい。
【0090】
具体例としては、
【化49】

などの単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
【0091】
なかでも透明性の点で、CF2=CF2、CF2=CH2、CF2=CFCl、CF2=CFCF3が好ましい。
【0092】
(iii)フッ素を有する脂肪族環状の構造単位:
この構造単位(iii)を導入すると、透明性を高くでき、また、より近赤外透明性を高めることが可能となり、さらに高ガラス転移温度の含フッ素ポリマー(I)が得られ、硬化物にさらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。
【0093】
この構造単位(iii)は式(1)の構造単位Aであり、含フッ素ポリマー(I)主鎖中に環構造を導入して透明性や機械的特性の向上を目的するものであり、この目的を奏するためには環構造を壊してはならないのである。一方、構造単位Mの側鎖に導入されるY1中の架橋性環状エーテル構造単位は架橋点の形成をし開環反応により架橋を起こすことを目的としており、したがって構造単位(iii)とはそのポリマー中での位置、目的、作用効果において異なるものである。
【0094】
含フッ素脂肪族環状の構造単位(iii)としては式(6):
【化50】

(式中、X19、X20、X23、X24、X25およびX26は同じかまたは異なり、HまたはF;X21およびX22は同じかまたは異なり、H、F、ClまたはCF3;Rf6は炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4およびn5は同じかまたは異なり、0または1)で示されるものが好ましい。
【0095】
たとえば、
【化51】

(式中、Rf6、X21およびX22は前記と同じ)で示される構造単位があげられる。
【0096】
具体的には、
【化52】

(式中、X19、X20、X23およびX24は前記と同じ)などがあげられる。
【0097】
(iv)フッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位:
近赤外透明性を悪化させない範囲でフッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位(iv)を導入してもよい。
【0098】
構造単位(iv)を導入することによって、汎用溶剤への溶解性が向上したり、添加剤、たとえば光触媒や必要に応じて添加する架橋剤との相溶性を改善できる。
【0099】
非フッ素系エチレン性単量体の具体例としては、
αオレフィン類:
エチレン、プロピレン、ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど
ビニルエーテル系またはビニルエステル系単量体:
CH2=CHOR、CH2=CHOCOR(R:炭素数1〜20の炭化水素基)など
アリル系単量体:
CH2=CHCH2Cl、CH2=CHCH2OH、CH2=CHCH2COOH、CH2=CHCH2Brなど
アリルエーテル系単量体:
【化53】

アクリル系またはメタクリル系単量体:
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類のほか、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル類など
などがあげられる。これらの非フッ素系エチレン性単量体の水素原子を重水素原子に置換したものは透明性の点でより好ましい。
【0100】
(v)脂環式単量体から誘導される構造単位
構造単位Mの共重合成分として、より好ましくは構造単位Mと前述の含フッ素エチレン性単量体または非フッ素エチレン性単量体(前述の(iii)、(iv))の構造単位に加えて、第3成分として脂環式単量体構造単位(v)を導入してもよく、それによって高ガラス転移温度化や高硬度化が図られる。
【0101】
脂環式単量体(v)の具体例としては、
【化54】

(mは0〜3の整数;A、B、CおよびDは同じかまたは異なり、H、F、Cl、COOH、CH2OHまたは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基など)で示されるノルボルネン誘導体、
【化55】

などの脂環式単量体や、これらに置換基を導入した誘導体などがあげられる。
【0102】
なお、上記例示中の環状エーテル構造を主鎖中に与える単量体については、上記構造単位(iii)で述べた点で構造単位M中の架橋性環状エーテル構造とは異なる。
【0103】
本発明で用いる含フッ素ポリマー(I)において、構造単位M(M1、M2、M3)と構造単位Aの組合せや組成比率は、構造単位Mと構造単位Aの組合せが非晶性となり得る組合せの範囲、およびフッ素含有率が25重量%以上、好ましくは40重量%以上の範囲で、上記の例示から、目的とする用途、物性(特にガラス転移温度、硬度など)、機能(透明性、屈折率)などによって種々選択できる。
【0104】
含フッ素ポリマー(I)は、構造単位M(M1、M2、M3)を必須成分として含むものであり、構造単位M自体で屈折率を低く、透明性を高く維持し、透明性を付与する機能と硬化(架橋)により硬化物に硬さ、耐熱性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性を付与できる機能を併せもつという特徴を有している。また、構造単位Mの含有量を調整することで屈折率の制御が可能であるという特徴をも有している。したがって含フッ素ポリマー(I)は、構造単位Mを多く含む組成、極端には構造単位Mのみ(100モル%)からなる重合体であっても屈折率を低く、透明性を高く維持できる。さらに同時に硬化(架橋)密度の高い硬化物が得られ、高硬度、耐摩耗性、耐擦傷性、耐熱性に優れた被膜が得られる。
【0105】
またさらに、含フッ素ポリマー(I)の構造単位Mと構造単位Aとからなる共重合体の場合、構造単位Aを前述の例示から選択することによって、さらに高硬度(高ガラス転移温度)や近赤外透明性の高い硬化物を与えるポリマーとすることができる。
【0106】
含フッ素ポリマー(I)の構造単位Mと構造単位Aとの共重合体の場合、構造単位Mの含有比率は、含フッ素ポリマー(I)を構成する全単量体に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた硬化物を得るためには2.0モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上とすることが好ましい。
【0107】
特に耐熱性、透明性、低吸湿性に優れた硬化被膜の形成が必要な用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらには50モル%以上含有することが好ましい。
【0108】
含フッ素ポリマー(I)の分子量は、たとえば数平均分子量において500〜1000000の範囲から選択できるが、好ましくは1000〜500000、特に2000〜200000の範囲から選ばれるものが好ましい。
【0109】
分子量が低すぎると、硬化後であっても機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性がわるくなったり、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性がわるくなったりしやすく、また含フッ素ポリマーの貯蔵安定性も不安定となりやすい。数平均分子量は、光導波路用途としては5000〜100000の範囲から選ばれるものが最も好ましく、封止部材用途としては2000〜50000の範囲から選ばれるものが最も好ましく、反射防止膜用途としては10000〜200000の範囲から選ばれるものが最も好ましい。
【0110】
またさらに含フッ素ポリマーでは、溶剤に可溶であることが好ましく、なかでもケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤の少なくとも1種に可溶または上記溶剤を少なくとも1種含む混合溶剤に可溶であることが好ましい。可溶とは、25℃にて濃度10重量%以上溶解することをいう。
【0111】
溶剤に可溶であることは、光導波路や反射防止膜等を形成するプロセスにおいて薄膜形成が必要な際、成膜性、均質性に優れるため好ましく、生産性の面でも有利である。
【0112】
本発明で用いる含フッ素ポリマー(I)は、構成単位Mの比率を増やしても(硬化部位を増やしても)透明性が低下しないため、特に光導波路用材料として好ましい特性を有している。
【0113】
本発明で用いる含フッ素ポリマー(I)は、構成単位Mの比率を増やしても(硬化部位を増やしても)透明性が低下せず屈折率も上昇しないため、特に光デバイス用の封止部材用材料として好ましい特性を有している。
【0114】
さらにまた、本発明で用いる含フッ素ポリマー(I)は、構成単位Mの比率を増やしても(硬化部位を増やしても)屈折率が上昇しないため、反射防止膜用材料としても好ましい特性を有している。
【0115】
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(I)を得るためには、一般には
(a)Y1を有する単量体を予め合成し、単独重合または共重合して得る方法
(b)一旦、他の官能基を有する重合体を合成し、その重合体に高分子反応により官能基変換し、官能基Y1を導入する方法
のいずれの方法も採用できる。
【0116】
(a)の重合法はラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法などが利用できる。なかでもラジカル重合法が好ましく用いられる。
【0117】
ラジカル重合を開始するには、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限されないが、たとえば有機または無機ラジカル重合開始剤、熱、光、あるいは電離放射線などによって開始される。重合の形態も溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合などを用いることができる。また、分子量は重合に用いるモノマーの濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の濃度、温度などによって制御される。共重合体組成は仕込み単量体のモノマー組成により制御可能である。
【0118】
(b)の方法としては、たとえば一旦ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、−COCl、−COFまたはこれらの基を有する有機基Y3を有する含フッ素単量体の構造単位と必要に応じて共重合可能な単量体の構造単位からなる含フッ素重合体を合成したのち、Y1の構造を有するハロゲン化物またはその誘導体を反応させて、架橋性環状エーテル構造をポリマーの側鎖に導入し、本発明の硬化性含フッ素ポリマーを得る方法があげられる。
【0119】
ヒドロキシル基含有含フッ素重合体と反応させる架橋性環状エーテル構造を含むハロゲン化物またはその誘導体としては、
【化56】

(X27はCl、BrまたはI、Xは同じかまたは異なり、H、F、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)などがあげられる。
【0120】
前記式(1)で示される硬化性含フッ素ポリマー(I)のうち、式(2):
−(M4)−(B)− (2)
[式中、構造単位M4は式(M4):
【化57】

(式中、X1、X2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY2(Y2は架橋性環状エーテル構造:
【化58】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数2〜100の有機基、または式:
【化59】

(式中、Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子が上記Xで置換されていてもよい1価または2価の有機基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Bは該式(M4)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位M4を0.1〜100モル%および構造単位Bを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である架橋基含有含フッ素ポリマー(Ia)、または式(2−1):
−(M4)−(B)− (2−1)
[式中、構造単位M4は式(M4−1):
【化60】

(式中、X1、X2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY2a(Y2aは架橋性環状エーテル構造:
【化61】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Bは該式(M4−1)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位M4を0.1〜100モル%および構造単位Bを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である架橋基含有含フッ素ポリマー(Ib)は、新規なポリマーである。
【0121】
この新規な含フッ素ポリマー(Ia)および(Ib)の具体例は、前述した含フッ素ポリマー(I)の説明において、Y1をY2またはY2aに置き換えたポリマーが例示できる。また構造単位Bは前述の構造単位Aと同じものが例示できる。
【0122】
本発明の新規な含フッ素ポリマーにおける架橋性環状エーテル構造としては前述の(Y−a2)、(Y−a3)、(Y−b1)、(Y−b2)で示した具体例と同様なものが好ましくあげられる。
【0123】
そのなかでもオキセタン構造のもの(前述のY−b1、Y−b2)が硬化反応性の面で特に好ましい。
【0124】
かかる新規な含フッ素ポリマー(Ia)および(Ib)は、つぎに示す単量体を使用し、前述した方法で製造することができる。
【0125】
さらにまた、前記新規含フッ素ポリマー(Ia)および(Ib)を与える式:
【化62】

(式中、X1、X2、X3、X4、X5、a、b、cおよびRf(ただしY1に代えてY2またはY2aを有する)は前記と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体も新規な単量体である。
【0126】
かかる新規な単量体の具体例は、構造単位Mを与える単量体として前述した単量体のうち、Y1をY2またはY2aに置き換えた単量体が例示できる。
【0127】
2およびY2aの具体例、好ましいものについても上記新規な含フッ素ポリマー(Ia)および(Ib)と同様のものがあげられ、オキセタン構造(前述のY−b1、Y−b2)を有する単量体が好ましい新規単量体である。
【0128】
そのなかでも好ましい新規な単量体の具体例としては、
【化63】

(RはHまたはCH3;Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、nは0〜30の整数)などがあげられる。
【0129】
かかる新規な含フッ素エチレン性単量体の合成は、たとえば末端に水酸基を有する含フッ素オレフィンに塩基の存在下Y2またはY2aを有するハロゲン化物、たとえば
【化64】

を反応させることによって実施できる。
【0130】
塩基としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシドなどの金属アルコキシド;トリエチルアミン、ピリジンなどの第3級アミン類などが好ましく、なかでもアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、第3級アミン類が好ましい。
【0131】
反応溶媒は使用しても、使用しなくてもよく、使用しない場合はY2またはY2aを有するハロゲン化物を通常、水酸基を有する含フッ素オレフィンに対し過剰量使用し反応させる。
【0132】
使用する場合、反応溶媒としては特に限定されないが、メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、モノグライムなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;トリエチルアミン、ピリジンなどの第3級アミン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが好ましくあげられる。
【0133】
反応温度は−10〜250℃の間で採用でき、好ましくは室温〜180℃、より好ましくは80〜150℃である。
【0134】
かかる硬化性含フッ素ポリマー(I)を利用した第1の本発明である光硬化性含フッ素樹脂組成物について説明する。
【0135】
本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物は、
(a)硬化性含フッ素ポリマー(I)および
(b)光酸発生剤(II)
とからなる。
【0136】
(a)成分である硬化性含フッ素ポリマー(I)については、前述したとおりである。
【0137】
(b)成分である光酸発生剤(II)としては、可視光線、紫外光線、電子線、X線、γ線などの活性エネルギー線を照射することによって初めてカチオン(酸)などを発生し、含フッ素ポリマーの構造単位Mの側鎖中に含まれるY1の架橋性環状エーテルの開環付加反応(架橋反応)を開始させる触媒として働くものを使用する。
【0138】
本発明者らは本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物によると、前記活性エネルギー線により容易に硬化反応を開始でき、高温で加熱する必要がなく比較的低温で硬化反応が可能であるので、耐熱性が低く熱で変形や分解や着色が起こりやすい基材、たとえば透明樹脂基材などにも適応できることを見出した。
【0139】
またさらに加えて本発明者らは本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物は、たとえば従来のエポキシ基含有非フッ素系光硬化性樹脂組成物や従来の含フッ素ポリマーを含む光硬化性樹脂組成物に比べて硬化性(硬化反応性)がより一層良好であることを見出し、特に膜厚が大きくても均一な硬化度で硬化でき、高硬度の被膜が比較的短時間で得られることも見出した。そのため、加工に要するエネルギーや時間を削減するという生産上の効果も達成できるものである。
【0140】
本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物に用いる光酸発生剤は吸収波長域が120nm〜400nmのものが好ましく、特に吸収波長域が200〜380nmのものが好ましく、特に250〜380nmの吸収波長域のものが好ましい。
【0141】
また光酸発生剤(II)がフッ素原子を含有する化合物であるときは、含フッ素ポリマー(I)との相溶性が向上する点から好ましい。
【0142】
光酸発生剤(II)の具体例としては、たとえばつぎのものが例示できる。
【0143】
オニウム塩:
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
メタロセン系化合物:
鉄アレーン錯体など
スルホン化合物:
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
スルホン酸エステル類:
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
その他:
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
【0144】
なかでもヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、メタロセン系化合物が好ましく、さらに好ましくは芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩およびメタロセン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の芳香族化合物が好ましい。これらは光照射に対して量子効率よく、カチオン重合を開始するカチオン種を生じるため好ましいものである。
【0145】
さらには、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩およびメタロセン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の芳香族化合物であり、かつ芳香環に1〜4個の有機基R(Rは同じかまたは異なり、エーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシル基、チオアルキル基またはチオフェノキシ基)が結合している化合物が好ましい。これらの化合物は、硬化性含フッ素ポリマー(I)との相溶性に優れるため好ましい。また、Rの少なくとも1つがチオフェノキシ基である光酸発生剤は、特に吸収波長が比較的長波長であることから好ましい。
【0146】
光酸発生剤(開始剤)の具体例としては、
【化65】

(式中、R1〜R4は同じかまたは異なり、エーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシル基、チオアルキル基またはチオフェノキシ基;X-は対アニオン)で示される化合物があげられる。
【0147】
1〜R4は水素原子でもよいが、少なくとも1つが炭素数1〜5のエーテル結合を含むかまたは含まないアルキル基、ヒドロキシル基、チオアルキル基またはチオフェノキシ基のいずれかであるものが好ましい。
【0148】
-としては、含フッ素アニオンがフッ素ポリマーとの相溶性により優れるため好ましく、具体例としては
【化66】

などがあげられる。
【0149】
また、R1〜R4が部分的にフッ素化されているとフッ素ポリマーとの相溶性がより優れるため好ましい。
【0150】
このような開始剤の具体例としては、
【化67】

(Xは前述と同様)などである。
【0151】
本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物に用いる硬化性含フッ素ポリマー(I)は、前記例示のもののうち、1種のみからなっていてもよく、また、2種以上からなっていてもよい。
【0152】
なお、本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物に用いる硬化性含フッ素ポリマー(I)は、波長200nm〜400nmの範囲での透明性が高いものが好ましく、特に吸収波長域が250〜380nmの範囲で光路長1mm当たりの透過率が30%以上、さらには40%以上であるものが好ましい。
【0153】
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(I)は、これら紫外領域の光に対しても透明性が高いものであり、好ましいものである。
【0154】
本発明の硬化性含フッ素樹脂組成物において、光酸発生剤(II)の添加量は、含フッ素ポリマー(I)中のカチオン重合性基(架橋性環状エーテル構造単位)の含有量、架橋剤の使用の有無や架橋剤の使用量によって、さらには用いる光酸発生剤(開始剤)、光源の波長や、照射エネルギー量(強さと時間など)によって適宜選択されるが、架橋剤を使用しない場合では、含フッ素ポリマー(I)100重量部に対して0.01重量部以上、さらには0.05重量部以上、最も好ましくは0.1重量部以上で、30重量部以下、さらには20重量部以下、最も好ましくは10重量部以下である。
【0155】
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(I)と光酸発生剤(II)とからなる硬化性含フッ素樹脂組成物に、さらにつぎの架橋剤を添加してもよい。
【0156】
架橋剤としては、カチオン重合をする官能基を1つ以上有するものが好ましく、具体的にはオキシラン系、オキセタン系の単量体あるいはオリゴマーなどといったカチオン重合可能な環状エーテル基をもつ単量体あるいはオリゴマーがあげられる。また、ビニルエーテル系単量体などのカチオン重合性炭素−炭素二重結合を1つ以上有する単量体であってもよい。
【0157】
これらのカチオン重合性基を有する架橋剤は、本発明の組成物中の光酸発生剤が光によって発生するカチオンと反応し、本発明の組成物中の含フッ素ポリマー(I)の側鎖の架橋部位である架橋性環状エーテルと共重合することができるものである。
【0158】
架橋剤用の単量体としては、たとえばエポキシ系、脂環式エポキシ系、グリシジル系、オキセタン系などがあげられるが、屈折率を低く維持するためにフルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基を有する単量体が好ましく、たとえば単官能の単量体としては、具体的には一般式:
【化68】

(Rf5は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数1〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基;Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子がX(Xは同じかまたは異なり、H、F、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基)で置換されていてもよい有機基)などの含フッ素オキシラン化合物や一般式(7):
【化69】

(Rf5は前記と同じ、Xは同じかまたは異なり、H、F、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基;Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子が前記Xで置換されていてもよい有機基)で示される含フッ素オキセタン化合物である。なかでも式(7)の単官能の含フッ素オキセタン化合物は、文献、特許等に未記載の新規化合物である。
【0159】
これら単官能の含フッ素オキシラン化合物または含フッ素オキセタン化合物のより具体例としては、
【化70】

(RはHまたはCH3;Rf5aは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数1〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表わされる化合物が好ましい。
【0160】
具体的には、
【化71】

(RはHまたはCH3;nは1〜4の整数)などがあげられる。
【0161】
多官能の単量体としては
【化72】

(Rf6は炭素数1〜40の2〜6価の含フッ素有機基または炭素数1〜100のエーテル結合を有する2価〜6価の含フッ素有機基;nは2〜6の整数;Qは前述と同じ炭素数3〜100の有機基)で示される多官能含フッ素オキシラン化合物、一般式(8):
【化73】

(Rf6は上記と同じ、Xは同じか異なり、H、F、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基、Qは前記と同じ炭素数3〜100の有機基)で示される多官能含フッ素オキセタン化合物があげられ、上記式(8)の多官能含フッ素オキセタン化合物は文献、特許等に未記載の新規化合物である。
【0162】
なかでも
【化74】

(式中、Rf6aは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基;Xは前記と同じ)、または
【化75】

(式中、Rf6bは炭素数1〜40の4価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;Xは前記と同じ)が好ましく、これら2官能、4官能の含フッ素オキセタン化合物も、文献、特許未記載の新規化合物である。
【0163】
より具体的には
【化76】

(RはHまたはCH3;Rf6cは炭素数1〜100の2価以上の含フッ素有機基)が好ましい。
【0164】
具体的には、
【化77】

(nは1〜8の整数)
などがあげられる。
【0165】
他の架橋剤としては、オキシラン系オリゴマーおよびオキセタン系オリゴマーも用いることができ、たとえば式:
【化78】

(R7は炭素数3〜20の2価の有機基;R8およびR9は同じかまたは異なり、HまたはCH3;nは2〜100の整数)で示されるオリゴマーなどがあげられる。
【0166】
なかでも、有機基R7の一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換されているオリゴマーは特に透明性を高く、屈折率を低く維持できる点で好ましい。
【0167】
また、これら例示の単官能、多官能の単量体およびオリゴマーを架橋剤として本発明の組成物に用いる場合、特に含フッ素オキセタン化合物および、含フッ素オキセタン化合物と含フッ素オキシラン化合物の混合物が硬化反応性が良好な点で好ましい。
【0168】
本発明の組成物には要求される特性(硬化反応性や硬度、耐擦傷性、耐磨耗性など)に応じて、アクリル系、メタクリル系、α−フルオロアクリル系の単官能または多官能モノマーを添加してもよい。なかでも、アクリル系、メタクリル系、α−フルオロアクリル系官能基のいずれかまたは2種以上と架橋性環状エーテル構造の両方を有する多官能モノマーが硬化反応性や硬度、耐擦傷性、耐磨耗性などを高くできる点で好ましく、たとえば、
【化79】

(XはH、CH3またはF、X’はHまたはCH3、Rは炭素数1〜10の2価の有機基、R’は炭素数1〜5のアルキル基)
などがあげられる。
【0169】
具体的には
【化80】

(XはH、CH3またはF)
などがあげられる。
【0170】
これらの添加モノマーを添加して用いる場合に、触媒(開始剤)として前記の光カチオン触媒のみを添加して硬化させることが可能であるが、光カチオン触媒と光ラジカル触媒を併用すると硬化反応性を高くすることができる点で好ましい。
【0171】
本発明の組成物には、要求される特性(屈折率や硬化反応性など)に応じて架橋性環状エーテル構造を有さない含フッ素ポリマーを添加してもよい。添加する含フッ素ポリマーは有機溶剤に可溶で非晶性のものが加工成形がしやすく、透明である点で好ましい。特に、有機溶剤に可溶で非晶性でありかつラジカル反応性のC=C結合を有する含フッ素ポリマーは、硬度、耐擦傷性、耐磨耗性などが高い点で好ましい。なかでも、国際公開WO02/18457号パンフレットに記載のラジカル硬化性含フッ素ポリマーは、屈折率が低く、硬化反応性に優れ、硬度、耐擦傷性、耐磨耗性が高い点で特に好ましい。ラジカル反応性の架橋基を有する含フッ素ポリマーを添加する場合、開始剤として前記の光酸発生剤のみを添加して硬化させることが可能であるが、光カチオン触媒と光ラジカル発生剤を併用すると硬化反応性を高くすることができる点で好ましい。
【0172】
本発明の組成物では、前述の化合物のほかに必要に応じて、透明性を低下させない範囲で種々の添加剤を配合してもよい。
【0173】
そうした添加剤としては、たとえばレベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤などがあげられる。
【0174】
本発明の含フッ素樹脂組成物は各種の溶剤に溶解または分散させ、溶液または分散液の形態で用いられる。
【0175】
ここで溶液の調製に使用する溶剤は、含フッ素ポリマー(I)、光酸発生剤(II)、および必要に応じて添加する架橋剤、他の添加剤が均一に溶解または分散するものであれば特に制限はないが、特に含フッ素ポリマー(I)を均一に溶解するものが好ましい。
【0176】
かかる溶剤としては、たとえばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、イソペンチルアルコールなどのアルコール系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類あるいはこれらの2種以上の混合溶剤などがあげられる。
【0177】
またさらに、含フッ素ポリマー(I)の溶解性を向上させるために、必要に応じてフッ素系の溶剤を用いてもよい。
【0178】
フッ素系の溶剤としては、たとえばCH3CCl2F(HCFC−141b)、CF3CF2CHCl2/CClF2CF2CHClF混合物(HCFC−225)、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシ−ノナフルオロブタン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼンなどのほか、
【化81】

などのフッ素系アルコール類;
ベンゾトリフルオライド、パーフルオロベンゼン、パーフルオロ(トリブチルアミン)、ClCF2CFClCF2CFCl2などがあげられる。
【0179】
これらフッ素系溶剤は単独でも、またフッ素系溶剤同士、非フッ素系とフッ素系の1種以上との混合溶剤として用いてもよい。
【0180】
これらのなかでもケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤などの汎用溶剤が、塗装性、塗布の生産性などの面で好ましいものである。
【0181】
また、本発明の組成物は、用途(たとえば反射防止膜、封止部材など)によって硬化物の硬度や低屈折率性、広帯域性や低反射性などの光学物性を高める目的で無機化合物の微粒子を配合することもできる。
【0182】
本発明における無機化合物の形状は、超微粒子やコロイドゾルであってもよい。被膜中に添加する無機化合物の微粒子の量は、被膜重量の50〜75重量%程度でよい。
【0183】
無機微粒子の配合割合が大きくなると硬化物中のフッ素含有成分が希釈されてフッ素含有成分による屈折率低下作用が減弱してくるが、その代わりに、塗膜中にミクロボイドが形成されるようになり、当該ミクロボイドの作用によって塗膜の屈折率が低下して空気の屈折率に近づいていくので、フッ素含有成分とミクロボイドの協調によってより顕著な低屈折率材料が得られる。
【0184】
硬化物中の無機微粒子の配合割合が被膜重量に対して50重量%より少ないと、塗膜中にミクロボイドは通常形成されず、主にフッ素含有成分の作用によって塗膜の屈折率を低くすることができる。
【0185】
硬化物中の無機微粒子の配合割合が被膜重量に対して50重量%を超えると、硬化物の組成にもよるが、塗膜中にミクロボイドが形成されるようになり、フッ素含有成分及びミクロボイド両方の作用により塗膜の屈折率をより顕著に低くすることができる。硬化物中の無機超微粒子の配合割合が被膜重量に対して75重量%を超えると、フッ素含有成分の作用は残ってはいるが、ミクロボイドの屈折率低下作用が相対的に強くなり、顕著な被膜の光学物性は維持されるが、物理的強度が低下していく。
【0186】
無機化合物微粒子やコロイドゾルとしては特に限定されないが、屈折率が1.5以下の化合物が好ましい。具体的にはフッ化マグネシウム(屈折率1.38)、酸化珪素(屈折率1.46)、フッ化アルミニウム(屈折率1.33〜1.39)、フッ化カルシウム(屈折率1.44)、フッ化リチウム(屈折率1.36〜1.37)、フッ化ナトリウム(屈折率1.32〜1.34)、フッ化トリウム(屈折率1.45〜1.50)などの微粒子やコロイドゾルが望ましい。微粒子やコロイドゾルの粒径(体積平均粒径)については、低屈折率材料の透明性を確保するために可視光の波長に比べて充分に小さいことが望ましい。具体的には100nm以下、特に50nm以下が好ましい。
【0187】
微粒子の体積平均粒径は、レーザー回析散乱法を用いた粒度分布測定装置を用いて(たとえば、マイクロトラック社製の粒度分布測定装置9320HRAなど)、エタノールなどの有機溶剤に分散させて室温にて測定する。
【0188】
無機化合物微粒子を使用する際は、組成物中での分散安定性、低屈折率材料中での密着性などを低下させないために、予め有機分散媒中に分散した有機ゾルの形態で使用するのが望ましい。さらに、組成物中において、無機化合物微粒子の分散安定性、低屈折率材料中での密着性などを向上させるために、予め無機微粒子化合物の表面を各種カップリング剤などを用いて修飾することができる。各種カップリング剤としては、たとえば有機置換された珪素化合物;アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンまたはこれらの混合物などの金属アルコキシド;有機酸の塩;配位性化合物と結合した配位化合物などがあげられる。
【0189】
本発明の含フッ素樹脂組成物は、溶剤に対して硬化性含フッ素ポリマー(I)または添加物がディスパージョン状のものでも、溶液状のものでもよいが、均一な薄膜を形成するため、また比較的低温で成膜が可能となる点で、均一な溶液状であることが好ましい。
【0190】
塗装法としては用途に応じた適切な公知の方法を採用することができる。たとえば膜厚をコントロールする必要がある場合は、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法などが採用できる。
【0191】
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(I)と光酸発生剤(II)からなる硬化性樹脂組成物および上記の方法などで基材に塗布したのち乾燥により得られる被膜は、紫外線、電子線または放射線などの活性エネルギー線を照射することによって光硬化させることができる。
【0192】
光硬化すると硬化性含フッ素ポリマー(I)中の架橋性環状エーテルが開裂して開環し、含フッ素ポリマー(I)が直接または架橋剤を介して結合し、硬化する。その結果、樹脂硬度が高くなり、機械的強度が向上したり、耐摩耗性、耐擦傷性が向上したり、さらには硬化前には溶解していた溶剤に対して不溶となるだけでなく、他の数多くの種類の溶剤に対して不溶となる。
【0193】
本発明で用いる硬化性含フッ素ポリマー(I)の硬化反応特性は主に光酸発生剤(II)の種類や添加量、光源の波長や照射エネルギー量によって異なるが、含フッ素ポリマー(I)の側鎖の環状エーテル構造の違いによっても異なる。
【0194】
前述のように硬化性含フッ素ポリマー(I)の側鎖の環状エーテル構造はオキシラン類、オキセタン類、テトラヒドロフラン類、1,3−ジオキソラン類、1,3,5−トリオキサン類などが好ましいが、なかでもポリマーの低屈折率を維持しながら、高い硬化反応性を示すものとして、オキセタン類およびオキシラン類(なかでも脂環式エポキシ基、グリシジル基)が好ましい。
【0195】
特にオキセタン類はオキシラン類よりも重合速度が速く、連鎖移動しにくい。また、架橋反応による水酸基の発生が少ないため、光導波路用材料としてより好ましい。また、側鎖にオキセタン構造を有する硬化性含フッ素ポリマーに、オキシラン構造(エポキシ、グリシジル等)を有するポリマーまたはオリゴマー、モノマーのいずれかを混合するとさらに高速硬化が可能になり、より好ましい。
【0196】
本発明の組成物は、光酸発生剤および必要に応じて使用される硬化剤の働きにより、通常の光硬化条件によって容易に硬化して、透明性や機械的物性に優れた硬化物を得ることができる。本発明の硬化物の好ましい硬化率、すなわち、官能基の好ましい反応率は、30〜100%、より好ましくは50〜100%、さらには80〜100%であり、近赤外スペクトルのC−O伸縮(2100〜2300nm)の吸収強度から求めることができる。これらの反応率の硬化物は、高Tg、耐熱性、耐溶剤性に優れたものである。
【0197】
これらの反応率を達成する為の条件として、前述の光酸発生剤を用いた場合には、照射する光の波長が200〜400nmであることが、光酸発生剤の吸収波長にあたり好ましく、光の照射量は0.1J/cm2以上であることが十分な反応率を与える点で好ましく、10J/cm2以下であると膜に変色等の劣化を与えない点で好ましい。硬化する時の温度は特に限定されないが、変色等を防ぐ目的で通常150℃以下であり、光照射から反応完結までの時間を短くする目的で、20℃以上、好ましくは30℃以上、さらには40℃以上であることが好ましい。
【0198】
本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物は、光導波路用材料などの光デバイス用光学材料や光デバイスの加工に必要な封止部材用材料として有用であり、また、反射防止膜などの表示デバイス用の光学材料としても有用である。そのほか、電子半導体用の封止部材用材料、耐水耐湿性接着剤、光学部品や素子用の接着剤としても使用できる。
【0199】
本発明の第2は、式(1)で示される硬化性含フッ素ポリマー(I)を含む光デバイス用光学材料に関する。
【0200】
かかる光学材料は、硬化性含フッ素ポリマー(I)を含んでいればよいが、さらには光酸発生剤(II)を配合した本発明の第1の発明である光硬化性含フッ素樹脂組成物の形態とすることもできる。
【0201】
光デバイス用光学材料には、耐吸水性、耐吸湿性、耐熱性に優れ、成形が容易であることに加え透明性が必要とされる。光デバイスとしては、光導波路、OADM、光スイッチ、光フィルター、光コネクター、合分波器などの機能素子および光配線などの光実装が知られている。さらに種々の機能性化合物(非線形光学材料、蛍光発光性の機能性色素、フォトリフラクティブ材料など)を含有させて、モジュレータ、波長変換素子、光増幅器などの光デバイス用の機能素子として用いるのにも適している。また、前述のように封止部材はそれ単独では機能素子とはならないが、光デバイスを設計加工するうえで必要な部材である。本発明の第2では、これらを合わせて光デバイスと称する。
【0202】
本発明の光学材料は硬化性含フッ素ポリマー(I)を硬化させることなくそのまま用いて光デバイス部材とすることも可能ではあるが、機械的強度や耐熱性、耐溶剤性を向上させる点から、硬化(架橋)させて硬化物の形で光デバイス用部材とすることが好ましい。
【0203】
含フッ素ポリマー(I)を単独で使用する場合は上述の溶剤に溶解または分散させて溶液または分散液の形態とし、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法などの方法で膜やフィルムとし、ついで活性エネルギー線の照射や熱処理などの方法で含フッ素ポリマー(I)を硬化させればよい。
【0204】
また光デバイス用光学材料を光酸発生剤(II)を配合した前記光硬化性含フッ素樹脂組成物の形態とするときは、硬化物を高速(短時間)で得ることができるほか、基板として耐熱性に劣る樹脂を使用できる点で優れている。
【0205】
前記架橋性環状エーテル構造を有する含フッ素ポリマー(I)を用いる光学材料は、架橋性環状エーテル構造の硬化反応速度がたとえば前記国際公開WO02/18457号パンフレットに記載されているエチレン性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素ポリマーの硬化(架橋)反応と同程度またはそれ以上であり、しかも酸素を含む雰囲気下でも反応阻害が生じにくい点で優れており、さらに硬化反応による収縮が少なく、寸法安定性にも優れている。
【0206】
つぎに光デバイスが光導波路である場合について説明する。
【0207】
光導波路用光学材料としては、前述の光デバイス用光学材料が採用でき、硬化性含フッ素ポリマー(I)、光硬化性含フッ素樹脂組成物に関する記述を基本的にはそのまま光導波路用光学材料に適用できる。そこで、以下、光導波路用として特記しておくべき事項を中心に説明する。
【0208】
本発明の光導波路用材料において、光酸発生剤(II)を添加する場合の添加量は、含フッ素ポリマー(I)中の架橋性環状エーテル構造の含有量、架橋剤の使用の有無や架橋剤の使用量によって、さらには用いる光酸発生剤、活性エネルギー線の種類や、照射エネルギー量(強さと時間など)によって適宜選択されるが架橋剤を使用しない場合では、含フッ素ポリマー(I)100重量部に対して0.01重量部以上、さらには0.05重量部以上、最も好ましくは0.1重量部以上で、30重量部以下、さらには20重量部以下、最も好ましくは10重量部以下である。
【0209】
詳しくは、含フッ素ポリマー(I)中に含まれる架橋性環状エーテル構造の含有量(モル数)に対し、0.05モル%以上、好ましくは0.1モル%以上、最も好ましくは0.5モル%以上で、50モル%以下、好ましくは20モル%以下、最も好ましくは10モル%以下である。
【0210】
架橋剤を使用する場合は、含フッ素ポリマー(I)中に含まれる架橋性環状エーテル構造の含有量(モル数)と架橋剤の架橋性環状エーテル構造のモル数の合計モル数に対して0.05モル%以上、好ましくは0.1モル%以上、最も好ましくは0.5モル%以上で、50モル%以下、好ましくは20モル%以下、最も好ましくは10モル%以下である。
【0211】
本発明の材料は、前述の化合物のほかに、必要に応じて、近赤外透明性を低下させない範囲で種々の添加剤を配合してもよい。
【0212】
そうした添加剤としては、たとえばレベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤などがあげられる。
【0213】
本発明の光導波路用材料は、前述の溶剤に溶解または分散させて光導波路用の各種部材の製造に供される。
【0214】
本発明の光導波路用部材は、含フッ素ポリマー(I)を単独で、または前記含フッ素樹脂組成物の形態で光硬化してなる硬化物からなる。
【0215】
この硬化物は、1290〜1320nmの波長範囲および1530〜1570nmの波長範囲での吸光度係数の最大値で1cm-1以下、好ましくは0.5cm-1以下のものが好ましい。
【0216】
またこの硬化物は、上記波長範囲において、光の損失がゼロであるのが理想であるが、5db/cm以下であることが好ましく、特にコア部に使用する場合、2db/cm以下、より好ましくは1db/cm以下、特に0.7db/cm以下であることが好ましい。
【0217】
光導波路用部材は、光導波路型素子を構成する部材であり、基板上に形成される。ここで、光導波路型素子とは、光機能素子間を光導波路で接続したもので、光導波路部はコア部とクラッド部から構成される。一方、光機能素子とは光通信信号に対し、増幅、波長変換、光合分波、波長選択等の作用を示す素子で、形態も様々ではあるが、光合分波や光増幅のように導波路型の機能素子がある。その場合は、機能素子もコア部とクラッド部より形成されている。本発明の部材はいずれのコア部、クラッド部にも用いることが可能で、コア部のみ、またはクラッド部のみに本発明の部材を用いてもよい。また、種々の機能性化合物、たとえば非線形光学材料や蛍光発光性の機能性有機色素、フォトリフラクティブ材料などを本発明の部材に含有させて、導波路型の機能素子のコア材として用いることも可能である。さらに、コア部とクラッド部との両者が含フッ素ポリマー(I)を硬化させたものであることがより好ましい。
【0218】
光導波路型素子がコア部とクラッド部とを有する場合、コア部の屈折率はクラッド部のそれより高くなければならないが、コア部とクラッド部との屈折率の差は、0.003以上であることが好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。屈折率の差は、要求特性により異なるが、通常1以下である。本発明の材料および部材は幅広く屈折率の制御が可能なため、材料の選択範囲は広い。
【0219】
光導波路素子において、コア部の幅は1〜200μmが好ましく、さらに好ましくは5〜50μmである。またコア部の高さは、5〜50μmが好ましい。コア部の幅および高さの精度は、平均値の5%以下が好ましく、さらに好ましくは1%以下である。
【0220】
図1に、典型的な光導波路型素子の構造を概略断面図で例示する。1は基板、2はコア部、4および5はクラッド部である。かかる光導波路型素子は、光機能素子間を接続するために使用され、一方の光機能素子の端末から送出された光は、光導波路型素子のコア部2内を、例えばコア部2とクラッド部4、5との界面で全反射を繰り返しながら、他方の光機能素子端末へと伝播される。光導波路型素子の形式は、平面型、ストリップ型、リッジ型、埋込み型等の適宜の形式をとることができる。
【0221】
光導波路型素子の基板材料は、特に限定されるものではなく、金属、半導体材料、セラミック、ガラス、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の適宜の材料を使用することができる。
【0222】
本発明の材料を用いる光導波路型素子の製造工程の一例を図2に示す。光導波路型素子は、フォトリソグラフィー技術を利用して製造される。まず図2(a)に示すように、予め基板1上にクラッド部4を形成し、コア部を形成する本発明の光導波路用材料の膜3を形成する。これらのクラッド部4、コア部を形成する光導波路用材料の膜の形成に際しては、それらの材料溶液を回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段で塗布することが好ましく、特に回転塗布が好ましい。前記各材料溶液は、好ましくは、各膜の厚さに応じた適当濃度で溶媒に溶解したのち、たとえば孔径0.2μm程度のフィルターで濾過して調製される。
【0223】
前記材料溶液の好ましい濃度は、塗布方法により異なるが、コア部を形成する樹脂については、一般に溶剤1リットルに対して5〜1000g、特に好ましくは30〜500gであり、クラッド部材料については、一般に1〜1000g、特に好ましくは30〜500gである。また放射線でのリソグラフィー技術を適用するため必要に応じて配合される放射線感応性材料の好ましい濃度は、一般に溶剤1リットルに対して100〜500g、特に好ましくは300〜400gである。
【0224】
ここで溶液の調製に使用する溶剤は、前記したものが好適である。
【0225】
ついで、図2(b)に示すように、含フッ素ポリマーに対して、所定パターン形状のマスク6を介して活性エネルギー線7を照射する。その後、必要に応じて予備焼成を行なう。光硬化すると本発明の光導波路用材料中の含フッ素ポリマー(I)の架橋性環状エーテル構造が分子間で重合し、ポリマー中の架橋性環状エーテル構造が減少または消失する。その結果、樹脂硬度が高くなり、機械的強度が向上したり、耐熱性が向上したり、さらには硬化前には溶解していた溶剤に対して不溶となるだけでなく、他の数多くの種類の溶剤に対して不溶となる。すなわち、フォトレジスト材料として機能する。ついで、未硬化の含フッ素ポリマーを適当な溶剤で溶解、留去することで、図2(c)に示すように、所定パターン形状のコア部2を形成する。光導波路型素子は、以上のようにして形成されたコア部2のみを有する形態でそのまま使用することもできるが、コア部2の形成後、図2(d)に示すように、さらにクラッド部5を形成することが好ましい。このクラッド部5は、その材料溶液を回転塗布、流延塗布、ロール塗布等により塗布することにより形成することが好ましく、特に回転塗布が好ましい。またクラッド部5の材料溶液も、所定材料を溶媒に溶解後、たとえば孔径0.2μm程度のフィルターで濾過して調製することが好ましい。
【0226】
パターン形成法としては、このほか凸版印刷、平版印刷(オフセット印刷)、凹版印刷(グラビア印刷)、孔版印刷(スクリーン印刷)、電子写真印刷なども有用である。
【0227】
また、クラッド部5を本発明の光導波路用材料から構成する場合、これらの樹脂溶液の調製に使用する溶媒としては、たとえば前記コア部2あるいはクラッド部4の場合についてあげた溶媒があげられる。
【0228】
つぎに封止部材用材料および該材料を硬化して得られる硬化物を含む光デバイスについて説明する。
【0229】
封止部材用光学材料としては、前述の光デバイス用光学材料が採用でき、硬化性含フッ素ポリマー(I)および光硬化性含フッ素樹脂組成物に関する記述を基本的にはそのまま封止部材用光学材料に適用できる。そこで、以下、封止部材用材料の製造法、加工法および使用形態を中心に説明する。
【0230】
本発明の封止部材用材料は、たとえば硬化性含フッ素ポリマー(I)、必要に応じて光酸化剤(II)、さらに硬化促進剤、染料、変性剤、劣化防止剤、離型剤などの添加剤を配合し、ドライブレンド法、さらに溶融ブレンド法などを組み合わせて常法により混合・混練したのち粉砕し、必要に応じて打錠することにより製造することができる。
【0231】
封止部材用材料による封止は常法により行なうことができ、トランスファー成形法などの公知の成形法により封止すべき箇所に充填し成形することにより実施できる。
【0232】
本発明の材料で封止された光デバイスは、封止部分が含フッ素ポリマーに由来する優れた防湿性、耐湿性に加え、含フッ素ポリマーの分子構造に由来する自由体積量に基づく硬化収縮が少ないため、極めて優れた防湿、耐湿信頼性を有している。
【0233】
また、本発明の材料は紫外から近赤外の広範囲にわたって透明性に優れており、光学用途での封止部材に特に有用である。
【0234】
本発明の封止部材には、紫外光や近赤外光に対する透明性をあまり必要としない用途においては、1分子中に2個以上のオキシラン基を持つ樹脂状物質(エポキシ樹脂)を添加すると添加する種類や量に応じて必要な剛直性や柔軟性を与え、さらに粘度やTgのコントロールができる点で好ましい。
【0235】
本発明の組成物は、用途(たとえば封止部材など)によって、硬化物の屈折率の制御を自由に行なう目的で、エポキシ樹脂を配合することもできる。
【0236】
このエポキシ樹脂には
(a)グリシジルエーテルタイプ
(b)グリシジルアミンタイプ
(c)グリシジルエステルタイプ
(d)オレフィン酸化(脂環式)タイプ
がある。
【0237】
(a)〜(c)に属するグリシジルタイプはエピクロルヒドリンと活性水素化合物から得られるエポキシ樹脂であり、一般的にエポキシ樹脂といえば通常このタイプを指す。市販のエポキシ樹脂の9割以上は(a)グリシジルエーテルタイプで占められている。
【0238】
グリシジルエーテルタイプの基本構造をつぎに示す。このタイプは
[A]2官能繰り返し構造型と
[B]多官能繰り返し構造型と
[C]多官能単量体型
の3種類に大別できる。
【0239】
【化82】

【0240】
最も一般的なエポキシ樹脂であるビスフェノールA型液状エポキシ樹脂は[A]に属し、半導体封止材用途で主流のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は[B]に属する。
【0241】
本発明における封止部材の使用形態としては、たとえば発光ダイオード(LED)、EL素子、非線形光学素子などの発光素子や受光素子などの光機能素子のパッケージ(封入)、表面実装などが例示できる。また、深紫外線顕微鏡のレンズなどの光学部材用封止材(または充填材)などもあげられる。封止された光素子は種々の場所に使用されるが、非限定的な例示としては、ハイマウントストップランプやメーターパネル、携帯電話のバックライト、各種電気製品のリモートコントロール装置の光源などの発光素子;カメラのオートフォーカス、CD/DVD用光ピックアップ用受光素子などがあげられる。
【0242】
本発明はこうした光機能素子を本発明の封止部材で封止した光デバイスにも関する。
【0243】
つぎに本発明の第3は表示デバイス用光学材料に関する。
【0244】
表示デバイス用光学材料には、主に可視光での透明性、屈折率の制御性が求められるが、特に反射防止膜などの用途では、低屈折率とすることがさらに好ましく、加えて高硬度、耐磨耗性、耐擦傷性、防汚性が求められる。さらに耐吸水性、耐吸湿性、耐熱性に優れ、成形が容易であることも要求される。
【0245】
表示デバイスとしては、反射防止膜などが知られている。さらに種々の機能性化合物(蛍光発光性の機能性色素、液晶成分など)を含有させて、各種の表示デバイスとして用いるのにも適している。本発明の第3では、これらを合わせて表示デバイスと称する。
【0246】
本発明の表示デバイス用光学材料は硬化性含フッ素ポリマー(I)を硬化させることなくそのまま用いて表示デバイス部材とすることも可能ではあるが、機械的強度や耐溶剤性、耐薬品性を向上させる点から、硬化(架橋)させて硬化物の形で表示デバイス用部材とすることが好ましい。
【0247】
含フッ素ポリマー(I)を単独で使用する場合は上述の溶剤に溶解または分散させて溶液または分散液の形態とし、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法などの方法で膜やフィルムとし、ついで活性エネルギー線の照射や熱処理などの方法で含フッ素ポリマー(I)を硬化させればよい。
【0248】
また表示デバイス用光学材料を光酸発生剤(II)を配合した前記光硬化性含フッ素樹脂組成物の形態とするときは、硬化物を高速で得ることができるほか、硬化物の機械的強度が向上する点で優れている。
【0249】
前記架橋性環状エーテル構造を有する含フッ素ポリマー(I)を用いる光学材料は、架橋性環状エーテル構造の硬化反応速度がたとえば前記国際公開WO02/18457号パンフレットに記載されているエチレン性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素ポリマーの硬化(架橋)反応と同程度またはそれ以上であり、しかも酸素を含む雰囲気下でも反応阻害が生じにくい点で優れており、さらに硬化反応による収縮が少なく、寸法安定性にも優れている。
【0250】
つぎに表示デバイスが反射防止膜である場合について説明する。
【0251】
反射防止膜用光学材料としては、前述の表示デバイス用光学材料が採用でき、硬化性含フッ素ポリマー(I)、光硬化性含フッ素樹脂組成物に関する記述を基本的にはそのまま反射防止膜用光学材料に適用できる。そこで、以下、反射防止膜用として特記しておくべき事項を中心に説明する。
【0252】
本発明の反射防止膜用材料は、含フッ素ポリマー(I)自体が硬化(架橋)可能な架橋性環状エーテル構造を有し、かつそれ自体が低屈折率なものを用いることで、透明基材に所定の膜厚で塗布し、硬化させることによって反射防止効果と、高硬度、耐摩耗性、耐擦傷性を兼ね備えた反射防止膜が得られるという本発明者らの知見に基づき完成されたものである。かかる含フッ素ポリマー(I)を使用するときは、さらに塗装性(平滑性、膜厚均一性)も良好で、かつ硬化後の被膜に低分子量の単量体成分なども残留しにくく、表面のタック感もなく塗膜性能に優れたものとなる。
【0253】
透明な樹脂基材に反射防止膜を施す場合、高い温度をかけることは、基材の熱劣化、熱変形をおこしやすいため好ましくなく、光硬化による硬化が好ましい。この点、本発明に用いる含フッ素ポリマー(I)は光硬化(たとえば光重合)可能な架橋性環状エーテル構造である。
【0254】
含フッ素ポリマー(I)を光硬化して、反射防止膜を得る方法としては、前記の含フッ素ポリマー(I)単独の溶液または分散液、または前記光硬化性含フッ素樹脂組成物からなるコーティング用組成物を調製し、基材に塗布し、乾燥等により被膜(未硬化)を形成したのち、紫外線、電子線、放射線などの活性エネルギー線を照射することによって硬化被膜を得る方法が採用される。光照射は、空気中、窒素などの不活性ガス気流下のいずれの条件下で行なってもよい。通常、酸素の存在が硬化反応を阻害することが多く、不活性ガス気流下で光照射する方法が硬化反応性が良好な点で好ましいとされている。しかし、架橋性環状エーテル構造を有する含フッ素ポリマー(I)はそうした酸素による硬化反応阻害が発生しにくいものであり、したがって空気中においても高い硬化反応速度が達成できる。
【0255】
本発明の反射防止膜に用いる含フッ素ポリマー(I)は、前記した具体的例示の中から、硬化性含フッ素ポリマー自体の透明性が高く、非晶性でかつ屈折率が1.42以下のもの、好ましくは1.40以下のもの、さらに好ましくは1.38以下のもので、1.25以上のものが選ばれる。さらにそのなかから、目標とする硬さ、基材の種類、塗装方法、条件、膜厚、均一性、基材との密着性などに応じて適宜選択して用いることが好ましい。
【0256】
本発明の反射防止膜用材料として光酸発生剤(II)を含む光硬化性含フッ素樹脂組成物を使用する場合、用いる光酸発生剤(開始剤)(II)は、前述の硬化性含フッ素樹脂組成物で例示したものと同じものが利用でき、含フッ素ポリマー(I)中の架橋性環状エーテル構造の種類(反応性、含有量)、硬化条件、塗料のポットライフなどを考慮して種類、使用量など、前述の範囲の中から適宜選択できる。
【0257】
溶剤は、前述の光硬化性含フッ素樹脂組成物であげたものと同じものが利用でき、目標とする塗装性、成膜性、膜厚の均一性、塗装の生産性に応じて種類、使用量など前述の例示のなかから適宜選択されるが、なかでも透明樹脂基材を溶解させたり、膨潤させたりする溶剤は好ましくない。
【0258】
特にケトン系、酢酸エステル系、アルコール系および芳香族炭化水素系溶剤から選ばれるものが好ましい。
【0259】
本発明の反射防止膜において、当然ではあるが、硬化性含フッ素ポリマー(I)と共に、前述のものと同様の架橋剤を併用してもよい。架橋剤を併用することにより、硬化被膜の硬度をより高くすることができる。
【0260】
使用する架橋剤の種類や量は、前述の光硬化性含フッ素樹脂組成物に関して記載した架橋剤が同様に好ましく使用できる。
【0261】
これらの反射防止膜用材料を塗布後、含フッ素ポリマー(I)を硬化させたのちの硬化物(被膜)は、屈折率が理想的としては1.22〜1.30であるが、1.49以下であれば反射防止の効果が得られ、好ましくは1.45以下であり、さらに1.40以下であることが好ましい。最も好ましくは1.38以下であり、低い方が反射防止効果としてより有利である。
【0262】
各種基材に施される反射防止膜の好ましい膜厚は、膜の屈折率や下地の屈折率によって変わるが0.03μm以上、好ましくは0.07μm以上、より好ましくは0.08μm以上で、0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.12μm以下である。膜厚が低すぎると可視光における光干渉による反射率の低減化が不充分となり、高すぎると反射率はほぼ空気と膜の界面の反射のみに依存するようになるので、可視光における光干渉による反射率の低減化が不充分となる傾向がある。なかでも適切な膜厚は、反射防止膜を施したのちの物品の反射率の最小値を示す波長が通常420nm以上、好ましくは520nm以上で、720nm以下、好ましくは620nm以下となるように膜厚を設定するのが好ましい。
【0263】
本発明の反射防止膜を施す物品、すなわち基材の種類は特に限定されない。たとえば、ガラス、石材、コンクリート、タイルなどの無機材料;塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの合成樹脂;鉄、アルミ、銅などの金属;木、紙、印刷物、印画紙、絵画などをあげることができる。また、物品の特定部分以外の部分に反射防止膜を施し、その特定部分の形状を反射光によって浮かび上がらせることにより、物品の装飾性を向上することもできる。
【0264】
基材の中でもアクリル系樹脂、ポリカーボネート、セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン樹脂などの透明樹脂基材に好ましく施され、効果的に反射防止効果を発揮できる。
【0265】
本発明は、以下のような形態の物品に適用した場合に効果的である。
【0266】
プリズム、レンズシート、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、背面投写型ディスプレイのスクリーン、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品;
ショーウインドーのガラス、ショーケースのガラス、広告用カバー、フォトスタンド用のカバーなどに代表される透明な保護版;
CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、背面投写型ディスプレイなどの保護板;
光磁気ディスク、CD・CD−R・CD−RW・LD・DVDなどの光ディスク、PDなどの相転移型光ディスクなどに代表される光記録媒体;
フォトレジスト、フォトマスク、ペリクル、レチクルなどの半導体製造時のフォトリソグラフィー関連部材;
ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱電灯などの発光体の保護カバー;
上記物品に貼り付けるためのシートまたはフィルム。
【0267】
本発明の反射防止膜の形成は、前記反射防止膜用材料を基材に直接塗布し、光照射し、0.1μm程度の厚さの硬化被膜としてもよく、また、基材との間に1つまたは複数の層をアンダーコートとして形成し、その上にトップコートとして反射防止膜を形成してもよい。
【0268】
アンダーコートの効果は大きく分けて3つあり、トップコートの耐擦傷性を高めたり、基材を保護したり、基材よりも高屈折率の層を加えることにより反射防止効果を高めることにある。トップコートの耐擦傷性を高めるためには特開平7−168005号公報に例示されるような自己修復性のアンダーコートを用いればよい。また、基材の保護のためにはハードコートと一般に呼ばれる塗料を用いればよい。ハードコート用には硬化型のアクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコンアルコキシド系化合物の硬化物、金属アルコキシド系化合物の硬化物などが例示できる。これらすべてに熱硬化法が適用できる。アクリル樹脂およびエポキシ樹脂については、光(紫外線)硬化法が生産性の面で好ましい。
【0269】
CRTやプラズマディスプレイなどでは、装置の特性として表面に静電気がたまりやすい。そこで、上記のようなアンダーコート層および/またはトップコート層に導電性を付与する添加剤を混ぜることが好ましい。添加剤としては、−COO−、−NH2、−NH3+、−NR111213(ここで、R11、R12およびR13は、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基など)、−SO3-などのイオン性基を含むポリマー、シリコーン化合物、無機電解質(たとえばNaF、CaF2など)などがあげられる。
【0270】
また、ほこりの付着を防止する目的で、反射防止膜のアンダーコート層および/またはトップコート層に帯電防止剤を添加することが好ましい。添加剤としては上記の導電性を付与する添加剤に加え、金属酸化物の微粒子、フルオロアルコキシシラン、界面活性剤(アニオン系、カチオン系、両性系、ノニオン系など)などがあげられる。
【0271】
アンダーコート層に添加する帯電防止剤としては、効果が永続すること、効果が湿度の影響を受けにくいこと、帯電防止効果が高いこと、透明性、屈折率が高いために基材の屈折率を調整できるので反射防止効果を高めることができることなどの理由から、金属酸化物の微粒子、具体的にはアンチモンをドープした酸化錫(ATO)、インジウムを含む酸化錫(ITO)が好ましい。透明性の面ではATOが好ましく、帯電防止効果もしくは導電性の面ではITOが好ましい。また、帯電防止効果が必要ない場合でも、容易に屈折率を調節できるため、これらの添加剤を用いて反射防止効果を高めることもできる。
【0272】
また、ATO、ITOが光を散乱・吸収しやすいので、光の透過を妨げないためには、アンダーコート層の厚さはサブミクロン程度であることが好ましい。反射防止効果の波長依存性を小さくし、全波長にわたって反射防止効果を高めるためには、含フッ素ポリマー硬化物の屈折率にもよるが、膜厚は0.05〜0.3μmが好ましい。最適な屈折率も、同様に含フッ素ポリマーの屈折率に依存するが、1.55〜1.95が好ましい。
【0273】
含フッ素ポリマーの硬化被膜に帯電防止性を与えるのであれば、屈折率が高くなりにくく反射防止効果に悪影響が少ないという面から、アルコキシシラン系の帯電防止剤が好ましい。フルオロアルコキシシランは屈折率が高くなる作用がさらに小さく、加えて表面特性が改良される効果も期待できるので、さらに好ましい。
【0274】
また、上記したような膜の一部を改質するという方法とは全く異なった方法として、特開平8−142280号公報に示されるように反射防止能に悪影響を及ぼさない膜厚で界面活性剤の層を形成する方法がある。本発明に適用した場合、ほこり付着防止など、防汚性を向上するという効果がある。ハードコート層を形成した場合も同様の効果がある。
【0275】
ハードコート層は、アルコキシシランやポリシラザンの溶液を塗布後、加熱・硬化させる方法により形成することができる。また、紫外線硬化型アクリル塗料やメラミン架橋の硬化膜も使用可能である。
【0276】
またさらに、艶消し剤として微粒子を混合したコーティング剤を下地に施したもの、すなわちアンチグレア(AG)処理した基材フィルム(たとえばTACフィルムなど)上に、本発明の反射防止膜を施してもよい。それによって、低グロス、低反射の反射防止フィルムが得られ、LCDなどに用いることにより、より一層鮮明な画像が得られるので好ましい。
【0277】
本発明の反射防止膜は、フッ素含有率も高く、表面接触角も低く、それ自体、撥水性、非粘着性、防汚性を有しており、反射防止と防汚層を兼ね備えることができる。
【0278】
さらに反射防止層に防汚性を付与するために、含フッ素ポリエーテル化合物を添加することができる。その場合、力学特性の劣化や、含フッ素ポリマーとの相分離による白濁を考慮して添加量を決める必要がある。好ましくは、直鎖状のパーフルオロポリエーテル化合物であり、さらに、末端をカルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシシラン基、オキシラン基、オキセタン基、(メタ)アクリロイル基、α−フルオロアクリロイル基、ビニルエーテル基としておけば、被膜中に固定されやすくなる。含フッ素ポリエーテルのエーテル結合の繰り返し単位は7個以上が好ましく、さらには10個以上であることが好ましい。また、同様のポリエーテル化合物を予め形成した反射防止膜表面(硬化前または硬化後の被膜)に塗布しても同様の効果がある。
【0279】
硬化性含フッ素ポリマーの薄膜を形成する方法として、硬化性含フッ素ポリマーのディスパージョンを塗り、乾燥し、そののち必要に応じて焼成して造膜する方法と、溶液(均一溶液)を塗布し、乾燥する方法がある。薄膜の形成が容易であることから、溶液塗布が好ましい。その際、膜厚を充分にコントロールできるのであれば、公知の塗装法を採用することができる。たとえばロールコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法を採用することができる。このような方法の中から、生産性、膜厚コントロール性、歩留まりなどのバランスを考慮して、最適な塗装法を決定する。フィルム、シートなどに反射防止膜を形成したのち、これを基材に貼り付けてもよい。
【0280】
本発明においても、反射防止膜の基材への密着性を高めるために、シラン化合物を添加してもよい。被膜中に添加するシラン化合物の量は0.1〜10重量%程度でよい。また、基材表面をシラン化合物で処理しておくことも、密着性の改善のために効果がある。本発明においてはいずれの場合でも、シラン化合物は硬化膜の屈折率をほとんど増加させないため、反射防止効果への悪影響は非常に少ない。
【0281】
つぎに本発明を実施例などに基づいて具体的に説明するが、本発明はかかる実施例などに限定されるものではない。
【0282】
なお、以下の合成例および実施例、比較例において物性の評価に使用した装置および測定条件は以下のとおりである。
【0283】
(1)NMR:BRUKER社製
1H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:300MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
(2)IR分析:PERKIN ELMER社製フーリエ変換赤外分光光度計1760Xで室温にて測定。
【0284】
合成例1(グリシジル基を有する含フッ素アリルエーテルの合成)
撹拌装置および温度計を備えた500mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)200gと水2ml、エピクロロヒドリン114gを入れ、60℃に加熱した。この溶液にNaOHをペレットで10回に分けて加えた後、反応液を80℃まで加熱し6時間反応させた。
【0285】
反応後の溶液に塩酸を入れ中和し、この溶液を分液ロートに入れ、水洗、飽和食塩水洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥しついで溶液を濾過により分離した。ろ液からエバポレータによって溶媒を留去した。この反応液を蒸留した結果、蒸留物が139g得られた。沸点は48〜55℃(0.04mmHg)であった。
【0286】
得られた生成物を1H−NMR分析、19F−NMR分析およびIR分析し、つぎの構造のグリシジル基を有する含フッ素アリルエーテル(m1)であることを確認した。
【0287】
【化83】

1H−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中):
5.15〜4.90(2H,m)、4.05〜3.85(2H,m)、3.85〜3.75(1H,m)、3.38〜3.25(1H,m)、2.98〜2.92(1H,m)、2.68〜2.57(1H,m)、2.45〜2.38(1H,m)
19F−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中、R−11内部標準):
−72.6〜−73.0(2F,m)、−79.4〜−81.6(8F,m)、−124.0〜−124.4(1F,m)、−132.8〜−133.2(1F,m)、−145.1〜−145.6(1F,m)
IR分析データ(cm-1):
1695(υC=C)
【0288】
実施例1(オキセタニル基を有する含フッ素アリルエーテルの合成)
撹拌装置と温度計と滴下ロートを備えた500mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)150gと水15g、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)2.9g、3−ブロモメチル−3−メチルオキセタン(BrMMO)72.8gを入れ、75℃に加熱した。この溶液に滴下ロートから45重量%のNaOH溶液36gをゆっくり滴下した。滴下終了後、反応液を90℃まで加熱し5時間反応させた。
【0289】
反応後の溶液を塩酸で中和した後、分液ロートに入れ、水洗、飽和食塩水洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥しついで溶液を濾過により分離した。ろ液からエバポレータによって溶媒を留去した。この反応液を蒸留した結果、蒸留物が133g得られた。沸点は62〜64℃(0.2mmHg)であった。
【0290】
得られた生成物を1H−NMR分析、19F−NMR分析およびIR分析し、つぎの構造のオキセタニル基を有する含フッ素アリルエーテル(m2)であることを確認した。
【0291】
【化84】

1H−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中):
5.26〜5.05(2H,m)、4.38(2H,d)、4.25(2H,d)、4.08〜3.96(2H,m)、3.60〜3.58(2H,m)、1.23(3H,s)
19F−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中、R−11内部標準):
−72.4〜−73.2(2F,m)、−79.8〜−81.3(8F,m)、−124.1〜−124.3(1F,m)、−132.3〜−133.4(1F,m)、−145.5〜−145.2(1F,m)
IR分析データ(cm-1):
1695(υC=C)
【0292】
合成例2(グリシジル基を有する含フッ素アリルエーテルポリマーの合成)
撹拌装置と温度計を備えた50mlのガラス製四ツ口フラスコに合成例1で合成したグリシジル基含有含フッ素アリルエーテル(m1)10.0gとHFC−365(CF3CH2CF2CH3)8gの溶液に
【化85】

の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を3.8g入れ、充分に窒素置換を行なった後、窒素気流下20℃で9時間撹拌を行ない、高粘度の溶液を得た。
【0293】
得られた溶液に重曹水を注いで中和した後、ジエチルエーテルに溶解させたものを分液漏斗に入れ、水洗、飽和塩水洗浄を行なった。この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。この溶液を濃縮し、ヘキサン溶液に注いで再沈殿を行ない、溶液部分を分離して無色透明なポリマーを得た。このポリマーを再びジエチルエーテルの溶液とし、22.6重量%の溶液(19.7g)とした。
【0294】
このポリマーを19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記グリシジル基含有含フッ素アリルエーテル(m1)の構造単位のみからなり側鎖末端にグリシジル基を有する含フッ素ポリマーであった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は13000、重量平均分子量は35000であった。
【0295】
実施例2(オキセタニル基を有する含フッ素アリルエーテルポリマーの合成)
撹拌装置と温度計を備えた50mlのガラス製四ツ口フラスコに、実施例1で合成したオキセタニル基含有含フッ素アリルエーテル(m2)5.0gとHCFC−141b(CH3CCl2F)1.25gと
【化86】

の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を1.92g入れ、充分に窒素置換を行なった後、窒素気流下20℃で21時間撹拌を行ない、高粘度の溶液を得た。
【0296】
得られた溶液に重曹水を注いで中和した後、ジエチルエーテルに溶解させたものを分液漏斗に入れ、水洗、飽和塩水洗浄を行なった。この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。この溶液を濃縮し、ヘキサン溶液に注いで再沈殿を行ない、溶液部分を分離して無色透明なポリマーを得た。このポリマーを再びジエチルエーテルの溶液とし、18.7重量%の溶液(7.9g)とした。
【0297】
このポリマーを19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記オキセタニル基含有含フッ素アリルエーテル(m2)の構造単位のみからなり側鎖末端にオキセタニル基を有する含フッ素ポリマーであった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は3800、重量平均分子量は5600であった。
【0298】
合成例3(グリシジル基を有する含フッ素アリルエーテルとテトラフルオロエチレンの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージおよび温度計を備えた100ml内容量のステンレススチール製オートクレーブに、合成例1で合成したグリシジル基含有含フッ素アリルエーテル(m1)10.0gとHCFC−141b8.0gとジノルマルプロピルパーオキシカーボネート(NPP)の50重量%メタノール溶液0.10gを入れ、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら系内をチッ素ガスで充分置換した。ついでバルブからテトラフルオロエチレン(TFE)を2.9g仕込み、40℃にて振とうさせながら重合を行なった。
【0299】
18時間経過後、未反応モノマーを放出し、得られたポリマーを取り出し、重曹水で中和した。その後、ジエチルエーテルで抽出し、水洗、飽和塩水洗浄を行なった。この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。この溶液を濃縮し、ヘキサン溶液に注いで再沈殿を行ない、溶液部分を分離して無色透明なポリマーを得た。このポリマーを再びジエチルエーテルの溶液とし、44.7重量%の溶液(17.1g)とした。
【0300】
このポリマー(共重合体)の組成比は、1H−NMR分析および19F−NMR分析により分析したところエポキシ基の存在が確認でき、またTFE/グリシジル基含有含フッ素アリルエーテル(m1)が25/75(モル%)であった。THFを溶媒として用いるGPC分析により測定した数平均分子量は11000、重量平均分子量は18000であった。
【0301】
実施例3(オキセタニル基を有する含フッ素アリルエーテルとTFEの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージおよび温度計を備えた100ml内容量のステンレススチール製オートクレーブに、合成例2で合成したオキセタニル基含有含フッ素アリルエーテル(m2)10.0gとHCFC−141b8.0gとジノルマルプロピルパーオキシカーボネート(NPP)の50重量%メタノール溶液0.10gを入れ、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら系内をチッ素ガスで充分置換した。ついでバルブからテトラフルオロエチレン(TFE)を3.0g仕込み、40℃にて振とうさせながら重合を行なった。
【0302】
18時間経過後、未反応モノマーを放出し、得られたポリマーを取り出し、重曹水で中和した。その後、ジエチルエーテルで抽出し、水洗、飽和塩水洗浄を行なった。この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。この溶液を濃縮し、ヘキサン溶液に注いで再沈殿を行ない、溶液部分を分離して無色透明なポリマーを得た。このポリマーを再びジエチルエーテルの溶液とし、31.5重量%の溶液(6.5g)とした。
【0303】
このポリマー(共重合体)の組成比は、1H−NMR分析および19F−NMR分析により分析したところオキセタン環の存在が確認でき、またTFE/オキセタニル基含有含フッ素アリルエーテル(m2)が11/89(モル%)であった。THFを溶媒として用いるGPC分析により測定した数平均分子量は4000、重量平均分子量は6000であった。
【0304】
実施例4(反射防止膜用)
(1)反射防止膜用材料の調製
合成例2で得たグリシジル基を有する含フッ素ポリマーのジエチルエーテル溶液にメチルイソブチルケトン(MIBK)を加え希釈し、ポリマー濃度を5.0重量%に調整した。
【0305】
得られたポリマー溶液10gに光酸発生剤(活性エネルギー線硬化開始剤)としてMPI−103(商品名。みどり化学(株)製の4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート)をMIBKに1重量%の濃度に溶かした溶液を2.5g加え、均一な溶液の反射防止膜用材料を調製した。
【0306】
(2)反射防止膜の作製
上記(1)で得た反射防止膜用材料を表面未処理のアクリル板上にスピンコーターにより室温でコートし、室温で5分間真空乾燥した。この際、乾燥後の膜厚が90〜110nmとなるように、スピンコーターの回転数を調整した(1000〜2000回転)。
【0307】
また、スピンコーターによる塗布時の塗布性をつぎの基準で評価した。結果を表1に示す。
○:塗布ムラがない。
△:一部に塗布ムラが認められる。
×:塗布できない。
【0308】
ついで、乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、室温にて1500mJ/cm2の強度で紫外線を照射して光硬化させて硬化被膜(反射防止膜)を作製した。
【0309】
(3)含フッ素硬化性ポリマーの屈折率の測定
合成例2で得たグリシジル基を有する含フッ素ポリマーのジエチルエーテル溶液をアプリケーターを用いスライドグラス上に乾燥後の膜厚が約50μmとなるように塗布し、室温で30分間真空乾燥後、アッベ屈折率計を用いて25℃で589nmの波長の光について屈折率(硬化前)を測定した。結果を表1に示す。
【0310】
(4)硬化膜の屈折率の測定
上記(3)と同様にしてサンプル被膜を作製した後、(2)と同様にして光照射した。得られた硬化被膜について上記(3)と同様にして屈折率(硬化後)を測定した。結果を表1に示す。
【0311】
(5)片面反射率の測定
上記(2)で得た反射防止膜を施したアクリル板を5°正反射ユニットを装着した可視紫外分光器にセットし、波長589nmの光について反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0312】
(6)反射防止膜の物性評価
上記(2)で得た反射防止膜について以下の表面物性の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0313】
(i)鉛筆硬度
JIS K5400に従って測定した。
【0314】
(ii)耐溶剤性
酢酸エチルを含浸させた綿布で塗膜表面を擦った後の塗膜表面の状態(溶解または剥離)を目視で観察した。
【0315】
評価は、
○:変化なし、
△:一部溶解または剥離あり、
×:溶解または剥離あり
とした。
【0316】
(iii)耐アルカリ性
60℃の2NのKOH水溶液に1分間漬け、そのときの膜の状態を目視で観察し、硬度を(i)の鉛筆硬度で比較した。
【0317】
評価は、
○:変化なし、
△:塗膜の劣化および硬度の低下がみられる、
×:膜が剥離し、下地が見えている部分がある
とした。
【0318】
(iv)体積収縮
上記(1)で作製した反射防止膜用材料を縦50.0mm、横10.0mmの型に流し込み、真空下に10時間乾燥して、1.0mm(厚さ)×50mm×10mmのサンプルを作製する。このサンプルについて上記(2)と同様の条件で紫外線を照射して硬化させ、硬化後の寸法を測定して体積を算出し、体積収縮率を求める。
【0319】
体積収縮率(%)={(硬化前の体積−硬化後の体積)/硬化前の体積}×100
(v)透明性(紫外領域での)
合成例2で得た含フッ素ポリマーの約1mm厚のフィルムを石英ガラス板に挟み、自記分光光度計((株)日立製作所製のU−3310。商品名)を用いて、波長250nmおよび380nmにおける透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0320】
実施例5(反射防止膜用)
実施例1の(1)において含フッ素ポリマーとして実施例2で得たオキセタニル基を有する含フッ素ポリマーを使用したほかは同様にして反射防止膜用材料を調製した。ついで実施例4の(2)と同様に反射防止膜を作製し、(3)硬化前の屈折率の測定、(4)硬化膜の屈折率の測定、(5)片面反射率の測定(6)反射防止膜の物性評価を行なった。結果を表1に示す。
【0321】
実施例6〜8(反射防止膜用)
実施例4の(1)で得た反射防止膜用材料に架橋剤として式:
【化87】

で示される2官能エポキシ化合物(架橋剤1)をポリマーに対して0.3当量(実施例6)、0.5当量(実施例7)および1.0当量(実施例8)となるように添加した。それぞれの反射防止膜用材料を用いて、実施例4の(2)と同様に反射防止膜を作製し、(3)硬化前の屈折率の測定、(4)硬化膜の屈折率の測定、(5)片面反射率の測定(6)反射防止膜の物性評価を行なった。結果を表1に示す。
【0322】
【表1】

【0323】
実施例9(オキセタニル基を有する含フッ素架橋剤2の合成)
撹拌装置、温度計と滴下ロートを備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7、−ドデカフルオロオクタン−1,8−ジオール2.0gとテトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)0.06g、3−ブロモメチル−3−メチルオキセタン(BrMMO)2.0gを入れ、75℃に加熱した。この溶液に滴下ロートから40重量%のKOH溶液1.7gをゆっくり加えた。滴下後、反応液を90℃まで加熱し、5時間反応させた。
【0324】
反応後の溶液を塩酸で中和した後、分液ロートに入れ、水洗、飽和食塩水洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥しついで溶液を濾過により分離した。ろ液からエバポレータによって溶媒を留去した。この反応液を蒸留した結果、無色透明な液体が2.2g得られた。
【0325】
得られた生成物を1H−NMR分析、19F−NMR分析およびIR分析した結果、つぎの構造の化合物であることを確認した。この化合物を架橋剤2という。
【0326】
【化88】

1H−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中):
4.48(4H,d)、4.36(4H,d)、3.96(4H,t)、3.66(4H,s)、1.31(6H,s)
19F−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中、R−11内部標準):
−119.5〜−120.3(4F,m)、−122.3〜−123.3(4F,m)、−123.8〜−124.5(4F,m)
【0327】
実施例10〜12(反射防止膜用)
実施例4の(1)で得た反射防止膜用材料に架橋剤として実施例9で合成した2官能オキセタン架橋剤2をポリマーに対して0.3当量(実施例10)、0.5当量(実施例11)および1.0当量(実施例12)となるように添加した。それぞれの反射防止膜用材料を用いて、実施例4の(2)と同様に反射防止膜を作製し、(3)硬化前の屈折率の測定、(4)硬化膜の屈折率の測定、(5)片面反射率の測定(6)反射防止膜の物性評価を行なった。結果を表2に示す。
【0328】
比較例1
合成例2で合成したグリシジル基を有する含フッ素アリルエーテルポリマーのグリシジル基がα−フルオロアクリロイル基に変わった含フッ素ポリマーのメチルエチルケトン(MEK)溶液に、さらにMEKを加えて希釈しポリマー濃度を5.0重量%に調整した。
【0329】
得られたポリマー溶液2gに光酸発生剤(活性エネルギー線硬化開始剤)として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(ダロキュア1174。商品名。チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のラジカル系光開始剤)をMEKに10重量%の濃度に溶かした溶液を0.1g加え、均一な溶液にした。この溶液を用いて、実施例4と同様の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0330】
比較例2
カチオン硬化性樹脂であるアデカオプトマーKRM−2410(商品名。旭電化工業(株)製)にMIBKを加え希釈し、ポリマー濃度を10.0重量%に調整した。
【0331】
得られたポリマー溶液2gに光酸発生剤(活性エネルギー線硬化開始剤)として、実施例4で使用したMPI−103をMIBKに10重量%の濃度に溶かした溶液を0.1g加え、均一な溶液にした。この溶液を用いて、実施例4と同様の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0332】
【表2】

【0333】
実施例13(光導波路用)
(1)光導波路用材料の調製
合成例2で得たグリシジル基を有する含フッ素ポリマーのジエチルエーテル溶液にMIBKを加え希釈し、ポリマー濃度を50重量%に調整した。
【0334】
得られたポリマー溶液10gに光酸発生剤(活性エネルギー線硬化開始剤)としてMPI−103をMIBKに1重量%の濃度に溶かした溶液を2.5g加え、均一な溶液の光導波路用材料を調製した。
【0335】
(2)光導波路用材料のフィルム作製
上記(1)で調製した光導波路用材料(含フッ素プレポリマーの50%エーテル溶液)をアプリケーターを用いてポリエステルフィルム上に乾燥後膜厚が所定の厚さになるように塗布し、50℃で10分間真空乾燥後、得られたキャスト膜をポリエステルフィルムから剥離し、膜厚が約1mmおよび約100μmの未硬化のフィルムの形で光導波路用材料を作製した。
【0336】
(3)光照射による硬化フィルムの作製
上記(2)で作製したフィルムを乾燥後、そのフィルムに高圧水銀灯を用い、室温にて1500mJ/cm2の強度で紫外線を照射して、光硬化して硬化フィルムを得た。
【0337】
(4)硬化フィルムの物性測定
得られた硬化フィルムに関して以下の物性の評価を行なった。
【0338】
(i)吸光度係数の測定
自記分光光度計((株)日立製作所製のU−3410)を用いて、波長300〜1700nmにおける約1mm厚のサンプル(硬化フィルム)の分光透過率曲線を測定した。得られたスペクトルより、吸光係数の値を下式に従って算出した。
吸光度係数=吸光度/サンプルの厚さ(mm)
【0339】
結果を表3に示す。
【0340】
(ii)屈折率の測定
アッベ屈折計を用い約100μm厚のサンプル(硬化前と硬化後フィルム)について25℃で589nmの波長の光における屈折率を測定した。結果を表3に示す。
【0341】
(iii)熱的特性(DSC)
示差熱熱量計((株)島津製作所製のDSC−50)を用い、昇温速度10℃/分の条件で熱的特性を測定したところ、いずれのフィルムにも明確な結晶融点ピークが観察されず、非晶性であった。
【0342】
(iv)耐溶剤性の評価
厚さ約1mmの硬化フィルムをアセトン中で室温にて24時間保持した後の状態を目視で観察し、つぎの基準で評価した。結果を表3に示す。
○:外観に変化が認められない。
×:アセトン中に溶解した。
【0343】
(v)耐熱性の評価
厚さ約1mmの硬化フィルムを150℃にて8時間保持した後の形状変化の有無を目視で観察し、つぎの基準で評価した。結果を表3に示す。
○:外観に変化が認められない。
×:フィルムが最初の形状を維持できなかった。
【0344】
(vi)耐吸湿性
JIS K6911に準じ、85℃×85%RHでの120時間放置後の吸湿率を求める。
【0345】
実施例14(光導波路用)
実施例13の(1)において含フッ素ポリマーとして実施例2で得たオキセタニル基を有する含フッ素ポリマーを使用したほかは同様にして光導波路用材料を調製した。ついで、実施例13の(2)〜(4)と同様にして光導波路用材料のフィルム作製、光照射による硬化フィルムの作製および硬化フィルムの物性測定を行なった。結果を表3に示す。
【0346】
比較例3
カチオン硬化性樹脂であるアデカオプトマーKRM−2410(商品名。旭電化工業(株)製)にMIBKを加え希釈し、ポリマー濃度を10.0重量%に調整した。
【0347】
得られたポリマー溶液2gに光酸発生剤(活性エネルギー線硬化開始剤)として、実施例4で使用したMPI−103をMIBKに10重量%の濃度に溶かした溶液を0.1g加え、均一な溶液にした。この溶液を用いて、実施例13と同様の評価を行なった。結果を表3に示す。
【0348】
【表3】

【0349】
以上の実施例の結果は、本発明の光学材料が透明性、耐吸湿性、耐熱性、機械的強度、耐溶剤性に優れ、体積収縮率の小さいことを示しており、したがって封止部材用の光学材料としても優れたものであることは明らかである。
【0350】
合成例4(低分子量のグリシジル基を有する含フッ素アリルエーテルポリマーの合成)
撹拌装置と温度計を備えた30mlのガラス製四ツ口フラスコに、合成例1で合成したグリシジル基含有含フッ素アリルエーテル5.0gとHFC−365(CF3CH2CF2CH3)15gの溶液を入れ、次に、
【化89】

の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を3.8g入れ、充分に窒素置換を行なった後、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行ない、高粘度の溶液を得た。
【0351】
得られた溶液に重曹水を注いで中和した後、ジエチルエーテルに溶解させたものを分液漏斗に入れ、水洗、飽和塩水洗浄を行なった。この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。この溶液を濃縮し、ヘキサン溶液に注いで再沈殿を行ない、溶液部分を分離して無色透明なポリマー3.6gを得た。
【0352】
このポリマーを19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記グリシジル基含有含フッ素アリルエーテル(m1)の構造単位のみからなり側鎖末端にグリシジル基を有する含フッ素ポリマーであった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は6000、重量平均分子量は10000であった。
【0353】
合成例5(グリシジル基を有する含フッ素アリルエーテルの合成:短鎖)
撹拌装置および温度計を備えた200mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,6,6−テトラハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサヘキサノール)40gと水0.4ml、エピクロロヒドリン38gを入れ、60℃に加熱した。この溶液にNaOH7.3gをペレットで5回に分けて加えた後、反応液を70℃まで加熱し4時間反応させた。
【0354】
反応後の溶液に塩酸を入れ中和し、この溶液を分液ロートに入れ、水洗、飽和食塩水洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついで溶液を濾過により分離した。ろ液からエバポレータによって溶媒を留去した。この反応液を蒸留した結果、蒸留物が9.7g得られた。沸点は55〜57℃(2.0mmHg)であった。
【0355】
得られた生成物を1H−NMR分析、19F−NMR分析およびIR分析し、つぎの構造のグリシジル基を有する含フッ素アリルエーテルであることを確認した。
【0356】
【化90】

1H−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中):
5.15〜4.90(2H,m)、4.05〜3.82(2H,m)、3.82〜3.70(1H,m)、3.38〜3.25(1H,m)、2.98〜2.92(1H,m)、2.68〜2.57(1H,m)、2.45〜2.38(1H,m)
19F−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中、R−11内部標準):
−75.4〜−72.8(2F,m)、−83.2(3F,s)、−123.3〜−122.8(1F,m)、−133.5〜−133.0(1F,m)
IR分析データ(cm-1):
1695(υC=C)
【0357】
合成例6(グリシジル基を有する含フッ素アリルエーテルポリマーの合成:短鎖)
撹拌装置と温度計を備えた10mlのガラス製四ツ口フラスコに、合成例1で合成したグリシジル基含有含フッ素アリルエーテル4.0gとHFC−365(CF3CH2CF2CH3)4gの溶液に
【化91】

の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を4.7g入れ、充分に窒素置換を行なった後、窒素気流下20℃で9時間撹拌を行ない、高粘度の溶液を得た。
【0358】
得られた溶液に重曹水を注いで中和した後、ジエチルエーテルに溶解させたものを分液漏斗に入れ、水洗、飽和塩水洗浄を行なった。この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。この溶液を濃縮し、ヘキサン溶液に注いで再沈殿を行ない、溶液部分を分離して無色透明なポリマー1.2gを得た。
【0359】
このポリマーを19F−NMR分析、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記グリシジル基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にグリシジル基を有する含フッ素ポリマーであった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は2300、重量平均分子量は3000であった。
【0360】
実施例15(脂環式エポキシ(シクロヘキシル)基を有する含フッ素アリルエーテルポリマーの合成 その1)
撹拌装置と温度計を備えた50mlのガラス製四ツ口フラスコを用いて、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を重合して得た重合物5gを酢酸プロピル13gに溶解させ、窒素置換した。この溶液にピリジン1.2mlを加え、反応器を氷浴で冷やした。この溶液に滴下漏斗から3−シクロヘキセン酸クロライド1.93g/酢酸プロピル3gの混合溶液をゆっくり加えた。滴下後、6.5時間反応させた。反応後、反応液を飽和重曹水中に放ち、飽和重曹水で2回、1N塩酸で2回、飽和食塩水で2回洗浄し、この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。その結果、12.7wt%のポリマー溶液が40.6g得られた。
【0361】
このポリマーを19F−NMR分析、1H−NMR分析により分析したところ、含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にシクロヘキセニル基を70%の割合で有する含フッ素ポリマーであった。
【0362】
上記で得られたポリマーの酢酸プロピル溶液(12.7wt%)11.7gを撹拌装置と温度計を備えた50mlのガラス製四ツ口フラスコに入れた。この溶液にm−クロロ過安息香酸(mCPBA)1.07gをゆっくり添加した。このまま室温で23時間反応させた。反応後、反応液を1N水酸化カリウム水溶液中に放ち、1N水酸化カリウム水溶液で2回、飽和食塩水で2回洗浄し、この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。その結果、7.5wt%のポリマー溶液が11.5g得られた。
【0363】
このポリマーを19F−NMR分析、1H−NMR分析により分析したところ、含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端に導入されていたシクロヘキセニル基70%のうち99.5%がエポキシ化された官能基を有する含フッ素ポリマーであった。
【0364】
実施例16(脂環式エポキシ(ノルボルネン)基を有する含フッ素アリルエーテルポリマーの合成)
撹拌装置と温度計を備えた50mlのガラス製四ツ口フラスコを用いて、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を重合して得た重合物5gを酢酸プロピル15gに溶解させ、窒素置換した。この溶液にピリジン1.2mlを加え、反応器を氷浴で冷やした。この溶液に滴下漏斗からジシクロペンタジエンとα−フルオロアクリロイルフルオライドから合成した2−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸フルオライド2.1g/酢酸プロピル5gの混合溶液をゆっくり加えた。滴下後、3時間反応させた。反応後、反応液を飽和重曹水中に放ち、飽和重曹水で2回、1N塩酸で2回、飽和食塩水で2回洗浄し、この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。その結果、16.7wt%のポリマー溶液が32.6g得られた。
【0365】
このポリマーを19F−NMR分析、1H−NMR分析により分析したところ、含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にシクロヘキセニル基を70%の割合で有する含フッ素ポリマーであった。
【0366】
上記で得られたポリマーの酢酸プロピル溶液(16.7wt%)9.0gを撹拌装置と温度計を備えた50mlのガラス製四ツ口フラスコに入れた。この溶液にmCPBA(1.35g)をゆっくり添加した。このまま室温で23時間反応させた。反応後、反応液を1N水酸化カリウム水溶液中に放ち、1N水酸化カリウム水溶液で2回、飽和食塩水で2回洗浄し、この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。その結果、4.6wt%のポリマー溶液が21.2g得られた。
【0367】
このポリマーを19F−NMR分析、1H−NMR分析により分析したところ、含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端に導入されていた2−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]へプタ−5−エン−カルボン酸エステル基70%のうち99%がエポキシ化された官能基を有する含フッ素ポリマーであった。
【0368】
合成例7(脂環式エポキシ(シクロヘキシル)基を有する含フッ素アリルエーテルモノマー前駆体の合成)
撹拌装置および温度計を備えた500mlのガラス製四ツ口フラスコを十分に窒素置換し、THF180mlにNaH7.6gを懸濁させた。この溶液に滴下漏斗よりパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)71gを入れ、滴下後、室温下で2時間攪拌した。次に、この溶液に3−ブロモシクロヘキセン33.4gを滴下漏斗より加え、24時間反応させた。
【0369】
反応後の溶液を水に放ち、水洗、飽和食塩水洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついで溶液を濾過により分離した。ろ液からエバポレータによって溶媒を留去した。この反応液を蒸留した結果、蒸留物が75g得られた。沸点は61〜64℃(0.25mmHg)であった。
【0370】
得られた生成物を1H−NMR分析、19F−NMR分析およびIR分析し、つぎの構造のグリシジル基を有する含フッ素アリルエーテルであることを確認した。
【0371】
【化92】

1H−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中):
5.91〜5.62(2H,m)、5.12〜5.03(2H,m)、4.01〜3.85(3H,m)、2.10〜1.41(4H,m)
19F−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中、R−11内部標準):
−72.4〜−73.0(2F,m)、−79.4〜−81.7(8F,m)、−124.0〜−124.1(1F,m)、−133.4〜−133.9(1F,m)、−145.0〜−145.7(1F,m)
IR分析データ(cm-1):
1695(υC=C)
【0372】
実施例17
撹拌装置および温度計を備えた500mlのガラス製四ツ口フラスコを用いて、タングステン酸ナトリウム2水和物1.1gに30%過酸化水素水15.0gを加え、黄色溶液を作成した。この溶液に80%燐酸を加え、pHを約2に調整した。さらに、この溶液に、滴下漏斗より合成例7で合成したシクロヘキセニル基を有するモノマー32gとトリオクチルメチルアンモニウムクロライド1.1gをトルエン90mlに希釈した溶液を滴下した。滴下後、50℃で10時間攪拌した。
【0373】
反応後の溶液のトルエン層をチオ硫酸ナトリウム水で洗浄、飽和重曹水で洗浄、さらに水洗後に無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついで溶液を濾過により分離した。ろ液からエバポレータによって溶媒を留去した。この反応液を蒸留した結果、蒸留物が30.4g得られた。沸点は79〜83℃(0.25mmHg)であった。
【0374】
得られた生成物を1H−NMR分析、19F−NMR分析およびIR分析し、つぎの構造の脂環式エポキシ基を有する含フッ素アリルエーテルであることを確認した。
【0375】
【化93】

1H−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中):
5.12〜5.03(2H,m)、4.10〜3.95(2H,m)、3.74〜3.64(1H,m)、3.19〜3.13(1H,m)、3.04〜2.98(1H,m)、2.00〜1.05(6H,m)
19F−NMR分析データ(δ(ppm)CDCl3中、R−11内部標準):
−72.4〜−73.0(2F,m)、−79.4〜−81.7(8F,m)、−124.0〜−124.
IR分析データ(cm-1):
1695(υC=C)
【0376】
実施例18(脂環式エポキシ(シクロヘキシル)基を有する含フッ素アリルエーテルポリマーの合成)
撹拌装置と温度計を備えた50mlのガラス製四ツ口フラスコを用いて、実施例17で合成した7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタニル基含有含フッ素アリルエーテル5.0gとHFC−365(CF3CH2CF2CH3)5.0gの溶液に
【化94】

の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を3.4g入れ、充分に窒素置換を行なった後、窒素気流下20℃で10時間撹拌を行ない、高粘度の溶液を得た。
【0377】
得られた溶液に重曹水を注いで中和した後、ジエチルエーテルに溶解させたものを分液漏斗に入れ、水洗、飽和塩水洗浄を行なった。この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により硫酸マグネシウムを分離した。この溶液を濃縮し、ヘキサン溶液に注いで再沈殿を行ない、溶液部分を分離して無色透明なポリマー2.9gを得た。
【0378】
このポリマーを19F−NMR分析、1H−NMR分析により分析したところ、上記の含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端に7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタニル基を有する含フッ素ポリマーであった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は7500、重量平均分子量は24000であった。
【0379】
実施例19〜20(反射防止膜用)
合成例2で得たグリシジル基を有する含フッ素ポリマーの代わりに合成例4および6で得たエポキシ基を有する含フッ素ポリマーを用いた他は実施例4と同様にして(1)反射防止膜用材料の調製を行い、これを用いて(2)反射防止膜の作製、(3)含フッ素硬化性ポリマーの屈折率の測定、(4)硬化膜の屈折率の測定(5)片面反射率の測定(6)反射防止膜の物性評価(体積収縮および透明性を除く)を行った。結果を表4に示す。
【0380】
実施例21〜23(反射防止膜用)
合成例2で得たグリシジル基を有する含フッ素ポリマーの代わりに実施例15、16および18で得たエポキシ基を有する含フッ素ポリマー用いた他は実施例4と同様にして(1)反射防止膜用材料の調製を行い、これを用いて(2)反射防止膜の作製、(3)含フッ素硬化性ポリマーの屈折率の測定、(4)硬化膜の屈折率の測定(5)片面反射率の測定(6)反射防止膜の物性評価(体積収縮および透明性を除く)を行った。結果を表4に示す。
【0381】
【表4】

【0382】
実施例24〜27(反射防止膜用)
実施例20〜23の(1)で得た反射防止膜用材料に架橋剤として式:
【化95】

で示される2官能エポキシ化合物(架橋剤1)をポリマーに対して0.3当量となるように添加した。それぞれの反射防止膜用材料を用いて、実施例4の(2)と同様に反射防止膜を作製し、(3)硬化前の屈折率の測定、(4)硬化膜の屈折率の測定、(5)片面反射率の測定(6)反射防止膜の物性評価(体積収縮および透明性を除く)を行なった。結果を表5に示す。
【0383】
【表5】

【0384】
実施例28〜31(反射防止膜用)
実施例20〜23の(1)で得た反射防止膜用材料に架橋剤として実施例9で合成した2官能オキセタン架橋剤2をポリマーに対して0.3当量となるように添加した。それぞれの反射防止膜用材料を用いて、実施例4の(2)と同様に反射防止膜を作製し、(3)硬化前の屈折率の測定、(4)硬化膜の屈折率の測定、(5)片面反射率の測定(6)反射防止膜の物性評価(体積収縮および透明性を除く)を行なった。結果を表6に示す。
【0385】
【表6】

【0386】
実施例32(光導波路型素子の作製)
コア部用材料として実施例14で調製した光導波路用材料を用い、クラッド部用材料として合成例3で合成した含フッ素ポリマーを用いて光導波路を作製した。
【0387】
これら2種の材料をそれぞれメチルイソブチルケトンに溶かし溶液とした。まず、クラッド部用材料をプラスチック基板あるいはシリコン基板上に約15μmの厚さに塗布した。これをベークし、乾燥処理した後、クラッド部用材料の膜上にコア部用材料を約8μmの厚さに塗布した。つぎに、ホトマスクを介して光照射を行い、コア部用の膜を硬化させた。その後、コア部用膜の未硬化の部分を溶剤で洗い流し、コア部として長さ50mm、幅8μm、高さ8μmの直線矩形パタンに加工した。加工後、クラッド部を図2にしたがって説明したように、コア部上に塗布して光導波路を作製した。
【0388】
つぎに、作製した光導波路の伝播損失の測定を、コア部に波長1300nmの光を通すことによって、伝播損失の測定を行った。その結果、0.4dB/cmであった。
【0389】
さらに、ここで作製した光導波路を温度80℃、湿度85%RHの環境下で1週間保存したが、伝播損失はまったく低下しなかった。
【0390】
実施例33
(深紫外レンズ用封止部材(充填材))
実施例4で調製した反射防止膜用材料から、溶媒を40℃にて減圧溜去し、これを封止部材として用いた。レンズ部材としては、図3に示すように、石英ガラスからなるレンズ部材L1およびレンズ部材L2を用いた。レンズ部材L1とレンズ部材L2との間に封止部材8をはさみ、40℃に加温しながら封止部材の厚みが1μmになるようにプレスした。これに、高圧水銀灯を用い室温にて、レンズ面に対して垂直方向から1500mJ/cm2の強度で矢印で示す方向に紫外線照射を行い、封止部材を光硬化させた。
【0391】
つぎに、レンズ間接合部位を封止部材によって封止した光学部材の深紫外光に対する透明性を、自記分光光度計((株)日立製作所のU−3310)を用いてレンズ面に対して垂直方向から300nmの光を通し透過率を測定することによって行った。その結果、透過率は92%であった。
【0392】
さらに、ここで作製した光学部材を室温にて高圧水銀灯を用いて10J紫外線照射を行ったが、300nmの光の透過率はまったく低下せず、変形や亀裂等も生じなかった。
【0393】
実施例34(封止材)
実施例4で調整した反射防止膜用材料から溶媒を40℃にて減圧溜去し、これを封止部材として用いた。図4に示すように、有機EL素子10は透明なガラス基板9上に形成し、その発光面がガラス基板側に向けた状態にある物を用いた。封止用の金属缶11は凹形状をなしており、有機EL素子の本体部の大きさに対応している。窒素を循環させたグローブボックス中で、有機EL素子が形成されたガラス基板9と金属缶11との接着部に本発明の封止部材12を挟み、封止部材の厚みが100μmとなるようにプレスした。これを窒素雰囲気下で透明ガラス基板面の垂直方向からUVを2000mJ/cm2照射して硬化させた。
【0394】
このようにして封止した有機EL素子を温度60℃、湿度95%RHの条件で加速試験を行った。その結果500時間後の非発光面積率は10%以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2):
−(M4)−(B)− (2)
[式中、構造単位M4は式(M4):
【化1】

(式中、X1、X2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY2(Y2は架橋性環状エーテル構造:
【化2】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数2〜100の有機基、または式:
【化3】

(式中、Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子が上記Xで置換されていてもよい1価または2価の有機基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Bは該式(M4)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位M4を0.1〜100モル%および構造単位Bを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である架橋基含有含フッ素ポリマー。
【請求項2】
式(2−1):
−(M4)−(B)− (2−1)
[式中、構造単位M4は式(M4−1):
【化4】

(式中、X1、X2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY2a(Y2aは架橋性環状エーテル構造:
【化5】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Bは該式(M4−1)で示される含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位M4を0.1〜100モル%および構造単位Bを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である架橋基含有含フッ素ポリマー。
【請求項3】
式(3):
【化6】

(式中、X1、X2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY2(Y2は架橋性環状エーテル構造:
【化7】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数2〜100の有機基、または式:
【化8】

(式中、Qは炭素数3〜100の単環構造、複環構造または複素環構造の水素原子が上記Xで置換されていてもよい1価または2価の有機基)を1〜5個有する炭素数3〜100の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体。
【請求項4】
式(3−1):
【化9】

(式中、X1、X2は同じかまたは異なり、HまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4およびX5は同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY2a(Y2aは架橋性環状エーテル構造:
【化10】

(式中、Xは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6の含フッ素アルキル基)を1〜5個有する炭素数2〜100の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−84150(P2010−84150A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286815(P2009−286815)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【分割の表示】特願2004−528850(P2004−528850)の分割
【原出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】