説明

光硬化性組成物、それを用いる接着方法、液晶パネルの製造方法

【課題】光硬化および熱硬化後の接着強度が充分に高く、溶出によるパネル表示ムラを少なくできる光硬化性組成物、及びそれを用いる液晶表示パネルの製造方法の提供。
【解決手段】重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、光重合開始剤を含有する組成物であって、該光重合開始剤が下記一般式(I)で表される光重合開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。


一般式(1)
(ただし、上記一般式(1)中、Rは、水素原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表し、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及びアミノ基のいずれかを表す。XはO、S、Se、−NR−、−CR−のいずれかを表す。Ra、R、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。mは、0〜4の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物、およびそれを用いる方法に関する。特に、ノートパソコンやテレビモニター等の液晶表示装置等に好適に用いられる光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セルの大型化要求に伴い、より生産効率の優れる液晶表示セルの製造法として、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることにより液晶が封止された液晶表示セルが製造される、いわゆる「液晶滴下工法」が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、この液晶滴下工法は、液晶シール剤が未硬化の状態で液晶に接触するため、液晶表示セル製造時に液晶シール剤の成分が液晶に溶解し液晶の比抵抗を低下させ、液晶の駆動に悪影響を与えてしまうという課題があり、液晶表示セルの量産方法としては多くの問題点を有している。
【0004】
この液晶滴下工法において、液晶シール剤の貼り合わせ後の硬化方法には、熱硬化法、光硬化法、光熱硬化併用法の3方法が提案されている。熱硬化法では、加熱による液晶の膨張により低粘度化した硬化途中の液晶シール剤から液晶が漏れてしまうという問題と、低粘度化した液晶シール剤の成分が液晶に溶解してしまう問題があり、これら問題は解決が困難であり、実用化に至っていない。
【0005】
一方、光硬化法に用いられる液晶シール剤としては、用いる光重合開始剤の種類によりカチオン重合型とラジカル重合型の2種類が挙げられる。カチオン重合型の液晶シール剤については、光硬化の際にイオンが発生するため、これを液晶滴下工法に使用した場合、接触状態の液晶中にイオン成分が溶出してしまい、液晶の比抵抗を低下させ液晶駆動に悪影響するという問題がある。
【0006】
又、ラジカル重合型の液晶シール剤については、用いるビニル系単量体の光硬化時の硬化収縮が大きいがために、液晶パネル張り合わせの接着強度が低いという問題がある。更に、カチオン重合型とラジカル重合型の両方の光硬化法に関わる問題点として、液晶表示セルのアレイ基板のメタル配線部分やカラーフィルター基板のブラックマトリックス部分によって液晶シール剤に光が当たり難い部分が生じるため、遮光部分が未硬化になるという問題が生じる。
【0007】
このように熱硬化法、光硬化法を各々単独で用いることには様々な問題があり、現実には光硬化−熱硬化併用法が最も実用的な工法と考えられている。光−熱硬化併用法は、基板に挟まれた液晶シール剤に光を照射して一次硬化させた後、加熱して二次硬化させることを特徴とする。光−熱硬化併用法に用いる液晶シール剤に要求される特性としては、光照射前後、加熱硬化前後の各工程において液晶シール剤が液晶を汚染しないことが重要であり、特に先に述べた遮光部分に対する対策、すなわち、光硬化しなかった部分が熱硬化する際のシール剤成分の液晶溶出に対する対策が必要になってくる。その解決方法としては、1つにはシール剤成分が溶出する前に低温速硬化させる、また、他にはシール剤を液晶組成物に溶出し難い成分で構成する等が考えられる。当然、低温速硬化とすることは同時に使用時のポットライフが悪くなる傾向となるため実用上大きな問題となる。故にポットライフが長く液晶汚染性の低い液晶シール剤を実現する為には、液晶組成物に溶出し難い成分で構成することが必要になってくる。しかしながら、一般によく知られているエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAエポキシ樹脂やビスフェノールFエポキシ樹脂は液晶との相溶性が良いため、汚染性の観点からシール剤構成成分として適しているとは言い難い。
【0008】
液晶滴下工法用液晶シール剤として、樹脂主成分に部分(メタ)アクリレート化したビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用する提案もなされている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。しかしながら(メタ)アクリレート化することにより液晶への溶解性は低下するものの、その程度は充分とは言い難く、また未反応で残存した原料エポキシ樹脂が液晶を汚染する問題も解決することが困難である。
【0009】
このように、滴下工法により液晶表示素子を製造する場合、シール剤は、光硬化させた後熱硬化させているが、シール剤を光硬化させる際に(メタ)アクリル重合を利用する場合、用いられる光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が一般的であった。
しかし、従来の滴下工法に用いられる光ラジカル重合開始剤は、シール剤の他の構成成分に比べて揮発性が高く、滴下工法により液晶表示素子を製造した際に、液晶中へ拡散して液晶を汚染し得られる液晶表示素子の表示不良の原因となりやすいという問題があった。
【0010】
そこで、低拡散性の光ラジカル重合開始剤として、特定のオキシム誘導体を用いることにより表示不良の改善を図る試みがなされ(例えば特許文献5参照)、一定の表示不良改善効果が得られているものの、さらなる改善が求められていた。
【0011】
このような問題を解決するために、例えば、高分子量の光ラジカル重合開始剤を用いる方法が考えられる。しかしながら、純度の高い高分子量の光ラジカル重合開始剤は得られておらず、そのため、滴下工法による液晶表示素子の製造において、光ラジカル重合開始剤由来の表示不良の発生を充分に防止できるとは言い難い状況であった。
【0012】
以上のように、従来提案されてきた液晶滴下工法用の光熱硬化併用型液晶シール剤は、液晶汚染性、接着強度、低温硬化性等の全てについて満足の得られるものではなかった。
【特許文献1】特開昭63−179323号公報
【特許文献2】特開平10−239694号公報
【特許文献3】特開平5−295087号公報
【特許文献4】特開2001−133794号公報
【特許文献5】WO2005−080337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記現状に鑑み、液晶滴下工法による液晶表示素子の製造に用いた場合に、光硬化性組成物成分の液晶への汚染性が極めて低いため製造する液晶表示素子に色ムラが少なく、接着強度、低温硬化性に優れ、特に滴下工法による液晶表示素子の製造に最適である光硬化性組成物およびそれを用いた接着方法、液晶パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、これらの欠点を解決すべく鋭意検討した結果、特定の光重合開始剤を用いることにより上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の上記目的は下記の手段により解決された。即ち本発明は下記の<1>〜<12>である。
【0015】
<1> 重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、光重合開始剤を含有する組成物であって、該光重合開始剤が下記一般式(I)で表される光重合開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【0016】
【化1】

一般式(1)
【0017】
(ただし、上記一般式(1)中、Rは、水素原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表し、Rは、ハロゲン原子、炭化水素基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、複素環基、ヒドロキシ基、及びアミノ基のいずれかを表す。XはO、S、Se、−NR−、−CR−のいずれかを表す。Ra、R、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。mは、0〜4の整数を表す。)
【0018】
<2> 前記一般式(1)において、XがOであることを特徴とする前記<1>に記載の光硬化性組成物。
<3> 更に増感色素を含有することを特徴とする前記<1>または前記<2>に記載の光硬化性組成物。
<4> 前記増感色素が、波長300〜800nmの領域に実質的に光吸収を持つことを特徴とする前記<3>に記載の光硬化性組成物。
【0019】
<5> 前記重合性モノマーおよび/またはオリゴマーが、エポキシアクリレート又はエポキシメタアクリレートであることを特徴する前記<1>〜前記<4>のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
<6> 前記重合性モノマーおよび/またはオリゴマーが、エポキシアクリレート又はエポキシメタアクリレートとエポキシ樹脂との混合物であることを特徴する前記<1>〜前記<4>のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
<7> 更に無機フィラーを配合してなることを特徴とする前記<1>〜前記<6>のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
<8> 更にシラン化合物を配合してなることを特徴とする前記<1>〜前記<6>のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【0020】
<9> 前記<1>〜前記<8>のいずれか1項に記載の組成物を用い、波長390〜800nmの光を照射して硬化させ、接着させることを特徴とする接着方法。
<10> 前記<9>の方法を用いることを特徴とする液晶パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、滴下工法による液晶表示素子の製造に用いた場合に、シール剤成分による液晶への影響が極めて少ないため、製造する液晶表示素子に色ムラが少なく、接着強度、低温硬化性に優れ、特に滴下工法による液晶表示素子の製造に最適な光硬化性組成物、光硬化性組成物を用いた接着方法、液晶パネルの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。本発明の光硬化性組成物は、光重合開始剤、重合性モノマーまたはオリゴマーを含有し、特に光重合開始剤として特定の光重合開始剤を用いるものである。
【0023】
<光重合開始剤>
本発明の光硬化性組成物に用いられる光重合開始剤は、下記一般式(1)で表されるオキシム化合物である。
【0024】
【化2】

一般式(1)
【0025】
(ただし、上記一般式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアシル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表し、Rは、ハロゲン原子、炭化水素基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、複素環基、ヒドロキシ基、及びアミノ基のいずれかを表す。XはO、S、Se、−NR−、−CR−のいずれかを表す。Ra、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、RもしくはRと縮合環を形成してもよい。R、Rは縮合環を形成してもよい。mは、0〜4の整数を表し、2以上の場合は、複数存在するRは、同じでも異なっていてもよく、また互いに連結し環を形成してもよい。
【0026】
上記光重合開始剤を用いることによって、保存安定性に優れ、各種溶媒やモノマー/オリゴマーへの溶解性に優れることから取り扱いが容易であり、光に対する硬化感度が高く、到達硬化度が高く、そして接着強度が高い硬化物を得られることから、接着剤としての利用価値が高い。
【0027】
前記一般式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアシル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかである。アシル基としては、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、及び複素環アシル基のいずれでもよい。総炭素数2〜30のものが好ましく、総炭素数2〜20のものがより好ましく、総炭素数2〜16のものが特に好ましい。
【0028】
脂肪族アシル基の脂肪族基としては、炭素数1〜29の直鎖または分岐のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、ドデシル、オクタデシルなど)、炭素数2〜29のアルケニル基(例えば、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル、2−エチルヘキセニル、ドデセニルなど)、炭素数4〜29のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなど)、炭素数7〜29の脂環式多環基(例えばボルニル、ノルボニル、デカリニル、アダマンチル、ジアマンチルなど)などが挙げられる。
【0029】
芳香族アシル基の芳香族基としては、例えばフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラニル、インデニル、インダニル、ビフェニルなどが挙げられる。複素環アシル基の複素環基としては、例えばフラニル、チオフェニル、ピラニル、チオピラニル、ピリジル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、インドリル、キノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリルなどが挙げられる。
【0030】
前記アシル基は、更に置換基を有してもよい。置換基としては、上記総炭素数範囲となるものであればよいが、中でもアルコキシ基、アリールオキシ基、及びハロゲン原子のいずれかが好ましい。
【0031】
アシル基としては、置換基を有していてもよく、例えば、アセチル基、n−プロパノイル基、i−プロパノイル基、メチルプロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ベンジルカルボニル基、フェノキシアセチル基、2−エチルヘキサノイル基、クロロアセチル基、ベンゾイル基、トルエンカルボニル基、パラメトキシベンゾイル基、2,5−ジブトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、ピリジルカルボニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0032】
アルキルオキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、総炭素数が2〜30のものが好ましく、総炭素数2〜20のものがより好ましく、総炭素数2〜16のものが特に好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニルブトキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、エトキシエトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0033】
アリールオキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、総炭素数7〜30のアルコキシカルボニル基が好ましく、総炭素数7〜20のものがより好ましく、総炭素数7〜16のものが特に好ましい。このようなアリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、2−ナフトキシカルボニル基、パラメトキシフェノキシカルボニル基、2,5−ジエトキシフェノキシカルボニル基、パラクロロフェノキシカルボニル基、パラニトロフェノキシカルボニル基、パラシアノフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0034】
置換基としてのアルコキシ基、アリールオキシ基、及びハロゲン原子としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、トリロキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
【0035】
前記一般式(1)中、Xとしては、O、S、Se、−NR−、−CR−のいずれかを表すが、その中でもO、S、−NR−が好ましく、特にOが好ましい。
【0036】
前記一般式(1)中、Rとしては、ハロゲン原子、炭化水素基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、複素環基、ヒドロキシ基、及びアミノ基のいずれかが挙げられる。Rは更に置換基で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。無置換の炭化水素基としては炭素数1〜20の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。前記直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基(例えばプロペニル、ブテニルなど)などが、脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、メンチルなど)、シクロアルケニル基(例えばシクロへキセニルなど)、脂環式多環基(例えばボルニル、ノルボニル、デカリニル、アダマンチル、ジアマンチルなど)などが挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、インデニル、インダニル、ビフェニルなどが挙げられる。
【0037】
アルキル基としては、置換基を有してもよく、総炭素数1〜18のものが好ましく、特に総炭素数1〜10のものが好ましい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0038】
アリール基としては、置換基を有してもよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、特に総炭素数6〜12のものが好ましい。このようなアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0039】
アルキルオキシ基としては、置換基を有してもよく、総炭素数1〜18のものが好ましく、特に総炭素数1〜12のものが好ましい。このようなアルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、フェネチルオキシ基、フェノキシエトキシ基等が挙げられる。
【0040】
アリールオキシ基としては、置換基を有してもよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、特に総炭素数6〜12のものが好ましい。このようなアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基等が等挙げられる。
【0041】
アルキルチオ基としては、置換基を有してもよく、総炭素数1〜18のものが好ましく、特に総炭素数1〜12のものが好ましい。このようなアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−オクチルチオ基、n−ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等が挙げられる。
【0042】
アリールチオ基としては、総炭素数6〜20のものが好ましく、特に総炭素数6〜12のものが好ましい。このようなアリールチオ基としては、フェニルチオ基、トリルチオ基、クロロフェニルチオ基、エトキシカルボニルフェニルチオ基等が挙げられる。
アシルオキシ基、アシルルチオ基のアシル基としては、前記Rのアシル基として挙げたアシル基と同様なアシル基が挙げられる。
【0043】
複素環基としては、ヘテロ芳香環基又はヘテロ脂環式基等が挙げられる。ヘテロ芳香環としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピラン、チオピラン、ピリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピリミジン、トリアジン、インドール、キノリン、プリン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、キノキサリン、カルバゾールなどが挙げられる。ヘテロ脂環化合物としては、オキセタン、チエタン、アゼチジン、オキソラン、チオラン、ピロリン、ピロリジン、ピラゾリン、イミダゾリン、チアゾリン、ピラン、オキサン、チアン、ピペリジン、モルホリン、クマラン、クロマン、ピロリドンなどが挙げられる。
【0044】
アミノ基は−NRで表される。ここでR及びRは、それぞれ独立に水素原子若しくは脂肪族炭化水素基、アリール基、アシル基のいずれかを表す。脂肪族炭化水素基、アリール基、アシル基は、それぞれRで挙げた脂肪族炭化水素基、アリール基、アシル基と同様なものが挙げられる。R及びRは、互いに連結して環を形成してもよい。総炭素数1〜20のものが好ましく、特に総炭素数1〜12のものが好ましい。このようなアミノ基としては、例えば−NH基、ジエチルアミノ基、アセチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0045】
mは0〜4の整数を表す。mが2以上の場合、複数存在するRは、それぞれ独立に同じでも異なってもよい。mが2以上であり、互いに連結して環を形成する場合は、それぞれ独立したR同士で環を形成してもよく、R及びRの少なくともいずれかを介して環を形成してもよい。
【0046】
基がハロゲン原子、及びヒドロキシ基以外の場合で更に置換基を有する場合の置換基としては、上記アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子や水酸基等が挙げられるが、炭素数12以下のものが好ましい。
【0047】
これらの中でもRとしては、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜18のアルキルオキシ基、アルキルチオ基、炭素数12以下の置換アミノ基、非置換アミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が好ましく、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜6の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキルオキシ基、アルキルチオ基、炭素数8以下の置換アミノ基、非置換アミノ基、ハロゲン原子がより好ましい。更にRとしては、炭素数1〜8のアルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜10のアルキルオキシ基、アルキルチオ基、炭素数8以下の置換アミノ基、フッ素原子、クロル原子がより好ましく、特に炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜10のアルキルオキシ基、アルキルチオ基、炭素数8以下の置換アミノ基がより好ましい。
【0048】
a、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表すが、そのアルキル基またはアリール基の具体例としては、前記Rとして挙げたアルキル基またはアリール基の具体例が挙げられる。その中でもRa、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、更には、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0049】
前記一般式(1)で表されるオキシム化合物の具体例としては、下記構造式(1)〜(78)で表される化合物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化3】



【0051】
【化4】



【0052】
【化5】



【0053】
【化6】



【0054】
【化7】



【0055】
【化8】



【0056】
【化9】



【0057】
【化10】

【0058】
本発明に於ける一般式(I)で表される化合物の添加量は特に制限されるものではないが、一般に組成物中に0.001質量%〜40質量%の範囲で用いられ、好ましくは0.05質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜5質量%の範囲で用いられる。
【0059】
<重合性モノマー、オリゴマー>
本発明の光硬化性組成物の構成要素としての重合性モノマーまたはオリゴマーとしては、少なくとも1個の、より好ましくは2個から6個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物であることが好ましい。
【0060】
少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基をもち、沸点が常圧で100℃以上の化合物としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることが出来る。更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用できる。ここで(メタ)アクリレートの類の表記は、アクリレート化合物、又はメタアクリレート化合物を表すことを意味する。
【0061】
本発明の組成物を液晶シール剤として、特に滴下工法による液晶表示素子の製造に用いる際、未硬化のシール剤が直接液晶と接するため、シール剤により液晶を汚染し、表示品質に問題を与えることを避ける目的で、上記液晶シール剤を構成する(メタ)アクリロイル基を有する硬化性樹脂は、液晶に相溶しないものであることが好ましく、具体的には、上記エポキシ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0062】
<エポキシアクリレート>
この様なエポキシ(メタ)アクリレートの構造には特に限定されず、市場で入手可能なものを用いることができ、例えば、エベクリル3700、エベクリル3600、エベクリル3701、エベクリル3703、エベクリル3200、エベクリル3201、エベクリル3600、エベクリル3702、エベクリル3412、エベクリル860、エベクリルRDX63182、エベクリル6040、エベクリル3800(いずれもダイセル・サイテック社製)、EA−1020、EA−1010、EA−5520、EA−5323、EA−CHD、EMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が例示される。上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、これらのほかに、例えば、エポキシ化合物の一部分を(メタ)アクリル酸変性したものであってもよい。
【0063】
<エポキシ樹脂>
本発明の光硬化性組成物には、目的に応じてエポキシ樹脂を配合することができる。エポキシ樹脂を配合することによって、光硬化だけでなく、その後の熱硬化も確実に行うことができる様になり好ましい。
【0064】
用いることの出来るエポキシ樹脂としては特に限定されず、市場で入手可能なものとして例えば、エピコート828EL、エピコート1004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;エピコート806、エピコート4004(いずれもジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン830CRP(大日本インキ社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;エピクロンEXA1514(大日本インキ社製)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;RE−810NM(日本化薬社製)等の2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂;エピクロンEXA7015(大日本インキ社製)等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂;EP−4000S(旭電化社製)等のプロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂;EX−201(ナガセケムテックス社製)等のレゾルシノール型エポキシ樹脂;エピコートYX−4000H(ジャパンエポキシレジン社製)等のビフェニル型エポキシ樹脂;YSLV−50TE(東都化成社製)等のスルフィド型エポキシ樹脂;YSLV−80DE(東都化成社製)等のエーテル型エポキシ樹脂;EP−4088S(旭電化社製)等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれも大日本インキ社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂;エピクロンN−770(大日本インキ社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;エピクロンN−670−EXP−S(大日本インキ社製)等のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;エピクロンHP7200(大日本インキ社製)等のジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂;NC−3000P(日本化薬社製)等のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂;ESN−165S(東都化成社製)等のナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂;エピコート630(ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン430(大日本インキ社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ZX−1542(東都化成社製)、エピクロン726(大日本インキ社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等のアルキルポリオール型エポキシ樹脂;YR−450、YR−207(いずれも東都化成社製)、エポリードPB(ダイセル化学社製)等のゴム変性型エポキシ樹脂;デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等のグリシジルエステル化合物;エピコートYL−7000(ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂;その他YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも東都化成社製)、XAC4151(旭化成社製)、エピコート1031、エピコート1032(いずれもジャパンエポキシレジン社製)、EXA−7120(大日本インキ社製)、TEPIC(日産化学社製)等が例示される。
【0065】
上記エポキシ樹脂の配合量としては特に限定されず、使用する目的に応じ上述したエポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートとの種類、配合量等に合わせて適宜調整される。
【0066】
<増感色素>
本発明の接着剤には、スペクトル感度を移動又は拡大する増感色素又は助開始剤を更に加えることにより、本発明の光硬化性組成物の光重合を促進することができる。
【0067】
この様な増感色素としては、芳香族化合物を用いるのが特に好ましく、例えば、ベンゾフェノン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、クマリンやフェノチアジン及びその誘導体、ジチオリデンチオバルビツール酸及びその誘導体、3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ローダニン、カンファーキノン、エオシン、ローダミン、エリスロシン、キサンテン、チオキサンテン、アクリジン(例えば、9−フェニルアクリジン)、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、シアニン、メロシアニン染料等が挙げられる。
【0068】
前記チオキサントンとしては、例えば、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル〕チオキサントン、1,3−ジメチル−2−ヒドロキシ−9H−チオキサンテン−9−オン−2−エチルヘキシルエーテル、
【0069】
1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、N−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−カルボン酸ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド等が挙げられる。
【0070】
前記ベンゾフェノンとしては、例えば、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(メチルエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(p−イソプロピルフェノキシ)ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾアート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ)ベンゾフェノン、1−〔4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(トルエン−4−スルホニル)プロパン−1−オン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタナミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−〔2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチルベンゼンメタナミニウムクロリド等が挙げられる。
【0071】
前記クマリンとしては、例えば、クマリン1、クマリン2、クマリン6、クマリン7、クマリン30、クマリン102、クマリン106、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン307、クマリン314、クマリン314T、クマリン334、クマリン337、クマリン500、3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3’−カルボニル−ビス〔5,7−ジ(プロポキシ)クマリン〕、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジエトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ジメチルアミノ−3−フェニルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−フェニルクマリン、特開平9−179,299号及び第9−325,209号公報に開示されたクマリン誘導体、例えば7−〔{4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−S−トリアジン−2−イル}アミノ〕−3−フェニルクマリン等が挙げられる。
【0072】
前記ジチオリデンチオバルビツール酸及びその誘導体としては、5−(1,3−ジチオール−2−イリデン)−2−チオキソジヒドロピリミジン−4,6(1H,5H)−ジオン、2−(2−(1,3−ジブチル−4、6−ジオキソ−2−チオキソテトラヒドロピリミジン−5(6H)−イリデン)−1,3−ジチオール−4−イル)酢酸メチル、2−(2−(1,3−ジエチル−4,6−ジオキソ−2−チオキソテトラヒドロピリミジン−5(6H)−イリデン)−1,3−ジチオール−4−イル)酢酸エチル、2−(2−(1,3−ジブチル−4,6−ジオキソ−2−チオキソテトラヒドロピリミジン−5(6H)−イリデン)−1,3−ジチオール−4−イル)酢酸、1,3−ジエチル−5−(4−メチル−1,3−ジチオール−2−イリデン)−2−チオキソジヒドロピリミジン−4,6(1H,5H)−ジオン等が挙げられる。
【0073】
前記3−(アロイルメチレン)チアゾリンとしては、3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−ベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリン等が挙げられる。
【0074】
前記ローダニンとしては、4−ジメチルアミノベンザルローダニン、4−ジエチルアミノベンザルローダニン、3−エチル−5−(3−オクチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)ローダニン、特開平8−305,019号公報に開示された、式〔1〕、〔2〕、〔7〕で表されるローダニン誘導体等が挙げられる。
【0075】
前記化合物の他にも、アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、ダンシル酸誘導体、9,10−アントラキノン、アントラセン、ピレン、アミノピレン、ペリレン、フェナトレン、フェントレンキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、クルクミン、キサントン、チオミヒラーケトン、α−(4−ジメチルアミノベンジリデン)ケトン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデンシクロペンタノン、2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド、フェノチアジン、メチルフェノチアジン、アミン、N−フェニルグリシン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル、4−ジメチルアミノアセトフェノン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾアート、ポリ(プロピレングリコール)−4−(ジメチルアミノ)ベンゾアート等を用いることができる。
【0076】
本発明の光硬化性組成物に添加する添加剤(d)としては、前記の中でも、ベンゾフェノン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、クマリン誘導体から選択される少なくとも1種の光増感色素化合物が好ましく挙げられる。
【0077】
<熱硬化剤>
本発明の光硬化性組成物中には、更にエポキシ樹脂等の熱硬化を促進する目的により、熱硬化剤を含有してもよい。
【0078】
上記熱硬化剤は、加熱により硬化性樹脂中の不飽和二重結合やエポキシ基等を反応させ、架橋させるためのものであり、硬化後の硬化物の接着性、耐湿性を向上させる役割を有する。上記熱硬化剤としては特に限定されないが、本発明のシール剤を用いて滴下工法により液晶表示素子を製造する際に、100〜120℃の硬化温度にて硬化させるため、低温反応性に優れるアミン及び/又はチオール基を含有することが好ましい。
【0079】
上記アミン及び/又はチオール基を含有する熱硬化剤としては、例えば1,3−ビス[ヒドラジノカルボノエチル−5−イソプロピルヒダントイン]やアジピン酸ジヒドラジド等の有機酸ジヒドラジド化合物;ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、N−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]尿素、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、N,N’−ビス(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)尿素、N,N’−(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)−アジポアミド、2−フェニルー4−メチルー5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−イミダゾリン−2−チオール、2−2’−チオジエタンチオール、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0080】
これらの熱硬化剤の望ましい含有量として特に限定されないが、上記親水性の硬化性樹脂100重量部に対して好ましい下限は1重量部、好ましい上限は8重量部である。1重量部未満であると、本発明のシール剤に充分な熱硬化性を付与できないことがあり、8重量部を超えると、本発明のシール剤を用いて滴下工法により液晶表示素子を製造した際に、未反応の熱硬化剤が液晶相に溶出したり、耐湿信頼性等の物性に影響を及ぼしたりすることがある。
【0081】
<フィラー>
上記フィラーは、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善等の役割を有する。上記フィラーとしては特に限定されず、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、酸化アルミニウム( アルミナ) 、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、石膏、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化珪素等の無機フィラー、或いはまた、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びこれらと共重合可能なモノマー類を共重合した共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子等の公知の有機フィラー等が挙げられる。
【0082】
上記フィラーの形状としては、特に限定されず、球状、板状、針状等の定形物または非定形物が挙げられる。上記フィラーの中では、線膨張率、形状保持性の観点で無機フィラー が好ましく、光透過性の観点から二酸化ケイ素、タルクがより好ましい。
【0083】
これらフィラーは、シラン化合物によって表面処理されたものを使用しても良い。例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらシランカップリング剤は2種以上を混合して用いても良い。シラン化合物を使用する事により耐湿信頼性が優れた接着剤が得られる。
【0084】
上記フィラーの粒子径の好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は1.5μmである。本発明のシール剤が上記フィラーを含有する場合、その配合量としては、上記硬化性樹脂100重量部に対して好ましい下限は4重量部、好ましい上限は40重量部である。
【0085】
<シラン化合物>
上記シランカップリング剤は、主に本発明の組成物とガラス基板等とを良好に接着するための助剤としての役割を有する。上記シランカップリング剤としては、例えば、上述のシラン化合物が使用でき、これらのシラン化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
シランカップリング剤の望ましい含有量としては特に限定されないが、その使用量は液晶シール剤の組成物100重量部に対して、通常0〜15重量部の含有量、好ましくは0.1〜3重量部の含有量である。
【0087】
<その他添加剤>
本発明の光硬化性組成物には、更に、必要に応じて、粘度調整のための反応性希釈剤、チクソ性を調整する揺変剤、パネルギャップ調整の為のポリマービーズ等のスペーサ、3−p−クロロフェニル−1,1−ジメチル尿素等の硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、顔料、染料、可塑剤、その他添加剤等を含有してもよい。また、望のセルギャップを確保するためスペーサー等を配合しても良い。
【0088】
本発明の光硬化性組成物は、光照射によって充分な接着強度を有するが、非露光部を加熱によって硬化させるために、熱ラジカル発生剤を併用してもよい。熱ラジカル発生剤としては、気泡が発生しない有機過酸化物の使用が好ましい。有機過酸化物は汎用に使用されているものが使用でき、例えば、ペルオキシジカーボナート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシドなど、各種の過酸化物が挙げられる。このような有機過酸化物は1 種を用いても2 種以上を併用してもよく、また溶媒で希釈したり、粉体に吸着させて用いてもよい。熱ラジカル発生剤は、組成物全量に対して0.1〜10質量% 使用することが好ましい。前記割合が0 . 1質量% 未満では、加熱時の硬化が不充分となる傾向があり、1 0 質量% を超えると光硬化反応に影響を及ぼし好ましくない場合がある。
【0089】
[シール剤の性状]
本発明の組成物は、E型粘度計を用いて25℃において1.0rpmの条件で測定したときの粘度の好ましい下限は200Pa・s、好ましい上限は400Pa・sである。200Pa・s未満であると、本発明の組成物を用いて滴下工法により液晶表示素子を製造した場合に、塗工する際に糸引きが生じたり、シール幅が不均一となったりし、400Pa・sを超えると、作業性が著しく劣ったり、ディスペンサーによる塗工が困難になったりする。
【0090】
本発明の組成物は、硬化させた硬化体の体積抵抗率が10Ω・cm以上であることが好ましい。10Ω・cm未満であると、本発明の組成物の硬化後の絶縁性が悪くなり、本発明の組成物を用いて製造する液晶表示素子がショートすることがある。
【0091】
本発明の組成物を製造する方法としては特に限定されず、上記硬化性樹脂及び光ラジカル重合開始剤と、必要に応じて配合される上記熱硬化剤、フィラー及びシランカップリング剤等の所定量とを、従来公知の方法により混合する方法等が挙げられる。この際、含有するイオン性不純物を除去するために、イオン吸着性固体と接触させてもよい。
【0092】
また、本発明の組成物を用いて滴下工法による液晶表示素子を製造する場合、基板上に形成した本発明の組成物のシールパターンに、50μm角以上の大きさの光が直接照射されない非照射部が存在することがある。この非照射部は、液晶表示素子の構造に由来するものであり、例えば、カラーフィルター基板のブラックマトリックス、金属配線、トランジスタ等と、上記シールパターンとが重なった部分である。従来の滴下工法による液晶表示素子の製造に用いられるシール剤は、このような非照射部が存在すると、光を照射した際に上記非照射部を充分に光硬化させることができず、未硬化のシール剤の成分が液晶中へ溶出して液晶汚染の原因となっていた。しかし、本発明の組成物は、硬化性樹脂に含まれる硬化性官能基の60mol%以上が(メタ)アクリロイル基であり、硬化率が高く、とりわけ、上記光ラジカル重合開始剤が、アセトニトリル中で測定した400nmにおけるモル吸光係数の下限が200M −1・cm−1である場合には、本発明の組成物は、光に対する反応性が非常に優れたものとなる。そのため、本発明の組成物は、シールパターンに上記非照射部が存在している場合であっても、該非照射部を含むシールパターン全体を充分に硬化させることができ、液晶汚染の発生を好適に防止することができる。
【0093】
露光光源としては特に限定されないが、例えば低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、レーザー光線およびLEDなどが挙げられる。適宜、光学フィルター等を使用し、短波長の光をカットしてもよい。
また、照射する光の波長としては組成物保護のため、340nm以上が好ましく、さらには370nm以上が好ましく、特に390nm以上が好ましい。
【0094】
また、本発明の液晶滴下工法用組成物に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような上下導通材料を用いれば、微細なパターンとした場合であっても、透明基板の電極を導電接続することができる。
【0095】
本発明の液晶滴下工法用組成物と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。上記導電性微粒子としては特に限定されず、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。

【実施例】
【0096】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
<合成例1> 化合物(2)の合成
還流冷却管を取り付けた2Lの3つ口フラスコに室温にて5,6−ジメトキシベンゾフラン−3−オン(19.40g)、酢酸カリウム(12.76g)、エタノール300mlを加え、ヒドロキシルアミン塩酸塩(8.34g)を加えた。次に、窒素気流下、2時間還流を行い、内温40℃まで冷却後、水700mlと酢酸エチル700mlを加えて抽出を行った。さらに分液操作によって有機層を3回水洗し、有機層を濃縮することでオキシム体(17.82g)が得られた(収率85%)。
【0098】
次に、1L3つ口フラスコにオキシム体全量(17.82g)、アセトン300ml、トリエチルアミン(12.90g)を入れ、窒素気流下氷冷にて、無水酢酸(13.02g)を30分かけて滴下した。40℃で3時間攪拌後、水を500ml加え、析出した結晶を減圧濾過することにより、粗結晶(19.10g)を得た。粗結晶を酢酸エチル/ヘキサンにより精製することで、目的とする化合物(2)12.6gが得られた(オキシム体からの収率59%)。
【0099】
<合成例2> 化合物(7)の合成
300mlの3つ口フラスコに、6−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3(2H)−オン(15.00g)、炭酸水素ナトリウム(3.07g)、N,N−ジメチルホルムアミド50mlを加え、窒素気流下、50℃にてヨードブタン(6.74g)を滴下し、その後、内温100℃にて3時間攪拌を行った。内温を40℃まで冷却後、水100mlと酢酸エチル150mlを加えて抽出を行った。 さらに分液操作によって有機層を3回水洗し、有機層を濃縮することでアルキル化体(16.08g)が得られた(収率78%)。得られた合成中間体(アルキル化体)は、合成例1と同様の手法でオキシム化し、アセチル化、精製することで、目的とする化合物(7)9.24gを合成した(2工程の収率45%)。
【0100】
<合成例3> 化合物(13)の合成
300mlの3つ口フラスコに、7−ヒドロキシ−1−ベンゾフラン−3(2H)−オン(15.00g)、炭酸水素ナトリウム(3.07g)、N,N−ジメチルホルムアミド50mlを加え、窒素気流下、50℃にて1−ブロモ−2−エチルヘキサン(7.07g)を滴下し、その後、内温110℃にて4時間攪拌を行った。内温を40℃まで冷却後、水100mlと酢酸エチル150mlを加えて抽出を行った。 さらに分液操作によって有機層を3回水洗し、有機層を濃縮することでアルキル化体(21.51g)が得られた(収率82%)。得られた合成中間体(アルキル化体)21.51gを、合成例1と同様の手法でオキシム化した。(収量16.83g、収率74%)
【0101】
次に、1L3つ口フラスコに得られたオキシム体16.80g、アセトン84ml、トリエチルアミン(9.19g)を入れ、窒素気流下氷冷にて、クロロ炭酸フェニル(14.23g)を30分かけて滴下した。40℃で3時間攪拌後、水を300ml、酢酸エチル300mlを加えて抽出を行った。 さらに分液操作によって有機層を3回水洗し、有機層を濃縮することで粗体(22.41g)を得た。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、目的とする化合物(13)12.3gが得られた(オキシム体からの収率51%)。
【0102】
<合成例4> 化合物(23)の合成
合成例1と同様の手法で5,6−ジメトキシベンゾチオフェン−3(2H)−オンをオキシム化し、アセチル化、精製することで、目的とする化合物(23)を合成した(2工程の収率60%)。
【0103】
<合成例5> 化合物(47)の合成
合成例1と同様の手法で6-ブトキシインドリン−3-オンをオキシム化し、アセチル化、精製することで、目的とする化合物(47)を合成した(2工程の収率35%)。
【0104】
<合成例6> 化合物(59)の合成
合成例1と同様の手法で5,6−ジブトキシ−1−インダノンをオキシム化し、アセチル化、精製することで、目的とする化合物(59)を合成した(2工程の収率63%)。
【0105】
<実施例1>光硬化性接着剤の調製
ビスフェノールA型エポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製エベクリル3700)70部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ社製エピクロン830CRP)30部、熱硬化剤(味の素ファインテクノ社製、アミキュアVDII−J)15部、シラン化合物(信越化学社製KBM−403)0.5部、充填剤(アドマテックス社製アドマファインSO−C1)、そして合成例1で調製した例示化合物(2)1.0部、増感剤として2−クロロ−4−プロポキシチオキサントン(略号CPTX)0.3部を粉体混合機を用いて混合後、さらに3本ロールを用いて配合することによって光硬化性接着剤を得た。
【0106】
<実施例2〜10、比較例1〜2>
実施例1記載の例において、用いる原料を表1のごとく変更した以外は同様にして行い、各光硬化性接着剤を得た。
【0107】
実施例1〜10、比較例1〜2で作製した光硬化性接着剤について、以下の方法により評価を行った。
【0108】
(1)UV硬化時接着強度テスト
得られた液晶シール剤100gにスペーサーとして5μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌を行う。この液晶シール剤を50mm×50mmのガラス基板上に塗布し、その液晶シール剤上に1.5mm×1.5mmのガラス片を貼り合わせ、高圧水銀ランプ(390nm以下カットのフィルター使用)により2000mJ/cmの可視光を照射し、硬化した。そのガラス片のせん断接着強度を様々な温度のホットプレート上で測定した。その結果を表1に示した。
【0109】
(2)UV硬化+後加熱後接着強度テスト
得られた液晶シール剤100gにスペーサーとして5μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌を行う。この液晶シール剤を50mm×50mmのガラス基板上に塗布し、その液晶シール剤上に1.5mm×1.5mmのガラス片を貼り合わせ高圧水銀ランプ(390nm以下カットのフィルター使用)により2000mJ/cmの可視光を照射し、硬化した後、120℃オーブンに1時間投入した。そのガラス片のせん断接着強度を測定した。その結果を表1に示した。
【0110】
(3)パネル表示ムラ
ブラックマトリックス(BM)及び透明電極付き基板に、得られたそれぞれの液晶滴下工法用シール剤を長方形の枠を描くようにディスペンサーで塗布した。続いて、液晶(チッソ社製;JC−5004LA)の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに別の透明電極付き基板(BM無し)を重ね合わせて、BM付き基板側からシール部に高圧水銀ランプ(390nm以下カットのフィルター使用)で光源を50mW/cmで20秒照射した。この時、押しつぶされたシール剤の線幅は約1.2mmであり、そのうちの0.1mmはBMと重なるように描画した。その後、液晶アニールを120℃1時間行い、同時にシール剤を熱硬化させて液晶表示用素子を得た。
【0111】
また、別に、押しつぶされた後でもBMに重ならないようにシール剤を外側に配置した液晶表示素子も同様の方法で作製した。
【0112】
得られたそれぞれの液晶滴下工法用シール剤0.3gをサンプル管(No.2)に計りとり、サンプル管底面にシール剤が平らになるまで放置した後、スポットUV装置を用いてサンプル管の上面、底面それぞれに2000mJ/cmのUV照射を行った。その後、液晶(チッソ社製;JC−5004LA)を0.5g入れてフタをし、120℃1時間の加熱を行って液晶中拡散物確認サンプルを作製した。
【0113】
得られた各実施例及び比較例に係る液晶表示素子について、80℃の環境下200時間放置後にシール部周辺の液晶に生じる色むらを目視にて観察し、以下の基準により評価を行った。その結果を表1に示す。
【0114】
◎:色むらが全くない
○:色むらがほとんどない
△:少し色むらがある
×:色むらがかなりある
【0115】
【表1】

【0116】
本発明によれば、液晶パネルの製造に用いた場合に、光硬化および熱硬化後の接着強度が充分に高く、シール剤溶出によるパネル表示ムラを少なくできる光硬化性組成物、いわゆる液晶シール剤、そして液晶表示パネルの製造方法を提供できる。
【0117】
本発明以外の光重合開始剤を用いた場合には、光硬化後の接着強度が低くなり、かつ、液晶パネルの表示ムラが大きくなるため好ましくない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、光重合開始剤を含有する組成物であって、該光重合開始剤が下記一般式(I)で表される光重合開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【化1】


一般式(1)
(ただし、上記一般式(1)中、Rは、水素原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表し、Rは、ハロゲン原子、炭化水素基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、複素環基、ヒドロキシ基、及びアミノ基のいずれかを表す。XはO、S、Se、−NR−、−CR−のいずれかを表す。Ra、Rb、Rcは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。mは、0〜4の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、XがOであることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
更に増感色素を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記増感色素が、波長300〜800nmの領域に実質的に光吸収を持つことを特徴とする請求項3に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記重合性モノマーおよび/またはオリゴマーが、エポキシアクリレート又はエポキシメタアクリレートであることを特徴する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記重合性モノマーおよび/またはオリゴマーが、エポキシアクリレート又はエポキシメタアクリレートとエポキシ樹脂との混合物であることを特徴する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
更に無機フィラーを配合してなることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
更にシラン化合物を配合してなることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の組成物を用い、波長390〜800nmの光を照射して硬化させ、接着させることを特徴とする接着方法。
【請求項10】
請求項9の方法を用いることを特徴とする液晶パネルの製造方法。

【公開番号】特開2009−215364(P2009−215364A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57911(P2008−57911)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】