説明

光硬化性組成物及びこれを硬化させてなる光制御膜

【課題】光散乱角度域が広い光制御膜の原料として好適な光硬化性組成物を提供し、この光硬化性組成物を硬化させることにより、光散乱角度域が広い光制御膜を提供する。
【解決手段】重合性化合物として、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を複数種用い、該化合物の少なくとも1種として、数平均分子量20,000〜100,000の化合物を用いて、光硬化性組成物とする。この光硬化性組成物の膜に光を照射して硬化させることにより、光制御膜とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光制御膜の原料として好適な光硬化性組成物に関する。また、本発明は、この光硬化性組成物を硬化させてなる光制御膜にも関係している。
【背景技術】
【0002】
光制御膜(例えば特許文献1〜8参照)は、その曇価に角度依存性があるという特異な性質を生かして、例えば、プライバシーを保護するため、窓ガラスやキャッシュディスペンサーのタッチパネルなどに貼着して視野角制御フィルムとして用いられたり、フラットパネルディスプレーなどに貼着して視野角拡大フィルムとして用いられたりしている。また、光制御膜をプロジェクション用スクリーンに適用することも提案されている(例えば特許文献9〜15参照)。
【0003】
光制御膜における曇価の角度依存性は、次のようにして測定される。すなわち、図1に示す如く、光制御膜の試験片1への入射光の角度θを0〜180°の間で変化させて、それぞれの角度毎に曇価を測定すると、特定の角度範囲では入射光が散乱して高い曇価を示し、それ以外の角度範囲では入射光が基本的に直進透過して低い曇価を示す。そして、この高い曇価を示す角度範囲を、本明細書では光散乱角度域と呼ぶこととする。
【0004】
なお、角度θは、試験片1の面と平行な方向を0°とし、試験片1の法線方向を90°とする値であり、試験片1の回転は、曇価の角度依存性が最大となる方向に行う。図中にあるAとBは、左の図(試験片1に垂直方向から光を入射する場合:θ=90°)と右の図(試験片1に斜め方向から光を入射する場合)とで、試験片1の対応する部分がわかるように付した符号である。
【0005】
また、曇価は、積分球式光線透過率測定装置を用いて、光制御膜の全光線透過率及び拡散透過率を測定し、下式により求められる値である。
【0006】
【数1】

【0007】
そして、このような光制御膜を得るため、例えば、特許文献1〜5や8には、それぞれ分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を有し、互いに屈折率が異なる少なくとも2種の化合物を含有する光硬化性組成物を原料として用い、この組成物の膜に所定の方向から光を照射して硬化させることが開示されている。また、上記化合物としては、各種オリゴマーないしモノマーが用いられ、具体的には、オリゴマーとして、分子量が数千のポリアルキレングリコールとジイソシアネートとヒドロキシ基含有アクリレートとの反応により得られるものが用いられている。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−309902号公報(特公平7−58361号公報)
【特許文献2】特開昭64−40905号公報(特許第2547419号公報)
【特許文献3】特開昭64−77001号公報(特許第2691543号公報)
【特許文献4】特開平2−67501号公報(特許第2702521号公報)
【特許文献5】特開平2−54201号公報(特許第2782200号公報)
【特許文献6】特開平3−107901号公報(特許第2822065号公報)
【特許文献7】特開平3−107902号公報(特許第2782250号公報)
【特許文献8】特開平6−11606号公報(特許第3211381号公報)
【特許文献9】特開平3−127039号公報
【特許文献10】特開平3−127042号公報(特許第2838295号公報)
【特許文献11】特開平3−200949号公報
【特許文献12】特開平4−77728号公報
【特許文献13】国際公開第2004/034145号パンフレット
【特許文献14】特開2005−316354号公報
【特許文献15】特開2005−331631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光制御膜としては、視野角制御効果を高めるため、また視野角拡大効果を高めるため、光散乱角度域が広いものが求められることが多いが、従来の光硬化性組成物では、かかる光制御膜が容易に得られ難いという問題があった。そこで、本発明の目的は、光散乱角度域が広い光制御膜の原料として好適な光硬化性組成物を提供することにある。そして、この光硬化性組成物を硬化させることにより、光散乱角度域が広い光制御膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、前記の光硬化性組成物に、より高分子量のオリゴマーを配合することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を複数種含有し、該化合物の少なくとも1種が、数平均分子量20,000〜100,000の化合物であることを特徴とする光硬化性組成物を提供するものである。また、本発明によれば、この光硬化性組成物の膜に光を照射して硬化させてなる光制御膜も提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光硬化性組成物を用いることにより、光散乱角度域の広い光制御膜を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の光硬化性組成物は、分子内に少なくとも1個の重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、単に重合性化合物ということがある)を複数種含有するものである。この重合性化合物は、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アリリデン基、スチリル基、アクリロイルアミノ基、クロトニル基、シンナモイル基、ブタジエン構造の如き共役ポリエン構造、シクロペンテン環構造の如きシクロオレフィン環構造などとして有するものであり、好ましくは、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アリリデン基として有するものであり、より好ましくは、アクリロイル基として有するものである。
【0013】
本発明では、重合性化合物の少なくとも1種として、数平均分子量20,000〜100,000の化合物を使用する。このように光硬化性組成物に所定の高分子量の重合性化合物を配合することにより、光散乱角度域が広い光制御膜を得ることができる。また、光散乱角度域の曇価を高めることもできる。
【0014】
上記の高分子量の重合性化合物は、各種オリゴマー、例えば、ポリエステルアクリレート、ポリオールポリアクリレート、変性ポリオールポリアクリレート、イソシアヌル酸骨格のポリアクリレート、メラミンアクリレート、ヒダントイン骨格のポリアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートや、これらの多官能性アクリレートに対応するメタクリレートなどの中から選択することができる。
【0015】
上記の高分子量の重合性化合物としては、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を複数個有するものが好ましく用いられる。また、化合物の種類としては、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0016】
ウレタン(メタ)アクリレートは、分子内に複数個のヒドロキシ基を有する化合物であるポリオールと、分子内に複数個のイソシアナト基を有する化合物であるポリイソシアネートと、分子内にヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られるものであるのが好ましい。特に、上記ポリオールとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの如きポリアルキレングリコールを用いることにより得られる、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるのが好ましい。
【0017】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートないしメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基ないしメタクリロイルオキシ基を意味する。
【0018】
上記の高分子量の重合性化合物と併用することができる重合性化合物としては、各種モノマー、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、フェニルカルビトールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ω−ヒドロキシヘキサノイルオキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、アクリロイルオキシエチルフタレート、イソボルニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレートや、これらの単官能性アクリレートに対応するメタクリレート、さらには、N−ビニルピロリドン、トリアリルイソシアヌレート、ジエチレングリコールジアリルカーボネート、ジアリリデンペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0019】
本発明の光硬化性組成物では、上記のとおり、重合性化合物が複数種用いられ、その少なくとも1種が数平均分子量20,000〜100,000の化合物であるが、その際、通常、互いに屈折率が異なるものが選択される。このように互いに屈折率が異なる少なくとも2種類の重合性化合物を含有する組成物の膜に所定の方向から光を照射して硬化させることで、光を散乱する領域、すなわち光散乱角度域が形成される。この組成物は、それを構成する複数の化合物相互の溶解性と屈折率差によって、曇価の角度依存性を発現するものであり、相溶性があまり良くない組合せで屈折率差が大きく、かつ反応速度が異なる場合に、光の散乱する度合い、すなわち曇価が大きくなる。この屈折率差は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.02以上である。また、各化合物の使用割合は、通常、任意の1種類の化合物100重量部を基準として、これ以外の化合物がそれぞれ10〜900重量部である。なお、重合性化合物を3種類以上使用する場合、必ずしも全ての化合物の屈折率が互いに異なっている必要はなく、いずれか2つ化合物の屈折率が互いに異なっていればよい。
【0020】
本発明の光硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれていてもよく、通常の光重合で使用されているもの、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどを使用することができる。
【0021】
光重合開始剤を使用する場合の光重合開始剤の使用量は、重合性化合物の全量100重量部に対し、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部である。この使用量が多いほど、得られる光制御膜の光散乱角度域が広くなり、光硬化性組成物の硬化も促進される傾向にあるが、あまり多いと、得られる光制御膜の熱や光、物理的衝撃、有機溶剤などに対する耐性が低くなる傾向にある。光重合開始剤は必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0022】
また、本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて、重合性化合物及び光重合開始剤以外の成分、例えば、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ナイロンの如きポリマー類、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリルの如き有機溶剤、有機ハロゲン化合物、有機ケイ素化合物、可塑剤、安定剤の如き添加剤などが含まれていてもよい。
【0023】
以上説明した本発明の光硬化性組成物の膜に所定の方向から光を照射して硬化させることで、具体的には、この組成物を基板上に塗布するか、又はセル中に封入して膜状とし、棒状光源より光を照射しながら徐々に硬化させることで、入射光が広い角度域で散乱し、他の角度域では基本的に直進透過する光散乱膜、すなわち光制御膜が得られる。硬化に用いる光は、この組成物を硬化させるものであればどのような波長を有していてもよく、例えば、可視光、紫外線などがよく用いられる。紫外線は、水銀ランプやメタルハライドランプなどから発せられるが、棒状のランプを用いた場合には、その照射条件を調節することにより、生成した光硬化膜が光源の長軸と短軸方向に対して異方性を示し、光源の長軸方向を軸として回転させた場合にのみ、特定角度の光を散乱するようになる。
【0024】
光硬化の際、光の照射方向を中心に光散乱角度域が発現する。例えば、光硬化性組成物から形成された膜面にほぼ垂直に光を照射すれば、当該垂直方向、すなわち法線方向を中心に、光散乱角度域が発現するし、法線方向に対して所定角度傾いた斜め方向から光を照射すれば、その傾いた方向を中心に、光散乱角度域が発現する。
【0025】
光硬化性組成物膜に対して垂直方向から光を照射する場合の例を、図2に基づいて説明する。図2の(A)は、光硬化性組成物膜に対して垂直方向から光を照射する場合に採用しうる装置の一例を模式的に示す側面図であり、同(B)は、その装置の斜視図である。この装置は、白抜き矢印方向に移動するコンベア2と、その上方に配置され、コンベアの幅方向にわたってスリット4が形成された遮光板3と、さらにその上方に所定距離隔てて配置された棒状の光源ランプ5とで構成されている。スリット4は、光源ランプ5の長さ方向と一致するように形成されている。そして、光硬化性組成物膜が形成された基板6をコンベア2上に載置し、一定速度で移動させながら、光源ランプ5からの光を遮光板3のスリット4を介して光硬化性組成物膜に照射すれば、該組成物膜には垂直方向の光が中心となってあたるので、垂直方向(法線方向)に屈折率の異なる相が交互に形成され、その方向を中心に光散乱角度域が発現することになる。スリット4の幅や棒状の光源ランプ5から光硬化性組成物膜までの距離、光硬化性組成物膜の厚さ、照射光量、照射光の波長などを制御することにより、曇価が大きくなる角度範囲、すなわち光散乱角度域をさらに広くできる。
【0026】
次に、光硬化性組成物膜に対して斜め方向から光を照射する場合の例を、図3に基づいて説明する。図3の(A)は、光硬化性組成物膜に対して斜め方向から光を照射する場合に採用しうる装置の一例を模式的に示す側面図であり、同(B)は、その装置の斜視図である。この装置は、白抜き矢印方向に移動するコンベア2と、その上方で所定位置を覆う遮光板3と、さらにその上方に所定距離隔てて配置された棒状の光源ランプ5とで構成されている。この例における遮光板3は、その端部が光源ランプ5の直下からコンベア2の進行方向側へ少しはみ出している。そして、光硬化性組成物膜が形成された基板6をコンベア2上に載置し、一定速度で移動させながら、光源ランプ5からの光を遮光板3側に向けて照射すれば、所定の角度αをもった光が中心となって光硬化性組成物膜にあたるので、この光の入射方向に屈折率の異なる相が交互に形成され、その方向を中心に光散乱角度域が発現することになる。光照射角度αを変化させることにより、光散乱角度域の中心値を変化させることができ、また、光源ランプ5から光硬化性組成物膜までの距離や光硬化性組成物膜の厚さ、照射光量、照射光の波長などを制御することにより、曇価が大きくなる角度範囲、すなわち光散乱角度域をさらに広くできる。
【0027】
こうして得られる本発明の光制御膜は、60%以上の曇価を示す光散乱角度域の幅が30°以上であるのが好ましく、より好ましくは35°以上である。ただし、この光散乱角度域の幅があまり大きいと、視野角制御フィルムや視野角拡大フィルム、プロジェクション用スクリーンやその部材などとして、かえって使い難くなるので、通常は100°以内である。
【0028】
本発明の光制御膜は、広い光散乱角度域を有し、それ自体が優れた光拡散性能を有するが、その光散乱角度範囲をさらに広げるため、あるいは光散乱の均一性を向上させるために、2枚以上積層して用いることもできる。光制御膜の積層は、例えば、光制御膜を適当な大きさに切断し、枚葉で貼合することにより行ってもよいし、個別に作製した2枚以上の光制御膜を同時に貼合装置に供給し、連続的に貼合することにより行ってもよい。その際、光制御膜同士の貼合をより強固なものにするために、膜間に粘着剤等の媒体を挿入することも可能である。
【0029】
本発明の光制御膜は、透明ガラスや透明プラスチック等の透明基材表面に被着させたり、複数の基材の間に介挿させたりして用いることもできる。また、特にプロジェクション用スクリーンに適用する場合、磨りガラスや、フィラー添加量が比較的少なく、光拡散性を低下させて全光線透過率を高めた光拡散板に、光制御膜を積層して用いることもできる。光制御膜を形成する際に用いる基板を、そのまま、上記した透明又は光拡散性の基材とすることもできる。
【0030】
また、本発明の光制御膜は、平板で用いてもよいし、最外層をレンチキュラーレンズなどのレンズ形状にしてもよい。レンズ曲面を形成する方法としては、レンズ曲面を有する基材に光制御膜を積層する方法のほか、レンズ曲面を有する光制御膜を形成する方法がある。後者の方法を採用する場合、例えば、レンズ曲面を有する鋳型を使用して、そこに光硬化性組成物を塗布し、さらに光照射して、硬化膜にレンズ曲面をもたせればよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す部は、重量基準である。
【0032】
ウレタンアクリレートとしては、次のものを使用した。
ウレタンアクリレート(1):平均分子量約10,000のポリプロピレングリコールと、該ポリプロピレングリコール1モルあたり、2モルのイソホロンジイソシアネート、及び2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応によって得たポリエーテルウレタンアクリレート(数平均分子量22,000)。
ウレタンアクリレート(2):平均分子量約15,000のポリプロピレングリコールと、該ポリプロピレングリコール1モルあたり、2モルのイソホロンジイソシアネート、及び2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応によって得たポリエーテルウレタンアクリレート(数平均分子量27,400)。
ウレタンアクリレート(3):平均分子量約3,000のポリプロピレングリコールと、該ポリプロピレングリコール2モルあたり、0.3モルのトルエンジイソシアネート、2.7モルのヘキサメチレンジイソシアネート及び2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応によって得たポリエーテルウレタンアクリレート(数平均分子量12,100)。
【0033】
上記の数平均分子量は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィーにより次の条件で求めた値である。
カラム:東ソー(株)のTSKgel SuperH3000〔6.0mmφ×150mm〕を1本、TSKgel SuperH2000〔6.0mmφ×150mm〕を2本およびTSKgel SuperH1000〔6.0mmφ×150mm〕を1本、順番に計4本直列接続。
温度:40℃。
キャリア:テトラヒドロフラン(流量0.5mL/分)。
試料:ウレタンアクリレート10mgをテトラヒドロフラン10mLに溶解し、50μL注入。
検出:RI。
標準品:ポリスチレン。
【0034】
実施例1
ウレタンアクリレート(1)40部に対して、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート60部、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のDarocure 1173〕1.5部、及び2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール〔住友化学(株)のスミソーブ300〕0.015部を添加混合した光硬化性組成物を、フィルム状の透明ポリエチレンテレフタレート基材(以下、PET基材という)上に約230μmの厚さで塗布した。その塗膜の上方80cmの位置に、80W/cmの棒状高圧水銀ランプを固定し、塗膜全面に光が垂直にあたるようにスリットをつけた遮光板を介して、1.0m/分の速度で塗膜付きPET基材を横方向へ移動させつつ光照射し(図2参照)、光制御膜を得た。この光制御膜について、積分球式光線透過率測定装置〔ガードナー社のヘイズガードプラス4725〕を用い、入射光の角度を0〜180°の間で変化させて、角度毎の曇価を測定した結果、60%以上の曇価を示す光散乱角度域は77〜110°の範囲(幅33°)であった。また、この光散乱角度域における曇価の最大値は94.5%であった。
【0035】
実施例2
ウレタンアクリレート(1)にかえてウレタンアクリレート(2)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた光制御膜について、実施例1と同様に曇価を測定した結果、60%以上の曇価を示す光散乱角度域は70〜105°の範囲(幅35°)であった。また、この光散乱角度域における曇価の最大値は95.5%であった。
【0036】
比較例1
ウレタンアクリレート(1)にかえてウレタンアクリレート(3)を使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、得られた光制御膜について、実施例1と同様に曇価を測定した結果、60%以上の曇価を示す光散乱角度域は81〜109°の範囲(幅28°)であった。また、この光散乱角度域における曇価の最大値は89.3%であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の光制御膜は、例えば、窓ガラスやキャッシュディスペンサーのタッチパネルなどに貼着して視野角制御フィルムとして用いることができる。また、フラットパネルディスプレーなどに貼着して視野角拡大フィルムとして用いることもできる。さらに、プロジェクション用スクリーンに適用することもできる。
【0038】
また、本発明の光硬化性組成物を用いて、例えば特開昭64−40906号公報に開示の如く、曇価に角度依存性がない光散乱膜を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】曇価の角度依存性の測定方法を説明するための図である。
【図2】光硬化性組成物塗膜に対して垂直方向から光を照射する場合の装置の例を示す側面図(A)と斜視図(B)である。
【図3】光硬化性組成物塗膜に対して斜め方向から光を照射する場合の装置の例を示す側面図(A)と斜視図(B)である。
【符号の説明】
【0040】
1……曇価を測定する試験片、
2……コンベア、
3……遮光板、
4……遮光板に設けられたスリット、
5……棒状の光源ランプ、
6……光硬化性組成物膜が形成された基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を複数種含有し、該化合物の少なくとも1種が、数平均分子量20,000〜100,000の化合物であることを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項2】
数平均分子量20,000〜100,000の化合物の少なくとも1種が、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を複数個有する化合物である請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
数平均分子量20,000〜100,000の化合物の少なくとも1種が、ウレタン(メタ)アクリレートである請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性組成物の膜に光を照射して硬化させてなる光制御膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−247946(P2008−247946A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87289(P2007−87289)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】