説明

光硬化性組成物

【課題】初期接着性及び低温衝撃強度に優れた接着層を、短時間で与える光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)重量平均分子量が20,000〜45,000であり、ポリエステルポリオール残基を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂を、40〜70wt%の量で、
(B) 少なくとも一の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを20〜50wt%の量で、
(C)少なくとも一の極性基と少なくとも一の光重合性基とを有する化合物を2〜15wt%の量で、及び
(D)光重合開始剤を1〜6wt%の量で、含有する光硬化性組成物、但し各wt%は、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計重量に対する値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化性組成物に関し、詳細には、ポリエステルポリオール残基を有する所定のウレタンアクリレート樹脂を主剤として含み、初期接着性、透明性、及び耐寒性に優れた硬化膜を与え、接着剤及び塗料等に有用な光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、医療品、文房具、アクセサリーなどの商品のイメージアップを図る目的で、透明性が良好で剛性もあるアモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)等のプラスチックシートに折り曲げ罫線を設けてなる組立て容器が商品の包装材として採用されている。この組立て容器の貼合せに関しては、商品の性格上外観面で透明性が高く、かつ工程面では、貼合せ後すぐに、接着性をはじめとした組立て容器の検査工程に移行できる様な、初期接着性に優れた接着剤が求められている。
【0003】
この種の組立て容器の貼合せに関して、イソシアネート基末端の反応性ウレタンプレポリマーを含有する反応性ホットメルト接着剤組成物が開示されている(特許文献1)。しかし、この接着剤は、硬化がある程度進むまでは、接着面を外力で約4時間以上圧着させたまま維持しないと、接着面の剥離が起きてしまい、初期接着性が悪い。
【0004】
他方、アモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)等のプラスチックシートの表面に非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)からなる層を設けて、溶剤等で容易に貼合せる方法が知られているが(特許文献2)、溶剤がPET−Gの表層を白濁化させるため、包装容器の外観が悪くなる。
【特許文献1】特開平10−265758号公報
【特許文献2】特開平5−117413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願出願人は、初期接着性に優れ且つ透明性に優れた接着層を、短時間で与える接着剤を提供することを目的に、所定の反応性化合物を含む光硬化性組成物を発明した(特願2005−230832号、特願2006−217274号)。
【0006】
本発明は、初期接着性及び透明性に加えて、耐寒性、特に低温衝撃強度の点でより優れた組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、下記のものである。
(A)ポリエステルポリオール残基を含み、重量平均分子量が20,000〜45,000であるウレタン(メタ)アクリレート樹脂を、40〜70wt%の量で、
(B) 少なくとも一の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを20〜50wt%の量で、
(C)少なくとも一の極性基と少なくとも一の光重合性基とを有する化合物を2〜15wt%の量で、及び
(D)光重合開始剤を1〜6wt%の量で、含有する光硬化性組成物、但し各wt%は、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計重量に対する値である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、ポリエステルポリオール残基を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)によって、低温衝撃性に優れた硬化物を与え、耐寒性に優れたプラスチックケースを製造するのに好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、GPC測定により求められるスチレン換算の重量平均分子量が20,000〜45,000、好ましくは30,000〜45,000である。また、JISK−7117−1に従って測定される80℃の粘度が50,000〜300,000mPa・s、好ましくは、100,000〜250,000mPa・sである。粘度が前記下限値未満であると、貼合せの際に接着剤のはみ出しが生じやすい 。一方、前記上限値を超えると、均一に塗布することが困難となり、接着部の外観を損なう場合がある。
【0010】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、イソシアネートとポリエステルポリオールとを付加反応して得られるポリイソシアネートの両末端に、イソシアネート基と反応性の基を有する(メタ)アクリレートを付加させて生成することができる。ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸、例えばアジピン酸、セバシン酸と、グリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−メチルペンタジオール、ヘキサメチレングリコールとのエステル反応によって得られる。イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族系ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)等の脂肪族系ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)などの脂環式系ジイソシアネート類があげられる。イソシアネート基と反応性の基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが用いられる。
【0011】
好ましくは、(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、H−NMRスペクトルにおいて、下記エステル(1)及びエーテル(2)構造のHのピークの合計積分強度の全積分強度に対する割合が33〜40%、好ましくは、35〜38%である。



上記下限値未満であると、組成物の他の成分との相溶性が悪く、硬化物の透明性が悪い場合がある。一方、上記上限値を越えると、低温特性が悪化し、粘度が高くなる場合がある。上記エステル(1)及びエーテル(2)構造の各々におけるHのピークは、通常、図1に示すように、2〜4.5ppmに観察される。該範囲におけるピークの積分強度の合計の全積分強度に対する割合が上述の範囲である。
【0012】
より好ましくは、(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は下記式(3)で表されるものである。

式(3)において、重量平均分子量が20,000〜45,000である範囲内において、mは1〜90、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4の整数、及びnは1〜200、好ましくは10〜200、より好ましくは40〜200の整数、最も好ましくは40〜150の整数である。また、R、R、R、及びRは、炭素数2〜12、好ましくは4〜10のアルキレン基であり、分岐を有していてもよい。好ましくはR、R、R、及びRが、以下に示すアルキレン基である。


【0013】
(B)イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー
(B)ウレタンプレポリマーは、ポリエステルポリオールあるいはポリエーテルポリオールとジイソシアネートから合成され、少なくとも1の末端にイソシアネートを有する。ポリエステル系ポリオールとしてはポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリカプロラクトンポリオール(PCL)等が、ポリエーテルポリオールとして、ポリオキシテトラメチレンポリオール(PTMG)、ポリオキシプロピレンポリオール(PPG)等があげられる。ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)等上述のジイソシアネートが挙げられる。好ましくは、硬化後の黄変が無いこと、及び柔軟性の面から、脂肪族ポリオール系のNCO末端ウレタンプレポリマーを含有するものが望ましい。
【0014】
(B)ウレタンプレポリマーは、80℃における粘度が好ましくは10〜5,000mPa・s、より好ましくは100〜1,000mPa・sである。
【0015】
(C)少なくとも一の極性基と少なくとも一の光重合性基とを有する化合物
(C)少なくとも一の極性基と少なくとも一の光重合性基を有する化合物(以下「光重合成化合物」という)は、その光重合性基により、硬化物網目構造に結合され、且つ、極性基が基材、特にPET、と相互作用することによって、硬化物の初期接着性を向上させる作用を奏するものと考えられる。該極性基の例には水酸基、アミド、エステル基等が挙げられ、光重合性基としてはエチレン性不飽和結合が挙げられる。(C)光重合性化合物の例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の、水酸基を含むアクリレート;ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン等があげられる。好ましくは、ジメチルアクリルアミド及びジエチルアクリルアミドが使用される。
【0016】
(D)光重合開始剤
光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルニオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンなどがあげられる。重合開始剤の光吸収波長を選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。また、これらの光重合開始剤は、2種類以上を同時に使用してもよく、例えば、薄膜塗布向けの表面硬化性に優れた光重合開始剤と厚塗り向けの深部硬化性に優れた光重合開始剤を組合せることによって、接着剤に単独の開始剤の使用では得られないような優れた硬化性を付与することができる。本発明においては、配合した接着剤の保存性および接着剤の透明性の観点から、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルニオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが望ましい。
【0017】
(E)熱安定剤
本発明の組成物は、上記(A)、(B)、(C)及び(D)に加えて、(E)ヒンダードフェノール化合物、トコフェロール及びトコフェロール誘導体から選ばれる少なくとも1の熱安定剤を含んでよい。一般に、熱安定剤としては、キノン系、アミン系、ヒンダードフェノール系、及び天然化合物系、例えばトコフェロール系、アスコルビン酸系があるが、これらのうち、ヒンダードフェノール系及びトコフェロール系が好ましく使用される。ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、及びオクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートが挙げられる。トコフェロール系としては、α−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール等が挙げられる。これらのうち、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ペンタエリスリトールテトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、及びd−及びdl−α−トコフェロールが好ましい。ペンタエリスリトールテトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]は、商品名Irganox1010として、オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートはIrganox1076として、チバスペシャリティーケミカルズ社より市販されている。
【0018】
上記(A)〜(E)の配合比率は、これらの合計重量に対して、(A)40〜70wt%、好ましくは 45〜60wt%、(B)20〜50wt%、好ましくは 30〜45wt%、(C)2〜15wt%、好ましくは6〜12wt%、(D)1〜6wt%、好ましくは2〜4wt%、(E)0.01〜3wt%、好ましくは0.05〜0.3wt%である。(A) が前記下限値未満あるいは上限値を超えると、光照射直後の初期接着性が弱くなる傾向がある。(B)が前記下限値未満であると、経時での接着性が弱くなり、(B)が前期上限値を超えると、光照射直後の初期接着性が弱くなる傾向がある。(C)が前記下限値未満であると、初期接着性が弱くなり、また、前期上限値を超えると、低温での接着性が弱くなる傾向がある。(D)が前記下限値未満であると、初期接着性が弱くなり、また、前期上限値を超えると、低温での接着性が弱くなる傾向がある。
【0019】
(A)〜(E)に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で反応性希釈剤及び各種添加剤を含んでよい。反応性希釈剤としては、(C)について例示した、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等、添加剤としてはレベリング剤が挙げられる。また、塗料用途には、着色料、顔料を配合してもよい。また、必要に応じて光増感剤、分散剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、抑泡剤、導電性フィラー、重合禁止剤、紫外線吸収剤等を添加しても良い。
【0020】
本発明の組成物は、(A)、(B)、(C)及び(D)、好ましくは(E)、及びその他の添加剤を、公知のミキサー、例えばホモミキサー、を用いて混合することによって調製することができる。混合後、遊星式撹拌機,濾過機等で脱泡処理を行うことが好ましい。また、(D)だけ、使用直前に混合してもよい。
【0021】
得られた組成物は、種々のプラスチックシートを貼り合せるのに使用することができる。該プラスチックとしては、ポリエステル系、例えばポリエステルテレフタレート(PET)及びポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
【0022】
本発明の光硬化性組成物は、例えば、ホットメルト接着剤用ディスペンサー により塗布した後、高圧水銀灯を照射して硬化することができる。典型的には、硬化エネルギーは、250mJ/cm程度であり、光照射後瞬時に硬化し、初期接着性に優れる。
【0023】
得られる硬化物は、図5に示すように、動的粘弾性測定において測定される損失正接(tanδ)が、−150℃〜150℃の間に2つのピークを有する。図5は、後述する実施例1の組成物から得られた硬化物の2つのtanδピークを示すチャートである。そのうちの低温側のピーク頂点が0℃より低温、−30〜−70℃に存在する。さらに、該ピーク頂点のtanδは0.1〜0.5であることが、透明性の点で好ましいことが見出された。該低温側のピークは、ポリエステルポリオールセグメントによるものと考えられ、これにより、該硬化物の優れた耐低温衝撃性がもたらされるものと考えられる。本発明において、低温衝撃性は、落下試験により評価し、その詳細については、実施例で述べる。
【0024】
実施例
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中単に部とあるのは重量部を示す。使用した原料は以下の通りである。
実施例で使用した原料
(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂:
実施例1〜3、7、8、参考例1、2:MJ−11、Mw37,000〜43,000、根上工業(株)製
実施例4:MJ−12、Mw23,000〜27,000、根上工業(株)製
実施例5:MJ−13、Mw30,000〜33,000、根上工業(株)製
実施例6:KHP−17、Mw33,000〜37,000、根上工業(株)製
(B)ウレタンプレポリマー硬化剤:タケネートXA−18(脂肪族系)、三井武田ケミカル(株)製)
(C)光硬化性化合物: ジメチルアクリルアミド(DMAA)、(株)興人製
(D)光重合開始剤:
イルガキュア651(商標)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
【0025】
実施例1〜8、参考例1、2
表1に示す各成分を同表に示す配合(wt%)で、(B)ウレタンプレポリマー、(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(C)光重合性化合物、(D)光重合開始剤の順にホモミキサー中で70℃で加熱混合した。均一な混合物が得られた後、遊星式撹拌機で脱泡処理を行い、以下に示す評価に供した。また、使用した各ウレタン(メタ)アクリレート樹脂のNMRスペクトルを図1〜4に示す。比較例1は(C)を、比較例2は(B)を配合しないことを除き、実施例と同様にして組成物を調製した。
【0026】
評価方法
(1)初期接着性
組成物を塗布する基材として、表面にUVインクによる印刷と、裏面に静電防止処理が施された160cm×170cm×300μmのA−PETシートを使用した。各組成物を加温し、塗布用のエアノズルによりA−PETシートの印刷面の端部に幅3mm、長さ150mm、厚さ90μmにて塗布し、貼合せ機で他の端部の裏面側と貼合せた後、該貼り合わせ部を直ちに高圧水銀ランプ光を 250mJ/cm2で照射したところ、直ちに接着部が形成された。接着部が室温になるまで冷却後、該接着部に手でひねりを加え、目視で観察することにより下記基準に従い、初期接着性を評価した。
A:剥離が起きない。
B:接着部の端部のみ剥離する。
C:全体的に剥離する。
【0027】
(2)低温衝撃強度
300μm厚みのA−PETシートから、縦(D)44mm×横(W)45mm×高さ(H)162mmの六面体のケース用に糊代部を設けた展開図を打ち抜いた。糊代部は、高さ(H)162mmの側面部に幅約3mmで設けられ、該糊代部に、各組成物を長さ155mm、厚さ90μmの寸法で塗布した後、貼り合せされた状態で糊代部がケースの外側になるようにして貼り合わせた。貼り合わせ直後に高圧水銀ランプ光を250mJ/cmで照射し、直ちに接着部を形成した。ケースは23℃、50RH%の条件で24時間保持した。評価をするため、ケースを−20℃の低温室に12時間置いた後、重さ1kgの円柱状のサンプルをケースに入れ、1mの高さより手に持ったケースを、凹凸の少ないコンクリート面に自由落下させた。落下試験は各条件30回行った。なお、実施例7ではA−PETシートに代えて、両面コロナ処理したPPを、実施例8では両面未処理のポリ乳酸シートを使用した。
A:糊剥がれが全くない。
B:1mm以上5mm未満の糊剥がれが1個以上確認された。
C:5mm以上の糊剥がれが1個以上確認された。
【0028】
(3)常温剥離強度
上記(2)低温衝撃強度測定用サンプルの接着部(幅3mm)を用いて、50mm/min、23℃の条件にてT型剥離試験(試験機:INTESCO IM20)によって強度を測定した。剥離強度は降伏点がある場合は降伏点と降伏点後の平均剥離強度との中間値を強度とした。降伏点がない場合は平均値を強度とした。
【0029】
(4)低温剥離強度
上記(2)低温衝撃強度測定用サンプルの接着部(幅3mm)を用いて、50mm/min,−20℃の条件にてT型剥離試験(試験機:INTESCO IM20)によって強度を測定した。剥離強度は降伏点がある場合は降伏点と降伏点後の平均剥離強度との中間値を強度とした。降伏点がない場合は平均値を強度とした。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示すように、実施例の組成物は、いずれも初期接着性及び低温衝撃強度に優れた硬化物を与えた。実施例7の組成物は、実施例1の組成物と同じであるが、使用した基材がPPシートであり、該基材が低温剥離強度の測定中に該基材が割れてしまったため、剥離強度が低くなった。参考例1の組成物は(C)光重合性化合物を欠き、剥離強度が低かった。参考例2の組成物は、(B)ウレタンプレポリマーを欠き粘度が高く、糊代部に塗布するに当たり、約100℃に予備加熱した。この加熱により、(D)光重合開始剤の活性が低下したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の光硬化性組成物は、即硬化性の耐寒性接着剤及び塗料等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1で使用したウレタン(メタ)アクリレート樹脂のH−NMRスペクトルである。
【図2】実施例4で使用したウレタン(メタ)アクリレート樹脂のH−NMRスペクトルである。
【図3】実施例5で使用したウレタン(メタ)アクリレート樹脂のH−NMRスペクトルである。
【図4】実施例6で使用したウレタン(メタ)アクリレート樹脂のH−NMRスペクトルである。
【図5】実施例1の組成物から得られた硬化物の損失正接(tanδ)曲線のチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量が20,000〜45,000であり、ポリエステルポリオール残基を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂を、40〜70wt%の量で、
(B) 少なくとも一の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを20〜50wt%の量で、
(C)少なくとも一の極性基と少なくとも一の光重合性基とを有する化合物を2〜15wt%の量で、及び
(D)光重合開始剤を1〜6wt%の量で、含有する光硬化性組成物、但し各wt%は、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計重量に対する値である。
【請求項2】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が、H−NMRスペクトルにおいて、下記式(1)のエステル構造及び式(2)のエーテル構造のHのピークの積分強度の合計の全積分強度に対する割合が33〜40%であることを特徴とする請求項1記載の組成物。



【請求項3】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が、下記式(3)で示されることを特徴とする請求項1または2記載の組成物。

(式(3)中、mは1〜90の整数、nは1〜200の整数であり、R、R、R、及びRは、互いに独立に炭素数2〜12のアルキレン基である)
【請求項4】
、R、R、及びRが夫々、以下に示す基であることを特徴とする請求項3記載の組成物。

【請求項5】
(C)少なくとも一の極性基と少なくとも一の光重合性基とを有する化合物が、ジメチル(メタ)アクリルアミドおよび/またはジエチル(メタ)アクリルアミドである請求項1〜3のいずれか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
(B)ウレタンプレポリマーが、脂肪族ポリオール残基を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
(D)光重合開始剤が2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンおよび/または2−メチル−1−[4−(メチルニオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンである、請求項1〜5のいずれか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物を含む接着剤。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物を含む塗料。
【請求項10】
ポリエステルシートからなる箱体であって、前記ポリエステルシートの一の端部と他の一の端部が、請求項7に記載の接着剤により貼り合わせられてなることを特徴とする箱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−133457(P2008−133457A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276541(P2007−276541)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】