説明

光触媒タイル

【課題】 高度の耐摩耗性と、有害ガス分解性とを兼ね備えた光触媒タイルを提供すること。
【解決手段】 タイル基材と、該基材上に設けられる光触媒層とを備えた光触媒タイルであって、前記光触媒層は、光触媒粒子とアルキルシリケート硬化物とを備え、かつ、JIS R1701−1の試験法におけるΔNOxが0.5μmol以上であり、かつナイロンブラシによる1200回摺動後の、前記光触媒層上に濃度1%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し余剰の硝酸銀を洗浄、乾燥する前後の色差変化ΔEが5以上であることを特徴とする光触媒タイル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度の耐摩耗性と、有害ガス分解性とを兼ね備えた光触媒タイルに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンなどの光触媒が、近年建築物の外装タイル、内装タイルなど多くの用途において利用されている。外装用途については、基材表面に光触媒を塗装することにより、光エネルギーを利用してNOx、SOx等の有害物質の分解機能を付与することが可能となる。
【0003】
光触媒を利用したNOx分解は、従来においては、(1)光触媒粒子を多孔質膜に配合する方法(特開平8−99041など)、(2)光触媒粒子とアルキルシリケートを混合し、300℃以下の温度でアルキルシリケートを加水分解・縮重合させる方法(特開平4−174679、特開平8−164334)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−99041号公報
【特許文献2】特開平4−174679号公報
【特許文献3】特開平8−164334号公報
【特許文献4】WO00/006300号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、タイルにNOx分解機能を付加する方法として、光触媒粒子を多孔質膜に配合する方法では、多孔であることで耐摩耗性が低下するので、タイルに固定する場合に、その特徴を充分に生かすことができない。
また、タイルにNOx分解機能を付加する方法として、光触媒粒子とアルキルシリケートを混合し、300℃以下の温度でアルキルシリケートを加水分解・縮重合させる方法を用いた場合には、やはり耐摩耗性が充分でなく、タイルに固定する場合に、その特徴を充分に生かすことができない。
【0006】
本発明では、上記事情に鑑み、高度の耐摩耗性と、有害ガス分解性とを兼ね備えた光触媒タイルを提供することを目的とする。
【0007】
すなわち、本発明では、タイル基材と、該基材上に設けられる光触媒層とを備えた光触媒タイルであって、前記光触媒層は、光触媒粒子とアルキルシリケート硬化物とを備え、かつ、JIS R1701−1の試験法におけるΔNOxが0.5μmol以上であり、かつナイロンブラシによる1200回摺動後の、前記光触媒層上に濃度1%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し余剰の硝酸銀を洗浄、乾燥する前後の色差変化ΔEが5以上であることを特徴とする光触媒タイルを提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
光触媒タイル
本発明による光触媒タイルは、タイル基材と、該基材上に設けられる光触媒層とを備えた光触媒タイルであって、前記光触媒層は、光触媒粒子とアルキルシリケート硬化物とを備え、かつ、JIS R1701−1の試験法におけるΔNOxが0.5μmol以上であり、かつナイロンブラシによる1200回摺動後の、硝酸銀呈色試験による色差変化ΔE、すなわち、前記光触媒層上に濃度1%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し余剰の硝酸銀を洗浄、乾燥する前後の色差変化ΔEが5以上であることを特徴とする光触媒タイルである。
特開平8−164334号の段落番号(0023)によれば、光触媒粒子とアルキルシリケートを含むコーティング液からの塗膜について以下のように記述されている。「100℃の乾燥によって爪で擦っても容易に剥離しないかなり強固な塗膜を形成できるが、シリカバインダーは100℃以上の温度で乾燥することによって、より強固な塗膜を形成できるので必要に応じ100〜300℃で乾燥もしくは低温焼成しても良い。但し、超微粒子状二酸化チタンの触媒活性は150℃以上の乾燥で徐々に低下を始め、400℃を超えると急速に低下することがあるので、塗膜強度の必要性に応じて適宜に乾燥温度を選択する必要がある」。
しかし、タイルは本来の用途として、高度な耐摩耗性が要求され、300℃以下の焼成では充分な耐摩耗性が得られなかった。
ところが、今回、焼成温度を前記コーティング液の塗布面の最高温度が300℃をこえる温度、より好ましくは400℃をこえる温度で焼成しても、光触媒のガス分解活性を低下させることなく、高度な耐摩耗性を実現できることができることを新たに見出した。
より詳細には、JIS R1701−1の試験法におけるΔNOxが0.5μmol以上の高度の光触媒ガス分解活性を有するとともに、ナイロンブラシによる1200回摺動後の硝酸銀呈色試験による色差変化ΔE、すなわち、前記光触媒層上に濃度1%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し余剰の硝酸銀を洗浄、乾燥する前後の色差変化ΔEが5以上であるように、摩耗試験後も光触媒活性の低下が抑制される、高度な耐摩耗性を有する。
あるいは、タイル基材と、該基材上に設けられる光触媒層とを備えた光触媒タイルであって、前記光触媒層は、光触媒粒子とアルキルシリケート硬化物とを備え、かつ、JIS R1701−1の試験法におけるΔNOxが0.5μmol以上であり、かつナイロンブラシによる1200回摺動後の、JIS R1701−1の試験法におけるΔNOxも0.5μmol以上であることを特徴とする光触媒タイルである。
本発明の製造方法は上記新たな知見に基づくものである。
【0009】
本発明の好ましい形態においては、前記タイル基材は施釉タイルであり、前記光触媒層は該施釉タイルの施釉された面上に形成する。
釉面の存在により、光触媒層が釉面に強固に密着するとともに、光触媒のガス分解活性を低下させることなく、耐摩耗性を向上させることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態においては、前記光触媒層は、前記光触媒粒子と前記アルキルシリケートを、300℃以上をこえる温度、より好ましくは400℃をこえる温度で硬化させて形成する。
タイル基材上の場合、理由は定かではないが、後述する実験例でも示されているように、450℃で1時間程度保持する条件でも光触媒活性が急速に低下することはなく、充分な光触媒によるガス分解機能は維持される。なおかつ高い温度で固定されるので、タイルに要求される高度な耐摩耗性も発揮する。
【0011】
但し、前記光触媒層は、前記光触媒粒子と前記アルキルシリケートを、600℃未満、より好ましくは550℃未満で硬化させて形成させて形成するほうがよい。
温度が過度に高くなるとアルキルシリケートの硬化反応で生成するシリカの流動性が高まり光触媒の活性点を覆い始めると考えられるためである。
【0012】
焼成は、ローラハースキルン、電気炉等で最高温度を300℃以上をこえる温度、より好ましくは400℃、更に好ましくは300℃以上をこえ600℃未満、最も好ましくは300℃以上をこえ550℃未満で硬化させてもよいし、WO00/006300号に記載されている急速加熱装置を用いてもよい。
【0013】
急速加熱装置を用いる場合には、硬化反応が生じるタイル基材上のコーティング液の塗布面が最高温度を300℃以上をこえる温度、より好ましくは400℃、更に好ましくは300℃以上をこえ900℃未満、最も好ましくは400℃をこえ800℃未満であればよく、雰囲気温度は、400℃〜1200℃より好ましくは500℃〜1000℃程度に設定してもよい。
【0014】
光触媒コーティング液
本発明にに用いられる光触媒コーティング液は、光触媒粒子とアルキルシリケートとの混合液である。
【0015】
本発明において光触媒粒子とは、光半導性を有する光触媒性金属酸化物の粒子であり、より詳細には、その結晶の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(すなわち短い波長)の光(励起光)を照射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)が生じて、伝導電子と正孔を生成しうる金属酸化物の粒子を意味する。このような光触媒粒子によれば、いわゆる酸化還元反応により有機化合物を分解し、あるいは雰囲気中の水分子を吸着させる等により極めて高い程度の親水性を呈するに至る。本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子は、好ましくは、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン等の結晶性TiO、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Fe、CeOおよびVからなる群から選択される粒子である。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子は10nm以上100nm未満の平均粒径を有するのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子は3nm以上30nm未満の平均結晶子径を有するのが好ましく、より好ましくは5nm以上20nm以下である。なお、この平均粒径は、粉末X線回折法により得られるX線プロファイルの3強線の積分幅からシェラー式により算出される。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液は、金属および/または金属酸化物、例えば、Cu、Ag、Ni、Fe、Zn、Pt、Au、Rh、V、Cr、Co、Mn、W、Nb、Sb、および白金族金属ならびにそれらの酸化物から選択される金属または金属酸化物の少なくとも一種、をさらに含んでなることができる。この金属および金属酸化物の好ましい例としては、Cu、Ag、Pt、Co、Fe、Ni、CuO、AgO、Au、Zn、Cr、MnおよびMoからなる群から選択される少なくとも一種の金属粒子である。これら金属または金属酸化物を添加した場合、形成される被膜は、表面に付着した細菌や黴を暗所でも死滅させることができる。また、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Osのような白金族金属または酸化物は、光触媒の酸化還元活性を増強させ、その結果有機物汚れの分解性、有害気体や悪臭の分解性を向上させることができることから添加が好ましい。
【0019】
アルキルシリケートとしては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケートが好適に利用できる。
【0020】
光触媒コーティング液中の光触媒粒子と、アルキルシリケートとの質量比は、好ましくは上記2成分の合計質量に対して光触媒粒子が30〜95質量%であり、より好ましくは50〜90質量%である。
【0021】
本発明による光触媒コーティング液に含まれる溶媒は、上記光触媒粒子およびアルキルシリケートを光触媒体の製造サイクルの間に安定に分散させ、最終的に光触媒機能および高度な耐摩耗性が得られる限り限定されないが、例えば水もしくは有機溶媒またはそれらの混合溶媒がその例として挙げられる。特に水が環境負荷が小さく望ましい。
【0022】
さらに本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液は界面活性剤を含んでなることが好ましい。界面活性剤の添加によって、基材表面に光触媒コーティング組成物を均一に塗布することが可能となる。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液中の固形分の濃度は、0.01重量%以上5重量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%以上3重量%未満の範囲である。
【0024】
さらに本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液には、さらに無機酸化物粒子が添加されていてもよい。
無機酸化物粒子の例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、無定型チタニア、ハフニア等の単一酸化物に加え、チタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、リン酸カルシウム等の複合酸化物が挙げられる。
【0025】
無機酸化物粒子の粒径は特に限定されないが、水性コロイドまたはオルガノゾルの形態とされたとき5〜50nm程度の粒径が、最終的な光触媒性親水性被膜の光沢、濁り、曇り、透明性等の観点から好ましい。
【0026】
さらに本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液は、上記成分に加えて、重合硬化触媒、加水分解触媒、レベリング剤、抗菌金属、pH調整剤、香料、保存安定剤、有機防カビ剤などを含んでなることができる。
【0027】
ここで、重合触媒としては、アルミニウムキレート、アルミニウムアセチルアセトナート、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムイソブトキシド、アルミニウムイソプロポキシドのようなアルミニウム化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラブトキシチタネートのようなチタン化合物;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸カリウム、プロピオン酸カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのような塩基性化合物類;n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンベンタミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノメチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノメチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシランのようなアミン化合物;錫アセチルアセトナート、ジブチル錫オクチレートのような錫化合物;コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナートのような金属化合物類;リン酸、硝酸、フタル酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸のような酸性化合物類などが挙げられる。
【0028】
加水分解触媒としては、pH2〜5の硝酸、塩酸、酢酸、硫酸、スルホン酸、マレイン酸、プロピオン酸、アジピン酸、フマル酸、フタル酸、吉草酸、乳酸、酪酸、クエン酸、リンゴ酸、ピクリン酸、ギ酸、炭酸、フェノール等が好適に利用できる。
【0029】
レベリング剤としては、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−プロポキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等が好適に利用できる。
【0030】
光触媒層は、0.1μm以上5.0μm以下の膜厚を有するのが好ましく、より好ましくは0.2μm以上3.0μm以下の膜厚であり、最も好ましくは0.3μm以上1.0μm以下である。このような範囲内であると、無機酸化物粒子よりも含有比率が低い光触媒粒子を膜厚方向に増加させることができるので、有害ガス分解性が向上する。さらには、光触媒層の透明性においても優れた特性が得られる。
【0031】
光触媒コーティング液の耐熱基材への塗布
本発明による方法にあっては、上記の光触媒コーティング液を耐熱基材に塗布する。塗布方法としては、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が好適に利用できる。本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液はスプレーにより塗布されることが好ましい。
【0032】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液の塗布の前に、基材表面が予備加熱されることが好ましい。予備加熱は、基材の表面を40℃〜200℃に加熱することにより行われる。加熱された基材表面に塗布された光触媒コーティング液は、均一に広がり、むらのない塗膜が得られるので有利である。
【0033】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、光触媒コーティング液が塗布された基材表面を急速加熱の前に乾燥させてもよい。基材には後記する急速加熱により大量の熱量が負荷される。基材上に余分な水分または溶媒成分が存在すると急激な温度変化による水または溶媒成分の急激な蒸発などにより基材表面の平滑度が失われてしまうおそれがある。よって、乾燥により予め余分な水分または溶媒成分を除くことが望ましいことがある。乾燥は送風または加熱により行われてよい。
【0034】
焼成は、ローラハースキルン、電気炉等で最高温度を300℃以上をこえる温度、より好ましくは400℃、更に好ましくは300℃以上をこえ600℃未満、最も好ましくは300℃以上をこえ550℃未満で硬化させてもよいし、WO00/006300号に記載されている急速加熱装置を用いてもよい。
【実施例】
【0035】
実施例1:
平均結晶子径7nm、平均粒径50nmのアナターゼ型酸化チタンゾルとアルキルシリケートと溶媒とを、酸化チタン粒子とアルキルシリケートとの質量比が65:35となるように配合し、光触媒コーティング液(A1)を作製した。ここで、溶媒には、水とアルコールとの混合溶媒を用い、その量比は90:10とした。
この光触媒コーティング液(A1)を、予め80〜150℃に予備加熱した施釉タイル(T1)上にスプレーコーティング法により塗布した(B1)。
次いで、上記タイル(B1)を、最高温度を450℃に設定した電気炉で1時間焼成し、
タイル表面に膜厚約0.5μmの光触媒層が形成された光触媒タイル(C1)を得た。
得られた試料(C1)について、光触媒によるNOx分解機能と、耐摩耗性につき確認した。
光触媒によるNOx分解機能は、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行った。その結果、ΔNOxが0.79μmolとなり良好な結果を示した。
耐摩耗性については、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒機能が維持されていることを硝酸銀呈色試験、すなわち、光触媒層上に濃度1重量%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し、余剰の硝酸銀を水道水にて洗浄し、乾燥した後の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)と、前記硝酸銀水溶液塗布前の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)との色差変化ΔEを測定する試験、で確認した。その結果、ΔE=10と良好な結果を示した。
また、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒によるNOx分解機能を、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行ったが、その結果、ΔNOxが0.6μmolとなり良好な結果を維持した。
【0036】
実施例2:
平均結晶子径7nm、平均粒径50nmのアナターゼ型酸化チタンゾルとアルキルシリケートと溶媒とを、酸化チタン粒子とアルキルシリケートとの質量比が65:35となるように配合し、光触媒コーティング液(A1)を作製した。ここで、溶媒には、水とアルコールとの混合溶媒を用い、その量比は90:10とした。
この光触媒コーティング液(A1)を、予め80〜150℃に予備加熱した施釉タイル(T1)上にスプレーコーティング法により塗布した(B1)。
次いで、上記タイル(B1)を、炉内雰囲気温度800〜1100℃(熱電対はバーナー付近の直接炎が当らない位置に設置)、加熱を単位面積当りの発熱量が1000MJ/m・hである発熱体を用いて行い、該発熱体から前記コーティング液を塗布した表面までの距離を5mm〜300mmの範囲に設定して10〜20秒焼成した。その結果、タイル表面に膜厚約0.5μmの光触媒層が形成された光触媒体(C2)が作製された。本試料における炉から搬出された直後の光触媒体(C2)の表面温度は400〜450℃であった。
得られた試料(C2)について、光触媒によるNOx分解機能と、耐摩耗性につき確認した。
光触媒によるNOx分解機能は、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行った。その結果、ΔNOxが0.96μmolとなり良好な結果を示した。
耐摩耗性については、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒機能が維持されていることを硝酸銀呈色試験硝酸銀呈色試験、すなわち、光触媒層上に濃度1重量%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し、余剰の硝酸銀を水道水にて洗浄し、乾燥した後の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)と、前記硝酸銀水溶液塗布前の光触媒層表面の色値(L*,a*,b*)との色差変化ΔEを測定する試験、で確認した。その結果、ΔE=14と良好な結果を示した。
また、ナイロン製のブラシで1200回摺動させた後に、光触媒によるNOx分解機能を、JISR1701−1「光触媒材料の空気浄化性能試験方法−第1部:窒素酸化物の除去性能」の試験法で行ったが、その結果、ΔNOxが0.7μmolとなり良好な結果を維持した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイル基材と、該基材上に設けられる光触媒層とを備えた光触媒タイルであって、
前記光触媒層は、光触媒粒子とアルキルシリケート硬化物とを備え、
かつ、JIS R1701−1の試験法におけるΔNOxが0.5μmol以上であり、
かつナイロンブラシによる1200回摺動後の、前記光触媒層上に濃度1%硝酸銀水溶液を塗布しBLBランプを照度2mW/cmで20分照射し余剰の硝酸銀を洗浄、乾燥する前後の色差変化ΔEが5以上であることを特徴とする光触媒タイル。
【請求項2】
タイル基材と、該基材上に設けられる光触媒層とを備えた光触媒タイルであって、
前記光触媒層は、光触媒粒子とアルキルシリケート硬化物とを備え、
かつ、JIS R1701−1の試験法におけるΔNOxが0.5μmol以上であり、
かつナイロンブラシによる1200回摺動後の、JIS R1701−1の試験法におけるΔNOxも0.5μmol以上であることを特徴とする光触媒タイル。
【請求項3】
前記タイル基材は施釉タイルであり、前記光触媒層は該施釉タイルの施釉された面上に形成することを特徴とする請求項1または2に記載の光触媒タイル。
【請求項4】
前記光触媒層は、前記光触媒粒子と前記アルキルシリケートを、300℃をこえる温度で硬化させて形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光触媒タイル。

【公開番号】特開2010−280545(P2010−280545A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136255(P2009−136255)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】