説明

光触媒体分散液

【課題】 分散媒中に分散された光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との凝集が抑制されて固液分離を起こしにくく、優れた光触媒活性を発現しうる光触媒体分散液を提供する。
【解決手段】 光触媒体分散液は、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子が分散媒中に分散されてなり、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子は表面が互いに同じ極性に帯電しており、分散媒として炭素数が1〜4の揮発性水溶性有機化合物を光触媒体分散液100質量部に対して5〜50質量部含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒体として光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子とを含む光触媒体分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体にバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射すると、価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯に正孔が、伝導帯に自由電子が、それぞれ生成する。かかる正孔および自由電子は、それぞれ強い酸化力と還元力を有することから、半導体に接触した分子種に酸化還元作用を及ぼす。この酸化還元作用は光触媒作用と呼ばれており、かかる光触媒作用を示し得る半導体は、光触媒体と呼ばれている。このような光触媒体としては、光触媒酸化チタン粒子や光触媒酸化タングステン粒子などの粒子状のものが知られている。
【0003】
光触媒酸化チタン粒子や光触媒酸化タングステン粒子は、通常、分散媒中に分散させ、光触媒体分散液として光触媒体層の形成に利用されており、例えば、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子を分散媒中に分散させた光触媒体分散液が開示されている(特許文献1)。かかる光触媒体分散液を基材の表面に塗布することにより、基材表面に、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子を含み、光触媒作用を示す光触媒体層を容易に形成することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−231935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子を分散媒中に分散させた従来の光触媒体分散液は、粒子が互いに凝集して固液分離し易いという欠点があった。例えば、光触媒体分散液を輸送、保管する間に該分散液中の粒子が凝集して固液分離が生じると、分散液を基材に塗布するなどして光触媒体層を形成する際に、良好な膜を形成することができず、その結果、充分な光触媒活性を付与できない、といった問題を招くことになる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、分散媒中に分散された光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との凝集が抑制されて固液分離を起こしにくく、優れた光触媒活性を発現しうる光触媒体分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた。その結果、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子とが分散媒中で凝集し易いのは、一般に、光触媒酸化チタン粒子の表面はプラスに、光触媒酸化タングステン粒子の表面はマイナスにそれぞれ帯電しているからであり、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子の表面を互いに同じ極性、すなわち共にプラスに帯電させるか、共にマイナスに帯電させることにより、凝集が抑制されて固液分離を起こしにくい光触媒体分散液となること、さらに、この光触媒体分散液の分散媒として炭素数が1〜4の揮発性水溶性有機化合物を特定量用いると、形成される塗膜の光触媒活性が格段に向上することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明の光触媒体分散液は、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子が分散媒中に分散されてなり、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子は表面が互いに同じ極性に帯電しており、炭素数が1〜4の揮発性水溶性有機化合物を光触媒体分散液100質量部に対して5〜50質量部含有していることを特徴とする。
本発明の光触媒機能製品の製造方法は、基材の表面に前記本発明の光触媒体分散液を塗布し、分散媒を揮発させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分散媒中に分散された光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との凝集が抑制されて固液分離を起こしにくく、優れた光触媒活性を発現しうる光触媒体分散液を提供することができる。すなわち、本発明の光触媒体分散液は、分散媒中に分散された光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子の表面が互いに同じ極性に帯電しているので、互いに凝集することがなく、このため固液分離することがない。また、本発明の光触媒体分散液は、粒子を互いに凝集させることなく基材に塗布することができるものであり、しかも、特定炭素数の揮発性水溶性有機化合物を特定量含有するものであるので、この光触媒体分散液を用いて形成される塗膜は、高い光触媒活性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(光触媒体分散液)
本発明の光触媒体分散液は、光触媒酸化チタン粒子(以下、単に「酸化チタン粒子」と称することもある)および光触媒酸化タングステン粒子(以下、単に「酸化タングステン粒子」と称することもある)が分散媒中に分散されたものである。
本発明の光触媒体分散液を構成する酸化チタン粒子は、光触媒作用を示す粒子状の酸化チタンであれば、特に制限はされないが、例えば、メタチタン酸粒子、結晶型がアナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型などである二酸化チタン〔TiO2〕粒子等が挙げられる。なお、酸化チタン粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0011】
メタチタン酸粒子は、例えば、(1−i)硫酸チタニルの水溶液を加熱して加水分解する方法により得ることができる。
二酸化チタン粒子は、例えば、(1−ii)硫酸チタニルまたは塩化チタンの水溶液を加熱することなく、これに塩基を加えることにより沈殿物を得、得られた沈殿物を焼成する方法、(1−iii)チタンアルコキシドに水、酸の水溶液または塩基の水溶液を加えて沈殿物を得、得られた沈殿物を焼成する方法、(1−iv)メタチタン酸を焼成する方法、などによって得ることができる。これらの方法で得られる二酸化チタン粒子は、焼成する際の焼成温度や焼成時間を調整することにより、アナターゼ型、ブルッカイト型またはルチル型など、所望の結晶型にすることができる。
【0012】
酸化チタン粒子の粒子径は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、平均分散粒子径で、通常20〜150nm、好ましくは40〜100nmである。
酸化チタン粒子のBET比表面積は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、通常100〜500m2/g、好ましくは300〜400m2/gである。
【0013】
本発明の光触媒体分散液を構成する酸化タングステン粒子は、光触媒作用を示す粒子状の酸化タングステンであれば、特に制限はされないが、例えば、三酸化タングステン〔WO3〕粒子等が挙げられる。なお、酸化タングステン粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
三酸化タングステン粒子は、例えば、(2−i)タングステン酸塩の水溶液に酸を加えることにより、沈殿物としてタングステン酸を得、得られたタングステン酸を焼成する方法、(2−ii)メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムを加熱することにより熱分解する方法、などによって得ることができる。
【0014】
酸化タングステン粒子の粒子径は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、平均分散粒子径で、通常50〜200nm、好ましくは80〜130nmである。
酸化タングステン粒子のBET比表面積は、特に制限されないが、光触媒作用の観点からは、通常5〜100m2/g、好ましくは20〜50m2/gである。
【0015】
本発明の光触媒体分散液において、前記酸化チタン粒子と前記酸化タングステン粒子との比率(酸化チタン粒子:酸化タングステン粒子)は、質量比で、通常4:1〜1:8、好ましくは2:3〜3:2である。
【0016】
本発明の光触媒体分散液においては、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子は表面が互いに同じ極性に帯電しており、具体的には、粒子表面が共にプラスに帯電しているか、または粒子表面が共にマイナスに帯電している。これにより、分散液中の酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子との凝集が抑制され、固液分離を起こしにくくなる。
【0017】
一般に、上述した(1−i)の方法により得たメタチタン酸粒子や、(1−ii)〜(1−iv)の方法により得た二酸化チタン粒子は、その表面がプラスに帯電している。これに対して、上述した(2−i)や(2−ii)の方法により得た三酸化タングステン粒子は、その表面がマイナスに帯電している。このため、表面がプラスに帯電している上述の酸化チタン粒子と、表面がマイナスに帯電している上述の酸化タングステン粒子とを用いる場合は、例えば、酸化チタン粒子の表面をマイナスに帯電させてから、酸化タングステン粒子と混合するようにすればよい。
【0018】
表面がプラスに帯電した酸化チタン粒子の表面をマイナスに帯電させるには、該酸化チタン粒子を、あらかじめ、その表面をマイナスに帯電させうる表面処理剤を後述する分散媒に溶解させた溶液中に分散させればよい。これにより、溶液中に溶解した表面処理剤が酸化チタン粒子の表面に吸着し、粒子表面をマイナスに帯電させることができる。
【0019】
粒子表面をマイナスに帯電させうる表面処理剤としては、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸などのような多価カルボン酸、リン酸などが挙げられる。具体的には、ジカルボン酸としては例えば蓚酸などが、トリカルボン酸としては例えばクエン酸などが挙げられる。また、前記多価カルボン酸やリン酸としては、遊離酸を用いてもよいし、塩を用いてもよい。塩としては、例えばアンモニウム塩などが挙げられる。かかる表面処理剤としては、特に、蓚酸、蓚酸アンモニウムなどが好ましい。
前記表面処理剤の使用量は、TiO2換算の光触媒酸化チタン粒子に対して、表面を充分に帯電させる点で、通常0.001モル倍以上、好ましくは0.02モル倍以上であり、経済性の点で、通常0.5モル倍以下、好ましくは0.3モル倍以下である。
【0020】
酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子の表面の帯電は、それぞれ、溶媒中に分散させたときのゼータ電位により測定することができる。ゼータ電位の測定に用いられる溶媒としては、例えば、塩酸を加えて水素イオン濃度をpH3.0とした塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウム濃度0.01モル/L)が用いられる。この溶媒の使用量は、酸化チタン粒子または酸化タングステン粒子に対して、通常10000質量倍〜1000000質量倍である。
【0021】
本発明の光触媒体分散液においては、分散媒として、炭素数が1〜4の揮発性水溶性有機化合物を、光触媒体分散液100質量部に対して5〜50質量部、好ましくは8〜35質量部含有する。これにより、光触媒分散液を塗布して形成される塗膜の光触媒活性を向上させることができる。炭素数が1〜4の揮発性水溶性有機化合物の含有量が前記範囲よりも少ないと、光触媒活性の向上効果が不充分となり、一方、前記範囲よりも多いと、得られる塗膜中に残留する有機物が多くなり、充分な光触媒活性が得られない。
炭素数が1〜4の揮発性水溶性有機化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール化合物、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン化合物等が挙げられ、これらの中でも特にアルコール化合物が好ましい。なお、揮発性水溶性有機化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の光触媒体分散液を構成する分散媒は、少なくとも上述した特定量の揮発性水溶性有機化合物を含有するものであれば、特に制限はなく、前記揮発性水溶性有機化合物を単独で用いてもよいし、その他の有機溶媒や水を併用してもよいが、通常、水と前記揮発性水溶性有機化合物とからなる混合溶媒が用いられる。このとき、水と前記揮発性水溶性有機化合物との混合比率については、揮発性水溶性有機化合物の量が前記範囲となる限り、適宜設定すればよい。
【0023】
本発明の光触媒体分散液においては、分散媒の含有量は、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子の合計量に対して、通常5〜200質量倍、好ましくは10〜100質量倍である。分散媒が5質量倍未満であると、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子が沈降し易くなり、一方、200質量倍を超えると、容積効率の点で不利となるので、いずれも好ましくない。
【0024】
本発明の光触媒体分散液は、電子吸引性物質またはその前駆体をも含有していてもよい。電子吸引性物質とは、光触媒体(すなわち、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子)の表面に担持されて電子吸引性を発揮しうる化合物であり、電子吸引性物質の前駆体とは、光触媒体の表面で電子吸引性物質に遷移しうる化合物(例えば、光照射により電子吸引性物質に還元されうる化合物)である。電子吸引性物質が光触媒体の表面に担持されて存在すると、光の照射により伝導帯に励起された電子と価電子帯に生成した正孔との再結合が抑制され、光触媒作用をより高めることができる。
【0025】
前記電子吸引性物質またはその前駆体は、Cu、Pt、Au、Pd、Ag、Fe、Nb、Ru、Ir、RhおよびCoからなる群より選ばれる1種以上の金属原子を含有してなるものであることが好ましい。より好ましくは、Cu、Pt、AuおよびPdのうちの1種以上の金属原子を含有してなるものである。例えば、前記電子吸引性物質としては、前記金属原子からなる金属、もしくは、これらの金属の酸化物や水酸化物等が挙げられ、電子吸引性物質の前駆体としては、前記金属原子からなる金属の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機酸塩、炭酸塩、りん酸塩等が挙げられる。
【0026】
電子吸引性物質の好ましい具体例としては、Cu、Pt、Au、Pd等の金属が挙げられる。また、電子吸引性物質の前駆体の好ましい具体例としては、Cuを含む前駆体として、硝酸銅〔Cu(NO3)2〕、硫酸銅〔Cu(SO4)2〕、塩化銅〔CuCl2、CuCl〕、臭化銅〔CuBr2、CuBr〕、沃化銅〔CuI〕、沃素酸銅〔CuI26〕、塩化アンモニウム銅〔Cu(NH4)2Cl4〕、オキシ塩化銅〔Cu2Cl(OH)3〕、酢酸銅〔CH3COOCu、(CH3COO)2Cu〕、蟻酸銅〔(HCOO)2Cu〕、炭酸銅〔CuCO3)、蓚酸銅〔CuC24〕、クエン酸銅〔Cu2647〕、リン酸銅〔CuPO4〕等が;Ptを含む前駆体として、塩化白金〔PtCl2、PtCl4〕、臭化白金〔PtBr2、PtBr4〕、沃化白金〔PtI2、PtI4〕、塩化白金カリウム〔K2(PtCl4)〕、ヘキサクロロ白金酸〔H2PtCl6〕、亜硫酸白金〔H3Pt(SO3)2OH〕、酸化白金〔PtO2〕、塩化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4Cl2〕、炭酸水素テトラアンミン白金〔C21446Pt〕、テトラアンミン白金リン酸水素〔Pt(NH3)4HPO4〕、水酸化テトラアンミン白金〔Pt(NH3)4(OH)2〕、硝酸テトラアンミン白金〔Pt(NO3)2(NH3)4〕、テトラアンミン白金テトラクロロ白金〔(Pt(NH3)4)(PtCl4)〕等が;Auを含む前駆体として、塩化金〔AuCl〕、臭化金〔AuBr〕、沃化金〔AuI〕、水酸化金〔Au(OH)2〕、テトラクロロ金酸〔HAuCl4〕、テトラクロロ金酸カリウム〔KAuCl4〕、テトラブロモ金酸カリウム〔KAuBr4〕、酸化金〔Au23〕等が;Pdを含む前駆体として、例えば、酢酸パラジウム〔(CH3COO)2Pd〕、塩化パラジウム〔PdCl2〕、臭化パラジウム〔PdBr2〕、沃化パラジウム〔PdI2〕、水酸化パラジウム〔Pd(OH)2〕、硝酸パラジウム〔Pd(NO3)2〕、酸化パラジウム〔PdO〕、硫酸パラジウム〔PdSO4〕、テトラクロロパラジウム酸カリウム〔K2(PdCl4)〕、テトラブロモパラジウム酸カリウム〔K2(PdBr4)〕等が;それぞれ挙げられる。なお、電子吸引性物質またはその前駆体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、1種以上の電子吸引性物質と1種以上の前駆体とを併用してもよいことは勿論である。
【0027】
前記電子吸引性物質またはその前駆体をも含有させる場合、その含有量は、金属原子換算で、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子の合計量100質量部に対して、通常0.005〜0.6質量部、好ましくは0.01〜0.4質量部である。電子吸引性物質またはその前駆体が0.005質量部未満であると、電子吸引性物質による光触媒活性の向上効果が充分に得られないおそれがあり、一方、0.6質量部を超えると、却って光触媒作用が低下するおそれがある。
【0028】
本発明の光触媒体分散液は、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子の表面の帯電を変更しない範囲で、従来公知の各種添加剤を含んでいてもよい。なお、添加剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記添加剤としては、例えば、光触媒作用を向上させる目的で添加されるものが挙げられる。このような光触媒作用向上効果を目的とした添加剤としては、具体的には、非晶質シリカ、シリカゾル、水ガラス、オルガノポリシロキサンなどの珪素化合物;非晶質アルミナ、アルミナゾル、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物;ゼオライト、カオリナイトのようなアルミノ珪酸塩;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物;リン酸カルシウム、モレキュラーシーブ、活性炭、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、リン酸塩、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂;等が挙げられる。
【0030】
また、前記添加剤としては、光触媒体分散液を基材表面に塗布した際に光触媒体(酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子)をより強固に基材の表面に保持させるためのバインダー等を用いることもできる(例えば、特開平8−67835号公報、特開平9−25437号公報、特開平10−183061号公報、特開平10−183062号公報、特開平10−168349号公報、特開平10−225658号公報、特開平11−1620号公報、特開平11−1661号公報、特開2004−059686号公報、特開2004−107381号公報、特開2004−256590号公報、特開2004−359902号公報、特開2005−113028号公報、特開2005−230661号公報、特開2007−161824号公報など参照)。
【0031】
本発明の光触媒体分散液は、その水素イオン濃度が、通常pH0.5〜pH8.0、好ましくはpH1.0〜pH7.0である。水素イオン濃度がpH0.5未満であると、酸性が強すぎて取扱いが面倒であり、一方、pH8.0を超えると、酸化タングステン粒子が溶解するおそれがあるので、いずれも好ましくない。光触媒体分散液の水素イオン濃度は、通常、酸を加えることにより調整すればよい。水素イオン濃度の調整に用いることのできる酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、蓚酸等が挙げられる。
【0032】
本発明の光触媒体分散液の製造方法は、上述した各含有成分(表面が互いに同じ極性に帯電した酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子、前記揮発性水溶性有機化合物を必須とする分散媒等)を混合し、分散させうる方法であればよく、各含有成分の混合順序などに特に制限はない。
【0033】
酸化チタン粒子と酸化タングステン粒子とは、それぞれ、そのまま(粒子の状態で)混合してもよいが、通常は、両方または一方を、あらかじめ分散媒(分散媒に表面処理剤等を溶解させた溶液であってもよい)中に分散させて、酸化チタン粒子分散液または酸化タングステン粒子分散液としたのちに混合する。酸化チタン粒子分散液や酸化タングステン粒子分散液には、例えば媒体撹拌式分散機を用いるなど通常の方法により分散処理を施すことが好ましい。
【0034】
前記揮発性水溶性有機化合物は、どの段階で添加してもよく、例えば、酸化チタン粒子分散液や酸化タングステン粒子分散液を得る際の分散媒として用いてもよいし、酸化チタン粒子(または酸化チタン粒子分散液)と酸化タングステン粒子(または酸化タングステン粒子分散液)とを混合したのちに、別に添加するようにしてもよい。
なお、酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子の少なくとも一方を分散液とする場合、各分散液に用いる分散媒の種類や使用量は、最終的に得られる光触媒体分散液における揮発性水溶性有機化合物の含有量や分散媒の含有量が上述した範囲となる限り、特に制限されない。
【0035】
例えば、表面がプラスに帯電している酸化チタン粒子を、適当な分散媒(例えば、水等)に前記表面処理剤を溶解させた溶液中に分散させることにより粒子表面をマイナスに帯電させた後、必要に応じて分散処理を施し、これに、表面がマイナスに帯電している酸化タングステン粒子を適当な分散媒(例えば、水等)中に分散させた分散液と、前記揮発性水溶性有機化合物とを順次混合することにより、本発明の光触媒体分散液を得ることができる。
【0036】
本発明の光触媒体分散液に前記電子吸引性物質またはその前駆体を含有させる場合には、電子吸引性物質またはその前駆体の添加は、どの段階で行なってもよく、例えば、酸化チタン粒子分散液に対して行ってもよいし、酸化タングステン粒子分散液に対して行ってもよいし、酸化チタン粒子(酸化チタン粒子分散液)と酸化タングステン粒子(酸化タングステン粒子分散液)とを混合した後の分散液に対して行ってもよいが、高い光触媒活性を得る観点からは、電子吸引性物質またはその前駆体は酸化タングステン粒子分散液に添加するのが好ましい。
【0037】
前記電子吸引性物質の前駆体を添加した場合には、その添加後に光照射を行ってもよい。光照射を行うことにより、光励起によって生成した電子によって前駆体が還元されて電子吸引性物質となり、光触媒体粒子(酸化チタン粒子および酸化タングステン粒子)の表面に担持される。なお、前記前駆体を添加した場合に、たとえ光照射を行なわなくても、得られた光触媒体分散液により形成された光触媒体層に光が照射された時点で電子吸引性物質へ変換されることになるので、その光触媒能が損なわれることはない。
前記光照射で照射する光としては、特に制限はなく、可視光線でもよいし、紫外線でもよい。また、前記光照射は、前記前駆体の添加後であれば、どの段階で行なってもよい。
【0038】
本発明の光触媒体分散液に上述した各種添加剤を含有させる場合には、各種添加剤の添加はどの段階で行なってもよいが、例えば、酸化チタン粒子(酸化チタン粒子分散液)と酸化タングステン粒子(酸化タングステン粒子分散液)とを混合した後に行なうことが好ましい。
【0039】
(光触媒機能製品の製造方法)
本発明の光触媒機能製品の製造方法は、上述した本発明の光触媒体分散液を基材の表面に塗布し、分散媒を揮発させるものである。この方法により、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子を含み光触媒作用を示す光触媒体層を、表面に備えた光触媒機能製品を製造できる。ここで、前記光触媒体分散液が電子吸引性物質またはその前駆体を含む場合には、光触媒体層を構成する光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子の表面に電子吸引性物質またはその前駆体が担持される。担持された電子吸引性物質の前駆体は、担持されたのち、例えば光が照射されることなどによって電子吸引性物質に遷移する。
【0040】
基材(製品)の表面に光触媒体層を形成するにあたり、光触媒体分散液の塗布は、従来公知の方法を適宜採用して行えばよい。光触媒体層の膜厚は、特に制限されるものではなく、通常、その用途等に応じて、数百nm〜数mmまで適宜設定すればよい。また、塗布後に分散媒を揮発させる方法についても、特に制限はなく、従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0041】
光触媒体層は、基材(製品)の内表面または外表面であれば、どの部分に形成されていてもよいが、例えば、光(可視光線)が照射される面であって、かつ悪臭物質が発生する箇所と連続または断続して空間的につながる面に形成されていることが好ましい。なお、基材(製品)の材質は、形成される光触媒体層を実用に耐えうる強度で保持できる限り、特に制限されるものではなく、例えば、プラスチック、金属、セラミックス、木材、コンクリート、紙など、あらゆる材料からなる製品を対象にすることができる。
【0042】
本発明にかかる光触媒機能製品の具体例としては、例えば、天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床等の建築資材、自動車内装材(自動車用インストルメントパネル、自動車用シート、自動車用天井材)、衣類やカーテン等の繊維製品などが挙げられる。
【0043】
本発明にかかる光触媒機能製品は、蛍光灯やナトリウムランプのような可視光源からの光照射により高い触媒作用を示すものであり、有機物の分解や窒素酸化物の分解に好適に用いることができる。例えば、この光触媒機能製品を、照明設備を備えた屋内住環境に設置すれば、屋内照明による光照射によって、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等)、メルカプタン類、ケトン類、芳香族有機化合物類(トルエン等)、アンモニアのような、環境中の揮発性有機物や悪臭物質を簡易に分解、除去することができる。さらには、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることも可能である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における各物性の測定およびその光触媒活性の評価については、以下の方法で行った。
【0045】
<結晶型>
X線回折装置(リガク社製「RINT2000/PC」)を用いてX線回折スペクトルを測定し、そのスペクトルから結晶型を決定した。
【0046】
<BET比表面積>
比表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製「モノソーブ」)を用いて窒素吸着法により測定した。
【0047】
<平均分散粒子径>
サブミクロン粒度分布測定装置(コールター社製「N4Plus」)を用いて試料の粒度分布を測定し、この装置に付属のソフトにより自動的に単分散モード解析して得られた結果を、平均分散粒子径(nm)とした。
【0048】
<ゼータ電位>
レーザーゼータ電位計(大塚電子社製「ELS−6000」)を用い、塩酸を加えて水素イオン濃度をpH3.0に調整した塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウム濃度0.01モル/L)中に光触媒酸化チタン粒子または光触媒酸化タングステン粒子を分散させて、ゼータ電位を測定した。光触媒酸化チタン粒子または光触媒酸化タングステン粒子のそれぞれの使用量に対する塩化ナトリウム水溶液の使用量は、250000質量倍とした。このゼータ電位がプラスであれば、粒子の表面はプラスに帯電しており、マイナスであれば、粒子の表面はマイナスに帯電している。
【0049】
<光触媒活性の評価>
光触媒活性は、蛍光灯の光の照射下でのアセトアルデヒドの分解反応における一次反応速度定数を測定することにより評価した。
まず、光触媒活性測定用の試料を作製した。すなわち、ガラス製シャーレ(外径70mm、内径66mm、高さ14mm、容量約48mL)に、得られた光触媒体分散液を、底面の単位面積あたりの固形分換算の滴下量が1g/m2となるように滴下し、シャーレの底面全体に均一となるように展開した。次いで、このシャーレを110℃の乾燥機内で大気中1時間保持することにより乾燥させて、ガラス製シャーレの底面に光触媒体層を形成した。この光触媒体層に、紫外線強度が2mW/cm2となるようにブラックライトからの紫外線を16時間照射して、これを光触媒活性測定用サンプルとした。
【0050】
次に、この光触媒活性測定用サンプルをガスバッグ(内容積1L)に入れて密閉し、次いで、このガスバッグ内を真空にした後、酸素と窒素との体積比が1:4である混合ガス600mLを封入し、さらにその中に、1容量%でアセトアルデヒドを含む窒素ガス3mLを封入して、暗所で室温下、1時間保持した。その後、市販の白色蛍光灯を光源とし、測定サンプル近傍での照度が1000ルクス(ミノルタ社製照度計「T−10」で測定)となるようにガスバッグの外から蛍光灯の光を照射し、アセトアルデヒドの分解反応を行った。このとき、測定サンプル近傍の紫外光の強度は6.5μW/cm2(トプコン社製紫外線強度計「UVR−2」に、同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定)であった。蛍光灯の光照射を開始してから1.5時間毎にガスバッグ内のガスをサンプリングし、アセトアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフ(島津製作所社製「GC−14A」)にて測定した。そして、照射時間に対するアセトアルデヒドの残存濃度から一次反応速度定数を算出し、これをアセトアルデヒド分解能として評価した。この一次反応速度定数が大きいほど、アセトアルデヒドの分解能(すなわち光触媒活性)は高い。
【0051】
(製造例1−光触媒酸化チタン粒子分散液の調製)
光触媒酸化チタン粒子として、硫酸チタニルの水溶液を加水分解し、濾取して得られたメタチタン酸の固形物(ケーキ)(TiO2換算でチタン成分を45質量%含有)を用いた。このメタチタン酸の固形物(ケーキ)2.2kgを、蓚酸二水和物(和光純薬工業製)158gを水1.88kgに溶解させることにより調製した蓚酸水溶液中に加え、混合して混合物を得た。この混合物における蓚酸の含有量は、メタチタン酸1モルに対して0.1モルである。
【0052】
上記で得られた混合物を、媒体攪拌式分散機(コトブキ技研社製「ウルトラアペックスミル UAM−1 1009」)を用いて下記の条件で分散処理して、光触媒酸化チタン粒子分散液を得た。
分散媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ1.85kg
攪拌速度:周速12.6m/秒
流速:0.25L/分
水の添加:処理開始17分後に水5kgを追加添加
処理時間:合計約90分
【0053】
得られた光触媒酸化チタン粒子分散液における光触媒酸化チタン粒子の平均分散粒子径は55nmであり、分散液中の光触媒酸化チタン粒子のゼータ電位は−10.5mVであった。また、得られた分散液の水素イオン濃度はpH1.5であった。この光触媒酸化チタン粒子分散液の一部を真空乾燥して固形分を得たところ、該固形分のBET比表面積は301m2/gであり、該固形分の結晶型はアナターゼ型であった。なお、分散処理の前の混合物中の固形分と、分散処理の後の分散液中の固形分とについて、X線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。
【0054】
(製造例2−光触媒酸化タングステン粒子分散液の調製)
光触媒酸化タングステン粒子である酸化タングステン粉末(日本無機化学製)1kgをイオン交換水4kg中に加え、混合して混合物を得た。
上記で得られた混合物を、媒体攪拌式分散機(コトブキ技研社製「ウルトラアペックスミル UAM−1 1009」)を用いて下記の条件で分散処理して、光触媒酸化タングステン粒子分散液を得た。
分散媒体:直径0.05mmのジルコニア製ビーズ1.85kg
攪拌速度:周速12.6m/秒
流速:0.25L/分
処理時間:合計約50分
【0055】
得られた光触媒酸化タングステン粒子分散液における光触媒酸化タングステン粒子の平均分散粒子径は118nmであった。この分散液の一部を真空乾燥して固形分を得たところ、該固形分のBET比表面積は40m2/gであった。なお、分散処理の前の混合物中の固形分と、分散処理の後の分散液中の固形分とについて、X線回折スペクトルをそれぞれ測定して比較したところ、どちらも結晶型はWO3であり、分散処理による結晶型の変化は見られなかった。
【0056】
次に、上記で得た光触媒酸化タングステン粒子分散液に、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)の水溶液を加え、さらにメタノールを加えて、光触媒体酸化タングステン粒子分散液とした。このとき、ヘキサクロロ白金酸の使用量は、白金原子換算で光触媒酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.12質量部とし、メタノールの使用量は、得られる光触媒酸化タングステン粒子分散液におけるメタノール濃度が6.25質量%となるようにした。
得られた光触媒体酸化タングステン粒子分散液100質量部中の固形分は11.4質量部であった(固形分濃度11.4質量%)。また、この分散液中の光触媒酸化タングステン粒子のゼータ電位は−2.8mVであった。
【0057】
(実施例1)
製造例1で得た光触媒酸化チタン粒子分散液と、製造例2で得た光触媒酸化タングステン粒子分散液とを、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との比率が1:1(質量比)となるように混合し、その中にさらに、所定の濃度(含有量)となる量のエタノールと、適量の水とを添加して、光触媒体分散液を得た。この光触媒体分散液100質量部中、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計含有量は5質量部であり、メタノールの含有量は1.4質量部であり、エタノールの含有量は10質量部であった(固形分濃度5質量%)。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性を評価したところ、一次反応速度定数は0.417h-1であった。
【0058】
(実施例2)
エタノールの濃度(含有量)が2倍になるようにエタノールと水の添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、光触媒体分散液を得た。すなわち、この光触媒体分散液100質量部中、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計含有量は5質量部であり、メタノールの含有量は1.4質量部であり、エタノールの含有量は20質量部であった(固形分濃度5質量%)。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性を評価したところ、一次反応速度定数は0.401h-1であった。
【0059】
(実施例3)
エタノールの濃度(含有量)が3倍になるようにエタノールと水の添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、光触媒体分散液を得た。すなわち、この光触媒体分散液100質量部中、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計含有量は5質量部であり、メタノールの含有量は1.4質量部であり、エタノールの含有量は30質量部であった(固形分濃度5質量%)。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性を評価したところ、一次反応速度定数は0.418h-1であった。
【0060】
(実施例4)
エタノールの濃度(含有量)が4倍になるようにエタノールと水の添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、光触媒体分散液を得た。すなわち、この光触媒体分散液100質量部中、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計含有量は5質量部であり、メタノールの含有量は1.4質量部であり、エタノールの含有量は40質量部であった(固形分濃度5質量%)。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性を評価したところ、一次反応速度定数は0.384h-1であった。
【0061】
(比較例1)
製造例1で得た光触媒酸化チタン粒子分散液に代えて、市販の酸化チタン粒子分散液(石原産業社製「STS−01」;硝酸含有、平均分散粒径:50nm、固形分濃度:30質量%)を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、光触媒体分散液を調製した。すなわち、この光触媒体分散液100質量部中、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計含有量は5質量部であり、メタノールの含有量は1.4質量部であり、エタノールの含有量は10質量部であった(固形分濃度5質量%)。なお、ここで用いた酸化チタン粒子分散液(STS−01)に含まれる酸化チタン粒子のゼータ電位は+40.1mVであった。
得られた光触媒体分散液は、調製後、直ちに凝集粒子が生成し、固液分離が起こった。
【0062】
(比較例2)
エタノールを添加せず、代わりに水の添加量を増やしたこと以外は、実施例1と同様に操作して、光触媒体分散液を得た。すなわち、この光触媒体分散液100質量部中、光触媒酸化チタン粒子と光触媒酸化タングステン粒子との合計含有量は5質量部であり、メタノールの含有量は1.4質量部であった(固形分濃度5質量%)。
得られた光触媒体分散液を20℃で3時間保管したところ、保管中に固液分離は見られなかった。また、得られた光触媒体分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性を評価したところ、一次反応速度定数は0.251h-1であった。
【0063】
(参考例1)
実施例1〜4で得た光触媒体分散液を、それぞれ、天井材に塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0064】
(参考例2)
実施例1〜4で得た光触媒体分散液を、それぞれ、タイルに塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0065】
(参考例3)
実施例1〜4で得た光触媒体分散液をそれぞれガラスに塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0066】
(参考例4)
実施例1〜4で得た光触媒体分散液をそれぞれ壁紙に塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0067】
(参考例5)
実施例1〜4で得た光触媒体分散液をそれぞれ床に塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させると、屋内照明による光照射により、屋内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。
【0068】
(参考例6)
実施例1〜4で得た光触媒体分散液を自動車用インストルメントパネル、自動車用シート、自動車天井材などの自動車内装材の表面に塗布し、その後、乾燥して分散媒を揮発させると、車内照明による光照射により、車内空間におけるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、アセトン等の揮発性有機物濃度や悪臭物質の濃度を低減することができ、さらに、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌を死滅させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子が分散媒中に分散されてなり、光触媒酸化チタン粒子および光触媒酸化タングステン粒子は表面が互いに同じ極性に帯電しており、分散媒として炭素数が1〜4の揮発性水溶性有機化合物を光触媒体分散液100質量部に対して5〜50質量部含有していることを特徴とする光触媒体分散液。
【請求項2】
電子吸引性物質またはその前駆体を含有する請求項1に記載の光触媒体分散液。
【請求項3】
電子吸引性物質またはその前駆体が、Cu、Pt、Au、Pd、Ag、Fe、Nb、Ru、Ir、RhおよびCoから選ばれる少なくとも1種の金属原子を含有してなるものである請求項1または2に記載の光触媒体分散液。
【請求項4】
揮発性水溶性有機化合物がアルコール化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒体分散液。
【請求項5】
基材の表面に請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒体分散液を塗布し、分散媒を揮発させることを特徴とする光触媒機能製品の製造方法。

【公開番号】特開2010−110672(P2010−110672A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283742(P2008−283742)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】