説明

光触媒水浄化のための方法

本発明は、浄化すべき流体を、光を照射しながら不均一光触媒に接触することにより汚染物質含有流体を浄化する方法に関し、接触は、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びこれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、浄化すべき流体に溶解する少なくとも一種の化合物の存在下で行われる。また、本発明は、汚染物質含有流体の浄化のための不均一光触媒の使用法に関し、浄化すべき流体には、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びそれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含む少なくとも一種の化合物が溶解した形で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化すべき汚染物質含有流体を不均一光触媒に接触させながら光を照射することにより浄化する方法に関する。ここで、接触は、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びこれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、浄化すべき流体に溶解する少なくとも一種の化合物の存在下で行われる。また、本発明は。汚染物質含有流体の浄化のための不均一光触媒の使用法に関する。ここで、浄化すべき流体の中には、少なくとも一種のそのような化合物が溶解した形で存在する。
【背景技術】
【0002】
廃水の浄化方法及び光触媒、特にTiO光触媒の使用は、従来技術で既に周知である。
【0003】
非特許文献1は、種々の金属カチオン、例えば、Fe2+カチオンをドープした、有機酸の酸化分解を促進するTiO光触媒について開示している。この非特許文献1は、排水に溶解した形で添加され得る多価の金属カチオンについては開示していない。
【0004】
非特許文献2は、例えばFe3+、Mo5+、Ru3+等の金属カチオンをドープした二酸化チタンは、光触媒として使用できることを開示している。
【0005】
非特許文献3及び4は、同様に、Fe2+をドープした二酸化チタン光触媒と、それらの改良した調製法について述べている。
【0006】
非特許文献5は、とりわけ、水分子の酸化のため溶解Fe3+と固体二酸化チタンの併用について開示している。
【0007】
先行技術は、不均一触媒と溶解した金属化合物の併用、特にごくわずかな量で排水を純化する方法については開示してない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Paola et al., Applied Catalysis B: Environmental 48 (2204), 223-233.
【非特許文献2】Choi et al., J. Phys. Chem. 1994, 98, 13669-13679.
【非特許文献3】Wang et al., J. of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry 198 (29008) 282-287.
【非特許文献4】P. Sawunyama, Materials Research Bulletin, Vol. 33, No. 5, pp. 795-801, 1998.
【非特許文献5】Mills et al., J. Of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry 108(1997) 1-35.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、注目すべき特に高い効率で、例えば長期に亘って高い浄化作用を一貫して有する、汚染物質含有流体の浄化方法を提供することにある。更に、本発明の方法は、汚染物質の含有量がきわめて低い浄化した流体を提供するために、浄化すべき流体に存在する汚染物質を効果的に分離する。本願発明の方法は、簡単で費用対効果の高いプロセス管理、例えば、金属カチオンのほんのわずかな量だけの使用であるため注目に値する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、浄化すべき流体を不均一触媒に光を照射しながら接触させるという本発明の汚染物質含有流体の浄化方法により達成される。ここで、接触は、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びこれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、浄化されるべき流体に溶解した少なくとも一種の化合物の存在化で行われる。
【0011】
更に、上記の目的は、汚染物質含有流体の浄化のために不均一光触媒を使用する本発明の使用法により達成される。ここで、浄化すべき流体には、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びこれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含む少なくとも一種の化合物が、溶解した形で存在する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般に、本発明の方法は、当該分野における当業者に周知の全ての光触媒が使用できる。例えば、二酸化チタン(TiO)、タングステン酸化物(WO)、亜鉛酸化物及びそれらの混合物から成る群から選択されたものである。
【0013】
したがって、一つの好ましい実施の形態は、二酸化チタン(TiO)、タングステン酸化物(WO)、亜鉛酸化物及びそれらの混合物から成る群から選択された光触媒を使用する方法に関係する。
【0014】
本発明の方法の好ましい一つの実施の形態で、二酸化チタンが不均一光触媒として使用される。
【0015】
特に好ましい実施の形態では、二酸化チタンが使用され、二酸化チタンは主にアナターゼ変態として存在する。本願発明の範囲内で、“主に”とは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも75%の二酸化チタンが、当該分野における当業者に周知のXRD測定方法に基づいて、アナターゼ変態として存在していることを意味する。二酸化チタンの残りの部分は、アモルファス金属酸化物、ブルッカイト変態、二酸化チタンのルチル変態又はそれらの混合物から成る。特別に好ましい実施の形態では、二酸化チタンは完全に、すなわち、アナターゼ変態としてXRD法で100%検出される状態で存在する。
【0016】
本発明で使用できるTiO光触媒は、一般に25から200m/g、好ましくは50から180m/g、特に好ましくは80から150m/gのBET表面積を持つ。BET表面積は、当該分野の当業者に周知の方法、例えば、DIN66 131により測定できる。
【0017】
本発明で使用できるTiO光触媒は、0.1から1.00 ml/g、好ましくは0.2から0.7ml/g、特に好ましくは0.25から0.75ml/gの細孔容積を有する。細孔容積は、当該分野における当業者に周知の方法で測定できる。
【0018】
本発明で使用できるTiO光触媒は、一般に0.001から0.050μm、好ましくは0.005から0.030μm、特に好ましくは0.010から0.025μmの平均細孔直径を有する。平均細孔直径は、当該分野における当業者に周知の方法で測定できる。
【0019】
光触媒的に活性の材料として使用するTiO光触媒は、主に二酸化チタンを含んでいる。すなわち、使用する光触媒は、一般に少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、特に好ましくは99質量%の二酸化チタンを有している。
【0020】
一般に、不均一光触媒は、当該分野の当業者に周知のジオメトリで存在する。例えば、ストランド、タブレット、ハニカム格子構造、粉、ナノ粒子、被膜又はそれらの組み合わせ状で存在する。
【0021】
一つの特に好ましい実施の形態では、鎖状の光触媒、特に好ましくは鎖状のTiO光触媒が使用される。
【0022】
本願発明では、鎖状は、使用する光触媒が楕円形又は円形のベースを有することを意味する。この円形ベース又は楕円形ベースの直径は、最大の拡大で、0.2から10mm、好ましくは0.5から3.0mmである。鎖状光触媒は、一般に0.5から10mm、好ましくは0.8から8.0mm、特に好ましくは1.0から5.0mmの長さを有する。本発明で使用する鎖状光触媒の長さと直径の比は、一般に0.05から50、好ましくは1.0から10である。
【0023】
更に好ましい実施の形態では、TiO光触媒、特に好ましくは鎖状のTiO光触媒は、少なくとも一つの添加物を含む。添加物は、特に好ましくは、周期表(新しいIUPAC命名)の1、4、8、9、10、11、13、14、15族又はランタノイドから選択されたものである。例えば、ナトリウム、カリウム、ジルコニウム、コバルト、亜鉛、鉄、銅、銀、金、パラジウム、プラチナ、ガリウム、窒素、炭素、硫黄、イッテルビウム、エルビウム、ツリウム、ネオジム、及びそれらの混合物であり、元素形態又は酸化物の形のものである。これらの特定された添加物の2つかそれ以上の組み合わせでも良い。特に好ましい組み合わせは、ジルコニウムと窒素、ジルコニウムとコバルト、ランタンとジルコニウム、カリウムとジルコニウム又はナトリウムとジルコニウムである。
【0024】
本発明で使用するTiO光触媒に存在する少なくとも一種の添加物は、好ましくは0.001から5質量%、特に好ましくは0.01から3質量%である。本発明で使用するTiO光触媒に、2種かそれ以上の特定された添加物が存在する場合には、前述した定量データがこの混合物に当てはまる。
【0025】
本発明で好ましく使用される鎖状TiO光触媒は、当該分野の当業者に周知の全ての方法により調製できる。好ましい一つの実施の形態では、本発明で使用される鎖状TiO2光触媒は、対応する量の二酸化チタンと、好ましくは、例えばチロシン等の糖誘導体、例えば食品でんぷん等のでんぷん溶液、例えばメチルセルロース等のセルロースから選ばれた少なくとも一つの有機結合剤と、及び/又は例えばステアリン酸等の少なくとも一つの脂肪酸と、例えばポリエチレン酸化物等のポリマーと、及び、希硝酸等の鉱酸又は塩酸又はギ酸等の有機酸等の少なくとも一つの酸を混合して得られる。これらの混合物は、当該分野の当業者に周知の方法、通常のデバイスで混合され、粉砕される。結果として得られる混合物は、押し出され、対応する鎖状のTiO光触媒が提供される。この方法で生産された押出物は、略120℃の温度で乾燥され、結果としてられる要素は、BET表面積、細孔容積及び平均孔直径の好ましい組み合わせ得るために、空気中で300から500℃の温度で焼成される。
【0026】
特に、本発明で好ましく使用されるTiO要素の調製において、チロシンとステアリン酸を使用することにより、結果として、長期間に亘って高い活性を持続するという高い活性と高い安定性を組み合わせ持つ二酸化チタンが得られることとなる。
【0027】
更に好ましい実施の形態では、光触媒は被膜として任意の形状の支持体に塗布され、それを介して又はその上を浄化すべき液体が流れる。使用できる支持体の例としては、リング、ビーズ、円筒、多孔板、織物、ネット、ハニカム、金属、セラミック、ガラス、又はプラスチックから成るスポンジである。支持体は、当該分野における当業者に周知な方法、例えば、浸漬ドローイング法、スプレイ法、回転ドローイング法等を用いて光触媒的に活性な物質を被膜させることができる。
【0028】
更なる実施の形態では、光触媒は、浄化すべき流体で、好ましくは水による流体で、懸濁液を形成するように粉末として使用することができる。
【0029】
本発明の方法では、少なくとも一つの不均一光触媒、特にTiO光触媒が、発明による方法が十分に高い浄化能力で実行され得ることを補償するだけの量で使用される。
【0030】
本発明の方法では、浄化すべき流体に光を照射しながら、不均一光触媒と接触させることにより行われる。ここで、接触は、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びこれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、浄化すべき流体に溶解した少なくとも一種の化合物の存在化で行われる。
【0031】
一般に、本発明によれば、浄化すべき流体に十分高い溶解性を持つ、上述した金属の全ての化合物を使用することが可能である。
【0032】
鉄を含む最適な化合物は、Fe(NO、FeSO等の鉄(II)化合物、FeCl、FeBr等のハロゲン化鉄(II)、Fe(NO、Fe(SO等の鉄(III)化合物、FeCl、FeBr等のハロゲン化鉄(III)及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0033】
非常に好ましい実施の形態では、FeCl及び/又はFeCl、特に好ましくはFeClが使用される。特定した鉄化合物の替わりに、Fe(NO・9HO、FeCl・6HO、FeCl・4HO等の対応する水和塩を類推使用することもできる。
【0034】
本発明は、特に、浄化すべき流体に溶解する少なくとも一つの化合物が、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、又はそれらの混合物である方法に関する。
【0035】
クロムを含む最適な化合物は、硝酸クロムCr(NO等のクロム(III)化合物、CrCl、CrBr等のハロゲン化クロム(III)、及びそれらの混合物から成る群から選択される。特定のCr化合物の替わりに、Cr(NO・9HO、CrCl・6HO等の対応する水和塩を類推使用することも可能である。
【0036】
ニッケルを含む最適な化合物は、NiSO、Ni(NO、NiCl等のニッケル(II)化合物、及びNiSO・6HO、Ni(NO・6HO、NiCl・HO等の対応する水和塩から成る群から選択される。
【0037】
コバルトを含む最適な化合物は、Co(NO、CoSO、CoCl等のコバルト(II)化合物、及びCo(NO・6HO、CoSO・7HO、CoCl・6HO等の対応する水和塩から成る群から選択される。
【0038】
マンガンを含む最適な化合物は、Mn(NO、MnSO、MnCl等のMn(II)化合物、KMnO等のMn(VII)化合物、及びMn(NO・4HO、MnSO・HO、MnCl・4HO等の対応する水和塩から成る群から選択される。
【0039】
一般に、浄化すべき流体に溶解する少なくとも一つの化合物は、本発明の方法により十分に高い浄化効果を可能にする量が添加される。
【0040】
本発明の方法の一つの好ましい実施の形態では、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びそれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、浄化すべき流体に溶解する少なくとも一種の化合物が、浄化すべき流体と流体に溶解する少なくとも一種の化合物の総和に対して、10から1000ppm、好ましくは10から500ppm、特に好ましくは10から300ppm存在する。
【0041】
本発明の方法は、酸性、中性、又は塩基性のpHで実施できる。一つの好ましい実施の形態では、本発明の方法は、例えばpH1からpH5の酸性pHで実行される。本発明では、浄化すべき流体が自動的に適切なpHを持つように、又は、対応する量の酸又は塩基を添加することで調節できるように構成されている。
【0042】
一つの好ましい実施の形態では、発明の方法は、例えば水素、過酸化物、酸素及び/又はオゾン等の酸化剤が無い状態で実行される。本発明の概念では、“例えば水素、過酸化物、酸素及び/又はオゾン等の酸化剤が無い状態で”とは、特定の化合物が分析検出限界以下の量で存在することを意味する。最適な分析方法は、当該分野の当業者には周知である。
【0043】
本発明の更に好ましい実施の形態では、酸素及び/又は空気は、浄化すべき流体に対して酸化剤として添加される。
【0044】
本発明の方法の一つの有利な点は、過酸化水素(フェントン法)又はオゾン等の従来技術で周知の高価な酸化剤を添加することなしに実行されることにある。
【0045】
本発明の方法を使用して、厄介な又は有害な物質が存在する流体を浄化することが可能である。発明によれば、浄化すべき流体は、好ましくは液体流、特に好ましくは、例えば廃水又は飲料水等の水をベースとした流体である。
【0046】
したがって、好ましい実施の形態では、本発明は、浄化すべき流体が液体流である方法に関連している。
【0047】
本発明の方法により、流体、特に水をベースにした流体は、浄化される。すなわち、方法を適用した後、厄介な物質の濃度は、本発明の方法を実行する前よりも低くなる。
【0048】
本発明の範囲内で、発明により浄化すべき廃水は、例えば、工業プラントからのもの、例えば製油所、製紙工場、鉱山等の工業プラントからのもの、食品セクター内の、又は化学工場内の、例えば、スポーツグランド、レストラン、病院等の民間セクターからのものである。若しくは天然由来のものであっても良い。
【0049】
一般に、流体、特に廃水又は飲料水から取り除くべき厄介な物質は、有機又は無機物質から選ばれる。そして、それらが浄化すべき流体に残留すると、例えば毒性効果、悪臭公害、流体の着色等を介して厄介な影響を及ぼす。
【0050】
本発明の方法により浄化される流体から取り除くことが可能な物質は、有機酸、ハロゲン化有機物質、芳香族又は脂肪族有機物質、アミン、オリゴマー又は高分子材料、アルコール、エーテル、糖、生分解性又は非生分解性物質、界面活性剤及びこれらの混合物から成る群から選択された有機化合物である。
【0051】
本発明により浄化すべき流体から取り除かれる物質は、例えば、1ppbから1000ppm、好ましくは1ppmから100ppmの工業又は私設セクターに関して通常の量で一般に存在する。
【0052】
本発明の方法は、浄化すべき流体の有害成分を減ずるために実行される。その結果、本発明の方法により流体から取り除かれる物質は、本発明の方法を実行する前の状態より、実行した後の浄化された流体の中で、好ましく少ない量で存在する。
【0053】
流体の浄化のための本発明の方法は、浄化すべき流体に光を照射しながら、不均一光触媒と接触させることにより行われる。ここで、接触は、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びこれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、浄化すべき流体に溶解した少なくとも一種の化合物の存在化で行われる。最適な化合物は上記で特定している。
【0054】
接触は、連続的に又は非連続的に行うことができる。最適な装置は、当該分野の当業者には周知である。例えば、フローチューブ又はプレート反応炉等の固定床反応炉である。
【0055】
一つの好ましい実施の形態では、不均一光触媒、特に鎖状TiO光触媒が適切な容器、例えば、フローチューブに導入される。そして、浄化すべき流体は、この触媒の上を及び/又は触媒を通過する。浄化すべき流体の流速は、浄化すべき流体と光触媒との間の接触時間が十分長くなるように調整される。最適な流速は、例えば、0.001から100cm/s、好ましくは0.01から1cm/sである。
【0056】
本発明によれば、浄化すべき流体に溶解する少なくとも一種の化合物が、TiO光触媒と接触する前に流体に添加される。添加と同時に接触が行われても良い。
【0057】
本発明の方法の一つの好ましい実施の形態では、この少なくとも一種の化合物は、浄化すべき流体が不均一光触媒と接触する前に添加される。
【0058】
本発明の方法の一つの利点は、使用する光触媒は、方法を実行している時に、従来技術で生じるような任意に存在するドーピング要素が侵出することによりその活性は失われないことにある。それゆえ、本発明によれば、十分に多量の溶解した化合物が存在する。この化合物は均一に溶解した形で存在するので、それに関連して増加した活性のために、これらの化合物はほんの僅かな量を使用することで十分である。
【0059】
本発明の方法の更なる利点は、使用する溶解可能な金属化合物は、きわめて低い制御された濃度であるので、例えば、排水の処理に関して、環境保護の観点から危険を構成することはない。
【0060】
本発明の方法は、好ましくは4から80℃、特に好ましくは10から60℃、非常に特別に好ましくは15から35℃の温度範囲で実行される。発明の方法は、一般に0.5から50バール、好ましくは0.8から5バール、特に好ましくは大気圧で行われる。
【0061】
本発明の方法は、浄化すべき流体を不均一光触媒に、特定の溶解する化合物の存在下で光を照射しながら接触させることを含む。
【0062】
本発明にしたがって、当該分野の当業者に周知のどんな光源でも使用することができる。例えば、150から800nm、好ましくは200から500nm、非常に特別に好ましくは360から420nmの波長を持つ光源である。本発明によれば、例えば、UVライト(λ=150から400nm)、デイライト(λ=380から800nm)及び/又は標準商用白熱ランプ(λ400から800nm)で本発明の方法を実行することが可能である。
【0063】
光の照射が行われるときの光の強度は、一般に、0.01から1000mW/cm、好ましくは0.1から100mW/cmである。
【0064】
本発明は、汚染物質含有流体の浄化に不均一光触媒を使用する使用法にも関連している。ここで、浄化すべき流体に、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びこれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含む少なくとも一種の化合物が溶解した形で存在する。一つの好ましい実施の形態では、不均一光触媒は二酸化チタンである。
【0065】
浄化、光触媒、溶解した化合物及び更なる成分に関して、本発明の方法に関連して述べた好ましい実施の形態は、適用可能である。
【0066】
特に、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びそれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、浄化すべき流体に溶解した少なくとも一種の化合物は、浄化すべき流体と流体に溶解する少なくとも一種の化合物の総和に対して、10から1000ppm、好ましくは10から500ppm、特に好ましくは10から300ppm存在する。
【0067】
本発明の方法の一つの好ましい実施の形態では、本発明は、発明を使用する使用法に関係する。ここで、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びそれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、浄化すべき流体に溶解する少なくとも一種の化合物は、浄化すべき流体と流体に溶解する少なくとも一種の化合物の総和に対して、10から1000ppm、好ましくは10から500ppm、特に好ましくは10から300ppm存在する。
【0068】
[実施例]
比較例1:
pHが2の塩化イソブチル44ppm(質量部)を含む5リットルの廃水を、TiO成分で満たした固定床反応炉にポンプで通した。反応炉は100gの触媒を含み、18Wのブラックライト(λ=365nm)で照射した。24時間後、塩化イソブチルの原量の15.91%が分解した。
【0069】
実施例2:
pHが2の塩化イソブチル46ppm(質量部)を含む5リットルの廃水を、TiO成分で満たした固定床反応炉にポンプで通した。FeCl(鉄(II)塩化物)として300ppmの鉄を排水に添加した。反応炉は100gの触媒を含み、18Wのブラックライト(λ=365nm)で照射した。24時間後、塩化イソブチルの原量の58.69%が分解した。また、48時間後では、塩化イソブチルの原量の71.74%が分解した。
【0070】
実施例3:
pHが2の塩化イソブチル46ppm(質量部)を含む5リットルの廃水を、TiO成分で満たした固定床反応炉にポンプで通した。FeCl(鉄(II)塩化物)として15ppmの鉄を排水に添加した。反応炉は100gの触媒を含み、18Wのブラックライト(λ=365nm)で照射した。24時間後、塩化イソブチルの原量の70.73%が分解した。また、48時間後では、塩化イソブチルの原量の93.41%が分解した。
【0071】
比較例4:
pHが2の塩化イソブチル88ppm(質量部)を含む5リットルの廃水を、TiO成分で満たした固定床反応炉にポンプで通した。反応炉は100gの触媒を含み、18Wのブラックライト(λ=365nm)で照射した。6時間後、塩化イソブチルの原量の7.95%が分解した。また、24時間後では、塩化イソブチルの原量の19.32%が分解した。
【0072】
実施例5:
pHが2の塩化イソブチル100ppm(質量部)を含む5リットルの廃水を、TiO成分で満たした固定床反応炉にポンプで通した。FeClとしてFe30ppm、CrClとしてクロム30ppm及びNiClとしてニッケル30ppmを排水に添加した。反応炉は100gの触媒を含み、18Wのブラックライト(λ=365nm)で照射した。6時間後、塩化イソブチルの原量の15.00%が分解した。また、24時間後では、塩化イソブチルの原量の24.00%が分解した。
【0073】
塩化イソブチルの量は、ヘッドスペースサンプリング法に一致してガスクロマトグラフィにより測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化すべき流体を、光を照射しながら不均一光触媒に接触することにより汚染物質含有流体を浄化する方法において、
前記接触は、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びこれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、
前記浄化すべき流体に溶解する少なくとも一種の化合物の存在下で行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接触は、4から80℃の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びそれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、
前記浄化すべき流体に溶解する少なくとも一種の化合物は、
前記浄化すべき流体と前記流体に溶解する少なくとも一種の化合物の総和に対して、10から1000ppm存在することを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記不均一光触媒は、ストランド、タブレット、ハニカム格子構造、粉、ナノ粒子、被膜又はそれらの組み合わせ状で存在することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
二酸化チタン、タングステン酸化物(WO)、亜鉛酸化物及びそれらの混合物から成る群から選択された不均一光触媒が使用されることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記二酸化チタンは、不均一光触媒として使用されることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
主にアナターゼ変態として存在する二酸化チタンを使用することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記浄化すべき流体に溶解する少なくとも一種の化合物は、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記浄化すべき流体は、液体流であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
汚染物質含有流体の浄化のための不均一光触媒の使用法であって、
前記浄化すべき流体には、鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びそれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含む少なくとも一種の化合物が溶解した形で存在することを特徴とする使用法。
【請求項11】
鉄、クロム、ニッケル、コバルト、マンガン及びそれらの混合物から成る群から選択された少なくとも一種の金属を含み、
前記浄化すべき流体に溶解した少なくとも一種の化合物は、
前記浄化すべき流体と前記流体に溶解する少なくとも一種の化合物の総和に対して、10から1000ppmの量で存在することを特徴とする請求項10に記載の使用法。
【請求項12】
前記不均一光触媒は、二酸化チタンであることを特徴とする請求項10又は11の何れか1項に記載の使用法。

【公表番号】特表2012−530599(P2012−530599A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516704(P2012−516704)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058869
【国際公開番号】WO2010/149682
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】