説明

光記録媒体およびその製造方法

【課題】生産性の低下を招くことなく、優れた繰り返し記録耐久性を得ることができる光記録媒体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】光記録媒体は、第1の主面および第2の主面を有する基板と、光の照射により情報信号の記録または再生が行われる、基板の第1の主面上に形成された1または複数の情報記録層と、基板の第2の主面からのガス放出を抑制する、基板の第2の主面上に形成されたバリア層とを備える。基板の第2の主面のうち、バリア層から露出する領域の露出面積が、688mm2以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光記録媒体およびその製造方法に関する。詳しくは、光の照射により情報信号の記録および/または再生が行われる光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、情報信号層にレーザー光を照射することにより、情報信号の読み出しや書き込みが行われる書換型の光記録媒体が広く普及している。通常、書換型のBlu-ray Discなどで用いられている情報記録層には、レーザー光の照射によって結晶相と非晶質相とが可逆的に変化する相変化記録材料が用いられている(例えば特許文献1参照)。この相変化記録材料では、レーザー光の照射によって熱せられた記録層の温度を急峻に低下させることにより非晶質相(記録マーク)を形成し、比較的パワーの小さいレーザー光を比較的長時間照射することにより非晶質相を結晶相に戻すことが可能となっている。この為、複数回の書き換えが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−18926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、記録回数が多数回に及ぶ場合に、相変化記録層に熱ダメージが蓄積することとなり、結晶質相と非晶質相とを可逆的に変化する機能が失われ、記録マークの再生特性が劣化する傾向が一般的にある。この劣化の程度は製造条件に依存する。これまでの本発明者らの知見によると、相変化記録層を成膜する直前の真空度が比較的悪い場合に、上記劣化が顕著となることが分かっている。例えば、2層書き換え型のBlu-ray Discでは、基板成形からL1層成膜までの時間がどうしても長くなってしまうために、樹脂基板中およびUV硬化型の樹脂で形成された中間層中に水分が吸収されてしまう。この吸収された水分がL1層成膜の真空スパッタリング装置内に解放されると、L1層の記録再生特性、特に繰り返し書き換え後のジッタが悪化してしまう。この影響を抑制するためには、図1のフローチャートに示すように、L0層および中間層が形成された基板を、80℃の高温下に長時間置き、基板および中間層中の水分を脱気、乾燥した後、L1層成膜用の真空スパッタリング装置に投入することが考えられる。しかし、脱気には、4時間以上と長い時間が掛かるために、生産性が著しく低下してしまう。
【0005】
したがって、この発明の目的は、生産性の低下を招くことなく、繰り返し記録耐久性を向上できる光記録媒体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
第1の主面および第2の主面を有する基板と、
光の照射により情報信号の記録または再生が行われる、基板の第1の主面上に形成された1または複数の情報信号層と、
基板の第2の主面からのガス放出を抑制する、基板の第2の主面上に形成されたバリア層と
を備え、
基板の第2の主面のうちバリア層から露出する領域の面積が、688mm2以下である光記録媒体である。
【0007】
第2の発明は、
第1の主面および第2の主面を有する基板を成形する工程と、
基板の第1の主面上に第1情報信号層を形成する工程と、
第1情報信号層上に中間層を形成する工程と、
中間層上に第2情報信号層を形成する工程と、
基板の成形工程後、第2情報信号層の形成工程前に、基板の第2の主面に、基板の第2の主面からのガス放出を抑制するバリア層を形成する工程と
を備え、
バリア層の形成工程では、基板の第2の主面のうちバリア層から露出する領域の面積を、688mm2以下にする光記録媒体の製造方法である。
【0008】
この発明では、基板の第2の主面上にガス放出を抑制するバリア層を形成すると共に、基板の第2の主面のうちバリア層から露出する領域の面積を688mm2以下にしている。これにより、情報信号記録層を形成する際に、効率的に基板内の脱ガスを抑えることができる。このため、情報信号層を形成する際に、水分などの不純物ガスで真空度が悪化することが抑制される。したがって、繰り返し記録劣化の少ない情報信号層を得ることができる。すなわち、高温での脱気処理を行わずとも、繰り返し記録耐久性に優れた光記録媒体を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、生産性の低下を招くことなく、優れた繰り返し記録耐久性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、脱気処理の工程を有する光記録媒体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】図2は、この発明の第1の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、第1情報信号層の一構成例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、第2情報信号層の一構成例を示す概略断面図である。
【図5】図5は、基板の裏面に形成されるバリア層の成膜エリアを示す平面図である。
【図6】図6は、この発明の第1の実施形態による光記録媒体の製造方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は、外周マスク31および内周マスク32の配置の一例を示す概略図である。
【図8】図8は、この発明の第2の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。
【図9】図9は、実施例1〜4、比較例1、2の光記録媒体の相変化記録層を成膜する真空室の真空度を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例1〜4、比較例1、2の光記録媒体の1000回書き換え後のジッタを示すグラフである。
【図11】図11は、実施例1〜4、比較例1、2の光記録媒体の相変化記録層の形成時における真空度とDOW1000回後のLimit EQ Jitterとの関係を示すグラフである。
【図12】図12は、実施例1〜4、比較例1、2の光記録媒体における繰り返し書き換え回数とTiming Jitterとの関係を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例1〜4、比較例1、2の光記録媒体におけるレーザパワーPpとTiming Jitterとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
1.第1の実施形態(2層光記録媒体の例)
2.第2の実施形態(単層光記録媒体の例)
【0012】
<1.第1の実施形態>
[光記録媒体の構成]
図2は、この発明の第1の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す。この光記録媒体は、データの消去や書換が可能である書換型の光記録媒体である。図2に示すように、光記録媒体は、基板1と、基板1の一主面(第1の主面)上に順次積層された第1情報信号層(L0層)2、中間層3、第2情報信号層(L1層)4、およびカバー層5と、基板1の他主面(第2の主面)上に積層されたバリア層6とを備える。なお、以下では、第1情報信号層2、および第2情報信号層4が積層される基板1の一主面を信号面と適宜称し、それとは反対側の他主面を裏面と適宜称する。
【0013】
この光記録媒体では、カバー層5側から第1情報信号層2または第2情報信号層4にレーザー光を照射することによって、情報信号の記録または再生が行われる。例えば、400nm〜410nmの波長を有するレーザー光が0.84〜0.86の開口数を有する対物レンズ10により集光され、カバー層5側から第1情報信号層2または第2情報信号層4に照射されることで、情報信号の記録または再生が行われる。このような光記録媒体としては、例えばBD−RE(Blu-ray Disk ReWritable)が挙げられる。
【0014】
この光記録媒体は、レーザー光が入射される入射面と、この入射面とは反対側の裏面とを有している。そして、入射面を基準として、手前側に第2情報信号層4が配置され、奥側に第1情報信号層2が配置されている。第2情報信号層4は、第1情報信号層2に照射されるレーザー光を透過可能に構成された半透明層である。したがって、第1情報信号層2に対する情報信号の記録または再生は、第2情報信号層4を透過したレーザー光を第1情報信号層2に照射することにより行われることになる。
【0015】
以下、光記録媒体を構成する基板1、第1情報信号層2、中間層3、第2情報信号層4、カバー層5、バリア層6について順次説明する。
【0016】
(基板)
基板1は、中央に開口(以下センターホールと称する)が形成された円環形状を有する。この基板1の一主面は、例えば、凹凸面となっており、この凹凸面上に第1情報信号層2が成膜される。以下では、凹凸面のうち凹部をイングルーブGin、凸部をオングルーブGonと称する。
【0017】
このイングルーブGinおよびオングルーブGonの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブGinおよび/またはオングルーブGonが、例えば、アドレス情報を付加するためにウォブル(蛇行)されている。
【0018】
基板1の直径は、例えば120mmに選ばれる。基板1の厚さは、剛性を考慮して選ばれ、好ましくは0.3mm以上1.3mm以下から選ばれ、より好ましくは0.6mm以上1.3mm以下から選ばれ、例えば1.1mmに選ばれる。また、センターホールの径(直径)は、例えば15mmに選ばれる。
【0019】
基板1は、例えば、吸水性を有するプラスチック樹脂材料を主成分として含んでいる。基板1の材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂もしくはアクリル系樹脂などの樹脂材料を用いることができる。
【0020】
(第1情報信号層)
図3は、第1情報信号層の一構成例を示す。図3に示すように、第1情報信号層2は、例えば、反射層11、第2誘電体層12、第1誘電体層13、記録層14、第1誘電体層15、第2誘電体層16、第3誘電体層17をこの順序で基板1上に積層してなる積層膜である。
【0021】
反射層11を構成する材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの合金を主成分とするものを挙げることができる。これらのうち、特にAl系、Ag系、Au系、Si系、Ge系の材料が実用性の面から好ましい。合金としては、例えばAl−Ti、Al−Cr、Al−Cu、Al−Mg−Si、Ag−Nd−Cu、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Si−Bなどが好適に用いられる。これらの材料のうちから、光学特性および熱特性を考慮して設定することが好ましい。例えば、単波長領域においても高反射率を有する点を考慮すると、Al系またはAg系の材料を用いることが好ましい。
【0022】
第1誘電体層13、第2誘電体層12、第1誘電体層15、第2誘電体層16および第3誘電体層17は、記録層14を保護するとともに、光学的特性および熱的安定性などを制御する層である。これらの誘電体層を構成する誘電体材料としては、例えば、Si、In、Zr、Cr、Sn、Ta、AlもしくはNbなどの酸化物、SiもしくはAlなどの窒化物、Znなどの硫化物、またはこれらの誘電体材料を2種以上混合したものを用いることができる。具体的には、SiN、ZnS−SiO2、AlN、Al23、SiO2、Cr23、In23、ZrO2、SiO2−In23−ZrO2(以下適宜SIZと称する)、SiO2−Cr23−ZrO2(以下適宜SCZと称する)、TiO2、Nb25などを用いることができる。第1誘電体層13および第1誘電体層15が、互いに異なる材料から構成されるようにしてもよい。また、第2誘電体層12および第2誘電体層16が、互いに異なる材料から構成されるようにしてもよい。
【0023】
記録層14は、例えば、レーザー光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層である。具体的には、記録層14は、例えば、レーザー光の照射により非晶質相と結晶質相との間を可逆的に変化させることにより、情報信号の記録および書き換えが行われる相変化記録層である。この相変化記録層の材料としては、例えば、共晶系相変化材料または化合物系相変化材料を用いることができる。具体的には、相変化材料としては、例えば、GeSbTe、SbTe、BiGeTe、BiGeSbTe、AgInSbTeまたはGeSnSbTeなどを主成分とした相変化材料が挙げられる。これらを主成分とした相変化材料に、必要に応じて、Ag、In、CrおよびMnなどの金属材料を1種以上添加するようにしてもよい。
【0024】
(中間層)
基板1に形成された第1情報信号層2上には、例えば、厚さ25μmを有する樹脂層としての中間層3が形成される。この中間層3は、例えば、透明性および吸水性を有する樹脂材料を主成分として含んでいる。このような樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはアクリル系樹脂などのプラスチック材料を用いることができる。中間層3のカバー層5側となる面は、例えば基板1と同様に、イングルーブGinおよびオングルーブGonからなる凹凸面となっている。この凹凸面上に第2情報信号層4が成膜される。
【0025】
この凹状のイングルーブGinおよび凸状のオングルーブGonの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブGinおよび/またはオングルーブGonが、例えば、アドレス情報を付加するためにウォブル(蛇行)されている。
【0026】
(第2情報信号層)
図4は、第2情報信号層の一構成例を示す。図4に示すように、第2情報信号層4は、例えば、透過率調整層21、反射層22、第2誘電体層23、第1誘電体層24、記録層25、第1誘電体層26、第2誘電体層27、第3誘電体層28をこの順序で中間層3上に積層してなる積層膜である。
【0027】
透過率調整層21は、第2情報信号層4の透過率を増幅する層である。透過率調整層21を構成する材料としては、例えば、TiO2、Nb25などの高屈折率材料を用いることができる。
【0028】
反射層22は、入射されたレーザー光を反射し光学特性を向上させるとともに、記録層25に吸収された熱を速やかに放熱させる層である。反射層22を構成する材料としては、例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの合金を主成分とするものを挙げることができる。これらのうち、特にAl系、Ag系、Au系、Si系、Ge系の材料が実用性の面から好ましい。合金としては、例えばAl−Ti、Al−Cr、Al−Cu、Al−Mg−Si、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti、Si−Bなどが好適に用いられる。これらの材料のうちから、光学特性および熱特性を考慮して設定することが好ましい。例えば、単波長領域においても高反射率を有する点を考慮すると、Al系またはAg系の材料を用いることが好ましい。
【0029】
第1誘電体層24、第2誘電体層23、第1誘電体層26、第2誘電体層27および第3誘電体層28は、記録層25を保護するとともに、光学的特性および熱的安定性などを制御する層である。これらの誘電体層を構成する誘電体材料としては、例えば、Si、In、Zr、Cr、Sn、Ta、AlもしくはNbなどの酸化物、SiもしくはAlなどの窒化物、Znなどの硫化物、またはこれらの誘電体材料を2種以上混合したものを用いることができる。具体的には、SiN、ZnS−SiO2、AlN、Al23、SiO2、Cr23、In23、ZrO2、SCZ、SIZ、TiO2、Nb25などを用いることができる。第1誘電体層24および第1誘電体層26が、互いに異なる材料から構成されるようにしてもよい。また、第2誘電体層23および第2誘電体層27が、互いに異なる材料から構成されるようにしてもよい。
【0030】
反射層22に隣接する第2誘電体層23の熱伝導率は、記録層25に隣接する第1誘電体層24の熱伝導率に比べて高く設定されていることが好ましい。これにより、レーザー光の照射により熱せられた記録層25の熱を速やかに反射層22へと逃がすことが可能となり、第2情報信号層4の繰り返し記録耐久性を向上することができる。第1誘電体層24および第2誘電体層23がSiO2、In23およびZrO2を主成分とする場合、それぞれの誘電体層に含まれるIn23の比率が以下の関係を満たすことが好ましい。すなわち、記録層25に隣接する第1誘電体層24に含まれるIn23の比率をa(mol%)、反射層22に隣接する第2誘電体層23に含まれるIn23の比率をb(mol%)としたとき、a<bの関係を満たすことが好ましい。このような関係を満たすことで、第2誘電体層23の熱伝導率を第1誘電体層24の熱伝導率に比べて高く設定することができる。ここで、比率は、第1誘電体層24または第2誘電体層23に含まれるSiO2とIn23とZrO2との総量を100mol%としている。ここで、熱伝導率は、薄膜の厚さ方向の熱伝導率である。
【0031】
具体的には、第1誘電体層24および第2誘電体層23がSiO2、In23およびZrO2を主成分とする場合、第1誘電体層24が以下の式(1)の組成を有し、第2誘電体層23が以下の式(2)の組成を有することが好ましい。
(SiO2x1(In23y1(ZrO2z1 ・・・(1)
(但し、x1+y1+z1=100、5≦x1≦20、40≦y1≦60、30≦z1≦50)
(SiO2x2(In23y2(ZrO2z2 ・・・(2)
(但し、x2+y2+z2=100、5≦x2≦20、60≦y2≦90、5≦z2≦20)
【0032】
記録層25は、例えば、レーザー光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層である。具体的には、記録層25は、例えば、レーザー光の照射により非晶質相と結晶質相との間を可逆的に変化させることにより、情報信号の記録および書き換えが行われる相変化記録層である。この相変化記録層の材料としては、例えば、共晶系相変化材料または化合物系相変化材料を用いることができる。具体的には、相変化材料としては、例えば、GeSbTe、SbTe、BiGeTe、BiGeSbTe、AgInSbTeまたはGeSnSbTeなどを主成分とした相変化材料が挙げられる。これらを主成分とした相変化材料に、必要に応じて、Ag、In、CrおよびMnなどの金属材料を1種以上添加するようにしてもよい。
【0033】
第1情報信号層2の記録層14として共晶系相変化材料を主成分とする相変化記録層を用い、第2情報信号層4の記録層25として化合物系相変化材料を主成分とする相変化記録層を用いることが好ましい。このような構成にする場合、共晶系相変化材料としてはGeSbTe系材料を用い、化合物系材料としてBiGeTe系材料を用いることが好ましい。このような構成を有する記録層14と記録層25とを組み合わせることで、記録特性を向上することができるからである。
【0034】
化合物系相変化材料であるBiGeTe系材料としては、以下の式(3)に示す組成を有するものが好ましい。
BixGeyTez ・・・(3)
(但し、x+y+z=100、2≦x≦10、35≦y≦45、45≦z≦55である。)
【0035】
(カバー層)
保護層であるカバー層5は、例えば、紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂を硬化してなる樹脂層である。この樹脂層の材料としては、例えば、紫外線硬化型のアクリル系樹脂が挙げられる。また、円環形状を有する光透過性シートと、この光透過性シートを基板1に対して貼り合わせるための接着層とからカバー層を構成するようにしてもよい。光透過性シートは、記録および再生に用いられるレーザー光に対して、吸収能が低い材料からなることが好ましく、具体的には透過率90パーセント以上の材料からなることが好ましい。光透過性シートの材料としては、例えばポリカーボネート樹脂材料、ポリオレフィン系樹脂(例えばゼオネックス(登録商標))が挙げられる。光透過性シートの厚さは、好ましくは0.3mm以下に選ばれ、より好ましくは3μm〜177μmの範囲内から選ばれる。接着層は、例えば紫外線硬化樹脂または感圧性粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)からなる。
【0036】
カバー層5の厚さは、好ましくは10μm〜177μmの範囲内から選ばれ、例えば100μmに選ばれる。このような薄いカバー層5と、例えば0.85程度の高NA(numerical aperture)化された対物レンズとを組み合わせることによって、高密度記録を実現することができる。
【0037】
(バリア層)
バリア層6は、成膜工程において基板1の裏面からの脱ガス(水分放出)を抑制するものである。また、バリア層6は、基板1の裏面における水分の吸収を抑制する防湿層としても機能する。
【0038】
バリア層6を構成する材料としては、基板1の裏面からの脱ガス(水分放出)を抑制することができるものであればよく特に限定されるものではないが、例示するならば、ガス透過性が低い誘電体を用いることができる。このような誘電体としては、例えば、SiN、SiO2、TiN、AlN、およびZnS−SiO2の少なくとも1種を用いることができる。バリア層6の水分透過率は、5×10-5g/cm2・day以下であることが好ましい。バリア層6の厚さは、5nm以上40nm以下に設定することが好ましい。5nm未満であると、基板裏面からの脱ガスを抑制するバリア機能が低下する傾向がる。一方、40nmを超えると、脱ガスを抑制するバリア機能がそれ以下の膜厚の場合と殆ど変わらず、また、生産性の低下を招く傾向があるからである。
【0039】
図5は、基板の裏面に形成されるバリア層の成膜エリアを示す平面図である。上述したように、基板1の中央部にはセンターホール1aが形成されている。基板1の裏面には、基板1の内周から外周に向かって、内周側の基板露出エリアR1、バリア層6の成膜エリアR2、外周側の基板露出エリアR3が設定されている。バリア層6の成膜エリアR2の面積は、後述するバリア層6の成膜工程において、基板1の内周部および外周部をそれぞれ覆う内周マスクおよび外周マスクにより調整される。これらの内周マスクおよび外周マスクにより基板1の内周部および外周部を覆うことにより、バリア層6が形成されず、基板1が露出した内周側の基板露出エリアR1および外周側の基板露出エリアR3が形成される。
【0040】
基板裏面の露出エリアの面積(すなわち、内周側の基板露出エリアR1と外周側の基板露出エリアR3との合計の面積)は、688mm2以下、好ましくは398.2mm2以下である。これにより、第2情報信号層4、具体的には第2情報信号層4の記録層25の成膜時における真空度の低下を抑制し、多数回の記録後における再生特性の低下を抑制することができる。
【0041】
[光記録媒体の製造方法]
次に、図6を参照しながら、上述の構成を有する光記録媒体の製造方法の一例について説明する。
【0042】
まず、ステップS1において、例えば射出成形装置などの成形装置により、基板1を成形する。次に、成形した基板を成形装置からL0層成膜装置に搬送する。次に、ステップS2において、L0層成膜装置にて第1情報信号層2を形成する。このL0層成膜装置は枚葉式成膜装置であることが好ましい。この枚葉式成膜装置の各真空室を用いて、反射層11、第2誘電体層12、第1誘電体層13、記録層14、第1誘電体層15、第2誘電体層16、第3誘電体層17をこの順序で基板1上に真空を破らずに連続的に積層することができるからである。枚葉式成膜装置としては、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などの真空薄膜形成技術が適用されたものを用いることができる。次に、第1情報信号層2が形成された基板1を、L0層成膜装置からバリア層成膜装置に搬送する。
【0043】
次に、ステップS4において、図7に示すように、バリア層成膜装置にて基板1の裏面の外周部および内周部をそれぞれ、外周マスク31および内周マスク32により覆い、バリア層6を基板1の裏面上に形成する。バリア層成膜装置としては、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などの真空薄膜形成技術が適用されたものを用いることができる。なお、L0層成膜装置とバリア層成膜装置とを一体のものとし、第1情報信号層2およびバリア層6を1つの成膜装置内にて連続的に成膜できるようにしてもよい。次に、バリア層6が形成された基板1を、バリア層成膜装置から中間層形成装置に搬送する。
【0044】
次に、ステップS3において、中間層形成装置にて、例えばスピンコート法により紫外線硬化樹脂を第1情報信号層2上に均一に塗布する。その後、第1情報信号層2上に均一に塗布された紫外線硬化樹脂に対してスタンパの凹凸パターンを押し当て、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射して硬化させた後、スタンパを剥離する。これらにより、スタンパの凹凸パターンが紫外線硬化樹脂に転写され、例えばイングルーブGinおよびオングルーブGonが設けられた中間層3が形成される。次に、中間層3が形成された基板1を、中間層形成装置からL1層成膜装置に搬送する。中間層形成装置からL1層成膜装置の搬送区間の露点を、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−15℃以下に調整することが好ましい。これにより、中間層形成装置からL1層成膜装置の搬送工程において、中間層3への水分吸収を抑え、L1層成膜装置の各真空室、例えば記録層25を形成するための真空室において中間層3から脱ガス(水分放出)を抑制することができる。したがって、記録層25を成膜する際の真空度を良好に保つことができ、これにより、繰り返し記録により劣化の少ない記録層25を形成することができる。
【0045】
次に、ステップS5において、L1層成膜装置にて、中間層3上に第2情報信号層4を形成する。このL0層成膜装置は枚葉式成膜装置であることが好ましい。この成膜装置の各真空室を用いて、例えば、透過率調整層21、反射層22、第2誘電体層23、第1誘電体層24、記録層25、第1誘電体層26、第2誘電体層27、第3誘電体層28をこの順序で中間層3上に真空を破らずに連続的に積層できるからである。枚葉式成膜装置としては、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などの真空薄膜形成技術が適用されたものを用いることができる。次に、L1層が形成された基板1をL1層成膜装置からカバー層形成装置に搬送する。
【0046】
次に、ステップS6において、カバー層形成装置にて、保護層であるカバー層5を第2情報信号層4上に形成する。カバー層形成装置としては、例えば、紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂を第2情報信号層4上にスピンコートし、紫外線などの光を感光性樹脂に照射することにより、カバー層5を形成する装置を用いることができる。また、光透過性シートを接着剤を用いて、基板1上の凹凸面側に貼り合わせることにより、カバー層5を形成する装置を用いることもできる。具体的には例えば、第2情報信号層4上に塗布された紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂を用いて、光透過性シートを基板1上の凹凸面側に貼り合わせることにより、カバー層5を形成する装置を用いることができる。また、光透過性シートを、このシートの一主面に予め均一に塗布された感圧性粘着剤(PSA)を用いて、基板1上の凹凸面側に貼り合わせることにより、カバー層5を形成する装置を用いることもできる。
以上の工程により、図2に示す光記録媒体が得られる。
【0047】
上述したように、この発明の第1の実施形態では、基板1の裏面にバリア層6を形成し、基板1の裏面のうちバリア層6から露出する部分の面積を、688mm2以下、好ましくは398.2mm2以下に設定している。これにより、効率的に基板裏面からの脱ガスを抑えることができる。このため、記録層25を成膜する際の真空度を、水分などの不純物ガスで悪化させることが無く、繰り返し記録劣化の少ない情報信号層を形成できる。すなわち、光記録媒体の繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0048】
また、中間層形成装置からL1層成膜装置の搬送区間の露点を、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−15℃以下に調整することが好ましい。これにより、中間層形成装置からL1層成膜装置の搬送工程において、中間層3への水分吸収を抑え、L1層成膜装置において中間層3からの脱ガス(水分放出)を抑制することができる。したがって、L1層成膜装置の真空室にて記録層25を成膜する際の真空度を良好に保つことができる。よって、光記録媒体の繰り返し記録耐久性をさらに向上することができる。
【0049】
また、反射層22に隣接する第2誘電体層23の熱伝導率を、記録層25に隣接する第1誘電体層24の熱伝導率よりも高くすることが好ましい。これにより、レーザー光の照射により熱せられた記録層25の熱を速やかに反射層22へと逃がすことが可能となり、第2情報信号層4の繰り返し記録耐久性を向上することができる。すなわち、多層の書換型の光記録媒体において、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0050】
また、第2情報信号層4を透過するレーザー光の透過率を制御するために、反射層22の膜厚を薄くした場合にも、レーザー光の照射により熱せられた記録層25の熱を反射層22へと速やかに逃がすことが可能となる。したがって、多層の書換型の光記録媒体において、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【0051】
また、SiO2とIn23とZrO2とを主成分とする第1誘電体層24および第2誘電体層23を用いた場合には、これら2つの誘電体層におけるIn23の比率を調整することにより、これら2つの誘電体層の熱伝導率を容易に制御することが可能となる。具体的には、それらの比率は、記録層25に隣接する第1誘電体層24のIn23の比率をa(mol%)、反射層22に隣接する第2誘電体層23のIn23の比率をb(mol%)としたときに、a<bの関係を満たすように設定することが好ましい。このように設定することで、反射層22に隣接する第2誘電体層23の熱伝導率を、記録層25に隣接する第1誘電体層24の熱伝導率よりも高く設定できるからである。
【0052】
また、第1誘電体層24および第2誘電体層23としてSiO2とIn23とZrO2とを主成分とするものを用い、記録層25としてBiとGeとTeを主成分とする記録層25を用いることが好ましい。このようにすることで、記録層25の結晶生成を制御し、より良好な信号特性を得ることができる。
【0053】
<2.第2の実施形態>
図8は、この発明の第2の実施形態による光記録媒体の一構成例を示す。図8に示すように、第2の実施形態による光記録媒体は、単層の情報信号層7を有する点において、第1の実施形態とは異なっている。なお、上述の第1の実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。情報信号層7は、例えば第1の実施形態における第1情報信号層2と同様のものを用いることができる。この第2の実施形態において、バリア層6は、例えば、基板1の成形工程後、情報信号層7の成形工程前に形成される。
【0054】
この第2の実施形態によれば、単層の書換型の光記録媒体において、繰り返し記録耐久性を向上することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
まず、直径φ120mm、厚さ1.1mm、トラックピッチ0.32μmの溝を有するポリカーボネート基板を射出成形装置により成形した。このポリカーボネート基板は、Blu-ray Disc Rewritable Format part1Basic Format Specifications Ver2.1に準拠したものである。次に、射出成形装置から第1の枚葉式スパッタリング装置(エリコン製、DVDスプリンター)に、成形した基板を搬送した。次に、マグネトロンスパッタリング方式により、以下の組成および膜厚を有する反射層、第2誘電体層、第1誘電体層、相変化記録層、第1誘電体層、第2誘電体層を基板表面上に順次積層した。これにより、第1情報信号層(L0層)が基板表面上に形成された。
第2誘電体層:SiN、40nm
第1誘電体層:ZnS−SiO2、10nm
相変化記録層:GeSbTe、12nm
第1誘電体層:ZnS−SiO2、5nm
第2誘電体層:SiN、5nm
反射層:Ag合金、100nm
【0057】
次に、第1情報信号層が形成された基板を、第1の枚葉式スパッタリング装置からバリア層形成用スパッタリング装置に搬送した。次に、内径(直径)25mmの内周マスクおよび外径(直径)118mmの外径マスクによりそれぞれ、基板裏面の内周部および外周部を覆った後、マグネトロンスパッタリング方式により、SiNからなる、厚さ5nmのバリア層を基板裏面に形成した。
【0058】
次に、バリア層形成用スパッタリング装置から中間層形成装置に基板を搬出し、スピンコート法により紫外線硬化樹脂を第1情報信号層上に均一に塗布した。その後、第1情報信号層上に均一に塗布された紫外線硬化樹脂に対してスタンパの凹凸パターンを押し当て、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射して硬化させた後、スタンパを剥離した。これらにより、厚さ25μm、トラックピッチ0.32μmの溝を有する中間層が形成された。
【0059】
次に、中間層形成装置から第2の枚葉式スパッタリング装置(エリコン製、DVDスプリンター)に基板を搬送した。次に、マグネトロンスパッタリング方式により、以下の組成および膜厚を有する透過率調整層、反射層、第2誘電体層、第1誘電体層、相変化記録層、第1誘電体層、第2誘電体層、第3誘電体層を中間層上に順次積層した。これにより、第2情報信号層が中間層上に形成された。
第3誘電体層:SiN、30nm
第2誘電体層:ZnS−SiO2、10nm
第1誘電体層:SiO2−Cr23−ZrO2、2nm
相変化記録層:Bi8Ge40Te52、6nm
第1誘電体層:SiO2−In23−ZrO2、2nm(但し、SiO2−In23−ZrO2の組成比は、SiO2:In23:ZrO2=15mol%:50mol%:35mol%である。)
第2誘電体層:SiO2−In23−ZrO2、8nm(但し、SiO2−In23−ZrO2の組成比は、SiO2:In23:ZrO2=15mol%:70mol%:15mol%である。)
反射層:Ag合金、10nm
透過率調整層:TiO2、20nm
【0060】
次に、第2の枚葉式スパッタリング装置からスピンコート装置に基板を搬送し、この第2情報信号層上にスピンコート法により紫外線硬化樹脂を塗布し、この紫外線硬化樹脂に対して紫外線を照射して、厚さ75μmのカバー層を形成した。
以上により、目的とする光記録媒体が得られた。
【0061】
(実施例2)
内周マスクの内径(直径)を16mmとする以外は、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0062】
(実施例3)
中間層形成装置から第2の枚葉式スパッタリング装置の搬送区間の露点を−5℃に調整する以外は、実施例2と同様にして光記録媒体を得た。
【0063】
(実施例4)
中間層形成装置から第2の枚葉式スパッタリング装置の搬送区間の露点を−15℃に調整する以外は、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0064】
(比較例1)
基板裏面に対するバリア層の形成を省略する以外は、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0065】
(比較例2)
内周マスクの内径(直径)を40mmとする以外は、実施例1と同様にして光記録媒体を得た。
【0066】
(真空度)
上述したように、実施例および比較例では、枚葉式スパッタリング装置(エリコン製、DVDスプリンター)を用いて各層の成膜を行った。相変化記録層は13個ある成膜室のうち7番目の成膜室で成膜される。しかしながら、DVDスプリンターでは、連続稼働中、実際に成膜を行う成膜装置には、プロセス用のアルゴンガスなどを導入するので、相変化記録層用である7番目の真空室にてベースとなる真空度を正しく測定することができない。そこで、6番目の成膜室を成膜用には使用せずに、この真空室の真空度を以下のようにして測定した。すなわち、透過率調整層、反射層、第2誘電体層、第1誘電体層を中間層上に順次積層するまでの工程を各実施例および各比較例と同様に行った。次に、7番目の真空室に基板を搬入した後、プロセスガスなどの投入、およびスパッタリングを行わず、単に真空引きのみ行い、その真空室における真空度を測定した。その結果を表1および図9に示す。
【0067】
(1000回書き換え後のジッタ)
上述のようにして得られた実施例1〜4、および比較例1、2の光記録媒体の1000回書き換え後のジッタを以下のようにして評価した。
評価機としては、NA=0.85の対物レンズ、レーザー光波長405nmの光学系を有したBlu-ray disc評価用ODU-1000(パルステック製)を用いた。この評価機に上記光記録媒体をセットし、基本速度である4.917m/sの2倍の9.834m/sの線速となるよう回転させた。そして、最適なN-1ライトストラテジーを用い、記録パワーPpを変化させて、Blu-ray Disc Rewritable Format part1Basic Format Specifications Ver2.1に準拠した方法を用い、limit Eqを用いたタイミングジッタ(以下単に Jitterと記す。)を測定した。この結果を図13に示す。この際に最小のJitterが得られる記録パワーをPoとする。このPoなる記録パワーに同一箇所に1000回の書き換えを行ない、その際に1,2,5,10,20,50,100,200,500,1000回書き換え後のJitterを測定した。
1,2,5,10,20,50,100,200,500,1000回書き換え後のJitterを図12に、1000回書き換え後のjitterをまとめて表1および図10に示す。
さらに、図9と図10からベースの真空度とJitterの関係が分かり、これを図11に示す。
【0068】
表1は、実施例1〜4、および比較例1、2のバリア層の構成、ならびに真空度およびジッタの評価結果を示す。
【表1】

【0069】
表1から以下のことがわかる。
・実施例1、2、比較例1の評価結果から、基板裏面にバリア層を形成することにより、相変化記録層を形成する際のベース真空度が向上することがわかる。
・実施例1、2、比較例2の評価結果から、基板裏面の露出面積が低下するに従って、相変化記録層を形成する際のベース真空度が向上することがわかる。具体的には、露出面積を688mm2以下、好ましくは398.2mm2以下にすることで、相変化記録層を形成する際のベース真空度を向上できることがわかる。
・実施例1〜4の評価結果から、中間層の形成工程から第2情報信号層の形成工程までの搬送区間の露点を、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−15℃以下に調整することで、ベース真空度をさらに向上できることがわかる。
・実施例1〜4、比較例1、2の評価結果から、ベース真空度が向上するに従って、書き換え1000回後のジッタが向上することがわかる。すなわち、繰り返し記録耐久性を向上できることがわかる。
【0070】
以上、この発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0071】
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた構成、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態の各構成は、この発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0073】
また、上述の実施形態および実施例では、単層または2層の情報信号層を有する光記録媒体に対してこの発明を適用した例について説明したが、この発明はこの例に限定されるものではなく、3層以上の情報信号層を有する光記録媒体に対しても適用可能である。情報信号層を3層以上とする場合、各情報信号層の間には中間層が形成される。また、基板に近い側から第1情報信号層(L0層)、第2情報信号層(L1層)、第3情報信号層(L2)、・・・、第n情報信号層(Ln−1層)とした場合、基板の成形後、第2情報信号層の形成前に、基板裏面のバリア層を形成することが好ましい。
【0074】
また、上述の実施形態および実施例では、カバー層側からレーザー光を情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光記録媒体に対してこの発明を適用した例について説明したが、この発明はこの例に限定されるものではない。例えば、基板上に情報信号層を有し、基板側からレーザー光を情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光記録媒体に対してもこの発明は適用可能である。また、2枚の基板を貼り合わせてなり、一方の基板の側からレーザー光を基板間の情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光記録媒体に対してもこの発明は適用可能である。
【0075】
また、上述の実施形態および実施例では、第1誘電体層および第2誘電体層からなる2層の誘電体層を、記録層と反射層との間に形成する例について説明したが、3層以上の誘電体層を記録層と反射層との間に形成するようにしてもよい。このような構成にする場合、記録層と反射層との間に形成された3層以上の誘電体層の熱伝導率が、記録層から反射層に向かって順次高くなるようにすることが好ましい。
【0076】
また、上述の実施形態において、信頼性などの特性を考慮して、記録層と反射層との間に誘電体層、界面層またはそれら以外の層をさらに形成するようにしてもよい。
【0077】
また、上述の実施形態および実施例では、第2情報信号層において、反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率に比べて高くする構成について説明したが、この発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、第1情報信号層において、反射層側となる第2誘電体層の熱伝導率を、記録層側となる第1誘電体層の熱伝導率に比べて高くする構成を採用してもよい。
【0078】
また、上述の実施形態および実施例では、書き換え型の光記録媒体に対してこの発明を適用したが、この発明はこの例に限定されるものではなく、再生専用型および追記型などの光記録媒体に対しても適用可能である。
【0079】
上述の実施形態および実施例では、第1情報信号層の形成工程後、中間層の形成工程前に、バリア層を形成する工程を備える場合を例として説明したが、バリア層の形成工程の位置はこの例に限定されるものではない。すなわち、バリア層は、基板の成形工程後、第2情報信号層の形成工程前に、バリア層の形成工程を備えていれば同様の効果を得ることができる。例えば、基板の成形工程後、第1情報信号層の形成工程前、または中間層の形成工程後、第2情報信号層の形成工程前に、バリア層の形成工程を備えるようにしてもよい。
【0080】
第1情報信号層および第2情報信号層の形成工程における真空度を良好に保つ観点からすると、基板の形成工程後、第1情報信号層の形成工程前に、バリア層の形成工程を備えることが好ましい。第2情報信号層の形成工程における真空度を良好に保つ観点からすると、第1情報信号層の形成後、中間層の形成工程前、または中間層の形成工程後、第2情報信号層の形成工程前に、バリア層の形成工程を備えることが好ましい。
【0081】
また、中間層の形成工程後、第2情報信号層の形成工程前に、バリア層の形成工程を備える場合には、例えば以下のように搬送区間の露点を調整することが好ましい。すなわち、中間層の形成工程からバリア層の形成工程までの搬送区間、および/またはバリア層の形成工程から第2情報信号層の形成工程前までの搬送区間の露点を、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−15℃以下に調整することが好ましい。
【0082】
また、上述の実施形態および実施例では、記録層として相変化記録層を用いる場合を例として説明したが、記録層はこれに限定されるものではなく、レーザー光の照射により情報信号を繰り返し記録可能な記録層であれば用いることが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 基板
1a センターホール
2 第1情報信号層(L0層)
3 中間層
4 第2情報信号層(L1層)
5 カバー層
6 バリア層
7 情報信号層
11、22 反射層
13、15、24、26 第1誘電体層
12、16、23、27 第2誘電体層
14、25 記録層
31 外周マスク
32 内周マスク
1 内周側の基板露出エリア
2 バリア層の成膜エリア
3 外周側の基板露出エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面および第2の主面を有する基板と、
光の照射により情報信号の記録または再生が行われる、上記基板の第1の主面上に形成された1または複数の情報信号層と、
上記基板の第2の主面からのガス放出を抑制する、上記基板の第2の主面上に形成されたバリア層と
を備え、
上記基板の第2の主面のうち上記バリア層から露出する領域の面積が、688mm2以下である光記録媒体。
【請求項2】
上記露出の面積が、398.2mm2以下である請求項1記載の光記録媒体。
【請求項3】
上記バリア層が、誘電体を含んでいる請求項1記載の光記録媒体。
【請求項4】
上記基板の第1の主面上に順次形成された第1情報信号層、および第2情報信号層を備え、
上記第2情報信号層が、ビスマス、ゲルマニウムおよびテルルを含んでいる請求項1記載の光記録媒体。
【請求項5】
上記基板の第1の主面上に形成された複数の情報信号層を備え、
上記複数の情報信号層の間に、樹脂材料を含む中間層を有する請求項1記載の光記録媒体。
【請求項6】
上記基板が、吸水性を有する樹脂材料を含んでいる請求項1記載の光記録媒体。
【請求項7】
第1の主面および第2の主面を有する基板を成形する工程と、
上記基板の第1の主面上に第1情報信号層を形成する工程と、
上記第1情報信号層上に中間層を形成する工程と、
上記中間層上に第2情報信号層を形成する工程と、
上記基板の成形工程後、上記第2情報信号層の形成工程前に、上記基板の第2の主面に、上記基板の第2の主面からのガス放出を抑制するバリア層を形成する工程と
を備え、
上記バリア層の形成工程では、上記基板の第2の主面のうち上記バリア層から露出する領域の面積を、688mm2以下にする光記録媒体の製造方法。
【請求項8】
上記中間層の成形工程後、上記第2情報信号層の形成工程前に、上記中間層が形成された基板を搬送する工程をさらに備え、
上記搬送の区間の露点が、−5℃以下である請求項7記載の光記録媒体の製造方法。
【請求項9】
上記搬送の区間の露点が、−15℃以下である請求項8記載の光記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−267359(P2010−267359A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120427(P2009−120427)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】