説明

光記録媒体における多層反射型ホログラムの形成方法

【課題】簡単な手順で、光記録媒体におけるホログラム材料層に、多層反射型ホログラム層を形成する方法を提供する。
【解決手段】干渉可能な2光束の偏光レーザビームを一対として、相互に不干渉な2対の偏光レーザビームを用い、第1対の偏光レーザビームを、ホログラム材料層に相互に反対方向から、ホログラム材料層を中心として対称となる入射角で入射させ、又、第2対は第1対と異なる入射角で入射させて、その干渉パターンからホログラム材料層の深さ方向に変調された多層反射型ホログラム層を有する情報記録層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光記録媒体に、ホログラフィを利用して情報を記録する情報記録層となる多層反射型ホログラムを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録媒体にフォーマットホログラム(反射型ホログラム)を形成した後に、該フォーマットホログラムを局所的に変性することによって、反射率を変化させてビットバイビット記録をするデータ書き込みのシステム及び方法が開示されている。
【0003】
又、特許文献2には、上記のような、フォーマットホログラムを局所的に変性することによって情報を記録する記録媒体に、ホログラム層とは別にデディケイテッドサーボ層を設け、このサーボ層によりサーボをとることが開示されている。
【0004】
更に、非特許文献1には、上記のように、デディケイテッドサーボ層でサーボをとりながら、情報を再生すると、光ヘッドの、チルトに対してマージンが小さくなり、良好な再生が困難になることが開示されている。
【0005】
又、この非特許文献1には、マイクロホログラムとしてホログラム記録層を設け、このマイクロホログラムそのものを直接トラッキングサーボすることによって、チルトに対してマージンのあるトラッキングサーボ特性を得ることもできると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−502057号公報
【特許文献2】US6,574,374 B1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Miyamoto,et.al.,Tech.Digest of ISOM/ODS2008,MB04
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、フォーマットホログラムを用いた光記録媒体の再生時に、デディケイテッドサーボを用いて再生することは、チルトマージンが狭いために良好な情報再生を実現するには困難を伴う。
【0009】
一方、マイクロホログラム表面に直接トラッキングサーボ(ダイレクトサーボ)する場合は、チルトマージンが広がるが、フォーマットホログラム層が複数の場合に、各層にサーボマークを形成するには膨大な時間が必要であり、光記録媒体の製造コストが大幅に増大してしまうという問題点がある。
【0010】
一方、光記録媒体の記録容量を増大するために、反射型ホログラム層を多層に形成することが提案されているが、このような多層のホログラム層にダイレクトサーボをかけるためには、ホログラムを空間的深さ方向に変調し、記録光/再生光のフォーカスサーボをとる必要がある。
【0011】
ホログラムを空間的に変調するには、情報記録層を、ホログラム層とスペーサ層が相互に積層された構成とするか、あるいは、均一な情報記録層にホログラムを変調して記録するかが考えられるが、ホログラム層とスペーサ層を順次積層していくと、積層工程が必要となり、光記録媒体の製造コストを増大させてしまうという問題点がある。
【0012】
又、ホログラムを変調して記録する方法としては、互いに対向したレーザビームをホログラム材料中で干渉させることによって、局所的な反射型ホログラムを順次形成させていくことになるが、この方法では、1回で形成される干渉縞(反射型ホログラム)の領域が小さいために、光記録媒体全体にホログラムを形成するには多大な時間が必要となり、又、干渉縞が形成される領域以外も露光されてしまうためにホログラムの形成効率が低いという問題点がある。
【0013】
この発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、光記録媒体において、低コストで、ダイレクトサーボによる情報再生を実現することができる多層反射型ホログラムの形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、光記録媒体に、4光束のレーザビームを2光束づつ2対として用いて、深さ方向に変調された多層反射型ホログラム層を形成できることを見出した。また、このように多層反射型ホログラム層を形成した光記録媒体への情報記録時に、反射型ホログラム層とは別個に設けられたサーボ層によってトラッキングサーボを行なって、データ情報とトラッキング情報とを同一の反射型ホログラム層に記録し、再生時には、多層反射型ホログラム層に形成したトラッキング情報を用いて情報再生をすることによって、低コストでチルトマージンが広い良好な特性が得られることを見出した。
【0015】
即ち、以下の実施例により上記課題を解決することができる。
【0016】
(1)ホログラム材料層に2光束のレーザビームを照射して、その干渉パターンにより反射型ホログラム層を形成する光記録媒体における多層反射型ホログラム形成方法であって、干渉可能な2光束の偏光レーザビームを一対として、相互に不干渉な2対を用い、各対における前記偏光レーザビームを、それぞれ前記ホログラム材料層に相互に反対方向から、前記ホログラム材料層を中心として厚さ方向に対称となる入射角、且つ、各対相互では異なる入射角で入射させて、その干渉パターンから前記ホログラム材料層の深さ方向に変調された多層反射型ホログラム層を形成することを特徴とする光記録媒体における多層反射型ホログラムの形成方法。
【0017】
(2)前記ホログラム材料層に、同一のレーザビームから分離した一対のp偏光レーザビーム又は一対のs偏光レーザビームからなる第1の対を相互に反対方向から、前記ホログラム材料層を中心として厚さ方向に対称となる入射角で入射して、該ホログラム材料層中で干渉させ、前記レーザビームから分離した他の対のs偏光ビーム又はp偏光ビームを前記ホログラム材料層に相互に反対方向から、且つ、同一方向に入射する前記第1の対の前記p偏光ビーム又はs偏光ビームに対して角度θをなして入射して干渉させて、多層反射型ホログラム層を形成することを特徴とする(1)に記載の光記録媒体における多層反射型ホログラムの形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る多層反射型ホログラム形成方法によれば、低コストで、且つ簡単に、ホログラム材料層の深さ方向に変調された多層反射型ホログラム層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る多層反射型ホログラム層形成方法を実施するための、反射型ホログラム形成光学系を示すブロック図
【図2】図1の反射型ホログラム形成光学系により多層反射型ホログラム層が形成された光記録媒体の概略を模式的に示す断面図
【図3】図1に示される反射型ホログラム形成光学系により、形成された反射型ホログラムにおける深さ方向の変調を確認するためのホログラム測定光学系を示すブロック図
【図4】同ホログラム形成光学系によって反射型ホログラムの深さ方向の空間変調ピッチを形成する際の、空間ピッチ変調を説明するためのベクトル図
【図5】同反射型ホログラムにおけるホログラム強度を、媒体深さとの関係において示す強度分布図
【図6】反射型ホログラム層での、反射率と深さとの関係である反射率の深さ依存性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0021】
この実施例は、図1に示される反射型ホログラム形成光学系10によってホログラム材料に複数の反射型ホログラム層を形成して、多層反射型ホログラム層を有する光記録媒体12(図2参照)とするものであり、これは図3に示される反射型ホログラム測定光学系30によってホログラム反射率(回折効率)を確認される。
【0022】
この実施例に係る光記録媒体12は、ホログラム材料層に、形成される反射型ホログラムの深さ方向の空間変調ピッチを調整し、複数の反射型ホログラム層12Hを深さ方向に形成してなる情報記録層12Fを有している。なお、複数の反射型ホログラム層の形成前の情報記録層をホログラム材料層と称する。
【0023】
まず、図1を参照して本発明に係る多層反射型ホログラム形成方法を実施するための反射型ホログラム形成光学系10について説明する。
【0024】
この反射型ホログラム形成光学系10は、レーザビームを出射する外部共振型LD(以下ECLD)13と、このECLD13から出射されたレーザビームを略円形にビーム整形するアナモリフィックプリズム14と、光アイソレータ15と、光シャッター16と、光シャッター16を通過したレーザビームのビームプロファイルを改良するための、レンズ対17A、17B、その間のピンホール17Cからなる空間フィルタ17と、ミラー18と、このミラー18によって反射されたレーザビームの位相をシフトする1/2波長板19と、このレーザビームを2光束に分割するビームスプリッタ20とを有している。ここで、1/2波長板19は、これを透過するレーザビームが45°偏光(s偏光とp偏光の中間)となるようにセットされている。
【0025】
又、反射型ホログラム形成光学系10は、ビームスプリッタ20を透過したレーザビームが、ミラー21Aにおいて反射された後に、偏光ビームスプリッタ22Aにより透過光(p偏光)と反射光(s偏光)とに分離され、p偏光ビームは、ミラー24Aにより90°反射されて、アパーチャ26Aでビーム径が4mmに削られ、s偏光ビームは、アパーチャ28Aで約4mmのビーム径に絞られて、サンプルホルダー29にセットされた、ホログラムが形成されていない未露光の光記録媒体12(以下サンプル12と称する)に図1において上方から入射するようにされている。ここで、p偏光ビームはサンプル12の上面に対して垂直に入射し、s偏光ビームはp偏光ビームと角度θで交差するようにされている。
【0026】
ビームスプリッタ20で反射されたレーザビームは、ミラー21Bで反射された後、偏光ビームスプリッタ22Bでp偏光及びs偏光に分離され、p偏光ビームはアパーチャ26Bを通って、又、s偏光ビームはアパーチャ28Bを通って、それぞれサンプル12に下方から入射するようにされている。ここで、p偏光ビームはサンプル12の下面に対して垂直に入射し、s偏光ビームはp偏光ビームと角度θで交差するようにされている。
【0027】
実施例1では、ホログラム記録材料を次のように作成した。
【0028】
有機金属微粒子材料の合成;
テトラ−n−ブトキシチタン、Ti(OC;(株)高純度化学研究所製)3.65gと、2−エチル−1.3−へキサンジオール(東京化学工業(株)製)3.1gとを、n−ブタノール溶媒1ml中で室温にて混合し、10分間攪拌した。Ti(OC)4/2−エチル−1.3−へキサンニオール=1/2(モル比)の反応液に、ジフェニルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製、LS−5300)2.6gを加え、金属アルコキシド溶液とした。Ti/Si=1/2(モル比)である。
【0029】
水0.2ml、2N塩酸水溶液0.08ml、及び、ブタノール溶媒1mlからなる溶液を、前記金属アイコキシド溶液に攪拌しながら、室温で滴下し、1時間攪拌を続けて加水分解反応及び縮合反応を行なった。これによって、ゲル溶液を得た。
【0030】
光重合性モノマー;
光重合性化合物として、ポリエチレングリコールジアクリルレート(東亜合成(株)製、アロニックスM−245)100重量部に、光重合開始剤としてイルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3重量部と、光増感剤としてチオキサンテン−9−オン0.2重量部とを加え、光重合性化合物を含む混合物とした。
【0031】
ホログラム記録材料溶液;
有機金属マトリックス材料(不揮発分としての)の割合が80重量部、光重合性化合物の割合が20重量部となるように、前記ゾル溶液と光重合性化合物の混合物とを室温にて混合し、遮光した状態で更に1時間、加水分解及び縮合反応を十分に進行させて、ホログラム記録材料溶液を得た。
【0032】
ホログラム基板の構成;
直径120mm、厚さ1mmのガラスディスク基板12A上に、2P工法により、トラックピッチ0.74μmのグルーブ12Bを形成して、ホログラム媒体を作成した。この上に、スパッタリングにより、ダイクロイック膜12Cを成膜して、サンプル12とした。
【0033】
ダイクロイック膜12Cは、窒化ケイ素80nm/酸化ケイ素110nm/窒化ケイ素80nm/酸化ケイ素110nm/窒化ケイ素80nmで積層した。このダイクロイック膜12Cの分光特性は、赤色光(波長650nm)に対して反射率60%、及び、青色光(波長405nm)に対して反射率7%が測定された。
【0034】
このダイクロイック膜12Cの特性は、前記ホログラム媒体を積層した場合には、光学シミュレーションによると、赤色光に対して反射率50%、青色光に対して反射率0.5%となる。即ち、ダイクロイック膜12Cで赤色光は50%反射するが青色光では殆ど反射しないことから、反射型ホログラムを反射型ホログラム形成光学系10によって形成できることが分かる。
【0035】
光記録媒体の構成;
上記の、グルーブ12Bを形成し、ダイクロイック膜12Cを成膜してなるガラスディスク基板12Aに、厚み450μmのガラス基板12EをUV接着剤(接着層12D)を用いて貼り合わせ、上記ホログラム記録材料溶液をスピンコート法により塗布して、80℃で24時間乾燥し溶媒を揮発させて、乾燥膜厚20μmのホログラム記録材料層を得た。
【0036】
この上に、厚さ100μmのポリカーボネートシートからなるカバー層12Gで被覆し、反射型ホログラム層の形成前の光記録媒体(サンプル)を得た。
【0037】
反射型ホログラム層の形成;
図1に示される反射型ホログラム形成光学系10におけるサンプルホルダー29に上記サンプル12をセットして、反射型ホログラムの形成を行なう。
【0038】
反射型ホログラム形成光学系10において、ECLD13は、波長405nmのレーザビームを出射し、空間フィルタ17において、レーザビームはビームプロファイルが改良されると共にビーム径が約10mmに拡大される。レーザビームはミラー18によって反射され、1/2波長板19において45°偏光ビームとされ、次いでビームスプリッタ20により透過光及び反射光の2つの光束に分離される。
【0039】
この反射型ホログラム形成光学系10においては、ビームスプリッタ20で分離された2つの45°偏光ビームが、それぞれ更に偏光ビームスプリッタ22A、22Bにより、p偏光ビーム及びs偏光ビームに分離されて、4光束となり、光記録媒体12に対して上下から同時に入射されてホログラムを形成することになる。
【0040】
このとき、サンプルホルダー29内の光記録媒体12に法線方向(厚さ方向又は深さ方向)から入射するレーザビームをp偏光ビーム、これに対して角度θを形成するように入射するレーザビームをs偏光ビームとすると、角度θにより反射型ホログラムの深さ方向の空間変調ピッチを形成することができる。
【0041】
次に、反射型ホログラムの深さ方向の空間ピッチについて説明する。
【0042】
図4は、反射型ホログラム形成部の入射レーザビームのベクトルの関係を示したものであり、ks1、kr1は媒体法線方向に入射するp偏光の光ベクトル、ks2、kr2は交差角θで入射するs偏光の光ベクトルをそれぞれ表わす。
【0043】
ここで、p偏光とs偏光は相互に干渉しないために、干渉縞ベクトルは、p偏光同士及びs偏光同士が干渉ベクトルの和となることとなる。一般に、次の(1)式〜(5)式によって表わされる。
【0044】
【数1】

【0045】
ここで、(5)式におけるIzは、ホログラム強度、a、aは、p波、s波の強度比、λは入射するレーザビームの波長、zは干渉縞の深さをそれぞれ示す。
【0046】
上記(1)式〜(5)式において、レーザビームの波長λ=405nm、θ=20°、p波及びs波の強度比を1:1とすると、(5)式からは、図5に示されるような干渉縞の深さ分布が得られ、反射型ホログラム層12Hの空間変調ピッチが約3.5μmとなることが分かる。
【0047】
反射型ホログラム形成光学系10のサンプルホルダー29に上記サンプル12をセットして、反射型ホログラムを形成した。
【0048】
ここでは、θ=6°に設定し、ホログラム形成用のレーザパワーは、s波とp波の強度比を1:1とし、情報記録層前面上でそれぞれ300μWで、60秒間の露光をした。反射型ホログラム層12Hの変調ピッチは、上記(1)〜(5)式での計算上6μmとした。その後に、中心波長400nmのLED光を照射して、ポストキュアを行ない、ホログラム材料の重合反応を完了させて、光記録媒体12を完成した。
【0049】
次に、図3に示される、光記録媒体12のための反射型ホログラム測定光学系30について説明する。
【0050】
この反射型ホログラム測定光学系30は、波長405nmのブルーレーザを出射するレーザダイオード32と、前記反射型ホログラムが形成された光記録媒体12との間に、コリメータレンズ33、1/2波長板34、偏光ビームスプリッタ35、1/4波長板36、リレーレンズ37、対物レンズ38をこの順で配置すると共に、光記録媒体12で反射され、偏光ビームスプリッタ35に戻り、ここで反射された偏光ビームを集光させる集光レンズ40、集光レンズ40からの光ビームの直径を0.2mmに絞るピンホール42、及び、該ビーム径が絞られたレーザビームを受光する光検出器44、を備えて構成されている。
【0051】
リレーレンズ37は、集光レンズ37A及びシフトレンズ37Bとから構成され、集光レンズ37Aに対してシフトレンズ37Bを光軸上で移動させることによって、対物レンズ38の、光記録媒体12におけるフォーカス位置を厚さ方向(深さ方向)に移動させるものである。
【0052】
この反射型ホログラム測定光学系30において、前記レーザダイオード32から出射した拡散光であるレーザビームは、コリメータレンズ33により平行光とされ、更に1/2波長板34によりp偏光とされる。
【0053】
このp偏光であるレーザビームは、偏光ビームスプリッタ35を通過し、1/4波長板36によって円偏光にされ、リレーレンズ37を介して対物レンズ38により、光記録媒体12中に集光される。その集束光は、フォーカス点近傍で平行光となり、光記録媒体12中に形成された反射型ホログラムと干渉して、反射光(回折光)を生成する。
【0054】
この反射光は、対物レンズ38、リレーレンズ37、1/4波長板36を前記と逆方向に通過し、s偏光となって、偏光ビームスプリッタ35において90°反射され、集光レンズ40に集光されてから、ピンホール42を通過してビーム径が絞られてから、光検出器44において検出される。
【0055】
ここで、光記録媒体12中で、入射レーザビームがフォーカス点近傍で平行光となる領域は、波長λ、対物レンズの開口数NA、ホログラム媒体の屈折率nから、集光幅w=λ/NA、集光深さL=4λn/NAで表わされる。
【0056】
反射型ホログラム形成光学系10においては、λ=405nm、NA=0.85、ホログラム媒体の屈折率n=1.62としたとき、集光幅はw=0.48μm、集光深さはL=3.6μmとなり、この領域の反射型ホログラム層からの反射光が検出可能である。
【0057】
又、光検出器44の直前に設けられたピンホール42は、フォーカス位置にある反射型ホログラム層以外からの反射光(迷光)を遮断するためであり、リレーレンズ37のシフトレンズ37Bを動かすことによってフォーカス点を移動させ、前記集光幅w=0.48μm、集光深さL=3.6μmの領域からの反射光を検出することができる。
【0058】
ここで、対物レンズ38のフォーカスの中心点をポリカーボネート(カバー層12G)と情報記録層との界面から、ガラス基板12E方向へ移動した時のフォーカス位置と反射型ホログラム層12Hからの反射率の深さ依存性の測定結果を図6に示す。
【0059】
図6からは、反射率が、深さ方向8μm程度離れた2箇所で極大値を示すことが観測され、この結果、約8μmピッチで変調された反射型ホログラム層12Hが形成されていることを確認できた。
【0060】
この反射型ホログラム層を有する光記録媒体12へのデータ信号及びサーボ信号の記録及び再生を、光記録媒体再生装置によって行なったところ、良好な再生信号が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、簡単な構成で、ホログラム材料層に、深さ方向に変調された多層反射型ホログラム層を形成することができる。
【符号の説明】
【0062】
10…反射型ホログラム形成光学系
12…光記録媒体
12A…ガラスディスク基板
12B…グルーブ
12C…ダイクロイック膜
12E…ガラス基板
12F…情報記録層
12G…カバー層
12H…反射型ホログラム層
13…外部共振型LD(ECLD)
30…反射型ホログラム測定光学系
44…光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム材料層に2光束のレーザビームを照射して、その干渉パターンにより反射型ホログラム層を形成する光記録媒体における多層反射型ホログラム形成方法であって、
干渉可能な2光束の偏光レーザビームを一対として、相互に不干渉な2対を用い、各対における前記偏光レーザビームを、それぞれ前記ホログラム材料層に相互に反対方向から、前記ホログラム材料層を中心として厚さ方向に対称となる入射角、且つ、各対相互では異なる入射角で入射させて、その干渉パターンから前記ホログラム材料層の深さ方向に変調された多層反射型ホログラム層を形成することを特徴とする光記録媒体における多層反射型ホログラムの形成方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ホログラム材料層に、同一のレーザビームから分離した一対のp偏光レーザビーム又は一対のs偏光レーザビームからなる第1の対を相互に反対方向から、前記ホログラム材料層を中心として厚さ方向に対称となる入射角で入射して、該ホログラム材料層中で干渉させ、前記レーザビームから分離した他の対のs偏光ビーム又はp偏光ビームを前記ホログラム材料層に相互に反対方向から、且つ、同一方向に入射する前記第1の対の前記p偏光ビーム又はs偏光ビームに対して角度θをなして入射して干渉させて、多層反射型ホログラム層を形成することを特徴とする光記録媒体における多層反射型ホログラムの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−176765(P2010−176765A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19985(P2009−19985)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】