説明

光記録媒体

【課題】 波長400nm〜500nmのレーザーで良好な記録および再生が可能な追記型光記録媒体を提供する。
【解決手段】 基板上に少なくとも記録層と反射層を有する光記録媒体において、記録層中に下記一般式(1)で示される化合物を含有する光記録媒体。
【化1】


〔式中、R1〜R4は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数20以下の置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アラルキル基、アシル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアルキルスルホン酸基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Aは炭素数20以下の置換または未置換のアリール基またはヘテロアリール基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光記録媒体に関するものであり、特に青色レーザー光により記録・再生可能である化合物含有の追記型光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】基板上に反射層を有する光記録媒体としてコンパクトディスク(以下、CDと略す)規格に対応した追記可能なCD−R(CD-Recordable)が広く普及している。CD−Rの記録容量は0.65GB程度であるが、情報量の飛躍的増加に伴い、情報記録媒体に対する高密度化および大容量化への要求は高まっている。
【0003】記録および再生用レーザーの短波長化によりビームスポットを小さくすることができ、高密度な光記録が可能になる。最近では、光ディスクシステムに利用される短波長半導体レーザーの開発が進み、波長680nm、650nmおよび635nmの赤色半導体レーザーが実用化されている〔例えば、日経エレクトロニクス、No.592、P.65、1993年10月11日号〕。これらの半導体レーザーを用い、2時間以上の動画をデジタル記録したDVDが実用化されている。DVDは再生専用媒体であるため、この容量に対応する追記型光記録媒体(DVD−R)の開発も進んでいる。
【0004】さらに、超高密度の記録が可能となる波長400nm〜500nmの青色半導体レーザーの開発も急速に進んでおり〔例えば、日経エレクトロニクス、No.708、P.117、1998年1月26日号〕、それに対応した追記型光記録媒体の開発も行われている。
【0005】追記型光記録媒体の記録層にレーザー光を照射し、記録層に物理変化や化学変化を生じさせることでピットを形成させるとき、化合物の光学定数、分解挙動が良好なピットを形成させるための重要な要素となる。分解しづらいものは感度が低下し、分解が激しいかまたは変化しやすいものはピット間および半径方向への影響が大きくなり、信頼性のあるピット形成が困難になる。従来のCD−R媒体は、超高密度記録で用いられる青色半導体レーザー波長では、記録層の屈折率も低く、消衰係数も適度な値ではないため、反射率の低下、エラーレートの増大、ジッターの増大により、良好な記録・再生ができない。従って、記録層に用いる化合物には青色半導体レーザーに対する光学的性質、分解挙動の適切な化合物を選択する必要がある。しかし、実際に提案されている化合物の例は、特開平7−304256号公報などに記載のポルフィリン化合物など、ごく限られた例しかないため、その開発が急務となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、波長400nm〜500nmの範囲から選択されるレーザー光で良好な記録および再生が可能な超高密度記録に適した化合物を記録層に有する光記録媒体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、■ 基板上に少なくとも記録層および反射層を有する光記録媒体において、記録層中に、下記一般式(1)で示される化合物を含有する光記録媒体、
【0008】
【化2】


【0009】〔式中、R1〜R4は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数20以下の置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アラルキル基、アシル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアルキルスルホン酸基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Aは炭素数20以下の置換または未置換のアリール基またはヘテロアリール基を表す。〕
■一般式(1)で表される化合物のAが、置換または未置換のフェニル基、ナフチル基、フリル基、ピロリル基、またはチエニル基である■に記載の光記録媒体、■波長400nm〜500nmの範囲から選択されるレーザー光に対して記録および再生が可能である■または■に記載の光記録媒体に関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の具体的構成について以下に説明する。
【0011】この光記録媒体は基板1、記録層2、反射層3および保護層4が順次積層している4層構造を有している。これを図1に示すように単板で用いてもよく、図2に示すようにDVDのように接着層5で貼り合わせても良い。
【0012】基板の材質としては、基本的には記録光および再生光の波長で透明であればよい。例えば、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の高分子材料やガラス等の無機材料が利用される。これらの基板材料は射出成形法等により円盤状に基板に成形される。必要に応じて、基板表面に案内溝やピットを形成することもある。このような案内溝やピットは、基板の成形時に付与することが望ましいが、基板の上に紫外線硬化樹脂層を用いて付与することもできる。
【0013】本発明においては、基板上に記録層を設けるが、本発明の記録層は、一般式(1)で示される化合物を含有する。
【0014】本発明の記録層に含有される一般式(1)で示される化合物のR1〜R4、およびAの具体例を次に述べる。
【0015】ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0016】置換または未置換のアルキル基としては、直鎖または分岐または環状のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルコキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルコキシカルボニルオキシアルキル基、アルコキシアルコキシカルボニルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシアルコキシアルキル基、シアノアルキル基、アシルオキシアルキル基、アシルオキシアルコキシアルキル基、アシルオキシアルコキシアルコキシアルキル基、ハロゲン化アルキル、スルホンアルキル基、アルキルカルボニルアミノアルキル基、アルキルスルホンアミノアルキル基、スルホンアミドアルキル基、アルキルアミノアルキル基、アミノアルキル基、およびアルキルスルホンアルキル基の中から選択される。
【0017】直鎮または分岐または環状のアルキル基としては、ポリカーボネート、アクリル、エポキシ、ポリオレフィン基板などへの塗布による加工性を考慮すれば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、cyclo−ペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、3−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、1,2,2−トリメチルブチル基、1,1,2−トリメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、cyclo−ヘキシル基、n−ヘブチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,5,5−トリメチルペンチル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、4−エチルオクチル基、4−エチル−4,5−メチルヘキシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラエチルオクチル基、4−ブチルオクチル基、6,6−ジエチルオクチル基、n−トリデシル基、6−メチル−4−ブチルオクチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、3,5−ジメチルヘブチル基、2,6−ジメチルヘブチル基、2,4−ジメチルヘブチル基、2,2,5,5−テトラメチルヘキシル基、1−cyclo−ペンチル−2,2−ジメチルプロピル基、1−cyclo−ヘキシル−2,2−ジメチルプロピル基などが挙げられる。
【0018】アルコキシアルキル基の例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、n−ヘキシルオキシエチル基、4−メチルペントキシエチル基、1,3−ジメチルブトキシエチル基、2−エチルヘキシルオキシエチル基、n−オクチルオキシエチル基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシエチル基、2−メチル−1−iso−プロピルプロポキシエチル基、3−メチル−1−iso−プロピルブチルオキシエチル基、2−エトキシ−1−メチルエチル基、3−メトキシブチル基、3,3,3−トリフルオロプロポキシエチル基、3,3,3−トリクロロプロポキシエチル基などが挙げられる。
【0019】アルコキシアルコキシアルキル基の例としては、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロポキシエトキシエチル基、ブトキシエトキシエチル基、ヘキシルオキシエトキシエチル基、1,2−ジメチルプロポキシエトキシエチル基、3−メチル−1−iso−ブチルブトキシエトキシエチル基、2−メトキシ−1−メチルエトキシエチル基、2−ブトキシ−1−メチルエトキシエチル基、2−(2’−エトキシ−1’−メチルエトキシ)−1−メチルエチル基、3,3,3−トリフルオロプロポキシエトキシエチル基、3,3,3−トリクロロプロポキシエトキシエチル基などが挙げられる。
【0020】アルコキシアルコキシアルコキシアルキル基の例としては、メトキシエトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエトキシエチル基、ブトキシエトキシエトキシエチル基、2,2,2−トリフルオロエトキシエトキシエトキシエチル基、2,2,2−トリクロロエトキシエトキシエトキシエチル基などが挙げられる。
【0021】アルコキシカルボニルアルキル基の例としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、ブトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、ブトキシカルボニルエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシカルボニルメチル基、2,2,3,3−テトラクロロプロポキシカルボニルメチル基などが挙げられる。
【0022】アルコキシカルボニルオキシアルキル基の例としては、メトキシカルボニルオキシエチル基、エトキシカルボニルオキシエチル基、ブトキシカルボニルオキシエチル基、2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニルオキシエチル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルオキシエチル基などが挙げられる。
【0023】アルコキシアルコキシカルボニルオキシアルキル基の例としては、メトキシエトキシカルボニルオキシエチル基、エトキシエトキシカルボニルオキシエチル基、ブトキシエトキシカルボニルオキシエチル基、2,2,2−トリフルオロエトキシエトキシカルボニルオキシエチル基、2,2,2−トリクロロエトキシエトキシカルボニルオキシエチル基などが挙げられる。
【0024】ヒドロキシアルキル基の例としては、2−ヒドロキシエチル基、4−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル基、2−ヒドロキシ−3−エトキシプロピル基、3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基などが挙げられる。
【0025】ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシエチル基、2−(2’−ヒドロキシ−1’−メチルエトキシ)−1−メチルエチル基、2−(3’−フルオロ−2’−ヒドロキシプロポキシ)エチル基、2−(3’−クロロ−2’−ヒドロキシプロポキシ)エチル基などが挙げられる。
【0026】ヒドロキシアルコキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシエトキシエチル基、[2’−(2’−ヒドロキシ−1’−メチルエトキシ)−1’−メチルエトキシ]エトキシエチル基、[2’−(2’−フルオロ−1’−ヒドロキシエトキシ)−1’−メチルエトキシ]エトキシエチル基、[2’−(2’−クロロ−1’−ヒドロキシエトキシ)−1’−メチルエトキシ]エトキシエチル基などが挙げられる。
【0027】シアノアルキル基の例としては、2−シアノエチル基、4−シアノブチル基、2−シアノ−3−メトキシプロピル基、2−シアノ−3−クロロプロピル基、2−シアノ−3−エトキシプロピル基、3−ブトキシ−2−シアノプロピル基、2−シアノ−3−フェノキシプロピル基、2−シアノプロピル基、2−シアノブチル基などが挙げられる。
【0028】アシルオキシアルキル基の例としては、アセトキシエチル基、プロピオニルオキシエチル基、ブチリルオキシエチル基、バレリルオキシエチル基、1−エチルペンチルカルボニルオキシエチル基、2,4,4−トリメチルペンチルカルボニルオキシエチル基、3−フルオロブチリルオキシエチル基、3−クロロブチリルオキシエチル基などが挙げられる。
【0029】アシルオキシアルコキシアルキル基の例としては、アセトキシエトキシエチル基、プロピオニルオキシエトキシエチル基、バレリルオキシエトキシエチル基、1−エチルペンチルカルボニルオキシエトキシエチル基、2,4,4−トリメチルペンチルカルボニルオキシエトキシエチル基、2−フルオロプロピオニルオキシエトキシエチル基、2−クロロプロピオニルオキシエトキシエチル基などが挙げられる。
【0030】アシルオキシアルコキシアルコキシアルキル基の例としては、アセトキシエトキシエトキシエチル基、プロピオニルオキシエトキシエトキシエチル基、バレリルオキシエトキシエトキシエチル基、1−エチルペンチルカルボニルオキシエトキシエトキシエチル基、2,4,4−トリメチルペンチルカルボニルオキシエトキシエトキシエチル基、2−フルオロプロピオニルオキシエトキシエトキシエチル基、2−クロロプロピオニルオキシエトキシエトキシエチル基などが挙げられる。
【0031】ハロゲン化アルキル基の例としては、クロロメチル基、クロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、トリフルオロメチル基、ブロモメチル基、ヨウ化メチル基などが挙げられる。
【0032】スルホンアルキル基の例としては、スルホンメチル基、スルホンエチル基、スルホンプロピル基などが挙げられる。
【0033】アルキルカルボニルアミノアルキル基の例としては、メチルカルボニルアミノエチル基、エチルカルボニルアミノエチル基、プロピルカルボニルアミノエチル基、シクロヘキシルカルボニルアミノエチル基、スクシンイミノエチル基などが挙げられる。
【0034】アルキルスルホンアミノアルキル基の例としては、メチルスルホンアミノエチル基、エチルスルホンアミノエチル基、プロピルスルホンアミノエチル基などが挙げられる。
【0035】スルホンアミドアルキル基の例としては、スルホンアミドメチル基、スルホンアミドエチル基、スルホンアミドプロピル基などが挙げられる。
【0036】アルキルアミノアルキル基の例としては、N−メチルアミノメチル基、N,N−ジメチルアミノメチル基、N,N−ジエチルアミノメチル基、N,N−ジプロピルアミノメチル基、N,N−ジブチルアミノメチル基などが挙げられる。
【0037】アミノアルキル基の例としては、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基などが挙げられる。
【0038】アルキルスルホンアルキル基の例としては、メチルスルホンメチル基、エチルスルホンメチル基、ブチルスルホンメチル基、メチルスルホンエチル基、エチルスルホンエチル基、ブチルスルホンエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルスルホンメチル基、2,2,3,3−テトラクロロプロピルスルホンメチル基などが挙げられる。
【0039】置換または未置換のアルコキシ基の例としては、上記に挙げたアルキル基と同様な置換基を有するアルコキシ基であり、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、neo−ペントキシ基、2−メチルブトキシ基などの低級アルコキシ基が挙げられる。
【0040】置換または未置換のアシル基の例としては、上記に挙げたアルキル基と同様な置換基を有するアシル基であり、好ましくは、ホルミル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、iso−ペンチルカルボニル基、neo−ペンチルカルボニル基、2−メチルブチルカルボニル基、ニトロベンジルカルボニル基などが挙げられる。
【0041】置換または未置換のアリール基の例としては、上記に挙げたアルキル基と同様な置換基を有するアリール基であり、好ましくは、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ニトロナフチル基、シアノナフチル基、ヒドロキシナフチル基、メチルナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基などが挙げられる。
【0042】置換または未置換のアラルキル基の例としては、上記に挙げたアルキル基と同様な置換基を有するアラルキル基であり、好ましくは、ベンジル基、ニトロベンジル基、シアノベンジル基、ヒドロキシベンジル基、メチルベンジル基、トリフルオロメチルベンジル基、ナフチルメチル基、ニトロナフチルメチル基、シアノナフチルメチル基、ヒドロキシナフチルメチル基、メチルナフチルメチル基、トリフルオロメチルナフチルメチル基などが挙げられる。
【0043】置換または未置換のアルケニル基の例としては、上記に挙げたアルキル基と同様な置換基を有するアルケニル基であり、好ましくは、プロペニル基、1−ブチニル基、iso−ブチニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、2−メチル−1−プチニル基、3−メチル−1−ブチニル基、2−メチル−2−ブチニル基、2,2−ジシアノビニル基、2−シアノ−2−メチルカルボキシルビニル基、2−シアノ−2−メチルスルホンビニル基などの低級アルケニル基が挙げられる。
【0044】置換または未置換のアルキルチオ基の例としては、上記に挙げたアルキル基と同様な置換基を有するアルキルチオ基であり、好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、iso−ペンチルチオ基、neo−ペンチルチオ基、2−メチルブチルチオ基、メチルカルボキシルエチルチオ基などの低級アルキルチオ基が挙げられる。
【0045】置換または未置換のアリールオキシ基の例としては、上記に挙げたアリール基と同様な置換基を有するアリールオキシ基であり、好ましくは、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、2−メトキシフェノキシ基、4−iso−プロピルフェノキシ基などが挙げられる。
【0046】置換または未置換のアリールチオ基の例としては、上記に挙げたアリール基と同様な置換基を有するアリールチオ基であり、好ましくは、フェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、2−メトキシフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基などが挙げられる。
【0047】置換または未置換のヘテロアリール基の例としては、ピロリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾイル基、イソオキサゾイル基、オキサジアゾイル基、イミダゾイル基、ベンゾオキサゾイル基、ベンゾチアゾイル基、ベンゾイミダゾイル基、ベンゾフラニル基、インドイル基などを挙げることができる。
【0048】置換または未置換のアルキルスルホン基の例としては、上記にあげたアルキル基と同様な置換基を有するアルキルスルホン基であり、好ましくは、メチルスルホン基、エチルスルホン基、n−プロピルスルホン基、iso−プロピルスルホン基、n−ブチルスルホン基、iso−ブチルスルホン基、sec−ブチルスルホン基、t−ブチルスルホン基、n−ペンチルスルホン基、iso−ブチルスルホン基、neo−ペンチルスルホン基、2−メチルブチルスルホン基、2−ヒドロキシエチルスルホン基、2−シアノエチルスルホン基などが挙げられる。
【0049】本発明の一般式(1)で示される化合物は、公知の方法、例えば、J.Am.Chem.Soc.63,3203(1941)などの記載に準じて容易に製造することができる。すなわち、一般式(2)に表される化合物と、一般式(3)に表される化合物を塩酸等を触媒として反応させることで製造できる。
【0050】
【化3】


【0051】A−CHO (3)
〔式(2)、(3)中、R1〜R4、X、Aは前記と同じ意味を示す。〕
一般式(1)で示される化合物の具体例を表1に示す。
【0052】
【表1】


【0053】また、記録特性などの改善のために、波長350nm〜550nmに吸収極大を持ち、400nm〜500nmでの屈折率が大きい前記以外の化合物と混合しても良い。具体的には、シアニン化合物、スクアリリウム系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、テトラピラポルフィラジン系化合物、インドフェノール系化合物、ピリリウム系化合物、チオピリリウム系化合物、アズレニウム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、キサンテン系化合物、インダスレン系化合物、インジゴ系化合物、チオインジゴ系化合物、メロシアニン系化合物、チアジン系化合物、アクリジン系化合物、オキサジン系化合物、ジピロメテン系化合物などがあり、複数の化合物の混合であっても良い。これらの化合物の混合割合は、0.1〜30%程度である。
【0054】記録層を成膜する際に、必要に応じて前記の化合物に、クエンチャー、化合物熱分解促進剤、紫外線吸収剤、接着剤などを混合するか、あるいは、そのような効果を有する化合物を前記化合物の置換基として導入することも可能である。
【0055】クエンチャーの具体例としては、アセチルアセトナート系、ビスジチオ−α−ジケトン系やビスフェニルジチオール系などのビスジチオール系、チオカテコナール系、サリチルアルデヒドオキシム系、チオビスフェノレート系などの金属錯体が好ましい。また、アミン系も好適である。
【0056】化合物熱分解促進剤としては、熱減量分析(TG分析)などにより、化合物の熱分解の促進が確認できるのもであれば特に限定されず、例えば、金属系アンチノッキング剤、メタロセン化合物、アセチルアセトナト系金属錯体などの金属化合物が挙げられる。金属系アンチノッキング剤の例としては、四エチル鉛、その他の鉛系化合物、シマントレン[Mn(C55)(CO)3〕などのMn系化合物、また、メタロセン化合物の例としては、鉄ビスシクロペンタジエニル錯体(フェロセン)をはじめ、Ti、V、Mn、Cr、Co、Ni、Mo、Ru、Rh、Zr、Lu、Ta、W、Os、Ir、Sc、Yなどのビスシクロペンタジエニル錯体がある。なかでもフェロセン、ルテノセン、オスモセン、ニッケロセン、チタノセンおよびそれらの誘導体は良好な熱分解促進効果がある。
【0057】その他、鉄系金属化合物として、メタロセンの他に、ギ酸鉄、シュウ酸鉄、ラウリル酸鉄、ナフテン酸鉄、ステアリン酸鉄、酢酸鉄などの有機酸鉄化合物、アセチルアセトナート鉄錯体、フェナントロリン鉄錯体、ビスピリジン鉄錯体、エチレンジアミン鉄錯体、エチレンジアミン四酢酸鉄錯体、ジエチレントリアミン鉄錯体、ジエチレングリコールジメチルエーテル鉄錯体、ジホスフィノ鉄錯体、ジメチルグリオキシマート鉄錯体などのキレート鉄錯体、カルボニル鉄錯体、シアノ鉄錯体、アンミン鉄錯体などの鉄錯体、塩化第一鉄、塩化第二鉄、臭化第一鉄、臭化第二鉄などのハロゲン化鉄、あるいは、硝酸鉄、硫酸鉄などの無機鉄塩類、さらには、酸化鉄などが挙げられる。ここで用いる熱分解促進剤は有機溶剤に可溶で、かつ、耐湿熱性及び耐光性の良好なものが望ましい。
【0058】上述した各種のクエンチャー及び化合物熱分解促進剤は、必要に応じて、1種類で用いても、他種類を混合して用いても良い。
【0059】さらに、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤などの添加物質を加えても良い。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0060】記録層を基板の上に成膜する際に、基板の耐溶剤性や反射率、記録感度などを向上させるために、基板の上に無機物やポリマーからなる層を設けても良い。
【0061】ここで、記録層における一般式(1)で示される化合物の含有量は、30%以上、好ましくは60%以上である。尚、実質的に100%であることも好ましい。
【0062】記録層を設ける方法は、例えば、スピンコート法、スプレー法、キャスト法、浸漬法などの塗布法、スパッタ法、化学蒸着法、真空蒸着法などが挙げられるが、スピンコート法が簡便で好ましい。
【0063】スピンコート法などの塗布法を用いる場合には、一般式(1)で示される化合物を1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%となるように溶媒に溶解あるいは分散させた塗布液を用いるが、この際、溶媒は基板にダメージを与えないものを選ぶことが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、オクタフルオロペンタノール、アリルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラフルオロプロパノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、乳酸メチルなどのエステル系溶媒、水などが挙げられる。これらは単独で用いても良く、あるいは、複数混合しても良い。
【0064】なお、必要に応じて、記録層の化合物を高分子薄膜などに分散して用いたりすることもできる。
【0065】また、基板にダメージを与えない溶媒を選択できない場合は、スパッタ法、化学蒸着法や真空蒸着法などが有効である。
【0066】記録層の膜厚は、30nm〜1000nmであるが、好ましくは50nm〜300nmである。記録層の膜厚を50nmより薄くすると、熱拡散が大きいため記録できないか、記録信号に歪が発生する上、信号振幅が小さくなる場合がある。また、膜厚が300nmより厚い場合は反射率が低下し、再生信号特性が悪化する場合がある。
【0067】次に記録層の上に、好ましくは50nm〜300nmの厚さの反射層を形成する。反射率を高めるためや密着性をよくするために、記録層と反射層の間に反射増幅層や接着層を設けることができる。反射層の材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いもの、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、CrおよびPdの金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。この中でもAu、Al、Agは反射率が高く反射層の材料として適している。これ以外でも下記のものを含んでいても良い。例えば、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属および半金属を挙げることができる。また、Auを主成分とするものは反射率の高い反射層が容易に得られるため好適である。ここで主成分というのは含有率が50%以上のものをいう。金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
【0068】反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法などが挙げられる。また、基板の上や反射層の下に反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上などのために公知の無機系または有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
【0069】さらに、反射層の上に形成する保護層の材料としては反射層を外力から保護するものであれば特に限定しない。有機物質としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などを挙げることができる。また、無機物質としては、SiO2、SiO、Si34、MgF2、AlN、SnO2などが挙げられる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶媒に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂はそのままもしくは適当な溶媒に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、紫外線を照射して硬化させることによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート樹脂を用いることができる。これらの材料は単独であるいは混合して用いても良く、1層だけでなく多層膜にして用いても良い。
【0070】保護層の形成の方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法などの塗布法やスパッタ法や化学蒸着法などの方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。
【0071】保護層の膜厚は、一般には0.1μm〜100μmの範囲であるが、本発明においては、3μm〜30μmであり、より好ましくは、5μm〜20μmである。
【0072】保護層の上にさらにレーベルなどの印刷を行うこともできる。
【0073】また、反射層面に保護シ−トまたは基板を貼り合わせる、あるいは反射層面相互を内側とし対向させ、光記録媒体2枚を貼り合わせるなどの手段を用いても良い。
【0074】基板鏡面側に、表面保護やごみ等の付着防止のために紫外線硬化性樹脂、無機系薄膜等を成膜しても良い。
【0075】ここで、本発明で言う波長400nm〜500nmのレーザーは、特に制限はないが、例えば、可視光領域の広範囲で波長選択のできる色素レーザーや波長445nmのヘリウムカドミウムレーザー、波長488nmのアルゴンレーザー、波長約410nmのGaN系半導体レーザー、波長約850nmの赤外線レーザーの第2高調波425nmを発振する半導体レーザーなどが挙げられる。本発明では、これらから選択される1波長または複数波長において高密度記録および再生が可能となる。
【0076】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
【0077】実施例1一般式(1)で表される化合物のうち、化合物(1−1)0.2gをジアセトンアルコール10mlに溶解し、化合物溶液を調製した。
【0078】ポリカーボネート樹脂製で連続した案内溝(トラックピッチ:0.7μm)を有する外径120mm、厚さ0.6mmの円盤状の基板上に、この化合物溶液を回転数2000rpmでスピンコートし、70℃で3時間乾燥して記録層を形成した。
【0079】この記録層の上に島津製作所製スパッタ装置を用いてAuをスパッタし、厚さ100nmの反射層を形成した。スパッタガスには、アルゴンガスを用いた。スパッタ条件は、スパッタパワー0.5A、スパッタガス圧1.0×10-3torrで行った。
【0080】さらに、反射層の上に、紫外線硬化樹脂SD−301(大日本インキ化学工業製)をスピンコートした後、前記基板と同様な案内溝のない基板をのせ、紫外線照射して基板を貼り合わせ、光記録媒体を作製した。
【0081】以上のようにして記録層が形成された光記録媒体について、以下のようにピットの書き込みを行った。
【0082】430nmの青色高調波変換レーザーヘッド(NA=0.65)を搭載したパルステック工業製光ディスク評価装置(DDU−1000)及びKENWOOD製EFMエンコーダーを用いて、最短ピットが0.4μmのEFM変調信号を、線速度5.6m/s、レーザーパワー10mWで記録した。記録後、同評価装置を用いてレーザー出力を0.5mWにして信号を再生し、反射率、エラーレート及びジッターを測定した結果、いずれも良好な値を示した。なお、再生の際はイコライゼーション処理を施した。
【0083】この記録した媒体について、加速劣化試験(湿度85%RT、80℃で100時間)を行い、試験後の反射率、エラーレート及びジッターを測定した結果、変化は小さく優れた耐久性を有することが確認された。
【0084】実施例2〜17記録層に化合物(1−2)〜(1−17)を用いること以外は実施例1と同様にして光記録媒体を作製し、ピットを書き込んで記録した後、信号再生を行った。いずれの場合も、反射率40%以上、エラーレート11cps以下、ジッター10%以下と良好な値を示した。また、加速劣化試験後の反射率の変化は2%以下、エラーレートの変化は2cps以下、ジッターの変化は1%以下と、優れた耐久性を有することが確認された。
【0085】表2にそれぞれの実施例における加速劣化試験前後の反射率、エラーレート及びジッター値を示した。
【0086】
【表2】


【0087】
【発明の効果】本発明によれば、一般式(1)で示される化合物を記録層として用いることにより、高密度光記録媒体として非常に注目されている波長400nm〜500nmのレーザーで記録および再生が可能な追記型光記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光記録媒体の層構成の一例を示す断面構造図である。
【図2】本発明に係る光記録媒体の層構成の一例を示す断面構造図である。
【符号の説明】
1:基板
2:記録層
3:反射層
4:保護層
5:接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に少なくとも記録層および反射層を有する光記録媒体において、記録層中に一般式(1)で示される化合物を含有する光記録媒体。
【化1】


〔式中、R1〜R4は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数20以下の置換または未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アラルキル基、アシル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアルキルスルホン酸基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Aは炭素数20以下の置換または未置換のアリール基またはヘテロアリール基を表す。〕
【請求項2】 一般式(1)で表される化合物のAが、置換または未置換のフェニル基、ナフチル基、フリル基、ピロリル基、またはチエニル基である請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】 波長400nm〜500nmの範囲から選択されるレーザー光に対して記録および再生が可能である請求項1または請求項2に記載の光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2000−108513(P2000−108513A)
【公開日】平成12年4月18日(2000.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−282663
【出願日】平成10年10月5日(1998.10.5)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(000179904)山本化成株式会社 (70)
【Fターム(参考)】