説明

光走査装置及び光走査型画像表示装置及び網膜走査型画像表示装置

【課題】表示する画像の輝度を正確に正常に保つことができる光走査装置及び同装置を有する網膜走査型画像表示装置及びレーザ光走査型画像表示装置を提供する。
【解決手段】網膜走査型画像表示装置又はレーザ光走査型画像表示装置に設けられ、画像信号に応じた光を出射する光出射部と、光出射部から出射された光を走査する光走査部とを有する光走査装置において、光走査部による走査範囲のうち有効走査範囲外の位置に配置された光検出部と、有効走査範囲外の位置の中で、少なくとも光検出部の周囲に備えられ、光出射部への光は遮蔽せず有効走査範囲外の光を遮蔽する遮蔽手段と、光検出部で検出した光に基づいて、光出射部から出射する光のタイミング及び強度を調整する制御部とを有することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び同装置を有する光走査型画像表示装置及び網膜走査型画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像信号に基づいて生成した光を、ユーザの少なくとも一方の網膜に走査して投影することにより画像を表示する網膜走査型画像表示装置や、画像を投影する投影面上にレーザ光を走査して画像を表示する光走査型画像表示装置などの画像表示装置が知られている。
【0003】
この画像表示装置は、画像信号に応じた光を出射する光出射部と、光出射部から出射された光を走査する光走査部とを有する光走査装置を備えていた。
【0004】
この光走査装置では、光出射部が光を出射する際に発生する熱や外気温の変化等に起因して、光出射部から出射される光の強度が変化することにより、表示する画像の輝度を正常に保つことができないという問題が生じるおそれがあった。
【0005】
このような問題の発生を防止する光走査装置として、光出射部の光源ユニットに、その光出射部が出射する光の強度を検出する光検出部を設け、この光検出部により検出した光の強度に基づいて、光出射部に出射させる光の強度を一定に保つようにフィードバック制御する光走査装置が考案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−88098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の光走査装置では、光出射部から出射された光が、光ファイバやレンズやミラー等の複数の光学系を通過して光走査部まで伝搬されていたため、その過程で光ファイバの結合効率やミラーの反射率により光の強度にロスが生じ、仮に光出射部が出射する光の強度を正確に調整できたとしても、光走査部により走査される光の強度を一定に保つように調整することができないことがある。画像表示装置などでは、その結果、ユーザ視認する画像の輝度をユーザが所望する明るさに調整することができないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1に係る本発明では、画像信号に応じた光を出射する光出射部と、前記光出射部から出射された光を走査する光走査部とを有する光走査装置において、前記光走査部による走査範囲のうち有効走査範囲外の位置に配置された光検出部と、前記有効走査範囲外の位置の中で、少なくとも光検出部の周囲に備えられ、前記光検出部への光は遮蔽せず前記有効走査範囲外の光を遮蔽する遮蔽手段と、前記光検出部で検出した光に基づいて、前記光出射部から出射する光のタイミング及び強度を調整する制御部とを有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の光走査装置において、前記光出射部は、3原色にそれぞれ対応する複数の光源を有し、前記複数の光源のうち少なくともいずれか一つの光源から一定強度の検査用光を有効走査期間外に所定のタイミングで出射し、前記制御部は、前記光検出部で検出した前記検査用光に基づいて、少なくとも前記検査用光を出射した光源から出射する光の強度を調整することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、請求項2に記載の光走査装置において、前記光出射部は、前記複数の光源からそれぞれ3原色の前記検査用光を出射し、前記制御部は、前記光検出部で検出した前記3原色の検査用光に基づいて前記複数の光源から出射する光の強度をそれぞれ調整することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る本発明では、請求項2又は請求項3に記載の光走査装置において、前記制御部は、前記3原色の検査用光のうち少なくとも一色の検査用光に基づいて前記光出射部から出射する光のタイミングを調整することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る本発明では、請求項3に記載の光走査装置において、前記光出射部は、前記3原色の各検査用光を重ね合わせて出射し、前記制御部は、前記光出射部から出射された重ね合わされた検査用光に基づいて前記光出射部から出射する光のタイミングを調整することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る本発明では、請求項2〜5のいずれか1項に記載の光走査装置において、前記光検出部は、受光した前記検査用光の強度に応じた検出結果信号を出力する光電変換素子を有し、前記制御部は、前記検出結果信号の変化タイミングに基づいて前記光出射部から出射する光のタイミングを調整し、前記検出結果信号の強度に基づいて、前記光源から出射する光の強度を調整することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る本発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光走査装置において、前記光走査部は、第一の走査方向に対して相対的に高速に光を走査する高速走査部と、前記第一の走査方向に対して交差または直交する方向である第二の走査方向に対して相対的に低速に光を走査する低速走査部とを備え、前記制御部は、前記光検出部に検出させる検査用光を前記各光源から異なるタイミングで出射させて、前記各検査用光を前記有効走査範囲外で前記第一の走査方向に1ライン走査させることを特徴とすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る本発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光走査装置において、前記光走査部は、第一の走査方向に対して相対的に高速に光を走査する高速走査部と、前記第一の走査方向に対して交差または直交する方向である第二の走査方向に対して相対的に低速に光を走査する低速走査部とを備え、前記制御部は、前記検査用光が前記有効走査範囲外で前記第一の走査方向に複数ライン連続して走査されるように前記光出射部から前記検査用光を出射させることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に係る本発明では、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光走査装置を備え、画像信号に応じて変調した光を前記光走査装置により走査することによって、投影面上に画像を投影表示する光走査型画像表示装置を提供することとした。
【0016】
また、請求項10に係る本発明では、請求項9に記載の光走査型画像表示装置を備え、画像信号に応じて変調した光を前記光走査装置により走査することによって、ユーザの少なくとも一方の網膜に画像を投影し、画像を表示する網膜走査型画像表示装置を提供することとした。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明では、画像信号に応じた光を出射する光出射部と、光出射部から出射された光を走査する光走査部とを有する光走査装置において、光走査部による走査範囲のうち有効走査範囲外の位置に配置された光検出部と、有効走査範囲外の位置の中で、少なくとも光検出部の周囲に備えられ、光検出部への光は遮蔽せず有効走査範囲外の光を遮蔽する遮蔽手段と、光検出部で検出した光に基づいて、光出射部から出射する光のタイミング及び強度を調整する制御部とを有することを特徴とするため、光走査部により走査される光の強度を一定に保つように調整することができ、画像表示装置等では、その結果、ユーザ視認する画像の輝度をユーザが所望する明るさに調整することができる。
【0018】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の光走査装置において、光出射部は、3原色にそれぞれ対応する複数の光源を有し、複数の光源のうち少なくともいずれか一つの光源から一定強度の検査用光を有効走査期間外に所定のタイミングで出射し、制御部は、光検出部で検出した検査用光に基づいて、少なくとも検査用光を出射した光源から出射する光の強度を調整することを特徴とするため、光の強度を検出して調整するために、全ての光源から光を出射させる必要がないため、光走査装置の消費電力を可及的に低減することができる。
【0019】
また、請求項3に係る本発明では、請求項2に記載の光走査装置において、光出射部は、複数の光源からそれぞれ3原色の検査用光を出射し、制御部は、光検出部で検出した3原色の検査用光に基づいて複数の光源から出射する光の強度をそれぞれ調整することを特徴とするため、全ての光源に対して、出射する光の強度をそれぞれ個別に調整することができるので、光の強度調整の精度を一層向上させ、ホワイトバランスを合わせることができる。
【0020】
また、請求項4に係る本発明では、請求項2又は請求項3に記載の光走査装置において、制御部は、3原色の検査用光のうち少なくとも一色の検査用光に基づいて光出射部から出射する光のタイミングを調整することを特徴とするため、たとえば、検査用光として、光検出部に対して感度の高い一色の検査用光を用いれば、光の出射タイミングの調整に要する消費電力を低減することができ、低消費電力でありながら、光の出射タイミングを好適に調整可能な光走査装置とすることができる。
【0021】
また、請求項5に係る本発明では、請求項3に記載の光走査装置において、光出射部は、3原色の各検査用光を重ね合わせて出射し、制御部は、光出射部から出射された重ね合わされた検査用光に基づいて光出射部から出射する光のタイミングを調整することを特徴とするため、色収差の発生を防止することができる。
【0022】
また、請求項6に係る本発明では、請求項2〜5のいずれか1項に記載の光走査装置において、光検出部は、受光した検査用光の強度に応じた検出結果信号を出力する光電変換素子を有し、制御部は、検出結果信号の変化タイミングに基づいて光出射部から出射する光のタイミングを調整し、検出結果信号の強度に基づいて、光源から出射する光の強度を調整することを特徴とするため、比較的簡易な構造でありながら、光の出射タイミングと光の強度とを共に調整可能な光走査装置とすることができる。
【0023】
また、請求項7に係る本発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光走査装置において、光走査部は、第一の走査方向に対して相対的に高速に光を走査する高速走査部と、前記第一の走査方向に対して交差または直交する方向である第二の走査方向に対して相対的に低速に光を走査する低速走査部とを備え、制御部は、光検出部に検出させる検査用光を各光源から異なるタイミングで出射させて、各検査用光を有効走査範囲外で第一の走査方向に1ライン走査させることを特徴とすることを特徴とするため、3原色の各色毎に個別に光検出部を設ける必要がなく、一つの光検出部によって3原色の各色を個別に検出することができるので、光走査装置をより一層小型化することができる。
【0024】
また、請求項8に係る本発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光走査装置において、光走査部は、第一の走査方向に対して相対的に高速に光を走査する高速走査部と、前記第一の走査方向に対して交差または直交する方向である第二の走査方向に対して相対的に低速に光を走査する低速走査部とを備え、制御部は、検査用光が有効走査範囲外で第一の走査方向に複数ライン連続して走査されるように光出射部から検査用光を出射させることを特徴とするため、複数ライン連続して走査した検査用光を光検出部により検出した複数の検出結果を用いて、光出射部が出射する光の強度と光の出射タイミングとを調整することができるので、例えば、複数回の検出結果の平均をとり、その結果を用いて光出射部が出射する光の強度と光の出射タイミングとを調整すれば、調整精度をより一層向上させることができる。
【0025】
請求項9に係る本発明では、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光走査装置を備え、画像信号に応じて変調した光を光走査装置により走査することによって、投影面上に画像を投影表示する光走査型画像表示装置を提供することとしたため、光走査部により走査される光の強度を一定に保つように調整することができ、表示する画像の輝度を正常に保つことができるだけでなく、光の出射タイミングを検出して制御するために、光出射部とは別に光源を設ける必要がないので、小型化が可能な光走査型画像表示装置を提供することができる。
【0026】
また、請求項10に係る本発明では、請求項9に記載の光走査型画像表示装置を備え、画像信号に応じて変調した光を光走査装置により走査することによって、ユーザの少なくとも一方の網膜に画像を投影し、画像を表示する網膜走査型画像表示装置を提供することとしたため、光走査部により走査される光の強度を一定に保つように調整することができ、表示する画像の輝度を正常に保つことができるだけでなく、光の出射タイミングを検出して制御するために、光出射部とは別に光源を設ける必要がないので、小型化が可能な網膜走査型画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明に好適な実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、本発明の光走査装置を備え、画像信号に応じて変調した光を光走査装置により走査することにより、ユーザの少なくとも一方の網膜に画像を投影し、画像を表示する網膜走査型画像表示装置を例に挙げて説明するが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、本発明の光走査装置を備え、画像信号に応じて変調したレーザ光を前記光走査装置により走査することによって、投影面上に画像を投影表示する光走査型画像表示装置等、光を走査して画像を表示する他の画像表示装置に対して適用することができるものである。
【0028】
図1は、本実施形態の光走査装置を示す説明図であり、図2は、本実施形態における映像信号供給回路を示す説明図であり、図3は、本実施形態における光検出部の配設位置を示す説明図であり、図4は、本実施形態の光検出部が出力する検出結果信号の波形を示す説明図であり、図5及び図7は、実施形態の光走査装置が有する制御部が行う処理を示す説明図であり、図6、図8、図9は、本実施形態の光走査装置における検査用光の走査態様を示す説明図である。
【0029】
[光走査装置の電気的構成]
本実施形態の網膜走査型画像表示装置が有する光走査装置の電気的構成などについて図1を用いて説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の網膜走査型画像表示装置が有する光走査装置1は、外部から入力される画像信号に応じて変調した光を出射する光出射部として機能する光源ユニット部2と、この光源ユニット部2の動作を制御する制御部110とを備えている。
【0031】
この光源ユニット部2は、外部から入力される画像信号に基づいて映像を合成するための要素となる各信号を発生する映像信号供給回路3を備えており、この映像信号供給回路3は、後に詳述する制御部110から入力される各種指示に従って動作することにより、出射する光のタイミング及び強度を調整するように構成している。
【0032】
また、この光源ユニット部2は、3原色にそれぞれ対応する複数の光源として、赤色のレーザ光を出射するRレーザ13と、緑色のレーザ光を出射するGレーザ12と、青色のレーザ光を出射するBレーザ11とを備えると共に、映像信号供給回路3から映像信号4として伝達される赤(R),緑(G),青(B)の各映像信号4(4r、4g、4b)を基に、それぞれ強度変調されたレーザ光を出射するように、これらRレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11を、それぞれ駆動するためのRレーザドライバ10,Gレーザドライバ9,Bレーザドライバ8を備えている。
【0033】
さらに、この光源ユニット部2は、各レーザより出射されたレーザ光を平行光にコリメートするコリメート光学系14と、それぞれコリメートしたレーザ光を合波するダイクロイックミラー15と、合波したレーザ光を光ファイバ17に導く結合光学系16とを備えている。尚、Rレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11としては、レーザダイオード等の半導体レーザや固体レーザを利用してもよい。
【0034】
また、本実施形態の光走査装置1は、光出射部である光源ユニット部2から出射されたレーザ光を走査する光走査部を備えており、この光走査部は、図1に示すように、光源ユニット部2から伝搬されたレーザ光を水平走査系19に導くコリメート光学系18と、コリメート光学系18によりコリメートしたレーザ光を、ガルバノミラー19aを利用して水平方向に走査する水平走査系19と、水平走査系19によって走査したレーザ光を垂直走査系21に導く第1リレー光学系20と、水平走査系19に走査され、第1リレー光学系20を介して入射されたレーザ光を、ガルバノミラー21aを利用して垂直方向に走査する垂直走査系21と、垂直走査系21に走査されたレーザ光をユーザの瞳孔24に導く第2リレー光学系22とを備えている。
【0035】
この光走査部において水平走査系19は、表示すべき画像の1ラインの走査線毎に、レーザビームを第一の走査方向である水平方向に対して相対的に高速に水平走査する高速走査部として機能するものであり、レーザビームを水平方向に走査するガルバノミラー19aと、そのガルバノミラー19aの駆動制御を行う水平走査制御回路19cとを備えている。
【0036】
また、この光走査部において垂直走査系21は、前記第一の走査方向に対して交差または直交する方向である第二の方向にレーザビームを走査するものであり、表示すべき画像の1フレーム毎に、レーザビームを最初の走査線から最後の走査線に向かって、第二の走査方向である垂直方向に対して相対的に低速に垂直走査する低速走査部として機能し、垂直走査するガルバノミラー21aと、そのガルバノミラー21aの駆動制御を行う垂直走査制御回路21cとを備えている。
【0037】
水平走査系19は、上記のように、垂直走査系21より高速にすなわち高周波数でレーザ光を走査するように設計されている。また、水平走査系19,垂直走査系21は、図1に示すように、各々映像信号供給回路3に接続され、映像信号供給回路3より出力される水平同期信号5,垂直同期信号6にそれぞれ同期してレーザ光を走査するように構成されている。
【0038】
そして、本実施形態の網膜走査型画像表示装置では、光走査装置1の光走査部が有する水平走査系19及び垂直走査系21などにより、レーザ光を、第一の走査方向及びその第一の走査方向に略垂直な第二の走査方向に走査することによって、2次元方向に走査してフレーム単位で映像を形成するようにしている。
【0039】
また、本実施形態においては、水平走査系19のガルバノミラー19aと、垂直走査系21のガルバノミラー21aとは、名称を同じように説明したが、光を走査するように其の反射面が揺動(回転)させられるものであれば、圧電駆動、電磁駆動、静電駆動等いずれの駆動方式によるものであってもよいことは言うまでもない。また、本実施形態においては、水平走査系19を共振タイプの走査系とし、垂直走査系21を非共振タイプの走査系としたが、これに限らず、例えば、水平走査系19を非共振タイプの走査系としてもよい。
【0040】
特に、本実施形態の光走査装置1は、光走査部が備える垂直走査系21及び水平走査系19によるレーザ光の走査範囲のうち、後述の有効走査範囲外の位置に配設されて、光源ユニット部2から出射され有効走査範囲外を走査される後述の検査用光を検出する光検出部となるBD(Beam Detector)センサ31を備えている。なお、図1では、BDセンサ31をレーザ光の有効走査範囲の上方に設けるように構成しているが、BDセンサ31の配設位置はこれに限定するものではなく、たとえば、レーザ光の有効走査範囲の下方に設けても、上方下方両方に設けるように構成してもよい。
【0041】
また、この光走査装置1は、レーザ光の有効走査範囲外のなかで、少なくともBDセンサ31の周囲に設けられ、BDセンサ31へのレーザ光は遮蔽せず、有効走査範囲外のレーザ光を遮蔽する遮蔽手段として機能する遮光マスク31aを備えている。尚、前記BDセンサが実際に光を検出する部分以外の周辺部分をある程度の広さ以上有しているような場合は、別途遮光マスク31aを設けなくても、前記周辺部分を遮蔽手段とし構成してもよい。
【0042】
そして、この光走査装置1では、後述の制御部110(図2参照。)が、このBDセンサ31で検出した検査用光に基づいて、光源ユニット部2から出射するレーザ光の出射タイミングとレーザ光の強度を調整するように構成している。
【0043】
このBDセンサ31は、受光した検査用光の強度に応じた電流を検出結果信号(以下、「BD信号7」という。)として映像信号供給回路3へ出力する光電変換素子により構成しており、垂直走査系21とユーザの瞳孔24との間で光走査部による有効走査範囲外に配設するようにしている。
【0044】
なお、本実施形態では、このBDセンサ31は、図1に示すように、垂直走査系21と第2リレー光学系22との間で、垂直走査系21によるレーザ光の有効走査範囲外に配設しているが、BDセンサ31の配設位置は、これに限定するものではなく、光走査部とユーザの瞳孔24との間におけるレーザ光の走査範囲のうち有効走査範囲外であれば任意の箇所に配設することができ、たとえば、第2リレー光学系22とユーザの瞳孔24との間におけるレーザ光の走査範囲のうち有効走査範囲外に配設してもよい。
【0045】
一般的に、走査によって画像が表示または形成される範囲を有効走査範囲と言い、該画像を表す画像信号を出力する期間を有効走査期間と言うが、本実施形態においては、有効走査範囲とは、光走査部がレーザ光を走査可能な走査範囲のうち、走査されたレーザ光がユーザの網膜に投影される走査範囲でもあるので、この有効走査範囲の外側では、レーザ光はユーザには視認されないよう構成されるのが一般的である。具体的には、有効走査範囲の外側では、レーザ光を出射しないか又はユーザに視認されないよう遮蔽する。
【0046】
なお、本実施形態では、有効走査範囲を、上記のように光走査部がレーザ光を走査する走査範囲のうち、走査されたレーザ光がユーザの網膜に投影される走査範囲と定義しているが、有効走査範囲の定義はこれに限定するものではなく、光走査部がレーザ光を走査する範囲のうち、走査されるレーザ光をユーザが視認できる範囲であれば、任意の走査範囲を有効走査範囲として定義することができ、たとえば、垂直走査系21とユーザの瞳孔24との間に、画像表示用のレーザ光だけが通過する所定面積の開口を有する遮光体を配設し、この遮光体の開口部分を有効走査領域として定義してもよい。
【0047】
また、このBDセンサ31は、走査された走査光を検出した場合に、検出した走査光の強度に応じた電流をBD信号7として制御部110へ出力する。なお、ここでBDセンサ31は、受光した光の強度に応じた電流をBD信号7として出力するように構成しているが、BD信号7はこれに限定するものではなく、たとえば、BDセンサ31が受光した光の強度に応じて電圧値が変化する信号をBD信号7として出力するように構成してもよい。
【0048】
そして、制御部110は、BD信号7の変化タイミングに基づいて、光源ユニット部2から出射するレーザ光の出射タイミング、共振周波数等の走査周期を演算して調整する制御を行うと共に、BD信号7の電流振幅値に基づいて、光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度を演算して調整する制御を行う。尚、レーザ光の出射タイミングは、有効走査領域やフレーム単位での画像の表示開始タイミング等を決めるために用いる重要なタイミングである。また、本実施形態での電流振幅値は、光を検出した場合の検出信号の強度(大きさ)を示すものとして使っており、所定の閾値を越える部分の中で最大値を使っているが、平均値などでもよい。
【0049】
このように、本実施形態の光走査装置1では、光源ユニット部2から出射されるレーザ光の伝搬経路において、光走査部よりも後段に設けたBDセンサ31により検査用光を検出し、その検出結果を用いてレーザ光の強度とレーザ光の出射タイミングとを調整するため、光走査部により走査される光の強度を一定に保つように調整することができ、しかも、検査用光の出射タイミングを検出するために、光出射部とは別に光源を設ける必要がないので、光走査装置1の小型化を図ることができる。
【0050】
次に、本発明の一実施形態の網膜走査型画像表示装置が備える光走査装置1が、外部からの画像信号を受けてから、ユーザの網膜上に映像を投影するまでの過程について図1を用いて説明する。
【0051】
図1に示すように、本実施形態の光走査装置1では、光源ユニット部2に設けられた映像信号供給回路3が外部からの画像信号の供給を受けると、映像信号供給回路3は、赤,緑,青の各色のレーザ光を出力させるためのR映像信号4r,G映像信号4g,B映像信号4bからなる映像信号4と、水平同期信号5と、垂直同期信号6とを出力する。Rレーザドライバ10、Gレーザドライバ9、Bレーザドライバ8は、各々入力されたR映像信号4r、G映像信号4g、B映像信号4bに基づいてRレーザ13、Gレーザ12、Bレーザ11に対してそれぞれの駆動信号(図示略)を出力する。この駆動信号に基づいて、Rレーザ13、Gレーザ12、Bレーザ11はそれぞれ強度変調されたレーザ光を発生し、各々をコリメート光学系14に出力する。
【0052】
特に、本実施形態において、光源ユニット部2は、3原色に対応するRレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11という複数の光源という複数の光源からそれぞれ、画像を表示させるためのレーザ光とは別に、BDセンサ31に検出させるための一定強度の検査用光を出射するようにしている。
【0053】
すなわち、この光源ユニット部2は、光走査部がレーザ光の走査範囲のうち、上記した有効走査範囲でレーザ光を走査している期間、画像信号に応じたレーザ光を出射し、有効走査期間外に所定のタイミングで検査用光を出射するようにしている。
【0054】
そして、光走査装置1の制御部110は、BDセンサ31で検出した3原色の各検査用光に基づいて、Rレーザ13、Gレーザ12、Bレーザ11から出射する画像を表示するためのレーザ光の強度をそれぞれ調整する制御を行う。
【0055】
すなわち、制御部110は、BDセンサ31からBD信号7が入力されると、そのBD信号7の電流振幅値と予め設定されている所定の電流値(以下、「設定電流値」という。)とを比較し、BD信号7の電流値と設定電流値とが等しくなるようにフィードバック制御したRGB強度の指示を示す信号を映像信号供給回路3へ出力することにより、映像信号供給回路3から各レーザドライバ(Bレーザドライバ8、Gレーザドライバ9、Rレーザドライバ10)へ映像信号4をそれぞれ出力させて、Rレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11から出射する画像を表示するための各レーザ光の強度をそれぞれ調整する。
【0056】
このように、本実施形態において、制御部110は、BDセンサ31で検出した検査用光に基づいて、Rレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11がそれぞれ出射するレーザ光の強度を個別に調整することができるので、レーザ光の強度調整の精度を一層向上させることができる。
【0057】
なお、ここでは、検査用光に基づいて、全ての光源から出射するレーザ光の強度を調整するように構成しているが、たとえば、検査用光として、3原色のレーザ光のうち、BDセンサ31の受光感度が最も高い一色の検査用光を用いて、少なくともその検査用光を出射した一つの光源が出射するレーザ光の強度を調整する制御を行うように構成してもよい。
【0058】
このように構成すれば、検査用光を出射させるために全ての光源からレーザ光を出射する必要がなく、これにより、光走査装置1の消費電力の増大を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、Rレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11のそれぞれから3原色に対応した検査用光を出射させるようにしているが、Rレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11のうちの少なくともいずれか一つの光源からBDセンサ31に検出させるための検査用光を出射させてBDセンサ31に検出させ、その検出結果に基づいて、映像信号供給回路3にRレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11の全てが出力するレーザ光の強度をそれぞれ調整させるように構成してもよい。
【0060】
このように構成することによっても、出射するレーザ光の強度を調整するために要する消費電力を可及的に低減することができる。
【0061】
また、本実施形態の制御部110は、3原色の検査用光のうち一色の検査用光に基づいて、光源ユニット部2のRレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11から出射する画像を表示するためのレーザ光の出射タイミングをそれぞれ調整する制御を行う。
【0062】
すなわち、制御部110は、BDセンサ31からBD信号7が入力されると、そのBD信号7における電流振幅値の変化タイミングに基づいて、Rレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11から出射する画像を表示するための各レーザ光の出射開始タイミングが所定のタイミングとなるようにフィードバック制御したレーザ光の出射タイミングの指示を示す信号を映像信号供給回路3へ出力することにより、映像信号供給回路3に映像信号4を生成させ、その映像信号4を各レーザドライバ(Bレーザドライバ8、Gレーザドライバ9、Rレーザドライバ10)へそれぞれ出力させることによって、Rレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11から出射する画像を表示するための各レーザ光の出射開始タイミングをそれぞれ調整する。
【0063】
このように、本実施形態の光走査装置1では、画像を表示するためのレーザ光を出射するRレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11を、検査用光の光源として用いると共に、この光源から出射された少なくとも一色の検査用光をBDセンサ31で検出し、その結果得られるBD信号7の変化タイミングに基づいてRレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11から出射するレーザ光の出射タイミングを調整するように構成しているため、レーザ光の出射タイミングの検出及び調整を行うために新たに光源を設ける必要がなく、光走査装置1の小型化を図ることができ、比較的簡易な構造でありながら、レーザ光の出射タイミングとレーザ光の強度とを共に調整可能な光走査装置とすることができる。
【0064】
また、本実施形態の光走査装置1において、レーザ光の出射タイミングの検出及び調整を行う場合には、3原色の全ての検査用光を用いる必要はなく、3原色の検査用光のうち一色の検査用光に基づいて光源ユニット部2から出射するレーザ光のタイミングを検出及び調整することができるので、省電力化を図ることができると共に、レーザ光の出射タイミングの検出及び調整を行う際に、映像信号供給回路3にかかる処理負担を可及的に軽減することができる。
【0065】
また、Rレーザ13,Gレーザ12,Bレーザ11の全ての光源から検査用光を出射する必要がなく、いずれか一つの光源から検査用光を出射することにより、レーザ光の出射タイミングの検出及び調整を行うことができるので、光走査装置1の消費電力を可及的に低減することができる。
【0066】
また、光走査装置1の制御部110は、後述する水平走査系19のガルバノミラー19aの駆動状態を示すBD同期タイミング信号(図示せず)に応じて、光源ユニット部2にレーザ光を発生させて、各々をコリメート光学系14へ出射するタイミングを制御する。つまり、このような光走査装置1の制御部110は、ガルバノミラー19aなどにレーザ光を出射させるタイミングを制御することとなる。点光源から発生されるレーザ光は、このコリメート光学系14によってそれぞれが平行光にコリメートされ、さらに、ダイクロイックミラー15に入射されて1つのレーザ光となるよう合成された後、結合光学系16によって光ファイバ17に入射されるよう導かれる。
【0067】
光ファイバ17によって伝搬されたレーザ光は、光ファイバ17からコリメート光学系18によって平行光にコリメートされて水平走査系19に出射される。この出射されたレーザ光は、水平走査系19のガルバノミラー19aの偏向面19bに入射される。ガルバノミラー19aの偏向面19bに入射したレーザ光は水平同期信号に同期して水平方向に走査されて第1リレー光学系20を介し、垂直走査系21のガルバノミラー21aの偏向面21bに入射する。ガルバノミラー21aは、ガルバノミラー19aが水平同期信号に同期することと同様に垂直同期信号6に同期して、その偏向面21bが入射光を垂直方向に反射するように往復振動をしており、このガルバノミラー21aによってレーザ光は垂直方向に走査される。ガルバノミラー21aによって走査されたレーザ光は、第2リレー光学系22を介して、ユーザの瞳孔24に入射する。これによってユーザは、このように2次元走査されて網膜上に投影されたレーザ光による画像を認識することができる。
【0068】
[制御部の電気的構成]
ここで、上述した光走査装置1が有する制御部110の電気的構成などについて、図2を用いて説明する。
【0069】
図2に示すように、制御部110は、CPU(Central Processing Unit)102を備えると共に、このCPU102が実行する各種プログラム等を記憶(記憶)する主記憶装置として機能する第1記憶部103と各種データ等を記憶する第2記憶部104とを有するROM107と、CPU102が各種プログラムを実行する際の作業領域として機能するRAM106と、外部回路との間で各種信号の送受信を行うための入出力インタフェース105とを備えている。また、これらCPU102、RAM106、ROM107、入出力インタフェース105は、システムバス101で電気的に接続されている。
【0070】
(第1記憶部103について)
また、第1記憶部103には、コンピュータとしての基本的な機能を提供するためのオペレーティングシステム(OS)プログラムや、外部からの画像信号を受け取るプログラム、外部からの画像信号を変換する変換プログラム、変換された画像信号を出力する出力プログラム、内部からのBD信号7を受け取るプログラム、BD信号7に基づいて光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度及びレーザ光の出射タイミングを調整するプログラム、水平走査系19や垂直走査系21を制御するプログラム等を記憶しており、これらはCPU102によって読み出され、CPU102によってこれらのプログラムに従った機能が実行される。
【0071】
(第2記憶部104について)
第2記憶部104には、光源ユニット部2のBレーザ11、Gレーザ12、Rレーザ13から出射させる3原色のレーザ光の強度を調整するために用いる複数種類の設定電流値を示す情報や、レーザ光の出射タイミングをフィードバック制御するために用いる後述の受光タイミング検知用電流値を示す情報や予測受光タイミングを示す情報等が記憶されている。なお、設定電流値に関しては、所望する表示画像の輝度に応じて、ユーザが任意に設定を変更できるように構成している。
【0072】
(入出力インタフェース105について)
入出力インタフェース105は、光走査装置1における送受信の制御を行う機能を有する。具体的には、入出力インタフェース105は、BDセンサ31からのBD信号7の受信、水平同期信号5、垂直同期信号6、内部からの各種信号等が入力されると共に、映像信号供給回路3へRGB強度の指示を示す信号、レーザ光の出射タイミングを示す信号、検査用光の出射指示を示す信号、システムクロック、内部への映像信号、各種制御信号等が出力されるものである。
【0073】
このように構成した制御部110は、上述のようにCPU102が第1記憶部103に記憶された各種プログラムを読み出して実行することにより、光走査装置1を含めた網膜走査型画像表示装置全体を統括制御するようになっており、特に本実施形態では、BDセンサ31から入力されるBD信号7に基づいて、光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度と、レーザ光の出射タイミングとを自動調整する。
【0074】
[BDセンサと遮光マスクの配設位置]
ここで、BDセンサ31と遮光マスク31aの配置位置について図3を用いて説明する。
【0075】
図3(A)に示すように、本実施形態においてBDセンサ31は、垂直走査系21と、第2リレー光学系22との間の位置に配設している。
【0076】
このように本実施形態では、BDセンサ31をレーザ光の伝搬経路において光走査部よりも後段に設けているため、ユーザの瞳孔24に入射する直前のレーザ光の強度変化を検出することができ、これにより、光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度をユーザが所望する強度となるように正確に調整することができる。
【0077】
すなわち、本実施形態では、BDセンサ31を従来の光走査装置のように光源ユニットの内部に設けるのではなく、ユーザの瞳孔24に入射する直前の検査用光(レーザ光)を検出できるように、垂直走査系21と第2リレー光学系22との間に設けているため、光源であるBレーザ11、Gレーザ12、Rレーザ13からそれぞれ出射されるレーザ光が、その伝搬経路に配設されているコリメート光学系14、ダイクロイックミラー15、結合光学系16、光ファイバ17、コリメート光学系18、水平走査系19、第1リレー光学系20、垂直走査系21等の複数の光学系を通過することによって強度にロスが生じても、そのロスを考慮して光源ユニット部2から出射させるレーザ光の強度をユーザが所望する強度となるように正確に調整することができるのである。
【0078】
また、本実施形態においてBDセンサ31は、垂直走査系21によるレーザ光の走査範囲Zのうち、有効走査範囲Zaよりも外側に配設するようにしている。
【0079】
また、遮光マスク31aは、図3(A)に示すように、有効走査範囲Za外の位置のなかで、少なくともBDセンサ31の周囲に設けるようにしており、BDセンサ31へのレーザ光は遮蔽せず有効走査範囲Za外のレーザ光を遮蔽するように構成している。
【0080】
このように、本実施形態では、BDセンサ31を光走査部によるレーザ光の有効走査範囲Zaよりも外側に設けると共に、このBDセンサ31の周囲に遮光マスク31aを設けているため、検査用光がユーザの瞳孔24に導かれることがなく、検査用光の出射が画像表示の妨げになることがない。
【0081】
すなわち、本実施形態の光走査装置1は、光源ユニット部2から出射したレーザ光を水平走査系19により第一の走査方向である水平方向(X軸方向)へ比較的高速で複数回往復走査すると共に、この往復走査されたレーザ光を垂直走査系21により第二の走査方向である垂直方向(Y軸方向)へ比較的低速で走査することにより、1フレームの画像を表示する。
【0082】
このとき、垂直走査系21は、図3(A)に示すように、予め設定した走査範囲Zでレーザ光を走査する。なお、図3(A)では、垂直走査系21による垂直方向へのレーザ光の走査範囲Zと有効走査範囲Zaだけを示しているが、水平走査系19による水平方向へのレーザ光の走査に関しても、同様に走査範囲と有効走査範囲とを設定するようにしている。
【0083】
そして、このとき光走査部は、図3(B)に2点鎖線で示す走査範囲Z内を上から下へ向けてジグザクに走査して、光源ユニット部2は、光走査部がBDセンサ31が配設されている領域を走査している期間に検査用光を出射し、光走査部が有効走査範囲Za内の領域を走査している期間に画像を表示させるためのレーザ光を出射するが、本実施形態では、図3(A)に示すように、検査用光が走査される領域のなかで、BDセンサ31が検査用光を受光する部分以外を遮光マスク31aで遮蔽することによって、検査用光の出射が画像表示の妨げになることを防止すようにしている。
【0084】
また、本実施形態では、BDセンサ31を、図3(B)に示すように、有効走査範囲Zaよりも上側で、走査範囲Zの上端部略中央位置に配設している。
【0085】
このように、BDセンサ31を有効走査範囲Zaよりも上側に設けることにより、有効走査範囲Zaでレーザ光が走査される前に、BDセンサ31で検査用光を検出することができるので、有効走査範囲Zaを走査する前に光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度を調整することができ、既に強度調整がなされたレーザ光により画像を表示することができる。
【0086】
また、BDセンサ31を、走査範囲Zの上端部において、水平走査系19による走査速度の最も早い中央位置に設けることにより、制御部110は、最も早い走査速度で走査されている検査用光の検出タイミングを用いて、光源ユニット部2が出射するレーザ光の出射タイミングを調整することができるので、レーザ光の出射タイミング調整の精度を向上させることができる。
【0087】
[レーザ光の強度及び出射タイミングの調整方法]
上記のように配設したBDセンサ31は、検査用光を検出すると、図4に示すように、受光した検査用光の強度に応じて電流振幅値が変化するBD信号7を制御部110へ出力し、このBD信号7に基づいて、制御部110が以下のようにして光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度及び出射タイミングの調整を行う。
【0088】
制御部110は、BDセンサ31からBD信号7が入力されると、図4(A)に示すように、受光したBD信号7の電流振幅値のピークが予め設定された設定電流値と等しくなるように調整すると共に、BD信号7の電流振幅値の変化タイミングに基づいて、BD信号7の立ち上がりタイミングが、予め設定された予測受光タイミングT1、T2と等しくなるように調整することにより、光源ユニット部2に出射させるレーザ光の強度と、出射タイミングを調整する。
【0089】
すなわち、制御部110は、図4(B)の左側に示すBD信号7のように、第2記憶部104に予め設定されている設定電流値よりも低い電流振幅値を示すBD信号7が入力さると、光源ユニット部2に出射させるレーザ光の強度が低すぎると判断し、Bレーザ11、Gレーザ12、Rレーザ13から出射させる各レーザ光の強度を増大させる映像信号を映像信号供給回路3に生成させ、Bレーザドライバ8、Gレーザドライバ9、Rレーザドライバ10のそれぞれに入力させることにより、光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度を増大させる。
【0090】
その一方で、この制御部110は、図4(B)の右側に示すBD信号7のように、第2記憶部104に予め設定されている設定電流値よりも高い電流振幅値を示すBD信号7が入力されると、光源ユニット部2に出射させるレーザ光の強度が高すぎると判断し、Bレーザ11、Gレーザ12、Rレーザ13から出射させる各レーザ光の強度を低減させる映像信号を映像信号供給回路3に生成させ、Bレーザドライバ8、Gレーザドライバ9、Rレーザドライバ10のそれぞれに入力させることにより光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度を低減させる。
【0091】
こうして制御部110は、Bレーザドライバ8、Gレーザドライバ9、Rレーザドライバ10へ入力する各映像信号を映像信号供給回路3に調整させるための指示を映像信号供給回路3へ出力することによって、BDセンサ31から入力されるBD信号7の電流振幅値と設定電流値との関係が、図4(A)に示す関係となるようにフィードバック制御し、光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度を調整するのである。
【0092】
また、制御部110は、図4(A)に示すように、BDセンサ31から入力されるBD信号7の電流振幅値が、第2記憶部104に予め設定されている受光タイミング検知用電流値以上になったことを検知すると、BDセンサ31が検査用光を検知したと判断する。
【0093】
そして、制御部110は、図4(B)の左側に示すBD信号7のように、第2記憶部104に予め設定されている予測受光タイミングT1よりも遅いタイミングで立ち上がるBD信号7が入力されると、光源ユニット部2に出射させるレーザ光の出射タイミングが遅すぎると判断し、映像信号供給回路3に対して、Bレーザ11、Gレーザ12、Rレーザ13へ入力する映像信号の入力タイミングを早めさせる指示を送信することによって、光源ユニット部2から出射するレーザ光の出射タイミングを早める。
【0094】
その一方で、制御部110は、図4(B)の右側に示すBD信号7のように、第2記憶部104に予め設定されている予測受光タイミングT2よりも早いタイミングで立ち上がるBD信号が入力されると、光源ユニット部2に出射させるレーザー光の出射タイミングが早すぎると判断し、映像信号供給回路3に対して、Bレーザ11、Gレーザ12、Rレーザ13へ入力する各映像信号の入力タイミングを遅延させる指示を送信することによって、光源ユニット部2から出射するレーザ光の出射タイミングを遅らせる。
【0095】
こうして制御部110は、Bレーザドライバ8、Gレーザドライバ9、Rレーザドライバ10へ入力する映像信号の入力タイミングを調整し、BDセンサ31から入力されるBD信号7立ち上がりタイミングと予測受光タイミングT1、T2との関係が、図4(A)に示す関係となるようにフィードバック制御することによって、光源ユニット部2から出射するレーザ光の出射タイミングを調整するのである。
【0096】
このように、本実施形態の光走査装置1では、画像を表示させるためのレーザ光を出射する光源を、検査用光の光源として用いているため、装置の小型化を図ることができる。
【0097】
[光走査装置の処理の説明]
ここで、本実施形態の網膜走査型画像表示装置が備える光走査装置1の制御部110が行う処理について具体的に説明する。
【0098】
(メイン処理)
本実施形態に係る光走査装置1の制御部110は、電源がオンされると、電源がオフされるまでの間、図5に示すフローチャートに従ってメイン処理を実行する。
【0099】
このメイン処理において、制御部110は、電源がオンされると、まず、画像表示条件が成立しているか否かの判断を行い(ステップS1)、画像表示条件が成立していると判断した場合に(ステップS1:YES)、処理をステップS2へ移し、画像表示条件が成立していないと判断した場合(ステップS1:NO)、処理をステップS5へ移す。
【0100】
このステップS1において、制御部110は、網膜走査型画像表示装置の再生ボタン(図示略)がユーザにより操作されたことを検出すると、第2記憶部104にデータ再生中を示すフラグを立て、このフラグを参照して、フラグがたっている場合に画像表示条件が成立していると判断し、フラグが立っていない場合に画像表示条件が成立していないと判断する。なお、このフラグは、ユーザによって、図示しない停止ボタンが操作されたときにクリアされる。
【0101】
次に、ステップS2において制御部110は、出射強度・出射タイミング調整処理を実行して、光源ユニット部2から出射する画像を表示するためのレーザ光の強度と、出射タイミングとを調整した後、処理をステップS3へ移す。なお、この出射強度・出射タイミング調整処理については、後に図7を参照して詳述する。
【0102】
次に、ステップS3において制御部110は、画像表示処理を実行することにより、外部から映像信号供給回路3へ入力される画像信号に基づいて、映像信号供給回路3に映像信号を生成させ、所定のタイミングで、Rレーザドライバ10,Gレーザドライバ9,Bレーザドライバ8へ出力させて、外部から入力された画像信号に応じた画像をユーザの網膜上に投影表示させ、その後、処理をステップS4へ移す。
【0103】
次に、ステップS4において制御部110は、電源がオフがされたか否かの判断を行い、電源オフされたと判断した場合に(ステップS4:YES)、このメイン処理を終了し、電源がオフされていないと判断した場合に(ステップS4:NO)、処理をステップS1へ移す。
【0104】
また、ステップS5において制御部110は、その他制御実行条件が成立しているかいか否かの判断を行い、その他制御実行条件成立していると判断した場合に(ステップS5:YES)、処理をステップS6へ移して、その他制御実行処理を実行し、その後、処理をステップS4へ移す。
【0105】
その他制御実行処理において制御部110は、第2記憶部104に格納している各種フラグを参照し、そのフラグに対応した処理として、たとえば、データ再生処理や停止処理等といった各種処理を実行する。
【0106】
また、制御部110は、ステップS5において、その他制御実行条件が成立していないと判断した場合に(ステップS5:NO)、処理をステップS4へ移す。
【0107】
(出射強度・出射タイミング調整処理)
次に、図5に示すメイン処理のステップS2において制御部110が行う出射強度・出射タイミング調整処理について説明する。
【0108】
この出射強度・出射タイミング調整処理において制御部110は、図7に示すように、まず、検査用光出射処理を行い(ステップS11)、その後、処理をステップS12へ移す。
【0109】
このステップS11において制御部110は、図6に示すように、光走査部によるレーザ光の走査範囲Zのなかで、有効走査範囲Zaよりも外側の領域に検査用光としての一定強度のレーザ光を所定のタイミングで走査させる処理を行う。
【0110】
このとき、制御部110は、有効走査範囲Zaの上端と走査範囲Zの上端との間の領域に、検査用光として緑色の単色のレーザ光Gを1ライン走査させるための画像信号を映像信号供給回路3からGレーザドライバ9へ出力させる。
【0111】
次に、ステップS12において制御部110は、BDセンサ31からBD信号7の入力があるか否かの判断を行い、BD信号の入力があると判断した場合に(ステップS12:YES)、処理をステップ13へ移し、BD信号7の入力がないと判断した場合に(ステップS12:NO)、この出射強度・出射タイミング調整処理を終了して、処理をメイン処理におけるステップS3へ移す。
【0112】
このステップS12において制御部110は、入力されたBD信号7の立ち上がりエッジを検出することにより、BD信号7の入力があったと判断するようにしており、具体的には、入力されたBD信号7の電流振幅値と、第2記憶部104に記憶している受光タイミング検出用電流値とが等しくなったときに、BD信号7有りと判断するようにしている。
【0113】
次に、ステップS13において制御部110は、BDセンサ31から入力されたBD信号7の検出タイミングと、第2記憶部104に記憶している予測受光タイミングとが等しいか否かの判断を行う。
【0114】
ここで、制御部110は、ステップS12で検出したBD信号の検出タイミングと、第2記憶部104に記憶している予測受光タイミングT1、T2とを比較して、BD信号7の検出タイミングと予測受光タイミングT1、T2とが等しいか否かの判断をする。
【0115】
そして、制御部110は、BD信号7の検出タイミングと予測受光タイミングT1、T2とが等しいと判断した場合に(ステップS13:YES)、処理をステップS14へ移し、BD信号7の検出タイミングと予測受光タイミングT1、T2とが等しくないと判断した場合に(ステップS13:NO)、処理をステップS15へ移す。
【0116】
ステップS15において制御部110は、BD信号7の検出タイミングが予測受光タイミングよりも遅れているか否かの判断を行い、遅れていると判断した場合に(ステップS15:YES)、処理をステップS16へ移し、遅れていないと判断した場合に(ステップS15:NO)、処理をステップS17へ移す。
【0117】
次に、ステップS16において制御部110は、予測受光タイミングT1、T2からのBD信号7の検出タイミングの遅れ分を演算し、その演算結果に基づいて前回光源ユニット部2からレーザ光を出射したタイミングから次回出射するタイミングまでの時間を短縮する処理を実行した後、処理をステップS14へ移す。
【0118】
また、ステップS17において制御部110は、BD信号7の検出タイミングが予測受光タイミングよりも進んでいるか否かの判断を行い、進んでいると判断した場合に(ステップS17:YES)、処理をステップS18へ移し、進んでいないと判断した場合に(ステップS17:NO)、処理をステップS14へ移す。
【0119】
次に、ステップS18において制御部110は、予測受光タイミングT1、T2からのBD信号7の検出タイミングの進み分を演算し、その演算結果に基づいて前回光源ユニット部2からレーザ光を出射したタイミングから次回出射するタイミングまでの時間を延長する処理を実行した後、処理をステップS14へ移す。
【0120】
次に、ステップS14において制御部110は、BD信号7の電流振幅値と、第2記憶部104に記憶している設定電流値とが等しいか否かの判断を行い、等しいと判断した場合に(ステップS14:YES)、この出射強度・出射タイミング調整処理を終了して、処理をメイン処理におけるステップS3へ移す。
【0121】
次に、ステップS19において制御部110は、BD信号7の電流振幅値が、第2記憶部104に記憶している設定電流値よりも小さいか否かの判断を行い、小さいと判断した場合に(ステップS19YES)、処理をステップS20へ移し、小さくないと判断した場合に(ステップS19:NO)、処理をステップS21へ移す。
【0122】
次に、ステップS20において制御部110は、BD信号7の電流振幅値と設定電流値との差分を演算し、その演算結果に基づいて次回光源ユニット部2に出射させるレーザ光の強度を増大させる処理を行い、その後、この出射強度・出射タイミング調整処理を終了して、処理をメイン処理におけるステップS3へ移す。
【0123】
また、ステップS21において制御部110は、BD信号7の電流振幅値が、第2記憶部104に記憶している設定電圧値よりも大きいか否かの判断を行い、大きいと判断した場合に(ステップS21:YES)、処理をステップS22へ移し、大きくないと判断した場合に(ステップS21:NO)、この出射強度・出射タイミング調整処理を終了して、処理をメイン処理におけるステップS3へ移す。
【0124】
次に、ステップS22において制御部110は、BD信号7の電流振幅値と設定電流値との差分を演算し、その演算結果に基づいて次回光源ユニット部2に出射させるレーザ光の強度を低減させる処理を行い、その後、この出射強度・出射タイミング調整処理を終了して、処理をメイン処理におけるステップS3へ移す。
【0125】
このように、本実施形態の光走査装置1では、検査用光を出射する際に、3つの光源の中の一つであるGレーザ12からのみ検査用光を出射させるように構成しているため、検査用光を出射するために要する消費電力を可及的に低減するこができる。
【0126】
しかも、本実施形態では、検査用光として、3原色のなかでユーザに対して最も視感度の高い緑色のレーザ光を出射するように構成したため、表示画像の輝度をユーザが所望する明るさとなるように、容易に調整することができる。
【0127】
また、上記実施形態では、制御部110がGレーザ12からのみ検査用光を出射させて、その検査用光をBDセンサ31により検出させるように構成したが、検査用光の出射形態及び検査用光の検出形態はこれに限定されるものではなく、たとえば、Bレーザ11、Gレーザ12、Rレーザ13から同時に出射させた3原色の検査用光を重ね合わせて光源ユニット部2から出射させ、制御部110に、光源ユニット部2から出射された重ね合わされた検査用光に基づいて光源ユニット部2から出射するレーザ光の出射タイミングを調整させるように構成してもよい。
【0128】
このように構成することによって、光走査装置1が備える複数の光学系による色収差の発生を防止することができる。
【0129】
すなわち、光走査装置1の光学系に色収差が生じていた場合に、上記のように、光源ユニット部2から3原色の検査用光を重ね合わせて出射させてBDセンサ31で検出すると、BDセンサ31は、検査用光を白色の1ラインの走査線又は白色の一点として検出することができずに、色の異なる複数ラインの走査線又は色の異なる複数の点として検出してしまうが、色収差が生じていない場合には、BDセンサ31は検査用光を白色の1ラインの走査線又は白色の一点として検出することとなる。
【0130】
そのため、各光源に3原色の検査用光をそれぞれ同時に出射させ、これら各検査用光を結合光学系16で重ね合わせて光源ユニット部2から出射させるように構成すると共に、この光源ユニット部2から出射された検査用光をBDセンサ31が白色の1ラインの走査線又は白色の一点として検出するように、制御部110が光源ユニット部2に出射させるレーザ光の出射タイミングを調整するように構成することによって、光走査装置1の光学系に色収差が生じている場合であっても、その色収差を消去することができるのである。
【0131】
また、上記実施形態では、レーザ光の走査範囲Zのうち有効走査範囲よりも外側に検査用光を1ライン走査してBDセンサで検出し、その検出結果に基づいて光源ユニット部2から出射するレーザ光の出射強度及び出射タイミングを調整するように構成しているが、例えば、制御部110により、検査用光がレーザ光の走査範囲Zのうち有効走査範囲Zaの外側で水平方向に複数ライン連続して走査されるように光源ユニット部2から検査用光を出射させる構成とし、その複数ライン走査された検査用光をBDセンサで検出するように構成してもよい。
【0132】
このように構成した場合、制御部110は、3原色のうちのいずれか1色の検査用光を、走査範囲Zのうち有効走査範囲Zaの外側に複数ライン連続して走査させて、その複数ライン走査した検査用光をBDセンサ31に順次検出させ、その検出結果の平均値を用いて光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度と出射タイミングとを調整する。
【0133】
このように構成することによって、検査用光を1ライン走査させてBDセンサ31に検出させた検出結果よりも、信頼性の高い検出結果を得ることができるので、光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度と出射タイミングの調整精度に関する信頼性が向上する。
【0134】
また、このように検査用光を、走査範囲Zのうち有効走査範囲Zaの外側に複数ライン連続して走査する場合、制御部110は、BDセンサに検出させる検査用光をBレーザ11、Gレーザ12、Rレーザ13の各光源からそれぞれ異なるタイミングで出射させてBDセンサ31に検出させ、その検出結果に基づいて光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度及び出射タイミングを調整するように構成してもよい。
【0135】
このように構成した場合、制御部110は、図8に示すように、レーザ光の走査範囲Zのうち有効走査範囲Zaの外側に、まず、緑色の検査用光Gを1ライン走査させた後、次に青色の検査用光Bを1ライン走査させ、その後、赤色の検査用光Rを走査させるように、Bレーザドライバ8、Gレーザドライバ9、Rレーザドライバ10へそれぞれ映像信号4を出力する。
【0136】
そして、制御部110は、BDセンサ31が3原色の各検査用光を検出して出力するBD信号7の検出タイミングと電流振幅値とに基づいて、光源ユニット部2から出力するレーザ光の強度と出射タイミングとを調整する。
【0137】
このように構成することによって、3原色のレーザ光を出射するBレーザ11、Gレーザ12、Rレーザ13の3つの光源それぞれに対して、各色毎に個別にレーザ光の強度と出射タイミングとを調整することができるので、レーザ光の強度及び出射タイミングの調整精度を一層向上させることができる。
【0138】
また、このように、BDセンサに検出させる検査用光をBレーザ11、Gレーザ12、Rレーザ13の各光源からそれぞれ異なるタイミングで出射させてBDセンサ31で検出し、その検出結果に基づいて光源ユニット部2から出射するレーザ光の強度と出射タイミングを調整する場合、1フレームの画像を表示する度に、光源ユニット部2から、3原色のうち毎回それぞれ異なる1色の検査用光を、走査範囲Zのうちの有効走査範囲Zaの外側に少なくとも1ライン以上水平方向に走査させるように光源ユニット部2から検査用光を出射させる構成としてもよい。
【0139】
このように構成した場合、制御部110は、図9(A)に示すように、1フレーム目の画像を表示する際、走査範囲Zのうちの有効走査範囲Zaの外側に、青色の検査用光Bを1ライン走査させるための映像信号をBレーザドライバ8へ出力し、この青色の検査用光BをBDセンサ31に検出させ、その検出結果に基づいてBレーザ11から出射するレーザ光の強度及び出射タイミングを調整する。
【0140】
次に、制御部110は、図9(B)に示すように、2フレーム目の画像を表示する際、走査範囲Zのうちの有効走査範囲Zaの外側に、緑色の検査用光Gを1ライン走査させるための映像信号をGレーザドライバ9へ出力し、この緑色の検査用光GをBDセンサ31に検出させ、その検出結果に基づいてGレーザ12から出射するレーザ光の強度及び出射タイミングを調整する。
【0141】
次に、制御部110は、図9(C)に示すように、3フレーム目の画像を表示する際、走査範囲Zのうちの有効走査範囲Zaの外側に、赤色の検査用光Rを1ライン走査させるための映像信号をRレーザドライバ10へ出力し、この赤色の検査用光RをBDセンサ31に検出させ、その検出結果に基づいてRレーザ13から出射するレーザ光の強度及び出射タイミングを調整する。
【0142】
このように構成すれば、1フレームの画像を表示する間に、検査用光を出射する光源は一つで済むため、出射するレーザ光の強度及び出射タイミングの調整に要する消費電力を低減することができる。
【0143】
しかも、3フレームの画像を表示する間に、3原色のレーザ光を出射する3つの光源全てに対して、それぞれ個別に出射するレーザ光の強度及び出射タイミングを調整することができるので、出射するレーザ光の強度及び出射タイミングの調整精度を向上させることができる。
【0144】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。例えば、本発明を適用した光走査装置は、レーザプリンタ内でレーザビームを走査する光走査装置にも応用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本実施形態の光走査装置を示す説明図である。
【図2】本実施形態における映像信号供給回路を示す説明図である。
【図3】本実施形態における光検出部の配設位置を示す説明図である。
【図4】本実施形態の光検出部が出力する検出結果信号の波形を示す説明図である。
【図5】実施形態の光走査装置が有する制御部が行う処理を示す説明図である。
【図6】本実施形態の光走査装置における検査用光の走査態様を示す説明図である。
【図7】実施形態の光走査装置が有する制御部が行う処理を示す説明図である。
【図8】本実施形態の光走査装置における検査用光の走査態様を示す説明図である。
【図9】本実施形態の光走査装置における検査用光の走査態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0146】
1 光走査装置
2 光源ユニット部
19 水平走査系
21 垂直走査系
31 BDセンサ
31a 遮光マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に応じた光を出射する光出射部と、前記光出射部から出射された光を走査する光走査部とを有する光走査装置において、
前記光走査部による走査範囲のうち有効走査範囲外の位置に配置された光検出部と、
前記有効走査範囲外の位置の中で、少なくとも光検出部の周囲に備えられ、前記光検出部への光は遮蔽せず前記有効走査範囲外の光を遮蔽する遮蔽手段と、
前記光検出部で検出した光に基づいて、前記光出射部から出射する光のタイミング及び強度を調整する制御部と、
を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記光出射部は、3原色にそれぞれ対応する複数の光源を有し、前記複数の光源のうち少なくともいずれか一つの光源から一定強度の検査用光を有効走査期間外に所定のタイミングで出射し、
前記制御部は、前記光検出部で検出した前記検査用光に基づいて、少なくとも前記検査用光を出射した光源から出射する光の強度を調整することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記光出射部は、前記複数の光源からそれぞれ3原色の前記検査用光を出射し、
前記制御部は、前記光検出部で検出した前記3原色の検査用光に基づいて前記複数の光源から出射する光の強度をそれぞれ調整することを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記3原色の検査用光のうち少なくとも一色の検査用光に基づいて前記光出射部から出射する光のタイミングを調整することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記光出射部は、前記3原色の各検査用光を重ね合わせて出射し、
前記制御部は、前記光出射部から出射された重ね合わされた検査用光に基づいて前記光出射部から出射する光のタイミングを調整することを特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光検出部は、受光した前記検査用光の強度に応じた検出結果信号を出力する光電変換素子を有し、
前記制御部は、前記検出結果信号の変化タイミングに基づいて前記光出射部から出射する光のタイミングを調整し、前記検出結果信号の強度に基づいて、前記光源から出射する光の強度を調整することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記光走査部は、第一の走査方向に対して相対的に高速に光を走査する高速走査部と、前記第一の走査方向に対して交差または直交する方向である第二の走査方向に対して相対的に低速に光を走査する低速走査部とを備え、
前記制御部は、前記光検出部に検出させる検査用光を前記各光源から異なるタイミングで出射させて、前記各検査用光を前記有効走査範囲外で前記第一の走査方向に1ライン走査させることを特徴とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記光走査部は、第一の走査方向に対して相対的に高速に光を走査する高速走査部と、前記第一の走査方向に対して交差または直交する方向である第二の走査方向に対して相対的に低速に光を走査する低速走査部とを備え、
前記制御部は、前記検査用光が前記有効走査範囲外で前記第一の走査方向に複数ライン連続して走査されるように前記光出射部から前記検査用光を出射させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光走査装置を備え、画像信号に応じて変調した光を前記光走査装置により走査することによって、投影面上に画像を投影表示する光走査型画像表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光走査型画像表示装置を備え、画像信号に応じて変調した光を前記光走査装置により走査することによって、ユーザの少なくとも一方の網膜に画像を投影し、画像を表示する網膜走査型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−233562(P2008−233562A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73407(P2007−73407)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】