説明

光走査装置

【課題】 コストアップすることなく、レンズやミラー、音響光学変調素子(AOM)等を含む光学部品や光源が格納された筐体内を効果的にクリーニングすることが可能な光走査装置を提供する。
【解決手段】 露光ユニット40は、冷却ダクト44に隣接するように配置されており、筐体41内にLD10R・10G・10Bや、AOM12R・12G・12B等の光学部品を格納している。筐体41には、冷却ダクト44と連通する排気口42R・42G・42Bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に光源や光学部品(レンズ、ミラー、光変調素子)等を格納した光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、R(赤)・G(緑)・B(青)の3色にそれぞれ対応するレーザ光を照射する光源と、各色のレーザ光を変調するAOM等の光変調素子と、感光材の搬送方向に直交する方向にレーザ光を走査するポリゴンミラー等とを備えたレーザ発信器が、写真処理装置に搭載されて露光処理が行われている。
例えば、特許文献1には、光学部品を密閉状態で収納する筐体と、筐体内においてクリーニング用ガスを昇圧する昇圧部と、を備えたレーザ発信器について開示されている。
【0003】
ここでは、クリーニング用ガスを、所定の圧力、温度になるように制御して、クリーニング用ガスの超流動を発生させることで、光学部品のクリーニングを行うことができる。
【特許文献1】特開2003−298154号公報(平成15年10月17日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のレーザ発信器では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたレーザ発信器では、密閉空間である筐体内へ供給されるクリーニング用ガスを所定の圧力、温度になるように制御する制御部や昇圧部等が必要になるため、筐体内のクリーニングを行うために必要な部品が多く、コストアップの要因となる。
【0005】
本発明の課題は、コストアップすることなく、レンズやミラー、光変調素子等の光学部品や光源が格納された筐体内を効果的にクリーニングすることが可能な光走査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る光走査装置は、光を照射する光源部と、光学部品と、筐体と、送風ダクトと、第1開口部とを備えている。光学部品は、光源部から照射される光を反射、増幅する。筐体は、光源部と光学部品とを収納する。送風ダクトは、光源部および光学部品を冷却するために筐体の近傍に設けられている。第1開口部は、筐体に形成されており、送風ダクトと連通している。
【0007】
ここでは、従来は密閉空間であった筐体内から塵等の浮遊物質等を含む汚れた空気を排気するための排気口として、送風ダクトに連通する第1開口部を筐体の一部に形成している。
通常、レーザユニット(光走査装置)では、ユニットの筐体内は、外部から塵や埃等が混入しないように密閉空間とされている。しかし、ユニット内において塵等が発生した場合には、これを外部へ排出することができないために、塵等が光源部や光学部品に付着してレーザ光の透過率が低下したり乱反射が発生したりする等、適正なレーザを照射することができなくなるおそれがある。さらに、筐体内においては、部品の経時変化によって有機物の揮発成分が発生する場合があり、この揮発成分も塵等と同様に不具合の発生要因となるおそれがある。このような有機物の揮発成分や塵等の浮遊物質がユニット内部において発生しないようにすればよいが、ユニット内から完全に排除することは非常に困難である。
【0008】
そこで、本発明の光走査装置では、光源部と光学部品とを収納する筐体内を密閉空間とするのではなく、筐体の内部で発生した塵等を外部へ排出するための第1開口部を筐体の一部に形成している。そして、この第1開口部は、光源部、光学部品を冷却するために、例えば、筐体に隣接するように配置された送風ダクトに連通している。
これにより、送風ダクトにおける空気の流れによって筐体内を負圧状態とし、筐体内から外部(送風ダクト)への空気の流れを形成することができる。よって、筐体内に存在する塵等を効率よく外部へと排出することができる。この結果、塵等が光源部や光学部品等に付着して、レーザ光の透過率が低下したり乱反射が発生したりする等の不具合の発生を回避することができる。さらに、筐体内を負圧状態とする機構として、従来から備えている光源等を冷却するための送風ダクトを用いているため、新たな機構を追加してコストアップすることなく、筐体内のクリーニングを行うことができる。
【0009】
第2の発明に係る光走査装置は、第1の発明に係る光走査装置であって、光学部品は、少なくともレンズ、ミラー、光変調素子を有している。
ここでは、光学部品として、レンズ、ミラーおよびAOM等の光変調素子を含んでいる。
例えば、このようなレンズやミラー、AOM等の光変調素子に塵等が付着した場合には、光の透過率が低下したり、光が屈折して乱反射したりして、適正な光走査を行うことができなくなるおそれがある。
【0010】
本発明の光走査装置では、このように塵等が付着すると不具合の発生するおそれがある光学部品を筐体内に格納している場合でも、筐体内から外部への空気の流れにのせて塵等を筐体内から排除できる。このため、光の透過率低下等の不具合の発生を回避して、適正な光走査を行うことができる。
【0011】
第3の発明に係る光走査装置は、第1または第2の発明に係る光走査装置であって、筐体内への異物の侵入を禁止するために、第1開口部に取り付けられるフィルタをさらに備えている。
ここでは、第1開口部の開口を覆うようにフィルタを取り付けている。
ここで、第1開口部では、装置の運転時には送風ダクトが作動して送風ダクト内に空気の流れが発生しているため、筐体内が負圧状態となり、筐体内から外部への空気の流れが形成される。このため、通常の運転時には、空気の流れに逆らって第1開口部から異物が侵入することは考えにくい。しかし、運転停止時には、当然に送風ダクトにおける空気の流れも消滅するため、筐体の外部から第1開口部を介して異物が侵入するおそれがある。
【0012】
そこで、本発明の光走査装置では、フィルタを第1開口部に取り付けている。これにより、運転時には筐体内から外部への空気の流れを妨げることなく、運転停止時に第1開口部を介して異物が侵入することを防止することができる。よって、より確実に筐体の内部を清潔に保つことができる。
【0013】
第4の発明に係る光走査装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る光走査装置であって、筐体における第1開口部とは異なる位置に形成された第2開口部をさらに備えている。
ここでは、例えば、筐体における第1開口部の形成位置と対向する位置に、第2開口部を形成する。
これにより、送風ダクトにおける空気の流れによって負圧状態となった筐体内に第2開口部から空気を供給することができるため、第1開口部から流れ出る空気の流れをより強く長時間に渡って継続することができる。この結果、より効果的に筐体内のクリーニングを行って、光走査時における不具合の発生を回避することができる。
【0014】
第5の発明に係る光走査装置は、第4の発明に係る光走査装置であって、筐体内への異物の侵入を禁止するために、第2開口部に取り付けられるフィルタをさらに備えている。
ここでは、第2開口部(吸気口)に筐体内への異物侵入防止用のフィルタを取り付ける。
これにより、吸気口としての第2開口部から空気が流入する場合でも、その空気とともに埃や塵等が筐体内へ侵入することを防止することができる。この結果、吸気口として機能する第2開口部を設けた場合でも、筐体内を清潔に保つことで、光走査時における不具合の発生を回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る光走査装置によれば、塵等が光源部や光学部品等に付着して、レーザ光の透過率が低下したり乱反射が発生したりする等の不具合の発生を回避するとともに、新たな機構を追加してコストアップすることなく、筐体内のクリーニングを行うことができる。
第2の発明に係る光走査装置によれば、筐体内から外部への空気の流れにのせて塵等を筐体内から排除することで、光の透過率低下等の不具合の発生を回避して、適正な光走査を行うことができる。
【0016】
第3の発明に係る光走査装置によれば、運転時には筐体内から外部への空気の流れを妨げることなく、運転停止時に第1開口部を介して異物が侵入することを防止して、より確実に筐体の内部を清潔に保つことができる。
第4の発明に係る光走査装置によれば、第1開口部から流れ出る空気の流れをより強く長時間に渡って継続させて、より効果的に筐体内のクリーニングを行って、光走査時における不具合の発生を回避することができる。
【0017】
第5の発明に係る光走査装置によれば、吸気口として機能する第2開口部を設けた場合でも、筐体内を清潔に保つことで、光走査時における不具合の発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る露光部(光走査装置)を搭載した写真処理装置について、図1〜図6を用いて説明すれば以下の通りである。
[写真処理装置50全体の構成]
本実施形態に係る写真処理装置は、原画像の画像データに基づいて、感光材料に対して焼き付け,現像および乾燥処理を施すことにより、原画像を感光材料にプリントするデジタル写真プリンタである。
【0019】
本実施形態の写真処理装置50は、図1に示すように、焼付部1、印画紙格納部2、現像部3、乾燥部4およびPC(Personal Computer)5を備えている。
印画紙格納部2は、焼付部1に供給する感光材料としての印画紙P(図2参照)を格納するものであり、例えばロール状の印画紙Pを格納するための2つのペーパーマガジン2a・2bを焼付部1の上部に備えている。
【0020】
これらペーパーマガジン2a・2bには、それぞれ異なるサイズ(幅)の印画紙Pが格納されている。
そして、出力画像のサイズに応じた印画紙Pがペーパーマガジン2a(または2b)から焼付部1に供給される。なお、印画紙Pの焼付部1への搬送経路の途中にカッターを設け、焼付部1にシート状の印画紙Pを供給してもよい。
【0021】
焼付部1は、図2に示すように、露光部6(露光装置)と、搬送ローラR1〜R5とを備えている。
露光部6は、画像データに基づいてレーザ光を変調し、レーザ光の走査方向(以下、主走査方向と記載する)に対してほぼ垂直な方向(以下、副走査方向)に印画紙Pを搬送しながら当該印画紙Pに対して露光処理を行う。レーザ光を変調するための画像データは、例えば、写真フィルムを読み取るスキャナやデジタルカメラ等によって得られる。なお、露光部6の構成については後段にて詳述する。
【0022】
搬送ローラR1〜R5は、印画紙格納部2から供給された印画紙Pを、露光部6を経由して現像部3に送り込む。例えば、ペーパーマガジン2aに収納されている印画紙Pは、搬送ローラR1・R2・R3・R4によって順に搬送され、ペーパーマガジン2bに収納されている印画紙Pは、搬送ローラR5・R2・R3・R4によって順に搬送される。
現像部3は、焼付部1にて焼き付け処理の施された印画紙Pを各種の現像処理液に浸しながら搬送することによって、印画紙Pに焼き付けられた画像を現像する。
【0023】
乾燥部4は、現像部3にて現像された印画紙Pを、例えば熱風の吹き付けにより乾燥させる。
PC5は、原画像の画像データを保存する機能や、画像データに対してデータ処理を施す機能等を有している。また、PC5は、本写真処理装置全体のマンマシンインターフェイスとして機能し、PC5を介して、例えば実際のプリント条件を入力したり、本写真処理装置の設定の入力/確認等を行ったりすることが可能である。
【0024】
また、本写真処理装置は、上記以外にも、写真処理装置50全体の動作を制御する複数のコントロール用のCPU(図示せず)を備えている。
本実施形態に係る写真処理装置では、上記CPUでの制御によって、印画紙Pの露光、現像処理、乾燥処理を一元管理の下に連続して行う。よって、使用者に操作上の負担をかけることなしに、多量の写真を連続的にプリントすることが可能になる。
【0025】
[露光部6の基本構成]
ここでは、まず、本発明の前提となる露光部6の基本構成について説明する。
露光部6は、図3に示すように、光源部7、走査部8、搬送部9およびデータ供給部26(図4参照)を備えており、露光部6全体の動作が全体制御部51(図4参照)によって制御されている。
【0026】
以下で、各構成について詳しく説明する。
(光源部7の構成)
光源部7は、赤(Red)・緑(Green)・青(Blue)のそれぞれの色のレーザ光を走査部8に供給する光源部7R・7G・7Bを備えている。
光源部7Rは、赤色LD(Laser Diode)10R、レンズ群(光学部品)11R、AOM(Acousto-Optic Modulator;音響光学変調素子)(光学部品)12R、調光部(光学部品)13R、ミラー(光学部品)14RおよびAOMドライバ(変調回路)15Rを備えている。
【0027】
レンズ群11R、AOM12Rおよび調光部13Rは、赤色LD10Rからミラー14Rに到る光軸上にそれぞれこの順で配置されている。
赤色LD10Rは、赤色成分の波長のレーザ光を発する半導体レーザである。
また、レンズ群11Rは、赤色LD10Rから出射した赤色レーザ光を整形し、次のAOM12Rの光入射口に導く。
【0028】
AOM12Rは、音波により透明媒質中に作り出された屈折率分布が位相回折格子として働くことによる回折現象、いわゆる音響光学回折を利用した光変調器であり、印加する超音波の強度を変えることによって、回折された光の強度を変調する。また、このAOM12Rには、AOMドライバ15Rが接続されている。
AOMドライバ15Rは、後述するピクセルクロックに同期して高周波信号をAOM12Rに供給する。上記高周波信号は、印画紙Pの主走査方向の各ドットに対応する画像データに応じて振幅が変調されたものである。したがって、AOM12Rに対して、AOMドライバ15Rから高周波信号が入力されると、音響光学媒質内に上記高周波信号に応じた超音波が伝搬される。
【0029】
このような音響光学媒質内をレーザ光が透過すると、音響光学効果が作用することによって回折が生じ、高周波信号の振幅に応じた強度のレーザ光がAOM12Rから回折光として出射される。この結果、AOM12Rからは、印画紙Pの各画素ごとに画像データに応じた光量のレーザ光が出射されることになる。
調光部13Rは、AOM12Rを出射した画像データに応じて変調されたレーザ光を調光する(光量の微調整を行う)ものであって、例えばNDフィルタや、大きさの異なる複数の開口部が設けられた回転板などによって構成される。
【0030】
半導体レーザや固体レーザなどの発光素子は、安定した状態で発光を行うことのできる光量の範囲が決まっているために、この調光部13Rによる調光によって、印画紙の発色特性に応じて広いダイナミックレンジとなるような光量範囲で露光を行うことができる。
ミラー14Rは、調光部13Rを出射したレーザ光を走査部8が配置されている方向に反射させる。このミラー14Rとしては、入射した光のうち、赤色成分の光を反射させるミラーであればどのようなものを用いてもよい。
【0031】
本実施形態では、赤色成分の波長のみからなる赤色レーザ光がミラー14Rに入射するので、ミラー14Rとして、入射した光を全反射させるミラーを用いている。
一方、光源部7Gは、緑色SHG(Second Harmonic Generation)レーザユニット10G、AOM12G、調光部13G、ダイクロイックミラー14GおよびAOMドライバ15Gを備えている。
【0032】
AOM12Gおよび調光部13Gは、緑色SHGレーザユニット10Gからダイクロイックミラー14Gに到る光軸上にそれぞれこの順で配置されている。
緑色SHGレーザユニット10Gは、緑色成分の波長のレーザ光を出射する光源として機能する。この緑色SHGレーザユニット10Gの内部には、図示はしないが、YAGレーザなどの固体レーザ、および固体レーザから出射されたレーザ光から第2次高調波を取り出す第2次高調波生成部などから構成される波長可変部などが設けられている。例えば、YAGレーザから1064nmの波長のレーザ光が出射される場合、第2次高調波生成部において532nmの波長(緑色成分)のレーザ光が生成され、この第2次高調波成分のレーザ光が出射される。なお、本実施形態では、基本のレーザ光を出射する手段として固体レーザを用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、LDを用いることも可能である。
【0033】
また、緑色SHGレーザユニット10Gの内部には、光源部7Rが備えるレンズ群11Rと同等の機能のものが設けられている。
AOM12Gおよび調光部13Gは、光源部7Rにおいて説明したAOM12Rおよび調光部13Rと同様の構成を有している。すなわち、AOM12Gは、後述するピクセルクロックに同期して入力される画像データに応じて振幅の変調された高周波信号をAOM12Gに供給するAOMドライバ15Gと接続されている。そして、AOM12Gは、緑色SHGレーザユニット10Gから出射されたレーザ光を、AOMドライバ15Gから供給される上記高周波信号に応じて変調し、印画紙Pの各画素ごとに画像データに応じた光量で出射させる。
【0034】
調光部13Gは、AOM12Gから出射されたレーザ光の光量の微調整を行う。
ダイクロイックミラー14Gは、調光部13Gを出射した緑色成分のレーザ光を走査部8が配置されている方向に反射させる。このダイクロイックミラー14Gは、緑色成分の波長の光のみを反射させ、それ以外の波長の光を透過させる性質を有している。また、ダイクロイックミラー14Gは、光源部7Rにおけるミラー14Rから走査部8に到る光路上に配置されており、ミラー14Rにおいて反射された赤色のレーザ光は、ダイクロイックミラー14Gを透過して走査部8に到る。
【0035】
すなわち、ダイクロイックミラー14Gから走査部8に向けて進む光は、画像データに応じて変調された赤色成分のレーザ光および緑色成分のレーザ光から構成される。
また、光源部7Bは、光源部7Gとほぼ同様の構成となっており、青色SHGレーザユニット10B、AOM12B、調光部13B、ダイクロイックミラー14BおよびAOMドライバ15Bを備えている。
【0036】
AOM12Bおよび調光部13Bは、青色SHGレーザユニット10Bからダイクロイックミラー14Bに到る光軸上にそれぞれこの順で配置されている。
青色SHGレーザユニット10Bは、青色成分の波長のレーザ光を出射する光源として機能するものであり、緑色SHGレーザユニット10Gとほぼ同様の構成となっている。
また、AOM12Bおよび調光部13Bは、光源部7R・7Gにおいて説明したAOM12R・12Gおよび調光部13R・13Gと同様の構成を有している。すなわち、AOM12Bは、後述するピクセルクロックに同期して入力される画像データに応じて振幅の変調された高周波信号をAOM12Bに供給するAOMドライバ15Bと接続されている。
【0037】
そして、AOM12Bは、青色SHGレーザユニット10Bから出射されたレーザ光を、AOMドライバ15Bから供給される上記高周波信号に応じて変調し、印画紙Pの各画素ごとに画像データに応じた光量で出射させる。
調光部13Bは、AOM12Bから出射されたレーザ光の光量の微調整を行う。
ダイクロイックミラー14Bは、調光部13Bを出射した青色成分のレーザ光を走査部8が配置されている方向に反射させる。このダイクロイックミラー14Gは、青色成分の波長の光のみを反射させ、それ以外の波長の光を透過させる性質を有している。また、ダイクロイックミラー14Bは、ミラー14Rおよびダイクロイックミラー14Gから走査部8に到る光路上に配置されており、ミラー14Rにおいて反射され、ダイクロイックミラー14Gを透過した赤色のレーザ光、およびダイクロイックミラー14Gにおいて反射された緑色のレーザ光は、ダイクロイックミラー14Bを透過して走査部8に到る。
【0038】
すなわち、ダイクロイックミラー14Bから走査部8に向けて進む光は、画像データに応じて変調された赤色成分、緑色成分、青色成分のレーザ光から構成される。
この結果、ミラー14R、ダイクロイックミラー14G・14Bは、各色のレーザ光を同軸上に集光する集光手段を構成する。
上記光源部7においては、赤色LD10R、緑色SHGレーザユニット10G、青色SHGレーザユニット10BからR・G・Bの各色のレーザ光が出射されると、各色のレーザ光は、AOM12R・12G・12Bによって、印画紙Pの主走査方向の各ドットに対応する画像データに応じて変調され、上記画像データに応じた光量となって、調光部13R・13G・13B、ミラー14Rおよびダイクロイックミラー14G・14Bを介して、以下で説明する走査部8に一体的に入射する。
【0039】
(走査部8の構成)
走査部8は、反射ミラー(光学部品)16、シリンドリカルレンズ(光学部品)17、ポリゴンミラー(光学部品)18およびfθレンズ(光学部品)20を備えた構成となっている。
反射ミラー16からポリゴンミラー18に到る光軸上にシリンドリカルレンズ17が配置されているとともに、ポリゴンミラー18から印画紙Pに到る光路上にfθレンズ20が配置されている。
【0040】
反射ミラー16は、光源部7R・7G・7Bにおけるミラー14R、ダイクロイックミラー14G・14Bにおいて反射された赤色成分、緑色成分、青色成分のレーザ光をポリゴンミラー18が配置されている方向へ反射させる。
シリンドリカルレンズ17は、反射ミラー16において反射されたレーザ光を、ポリゴンミラー18の反射面に集光させる。
【0041】
ポリゴンミラー18は、複数の反射面を側面に持つ正多角柱状の回転体であり、全体制御部51(図4参照)によって制御されるポリゴンドライバ19によって回転駆動される。そして、ポリゴンミラー18の回転速度を調整することで、印画紙Pの主走査方向の解像度(ドット数)を調整することができる。
fθレンズ20は、ポリゴンミラー18から印画紙Pに照射されるレーザ光による走査面の両端近傍での像の歪みを補正する。なお、この走査面の両端近傍での像の歪みは、ポリゴンミラー18から印画紙Pに到る光路の長さが異なることによって生じるものである。
【0042】
光源部7から出射されるR・G・Bの各色のレーザ光は、以上のような走査部8の構成により、反射ミラー16およびシリンドリカルレンズ17を介してポリゴンミラー18の1つの反射面に照射され、反射面で反射されて印画紙P方向に進行する。そして、このポリゴンミラー18からのレーザ光の反射方向が、ポリゴンミラー18の回転に応じて主走査方向に変化することにより、印画紙Pが主走査方向に走査されることになる。
【0043】
このとき、ポリゴンミラー18の回転によって1つの反射面におけるレーザ光の反射が終わると、その反射面と隣り合う反射面にレーザ光の照射が移動し、主走査方向に同じ範囲でレーザ光の反射方向が移動する。
つまり、印画紙Pにおける1つの走査ラインにおける走査の終了後、直ちに次の走査ラインの走査開始点にレーザ光が照射されることになる。
【0044】
したがって、後述する搬送部9によって印画紙Pを搬送しながら露光することにより、副走査方向に隣り合う走査ラインの各露光にタイムラグをほとんど生じさせることなく、印画紙Pを2次元的に露光することが可能となる。
以上で説明した光源部7および走査部8は、印画紙Pの主走査方向に並ぶ各ドットごとに画像データに応じた光量の光ビーム(レーザ光)を出射するとともに、上記光ビームを上記主走査方向に走査させて印画紙Pに導く光ビーム照射手段を構成している。
【0045】
ところで、上記した走査部8において、ポリゴンミラー18の反射面に面倒れ誤差(反射面の法線方向が正常な主走査面からずれる誤差)が生じていると、印画紙P上でのレーザ光の到達位置が大きく変化してしまい、焼き付け画像の画質が大きく損なわれてしまう。
そこで、本実施形態では、シリンドリカルレンズ17によって、反射ミラー16にて反射されたレーザ光を、ポリゴンミラー18の反射面上、副走査方向においてほぼ中央部に集光させるようにするとともに、ポリゴンミラー18から反射したレーザ光が、fθレンズ20を透過した後に、再び印画紙P上で集光するように、fθレンズ20および印画紙Pを配置している。
【0046】
このような構成により、ポリゴンミラー18の反射面と印画紙Pとが光学的に共役な配置となるので、面倒れによって副走査方向に光束が偏向しても、それらの光束は、fθレンズ20を介して印画紙P上の副走査方向において同じ位置に結像する。言い換えれば、ポリゴンミラー18の反射面の1点から、副走査方向の任意の方向にある程度の範囲内で光が出射しても、印画紙P上の副走査方向において同じ位置に結像する。
【0047】
したがって、上記構成によれば、ポリゴンミラー18に面倒れ誤差があっても、それを補正(面倒れ補正)することができる。
しかも、ポリゴンミラー18の各反射面同士で傾きにばらつきがあった場合でも、シリンドリカルレンズ17によって、ポリゴンミラー18の反射面上、副走査方向においてほぼ中央部にレーザ光を集光していることにより、そのばらつきの影響を最小限に抑えて、ポリゴンミラー18からの反射光をfθレンズ20に確実に入射させることができる。
【0048】
ところで、ポリゴンミラー18の一つの反射面により印画紙Pの1ラインを走査するときの走査角は、ポリゴンミラー18の面数によって決まる。つまり、ポリゴンミラー18の面数をMとすると、上記走査角は、360°/M×2で表される。
本実施形態では、M=8であるため、上記走査角は、360°/8×2=90°となっている。
【0049】
このように、ポリゴンミラー18におけるレーザ光の反射方向は、ポリゴンミラー18の回転により、fθレンズ20を介して主走査方向に90°の範囲で振られることになるが、本実施形態では、そのうち45°の範囲で振られるレーザ光を印画紙Pの露光に利用している。これは、fθレンズ20の両端付近を介して得られる光で印画紙Pを露光すると、画像に歪みが生じやすいからである。なお、上記45°の範囲は、印画紙Pの法線を軸に線対称に広がる範囲となっている。
【0050】
このように90°の範囲で振られる光のうち、実際にどれだけ印画紙Pの走査に利用するのかを示す割合を、有効走査期間率という。本実施形態では、有効走査期間率は45°/90°=1/2である。
また、走査部8は、上記の構成に加え、さらに同期センサ21Aおよびミラー21Bを備えている。
【0051】
これら同期センサ21Aおよびミラー21Bは、それぞれポリゴンミラー18から印画紙Pに到るレーザ光の主走査範囲の外側に設けられている。
ミラー21Bは、ポリゴンミラー18から露光(走査)開始点に向かう方向に見て、そのすぐ主走査方向外側となる位置に配置されている。したがって、ポリゴンミラー18における1つの反射面から反射されるレーザ光は、まずミラー21Bに当たり、その後、主走査方向の露光に供される。
【0052】
ポリゴンミラー18からのレーザ光がミラー21Bに当たると、ミラー21Bでの反射光が同期センサ21Aに入射するように、ミラー21Bの反射面の角度が設定されている。また、ポリゴンミラー18からミラー21Bを介して同期センサ21Aに到る光路の長さは、ポリゴンミラー18から印画紙P上における主走査の開始点に到る光路の長さとほぼ等しくなるように設計されている。
【0053】
上記した同期センサ21Aは、光を検出するセンサであり、ポリゴンミラー18からミラー21Bを介してレーザ光が入射すると、その照射タイミングで後述する全体制御部51を介して露光制御部30(図4参照)に信号を送信する。露光制御部30は、この同期センサ21Aからの出力を監視することによって、用いる印画紙Pの幅に応じた走査タイミングを正確に把握することが可能となる。
【0054】
(搬送部9の構成)
搬送部9は、搬送ローラ22、マイクロステップモータ23およびマイクロステップドライバ24などを備えている。
搬送ローラ22は、印画紙Pを搬送するローラであり、図3においては、ポリゴンミラー18の回転軸方向(副走査方向)に印画紙Pを搬送させる。
【0055】
マイクロステップモータ23は、搬送ローラ22を駆動するためのステッピングモータの一種であり、振動が小さい、すなわち搬送ムラが少ないという特徴を有している。これにより、回転角の制御を極めて精密に行うことが可能となり、印画紙Pの副走査方向における搬送位置の制御を緻密に行うことができる。
マイクロステップドライバ24は、印画紙Pを所定の搬送パルスで搬送するために、マイクロステップモータ23の回転を駆動制御する。全体制御部51が制御部52(図4参照)を介してこのマイクロステップドライバ24を制御し、マイクロステップモータ23の回転速度を調整することで、印画紙Pの副走査方向の搬送速度が調整され、副走査方向の解像度が調整される。
【0056】
なお、主走査方向1ラインの露光終了後、次のラインを露光するまでに印画紙Pを搬送する際の搬送パルスは、1パルスであっても複数パルスであってもよい。また、上記搬送パルスは、同期センサ21Aからの検出信号と同期していても同期していなくてもよい。つまり、印画紙Pが一定速度で副走査方向に搬送され、かつ副走査方向に所望の解像度が得られるように搬送されればよい。
【0057】
また、搬送部9以外の系(例えば、現像部3)では、インダクションモータ等の他のモータが用いられているが、印画紙Pを搬送するためのモータを全て、マイクロステップモータ23等のパルスモータで構成してもよい。
また、搬送部9は、印画紙Pの副走査方向における位置を検出するための位置検出センサ(図示せず)を備えている。
【0058】
この位置検出センサは、印画紙Pの露光位置よりも副走査方向における上流側に配置されており、印画紙Pの先端あるいは後端が通過したことを検知してその情報を全体制御部51を介して露光制御部30に供給するようになっている。
(データ供給部26の構成)
ここでは、データ供給部26の基本構成について説明する。
【0059】
データ供給部26は、図4に示すように、AOM12R・12G・12Bを駆動するためのAOMドライバ15R・15G・15Bに画像データを入力するものであり、基準クロック発生回路27R・27G・27B、データバッファ28R・28G・28B、D/Aコンバータ(D/A変換部)29R・29G・29B、露光制御部30、R成分画像データ格納部53R、G成分画像データ格納部53GおよびB成分画像データ格納部53Bを備えている。
【0060】
基準クロック発生回路27R・27G・27Bは、R・G・Bのそれぞれに対応するピクセルクロックを発生させる。ピクセルクロックとは、印画紙P上の各ドットを順次露光するためのタイミングを制御するクロックであって、その周波数は、印画紙P上の1ドット(ピクセル)を露光する時間の逆数で示される。そして、このピクセルクロックの周波数の設定によって、主走査方向に何ドット露光するかが決定される。
【0061】
データバッファ28R・28G・28Bは、R成分画像データ格納部53R、G成分画像データ格納部53GおよびB成分画像データ格納部53BからのR・G・Bの各色成分の画像データを一時的に蓄えるメモリである。そして、基準クロック発生回路27R・27G・27Bにて発生する各色のピクセルクロックに同期して、画像データを1画素分ずつD/Aコンバータ29R・29G・29Bに出力する。
【0062】
D/Aコンバータ29R・29G・29Bは、データバッファ28R・28G・28Bから入力されるデジタル画像データをそれぞれアナログデータに変換し、AOMドライバ15R・15G・15Bに出力する。
露光制御部30は、基準クロック発生回路27R・27G・27Bを制御するものであって、例えば、基準クロック発生回路27R・27G・27Bにて発生する各ピクセルクロックの周波数は、同期センサ21Aからの検出信号と同期がとれるように露光制御部30によって調整される。また、露光制御部30は、R成分画像データ格納部53R、G成分画像データ格納部53GおよびB成分画像データ格納部53Bからデータバッファ28R・28G・28Bへの各色成分の画像データの読み出しタイミング(全色同じタイミング)の制御も行う。露光制御部30を含む露光部6全体の動作は、全体制御部51によって制御される。
【0063】
本実施形態のように、R・G・Bのレーザ光を一体的に印画紙Pの所定画素に照射する場合には、fθレンズ20における屈折率がR・G・Bで互いに異なることが原因で、同じ画素に対応する各色のレーザ光の印画紙P上での照射位置が互いにずれる色ずれを考えないとすれば、R・G・Bの各ピクセルクロックの周波数を全て同じとすることにより、印画紙P上の同じ位置(所定画素)にR・G・B3色のレーザ光を当てることが可能となる。
【0064】
一方、上記の色ずれを考慮する場合には、露光制御部30が、例えば、R・G・Bの各ピクセルクロックの周波数を互いに変化させるとともに、主走査方向における走査開始タイミングを互いに異ならせることで、そのような色ずれを無くすことができる。
なお、図3に示す構成では、R・G・Bのレーザ光を一体的に印画紙Pの所定画素に照射する構成となっているが、例えば、R・G・Bのレーザ光を別々の光路でポリゴンミラー18に入射させる構成であってもよい。この場合、ポリゴンミラー18からのレーザ光の出射角度がR・G・Bで異なるので、印画紙Pにはそれぞれ異なる位置に同じタイミングでR・G・Bのレーザ光が照射される。したがって、この場合には、印画紙Pの所定の画素に対応するR・G・Bのレーザ光が異なるタイミングで上記画素に照射されるように、露光制御部30がR・G・Bの各ピクセルクロックを調整することが必要となる。
【0065】
[露光ユニット40内の構成]
本実施形態の写真処理装置50では、上述した基本構成を有する露光部6が、図5(a)および図5(b)に示すように、筐体41に格納されて露光ユニット40が構成されている。
露光ユニット40は、光源部7に含まれるLD10R等、レンズ群11R・11G・11B、AOM12R・12G・12B、調光部13R・13G・13B、ミラー14R・14G・14B等において発生する熱を、筐体41の外部へ放出するために、冷却ダクト44に隣接するように配置されている。
【0066】
筐体41は、略直方体形状の箱部材であって、後述する排気口42R・42G・42Bおよび吸気口43R・43G・43B以外の部分は、外部と連通していない密閉空間となっている。
冷却ダクト44は、図5(a)および図5(b)に示すように、LD10R・10G・10Bやレンズ群11R・11G・11B等の光学部品が配置された筐体41の領域と上面側において隣接するように配置されている。そして、冷却ダクト44を通過する空気の流れは、冷却ダクト44がその下面側において隣接するように配置された冷却ファン(送風ファン)45によって形成される。この冷却ファン45によって形成される空気の流れは、図6に示すように、冷却ダクト44から冷却ファン45を経て外部へと続いている。そして、図5(b)に示すように、LD10R・10G・10Bやレンズ群11R・11G・11B等の光学部品が配置された筐体41における領域の下方に突出する冷却フィン44aの部分を空気が通過することで、LD10R等において発生した熱を効率よく外部へと放出することができる。なお、図6においては、説明の便宜上、R(赤色)に対応するLD10R、AOM12R、排気口42Rおよび吸気口43Rだけを示しているが、実際には、G(緑色)およびB(青色)についても、各部材の位置関係については同様である。
【0067】
本実施形態の露光ユニット40では、さらに、図5(a)および図5(b)、図6に示すように、筐体41に、複数の開口部(排気口42R・42G・42Bおよび吸気口43R・43G・43B)が形成されている。
排気口42R・42G・42Bは、図5(b)および図6に示すように、筐体41における底面側、つまり上記冷却ダクト44と接する面に形成されており、冷却ダクト44に連通している。そして、排気口42RはAOM12Rの近傍に、排気口42GはAOM12Gの近傍に、排気口42BはAOM12Bの近傍にと、R・G・B3色のそれぞれのAOMに対応する位置に形成されている。このように、冷却ダクト44に連通した排気口42R等が設けられていることで、冷却ダクト44において空気の流れが生じると筐体41内は負圧状態となり、筐体41の内部から冷却ダクト44および冷却ファン45を介して空気の流れを形成することができる。この結果、LD10R等や各種光学部品(AOM12R等)に付着すると光の透過率の低下や光の乱反射等の不具合を発生させる有機ガスの成分や塵、埃等を、筐体41内から外部へと放出して、筐体41の内部をクリーニングすることができる。特に、AOM12R・12G・12Bについては、経時変化によって筐体41内から発生する有機物の揮発成分や塵等が表面に付着すると、これらによって悪影響を受け易く、良好な光変調を行うことができなくなるおそれがある。このため、本実施形態のように、特に悪影響を受け易いAOM12R・12G・12Bの近傍に排気口42R・42G・42Bを形成することで、AOM12R・12G・12Bの近傍に空気の流れを形成して、表面に付着する上記有機物の揮発成分等の量を低減することができる。
【0068】
また、通常、冷却ダクト44内に空気の流れが生じている間は、排気口42R等における空気は、筐体41の内部から外部へと流れる。このため、写真処理装置50の運転時(露光部6の動作時)においては、冷却ファン45が回転して冷却ダクト44に空気の流れが生じているはずであるから、この間の排気口42R・42G・42Bからの異物の侵入は考えにくい。しかし、一旦、写真処理装置50の運転(露光部6の動作)が停止してしまうと、冷却ダクト44内の空気の流れは徐々に弱くなっていき、所定時間経過後にはなくなってしまう。この場合、排気口42R・42G・42Bから筐体41内へは塵や埃等の異物が侵入するおそれがある。
【0069】
そこで、本実施形態では、排気口42R・42G・42Bに、塵や埃等の異物の侵入を防止するためのフィルタ46を取り付けている。これにより、写真処理装置50の運転停止中(露光部6の動作停止中)における排気口42R等からの異物の侵入を回避して、筐体41内が汚れてしまうことを防止することができる。
一方、吸気口43R・43G・43Bは、図5(b)および図6に示すように、排気口42R・42G・42Bに対向する筐体41の上面側における、AOM12R・12G・12Bの直上に形成されている。このため、冷却ダクト44において冷却ファン45による空気の流れが生じると、排気口42R・42G・42Bから外部へと流れる空気の流れが筐体41の内部でも生じて筐体41の内部は負圧状態となる。このとき、吸気口43R・43G・43Bを設けていることで、負圧状態となった筐体41内へは、吸気口43R・43G・43Bを介して外部から空気が流入する。このため、筐体41の内部から外部への空気の流れをより効果的に発生させることができる。さらに、この吸気口43R・43G・43Bを形成したことで、筐体41の外部へと流出するための空気が継続して流入するため、吸気口が全く形成されていない場合と比較して、筐体41内から外部への空気の流れの継続時間を無制限に延長することができる。さらに、吸気口43R・43G・43Bを、筐体41の底面側に形成された排気口42R・42G・42Bの対向面である上面側であって、AOM12R・12G・12Bの近傍に形成したことで、AOM12R・12G・12Bの近傍において効果的に空気の流れを発生させることができる。この結果、特に、付着物による影響を受けやすいAOM12R・12G・12Bに対して上記有機物の揮発成分や塵等が付着することをより効果的に回避することができる。
【0070】
また、吸気口43R・43G・43Bについても、排気口42R・42G・42Bと同様に、フィルタ46が取り付けられている。これにより、写真処理装置50の運転中(露光部6の動作中)において、外部から筐体41の内部へと流入する空気に混じって、塵や埃等の異物が筐体41内へ侵入することを回避することができる。このため、吸気口43R・43G・43Bを形成した場合でも、写真処理装置50の運転中(露光部6の動作中)において、外部から筐体41内へ流入する空気に混じって塵や埃等が侵入することを防止することができる。
【0071】
[露光ユニット40の特徴]
(1)
本実施形態の露光ユニット40は、図5(a)および図5(b)、図6に示すように、冷却ダクト44に隣接するように配置されており、筐体41内にLD10R・10G・10Bや、AOM12R・12G・12B等の光学部品を格納している。そして、筐体41には、冷却ダクト44と連通する排気口42R・42G・42Bが形成されている。
【0072】
一般的に、光走査装置では、このような冷却ダクトが、筐体内においてLDや光学部品等から発生する熱を外部へ放出するために設けられている。このため、冷却ファン等によって冷却ダクトにおいて空気の流れを形成することで、隣接配置された筐体内のLD等から発生する熱を効率よく外部へと逃がすことができる。
本実施形態の露光ユニット40では、このように従来から筐体41に隣接するように設けられている冷却ダクト44を利用して、筐体41内において発生する有機物の揮発成分等を外部へ排出することで、筐体41の内部をクリーニングしている。具体的には、冷却ダクト44に連通する排気口42R等を形成することで、冷却ダクト44における空気の流れによって筐体41内から空気を流出させることができる。
【0073】
これにより、筐体41の内部において発生する有機物の揮発成分等が発生した場合でも、これらを外部へ放出することでAOM12R等への付着を防止することができる。この結果、上記有機物の揮発成分等が各光学部品(AOM12R等)に付着することに起因する光の透過率低下や光の乱反射等の不具合の発生を防止して、安定して光走査を行うことができる。
【0074】
(2)
本実施形態の露光ユニット40では、光学部品として、レンズ群11R、AOM12R、調光部13Rおよびミラー14R等を備えている。
通常、レンズやミラー、AOM等の光学部品に対して有機物の揮発成分、塵や埃等が表面に付着すると、光の透過率が低下したり、光の乱反射が生じたりする不具合が発生するおそれがある。
【0075】
本実施形態の露光ユニット40では、このような光学部品を備えている場合でも、筐体41内から排気口42R・42G・42Bを介して外部へ空気の流れを形成することで、光学部品に対して有機物の揮発成分、塵や埃等が付着することを防止することができる。
(3)
本実施形態の露光ユニット40では、上述した排気口42R・42G・42Bに、それぞれ異物侵入防止用のフィルタ46を取り付けている。
【0076】
これにより、写真処理装置50の運転(露光部6の動作)が停止している間に、排気口42R・42G・42Bから筐体41内へと塵や埃等が侵入することを防止して、筐体41内を清潔な状態に保つことができる。この結果、筐体41の外部から筐体41内への異物の侵入を防止できるため、筐体41内において発生する有機物の揮発成分等だけを筐体41の外部へと排出することで、筐体41内をクリーニングすることができる。
【0077】
(4)
本実施形態の露光ユニット40では、上述した排気口42R・42G・42Bに加えて、筐体41における排気口42R・42G・42Bとは異なる位置に、吸気口43R・43G・43Bを形成している。
これにより、冷却ダクト44における空気の流れにより、排気口42R・42G・42Bから空気が流出して筐体41内が負圧状態となった場合でも、吸気口43R・43G・43Bから新たに空気を取り入れることで、長時間に渡って継続して排気口42R・42G・42Bから空気の流れを形成することができる。この結果、筐体41に対して排気口42R・42G・42Bだけを形成した場合と比較して、より効果的に筐体41内からの空気の流れを形成して、筐体41内に存在する有機物の揮発成分等を筐体41の外部へと排出することができる。
【0078】
(5)
本実施形態の露光ユニット40では、上述した吸気口43R・43G・43Bに対して、排気口42R・42G・42Bと同様に、異物侵入防止用のフィルタ46を取り付けている。
これにより、写真処理装置50の運転中(露光部6の動作中)に、吸気口43R・43G・43Bにおいて、外部から筐体41内への空気の流れが生じた場合でも、筐体41の外部から筐体41内へ塵や埃等が侵入することを防止することができる。この結果、筐体41の外部から筐体41内への異物の侵入を防止できるため、筐体41内において発生する有機物の揮発成分等だけを筐体41の外部へと排出することで、筐体41内をクリーニングすることができる。
【0079】
(6)
本実施形態の露光ユニット40では、排気口42R・42G・42Bが、AOM12R・12G・12Bの近傍に形成されている。
ここで、AOM12R・12G・12Bは、有機物の揮発成分等の付着によって特に悪影響を受けやすいことが知られている。
【0080】
本実施形態の露光ユニット40では、クリーニング対象として特に重要な光学部品としてAOM12R・12G・12Bを設定し、この近傍に排気口42R・42G・42Bを形成している。
これにより、クリーニング対象となるAOM12R・12G・12Bの近傍に空気の流れを形成して、AOM12R・12G・12Bに対して有機物の揮発成分等が付着しないようにすることができる。
【0081】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、筐体41に形成される排気口(第1開口部)42R・42G・42Bを、R・G・Bの各色に対応するAOM12R・12G・12Bの付近に配置した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】
例えば、AOM以外の光学部材や光源の近傍に排気口が形成されていてもよい。この場合でも、上記と同様に、筐体内に存在する塵や有機物の揮発成分等を効率よく筐体の外部へと排出することができるため、レーザ照射時におけるレーザ光の透過率の低下や乱反射等の不具合の発生を回避することができる。
ただし、上記実施形態のように、AOMの付近に排気口を配置することは、塵等の付着によって最も影響を受け易いAOMの近傍において空気の流れを形成し、AOMに対する塵等の付着を効果的に防止できる点でより好ましい。特に、塵等の発生源を特定できない場合には、少なくともAOM付近に排気口を形成することで、塵等がどの位置から発生してもAOMに付着することを最も効果的に防止できる。
【0083】
(B)
上記実施形態では、筐体41に対して、R・G・Bの各色にそれぞれ対応するAOM12R・12G・12Bの近傍に1つずつ合計3つの排気口42R・42G・42Bを形成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、各色に対応するAOM等に対してそれぞれ2個以上の排気口を筐体に形成してもよい。
【0084】
ただし、筐体に複数の開口部を形成した場合には、送風ダクトとの連通により負圧状態となる筐体内における空気の流れが複数形成されるため、1つ当たりの空気の流れが弱くなってしまう。このため、筐体内において形成される空気の流れを強くしたい場合には、上記実施形態のように、筐体内におけるクリーニング対象となる部品(例えば、AOM12R・12G・12B等)の近傍に排気口を1つだけ形成することがより好ましい。
【0085】
なお、排気口の配置だけでなく、排気口の大きさ等についても、上記実施形態に限定されるものではなく、筐体内において形成される空気の流れが適当な強さになるように、排気口の大きさ、数を決定すればよい。
また、排気口の数や大きさを変更する調整機構のようなものを設けてもよい。この場合には、送風ダクトを作動させて筐体内を負圧状態とし、排気口の数や大きさを変更して筐体内に発生させる空気の流れを調整しながら筐体内におけるクリーニングを行うことができる。なお、上記排気口の調整機構としては、排気口に対してスライドするように移動して排気口の数や開口面積を変更する板材等を用いることができる。
【0086】
(C)
上記実施形態では、筐体41に対して、R・G・Bの各色にそれぞれ対応するAOM12R・12G・12Bの近傍に1つずつ合計3つの吸気口43R・43G・43Bを形成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、各色に対応するAOM等に対してそれぞれ2個以上の吸気口を筐体に形成してもよい。
【0087】
ただし、上述した排気口の場合と同様に、筐体に複数の開口部を形成した場合には、送風ダクトとの連通により負圧状態となる筐体内における空気の流れが複数形成されるため、1つ当たりの空気の流れが弱くなってしまう。このため、筐体内において形成される空気の流れを強くしたい場合には、上記実施形態のように、筐体内におけるクリーニング対象となる部品(例えば、AOM12R・12G・12B等)の近傍に吸気口を1つだけ形成することがより好ましい。
【0088】
なお、吸気口の配置、吸気口の大きさ、吸気口の数や大きさを変更する調整機構については、上述した排気口の場合と同様である。
(D)
上記実施形態では、排気口42R・42G・42Bから外部へ流れ出る空気の流速が0.1m/sec以上になるように、冷却ダクト44における送風量を調整する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0089】
例えば、排気口の配置や大きさ、数によって筐体内を十分にクリーニングできる範囲の流速であれば、排気口から流出する空気の流速は、0.1m/sec未満であってもよい。
(E)
上記実施形態では、排気口42R・42G・42Bおよび吸気口43R・43G・43Bの両方に、異物侵入防止用のフィルタ46を取り付けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
例えば、吸気口の側だけにフィルタを取り付けた構成であってもよい。
この場合には、筐体内への空気の流れが形成されるために筐体内へ異物が侵入し易い吸気口側にフィルタを取り付けることで、運転時における筐体内への異物の侵入を回避することができる。
ただし、上記実施形態のように、排気口42R・42G・42B側にもフィルタ46を取り付けることは、運転停止時における筐体内への異物の侵入を回避することができるという点でより好ましい。
【0091】
(F)
上記実施形態では、各色のレーザ光を変調する光変調素子として、AOM(音響光学変調素子)を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、電気光学変調素子(EOM)や磁気光学変調素子(MOM)等の他の光変調素子を用いた場合でも、上記と同様の効果を得ることができる。
【0092】
(G)
上記実施形態では、写真処理装置50に搭載されている露光部6に対して本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、レーザ発信器等の単独の装置に対して適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の光走査装置は、コストアップすることなく、筐体内に格納された光源や光学部品等のクリーニングを行うことができるという効果を奏することから、筐体内に塵等の付着によって悪影響を受ける部品を格納した各種装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施形態に係る露光部を搭載した写真処理装置の概略的な構成を示す斜視図。
【図2】図1の写真処理装置が備えている焼付部の概略的な構成を示す図。
【図3】図1の露光部における光源部、走査部および搬送部の概略的な構成を示す図。
【図4】図1の写真処理装置が搭載している露光部の概略的な構成を示すブロック図。
【図5】(a),(b)は、図4の露光部が露光ユニット内に配置された状態を示す図。
【図6】図5の露光ユニット内における空気の流れを示す側断面図。
【符号の説明】
【0095】
1 焼付部
2 印画紙格納部
2a・2b ペーパーマガジン
3 現像部
4 乾燥部
5 PC
6 露光部(露光装置)
7 光源部
7R 光源部
8 走査部
9 搬送部
10R 赤色LD(光源、光学部品)
11R レンズ(光学部品)
12R AOM(光変調素子(音響光学変調素子)、光学部品)
13R 調光部(光学部品)
14R ミラー(光学部品)
15R AOMドライバ(変調回路)
16 反射ミラー(光学部品)
17 シリンドリカルレンズ(光学部品)
18 ポリゴンミラー(光学部品)
19 ポリゴンドライバ
20 fθレンズ(光学部品)
21A 同期センサ
21B ミラー
22 搬送ローラ
23 マイクロステップモータ
24 マイクロステップドライバ
26 データ供給部
27R 基準クロック発生回路
28R データバッファ
29R D/Aコンバータ
30 露光制御部
40 露光ユニット
41 筐体
42R 排気口(第1開口部)
43R 吸気口(第2開口部)
44 冷却ダクト(送風ダクト)
45 冷却ファン
46 フィルタ
50 写真処理装置
P 印画紙(感光材料)
R1〜R5 搬送ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する光源部と
前記光源部から照射される光を反射、増幅する光学部品と、
前記光源部と前記光学部品とを収納する筐体と、
前記光源部および前記光学部品を冷却するために前記筐体の近傍に設けられた送風ダクトと、
前記筐体に形成されており、前記送風ダクトと連通する第1開口部と、
を備えている光走査装置。
【請求項2】
前記光学部品は、少なくともレンズ、ミラー、光変調素子を有している、
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記筐体内への異物の侵入を禁止するために、前記第1開口部に取り付けられるフィルタをさらに備えている、
請求項1または2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記筐体における前記第1開口部とは異なる位置に形成された第2開口部をさらに備えている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記筐体内への異物の侵入を禁止するために、前記第2開口部に取り付けられるフィルタをさらに備えている、
請求項4に記載の光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−17624(P2007−17624A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197868(P2005−197868)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】