説明

光走査装置

【課題】ビームの一部がスリットの開口部を通過する際に、スリットの開口部近傍では、開口部によって制限されたビームがスリットによって反射し、この反射によって発生した戻り光および乱反射の中には光源へ戻るものもあり、戻り光および乱反射によって安定したビームを出射することができず、結果として感光体上に安定した静電潜像を形成することができない問題が発生する。
【解決手段】本発明は、光走査装置に使用するスリットの構造を単純にすることにより、戻り光および乱反射による影響を低減し、かつ、製造工程を簡略化できる安価な光走査装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンタ等の画像形成装置に用いられる光走査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光走査装置は、図9に示すように、ビームを出射させる発光素子を、独立して点灯および消灯の制御ができるよう電気的に駆動する回路基板に取り付けた光源1と、この光源1より出射されたビーム8を略平行にするコリメータレンズ2と、略平行となったビーム8を副走査平面内において集光させるシリンダレンズ3と、集光したビームを走査方向に偏向反射させる回転多面鏡(ポリゴンミラー)を備えた光偏向器4(多角面鏡回転制御手段)と、fθレンズ5、反射ミラ−6等で構成される走査光学系を備えている。
【0003】
光源1から出射されたビーム8は、光偏向器4のポリゴンミラーにより偏向反射され、fθレンズ5によって集光されて感光体7上に静電潜像を形成し、紙に画像の記録を行う。
【0004】
この光走査装置9には、コリメータレンズ2を通過したビーム8の余分なビームを制限し、ビームの一部だけを通過させるためのスポット径の設定を行う手段である、制限開口(以下「スリット」と呼ぶ)を設けている。従来よりこのスリット10を搭載した光走査装置は一般的なものとなっている。
【0005】
従来より用いられるスリット10としては、例えば、図7に示すように、スリットの端部がコの字形状に曲げられて、光走査装置9のハウジング11に形成した凸部を挟み込み固定する構造となったものや、図8に示すようにネジ18で固定する構造となったものが用いられている。
【特許文献1】特開平5−19187号公報
【特許文献2】特開平6−43372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビームの一部がこれらのスリット10の開口部を通過する際に、スリット10の開口部近傍では、開口部によって制限されたビーム(開口部を通過できなかったビーム)がスリット10によって反射し、戻り光および乱反射が発生する。
【0007】
この反射によって発生した戻り光および乱反射の中には光源へ戻るものもある。この場合、光源の内部では、ビームを常に安定してビームを出射する様にフィードバックしているが、前記した戻り光および乱反射が光源に入光すると、安定したビームを出射することができず、結果として感光体7上に安定した静電潜像を形成することができない問題が発生する。
【0008】
かかる問題を解決するため、つまり戻り光および乱反射によって光源が影響を受けないようにするために、従来より、スリットは開口部の位置や構造等について多くの改善がなされ、構造は複雑となった。
【0009】
スリットの構造が複雑となると、スリットのコストアップになり、ひいては光走査装置のコストアップになるという問題が生じる。
【0010】
近年、光走査装置の小型化・コストダウンの要求にともない、光学系の各部品にもコストダウンが求められ、できるだけ安価で単純な構造のスリットが望まれてきている。
【0011】
本発明は、前記した全ての問題点に鑑みてなされたものであり、スリットの構造を単純にすることにより、戻り光および乱反射による影響を低減し、かつ、製造工程を簡略化できる安価な光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ビームを出射する光源と、光源から出射されたビームを平行光にするコリメータレンズと、コリメータレンズを透過したビームの一部が通過する開口部を備えたスリットと、を有する光学系部品と、光学系部品を取り付けるためのハウジングとを備える光走査装置に関するものである。
【0013】
スリットは、弾性部材からなる平面板であり、その材質は、金属、プラスチック、ゴムであってもよい。
【0014】
そして、スリットを光走査装置に備えるハウジングには、スリットを保持できるように、ハウジングと一体的に形成された保持部材が設けられている。
【0015】
スリットを前記保持部材にて保持することで、湾曲して保持することができる。
【0016】
スリットを湾曲して保持することで、スリットの開口部近傍が曲面状態となるため、ビームの一部が開口部を通過する際に、ビームの反射によって発生した戻り光および乱反射が、光源へ戻る影響を少なくすることができる。
【0017】
スリットの両端部は、孔または切り欠きを形成する構造であることが望ましい。このような構造にすることで、スリットの両端部の弾性力が大きくなるので、スリットを光走査装置のハウジングに設ける保持部材へ保持させるのが容易となる。
【0018】
スリットには位置決め穴を形成し、前記保持部材には、前記位置決め穴を嵌め合わせて前記スリットを位置決めし保持するための位置決め突起を形成することで、高精度にスリットを固定することができる。これにより、良質な画像を形成することができる。
【0019】
スリットは、つや消し黒色を表面処理されたものが望ましい。これはスリットにビームが反射した時に発生する戻り光や乱反射を防止する作用が働き、光源へビームが戻る影響を少なくすることができる。
【0020】
保持部材は、スリットの開口部近傍を保持する中央部材と、前記スリットの両端部を保持する端部材があり、前記中央部材および端部材には、それぞれ前記スリットと触れる接触部が存在し、前記端部材の接触部は、前記中央部の接触部を基準とした場合に、光軸の向きに対し、±10mmの範囲内の位置に設けられていることが望ましい。
【0021】
以上より、このようなスリットの構造を単純にすることにより、戻り光および乱反射による影響を低減し、かつ、製造工程を簡略化できる安価な光走査装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、光走査装置に使用するスリットの構造を単純にすることにより、戻り光および乱反射による影響を低減し、かつ、製造工程を簡略化できる安価な光走査装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1〜図9を用いて、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1〜図2に本発明に係る光走査装置に使用するスリットの構造の一実施例を示す。なお、従来より一般的に使用されている光走査装置の構成については、前記した説明により省略する(図9参照)。
【0025】
図1は、本実施例1に係る光走査装置のスリットの構造を表した斜視図である。 そして、図2は、本実施例1に係る光走査装置のスリットの構造を表した平面図である。尚、説明を簡単にするために、図1はスリットをハウジングへ取り付ける前の状態を示し、図2はスリットをハウジングへ取り付けた後の状態を示す。
【0026】
図1に示すように、スリット10は弾性部材(例えば、0.1mmの板金)からなる平面板であり、ビームの一部が通過する開口部を備えている。
【0027】
そして、光源、コリメータレンズ、スリット等の光走査装置の光学系部品を取り付けるためのハウジング11には、スリット10を保持するための保持部材12が一体的に形成されている。
【0028】
この保持部材12には、スリット10の開口部近傍を保持する中央部材13と、スリット10の両端部を保持する端部材14があり、中央部材13および端部材14には、それぞれ前記スリットと触れる接触部15が存在する。
【0029】
そして端部材14の接触部は、前記中央部13の接触部を基準とした場合に、光軸の向きに対し、−2mmの位置に設けられている。
【0030】
スリット10は、端部材14である中央部材13と端部材14によって湾曲して保持されている。
【0031】
このような保持部材12により、スリット10は光軸の方向および光軸の方向の垂直な方向に対して保持部材12によって保持できる。
【0032】
従来スリット10の開口部近傍が真っ直ぐな平坦な状態の場合、ビームの一部がこれらのスリット10の開口部を通過する際に、スリット10の開口部近傍では、開口部によって制限されたビームがスリット10によって反射し、この反射によって発生した戻り光および乱反射が光源に入光すると、安定したビームを出射することができず、結果として感光体上に安定した静電潜像を形成することができない問題が発生していた。しかし本実施例に示したように、スリット10を湾曲に保持することで、スリット10の開口部近傍が曲面状態となるため、ビームの反射よる戻り光および乱反射が、光源へ直接戻ることなく拡散されるので、光源への影響を少なくすることができる。よって、良質な画像を形成することができる。
【0033】
前記のようにスリット10の構造を単純にすることにより、戻り光および乱反射による影響を低減し、かつ、製造工程を簡略化できる安価な光走査装置を提供することができる。
【実施例2】
【0034】
図3に本発明に係る他の実施例を示す。尚、実施例1に係るスリットの構造と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略し、実施例1との相違点についてのみ詳細に説明する。
【0035】
図3は、本実施例2に係るスリットの構造を表した斜視図であり、説明を簡単にするために、図3はスリットをハウジングへ取り付ける前の状態を示しており、取り付けた後の状態は図2と同様になる。実施例1との相違点は、前記スリットの両端部に、孔20が形成されている点である。
【0036】
このようなスリットを形成することで、スリットの両端部が曲げ易くなる。このため、光走査装置のハウジングに設ける保持部材12の端部材14へスリットを設置するのが容易になり、組立工数を低減することが可能であり、結果として安価な光走査装置を提供することができる。
【0037】
また、孔20は切り欠きであってもよい。
【0038】
尚、本実施例においても、実施例1の同様の効果を奏することができる。
【実施例3】
【0039】
図4〜図6に本発明に係る他の実施例を示す。尚、実施例1および実施例2に係るスリットの構造と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略し、実施例1および実施例2との相違点についてのみ詳細に説明する。
【0040】
図4は、本実施例3に係るスリットの構造を表した斜視図であり、説明を簡単にするために、図4はスリットをハウジングへ取り付ける前の状態を示しており、取り付けた後の状態は図2と同様になる。実施例1および実施例2との相違点は、スリット10には位置決め穴16が形成され、保持部材16には、スリットを位置決めして保持するための位置決め突起17が形成されている点である。
【0041】
前記のようにスリットを形成することで、ビーム形成に影響するスリットの開口部を、さらに正確な位置に保持することができるので、実施例1および実施例2より、さらに良質な画像を形成できる光走査装置を提供することができる。
【0042】
さらにスリットの両端部の弾性力が大きく(曲げ易く)なるように、孔または切り欠きを形成した図5や図6に示すようにしてもよい。
【0043】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更および付加が可能である。
【0044】
例えば、実施例記載のスリットの両端部の弾性力が大きくなるように、スリットの両端部に孔または切り欠きを形成することは自由であり、実施例に示した以外の形状を採用してもよい。
【0045】
また、実施例記載のスリットは、前記保持部材によってスリットが湾曲して保持することができると例示したが、円弧形状にして保持してもよい。
【0046】
また、実施例記載のスリットの表面は、つや消し黒色で表面処理のものが望ましい。これはスリットにビームが反射した時に発生する戻り光や乱反射を防止する作用が働き、光源へ戻る影響を少なくすることができる。
【0047】
また、実施例記載の弾性部材は、プラスチック、ゴムであってもよい。
【0048】
また、実施例記載の保持部材の中央部材は、1箇所でも複数箇所でもかまわない
【0049】
また、前記端部材の接触部は、実施例1においては、前記中央部の接触部を基準とした場合に、光軸の向きに対し、−2mmの位置に設けたものを示したが、前記端部材の接触部の位置は±10mmの範囲内であれば、実施例の同様の効果を奏することができる。
【0050】
ただし、保持するスリットの板厚の範囲内は、実施例記載の保持部材によって湾曲して保持することができない(スリットが真っ直ぐになる)ので、除外する。例えば、スリットの板厚が0.1mmで前記中央部の接触部を基準とした場合、±0.1mmの範囲内では端部材の接触部を設置してもスリットが湾曲しないので、発明の効果を奏することができないからである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係るスリットの構造を表した斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明に係るスリットの構造を表した平面図である。(実施例1)
【図3】本発明に係るスリットの構造を表した斜視図である。(実施例2)
【図4】本発明に係るスリットの構造を表した斜視図である。(実施例3)
【図5】本発明に係るスリットの構造を表した斜視図である。(実施例3)
【図6】本発明に係るスリットの構造を表した斜視図である。(実施例3)
【図7】従来のスリットの構造を表した斜視図である。
【図8】従来のスリットの構造を表した斜視図である。
【図9】従来の光走査装置の平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 光源
2 コリメータレンズ
3 シリンダレンズ
4 光偏向器(MPA)
5 fθレンズ
6 反射ミラ−
7 感光体
8 ビーム
9 光走査装置
10 スリット
11 ハウジング
12 保持部材
13 中央部材
14 端部材
15 接触部
16 位置決め穴
17 位置決め突起
18 ねじ
19 ねじ穴
20 孔(切り欠き)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームを出射する光源と、
該光源から出射されたビームを平行光にするコリメータレンズと、
該コリメータレンズを透過したビームの一部が通過する開口部を備えたスリットと、
を有する光学系部品と、
該光学系部品を保持するためのハウジングとを備えた光走査装置において、
前記スリットは、弾性部材からなる平面板であり、
該スリットを湾曲させて保持する保持部材を、前記ハウジングに一体的に形成したことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記スリットの両端部には、孔または切り欠きが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記スリットには位置決め穴が形成され、
前記保持部材には、前記位置決め穴を嵌め合わせて前記スリットを位置決めするための位置決め突起が形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記スリットの表面は、つや消し黒色で表面処理されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つの請求項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、金属、プラスチックまたはゴムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つの請求項に記載した光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−292539(P2008−292539A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135103(P2007−135103)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】