説明

光路合成装置、照明装置、投影型画像表示装置及び電子機器

【課題】小型化と光束の波面品質の向上に寄与できる光路合成装置、照明装置及び投影型画像表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも2以上の波長の異なる光源と、少なくとも2以上の光源からの光を同一の光路に合成するダイクロイックプリズムと、同一の光路に合成された光をカップリングするカップリングレンズと、を有し、ダイクロイックプリズムは、少なくとも2以上の大きさが異なるプリズムを張り合わせて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる波長の光を出射する光源からの光を同一の光路に合成する光路合成装置、複数の光源から変調されて射出された光を合成して同一方向へ照射する照明装置、該照明装置を備えたレーザー走査型プロジェクタ等の投影型画像表示装置、及び該投影型画像表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDやレーザーなどを用いた投影型画像表示装置(以下「プロジェクタ」と記述する)の開発が盛んであり、小型で携帯可能なプロジェクタとして期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているように、3原色のレーザーとMEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)ミラーを組み合わせた走査型の小型プロジェクタは構成部品が少なく、超小型化が可能な点から多くの開発が進められている。
【0004】
このような3原色のレーザーとMEMSミラーとから成る走査型プロジェクタの従来例を図11に示す。図11に示したプロジェクタでは、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)のレーザー光を放射する半導体レーザー1−R、1−G、1−Bと、半導体レーザー1−R、1−G、1−Bからのレーザー光を集光するレンズ2−R、2−G、2−Bと、それぞれ赤色光、緑色光、青色光のみを反射し、その他の光を透過させるダイクロイックミラー3−R、3−G、3−Bと、傾斜角が可変なミラーを備えたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー装置501と、MEMSミラー装置501のミラーを水平方向及び垂直方向に回動させると共に、入力ビデオ信号に応じて半導体レーザー1−R、1−G、1−Bから光強度変調されたレーザー光を放射させる制御回路502とから構成される。制御回路502は、ミラー制御手段と変調手段を有しており、これに同期してレーザー光強度を変調せしめることによって、スクリーン503上で画像を形成する。
【0005】
例えば、特許文献2に記載されているように、3色の光源、それぞれ赤、緑、青、601R、601G、601Bの光をダイクロイックプリズム602で合成し、集光レンズ603で集光する例を図12に示す。
【0006】
このような構成においては、集光レンズは1枚であるが、ダイクロイックプリズム602が同じ形の直角三角形のプリズムにより構成されている。つまり、光源とレンズの間に同一の厚みを持つプリズムが挿入されていることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている色合成の手法は、各レーザーに対して集光レンズが必要であり、部品点数が増え、また小型・軽量化を阻害する要因となるという問題があった。
【0008】
また特許文献2に記載されている方法では、光学材料は、異なる波長に対しては、異なる屈折率をもつため、この構成であると、1つの波長に対してはレンズを最適化できても、他の波長に対しては、球面収差が発生する。つまり、波長の異なる光全てに対し、収差の小さいレンズを実現することは難しいという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、小型化と光束の波面品質の向上に寄与できる光路合成装置、照明装置、投影型画像表示装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る光路合成装置は、少なくとも2以上の波長の異なる光源と、少なくとも2以上の光源からの光を同一の光路に合成するダイクロイックプリズムと、同一の光路に合成された光をカップリングするカップリングレンズと、を有し、ダイクロイックプリズムは、少なくとも2以上の大きさが異なるプリズムを張り合わせて構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、小型化と光束の波面品質の向上に寄与できる光路合成装置、照明装置、投影型画像表示装置及び電子機器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光路合成装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカップリングレンズ5の構成図である。
【図3】本実施形態のカップリングレンズの性能シミュレーション結果を示す図である。
【図4】各波長に対するカップリングレンズ5の焦点距離fとダイクロイックプリズム4の厚さの関係を示す図である。
【図5】各波長に対するカップリングレンズ5の焦点距離fとダイクロイックプリズム4の厚さの関係を示す図である。
【図6】ダイクロイックプリズムを使用して設計したカップリングレンズ5の設計例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る光路合成装置の構成図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る投影型画像表示装置の構成図である。
【図9】本実施形態に係るMEMSミラーの構成図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る電子機器を示す図である。
【図11】従来の3原色のレーザーとMEMSミラーとから成る走査型プロジェクタの構成図である。
【図12】従来の3色の光源、それぞれ赤、緑、青、601R、601G、601Bの光をダイクロイックプリズム602で合成し、集光レンズ603で集光する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施の形態について以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光路合成装置の構成図である。
【0015】
本光路合成装置は、第1の波長λ1の光を発する第1の光源1と、第2の波長λ2の光を発する第2の光源2と、第3の波長λ3の光を発する第3の光源3と、ダイクロイックプリズム4と、カップリングレンズ5と、を備える。各光源から出射した光は、ダイクロイックプリズム4で光路が合成され、カップリングレンズ5に入射し、各光束の光軸が一致した状態でカップリングレンズを出射する。
【0016】
第1の光源1としては赤色波長領域の光を発する半導体レーザ(以下「赤色LD」と呼ぶ)を、第2の光源2としては緑色波長領域の光を発する半導体レーザ(以下「緑色LD」と呼ぶ)を、第3の光源3としては青色波長領域の光を発する半導体レーザ(以下「青色LD」と呼ぶ)を用いることができる。
【0017】
赤色、緑色、青色波長領域は、それぞれおよそ、600nm〜700nm、500nm〜580nm、400nm〜480nmの波長範囲を指しており、赤色LDとしては、例えば波長λ1が640nmの光を発するLDを、緑色LDとしては例えば波長λ2が530nmの光を発するLDを、青色LDとしては例えば波長λ1が445nmの光を発するLDを用いることができる。以下では、この波長に基づいて説明する。
【0018】
図2は、本実施形態に係るカップリングレンズ5の構成図である。
【0019】
図2に示ように、カップリングレンズ5の光束出射側から光束を入射させカップリングレンズ5の性能をシミュレーションした。
【0020】
そのシミュレーション結果を図3に示す。横軸は像高(mm)で、縦軸は波面収差(λ)である。破線はダイクロイックプリズム4が、同一形状の直角プリズムで形成されている状態で設計したカップリングレンズ性能を示し、実線は本発明の大きさの異なる直角プリズムで形成されている場合のカップリングレンズ性能を示す。
【0021】
入射光束の径はどちらも2(mm)、カップリングレンズ5の焦点距離fは約5(mm)とした。
【0022】
図4及び図5は、各波長に対するカップリングレンズ5の焦点距離fとダイクロイックプリズム4の厚さの関係を示す図である。
【0023】
図4は、ダイクロイックプリズム4が、同一形状の直角プリズムで形成されている場合を示し、図5は、本発明の大きさの異なる直角プリズムで形成されている場合を示す。
【0024】
ここで、各波長の光に対するダイクロイックプリズムの厚さとは、各波長の光源の光軸の光がダイクロイックプリズムを通過する距離のことであり、図1に示したように、λ1の波長の光に対するダイクロイックプリズムの厚みは、距離AX+距離XDであり、λ2の波長の光に対するダイクロイックプリズムの厚みは、距離BX+距離XDであり、λ3の波長の光に対するダイクロイックプリズムの厚みは、距離CX+距離XDである。
【0025】
距離AX、距離BX、距離CXがそれぞれの直角プリズムの高さに相当する。
【0026】
図6は、本発明のダイクロイックプリズムを使用して設計したカップリングレンズ5の設計例である。図2に示した、5−1面、及び5−2面の面形状をそれぞれ示してある。
【0027】
なお、上記の実施形態においては直角プリズムを例にして説明したが、これに限ることはなくプリズムを張り合わせた構成のダイクロイックプリズムであれば適用可能である。
【0028】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る光路合成装置の構成図である。
【0029】
本光路合成装置は、第1の波長λ1の光を発する第1の光源1と、第2の波長λ2の光を発する第2の光源2と、第3の波長λ3の光を発する第3の光源3と、を備える。各光源から出射した光は、厚みの異なる平行平板101、102、103を通過した後、等しい大きさの直角プリズムを張り合わせた構成のダイクロイックプリズム104で光路が合成され、カップリングレンズ5に入射し、各光束の光軸が一致した状態でカップリングレンズを出射する。
【0030】
本実施形態では、等しい大きさの直角プリズムを張り合わせた構成のダイクロイックプリズムにおいて、厚みの異なる平行平板101、102、103を用いても図1に示した実施形態と同様な効果が得られる。
【0031】
なお、上記の実施形態においては直角プリズムを例にして説明したが、これに限ることはなくプリズムを張り合わせた構成のダイクロイックプリズムであれば適用可能である。
【0032】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る投影型画像表示装置の構成図である。
【0033】
本実施形態は、図1で示した光路合成装置を照明装置として適用した走査型プロジェクタ(投影型画像表示装置)の一例を示す。
【0034】
図1と同機能の部品、部位には同一番号が付してある。図8に示した走査型プロジェクタ(投影型画像表示装置)30では、図1で示した照明装置(光路合成装置)20に加え、照明装置から出射される光を2次元的に走査する走査手段50と、走査手段50と照明装置20の光源を制御する制御装置51と、をさらに備える。
【0035】
制御装置51は、走査手段50の動きと同期して所望の画像が加えられるように光源に変調を加える。走査手段50は図8において矢印52の方向に反射面を振ることができるようになっており、さらに軸53の回りに矢印54の方向にも反射面を振ることができる。
【0036】
これによって、スクリーン55上には2次元的な投影像が形成されることとなる。
【0037】
走査手段50としては、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、半導体プロセス技術を用いて製造されるMEMSミラーなどを用いることができる。特にMEMSミラーは非常に小型で低消費電力であるため、小型プロジェクタに適用するには最も好適である。
【0038】
なお、図8では1枚で2軸可動なものを示したが、1軸に可動なミラーを2つ用いても良い。
【0039】
図9は、本実施形態に係るMEMSミラーの構成図である。
【0040】
本実施形態の走査手段50として用いることが可能なMEMSミラー90は、反射面を持つ微小ミラー91がトーションバー92、93で支持された構造を有する。微小ミラー91は、トーションバー92が捻れることで軸94を略中心とした往復運動を行う。また、トーションバー93が捻れることで軸95を略中心とした往復運動を行う。この両軸94、95を略中心とする往復運動によって、微小ミラー91の偏向面の法線方向が2次元的に変化する。
【0041】
このため、微小ミラー91に入射するビームの反射方向が変化し、これにより、ビームを2次元方向に走査することができる。
【0042】
また光源部の小型化、微小ミラーによって、本実施形態の構成で実現される投影型画像表示装置30は超小型化が可能である。
【0043】
図10は、本発明の第4の実施形態に係る電子機器を示す図である。
【0044】
第3の実施携帯で示した投影型画像表示装置を、電子機器に内蔵した一例を示す。
【0045】
図10は、携帯電話70に超小型投影型画像表示装置71を内蔵した例である。携帯電話70に超小型投影型画像表示装置71を内蔵し、スクリーン73上に照明光72を2次元的に走査し画像を形成する。スクリーン73は特別なものでなく、例えば机や壁などで良い。
【0046】
なお本実施形態では、携帯電話に内蔵した例を示したが、これに限ることではなく、例えばデジタルカメラ、ノートパソコン、PDA等でもよい。
【0047】
上記の実施形態によれば、波長の異なる3つの光源からの光を、各波長ごとに厚みの異なる単一のダイクロイックプリズムで光路合成するので、合成した光を単一のカップリングレンズでカップリングすることが可能となり、小型で、収差の小さい照明装置を構成することが可能となる。
【0048】
また上記の実施形態によれば、波長の異なる3つの光源からの光を、各波長ごとに厚みの異なる単一のダイクロイックプリズムで光路合成するので、合成した光を単一のカップリングレンズでカップリングすることが可能となり、小型で、収差の小さい照明装置を構成することが可能となる。
【0049】
また上記の実施形態によれば、上記の照明装置と、該照明装置から出射される光を2次元に走査可能な手段と、波長の異なる3つの光源の出力を前記操作手段の動きに同期して制御する制御手段を有しているので、小型で、投影面上のスポットの収差の小さい投影型画像表示装置を実現できる。
【0050】
また上記の実施形態によれば、投影型画像表示装置を電子機器に内蔵したので、電子機器の画像、映像データをその場で、スクリーンに投影でき、複数人の間で、情報の共有が容易に行える。
【0051】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0052】
本発明に係る光路合成装置の前記プリズムは、波長の長い光が透過するものほど該プリズムの高さが高いことを特徴とする。
【0053】
本発明に係る照明装置は、上記に記載の光路合成装置を備えることを特徴とする。
【0054】
本発明に係る上記に記載の照明装置を備えた投影型画像表示装置は、前記照明装置の前記カップリングレンズから出射する光を2次元に走査可能な走査手段と、前記少なくとも2以上の波長の異なる光源からの出力を前記操作手段の動きに同期して制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0055】
本発明に係る電子機器は、上記に記載の投影型画像表示装置を備えたことを特徴とする。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、光路合成装置、照明装置、画像表示装置及びデジタルカメラ、ノートパソコン、PDA等の電子機器などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 第1の光源
2 第2の光源
3 第3の光源
4 ダイクロイックプリズム
5 カップリングレンズ
5−1、5−2 レンズ面
6、7、8、9 レンズ
10 平行平板
20 照明装置(光路合成装置)
30 走査型プロジェクタ(投影型画像表示装置)
50 走査手段
51 制御装置
52、54 矢印
53 軸
55 スクリーン
70 携帯電話
71 超小型投影型画像表示装置
72 照明光
73 スクリーン
90 MEMSミラー
91 微小ミラー
92、93 トーションバー
94、95 軸
101、102、103、104 平行平板
502 制御回路
503 スクリーン
601R、601G、601B 光
602 ダイクロイックプリズム
603 集光レンズ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特許第4031481号公報
【特許文献2】特開2001−154607号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2以上の波長の異なる光源と、
前記少なくとも2以上の光源からの光を同一の光路に合成するダイクロイックプリズムと、
前記同一の光路に合成された光をカップリングするカップリングレンズと、
を有し、
前記ダイクロイックプリズムは、少なくとも2以上の大きさが異なるプリズムを張り合わせて構成されることを特徴とする光路合成装置。
【請求項2】
前記プリズムは、波長の長い光が透過するものほど該プリズムの高さが高いことを特徴とする請求項1に記載の光路合成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光路合成装置を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
前記照明装置の前記カップリングレンズから出射する光を2次元に走査可能な走査手段と、
前記少なくとも2以上の波長の異なる光源からの出力を前記操作手段の動きに同期して制御する制御手段と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の照明装置を備えた投影型画像表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の投影型画像表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−227203(P2011−227203A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95325(P2010−95325)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】