説明

光輝性顔料分散体及び紫外線硬化型インキ組成物

【課題】光輝性顔料を含む高膜厚な印刷を行う際に、優れた表面配向性(リーフィング効果)を付与することができる紫外線硬化型インキ組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、光輝性顔料と分散剤と水を少なくとも含む光輝性顔料分散体であって、分散剤は、親水性を有する溶媒親和部と、光輝性顔料の表面に吸着する顔料吸着部から成る水系分散剤を用いた光輝性顔料分散体を作製し、この光輝性顔料分散体を紫外線硬化型インキとして用いることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性材料を含む高膜厚なインキを印刷する際に、優れた配向性(リーフィング効果)を付与することができる光輝性顔料分散体及び紫外線硬化型インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パール光沢を有する薄片状顔料(以下「薄片状パール顔料」という。)とは、薄片状の基材に屈折率の大きな透明及び/又は半透明性金属酸化物、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム等を表面被覆し、入射光の薄片状基材と被覆層との界面からの反射と被覆層表面からの反射との双方からの反射光の相互干渉により真珠光沢を発する顔料である。
【0003】
薄片状パール顔料は、無機物質で構成されているため、比較的極性が高く、親水性が高い。そのため親油性が低く、有機系媒体での親和性が低い。したがって、分散性が悪く、そのまま使用することができないという問題がある。それゆえに、従来、それぞれの用途によって耐候性や耐黄変性等の効果の向上を指向して各種の表面処理を施した薄片状パール顔料が提案されている。
【0004】
その一例として、パール光沢を有する薄片状パール顔料の表面に金属酸化物水和物及びパーフルオロアルキル基を有するリン酸エステル又はその塩から選択された1種又は2種以上のリン酸エステルが順次被覆されていることを特徴とする高配向性薄片状顔料がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、その一例として、水媒質中で、次亜リン酸塩の存在の下に、ジルコニウム塩又はジルコニル塩を加水分解させ、基材としての金属酸化物被覆雲母フレーク表面に、含水酸化ジルコニウムを生成、付着せしめてなる耐水性真珠光沢顔料がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−106937号公報
【特許文献2】特開昭63−130673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、(1)薄片状パール顔料の水懸濁液を調整し、その懸濁液のpHを後に被覆される金属塩に適した値に調整する工程、(2)当該懸濁液に別にあらかじめ調整した当該金属塩溶液を、アルカリ水溶液を用いその懸濁液のpHを一定に保ちながら攪拌しつつ添加する工程、(3)所定量の添加を終了した後、当該pHを、酸性溶液を用いて加水分解中和点より0.2〜3.0程度の範囲内で下げる工程、(4)含フッ素リン酸エステル化合物を所定のpHと濃度に調整する工程、(5)pH調整後の薄片状パール顔料の懸濁液に添加する工程。(6)処理安定化のため懸濁液のpHをさらに下げる工程、(7)懸濁液中の固形成分をろ別し、ろ別した固形成分に付着している水可溶性物質を水洗して除去する工程、(8)得られた処理顔料を乾燥処理する工程等、複数の工程から成り、手間、作業性及び安全性に問題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載の技術は、印刷後における耐光性やインキとしてのリーフィング効果は良好であるが、表面処理剤として使用されるパーフルオロアルキルリン酸化剤が高価であるため、コストがかかるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2の記載の技術は、耐水性を向上させるための処理であり、インキとしてのリーフィング効果が劣るという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光輝性顔料と分散剤と水を少なくとも含む光輝性顔料分散体であって、分散剤は、親水性を有する溶媒親和部と、光輝性顔料の表面に吸着する顔料吸着部から成る水系分散剤であることを特徴とする光輝性顔料分散体である。
【0011】
本発明は、水が、23から42重量%、分散剤が、4から35重量%、光輝性顔料が、23から55重量%であることを特徴とする光輝性顔料分散体である。
【0012】
本発明は、光輝性顔料が、虹彩色パール顔料、鱗片状顔料、鱗片状マイカ顔料、鱗片状金属顔料、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料、ネマティック液晶顔料、スメクティック液晶顔料を少なくとも一つを含むことを特徴とする光輝性顔料分散体である。
【0013】
本発明は、溶媒親和部が、高分子量のポリカルボン酸の塩、スチレン・マレイン酸共重合物の塩、ナフタレン・スルホン酸のホルマリン縮合物、長鎖アルキル有機スルホン酸の塩、リグニンスルホン酸の塩、ポリリン酸、ポリケイ酸の塩、長鎖アルキルアミン塩、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン脂肪酸エステルを少なくともいずれか一つ含むことを特徴とする光輝性顔料分散体である。
【0014】
本発明は、顔料吸着部が、アミノ基、アミド基、ウレア基、シラノール基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基又はこれらの塩を少なくとも一つ含むことを特徴とする光輝性顔料分散体である。
【0015】
本発明は、水と水系分散剤を混合して攪拌し、水に水系分散剤を均一に分散させる水溶液調整工程と、当該水溶液に光輝性顔料を添加した混合物を攪拌する表面処理工程から成ることを特徴とする光輝性顔料分散体の作製方法である。
【0016】
本発明は、光輝性顔料分散体を紫外線硬化型ワニスに混合して成ることを特徴とする紫外線硬化型インキ組成物である。
【0017】
本発明は、光輝性顔料分散体の配合量が、20から55重量%であり、紫外線硬化ワニスが、40から75重量%であることを特徴とする紫外線硬化型インキ組成物である。
【0018】
本発明は、塗料又は印刷用インキとしての、光輝性顔料分散体の使用である。
【0019】
本発明は、偽造防止印刷物を作製するための、紫外線硬化型インキ組成物の使用である。
【発明の効果】
【0020】
本発明における光輝性顔料分散体は、水と水系分散剤を攪拌し均一な水溶液を作製する水溶液作製工程と、当該水溶液に光輝性顔料を添加した混合物を攪拌する顔料表面処理工程による単純な工程から成るため、簡単に光輝性顔料分散体を作製することができる。
【0021】
また、光輝性顔料の表面処理を、一般的な水系分散剤と水により行うことができるため、金属酸化物水和物及びパーフルオロアルキル基を有するリン酸エステル又はその塩による表面処理方法に対し、コスト的に安価である。
【0022】
また、水系分散材を使用して光輝性材料の表面を処理しているため、リーフィング効果の良好な紫外線硬化型インキ組成物を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の光輝性顔料分散体の作製方法を示す工程図。
【図2】本発明の紫外線硬化型インキ組成物の作製方法を示す工程図。
【図3】本発明の光輝性顔料分散体の配合例を示す一例図。
【図4】紫外線硬化型ワニスの配合例を示す一例図。
【図5】本発明の紫外線硬化型インキ組成物の配合例を示す一例図。
【図6】本発明の紫外線硬化型インキ組成物の配合例を示す一例図。
【図7】比較例の配合例を示す一例図。
【図8】本発明の印刷物の彩度を示すグラフ。
【図9】本発明の印刷物の彩度を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0025】
(光輝性顔料分散体の作製方法)
図1は、本発明の光輝性顔料分散体の作製方法を示す工程図である。水と水系分散剤を攪拌し、水に水系分散剤を均一に分散させた水溶液を作製する水溶液調整工程と、当該水溶液に光輝性顔料を加えて攪拌する表面処理工程から成る。
【0026】
水溶液調整工程は、水と水系分散剤とを混合攪拌して均一な水溶液を調整する工程である。光輝性顔料の均一な表面処理を行い、かつ、光輝性顔料の飛散を抑えるための前工程として、顔料を添加する前に水と水系分散剤とを混合攪拌する。本工程により、水系分散剤は、分子構造中に含まれる溶媒親和部により水へ分散し、攪拌することで均一な水溶液を調整することができる。
【0027】
水は、水道水、蒸留水、イオン交換水等を使用することができ、含有不純物が顔料の分散性や、インキの紫外線硬化性等に悪影響を及さなければ特に制限はない。水の配合割合は、光輝性顔料、水系分散剤の種類等の要因によって異なるが、23から42重量%である。添加する水の量が23重量%以下では、インキ化後におけるリーフィング効果が不十分となり、良好な配向性を得ることができない。また、42重量%以上では、インキ化する際において添加する紫外線硬化型ワニス成分と水とが二層に分離し、印刷適性が劣る。
【0028】
水系分散剤は、顔料表面に吸着する顔料吸着部と、溶媒(水)に溶媒和する溶媒親和部から成る。本発明は、水系分散剤の顔料吸着部が光輝性顔料表面に吸着し、溶媒親和部に水分子を保持させることにより、紫外線硬化型インキ系でリーフィング効果を発現させるものである。水系分散剤は、顔料吸着部が光輝性顔料の表面に適した吸着性を有し、溶媒親和部が親水性であれば特に限定されず、公知の水系分散剤を使用することができる。例えば、溶媒親和部が親水性の一例としては、ポリエーテル、ポリエステルのような非イオン性のものや、アミン中和されたカルボキシル基等イオン性の官能基を有するポリマー、高分子量のポリカルボン酸の塩、スチレン・マレイン酸共重合物の塩、ナフタレン・スルホン酸のホルマリン縮合物、長鎖アルキル有機スルホン酸の塩、リグニンスルホン酸の塩、変性ポリアルコキシレート、ポリリン酸、ポリケイ酸の塩、長鎖アルキルアミン塩、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル等がある。
【0029】
水系分散剤の顔料吸着部には、アミノ基、アミド基、ウレア基、シラノール基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基等、又はこれらの塩を少なくとも一つ有していれば良く、酸塩基相互作用、水素結合作用、極性相互作用等により光輝性顔料表面に吸着する。
【0030】
水系分散剤は、上記条件を満たす場合には、1種以上使用することができる。なお、本発明に使用することができる市販品の水系分散剤としては、例えば、高分子アルコキシレートを含有するSOLSPERSE20000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE41000、SOLSPERSE43000等(日本ルーブリゾール社製)、DISPERBYK−2010、変性ポリアルコキシレートを含有するDISPERBYK−2090、ポリアミド塩とポリエステルを含有するDISPERBYK−2095、酸性エステルと相溶化剤から成るDISPERBYK−2096(ビックケミージャパン社製)等が挙げられる。
【0031】
水系分散剤の配合割合は、光輝性顔料、水系分散剤の種類等の要因によって異なるが、4〜35重量%である。添加する水系分散剤の量が4重量%以下では、光輝性顔料の表面への水系分散剤の吸着量と、水系分散剤によって保持される水の量が不足するため、十分なリーフィング効果が得られず、光輝性顔料が凝集するためインキ化が困難となるからである。また、35重量%以上添加した場合は、それ以上リーフィング効果は向上しないからである。
【0032】
水溶液の攪拌は、プロペラ攪拌機、ヘンシェルミキサー等の公知の攪拌装置を使用することができる。攪拌羽にもよるが、プロペラ式攪拌機では、回転数100rpmで5分程度の攪拌を行うことで均一な水溶液を得ることができる。
【0033】
表面処理工程は、上記水溶液に光輝性顔料を加えて十分に攪拌し、水系分散剤の顔料吸着部を顔料表面に吸着させる工程である。本工程は、水溶液作製工程と同様の攪拌装置を用いて攪拌することができ、工程を区別したが、特に工程間で洗浄等の作業は必要ない。
【0034】
光輝性顔料の配合割合は、23〜55重量%である。23重量%以下では、インキ化後における干渉光を観察した際に、十分な彩度が得られない。55重量%以上では、配合率に見合った効果向上が得られず、彩度がそれ以上向上しないからである。また、光輝性顔料は、水や紫外線硬化型ワニスに可溶でなければ特に限定されず、パール顔料、鱗片状顔料、鱗片状マイカ、鱗片状金属顔料、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料等、公知の光輝性顔料を使用することができる。更に、光輝性顔料の粒径は、例えば、大きさが平均500μm以下、好ましくは、平均200μm以下である。なお、光輝性顔料の厚さは、平均5μm以下、好ましくは、平均1μm以下である。各上限値を超える場合は、配向性が低下するからである。
【0035】
なお、本発明に使用することができる市販品の光輝性顔料としては、例えば、雲母を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したイリオジン211、イリオジン215、イリオジン7215等のイリオジンシリーズ(メルク社製)、酸化アルミニウムを酸化チタン等の金属酸化物で被覆したシラリックT60−10、シラリックT60−20等のシラリックシリーズ(メルク社製)、酸化ケイ素と酸化チタン等の金属酸化物の多層構造であるカラーストリームT10−01、カラーストリームT10−02等のカラーストリームシリーズ(メルク社製)、ガラスフレークを金属又は金属酸化物で被覆したメタシャイン1020RR、メタシャイン1040RR等(日本板硝子社製)、コレステリック液晶ポリマーであるヘリコーンHC(LCTテクノロジー社製)等が挙げられる。
【0036】
攪拌は、水溶液調整工程同様に、公知の攪拌機を使用することができる。攪拌羽にもよるが、プロペラ式攪拌機では、回転数100rpmで30分程度の攪拌を行うことで均一な混合を行うことによって、光輝性顔料分散体を得ることができる。
【0037】
なお、本発明の光輝性顔料分散体は、光輝性顔料のリーフィング効果(配向性)が良好であり、安価に製造することができるため、塗料又はインキの顔料として使用することができる。
【0038】
(紫外線硬化型インキ組成物の作製方法)
本発明の紫外線硬化型インキ組成物の作製方法は、図2に示すように、水と水系分散剤の均一な水溶液を調整する水溶液調整工程と、当該水溶液に光輝性顔料を添加した混合物を攪拌する表面処理工程と、表面処理工程後に、紫外線硬化型ワニスを添加して攪拌するインキ化工程から成る。なお、水溶液調整工程と表面処理工程は、光輝性顔料分散体の作製方法と同様であるため省略し、インキ化工程についてのみ説明する。
【0039】
インキ化工程は、前述した表面処理後の光輝性顔料分散体に、別調整した紫外線硬化型ワニス又は市販の紫外線硬化型ワニスを加え十分に攪拌する工程である。本工程についても、前述した攪拌機を用いることができ、水溶液調整工程、表面処理工程につづき、洗浄等を必要とせず連続して攪拌作業を行うことができる。攪拌羽、インキ粘度等にもよるが、インキ粘度2〜3Pa・s(30℃)のインキの場合、プロペラ式攪拌機で、回転数100rpmで30分程度の攪拌を行うことで均一なインキを作製することができる。なお、必要に応じて、インキ皮膜の耐摩耗性、平滑性等を向上させるため消泡剤、ワックス等、インキ粘度を調整するため増粘剤等、その他の目的で各種添加剤を加えることができる。
【0040】
紫外線硬化型ワニスは、オリゴマーとして多官能ウレタンアクリレートや、多官能エポキシアクリレート等を1種類以上、反応性希釈剤として各種光重合性モノマーを1種類以上組み合わせた樹脂成分に、光重合開始剤を加えたものである。
【0041】
紫外線硬化型ワニス中での、光輝性顔料の分散条件の設定には、微妙なバランスが必要であり、ワニス系において適度な親水性が必要である。完全に疎水性である場合は、ワニスと光輝性顔料分散体が二層に分離して印刷適性が低下し、インキ系内で水分子の移動ができないため高配向性が得られないおそれがある。よって、これを回避するため、親水性の紫外線硬化性材料を利用し適度な親水性に調整する。
【0042】
親水性の紫外線硬化性材料としては、オリゴマーでは、分子構造中にポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート等の構造を含むオリゴマー材料が挙げられる。また、官能基としては、水酸基、カルボキシル基等を有するものを使用することもできる。モノマーでは、N−ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、アクリロイルモルフォリン等のアミド系モノマーや、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等のエチレンオキサイド変性モノマー等が挙げられる。なお、市販品の紫外線硬化型ワニスとしては、UVA9117(セイコーアドバンス社製)、TUB000メジウム(帝国インキ社製)、等を使用することができる。
【0043】
紫外線硬化型ワニスと光輝性顔料分散体の配合割合は、紫外線硬化型ワニスが40重量%から75重量%であり、光輝性顔料分散体が20重量%から55重量%である。光輝性顔料分散体が20重量%以下の場合は、十分な光輝性効果が得らない。また、光輝性顔料分散体を55重量%以上添加しても、それ以上光輝性効果が向上しないからである。
【0044】
また、本発明の紫外線硬化型インキ組成物は、各種の印刷インキ、例えば、平版印刷インキ、グラビア印刷インキ、凸版印刷インキ、スクリーン印刷インキ、フレキソ印刷インキ、凹版印刷インキ、各種の特殊印刷インキ等として広く用いることが可能である。特に、高膜厚な印刷物が得られる、フレキソ、スクリーン、凹版印刷を使用することによって、より良好なリーフィング効果を発揮することができる。
【0045】
また、本発明の紫外線硬化型インキ組成物により作製した印刷物は、光輝性顔料のリーフィング効果が良好であり、印刷物をわずかに傾ければ光輝性顔料の特有な効果である干渉光(虹彩色)が生じるため、当該インキを使用して第1の画線と第2の画線をそれぞれ異なる角度で配置して背景部と潜像部を形成し、当該印刷物を傾けることにより任意の階調の潜像画像を視認することができる印刷物(例えば、WO2003/013871号公報等)等に使用することによって、偽造防止効果の高い印刷物を提供することができる。
【実施例1】
【0046】
以下、上記の本発明の光輝性顔料分散体と紫外線硬化型インキ組成物について具体的な実施例を挙げ、詳細に説明する。なお、例中の%は、全て重量%を示す。
【0047】
水系分散剤としては、DISPERBYK−2090(ビックケミージャパン社製)、SOLSPERSE41000(日本ルーブリゾール社製)、SOLSPERSE43000(日本ルーブリゾール社製)、DISPERBYK−2091(ビックケミージャパン社製)を使用した。
【0048】
光輝性顔料としては、イリオジン211(メルク社製)、イリオジン7215WNT(メルク社製)、カラーストリームT10−02(メルク社製)、シラリックT60−21WNT(メルク社製)、ヘリコーンHC(LCTテクノロジー社製)、メタシャイン1040RR(日本板硝子社製)、イリオジン211WMT(メルク社製)を使用した。
【0049】
(光輝性顔料分散体の製造)
前述の水系分散剤と光輝性顔料と蒸留水を、図3に示す配合に従い、攪拌機を使用して光輝性顔料分散体を作製した。水系分散剤と蒸留水を混合した水溶液の調整は、攪拌機としてスターラーと棒状回転子を用い、回転数100rpmにより、5分間撹拌し調整した。水溶液に光輝性顔料を添加した混合物についてもスターラーと棒状回転子を用い10分間攪拌し光輝性顔料分散体を作製した。
【0050】
(紫外線硬化型ワニスの製造)
図4に示す配合に従い、ポリエステル系のウレタンアクリレート(UX−4101、日本化薬社製)72部をガラス容器にとり、70℃のオーブン中で加熱溶解した。加熱溶解したUX−4101中にN−ビニルホルムアミド(ビームセット−770、荒川化学工業社製)を当該混合物に18部加え、プロペラ式攪拌機にて温度70℃、100rpmで30分間加熱攪拌し2成分を溶解させた。当該混合物に光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン社製)9部を加え、さらに温度70℃、100rpmで10分間攪拌を行った。加熱を止めた後、消泡剤(DKQ1−1183、東レダウコーニング社製)1部を加え、室温、100rpmで30分間攪拌して、紫外線硬化型ワニスを作製した。
【0051】
(紫外線硬化型インキ組成物の製造)
上記サンプルと上記紫外線硬化型ワニスを図5と図6に示す配合量に従い、攪拌機を使用し、室温、回転数100rpmにより、30分間撹拌し、インキ1からインキ14の紫外線硬化型インキ組成物を作製した。なお、比較のため、表面処理がされていない光輝性顔料であるイリオジン211、耐水性処理されたイリオジン211WNTを、図7に示す配合量に従い、比較例インキ1、2として同様に作製した。
【0052】
次に、代表例として、図5に示す配合量に従って作製したインキ1からインキ4、図6の配合量に従って作製したインキ8とインキ11の紫外線硬化型インキ組成物をスクリーン印刷により基材(上質紙、コート紙、PETフィルム等)に印刷を行い、印刷面積40×40mm、膜厚30μm程度の印刷物を作製した。印刷物の彩度は、変角分光測色機(GCMS−4型 村上色彩技術研究所製)を使用し、入射光を45°に固定し、受光角度0°時の彩度から80°の時の彩度を測定した。なお、比較例インキ1、2においても、同様な方法により印刷物を作製し測定を行った。
【0053】
測定の結果、図8のグラフに示すように、比較例1は、光輝性顔料の表面が処理されていないため、干渉光である虹彩色が観察されておらず、インキ皮膜表面に光輝性顔料が配向していないことがわかる。比較例インキ2については、耐水性処理であり、干渉光である虹彩色が観察されておらず、インキ皮膜表面に光輝性顔料が配向していないことがわかる。一方、上記インキ1からインキ4の印刷物の彩度は、比較例インキ1及び比較例インキ2と比べて、受光角度45°においていずれも高い彩度が得られており、光輝性顔料がインキ皮膜表面に配向していることがわかる。また、図9に示すように、インキ8とインキ11の印刷物の彩度も同様に、比較例インキ1及び比較例インキ2と比べて受光角度45°においていずれも高い彩度が得られており、光輝性顔料がインキ皮膜表面に配向していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性顔料と分散剤と水を少なくとも含む光輝性顔料分散体であって、
前記分散剤は、親水性を有する溶媒親和部と、前記光輝性顔料の表面に吸着する顔料吸着部から成る水系分散剤であることを特徴とする光輝性顔料分散体。
【請求項2】
前記水が、23から42重量%、前記分散剤が、4から35重量%、前記光輝性顔料が、23から55重量%であることを特徴とする請求項1に記載の光輝性顔料分散体。
【請求項3】
前記光輝性顔料は、虹彩色パール顔料、鱗片状顔料、鱗片状マイカ顔料、鱗片状金属顔料、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料、ネマティック液晶顔料、スメクティック液晶顔料から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の光輝性顔料分散体。
【請求項4】
前記溶媒親和部が、高分子量のポリカルボン酸の塩、スチレン・マレイン酸共重合物の塩、ナフタレン・スルホン酸のホルマリン縮合物、長鎖アルキル有機スルホン酸の塩、リグニンスルホン酸の塩、変性ポリアルコキシレート、ポリリン酸、ポリケイ酸の塩、長鎖アルキルアミン塩、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン脂肪酸エステルから選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載光輝性顔料分散体。
【請求項5】
前記顔料吸着部が、アミノ基、アミド基、ウレア基、シラノール基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基又はこれらの塩から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載光輝性顔料分散体。
【請求項6】
水と水系分散剤を混合して攪拌し、前記水に前記水系分散剤を均一に分散させる水溶液調整工程と、
前記水溶液に光輝性顔料を添加した混合物を攪拌する表面処理工程から成ることを特徴とする光輝性顔料分散体の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の光輝性顔料分散体に紫外線硬化型ワニスを混合して成ることを特徴とする紫外線硬化型インキ組成物。
【請求項8】
前記光輝性顔料分散体の配合量が、20から55重量%であり、
前記紫外線硬化ワニスが、40から75重量%であることを特徴とする特徴とする請求項7記載の紫外線硬化型インキ組成物。
【請求項9】
塗料又は印刷用インキとしての、請求項1乃至5のいずれか1項記載の光輝性顔料分散体の使用。
【請求項10】
偽造防止印刷物を作製するための、請求項7又は請求項8記載の紫外線硬化型インキ組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−6562(P2011−6562A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150423(P2009−150423)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】