説明

光通信モジュール

【課題】絶縁耐圧を比較的高く維持しつつFGに対する放射ノイズの影響を低減できる光通信モジュールを提供する。
【解決手段】導電性のパッケージ8と、パッケージ8に接続する導電性のリードピン12aとを有するTOSA4aと、リードピン12aに接続する導電性の電極20aと、電極20a上に設けられた回路基板5と、回路基板5上に設けられており、回路基板5を挟んで電極20aに重なるように配置された導電性の電極と、パッケージ8に接続しており、TOSA4a、電極20a、回路基板5及び電極を収容する導電性のケース6とを備え、電極20a、回路基板5及び電極はコンデンサを成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、プリント基板に接続されたケーブルから発生する放射ノイズがフレームグランド(FG)に及ぼす影響を低減するための放射ノイズ低減装置が記載されている。この放射ノイズ低減装置は、プリント基板に設けられておりシールドケーブルに接続されたFG電極と、SG電極(SG:シグナルグランド)と、FG電極及びSG電極の間に設けられたコンデンサ素子とを有しており、放射ノイズにより発生しフレームグランドに流れるノイズ電流をシグナルグランドに分流する。
【特許文献1】特開2003−283177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光トランシーバモジュールのような光通信モジュールはGHzのオーダで高速に動作するので、上述のような放射ノイズがフレームグランドに及ぼす影響(ノイズ電流の発生)を低減させるには、FG電極及びSG電極の間に挿入するコンデンサの容量を数pF以上に設定するのが望ましい。また、このコンデンサは、IEC規格(IEC:International Electro-technical Commission)に規定されている500V以上のAC電圧に対する絶縁耐圧を有していなければならない。しかし、光通信モジュールにおいて用いられるチップタイプのコンデンサは上述のような容量及び絶縁耐圧を有しておらず、また、このような容量及び絶縁耐圧を有するコンデンサの開発は困難である。そこで本発明の目的は、絶縁耐圧を比較的高く維持しつつフレームグランドに対する放射ノイズの影響を低減できる光通信モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、金属製の第1のパッケージと、該第1のパッケージに収容されたレーザダイオードと、前記第1のパッケージに接続する第1のリードピンと、前記レーザダイオードのアノード端子及びカソード端子にそれぞれ接続される第2及び第3のリードピンとを有する光送信モジュールと、表面及び裏面を有しており、前記第2及び第3のリードピンが接続され、信号接地電位を有する電子回路が前記表面上に設けられた回路基板と、前記表面上に設けられており、前記第1のリードピンに接続する第1の電極と、前記裏面上に設けられており、前記回路基板を挟んで前記第1の電極に重なるように配置され前記信号接地電位に接続する第2の電極と、前記第1のパッケージに電気的に接続しており、前記光送信モジュール及び前記回路基板を収容する金属製のケースとを備え、前記第1の電極と前記第2の電極とは、前記ケース内で電気的に絶縁され、前記回路基板を介在するキャパシタンスを形成していることを特徴とする。そして、本発明は、光受信モジュールを更に含み、前記光受信モジュールは、金属製の第2のパッケージとこの金属製の第2のパッケージに収容されたフォトダイオードと、この金属製の第2のパッケージに接続した接地リードピンとを含み、この接地リードピンは、前記回路基板上の前記第2の電極に接続し、前記金属製のケースとは絶縁されている。
【0005】
このように、金属製のケースに接続された第1の電極と、回路基板と、第2の電極とがキャパシタンス(コンデンサ)を形成する。従って、レーザダイオードのバイアス電流が第2及び第3のリードピンに流れる等により発生する放射ノイズがケースに及ぼす影響の一部を、このコンデンサを介して第2の電極に負担させることが可能となる。これにより、ケース(フレームグランド)に放射ノイズが及ぼす影響を低減できる。また、第1の電極と第2の電極との間にコンデンサ素子を新たに設ける必要が無い。また、第1の電極、回路基板及び第2の電極により構成されるコンデンサは、回路基板の基体が絶縁性を有しているので、比較的大きな絶縁耐圧を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、絶縁耐圧を比較的高く維持しつつフレームグランドに対する放射ノイズの影響を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、実施形態に係る光通信モジュール2の構成を説明するための図である。光通信モジュール2は、TOSA4a(TOSA:Transmitter Optical Sub-Assembly)、ROSA4b(ROSA:Receiver Optical Sub-Assembly)、回路基板5及びケース6を備える小型光トランシーバである。TOSA4a及びROSA4bはケース6の側壁6aに固定されており、回路基板5はケース6内に収容されている。なお、ケース6は、金属材料から成りフレームグランドとなっている。回路基板5の基体は絶縁性のプリプレグから成っており、この基体上に回路パターンが設けられている。
【0008】
TOSA4aは、レーザダイオード7と、レーザダイオード7を収容するパッケージ8(第1のパッケージ)とを有する光送信モジュールである。レーザダイオード7は、アノード端子とカソード端子(図示略)とを有しており、供給されるバイアス電流に応じてレーザ光を発光する。パッケージ8は金属材料から成るが、TOSA4aが有する何れの電子素子(例えばレーザダイオード7)に対しても絶縁されている。TOSA4aは、パッケージ8の一の端部10に設けられたステム10aと、ステム10aから延びているリードピン12a〜12cとを更に有する。パッケージ8の他の端部14にはレーザダイオード7が収容されており、レーザダイオード7から発光されるレーザ光は、端部14から外部に出力される。リードピン12aは、パッケージ8に接続されているが、パッケージ8に収容されているTOSA4aの電子素子の何れに対しても絶縁されている。リードピン12bはレーザダイオード7のアノード端子に接続されており、リードピン12cはレーザダイオード7のカソード端子に接続されている。パッケージ8は、同軸型のパッケージであり、側面にフランジ16a及びフランジ16bを有する。フランジ16aとフランジ16bとの間には溝18が設けられている。TOSA4aは、ケース6の側壁6aが溝18に嵌め込まれることによって、側壁6aに固定される。このようにして、光通信モジュール2のケース6と、TOSA4aのパッケージ8とが電気的に接続される。
【0009】
ROSA4bは、フォトダイオードと、このフォトダイオードを収容する金属材料から成るパッケージ(第2のパッケージ)とを有する光受信サブアセンブリである(光受信サブアセンブリからスリーブを除いた部分は光受信モジュールに対応。)。このパッケージは樹脂材料から成るスリーブにより覆われている。このパッケージは、ROSA4bが収容する電子素子の何れに対しても絶縁されている。ROSA4bは、TOSA4aと同様に溝18aが設けられており、この溝18aにケース6の側壁6aが嵌め込まれている。これにより、ROSA4bが側壁6aに固定される。なお、ROSA4bのパッケージは、このパッケージを覆う樹脂材料から成るスリーブによって側壁6aから絶縁されている。また、ROSA4bは、複数のリードピンを有しており、各リードピンは、回路基板5の第1の面M1(表面)に設けられた金属材料から成る複数の電極や、後述の電極26(図3を参照。)等に接続されている。ROSA4bの有する複数のリードピンのうちの一のリードピン(接地リードピン)は、ROSA4bのパッケージ及び電極26に接続されている。このリードピンは、ROSA4bのパッケージに収容される電子素子や、ケース6の何れに対しても絶縁されている。
【0010】
光通信モジュール2は、金属材料から成る電極20a〜20c等の複数の電極を更に有する。電極20a〜20cは、回路基板5の第1の面M1に設けられている。リードピン12a〜12cの各々は、図2に示すように、電極20a〜20cの各々に、はんだ接合されている。図2は、電極20a〜20cの配置を示す図である。図2に示すように、電極20a〜20cは等間隔に配列されている。電極20a(第1の電極)と電極20bとの間隔は、電極20aと電極20cとの間隔L1と同様であり、250μm程度である。また、電極20a〜20cは、略同一の形状を有しており、平面形状は、何れも、幅L2が800μm程度であり、長さL3が2000μm程度である。リードピン12aに接続されている電極20aは、電極20bと電極20cとに挟まれている。電極20aは、回路基板5に設けられている何れの電子素子に対しても絶縁されている。そして、リードピン12aは、TOSA4aのパッケージ8に接続されており、パッケージ8は、光通信モジュール2のケース6に接続されている。よって、電極20aは、光通信モジュール2のケース6に電気的に接続されている。すなわち、ケース6(フレームグランド)に電気的に接続されている電極20aが回路基板5に設けられている。
【0011】
光通信モジュール2は、電子回路24を更に有している。電子回路24は、信号接地電位(シグナルグランドの電位)を有しており、電極20a〜20cが設けられている回路基板5の第1の面M1上に設けられている。電子回路24は、増幅回路やレーザダイオード7の駆動回路を有するIC等であり、電極20b及び電極20c等と電気的に接続されている。
【0012】
光通信モジュール2は、電極26(第2の電極)、基板28、グランド層30及び回路基板32を更に有しており、電極26、基板28、グランド層30及び回路基板32は、回路基板5上に積層構造を成す。図3は、図2に示すI−I線に沿ってとられた断面図であり、回路基板5上に設けられた積層構造を示す。電極26は、回路基板5の第2の面M2(裏面)上に設けられ、基板28は電極26上に設けられ、グランド層30は基板28上に設けられ、回路基板32はグランド層30上に設けられている。電極26は、回路基板5を挟んで電極20aに重なるように配置されており、電極20aと略同一の平面形状を有する。電極26は、シグナルグランドとなっている。基板28は、電極26を挟んで回路基板5に重なるように配置されており、回路基板5と略同一の平面形状を成す。基板28は、例えば、回路基板5と同様のプリプレグから成る。基板28の厚さL4は、148μm程度である。グランド層30は、金属材料から成る層であり、電極26及び基板28を挟んで回路基板5に重なるように配置されており、回路基板5と略同一の平面形状を有する。回路基板32は、例えば、回路基板5と同様のプリプレグから成り、回路基板32上には、電子回路が設けられている。なお、回路基板32上に設けられた電子回路と、回路基板5上に設けられた電子回路との電気的アイソレーションは、グランド層30により確保される。
【0013】
回路基板5の基体を構成するプリプレグは、厚さ1μm当たり60V程度のAC電圧に対する絶縁耐圧を有しており、回路基板5の厚さL5は65μm程度である。よって、回路基板5は、理論上3900V程度の比較的高いAC電圧に対する絶縁耐圧を有する。また、回路基板5は、5.0程度の誘電率を有する。電極20aと電極26とはケース6内で電気的に絶縁されており、従って、電極20a、回路基板5及び電極26は、0.7pF程度の容量を有するキャパシタンスを形成する(平行平板コンデンサを成す。)。
【0014】
次に、光通信モジュール2の作用効果を説明する。光通信モジュール2は、TOSA4a及びROSA4bと回路基板5とが接続されている箇所(図1の図中符号Eに示す領域)から比較的多くの放射ノイズを発生する。特に、TOSA4aと回路基板5とが接続されている箇所から発生する放射ノイズは大きい。TOSA4aと回路基板5とが接続されている箇所には、TOSA4aのレーザダイオード7に供給する比較的大きなバイアス電流(数十mA)が流れる。このバイアス電流は信号周波数に変調されている。このように変調された電流により電磁誘導ノイズが発生する。この電磁誘導ノイズの発生により、TOSA4aと回路基板5との接続箇所から発生する放射ノイズが特に顕著となる。また、回路基板5上の配線パターンやリードピン12a〜12cはそれぞれ固有の共振周波数を有しているが、この共振周波数と上記のバイアス電流の信号周波数とが重なると、放射ノイズが更に増大する。光通信モジュール2を用いれば、このような放射ノイズがフレームグランドに及ぼす影響を低減できる。
【0015】
光通信モジュール2は、フレームグランドに接続された電極20aと、回路基板5と、シグナルグランドに接続された電極26とが数pF以下(0.7pF程度)の容量を有するキャパシタンスを形成する(平行平板コンデンサを成す。)。従って、放射ノイズがフレームグランドに及ぼす影響の一部を、このコンデンサを介してシグナルグランドに負担させることが可能となる。これにより、放射ノイズがフレームグランドに及ぼす影響を低減できる。また、フレームグランドとシグナルグランドとの間にコンデンサ素子を新たに設ける必要が無い。また、電極20a、回路基板5及び電極26により構成されるコンデンサは、3900V程度のAC電圧に対する絶縁耐圧を有するので、IEC規格による絶縁耐圧に対する規定に適合する。以上により、光通信モジュール2は、絶縁耐圧を比較的高く維持しつつフレームグランドに対する放射ノイズの影響を低減できる。
【0016】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る光通信モジュールの構成を説明するための図である。
【図2】電極の配置を示す図である。
【図3】回路基板上に設けられた積層構造を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
2…光通信モジュール、5,32…回路基板、4a…TOSA、4b…ROSA、6…ケース、6a…側壁、7…レーザダイオード、8…パッケージ、10,14…端部、10a…ステム、12a,12b,12c…リードピン、16a,16b…フランジ、18,18a…溝、20a,20b,20c,26…電極、24…電子回路、28…基板、30…グランド層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の第1のパッケージと、該第1のパッケージに収容されたレーザダイオードと、前記第1のパッケージに接続する第1のリードピンと、前記レーザダイオードのアノード端子及びカソード端子にそれぞれ接続される第2及び第3のリードピンとを有する光送信モジュールと、
表面及び裏面を有しており、前記第2及び第3のリードピンが接続され、信号接地電位を有する電子回路が前記表面上に設けられた回路基板と、
前記表面上に設けられており、前記第1のリードピンに接続する第1の電極と、
前記裏面上に設けられており、前記回路基板を挟んで前記第1の電極に重なるように配置され前記信号接地電位に接続する第2の電極と、
前記第1のパッケージに電気的に接続しており、前記光送信モジュール及び前記回路基板を収容する金属製のケースと
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極とは、前記ケース内で電気的に絶縁され、前記回路基板を介在するキャパシタンスを形成していることを特徴とする光通信モジュール。
【請求項2】
光受信モジュールを更に含み、
前記光受信モジュールは、金属製の第2のパッケージとこの金属製の第2のパッケージに収容されたフォトダイオードと、この金属製の第2のパッケージに接続した接地リードピンとを含み、この接地リードピンは、前記回路基板上の前記第2の電極に接続し、前記金属製のケースとは絶縁されている、ことを特徴とする請求項1に記載の光通信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−85183(P2008−85183A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265360(P2006−265360)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】