説明

光通信装置

【課題】 光ファイバの配線スペースに制限を加えることなく放熱可能な光通信装置を提供する。
【解決手段】 光トランシーバ1では、ファイバトレイ50が、光ファイバFの配線スペースSを画成すると共に、回路基板40のIC41と上部ハウジング12とを熱的に接続している。ファイバトレイ50は、底面12cから離間すると共に回路基板40に沿って延在する本体部50bを有し、本体部50bはIC41に対向する対向領域Aを含む。配線スペースSは本体部50bと底面12cとの間に画成される。ファイバトレイ50は、底面12cとIC41と間のスペースも配線スペースSとして提供しつつ、IC41で生じる熱を上部ハウジング12に放熱するための放熱パスを提供する。光トランシーバ1によれば、配線スペースSに制限を加えることなく、IC41で生じる熱を放熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信のための光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野の従来の光通信装置として、例えば、合波/分波器及び送/受信モジュールを備える光トランシーバが知られている(非特許文献1参照)。非特許文献1に記載の光トランシーバにおいては、10Gbit/sの光信号を4本合波/分波することにより、40Gbit/sの伝送容量を実現する。或いは、非特許文献1に記載の光トランシーバにおいては、25Gbit/sの光信号を4本合波/分波することにより、100Gbit/sの伝送容量を実現する。
【0003】
上述したような光トランシーバにおいては、合波/分波器と送/受信モジュールとを一体化して用いる場合(一体型)と、それぞれを分離して用いる場合(分離型)とが知られている。一体型においては、合波/分波器と送/受信モジュールとを光ファイバで接続する分離型に比べて、光トランシーバの筐体内の省スペース化を図ることができる。しかしながら、一体型は、送/受信モジュールの歩留まりがその個数乗で作用するので、低コスト化の観点から望ましくない。一方で、分離型は、歩留まりの悪い送/受信モジュールを容易に交換できることから、一体型に比べて低コスト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“CFP MSA Hardware Specification Revision 1.4”、[online]、[平成23年6月1日検索]、インターネット<http://www.cfp-msa.org/Documents/CFP-MSA-HW-Spec-rev1-40.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、光ファイバの光コネクタ取り付け等の端末処理加工では、加工後の光ファイバ長さに所定の加工公差が生じる。上述した分離型においては、そのような加工公差を考慮すると共に、規定の最小曲げ半径を確保しつつ複数の光ファイバを光トランシーバの筐体内に収容する必要がある。このため、筐体内において光ファイバの配線スペースを広くとる必要がある。光ファイバの配線スペースには、例えば、送/受信モジュールのための電子部品等が実装された回路基板と筐体との間のスペースを用いることが考えられる。
【0006】
一方で、送/受信モジュールのための電子部品は、比較的高温になるものを含む。このため、光トランシーバにおいては、電子部品で生じる熱を筐体に放熱するための放熱パスを設ける必要がある。そのような放熱パスとしては、例えば、電子部品の直下において筐体と電子部品とを熱的に接続したものが考えられる。そのように放熱パスを設けた場合には、放熱パスとなる電子部品の直下のスペースにおいては、光ファイバを配線することを避けることが望ましい。そのためには、電子部品の設置位置の自由度が小さいことから、光ファイバの配線スペースの方を、電子部品の直下のスペースを避けるように制限する必要がある。配線スペースを制限するためには、光ファイバの加工公差を小さくすることが考えられるが、光ファイバの加工公差を小さくすることは、光ファイバの加工歩留まりの低下を伴うため、結果的に高コスト化するといった問題が生じる。
【0007】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、光ファイバの配線スペースに制限を加えることなく放熱可能な光通信装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の光通信装置は、所定の方向に配列された第1及び第2の区画を含む内面を有するハウジングと、第1の区画に配置され、光通信のための光の出力又は入力を行う光部品と、光部品に光学的に接続された光ファイバと、第2の区画に配置され、光部品のための電子部品が実装された回路基板と、第2の区画においてハウジングの内面と回路基板との間に配置され、光ファイバの配線スペースを画成すると共に、ハウジングと電子部品とを熱的に接続するファイバトレイと、を備え、ファイバトレイは、ハウジングの内面から離間すると共に回路基板に沿って延在する本体部を有し、本体部は、電子部品に対向する対向領域を含み、配線スペースは、ハウジングの内面と本体部との間に画成される、ことを特徴とする。
【0009】
この光通信装置においては、ファイバトレイが、光ファイバの配線スペースを画成すると共に、回路基板に実装された電子部品とハウジングとを熱的に接続している。特に、ファイバトレイは、ハウジングの内面から離間すると共に回路基板に沿って延在する本体部を有し、本体部は回路基板に実装された電子部品に対向する対向領域を含む。そして、光ファイバの配線スペースは、その本体部とハウジングの内面との間に画成される。つまり、ファイバトレイは、ハウジングの内面と電子部品と間のスペースも光ファイバの配線スペースとして提供しつつ、電子部品で生じる熱をハウジングに放熱するための放熱パスを提供する。このため、この光通信装置によれば、光ファイバの配線スペースに制限を加えることなく、電子部品で生じる熱を放熱することができる。
【0010】
本発明の光通信装置においては、ファイバトレイは、放熱シートを介して電子部品に熱的に接続されているものとすることができる。この構成によれば、ファイバトレイと電子部品との間の熱抵抗を低減することができ、ひいては、より効果的に電子部品で生じた熱を放熱することができる。
【0011】
また、本発明の光通信装置においては、ファイバトレイは、本体部と、ハウジングの内面に接触すると共に内面に沿って延在するハウジング接触部と、本体部とハウジング接触部とを接続する接続部とからなり、本体部がハウジング接触部から離れるような弾性力が接続部に生じる状態において配置されているものとすることができる。この構成によれば、ファイバトレイの弾性力によって、ファイバトレイと電子部品との熱的な接続を確実に維持することができるので、ファイバトレイと電子部品との間の熱抵抗を確実に低減することができる。
【0012】
また、本発明の光通信装置においては、配線スペースには、放熱剤が充填されているものとすることができる。この構成によれば、電子部品からファイバトレイを介してハウジングに至るまでの熱抵抗をより一層低減することができる。
【0013】
さらに、本発明の光通信装置においては、ファイバトレイは、ハウジングと一体的に形成されているものとすることができる。この構成によれば、ファイバトレイとハウジングとの熱抵抗を低減することができる。
【0014】
ここで、本発明の光通信装置においては、光部品は、電気信号を光信号に変換して出力する複数の光送信サブアセンブリと、光信号を入力して電気信号に変換する複数の光受信サブアセンブリとを含むものとすることができる。換言すれば、本発明は、複数の光送信サブアセンブリと複数の光受信サブアセンブリとを備える光トランシーバに適用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光ファイバの配線スペースに制限を加えることなく放熱可能な光通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る光トランシーバの斜視図である。
【図2】実施形態に係る光トランシーバの斜視図である。
【図3】図1及び図2に示された光トランシーバの内部を示す斜視図である。
【図4】図3に示された光トランシーバの分解斜視図である。
【図5】図1及び図2に示された上部ハウジングの斜視図である。
【図6】従来の光トランシーバの内部を模式的に示す図である。
【図7】従来の光トランシーバの内部を模式的に示す図である。
【図8】図3及び図4に示されたファイバトレイの斜視図である。
【図9】図4のIX−IX線に沿っての断面図である。
【図10】実施形態に係る光トランシーバの変形例を示す断面図である。
【図11】図8に示されたファイバトレイの変形例を示す斜視図である。
【図12】参考例に係る光トランシーバの部分的な構成を示す斜視図である。
【図13】図12の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る光通信装置の一実施形態としての光トランシーバについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は本実施形態に係る光トランシーバの一方の側からの斜視図であり、図2は本実施形態に係る光トランシーバの他方の側からの斜視図である。図1及び図2に示される光トランシーバ1は、所謂プラガブルタイプの光トランシーバであって、例えばCFP規格に準拠する光トランシーバである。光トランシーバ1は、ハウジング10を備えている。ハウジング10は、下部ハウジング11と上部ハウジング12とからなる。ハウジング10においては、下部ハウジング11と上部ハウジング12とによって、後述する種々の部品の収容スペースが画成されている。このようなハウジング10は、例えば放熱やダイカスト鋳造性からアルミ又は亜鉛から構成することができる。
【0019】
ハウジング10の前端部10aには、フロントカバー13が取り付けられている。フロントカバー13の幅方向の略中央部には、矩形状の開口部13aが設けられている。この開口部13aからは、光レセプタクル14が露出している。また、フロントカバー13の両側部には、ねじ15のノブ16が突出している。ねじ15は、上部ハウジング12の前面からハウジング10の内部を貫通してハウジング10の後端部10bから突出している。光トランシーバ1は、このねじ15を用いてホストシステム(不図示)に固定される。
【0020】
ハウジング10の両側部には、リブ17が設けられている。リブ17は、ハウジング10の前端部10aから後端部10bに渡って延在している。ねじ15は、リブ17の内部に挿通されている。また、リブ17は、ホストシステムのレールに沿うように構成されており、これにより、光トランシーバ1のホストシステムへの装着が容易となる。一方、ハウジング10の後端部10bからは、ホストシステムのコネクタに嵌合されるカードエッジコネクタ18が突出している。カードエッジコネクタ18には、ホストシステムとの間で電気信号を送受するための複数の信号ピンが設けられている。
【0021】
図3は、図1及び図2に示された光トランシーバの内部を示す斜視図である。図4は、図3に示された光トランシーバの分解斜視図である。図5は、図1及び図2に示された上部ハウジングの斜視図である。図3〜5に示されるように、光トランシーバ1は、光レセプタクル14、光デマルチプレクサ19、光マルチプレクサ20、2セットのコネクタ21,22、2セットのホルダ23,24、4つの光受信サブアセンブリ(ROSA)25、及び4つの光送信サブアセンブリ(TOSA)26といった光部品等と、回路基板40とを備えている。これらの光部品等及び回路基板40は、上部ハウジング12に収容されている。より具体的には、上部ハウジング12は、その前端部12aから後端部12bに向かう方向(所定の方向)に配列された第1の区画31及び第2の区画32を含む底面(内面)12cを有しており、光部品等は第1の区画31に配置され、回路基板40は第2の区画32に配置されている。
【0022】
光レセプタクル14は、第1の区画31前部の略中央の領域33に配置されている。光レセプタクル14は、外部からの光コネクタプラグ(不図示)を受容し、その光コネクタプラグとの間において多重化光信号を送受する。光レセプタクル14の後端部からは、一対のスリーブ14aの端部が露出している。スリーブ14aのそれぞれからは光ファイバFが延出している。スリーブ14aのそれぞれから延出した光ファイバFは、後述するように上部ハウジング12の第2の区画32を通った後に光デマルチプレクサ19及び光マルチプレクサ20のそれぞれに接続されている。
【0023】
光デマルチプレクサ19は、第1の区画31前部における領域33の両側の領域のうちの一方の領域34に配置されている。光デマルチプレクサ19は、多重化光信号を複数(ここでは4つ)の互いに異なる波長を有する光信号に変換する。また、光デマルチプレクサ19は、それらの光信号のそれぞれをROSA25のそれぞれに出力する。そのために、光デマルチプレクサ19からは、複数(ここでは4つ)の光ファイバFが延出している。
【0024】
光マルチプレクサ20は、第1の区画31前部における領域33の両側の領域のうちの他方の領域35に配置されている。光マルチプレクサ20は、複数(ここでは4つ)の互いに異なる波長を有する光信号をTOSA26のそれぞれから入力する。そのために、光マルチプレクサ20からは、複数(ここでは4つ)の光ファイバFが延出している。また、光マルチプレクサ20は、入力した光信号を多重化光信号に変換する。
【0025】
コネクタ21は、第1の区画31の領域33〜35の後段の領域36において、光デマルチプレクサ19の後段に配置されている。コネクタ21は、上部ハウジング12の幅方向に複数(ここでは4つ)配列されている。光デマルチプレクサ19から延出した光ファイバFのそれぞれは、後述するように第2の区画32を通った後に、コネクタ21のそれぞれに接続されている。
【0026】
ROSA25は、領域36に配置されている。より具体的には、ROSA25は、コネクタ21の後段においてホルダ23に保持されている。ROSA25は、上部ハウジング12の幅方向に配列されている。光デマルチプレクサ19から延出した光ファイバFのそれぞれは、コネクタ21を介してROSA25のそれぞれに光学的に接続されている。つまり、ROSA25のそれぞれは、光デマルチプレクサ19に光学的に接続されている。したがって、光デマルチプレクサ19から出力された光信号はROSA25に入力される。ROSA25は、光デマルチプレクサ19からの光信号を電気信号に変換するため、例えばフォトダイオードといった光電変換素子を有している。
【0027】
コネクタ22は、第1の区画31の領域33〜35の後段の領域36において、光マルチプレクサ20の後段に配置されている。コネクタ22は、上部ハウジング12の幅方向に複数(ここでは4つ)配列されている。光マルチプレクサ20から延出した光ファイバFのそれぞれは、後述するように、第2の区画32を通った後に、コネクタ22のそれぞれに接続されている。
【0028】
TOSA26は、領域36に配置されている。より具体的には、TOSA26は、コネクタ22の後段においてホルダ24に保持されている。TOSA26は、上部ハウジング12の幅方向に配列されている。光マルチプレクサ20から延出した光ファイバFのそれぞれは、コネクタ22を介してTOSA26のそれぞれに光学的に接続されている。つまり、TOSA26のそれぞれは、光マルチプレクサ20に光学的に接続されている。TOSA26は、例えば半導体レーザといった発光素子を有しており、入力された電気信号を光信号に変換して出力する。上述したように、TOSA26は光マルチプレクサ20に光学的に接続されているので、TOSA26から出力された光信号は光マルチプレクサ20に入力される。
【0029】
回路基板40は、矩形平板状を呈しており、上部ハウジング12の第2の区画32の全体を覆うように第2の区画32に配置されている。回路基板40は、上部ハウジング12側の第1の面40aと、下部ハウジング11側の第2の面40bとを有している。回路基板40には、種々の電子部品が実装されている。回路基板40に実装される電子部品には、例えば、ROSA25のためのクロック抽出回路や、TOSA26のための発光素子駆動回路といったIC41が含まれる。IC41は、第1の面40aに搭載されている。
【0030】
なお、回路基板は、光トランシーバの規格によって、ハウジングの厚み方向の中央よりも上側に位置するものとされている。したがって、本実施形態に係る光トランシーバ1においても、回路基板40と下部ハウジング11との間の距離に比べて、回路基板40と上部ハウジング12との間の距離の方が大きくなっている。このため、光トランシーバ1においては、回路基板40と上部ハウジング12との間に、光ファイバFを配線することができる。
【0031】
上述したように、光トランシーバ1においては、複数(ここでは計10本)の光ファイバFがハウジング10に収容される。それらの光ファイバFは、第2の区画32に案内された後に第1の区画31に戻るように配線される。そのような配線のために、第1の区画31の領域36には、複数の溝部36aが形成されている。より具体的には、領域36には、コネクタ21,22、ホルダ23,24、ROSA25、及びTOSA26を配置するための複数の凸部36bが設けられており、それらの凸部36bによって溝部36aが規定されている。
【0032】
溝部36a及び凸部36bは、上部ハウジング12の前端部12aから後端部12bに向かう方向(すなわち第1の区画31から第2の区画32へ向かう方向)に延在すると共に、上部ハウジング12の幅方向に配列されている。光ファイバFは、そのように形成された溝部36aによって、第1の区画31から第2の区画32へ案内される。第2の区画32へ案内された光ファイバFは、回路基板40と上部ハウジング12との間において、第1の区画31へ向かうように湾曲させられて配線される。
【0033】
図6は、従来の光トランシーバの内部を模式的に示す図である。この従来の光トランシーバ1Aにおいては、光レセプタクル14Aから延出した光ファイバFは、上部ハウジング12Aの第1の区画31Aから第2の区画32Aに案内された後に再び第1の区画31Aに戻り、光デマルチプレクサ19Aに接続されている。また、光トランシーバ1Aにおいて、光デマルチプレクサ19Aから延出した光ファイバFは、上部ハウジング12Aの第1の区画31Aから第2の区画32Aに案内された後に再び第1の区画31Aに戻り、ROSA25Aに接続されている。光トランシーバ1Aでは、上部ハウジング12Aと回路基板40Aとの間のスペースが、第2の区画32Aにおける光ファイバFの配線スペースとなっている。また、この光トランシーバ1Aにおいては、回路基板40Aに実装された電子部品41Aの直下において、電子部品41Aと上部ハウジング12Aとが熱的に接続され、電子部品41Aで生じた熱を放熱するための放熱パスが形成されている。
【0034】
このように構成される光トランシーバ1Aにおいては、例えば図7に示されるように、光ファイバFが短く加工された場合には、電子部品41Aの直下の放熱パス上に光ファイバFが配線されることとなる。放熱パス上に光ファイバFが配線されると、放熱性が低下すると共に光ファイバFに損傷が生じる虞がある。一方で、電子部品41Aは、高周波特性を考慮すると、その位置を変更し難い。このため、光トランシーバ1Aにおいては、電子部品41Aの直下のスペースを避けるように、光ファイバFの配線スペースを制限する必要がある。しかしながら、光ファイバFの配線スペースを制限すると、その制限された配線スペースに適合しない光ファイバF(例えば図7に示されるように短く加工された光ファイバF)に接続された光部品(例えば光デマルチプレクサ19A)を不良品として処理する必要が生じる。したがって、光トランシーバにおいては、光ファイバFの配線スペースを制限することなく放熱パスを形成することが望まれている。
【0035】
本実施形態に係る光トランシーバ1は、そのような要望を実現するために、ファイバトレイ50をさらに備えている。図3及び図4に示されるように、ファイバトレイ50は、上部ハウジング12の第2の区画32に配置されている。より具体的には、ファイバトレイ50は、上部ハウジング12の第2の区画32において、上部ハウジング12と回路基板40との間に配置されている。ファイバトレイ50は、例えば、銅合金やアルミニウム合金等の材料を用いて板金により作製することができる。
【0036】
図8は、図3及び図4に示されたファイバトレイの斜視図である。図9は、図4のIX−IX線に沿っての断面図である。図3,4,8,9に示されるように、ファイバトレイ50は、ハウジング接触部50aと、本体部50bと、接続部50cとからなり、断面J字状を呈している。ハウジング接触部50a、本体部50b、及び接続部50cは、互いに一体に構成されている。
【0037】
ハウジング接触部50aは、上部ハウジング12の底面(ハウジング10の内面)12cに接触すると共に、底面12cに沿って延在している。ハウジング接触部50aは、台形平板状を呈している。ハウジング接触部50aは、その台形の上底において接続部50cに接続されている。ファイバトレイ50は、このハウジング接触部50aを上部ハウジング12の底面12cに接触させた状態において、例えば、ねじ等によって上部ハウジング12に固定されている。
【0038】
本体部50bは、上部ハウジング12の底面12cから離間すると共に、回路基板40に沿って延在している。本体部50bは、回路基板40に対向している。ハウジング接触部50aと本体部50bとは互いに略平行となっている。本体部50bは、上部ハウジング12の前端部12aから後端部12bに向かう方向に順に配列された第1の部分51b、第2の部分52b、及び第3の部分53bからなる。第1の部分51bは、上部ハウジング12の幅方向に延在する長尺の矩形平板状を呈している。第1の部分51bは、上部ハウジング12の幅方向について、第2の区画32の全体に渡るように延在している。第1の部分51bは、第2の区画32の前端部に配置されている。
【0039】
第2の部分52bは、第1の部分51bよりも短尺の矩形平板状を呈している。第2の部分52bは、第1の部分51bの長手方向の略中央部に接続されている。第2の部分52bは、上部ハウジング12の第2の区画32の中央部分の全体を覆うように配置されている。第2の部分52bは、IC41に対向する対向領域Aを含む。第3の部分53bは、ハウジング接触部50aと略同一の台形平板状を呈している。第3の部分53bは、その台形の下底において第2の部分52bに接続されており、上底において接続部50cに接続されている。したがって、接続部50cは、ハウジング接触部50aと本体部50bとを接続しており、第2の区画32の後端部に配置されている。
【0040】
このように構成される本体部50bは、ハウジング接触部50a及び接続部50cによって、上部ハウジング12の底面12cから離間すると共に、底面12cに対して略平行に維持されている。これにより、第2の区画32において、上部ハウジング12の底面12cと本体部50bとの間に、光ファイバFの配線スペースSが画成される。特に、この配線スペースSは、本体部50bがIC41に対向する対向領域Aを含むことから、上部ハウジング12の底面12cとIC41との間のスペース(すなわちIC41の直下のスペース)も含んでいる。つまり、ファイバトレイ50によれば、IC41の配置に影響されることなく広い配線スペースSを画成することができる。
【0041】
ここで、対向領域AとIC41との間には、その両者に接触するように放熱シート60が配置されている。したがって、ファイバトレイ50は、対向領域Aにおいて、放熱シート60を介してIC41に熱的に接続されている。また、上述したように、ファイバトレイ50は、ハウジング接触部50aにおいて上部ハウジング12の底面12cに直に接触している。したがって、ファイバトレイ50は、上部ハウジング12にも熱的に接続されている。よって、ファイバトレイ50は、回路基板40に実装されたIC41と上部ハウジング12とを熱的に接続している。換言すれば、ファイバトレイ50は、IC41において発生した熱を上部ハウジング12に伝達して放熱する放熱パスを提供している。なお、放熱シート60としては、例えば、シリコーンやアクリル等の基材に熱伝導性が良い金属のフィラーを含有したものを用いることができる)。
【0042】
以上説明したように、この光トランシーバ1においては、ファイバトレイ50は、上部ハウジング12の底面12cから離間すると共に回路基板40に沿って延在する本体部50bを有し、本体部部50bは回路基板40に実装されたIC41に対向する対向領域Aを含む。第2の区画32における光ファイバFの配線スペースSは、その本体部50bと上部ハウジング12の底面12cとの間に画成される。つまり、ファイバトレイ50は、上部ハウジング12の底面12cとIC41と間のスペース(すなわちIC41直下のスペース)も光ファイバFの配線スペースSとすることができる。したがって、IC41の配置に影響して光ファイバFの配線スペースに制限を加える必要がない。しかも、ファイバトレイ50は、IC41と上部ハウジング12とを熱的に接続している。つまり、ファイバトレイ50は、IC41で生じる熱を上部ハウジング12に放熱するための放熱パスを提供している。よって、この光トランシーバ1によれば、光ファイバFの配線スペースに制限を加えることなく、IC41で生じる熱を放熱することができる。
【0043】
以上の実施形態は、本発明の光トランシーバの一実施形態を説明したものであり、本発明の光通信装置は、上述した光トランシーバ1に限定されるものではない。本発明の光通信装置は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、光トランシーバ1を任意に変形したものとすることができる。
【0044】
例えば、図10に示されるように、配線スペースSに放熱ゲル(放熱剤)70を配置してもよい。放熱ゲル70は、配線スペースSの全体に充填してもよいし、配線スペースSにおけるIC41の直下の領域のみに配置してもよい。このように配線スペースSの放熱ゲル70を充填すれば、IC41からファイバトレイ50を介して上部ハウジング12に至るまでの熱抵抗を低減することができる。なお、放熱ゲルとしては、例えば、シリコーンやアクリル等の基材に熱伝導性が良い金属フィラーを含有したものを用いることができる。
【0045】
また、光トランシーバ1においては、ファイバトレイ50に代えて、図11に示されるファイバトレイ50Aを用いることができる。ファイバトレイ50Aは、IC41に対向する対向領域Aに板バネ部55が設けられている点で、ファイバトレイ50と相違している。ファイバトレイ50Aのその他の構成は、ファイバトレイ50と同様である。板バネ部55は、対向領域Aにコの字状に切り込みを形成した後に、その切り込みで囲われた部分を上方向(IC41に向かう方向)に折り曲げることにより作製される。板バネ部55は、その弾性力によって、IC41とファイバトレイ50Aとの熱的な接触を維持する。このように板バネ部55を設けることにより、IC41との熱的な接続が確実に維持されるので、IC41との間の熱抵抗を確実に低減することができる。なお、このようなファイバトレイ50Aを用いる場合にも、上述した放熱シート60や放熱ゲル70を併用することができる。
【0046】
一方で、光トランシーバ1においては、放熱シート60を用いないで、ファイバトレイ50及びファイバトレイ50Aを直にIC41に接触させてもよい。ファイバトレイ50及びファイバトレイ50Aが板金製であることから、放熱シート60を用いないでも、それらの弾性力によって、IC41との熱的な接触を好適に維持することができる。特に、光トランシーバ1においては、ファイバトレイ50及びファイバトレイ50Aを、本体部50bがハウジング接触部50aから離れるような弾性力が接続部50cに生じる状態において、上部ハウジング12に配置すれば、その弾性力によってIC41との熱的な接触をより好適に維持することができる。
【0047】
また、ファイバトレイ50及びファイバトレイ50Aは、上部ハウジング12と別体に構成してもよいし、上部ハウジング12と一体に構成してもよい。
【0048】
また、本発明の一実施形態として光トランシーバについて説明したが、本発明は光トランシーバに限らず、光通信のための光の入力又は出力を行う光部品と、光部品に光学的に接続された光ファイバと、光部品のための電子部品とを備える任意の光通信装置に適用することができる。本発明が適用される光通信装置としては、例えば、光増幅器や光モデム等が挙げられる。
【0049】
引き続いて、光トランシーバの参考例について説明する。図12は、参考例に係る光トランシーバの上部ハウジング等の斜視図である。図13は、図12の分解斜視図である。図12及び図13に示されるように、参考例に係る光トランシーバは、上部ハウジング12に代えて上部ハウジング12Bを備える点、ファイバトレイ50に代えてファイバトレイ50Bを備える点、及び、接触プレート80をさらに備える点で光トランシーバ1と相違している。参考例に係る光トランシーバのその他構成は、光トランシーバ1と同様である。
【0050】
上部ハウジング12Bは、隆起部12d,12eを有する点で、上部ハウジング12と相違している。隆起部12d,12eは、上部ハウジング12Bの第2の区画32において、上部ハウジング12Bの底面12cから隆起して設けられている。隆起部12d,12eは、回路基板40におけるROSA25のためのクロック抽出回路や、TOSA26のための発光素子駆動回路といった電子部品に対応する位置に形成されている。したがって、隆起部12d,12eは、それらの電子部品と上部ハウジング12Bとの間の放熱パスを提供する。例えば、隆起部12dの上面には、隆起部12fがさらに形成されている。そして、その隆起部12fには、矩形平板状の接触プレート80が載置される。したがって、接触プレート80、隆起部12f、及び隆起部12dによって電子部品から上部ハウジング12Bへ至る一つの放熱パスが形成される。
【0051】
ファイバトレイ50Bは、上部ハウジング12Bの第2の区画32において、上部ハウジング12Bの底面12cと回路基板40との間に配置されている。ファイバトレイ50Bは、上部ハウジング12Bの第1の区画31からの光ファイバFを第2の区画32において案内するためのものである。ファイバトレイ50Bは、本体部50B1と、一対のハネ止部50B2とを含む。本体部50B1、及びハネ止部50B2のそれぞれは、互いに別体に構成されている。
【0052】
本体部50B1は、C字平板状を呈しており、第2の区画32の後端部の略全体を覆うように配置されている。本体部50B1は、上部ハウジング12Bの底面12cから離間している。したがって、第2の区画32の後端部の略全体において、本体部50B1と底面12cとの間に配線スペースが画成されている。ハネ止部50B2は、第2の区画32の前端部において、互いに対向するように配置されている。ハネ止部50B2は、J字状を呈するように平板状の部材を折り曲げて形成されている。本体部50B1及びハネ止部50B2は、光ファイバFの動きを規制するための部分であり、光ファイバFの浮き上がりを防止する。
【0053】
このように、参考例に係る光トランシーバにおいては、光部品から延出された光ファイバFを第2の区画32に配線するにあたり、本体部50B1及びハネ止部50B2によって光ファイバFの浮き上がりを防止することができる。特に、本体部50B1、及びハネ止部50B2のそれぞれが互いに別体に構成されているので、それらを一体に構成する場合に比べて製造が容易である。
【符号の説明】
【0054】
1…光トランシーバ、10…ハウジング、11…下部ハウジング、12…上部ハウジング、12c…底面、14…光レセプタクル、19…光デマルチプレクサ、20…光マルチプレクサ、21,22…コネクタ、25…ROSA、26…TOSA、31…第1の区画、32…第2の区画、40…回路基板、41…IC、50,50A…ファイバトレイ、50a…ハウジング接触部、50b…本体部、50c…接続部、A…対向領域、F…光ファイバ、S…配線スペース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に配列された第1及び第2の区画を含む内面を有するハウジングと、
前記第1の区画に配置され、光通信のための光の出力又は入力を行う光部品と、
前記光部品に光学的に接続された光ファイバと、
前記第2の区画に配置され、前記光部品のための電子部品が実装された回路基板と、
前記第2の区画において前記ハウジングの前記内面と前記回路基板との間に配置され、前記光ファイバの配線スペースを画成すると共に、前記ハウジングと前記電子部品とを熱的に接続するファイバトレイと、を備え、
前記ファイバトレイは、前記ハウジングの前記内面から離間すると共に前記回路基板に沿って延在する本体部を有し、
前記本体部は、前記電子部品に対向する対向領域を含み、
前記配線スペースは、前記ハウジングの前記内面と前記本体部との間に画成される、ことを特徴とする光通信装置。
【請求項2】
前記ファイバトレイは、放熱シートを介して前記電子部品に熱的に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
前記ファイバトレイは、前記本体部と、前記ハウジングの前記内面に接触すると共に前記内面に沿って延在するハウジング接触部と、前記本体部と前記ハウジング接触部とを接続する接続部とからなり、前記本体部が前記ハウジング接触部から離れるような弾性力が前記接続部に生じる状態において配置されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光通信装置。
【請求項4】
前記配線スペースには、放熱剤が充填されている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記ファイバトレイは、前記ハウジングと一体に形成されている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光通信装置。
【請求項6】
前記光部品は、電気信号を光信号に変換して出力する複数の光送信サブアセンブリと、光信号を入力して電気信号に変換する複数の光受信サブアセンブリとを含む、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−252135(P2012−252135A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124232(P2011−124232)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】