説明

光重合性樹脂組成物積層体

【課題】ディスプレイのカラーフィルターの表面平滑性や高散乱性のための、オーバーコート用材料として、耐熱性、耐溶剤性、耐黄変性、高散乱性に優れたカットチップの発生がない積層用フィルム材料の提供。
【解決手段】(a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が20,000〜500,000であるバインダー用樹脂:20〜80質量%、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物:5〜50質量%、(c)分子内に少なくとも2つのエポキシを有する化合物:5〜50質量%、及び(d)光重合性開始剤:0.01〜3質量%、を含み、(b)として、コハク酸変性トリ(メタ)アクリレートを含み、そして(d)がオキシム系開始剤であることを特徴とする光重合性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)等のカラーフィルターのオーバーコート層などに適した、光学用光重合性樹脂組成物、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
LCDをカラー表示させるためのカラーフィルターは、ガラス基板上に格子状のブラックマトリックスに、R(赤)、G(緑)、B(青)からなるカラー画素を順次形成し、その上に透明なオーバーコート層形成したものである。
オーバーコート層に求められる特性として、耐熱性、耐薬品性、透明性、熱履歴後の低変色性、平滑性、透明導電膜であるITOとの密着性等を挙げることができる。
【0003】
従来、オーバーコート層の形成は、ポリイミド系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系の溶液樹脂をスピンコートや、ロールコート等の方法で製膜することによりなされてきた。
また、以下の特許文献1には、透明フィルムを張り合わせることにより製膜するカラーフィルターの製造方法が開示されているが、樹脂組成の詳細は明らかにはされていない。フィルムで張り合わせる場合、ラミネートした後、カッター等で切断するときに、光重合性層がちぎれて切り屑となる、いわゆるカットチップが発生し、それが基板表面に付着すると重大な支障を及ぼすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−171007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶液樹脂によるオーバーコート層の形成は、溶剤乾燥時に溶剤が揮散するなどの作業場上の問題や、コート時の溶液の利用効率が悪いためコストアップになるという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、フィルム型で、作業性が良好で、カットチップの発生がなく、耐熱黄変性、耐溶剤性に優れた光学用光重合性樹脂組成物、及び積層体を提供することである。
一方、バックライト等の光の有効利用のためには、高散乱特性が望まれており、本発明は、高散乱性のフィルム型光学用樹脂組成物積層体をも提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた結果、特定の成分を有する光重合性樹組成物脂積層体がカットチップ性、耐熱黄変性、耐溶剤性に優れた特性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
【0007】
[1](a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が20,000〜500,000であるバインダー用樹脂:20〜80質量%、
(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物:5〜50質量%、
(c)分子内に少なくとも2つのエポキシを有する化合物:5〜50質量%、及び
(d)光重合性開始剤:0.01〜3質量%、
を含み、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物として、下記式(I):
【化1】

{式中、R、R、及びRは、互いに独立に、H又はCH基を表し、そしてRは、炭素数が2〜8の、アルキル基、シクロアルキル基、フェニレン基である2価の連結基を表す。}で表される化合物を含み、そして(d)光重合性開始剤が、オキシム系開始剤であることを特徴とする光重合性樹脂組成物。
【0008】
[2]前記(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物として、下記式(II):
【化2】

{式中、R及びRは、互いに独立に、H又はCH基を表す。}で表される化合物をさらに含む、前記[1]に記載の光重合性樹脂組成物。
【0009】
[3]有機微粒子をさらに含有する、前記[1]又は[2]に記載の光重合性樹脂組成物。
【0010】
[4]支持層上に、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の光重合性樹脂組成物を含む層が積層された光重合性樹脂組成物積層体。
【0011】
[5]前記[4]に記載の光重合性樹脂組成物積層体を用いて、基板上に光重合性樹脂層を形成し、露光し、必要により現像し、ベークする工程を含む、ディスプレイ用カラーフィルターのオーバーコート層の形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光重合性樹脂組成物を使用することにより、カットチップ性、耐熱黄変性、耐溶剤性に優れ、さらに光散乱性に優れたディスプレイ用カラーフィルターのオーバーコートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願発明について詳細に説明する。
(a)バインダー用樹脂
本発明に用いる(a)バインダー用樹脂を構成する重合体に含まれるカルボキシル基の量は、酸当量で100〜600である必要があり、好ましくは300〜600である。酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有するバインダー用樹脂の質量を言う。バインダー用樹脂中のカルボキシル基は、光重合性樹脂層にアルカリ水溶液に対する現像性を与えるために必要である。酸当量が100未満では、現像耐性が低下し、解像性及び密着性に悪影響を及ぼし、一方、600を超えると、現像性が低下する。また、現像工程を経ない場合でも、カルボキシ基は熱ベーク工程にて、必須成分であるエポキシ基と反応することにより、耐熱性や耐溶剤性を向上させるために必要である。酸当量が600を超えると、耐熱性や耐溶剤性が悪化する。
【0014】
本発明に用いるバインダー用樹脂の重量平均分子量は、20,000〜500,000である。解像度の観点から分子量は500,000以下が好ましく、塗布乾燥後の塗膜形成の観点から20,000以上が好ましい。なお、分子量の測定は、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプルによる検量線使用)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。
【0015】
本発明に用いる前記バインダー用樹脂は、以下の2種類の単量体の中より、各々一種又はそれ以上の単量体を共重合させることにより得られる。
第一の単量体は、分子中にエチレン性不飽和二重結合を一個有するカルボン酸又は酸無水物であり、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。
【0016】
第二の単量体は、非酸性で、分子中にエチレン性不飽和二重結合を一個有し、光重合性樹脂層の現像性、硬化膜の可とう性等の種々の特性を保持するように選ばれる。このようなものとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル類、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル等のジカルボン酸ジアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、3−シクロヘキセニルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、N−メチル−2,2、6,6−テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレートなどの、脂環式又は複素環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル、N−フェニルマレイミド、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、高解像度の点でフェニル基を有するビニル化合物(例えば、スチレン、ビニルトルエン、ベンジルメタクリレート)を用いることが、好ましい。
本発明に用いられるバインダー用樹脂は、塗布性、現像残渣の観点から、架橋性の側鎖をもたない線状高分子が好ましい。架橋性の側鎖とは、例えばエポキシ基や、エチレン性不飽和結合基などを言う。
【0017】
本発明に用いる前記バインダー用樹脂は、上記単量体の混合物を、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、過熱攪拌することにより合成を行うことが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶媒を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合及び乳化重合を用いてもよい。
【0018】
本発明に用いる前記バインダー用樹脂の光重合性樹脂組成物に対する割合は、塗布乾燥後の塗膜形成性の観点から20質量%以上、パターンの現像耐性の観点から80質量%以下である。好ましくは、30〜70質量%である。
【0019】
(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物
本発明の光重合性樹脂組成物は、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物として、下記式(I):
【化3】

{式中、R、R、及びRは、互いに独立に、H又はCH基を表し、そしてRは、炭素数が2〜8の、アルキル基、シクロアルキル基、フェニレン基である2価の連結基を表す。}で表される化合物を必須成分として含有する。
式(I)の化合物を用いることで、オーバーコート剤として必要な透明性、耐熱黄変性、耐溶剤性に優れるだけでなく、感光性樹脂積層体としたときにカットチップが少ない取扱いにすぐれた積層体を得ることができる。
式(I)の化合物の例としては、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、フタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソフタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テレフタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。密着性の観点から、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレートが好ましい。これらは市販品を入手し、使用することができる。これらは、単独で使用しても混合して使用してもよい。
【0020】
また、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物として、下記式(II):
【化4】

{式中、R及びRは、互いに独立に、H又はCH基を表す。}で表される化合物を含有することは、さらに熱黄変性がなくカットチップの発生の少ない組成物が得られる点で好ましい。
【0021】
(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物としては、上記成分以外に公知の種々のエチレン性不飽和二重結合を少なくとも2個以上有する化合物を組み合わせて用いることができる。
例えば、公知のものとしては、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのプロピレンオキサイドと平均6モルのエチレンオキサイドを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレートや、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(新中村化学工業(株)製NKエステルBPE−500)、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
(b)光重合可能な不飽和化合物の光重合性樹脂組成物全体に対する割合は、5〜50質量%である。この割合は、感度の観点から5質量%以上、塗布乾燥後の塗膜形成性の観点から50質量%以下であり、好ましくは10〜40質量%である。
【0023】
(c)分子内に少なくとも2つのエポキシを有する化合物
(c)分子内に少なくとも2つのエポキシを有する化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂などを挙げることができる。基材との密着性の観点からこれらの中でもビスフェノールA型のエポキシ樹脂の使用が好ましく、市販のものを購入して使用することができる。具体例としては、YDF2001(東都化成株式会社製、商品名)、YL980(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、828(同社、商品名)、エポライト3002(共栄社化学株式会社製 商品名)、AER2600(旭化成イーマテリアルズ株式会社製 商品名)等を挙げることができる。
【0024】
(c)のエポキシ化合物の光重合性組成物全体に対する割合は、5〜50%が好ましい。耐溶剤性の観点から5質量%以上が好ましく、光硬化性の観点から、50%以下が好ましく、より好ましくは10%〜40質量%である。
【0025】
(d)光重合開始剤
本発明の光重合性樹脂組成物に用いる(d)光重合開始剤は、オキシム系化合物を必須成分として含む。例えば、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類や、特表2004−534797号公報に記載の化合物を上げることができる。なかでも、下記一般式(III):
【化5】

で表される化合物が耐熱黄変性の観点から好ましい。
【0026】
一般式(III)で表される化合物の具体例は、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−アセテート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製OXE−02)である。
本発明の光重合性樹脂積層体には、光重合性樹脂層に、一般式(III)以外の光重合開始剤、増感剤、連鎖移動剤などを組み合わせて用いてもよい。
【0027】
例えば、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス−(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(p−メトシキフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体類が挙げられる。
【0028】
また、p−アミノベンゾフェノン、p−ブチルアミノフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−ビス(エチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、p,p’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジブチルアミノ)ベンゾフェノン等のp−アミノフェニルケトン類が挙げられる。また、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル類、9−フェニルアクリジン等のアクリジン化合物、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系化合物、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−モルフォリノ−1−(4−(メチルチオフェニル)−プロパン−1−オン等の公知の種々の化合物が挙げられる。
【0029】
また、N−アリールグリシン、メルカプトトリアゾール誘導体、メルカプトテトラゾール誘導体、メルカプトチアジアゾール誘導体、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等の多官能チオールなどの公知の種々の化合物も挙げられる。
【0030】
光重合開始剤である上記一般式(III)の化合物が、光重合性樹脂組成物に占める割合は、0.01質量%〜3質量%である。感度の観点から0.01質量%以上が好ましい。また、露光時にフォトマスクを通した光の回折によるかぶりを減少し十分な解像度を得るという観点から3質量%以下が好ましい。
【0031】
本発明においては、高光散乱の目的から、有機微粒子を含むことができる。有機微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機系の透明又は白色ビーズ等を挙げることができる。特に、球状の有機フィラーが好ましい。
また、フィラーの粒子径D(JIS B9921)は、0.5〜50μmの範囲が好ましい。フィラーの含有量については、0.5〜20重量%の範囲が好ましい。含有量が0.5重量%より低い場合は、光散乱効果が不充分となり易く、20重量%より高い場合は、透明性が損なわれるだけでは無く、フィルムとしての強度も得られなくなる。
【0032】
また、本発明の光重合性樹脂組成物に、必要に応じて可塑剤、増粘剤、充填剤、カップリング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤をさらに含有させることもできる。
【0033】
本発明の光重合性樹脂組成物は、前記した(a)バインダー溶樹脂、(b)光重合性化合物、(c)エポキシ樹脂、及び(d)光重合性開始剤を、均一に混合することによって調製される。光重合性樹脂組成物を調製する際は、通常適当な溶剤を添加して、組成物溶液とする。光重合性樹脂組成物溶液の調製に使用される溶剤としては、光重合性樹脂組成物を構成する各成分を均一に溶解し、かつ各成分と反応しないものが用いられる。その例としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、(ジ)エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、(ジ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類等が挙げられる。前記溶剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
光重合性樹脂組成物積層体の製造
本発明の光重合性樹脂組成物積層体は、上記光重合性樹脂組成物の溶液を支持層上に塗工し、乾燥することで得ることができる。ここで、乾燥塗布膜の膜厚としては、5μm〜200μmが好ましい。ここで用いられる支持層としては、活性光を透過する透明なものが望ましい。活性光を透過する支持層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合体フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム等が挙げられる。これらのフィルムとしては、必要に応じ延伸されたものも使用可能である。
【0035】
また、支持層のヘーズは5.0以下であるものが好ましい。ここでいうヘーズ(Haze)とは濁度を表す値であり、ランプにより照射され試料中を透過した全透過率Tと、試料中で拡散され散乱した光の透過率Dにより、ヘーズ値H=D/T×100として求められる。これらはJIS−K−7105により規定されており、市販の濁度計によって容易に測定可能である。
支持層の厚みは薄い方が画像形成性、経済性の面で有利であるが、強度を維持する必要から、10〜50μmのものが一般的である。
【0036】
光重合性樹脂組成物積層体において、支持層面とは反対側の光重合性樹脂組成物層表面に、必要に応じて保護層を積層する。支持層よりも保護層の方が光重合性樹脂組成物層との密着力が充分小さく、容易に剥離できることがこの保護層としての重要な特性である。このような保護層としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。厚みとしては、10〜50μmのものが一般的である。
【0037】
ディスプレイ用カラーフィルターのオーバーコート層の作製方法
以下、光重合性樹脂積層体を用いたディスプレイ用カラーフィルターのオーバーコート層の作製方法を簡単に述べる。
予めガラス上に形成されたブラックマトリックの画素内を、赤(R)、緑(G)、青(B)で塗り分けて形成した基板上に、乾燥塗膜をラミネーターで加熱圧着して光重合性樹脂組成物層を転写する。活性光により露光し、必要によりアルカリ水溶液により現像し、不要な部分を除去してオーバーコート層を形成する。アルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の水溶液を用いる。これらのアルカリ水溶液は光重合性樹脂組成物層の特性に合わせて選択されるが、一般的に0.1〜3質量%の水溶液が用いられる。次いで160℃〜250℃で5分〜3時間ポストベークすることにより、機械的強度の高い透明な保護膜が形成することができる。
【0038】
また、同様の方法で、さらに有機微粒子を添加することで、Haze値の高い高散乱性のフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0039】
本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1〜5、比較例1〜5
[光重合性樹脂組成物溶液の作製]
バインダー溶液とモノマーと光重合開始剤と添加剤とを、以下の表1に示す割合で混合し、固形分量が42質量%の光重合性樹脂組成物溶液を得た。なお、表1において、略号(P−1〜C−1)で表した光重合性樹脂組成物を構成する成分は次に示すとおりである。
P−1:メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸=55/15/30(質量比)の共重合体で重量平均分子量140,000、酸当量290、固形分濃度20%のバインダーのメチルエチルケトン溶液
P−2:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=80/20(質量比)の共重合体で重量平均分子量80,000、酸当量430、固形分濃度40%のバインダーのメチルエチルケトン溶液
M−1:コハク酸変性トリメチロールプロパントリアクリレート
M−2:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート
M−3:テトラメチロールメタンテトラアクリレート
M−4:トリエトキシメチロールプロパントリアクリレート
M−5:ビスフェノールA-EO変性ジアクリレート
M−6:ヘプタプロピレングリコールジメタクリレート
E−1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル エポキシ当量190
I−1:1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシムO−アセテート
I−2:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
A−1:ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
C−1:メチルエチルケトン
【0040】
[光重合性樹脂組成物積層体の作製]
前記光重合性樹脂組成物溶液(実施例1〜5、比較例1〜5)を、厚さ20μmのポリエチレンテレフタレート製支持フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製AT301)にバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で20分間乾燥した。次いで、得られた光重合性樹脂組成物積層体上に厚さ25μmのポリエチレン製保護フィルム(タマポリ(株)製GF85)を貼り合わせ、実施例1〜5、比較例1〜5の光重合性樹脂積層体を得た。
【0041】
[透明層の形成方法]
実施例1〜5、比較例1〜5の光重合性樹脂積層体の保護フィルムを剥がして、厚み0.7mmの無アルカリガラス基板に95℃でラミネートした後、超高圧水銀ランプ((株)オ−ク製作所製HMW−801)により150mJ/cmで露光した。このとき、支持フィルムは剥離せずに露光を行った。支持フィルムを剥離した後、200℃で60分ポストベークし、透明層を形成した。
【0042】
[評価]
(1)カットチップ性の評価
光重合性樹脂組成物積層体から保護層を剥離し、感光性樹脂組成物層が上面になるようにカッティングマットにフィルムを設置した。
カッティングマットに対してカッター刃が45°になるように角度を固定し、フィルムを5cmの長さ分一気に切断した。切断部分を顕微鏡で観察した。酸素遮断層及び感光性樹脂層が切断部分で支持体より剥離している状態を、以下の評価基準に従って評価(格付け)した:
◎:ほとんど剥離していない。
○:切断部分から、切断の方向に沿ってほぼ均一な幅で剥離が発生している。
△:切断部分から、切断の方向に対して垂直な方向に向かって大きな剥離や割れが発生している。
【0043】
(2)膜厚
上記のガラス基板上の透明層について、テンコール・インスツルメンツ社製アルファステップ(AS200)を用いてガラス基板に形成された透明層の厚み(μm)を測定し、これを膜厚とした。200℃、60分ポストベーク後の膜厚が98μm〜102μmになるように光重合性樹脂層の厚みを調整して透明層を形成し比較を行った。
【0044】
(3)耐熱黄変性
上記ガラス基板上の透明層を、230℃、120分加熱した基板の可視光の透過率を、日立分光光度計 U-3040を用いて測定した。以下の表1中、400nmの透過率の値を、◎:95%以上、○:90%以上95%未満、△:85%以上90%未満、×:85%未満で表す。
【0045】
(4)耐溶剤性
上記ガラス基板上の透明層の上に、スポイトでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート液を1滴落とし、室温で5分間静置した。液滴をエアブローで飛ばし乾燥させた後の状態を観察し、以下の評価基準に従って、評価した:
◎:変化が見られない。
○:液滴のふちの後やエアブローで飛ばしたすじ後が見られる。
△:膨潤したようなゆがみ、あるいは小さなひびなどが認められる。
×:溶解、はがれ、欠けなどが見られる。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例6〜9、比較例6〜7
[微粒子入り光重合性樹脂組成物溶液の作製]
バインダー溶液とモノマーと光重合開始剤と添加剤とを、以下の表2に示す割合で混合し、固形分量が37質量%の光重合性樹脂組成物溶液を得た。なお、表2において、略号(P−1〜C−1)で表した光重合性樹脂組成物を構成する成分は次に示すとおりである。
P−1:メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸=55/15/30(質量比)の共重合体で重量平均分子量140,000、酸当量290、固形分濃度25%のバインダーのメチルエチルケトン溶液
P−2:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=80/20(質量比)の共重合体で重量平均分子量80,000、酸当量430、固形分濃度40%のバインダーのメチルエチルケトン溶液
M−1:コハク酸変性トリメチロールプロパントリアクリレート
M−2:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート
M−3:テトラメチロールメタンテトラアクリレート
M−4:トリエトキシメチロールプロパントリアクリレート
M−5:ビスフェノールA-EO変性ジアクリレート
E−1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル エポキシ当量190
I−1:1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシムO−アセテート
I−2:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
A−1:ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
B−1:平均粒径3.5μmのスチレン・ジベニルベンゼン共重合体微粒子
B−2:平均粒径2.0μmのポリメチルシルセスオキサン微粒子
B−3:平均粒径5.0μmのベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物微粒子
C−1:メチルエチルケトン
【0048】
[光重合性樹脂組成物積層体の作製]
前記光重合性樹脂組成物溶液(実施例6〜9、比較例6〜7)を、厚さ20μmのポリエチレンテレフタレート製支持フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製AT301)にバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で20分間乾燥した。次いで、得られた光重合性樹脂組成物積層体上に厚さ25μmのポリエチレン製保護フィルム(タマポリ(株)製GF85)を貼り合わせ、実施例6〜9、比較例6〜7の光重合性樹脂積層体を得た。
【0049】
[透明層の形成方法]
実施例6〜9、比較例6〜7の光重合性樹脂組成物積層体の保護フィルムを剥がして、厚み0.7mmの無アルカリガラス基板に95℃でラミネートした後、超高圧水銀ランプ((株)オ−ク製作所製HMW−801)により300mJ/cmで露光した。このとき、支持フィルムは剥離せずに露光を行った。支持フィルムを剥離した後、200℃で60分ポストベークし、透明層を形成した。
【0050】
[評価](1)カットチップ性の評価
感光性樹脂積層体から保護層を剥離し、感光性樹脂層が上面になるようにカッティングマットにフィルムを設置した。カッティングマットに対してカッター刃が45°になるように角度を固定し、フィルムを5cmの長さ分一気に切断した。切断部分を顕微鏡で観察した。
酸素遮断層及び感光性樹脂層が切断部分で支持体より剥離している状態を、以下の評価基準に従って、評価した。
◎:ほとんど剥離していない。
○:切断部分から、切断の方向に沿ってほぼ均一な幅で剥離が発生している。
△:切断部分から、切断の方向に対して垂直な方向に向かって大きな剥離や割れが発生している。
【0051】
(2)膜厚
上記のガラス基板上の透明層について、テンコール・インスツルメンツ社製アルファステップ(AS200)を用いてガラス基板に形成された透明層の厚み(μm)を測定し、これを膜厚とした。
【0052】
(3)耐熱黄変性
上記透明層付きガラス基板を230℃120分加熱した後、基板の可視光の透過率を、日立分光光度計 U-3040を用いて測定した。500nmの透過率の値と400nmの透過率の値の差をとり、以下の表2中、◎:差が5%未満、○:5%以上10%未満、△:10%以上15%未満、×:15%以上で表す。
【0053】
(4)耐溶剤性
上記ガラス基板上の透明層の上に、スポイトでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート液を1滴落とし、室温で5分間静置した。液滴をエアブローで飛ばし乾燥させた後の状態を観察し、以下の評価基準に従って、評価した:
◎:変化が見られない。
○:液滴のふちの後やエアブローで飛ばしたすじ後が見られる。
△:膨潤したようなゆがみ、あるいは小さなひびなどが認められる。
×:溶解、はがれ、欠けなどが見られる。
【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、ディスプレイのカラーフィルターの表面平滑性や高散乱性のための、オーバーコート用材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600であり、かつ、重量平均分子量が20,000〜500,000であるバインダー用樹脂:20〜80質量%、
(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物:5〜50質量%、
(c)分子内に少なくとも2つのエポキシを有する化合物:5〜50質量%、及び
(d)光重合性開始剤:0.01〜3質量%、
を含み、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物として、下記式(I):
【化1】

{式中、R、R、及びRは、互いに独立に、H又はCH基を表し、そしてRは、炭素数が2〜8の、アルキル基、シクロアルキル基、フェニレン基である2価の連結基を表す。}で表される化合物を含み、そして(d)光重合性開始剤が、オキシム系開始剤であることを特徴とする光重合性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物として、下記式(II):
【化2】

{式中、R及びRは、互いに独立に、H又はCH基を表す。}で表される化合物をさらに含む、請求項1に記載の光重合性樹脂組成物。
【請求項3】
有機微粒子をさらに含有する、請求項1又は2に記載の光重合性樹脂組成物。
【請求項4】
支持層上に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光重合性樹脂組成物を含む層が積層された光重合性樹脂組成物積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の光重合性樹脂組成物積層体を用いて、基板上に光重合性樹脂層を形成し、露光し、必要により現像し、ベークする工程を含む、ディスプレイ用カラーフィルターのオーバーコート層の形成方法。

【公開番号】特開2011−185962(P2011−185962A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47695(P2010−47695)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】