説明

光電変換素子およびその製造方法、並びに、光導波路形成用組成物およびその硬化物

【課題】耐溶剤性、および耐熱性の良好な光導波路を有する光電変換素子を提供する。
【解決手段】本発明にかかる光電変換素子100は、基板10と、基板10の上方に形成された光電変換部20と、光電変換部20の上方に形成された光導波路部30と、を備え、光導波路部30は、硫黄を含有し633nmにおける屈折率が1.60以上のポリイミド、および架橋剤を含有する組成物の硬化物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子およびその製造方法、並びに、光導波路形成用組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラや携帯電話等に搭載される固体撮像素子等の光電変換素子は、CCD(Charge Coupled Device)やMOS(Metal Oxide Semiconductor)のような受光部(光電変換機構)を、複数二次元的に配列させた構造を有する。このような光電変換素子は、従来より画素数を増すことが求められてきている。すなわち、光電変換素子は、ますます各画素の微細化が進められている。これに伴い光電変換素子の単位画素あたりの受光量は、非常に小さくなってきている。
【0003】
受光部が受ける光量が不足すると、撮像される画像の品質は低下してしまう。そのため、画素あたりの受光量を大きくする方法が提案されている。例えば、光電変換素子の受光部に光を集光させるようなレンズを設けることや、素子に光導波路を設けることなどが提案されている。光導波路を形成する例として、例えば、特許文献1には、光導波路を屈折率の高い材料によって形成することが記載されている。同文献には、このような高屈折率材料として、透明性の高い樹脂と、酸化チタン等の屈折率の高い金属酸化物粒子とのコンポジット材料を用いることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ある種のポリアミック酸、およびそのイミド化重合体を用いて、光学用部材の屈折率を高める試みが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−091744号公報
【特許文献2】特開2008−274234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光電変換素子の画素は非常に小さくなってきているため、光導波路の寸法も非常に小さくなってきている。すなわち、光導波路は、受光面の面積が小さく、導波経路の長い形状(アスペクト比の大きい形状)となってきている。
【0007】
そのため、光導波路の材料として、上述したような金属酸化物粒子を含有する樹脂組成物を用いる場合は、製造時に光導波路を形成する工程において、光導波路のための開口の全体にわたって均一に材料を充填しにくくなってきている。
【0008】
また、例えば、上記特許文献2に開示された樹脂等により、光導波路を形成する樹脂自体の屈折率を高めることができれば、埋め込み性は良好となると考えられる。しかしながら、同文献に開示されたポリイミド樹脂などは、比較的低分子量体であるため溶剤耐性および耐熱性が不十分となることが懸念される。そのため、導波路部上層にカラーフィルター、反射防止膜、または平坦化膜等を形成する場合などでは、これらと混合白化したり、半田リフロー工程において加熱による着色を生じ集光性を損なう等のおそれがあった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、そのいくつかの態様にかかる目的の一つは、耐溶剤性、および耐熱性の良好な光導波路を有する光電変換素子を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、耐溶剤性および耐熱性の良好な光導波路を有する光電変換素子の製造方法を提供することにある。さらに、本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、光電変換素子の光導波路に好適な組成物およびその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0011】
[適用例1]本発明にかかる光電変換素子の一態様は、基板と、前記基板の上方に形成された光電変換部と、前記光電変換部の上方に形成された光導波路部と、を備え、前記光導波路部は、硫黄を含有し633nmにおける屈折率が1.60以上のポリイミド、および架橋剤を含有する組成物の硬化物を含有する。
【0012】
なお、本明細書では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下「B」という)を形成する」などと用いている。本明細書で、このように記載する場合には、特に断りの無い限り、A上に直接Bを形成する場合と、A上に他のものを介してBを形成する場合と、Aの上部にBが形成される場合とが含まれるものとする。
【0013】
[適用例2]適用例1において、前記硬化物は、下記一般式(1)で表される構造を含んでもよい。
【0014】
【化1】

【0015】
(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
【0016】
[適用例3]適用例2において、前記Rが、炭素数4〜12の4価の脂肪族または脂環族炭化水素であってもよい。
【0017】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、前記架橋剤が、メチロールメラミンのアルキルエーテル化物、メチロールメラミン縮合物のアルキルエーテル化物、および多官能ビニルエーテル化合物、から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0018】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、前記光導波路部は、柱状の形状を有し、前記柱状形状の長手方向の一方の端が、前記光電変換部に光学的に接続していてもよい。
【0019】
[適用例6]適用例5において、前記光導波路部の前記長手方向に平行な断面において、前記長手方向の長さは、前記長手方向に垂直な方向の長さのうちの最大の長さの0.5倍以上10倍以下であってもよい。
【0020】
[適用例7]本発明にかかる光電変換素子の製造方法の一態様は、基板の上方に、光電変換部を形成する工程と、前記光電変換部を覆うように層間絶縁層を形成する工程と、前記層間絶縁層に、前記光電変換部の上面に貫通する穴を形成する工程と、前記穴に、下記一般式(1)で表される構造を含む重合体、および架橋剤を含む組成物を充填する工程と、前記組成物を硬化させる工程と、を含む。
【0021】
【化2】

【0022】
(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
【0023】
[適用例8]適用例7において、前記Rが、炭素数4〜12の4価の脂肪族または脂環族炭化水素であってもよい。
【0024】
[適用例9]適用例7または適用例8において、前記組成物には、前記組成物の有機溶剤を除いた成分全量を100質量%とした場合に、前記一般式(1)で表される構造を含む重合体が80質量%以上99質量%以下、架橋剤が1質量%以上20質量%以下含有されてもよい。
【0025】
[適用例10]本発明にかかる光導波路形成用組成物の一態様は、下記一般式(1)で表される構造を有する重合体、架橋剤、およびこれらを均一に溶解しうる有機溶剤を含み、有機溶剤を除いた成分全量を100質量%とした場合に、前記一般式(1)で表される構造を含む重合体が80質量%以上99質量%以下、架橋剤が1質量%以上20質量%以下、含有される。
【0026】
【化3】

【0027】
(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
【0028】
[適用例11]適用例10において、前記一般式(1)で表される構造を含む重合体が、下記一般式(2)で表される構造を有する重合体であってもよい。
【0029】
【化4】

【0030】
(一般式(2)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示し、lとmはその合計l+mが1〜100,000の整数であり、l:mが50:50〜100:0である。)
【0031】
[適用例12]適用例10または適用例11において、前記Rが、炭素数4〜12の4価の脂肪族または脂環族炭化水素であってもよい。
【0032】
[適用例13]本発明にかかる硬化物の一態様は、下記一般式(1)で表される構造を含む重合体、および架橋剤を含有する組成物を硬化させて得られる。
【0033】
【化5】

【0034】
(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
【発明の効果】
【0035】
本発明にかかる光電変換素子は、光導波路部が、テトラカルボン酸二無水物、硫黄原子を含有する芳香族ジアミン、および架橋剤に基づく構造を有する硬化物を含有している。そのため、耐溶剤性および耐熱性の良好な光導波路を有し、光導波路部の平坦性、充填性が良好であり、かつ製造が容易である。また、光導波路部は、硫黄原子および芳香環を含有するため、屈折率が大きい。これにより、本発明にかかる光電変換素子は、集光効率が良好である。本発明にかかる光電変換素子の製造方法によれば、光導波路部が、一般式(1)で表される構造を含む重合体、および架橋剤を含む組成物を充填する工程を有する。そのため、耐溶剤性および耐熱性の良好な光導波路を有する光電変換素子を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態の一例にかかる光電変換素子100の要部の断面の模式図。
【図2】実施形態の一例にかかる光電変換素子100の要部の断面を拡大した模式図。
【図3】実施形態の一例にかかる光電変換素子100の製造工程のうち層間絶縁層を形成する工程の模式図。
【図4】実施形態の一例にかかる光電変換素子100の製造工程のうち層間絶縁層に穴を形成する工程の模式図。
【図5】実施形態の一例にかかる光電変換素子100の製造工程のうち組成物を充填する工程の模式図。
【図6】実施形態の一例にかかる光電変換素子100の製造工程のうち層間絶縁層の上に形成された光導波路部を除去する工程の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の好適な実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0038】
本発明にかかる光電変換素子の例としては、電荷結合素子(CCD)や、MOS型の撮像素子を挙げることができる。以下の実施形態では、CCDを含む光電変換素子100を例示する。
【0039】
1.光電変換素子
図1は、実施形態の一例にかかる光電変換素子100の要部の断面の模式図である。図2は、光電変換素子100の要部の断面を拡大した模式図である。
【0040】
本実施形態の光電変換素子100は、基板10と、光電変換部20と、光導波路部30と、を備える。
【0041】
1.1.基板
基板10は、光電変換素子100の基体となる。基板10は、平板状、フィルム状、シート状等の形状を有する。基板10は、複数の基板の積層体であってもよい。基板10は、例えば、半導体基板や配線基板を含んで構成されてもよい。基板10には、光電変換部20(後述する)、レジスタなどが形成されることができる。また、基板10は、トランジスタ(例えばTFT)や、制御用のIC、および配線層などを有してもよい。図1には、基板10に光電変換部20が形成されている例が描かれている。
【0042】
基板10の材質としては、特に限定されず、金属、ガラス、シリコン、砒化ガリウム等の無機物や、(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、脂環式オレフィン樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子材料などを例示することができる。また、基板10は、複数層が積層されたものでもよい。また、例えば基板10は、光を反射する反射層等を含んでいてもよい。基板10をシリコン基板やGaAs基板のような半導体基板とすれば、光電変換部20を基板10内に形成することが容易となる。
【0043】
1.2.光電変換部
光電変換部20は、基板10の上方に形成される。光電変換部20は、基板10の上面に埋め込まれるように形成されてもよい。本実施形態の光電変換素子100では、基板10の上面側に光電変換部20が形成されている。
【0044】
光電変換部20の形状は、特に限定されず、平面視において、だ円形、円形、矩形、正方形などとすることができる。平面視における光電変換部20の面積は、光電変換素子100の解像度等の設計にしたがって適宜設計されうるが、例えば、正方形形状とした場合の一辺の長さが100nm以上10μm以下とすることができる。光電変換部20は、基板10に複数形成されることができる。基板10に形成される光電変換部20の数は、光電変換素子100の解像度等の設計にしたがって適宜選択され、特に限定されない。また、光電変換部20の厚み等も特に限定されない。
【0045】
光電変換部20は、光を電気信号に変換する部分(光センサー)または、電気を光に変換する部分であり、公知の光電変換素子、例えばフォトダイオードを適用することができる。また、例えば、光電変換部20は、基板10を半導体基板とし、その表面に導電型の異なる領域が形成されたpn接合などによって構成されることができる。さらに、光電変換部20は、レジスタ等の他の構成を含んで形成されてもよい。
【0046】
光電変換部20によって検知される電磁波(光)の波長域は、特に限定されないが、例えば、300nm以上1100nm以下の範囲である。光電変換部20は、典型的には可視光を検知して電気信号に変換することができる。
【0047】
1.3.光導波路部
1.3.1.光導波路部の形状等
光導波路部30は、光電変換部20の上方に形成される。光導波路部30は、光電変換部20に光学的に接続して形成される。また、光導波路部30は、光電変換部20に光学的に接続される限り、光電変換部20との間に他の部材(例えばレンズ等の光学部材)を介して接続されもよい。なお、「光学的に接続する」とは、光の伝達が可能な状態を指す。
【0048】
光導波路部30の機能の一つは、光電変換素子が受光素子である場合は、光電変換部20に対して光電変換素子100に入射する光を集光させることが挙げられる。一方、光電変換素子が発光素子である場合は、光電変換部20から発する光に対して光電変換素子100から出射する光の取り出し効率を高めることが挙げられる。そのため、光導波路部30は、近接する他の部材よりも屈折率の大きい材料で形成されることが望ましい。光導波路部の屈折率は、1.60以上であることが好ましく、1.65以上であることがより好ましい。なお、本発明において「屈折率」とは、25℃における633nmでの屈折率を意味する。これにより、光導波路部30への光の閉じ込めが可能となって、光電変換部20への集光効率をさらに高めることができる。光導波路部30の材質の詳細については後述する。
【0049】
光導波路部30は、各光電変換部20に対応して設けられる。光導波路部30は、柱状の形状を有する。そして、光導波路部30は、柱状形状の長手方向の一端が光電変換部20に光学的に接続されるように配置される。光導波路部30の具体的な形状としては、特に限定されないが、例えば、円柱状、角柱状、円錐台、角錐台等とすることができる。
【0050】
本実施形態の光電変換素子100では、光導波路部30の形状が柱状であるため、光導波路部30を高密度に配置することができる(光電変換素子100の解像度を高めることができる)とともに、厚み方向(光導波路部30の長手方向)の絶縁性を確保することができる。また、光導波路部30は、柱状の形状を有するため、光電変換素子100の外部から入射した光を、光電変換部20に対して集光させやすい。
【0051】
図1の例では、光導波路部30は、光電変換部20の側の断面のほうが小さくなる円錐台の形状を有している。さらに、光導波路部30の上面または下面は、凸状または凹状の形状を有していてもよい。このようにすると、光導波路部30に、光学的レンズの機能を付与することができる。この場合の凹凸形状は、入射光の光路を考慮して自由に設計されることができる。
【0052】
また、光導波路部30は、長手方向に平行な断面において、長手方向の長さが、長手方向に垂直な方向の長さのうちの最大の長さの0.5倍以上10倍以下であることがさらに好ましい。光導波路部30をこのような形状とすることにより、光電変換素子100の解像度をさらに高めることができるとともに、光導波路部30の長手方向の絶縁性を確保することができる。
【0053】
光導波路部30は、光電変換部20の上方に配置されるかぎり、単独で配置されてもよいが、例えば、本実施形態の光電変換素子100のように、基板10の上方に形成された層間絶縁層40に、穴42を設け、該穴42の内側に光導波路部30を形成されてもよい。(図2参照)。このようにすれば、例えば、光導波路部30の製造をより容易化することができる。
【0054】
光導波路部30の屈折率は、その周囲の屈折率よりも高いことが好ましい。層間絶縁層40を形成する場合は、光電変換部20への集光効率を高めるために、層間絶縁層40の材質として、屈折率が1.4から1.5程度のSiOや、屈折率が1.4〜1.5程度であるBPSG(ボロフォスホシリケートガラス)、PSG(フォスホシリケートガラス)、SOG(スピンオンガラス)などのSiO系材料やSiON(酸化窒化シリコン)系材料で形成されることが好ましい。層間絶縁層40が酸化シリコン(SiO)で形成される場合は、例えば、熱酸化法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって形成されることができる。
【0055】
また、本実施形態の光電変換素子100は、図1に示すように、光導波路部30への集光のために、オンチップレンズ50を有してもよい。オンチップレンズ50は、図示の例では、光導波路部30の上方に設けられているが、下方に設けられてもよい。また、オンチップレンズ50は、複数設けられてもよい。
【0056】
1.3.2.光導波路部の材質
1.3.2.1.組成物
光導波路部30は、硫黄を含有し633nmにおける屈折率が1.60以上のポリイミド、および架橋剤を有する組成物の硬化物で形成される。前記ポリイミドは、例えば、テトラカルボン酸二無水物と硫黄を含有する芳香族ジアミン化合物を縮合させ、さらにイミド化することで得ることができる。
【0057】
<1>テトラカルボン酸二無水物
前記ポリイミドを得るための原料として使用されるテトラカルボン酸二無水物は、下記一般式(3)で表される化合物を使用することができる。
【0058】
【化6】

【0059】
[一般式(3)中、Rは、4価の有機基を示す。]
一般式(3)中、Rは、脂肪族、脂環族および芳香族の少なくとも一種に分類される構造を有していてもよい。テトラカルボン酸二無水物は、得られる硬化物の透明性を高める観点からは、Rが脂肪族または脂環族である、脂肪族または脂環族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、脂肪族テトラカルボン酸二無水物がさらに好ましい。
【0060】
脂肪族および脂環族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、4,10−ジオキサトリシクロ[6.3.1.02,7]ドデカン−3,5,9,11−テトラオン、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらのうち、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、4,10−ジオキサトリシクロ[6.3.1.02,7]ドデカン−3,5,9,11−テトラオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオンがより好ましく、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、4,10−ジオキサトリシクロ[6.3.1.02,7]ドデカン−3,5,9,11−テトラオン、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が、硬化物の透明性を高める観点でより好ましい。
【0061】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(フタル酸)二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらのうちでは、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(フタル酸)二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が、硬化物が高屈折率になるためより好ましい。
【0062】
また、より高い屈折率の硬化物が得られる観点から、テトラカルボン酸二無水物は、硫黄原子を含むことがさらに好ましい。硫黄原子を含有するテトラカルボン酸二無水物の例としては、4,4’−[p−チオビス(フェニレン−スルファニル)]ジフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0063】
テトラカルボン酸二無水物に基づく構造は、例えば、テトラカルボン酸の状態(上記例示したテトラカルボン酸二無水物の無水物でない状態)で重合させて、ポリアミド酸に基づく構造を形成し、その後にイミド化触媒を用いて脱水反応を行うことによって形成されてもよい。
【0064】
テトラカルボン酸の状態で重合させて形成されるポリアミド酸は、化学イミド化または熱イミド化することができる。化学イミド化の際に用いるイミド化触媒としては、例えば、無水酢酸−ピリジン混合溶液等が挙げられる。また、無水酢酸−トリエチルアミン混合溶液や、無水トリフルオロ酢酸、ジシクロヘキシルカルボジイミドも使用できる。さらに、イミド化触媒として、光の照射によって酸または塩基を発生させる化合物である光酸発生剤または光塩基発生剤を用いてもよい。光塩基発生剤としては、例えば、カルバマート型光塩基発生剤等が挙げられる。
【0065】
<2>硫黄原子を含有する芳香族ジアミン
前記ポリイミドを得るための原料として使用される硫黄原子を含有する芳香族ジアミンとしては、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0066】
【化7】

【0067】
[一般式(4)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは1〜4の整数を示す。]
また、一般式(4)において、aは0(即ち、置換基無し)であるか、またはRがシアノ基であり、aが1であることが、屈折率の観点からより好ましい。また、nは、2〜4の整数であることが、屈折率の観点からより好ましい。
【0068】
一般式(4)で示されるジアミンの例としては、例えば、4,4’−(p−フェニレンジスルファニル)ジアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノールスルファニル)5−シアノベンゼン、4,4’−チオビス[(p−フェニレンスルファニル)アニリン]、4,4’−ビス(4−アミノフェニルスルファニル)−p−ジチオフェノキシベンゼン等が挙げられ、これらのうち、4,4’−チオビス[(p−フェニレンスルファニル)アニリン]は、屈折率の観点からより好ましい。
【0069】
<3>その他のモノマー成分
本実施形態で使用されるポリイミドには、他のモノマー由来の構造が含まれてもよい。例えば、前記ポリイミドには、硫黄原子を含有する芳香族ジアミン以外のジアミンに基づく構造が含まれてもよい。このようなジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、ジアミノテトラフェニルチオフェン等のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン等の脂肪族または脂環族ジアミンを挙げることができる。
【0070】
前記ポリイミドに上記ジアミンに基づく構造を導入する場合には、前記ポリイミドのモノマー単位全体を100質量%とした場合、上記ジアミンに基づく構造は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20%以下として、硬化物の屈折率を調節するために、配合量を適宜調節することができる。
【0071】
<4>ポリイミド
本実施形態の組成物に使用されるポリイミドは、硫黄を含有し633nmにおける屈折率が1.60以上のポリイミドが使用される。ポリイミドが硫黄を含有することにより、得られるポリイミドの屈折率が高くなり、結果として光導波路部30の屈折率を高めることができる。また、ポリイミドの屈折率は1.65以上であることが好ましい。また、ポリイミドをゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は、光導波路部30を形成するときの加工性(溶液にした場合の塗布しやすさ)、特に光導波路部30を形成する穴への埋め込み性の点で、2,000以上10,000以下であることが好ましく、3,000以上8,000以下であることがより好ましい。
【0072】
テトラカルボン酸二無水物および硫黄原子を含有する芳香族ジアミンから得られるポリイミドとしては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することができる。
【0073】
【化8】

【0074】
[一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示す。]
一般式(1)で示される構造の重合体は、例えば、上記例示した硫黄原子を含有する芳香族ジアミンと、上述のテトラカルボン酸二酸無水物を反応させて得ることができる。
【0075】
硫黄原子を含有する芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二酸無水物の反応は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性有機溶剤中において行うことができる。硫黄原子を含有する芳香族ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とを攪拌混合することによって、一般式(1)の重合体を得ることができる。また、例えば、硫黄原子を含有する芳香族ジアミンを有機溶剤に溶解し、これにテトラカルボン酸二無水物を加えて攪拌混合してもよい。反応は、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下の温度で、常圧下に行われる。必要に応じて、加圧下または減圧下で行ってもよい。反応時間は、用いるジアミン化合物と酸二無水物や、有機溶剤、反応温度等によって異なるが、例えば、1〜24時間の範囲である。この様にして得られた重合体を、加熱することによってイミド化することができる。このとき、無水酢酸−ピリジン混合溶液、無水酢酸−トリエチルアミン混合溶液や、無水トリフルオロ酢酸、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の公知のイミド化触媒を使用することもできる。
【0076】
一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミドとしては、下記一般式(2)で表される重合体であってもよい。
【0077】
【化9】

【0078】
[一般式(2)中、R、a、R、nは式(1)と同義であり、モル比(l:m)は、50:50〜100:0である。]
ここで、モル比(l:m)は、一般式(2)で表される重合体のイミド化率を表現しており、イミド骨格(ポリイミド部位)(l)と、アミド酸骨格(ポリアミック酸(ポリアミド酸)部位)(m)とのモル比を示している。すなわち、モル比(l:m)が50:50〜100:0であることは、一般式(2)で表される重合体において、イミド化率が50%以上100%以下であることを表している。言い換えると、モル比(l:m)が、50:50〜100:0であることは、一般式(2)で表される重合体において、アミック酸の含有割合が0%以上50%以下であることを表している。一般式(2)で表される重合体のイミド化率が50%以上100%以下であると、光導波路部30の溶剤耐性を高めることができる。上記理由から、一般式(2)で表される重合体のイミド化率は70%以上100%以下であることが好ましい。ここで、本実施形態においてポリイミドとは、ポリアミド酸のイミド化物を意味し、全ての結合がイミド化されていなくてもよい。
【0079】
イミド化を行う場合の反応温度は、例えば、70〜150℃とすることができる。反応時間は1〜24時間の範囲が好ましい。熱イミド化を行う場合は、ポリアミド酸に基づく構造を有する物質を、高沸点溶剤中にて150〜250℃で1〜24時間反応させることによって行うことができる。
【0080】
なお、一般式(2)で表される重合体におけるアミック酸(アミド酸)の含有割合は、例えば、NMR(核磁気共鳴法)により、求めることができる。
【0081】
上記一般式(1)および一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリイミドは、いずれも、テトラカルボン酸二無水物、および硫黄原子を含有する芳香族ジアミンから得られる重合体であって、上述の架橋剤とともに反応させることによって、光導波路部を形成する硬化物を得ることができる。
【0082】
<5>架橋剤
架橋剤としては、多官能化合物が挙げられ、例えば、多官能の、メラミン化合物、尿素化合物、グアナミン化合物、フェノール化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、多塩基酸等が挙げられる。また、架橋剤は、これらの化合物の一種単独または二種以上を組み合わせであってもよい。
【0083】
これらの架橋剤のうち、保存安定性に比較的優れている一方、比較的低温硬化が可能な点から、分子内にメチロール基およびアルコキシ化メチル基あるいはいずれか一方を2個以上有するメラミン化合物が好ましい。また、これらのメラミン化合物のうちでも、ヘキサメチルエーテル化メチロールメラミン化合物、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン化合物、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン化合物、メチルエーテル化メチロールメラミン化合物、ブチルエーテル化メチロールメラミン化合物等のメチロールメラミンのアルキルエーテル化物、メチロールメラミンの縮合物のアルキルエーテル化物が反応性と保存安定性を両立できるためさらに好ましい。
【0084】
一方、架橋剤としては、ビニル基等のエチレン性不飽和基を複数有する多官能エーテル化合物、ビニル基等のエチレン性不飽和基を複数有する多官能(メタ)アクリレート化合物等の、エチレン性不飽和基を複数有する多官能化合物を用いることもできる。エチレン性不飽和基を複数有する多官能化合物としては、例えば、多官能ビニルエーテル化合物として、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等のアルキルジビニルエーテル、多官能(メタ)アクリレートとして、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルエステル類を挙げることができる。
【0085】
本実施形態における架橋剤の量は、有機溶剤を除いた組成物全体を100%とした場合、0.1%以上30%以下が好ましく、1%以上20%以下がより好ましい。架橋剤が、この範囲にあれば、得られる硬化物に溶剤耐性を付与することができる。
【0086】
<6>有機溶剤
組成物に使用される有機溶剤としては、一般式(1)で表される構造を含む重合体および架橋剤を均一に溶解することができるように選択される。
【0087】
このような有機溶剤としては、例えば、非プロトン系有機溶剤を挙げることができる。非プロトン系有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、シクロヘキサノン(CHN)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、γ−ブチロラクトン(GBL)等が好ましい。これら以外にもN,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメトキシアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ピロリン、ピコリン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、γ−ブチロラクトン(GBL)、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール酸、p−クロロフェノール、アニソール、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で、または2種類以上の混合物として用いられることができる。
【0088】
光導波路部30を形成するための組成物において、添加される有機溶剤の量としては、一般式(1)で表される構造を有する重合体および架橋剤を100質量部とした場合に、100〜9,900質量部、好ましくは150〜1,900質量部、より好ましくは200〜1,900質量部の範囲内で用いることができる。組成物に対する有機溶剤の配合量がこのような範囲であれば、良好な塗布を行うことができる。有機溶剤は、一般式(1)で表される構造を含む重合体の製造に由来した有機溶剤であってもよい。
【0089】
1.3.2.2.その他の成分
本実施形態の光導波路部30は、光導波路部30の全質量に対して、上述の硬化物を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましい。したがって、本実施形態の光導波路部30は、20質量%以下の範囲で上述の硬化物以外の物質を含有してもよい。
【0090】
<界面活性剤>
光導波路部30には、界面活性剤が含有されてもよい。界面活性剤は、光導波路部30を形成する際に用いられる組成物の濡れ性や流動性を調節するために用いられることができる。そして光導波路部30が形成された後、硬化物とともに光導波路部30に含有されてもよい。
【0091】
このような界面活性剤としては、ケイ素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられ、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤が挙げられる。
【0092】
ケイ素系の界面活性剤の例としては、例えば、SH28PA、DC57、DC190、ペインタッド19、54(東レダウコーニング社製、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体)、SF8428(東レダウコーニング社製、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(側鎖OH含有))、サイラプレーンFM−4411、FM−4421、FM−4425、FM−7711、FM−7721、FM−7725、FM−0411、FM−0421、FM−0425、FM−DA11、FM−DA21、FM−DA26、FM−0711、FM−0721、FM−0725、TM−0701、TM−0701T(チッソ社製)、UV3500、UV3510、UV3530(ビックケミー・ジャパン社製)、BY16−004(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、VPS−1001(和光純薬製)、Tego Rad2300、2200N(テゴ・ケミー社製)等が挙げられる。
【0093】
フッ素系界面活性剤の例としては、メガファックF−114、F410、F411、F450、F493、F494、F443、F444、F445、F446、F470、F471、F472SF、F474、F475、R30、F477、F478、F479、F480SF、F482、F483、F484、F486、F487、F553、F172D、F178K、F178RM、ESM−1、MCF350SF、BL20、R08、R61、R90(大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0094】
界面活性剤の機能の一つとしては、例えば、光電変換素子100の製造において、光導波路部30をスピンコートによって、上記硬化物を形成するための原料を含有する組成物を塗布して形成する場合に、均一な塗膜を形成させることが挙げられる。
【0095】
光導波路部30に界面活性剤が含有される場合の含有量は、組成物中の有機溶剤を除いた成分全量に対して、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜2質量%の範囲内である。界面活性剤の配合量が上記範囲内にあることで、硬化物を形成するための原料を含有する組成物の塗布性が良好となる。
【0096】
<その他>
光導波路部30には、無機粒子が含有されてもよい。無機粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、などが挙げられる。これらのうち、酸化チタン粒子は、光導波路部30の屈折率を調整するために配合されてもよい。光導波路部30に無機粒子を含有させる場合には、例えば、有機溶剤を除いた成分全量100質量%に対して、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜2質量%の範囲内である。
【0097】
さらに、光導波路部30には、ポリスチレンなどの樹脂が含有されてもよい。
【0098】
<硬化物>
本実施形態の硬化物は、上述の組成物を硬化させて得られる。硬化は、基板に前記組成物を塗布した後、加熱することで行われる。このときの加熱温度は、室温〜300℃、好ましくは、30〜250℃である。また、加熱時間は、製造する硬化物の大きさ形状を考慮して適宜変更できるが、通常、1分〜2時間、好ましくは、3分〜1時間程度加熱することが好ましい。このとき、一定温度で加熱してもよいし、異なる温度で順次加熱してもよい。上述の組成物を硬化させることで、下記一般式(1)で示される構造を含む硬化物を得ることができる。
【0099】
【化10】

【0100】
本実施形態の硬化物の屈折率は、1.60以上が好ましく、1.65以上であることがより好ましい。
【0101】
1.4.その他の構成
本実施形態の光電変換素子100は、各種の他の部材を含むことができる。例えば、光電変換素子100は、層内レンズ、転送電極、遮光膜、カラーフィルター、平坦化層、反射防止膜等を含んでもよい。
【0102】
1.5.作用効果等
本実施形態にかかる光電変換素子100は、光導波路部30が、テトラカルボン酸二無水物、硫黄原子を含有する芳香族ジアミン、および架橋剤に基づく構造を有する硬化物を含有している。そのため、光導波路部30の耐溶剤性および耐熱性が良好である。また、本実施形態にかかる光電変換素子100が備える光導波路部30に含有される硬化物は、硫黄原子および芳香環を有するため、屈折率が大きい。これにより、光電変換素子100は、光電変換部20への集光効率が良好である。
【0103】
2.光電変換素子の製造方法
図3ないし図6は、本実施形態の一例である光電変換素子100の製造工程の模式図である。
【0104】
本発明にかかる光電変換素子の製造方法は、基板10の上方に光電変換部を形成する工程と、前記光電変換部を覆うように層間絶縁層を形成する工程と、前記層間絶縁層に前記光電変換部の上面に貫通する穴を形成する工程と、前記穴に、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を含む重合体、および架橋剤を含む組成物を充填する工程と、を含む。
【0105】
【化11】

【0106】
(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
以下、各工程を詳述するが、上述の光電変換素子100の説明において、述べた部材については、同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0107】
はじめに図3に示すように、基板10を用意し、基板10の上方(上面)に光電変換部20を形成する。光電変換部20は、公知の方法で形成でき、例えば基板10に不純物をドーピングすることによって形成することができる。また、光電変換部20の形成と同時または前後して、必要に応じて電荷転送部などを形成することができる。また、光電変換部20の形成後に、必要に応じて、転送電極、反射防止膜、遮光膜を形成してもよい。また、層間絶縁層40以外の絶縁膜を形成してもよい。
【0108】
次いで、図3に示すように、光電変換部20を覆うように、層間絶縁層40aを形成する。層間絶縁層40aは、光電変換部20および基板10を覆って形成されてもよい。図示の例では、層間絶縁層40aは、光電変換部20および基板10を覆って形成されている。層間絶縁層40aは、例えば、スピンコート法、CVD法等によって形成されることができる。
【0109】
次に、図4に示すように、層間絶縁層40に、層間絶縁層40の上面から光電変換部20の上面に貫通する穴42を形成する。穴42は、光導波路部30の外形に対応する形状を有する。穴42は、光電変換部20の上方に形成される。本実施形態では、穴42は、光電変換部20に達するように、層間絶縁層40を貫通して形成されているが、光電変換部20に向かって延びる、層間絶縁層40に形成された凹部となっていてもよい。穴42は、適宜なマスクおよびエッチャントを用いて、フォトリソグラフィー等により形成されることができる。また、穴42は、公知の方法、例えば異方性ドライエッチング、反応性ドライエッチングなどによっても形成することができる。
【0110】
次いで、図5に示すように、穴42に、硫黄を含有し633nmにおける屈折率が1.60以上のポリイミド、および架橋剤を含む組成物を充填して、光導波路部30aを形成する。この工程は、具体的には、ディスペンサなどの注液ノズルを用いた塗布、インクジェット法などの噴射塗布、スピンコーティングなど回転による塗布、印刷などスキージングによる塗布、または転写などの方法を用いることができる。
【0111】
この工程で用いる組成物は、例えば、硫黄を含有し633nmにおける屈折率が1.60以上のポリイミド、および架橋剤の他に、組成物の粘度を調節するために、有機溶剤を含んでいてもよい。組成物に使用される有機溶剤としては、前述のとおりである。
【0112】
硬化物の耐溶剤性を向上させるために、組成物に、イミド化触媒を配合することもできる。その場合、組成物に対するイミド化触媒の配合量は、有機溶剤を除いた成分全量100質量%に対して、20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の範囲内である。上述のイミド化触媒を使用した場合、必要に応じて、硬化処理を行う工程を付加することができる。硬化処理は、例えば、光硬化、熱硬化とすることができる。
【0113】
本工程において、塗布される組成物には、塗布性、埋め込み性を損なわない範囲であれば、粒子状の物質が添加されてもよい。
【0114】
本工程では、このような組成物を用いるため、ディスペンサなどの注液ノズルを用いた塗布、インクジェット法などの噴射塗布、スピンコーティングなど回転による塗布、印刷などスキージングによる塗布、または転写などによって、穴42を隙間なく埋めることが容易である。このようにすれば、特に、光導波路部30の長軸方向の大きさが光導波路部30の短軸方向の大きさの0.5倍以上10倍以下である場合において、穴42を隙間なく埋めることを極めて容易に行うことができる。
【0115】
その後、必要に応じ、図6に示すように、層間絶縁層40の上に形成された(穴42以外の部分の)光導波路部30aを除去する工程を行うことができる。この工程は、ドライエッチング、ウエットエッチングなどによって行うことができる。この工程を行う場合において、光導波路部30aの塗膜に、粒子状物質が添加されていない場合は、ドライエッチング、ウエットエッチング等のエッチングレートを十分に大きくすることができる。
【0116】
次いで、例えば、別途準備したマイクロレンズアレイを層間絶縁層40の上方に設けることによって、図1に示す本実施形態の光電変換素子100を得ることができる。
【0117】
本実施形態の光電変換素子の製造方法によれば、光電変換部への集光性、光導波路部の平坦性、充填性が良好で、耐溶剤性および耐熱性加熱着色性の良好な光導波路を有する光電変換素子を容易に製造することができる。
【0118】
3.実施例および比較例
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0119】
実施例および比較例では、一般式(1)で表される構造を含む重合体、架橋剤および有機溶剤を含有する組成物の穴への埋め込み性、加熱透明性、および溶剤耐性を評価した。すなわち、下記の基材に対して、下記の組成物を塗布し、乾燥後の部材の各種形状、熱処理後(硬化後)の透明性、アセトン浸漬後のクラック、膜減り、または白化の有無を評価した。
【0120】
実施例および比較例は、光電変換素子の製造における光導波路の形成工程をモデル化したものであり、この評価によって、光導波路部の光学特性、耐溶剤性、製造容易性などを評価することができる。
【0121】
3.1.基材
基板10として、シリコン基板を用いた。このシリコン基板の上面に、3μmの厚みのSiO膜をスピンコート法によって形成し焼成した。そして該SiO膜をエッチングして、開口径0.8μm深さ3μmの穴(シリコン基板まで達する貫通孔)を形成した。なお、SiO膜の屈折率は、1.45近傍であり、実施例等で形成される光導波路部の屈折率が高ければ、光電変換素子における集光性が実現される。
【0122】
3.2.組成物
硬化物を形成する組成物として、表1に示すAないしLの組成物を調製した。
【0123】
【表1】

【0124】
表中、数字の単位は、質量部であるが、溶剤を除く成分の配合量については、質量%とみなすことができる。
【0125】
表1中、P−1は、酸二無水物として、BT−100(新日本理化株式会社製1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物)、ジアミンとして、3SDA(4,4’−チオビス[(p−フェニレンスルファニル)アニリン])を用いて合成した重合体を示す。なお、3SDAは特開2008−274234号公報に記載の方法で合成した。
【0126】
P−1の調製では、まず窒素導入管を備えた反応容器に、3SDA(11.9g、27.5mmol)にジメチルアセトアミド(30g)(以下、DMAcという)を加え、室温で攪拌し完全に溶解させた。次に、BT−100(5.45g、27.5mmol)とDMAc(10g)を添加し、40℃で4時間攪拌した。次いで、DMAc(110g)を添加した後、イミド化触媒として無水酢酸(2.81g)とピリジン(2.18g)とを加え、110℃で5時間攪拌し、P−1のDMAc溶液を得た。減圧蒸留法にて所定量のDMAcを除去し、固形分濃度20%の溶液とした後、所定量のγ−ブチロラクトン(以下、GBLという)を加え、固形分濃度10%の溶液とした。この操作を2回繰り返した後、再度減圧蒸留法にて固形分濃度45%に調整し、P−1のGBL溶液を得た。P−1のイミド化率は50%であった。すなわち、P−1は、一般式(2)で表される構造を有する重合体において、l:mが50:50である。
【0127】
表1中、P−2は、イミド化触媒である無水酢酸とピリジンを、P−1よりも増量してP−1と同様に合成した重合体を示す。無水酢酸(5.61g)とピリジン(4.35g)とを用いた以外はP−1と同様にしてP−2のGBL溶液を調製した。P−2のイミド化率は90%であった。すなわち、P−2は、一般式(2)で表される構造を有する重合体において、l:mが90:10である。
【0128】
表1中、P−3は、イミド化触媒である無水酢酸とピリジンを、P−2よりもさらに増量して合成した重合体を示す。無水酢酸(8.43g)とピリジン(6.54g)とを用いた以外はP−1と同様にしてP−3のGBL溶液を調製した。P−3のイミド化率は93%であった。すなわち、P−3は、一般式(2)で表される構造を有する重合体において、l:mが93:7である。
【0129】
なお、P−1ないしP−3のイミド化率は、アミック酸の含有割合を求めて算出した。具体的には、P−1ないしP−3のNMR(核磁気共鳴法)を測定して求めた。
【0130】
表1中、P−4は、次のように調製した。まず窒素導入管を備えた反応容器に、ビス(p−アミノフェニル)エーテル(8.01g、40mmol)(以下、ODAという)にN−メチル−2−ピロリドン(80g)(NMP)を加え、室温で攪拌し完全に溶解させた。次に、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下、CBDAという)(7.84g、40mmol)とNMP(25g)を添加し、室温で24時間攪拌して、ポリアミック酸のNMP溶液を得た。
【0131】
表1中、P−5は次のように調製した。2,7−ビス(4−アミノフェニレンスルファニル)チアントレン(11.90g、25.71mmol)、BT−100(5.10g、25.76mmol)を用いた以外はP−1と同様にしてポリアミック酸を得た。また、ピリジン(6.11g)、無水酢酸(7.89g)を用いた以外はP−2と同様にしてイミド化反応および後処理を行いP−5のGBL溶液を得た。イミド化率は91%であった。ここで、2,7−ビス(4−アミノフェニレンスルファニル)チアントレンは、Macromolecules,Vol.40,P4614,2007に記載の方法で合成した。
【0132】
また、表1中、架橋剤X、Y、ZはそれぞれX;日本サイテック インダストリーズ株式会社製サイメル303(メチロールメラミン縮合物のアルキルエーテル化物)、Y;日本カーバイド工業株式会社製CHDVE(多官能ビニルエーテル化合物)、Z;日本カーバイド工業株式会社製BDVE(多官能ビニルエーテル化合物)を表す。
【0133】
界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(DC−190、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を使用した。
【0134】
AないしLの組成物は、シクロヘキサノン(CHN)およびγ−ブチロラクトン(GBL)の混合溶剤によって希釈し、最終的な組成を表1に示した。各実施例、および各比較例に用いた組成物は、上述の溶剤を除く成分を100質量部とし、有機溶剤を表1に示す質量部で配合したものである。
【0135】
3.3.評価方法
各実施例および各比較例では、埋め込み性、加熱透明性、耐溶剤性、および屈折率の評価を以下のように行った。
【0136】
いずれの例においても、基板は、上述したシリコンウェハー上に形成されたSiO膜に開口径0.8μm、深さ3μmの穴が形成されているものを使用した。
【0137】
埋め込み性評価:各実施例および各比較例の組成物を、穴が埋め込まれた後の膜厚が0.6μmとなる条件で、それぞれ、基体にスピンコート法によって塗布し、これを120℃で1分間、180℃で3分間、250℃で5分間順次加熱乾燥させて評価試料とした。そして、各実施例および各比較例の基板を、それぞれ切断した後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて穴の断面を観察し、組成物中にボイドが無いものを、埋め込み性が良好であると評価し、表中に○を付し、ボイドが発生したものには表中に×を付した。
【0138】
加熱透明性評価:ガラスウェハーに埋め込み性評価時と同様にして樹脂組成物を塗布・乾燥してサンプルを作成した。120℃で1分間、180℃で3分間、250℃で5分間順次加熱乾燥させたサンプル(表中250℃の欄に記載)と、さらに265℃で5分間加熱したサンプル(表中265℃の欄に記載)の2種をそれぞれ作成した。そして、各サンプルの塗膜につき、触針式膜厚計にて膜厚を測定し、紫外可視分光光度計を用いて得られたサンプルの400nmにおける透過率を測定し、表2中、加熱後透過率(400nm)の欄に、膜厚とそれぞれの温度で測定された透過率を記載した。
【0139】
溶剤耐性評価:埋め込み性評価時と同様にして組成物を塗布・乾燥してサンプルを作成した。得られたサンプルをアセトンに5分間浸漬後、120℃で1分間乾燥し、外観(白化、クラック)および膜厚残存率を求め耐溶剤性の評価とした。耐溶剤性は、外観について目視評価でクラックが認められないものは○、SEM観察によりクラックが認められたものを△、目視でクラックが明らかに認められたものは×として表2に記載した。また、白化が認められないものを○、白化したものを×とし表2に記載した。膜厚残存率はアセトン浸漬前後の触針式膜厚計により求めた膜厚を用いて下記式により算出し表2に記載した。
式・・・膜厚残存率(%)=100×アセトン浸漬後の膜厚(μm)/アセトン浸漬前の膜厚(μm)
屈折率:溶剤耐性評価用サンプルと同様にして作成したサンプルを用い、プリズムカプラーにより25℃における波長633nmでの屈折率を求めた。
【0140】
3.4.評価結果
各実施例および各比較例の評価結果を表2にまとめた。
【0141】
【表2】

【0142】
表2をみると、架橋剤を含有しない組成物Aまたは組成物Bによって形成された硬化物(比較例1、2)では、加熱後の透明性は良好であるが溶剤耐性が不十分となることが判明した。また、一般式(1)の構造を含有しない重合体を使用した組成物Kによって形成された硬化物(比較例3)では、埋め込み性が悪いことが判明した。また、一般式(2)の重合体において、特にl:mが70:30〜100:0の範囲である重合体を含有する組成物D〜JおよびLによって形成された硬化物(実施例2〜9)では、いずれも埋め込み性や屈折率の低下を伴うことなく加熱後の透明性および溶剤耐性に優れた塗膜が得られることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の光電変換素子は、例えば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話、スキャナ、デジタル複写機、ファクシミリといった様々な用途に適用できる。また、本発明の光電変換素子の製造方法によれば、透明性および溶剤耐性に優れた光導波路部を有する光電変換素子を、容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0144】
10…基板、20…光電変換部、30,30a…光導波路部、40,40a…層間絶縁層、42…穴、50…オンチップレンズ、100…光電変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された光電変換部と、
前記光電変換部の上方に形成された光導波路部と、
を備え、
前記光導波路部は、硫黄を含有し633nmにおける屈折率が1.60以上のポリイミド、および架橋剤を含有する組成物の硬化物を含有する、光電変換素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記硬化物は、下記一般式(1)で表される構造を含む、光電変換素子。
【化1】

(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
【請求項3】
請求項2において、
前記Rが、炭素数4〜12の4価の脂肪族または脂環族炭化水素である、光電変換素子。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記架橋剤が、メチロールメラミンのアルキルエーテル化物、メチロールメラミン縮合物のアルキルエーテル化物、および多官能ビニルエーテル化合物、から選択される少なくとも1種である、光電変換素子。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記光導波路部は、柱状の形状を有し、前記柱状形状の長手方向の一方の端が、前記光電変換部に光学的に接続している、光電変換素子。
【請求項6】
請求項5において、
前記光導波路部の前記長手方向に平行な断面において、前記長手方向の長さは、前記長手方向に垂直な方向の長さのうちの最大の長さの0.5倍以上10倍以下である、光電変換素子。
【請求項7】
基板の上方に、光電変換部を形成する工程と、
前記光電変換部を覆うように層間絶縁層を形成する工程と、
前記層間絶縁層に、前記光電変換部の上面に貫通する穴を形成する工程と、
前記穴に、下記一般式(1)で表される構造を含む重合体、および架橋剤を含む組成物を充填する工程と、
前記組成物を硬化させる工程と、
を含む、光電変換素子の製造方法。
【化2】

(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
【請求項8】
請求項7において、
前記Rが、炭素数4〜12の4価の脂肪族または脂環族炭化水素である、光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記組成物には、前記組成物の有機溶剤を除いた成分全量を100質量%とした場合に、前記一般式(1)で表される構造を含む重合体が80質量%以上99質量%以下、架橋剤が1質量%以上20質量%以下含有される、光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
下記一般式(1)で表される構造を有する重合体、架橋剤、およびこれらを均一に溶解しうる有機溶剤を含み、
有機溶剤を除いた成分全量を100質量%とした場合に、前記一般式(1)で表される構造を含む重合体が80質量%以上99質量%以下、架橋剤が1質量%以上20質量%以下、含有される、光導波路形成用組成物。
【化3】

(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
【請求項11】
請求項10において、
前記一般式(1)で表される構造を含む重合体が、下記一般式(2)で表される構造を有する重合体である、光導波路形成用組成物。
【化4】

(一般式(2)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示し、lとmはその合計l+mが1〜100,000の整数であり、l:mが50:50〜100:0である。)
【請求項12】
請求項10または請求項11において、
前記Rが、炭素数4〜12の4価の脂肪族または脂環族炭化水素である、光導波路形成用組成物。
【請求項13】
下記一般式(1)で表される構造を含む重合体、および架橋剤を含有する組成物の硬化物。
【化5】

(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基もしくはシアノ基、または、2個のRが結合して2価の硫黄原子を示し、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−211179(P2011−211179A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47243(P2011−47243)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】