説明

光電変換素子の製造方法

【課題】素子特性を劣化させることなく、信頼性の高い光電変換素子を製造する。
【解決手段】半導体層と電極層が対向するように基板を対向配置し、基板間に封止材5を挟み、基板の裏面領域うち、半導体層に対応する領域を冷却装置12により冷却すると共に封止材5が挟まれている領域に対応する領域を加熱装置11により加熱することにより、基板を接着する。またこの時、加熱領域と冷却領域にかかる圧力を異なせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増感色素が担持された半導体を付着した第1の電極を表面側に有する第1の基板と第2の電極を表面側に有する第2の基板とを、第1の電極と第2の電極が対向するように第1の基板と第2の基板の表面側を対向配置し、基板表面間に封止材を挟んで加熱することにより、接着する光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池に代表される光電変換素子は、クリーンなエネルギー源として期待されており、シリコン系のpn接合型太陽電池が既に実用化されている。しかしながら、シリコン系の太陽電池は、高純度材料を原料としたり、製造の際に1000[℃]程度の高温プロセスや真空プロセス等の高エネルギープロセスを必要としたりすることから、製造コストを低減することが大きな課題となっている。
【0003】
このような背景から、近年、高純度材料や高エネルギープロセスを必要としない、固液界面に生じる電位勾配を利用して電荷分離を行う湿式太陽電池が注目を集めている。特に、半導体電極の表面に光を吸収する増感色素を吸着させ、半導体電極のバンドギャップ幅よりも長波長の可視光を増感色素で吸収させることにより変換効率の向上を狙った、いわゆる色素増感型の光電変換素子に関する研究が盛んに行われている(特許文献1,2参照)。
【0004】
ところで、色素増感型の光電変換素子は、2枚の電極により電解質溶液を挟持するサンドイッチ構造を有し、液晶素子に似た構造になっている。このような光電変換素子は、(1)透明導電層が形成されたガラス等の第1の基板上に酸化チタン等の半導体微粒子を塗布焼成し、半導体微粒子の表面に増感色素を担持することにより第1の電極を形成し、(2)同じく透明導電層が形成されたガラス等の第2の基板上に白金や炭素等を固着させることにより第2の電極を形成し、(3)第1の電極と第2の電極が対向するように第1の基板と第2の基板とを対向配置し、第1の基板と第2の基板との間に熱可塑性樹脂やUV硬化性樹脂等の封止材を挟み、素子全体に対し加熱及び加圧処理を施すことにより第1の基板と第2の基板とを貼り合わせ、(4)第1の電極と第2の電極間に電解質溶液を注液した後に注液口を塞ぐことにより製造される。
【特許文献1】特許2664194号公報
【特許文献2】特開2004−171814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、従来の色素増感型の光電変換素子は、素子全体に対し加熱処理を施すことによって製造されているために、製造の際に電極部、特に第1の電極に熱が加わることによって、半導体の表面状態が変化したり、増感色素が熱分解したりすることにより、光電変換素子の素子特性、特に変換効率が劣化する可能性がある。
【0006】
さらに、従来の色素増感型の光電変換素子は、素子全体に対し加圧処理を施すことによって製造されているために、加熱の際に生じる応力を緩和することができず、封止材に応力がかかることによって、時間の経過と共に封止材が剥離し、素子の経時劣化が生じる。この問題は、特に、基板の厚さが薄いために加圧時の撓みが大きくなる場合や封止領域と電極領域の厚さが異なる場合において顕著になる。
【0007】
なお、光電変換素子の素子特性の劣化を防止するために、融点の低い熱可塑性樹脂や加熱量が比較的少ないUV硬化性樹脂を封止材として用いる方法も考えられるが、この方法を用いた場合には、電極や電荷輸送層の封止が疎かになることにより、素子の信頼性、特に素子の耐熱性や耐湿性が低下する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、素子特性を劣化させることなく、信頼性の高い光電変換素子を製造可能な光電変換素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の発明者らは、精力的な研究を重ねてきた結果、第1及び第2の基板の少なくとも一方の基板表面うち、第1の電極が形成されている基板表面に対応する領域を冷却すると共に、封止材に対応する領域を加熱し、加熱領域と冷却領域にかかる圧力が異なる状態で第1の基板と第2の基板とを接着することにより、素子特性を劣化させることなく、信頼性の高い光電変換素子を製造できることを知見した。
【0010】
すなわち、第1の電極が形成されている基板表面に対応する領域を冷却しながら第1の基板と第2の基板を接着することにより、第1の電極に熱が加わることによって素子特性が劣化することを抑制できる。またこの結果、より封止強度が高い封止材を用いて第1の基板と第2の基板とを接着することができるので、光電変換素子の信頼性を向上させることができる。
【0011】
さらに、加熱領域と冷却領域にかかる圧力が異なる状態で第1の基板と第2の基板とを接着することにより、加熱の際に基板材料に生じる応力に伴う歪みを緩和することができるので、封止材に応力がかかることによって時間の経過と共に封止材が剥離し、素子の経時劣化が生じることを抑制できる。
【0012】
なお、上記封止材としては熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。封止材として熱可塑性樹脂を用いた場合、電極部分と封止部分を近づけることが可能になるので、実装密度を上げる必要がある民生用途向けの素子等には有効である。なお、電極部分と封止部分の間隔は0[mm]でもよいし、場合によっては封止材の一部が電極部分と重なっていてもよい。この場合、冷却部分近傍の熱可塑性樹脂は融着されずに残るので、電極部分の光発電の妨げにはならない。
【0013】
また、第1及び第2の基板の裏面側を加熱,冷却して第1の基板と第2の基板とを張り合わせることが望ましい。このような方法によれば、より厳密な温度制御が可能になるので、第2の電極側から第1の電極に熱が伝達することを抑制できる。
【0014】
また、第1の電極が形成された基板表面に対応する領域を予め冷却した後に封止材を加熱することにより第1の基板と第2の基板とを接着することが望ましい。このような方法によれば、基板がガラスやセラミックス等の熱伝導性が低い材料により形成されている場合であっても加熱の影響を効果的に軽減することができる。
【0015】
また、第1及び第2の基板の少なくとも一方は厚さが0.3[mm]以上0.7[mm]以下の数値範囲内にあるガラス基板であることが望ましい。従来の基板の厚みは1.1〜3[mm]の範囲内にあるが、基板の厚さを0.3〜0.7[mm]の範囲内にすることにより、基板の蓄熱の影響を軽減することができると共に、基板の断面方向における熱の拡散による加熱冷却の相乗効果を低減することができる。またこれにより、加熱する必要がある封止部分と冷却する必要がある電極部分の間隔が小さい場合であっても、問題なく処理することができる。なお、基材6の厚さは割れやすくなることを考慮すれば特に下限はない。0.3〜0.7[mm]の厚さの基板は、封止部分と電極部分の間隔が0.5[mm]以下である場合に特に有効である。
【0016】
また、冷却領域にかかる圧力を加熱領域にかかる圧力よりも小さくすることが望ましい。このような方法によれば、冷却領域と加熱領域の熱膨張差をより効果的に緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる光電変換素子の製造方法について説明する。
【0018】
本発明の実施形態となる光電変換素子1は、図1に示すように、基板2(第1の基板)と基板3(第2の基板)により電荷輸送層4を挟持した構成を有し、電荷輸送層4の外周部は封止材5(図2参照)により封止されている。基板2は、基材6と、基材6の表面上に形成された電極層7(第1の電極)と、電極層7の表面上に形成された多孔質の半導体層8とを有し、半導体層8側において基板3と対向している。また基板3は、基材9と、基材9表面上に形成された電極層10(第2の電極,対電極)とを有し、電極層10側において基板2と対向している。
【0019】
このような構成を有する光電変換素子1は、半導体層8と電極層10が対向するように基板2と基板3とを対向配置し、図2に示すように、基板2と基板3との間に封止材5を挟み、基板2と基板3の裏面領域うち、半導体層8に対応する領域を冷却装置12により冷却すると共に封止材5が挟まれている領域に対応する領域を加熱装置11により加熱することにより、基板2と基板3を接着する。またこの時、加熱領域と冷却領域にかかる圧力を異なせる。
【0020】
このような製造方法によれば、半導体層8に熱が加わることによって素子特性が劣化することを抑制できる。またこの結果、より封止強度が高い封止材を用いて基板2と基板3を接着することができるので、光電変換素子1の信頼性を向上させることができる。さらに、加熱領域と冷却領域にかかる圧力が異なる状態で基板2と基板3を接着することにより加熱の際に基板2,3に生じる応力に伴う歪みを緩和することができるので、封止材5に応力がかかることによって時間の経過と共に封止材5が剥離し、素子の経時劣化が生じることを抑制できる。また、基板2,3の裏面側を加熱,冷却して基板2と基板3を接着することにより、より厳密な温度制御が可能になるので、電極層10側から半導体層8側に熱が伝達することを抑制できる。
【0021】
なお、基板2と基板3の裏面領域うち、半導体層8に対応する領域を冷却装置12により予め冷却した後に封止材5が挟まれている領域に対応する領域を加熱装置11により加熱することが望ましい。このような製造方法によれば、基材6,9がガラスやセラミックス等の熱伝導性が低い材料により形成されている場合であっても加熱の影響を効果的に軽減することができる。また、冷却領域にかかる圧力は加熱領域にかかる圧力よりも小さくすることが望ましい。このような製造方法方法によれば、冷却領域と加熱領域の熱膨張差をより効果的に緩和することができる。
【0022】
上記電荷輸送層4は、固体電解質,正孔輸送有機化合物,又は電解質溶液により形成されている。電荷輸送層4を電解質溶液により形成した場合、電解質溶液は多孔質の半導体層8表面に確実に接触するので有効である。電解質を溶解するために使用される溶媒は酸化還元系構成物質を溶解してイオン伝導性に優れた化合物が好ましい。この場合、溶媒としては水性溶媒及び有機溶媒のいずれも使用できるが、酸化還元系構成物質をより安定化させるために有機溶媒を用いることが望ましい。
【0023】
例えば、ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート,メチルエチルカーボネート,エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、酢酸メチル,プロピオン酸メチル,γ−ブチロラクトン等のエステル化合物、ジエチルエーテル,1,2−ジメトキシエタン,1,3−ジオキソシラン,テトラヒドロフラン,2−メチル−テトラヒドロフラン等のエーテル化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン,2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル,メトキシアセトニトリル,プロピオニトリル等のニトリル化合物、スルフォラン,ジジメチルスルフォキシド,ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性化合物等を例示することができる。これらはそれぞれ単独で用いることもできるし、2種類以上を混合して併用することもできる。中でも、エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、γ−ブチロラクトン、3−メチル−2−オキサゾジリノン,2−メチルピロリドン等の複素環化合物、アセトニトリル,メトキシアセトニトリル,プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル,吉草酸ニトリル等のニトリル化合物が好ましい。
【0024】
また、電荷輸送層4としてイオン性液体を用いることも不揮発性,難燃性等の観点から有効である。なおこの場合、公知のイオン性液体全般を用いることができるが、イミダゾリウム系,ピリジン系,脂環式アミン系,脂肪族アミン系,及びアゾニウムアミン系のイオン性液体や、文献(欧州特許第718288号公報,国際特許出願95/18456号公報,電気化学第65巻11号923頁(1997年),J.Electrochem.Soc.143巻,10号,3099頁(1996年),Inorg.Chem.35巻,1168頁(1996年))に記載されたイオン性液体を用いることが望ましい。
【0025】
また、電荷輸送層4としてゲル化電解質又は高分子電解質を使用することもできる。ゲル化剤としては、ポリマー,ポリマー架橋反応等の手法を用いるゲル化剤,重合可能な多官能ポリマーによるゲル化剤,オイルゲル化剤等を例示することができる。ゲル化電解質及び高分子電解質としては、一般的に用いられているものを利用できるが、ポリフッ化ビニリデン等のフッ化ビリニデン系重合体,ポリアクリル酸等のアクリル酸系重合体,ポリアクリロニトリル等のアクリロニトリル系重合体,ポリエチレンオキシド等のポリエーテル系重合体,構造中にアミド構造を有する化合物を用いることが好ましい。
【0026】
上記封止材5は熱可塑性樹脂により形成されている。封止材として熱可塑性樹脂を用いることにより、電極部分と封止部分を近づけることが可能になるので、実装密度を上げる必要がある民生用途向けの素子等には有効である。なお、電極部分と封止材5の間隔は0[mm]でもよいし、場合によっては封止材5の一部が電極部分と重なっていてもよい。この場合、冷却部分近傍の熱可塑性樹脂は融着されずに残るので、電極部分の光発電の妨げにはならない。
【0027】
上記熱可塑性樹脂は、いわゆるホットメルト樹脂と同義であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン・α−オレフィン共重合体,エチレン−アクリル酸メチル共重合体,エチレン−アクリル酸エチル共重合体,エチレン−アクリル酸共重合体,エチレン−メタアクリル酸共重合体,線状低密度ポリエチレン,アクリル系樹脂,シリコーン系樹脂,アイオノマー樹脂のほか、ポリスチレン系,ポリオレフィン系,ポロジエン系,ポリエステル系,ポリウレタン系,フッ素樹脂系,ポリアミド系のエラストマー等の中から被着面の材質に応じて適宜選択して使用することができる。なお、熱可塑性樹脂の厚みは、特に限定されることはないが、10〜100[μm]の範囲内とすることが望ましい。
【0028】
上記基材6は、ガラスやフィルム,セラミック,金属等により形成されている。基材6を光入射基板として機能させる場合、基材6は透明であることが好ましい。また、基材6を可撓性のあるフィルムにより形成した方が素子に可撓性を付与できるので、高機能化の点で好ましい。また、基材6を光入射基板として機能させるのであれば、基材6のフィルムとしてニッケル,亜鉛,チタン等の金属箔を使用することができる。可撓性フィルムを基材6として用いた場合、圧力を加えることで半導体層8を形成することができる。加圧の際に用いるプレスの種類については、平板プレスやロールプレス等、特に限定されることはないが、導電フィルムを基材6に用いた場合には、ロールプレスはロール・トゥ・ロールで連続生産できるので好ましい。
【0029】
また、基材6としてガラスを用いた場合には、厚さは0.3〜0.7[mm]の範囲内にすることが望ましい。従来の基板の厚みは1.1〜3[mm]の範囲内にあるが、基材6の厚さを0.3〜0.7[mm]の範囲内にすることにより、基材6の蓄熱の影響を軽減することができると共に、基材6の断面方向における熱の拡散による加熱冷却の相乗効果を低減することができる。またこれにより、加熱する必要がある封止部分と冷却する必要がある電極部分の間隔が小さい場合であっても問題なく処理することができる。なお、基材6の厚さは割れやすくなることを考慮すれば特に下限はない。0.3〜0.7[mm]の厚さの基材6は、封止部分と電極部分の間隔が0.5[mm]以下である場合に特に有効である。
【0030】
一般に、ガラスが薄くなれば加圧時の撓みが大きくなる。その際には特に加熱部分と冷却部分にかかる圧力が異なる状態で貼り合わせることで素子内部応力を緩和でき、信頼性の高い素子を作製することができる。この時、冷却部分の加圧力が加熱部分の加圧力よりも小さくすることにより、加熱された基板部分と冷却された基板部分の熱膨張の違いを緩和する上で望ましい。なお、薄い基板を用いた場合には、基板がガラスであっても素子における封止部分の厚みと電極部分の厚みが異なる場合があるが、初期特性や信頼性には問題はない。
【0031】
上記電極層7の表面抵抗は、低い程よく、好ましくは200[Ω/□]以下、より好ましくは50[Ω/□]以下である。下限は特に制限しないが通常0.1[Ω/□]である。電極層7の光透過率は、高い程よく、好ましくは50[%]以上、より好ましくは80[%]以上である。電極層7の膜厚は0.1〜10[μm]の範囲内にあることが望ましい。この範囲内であれば、均一な膜厚の電極膜を形成することができると共に、光透過性が低下せず、十分な光を半導体層8に入射させることができる。電極層7が透明である場合、光は増感色素が担持された半導体層8が被着される側の電極層7から入射させることが好ましい。
【0032】
上記半導体層8は、粒径が5〜1000[nm]の範囲内にある半導体粒子により形成されている。粒径が5〜1000[nm]の範囲内にある半導体粒子を用いることにより、半導体層8の細孔径が適切な孔径になり、半導体層8の中に電解質が十分に浸透して優れた光電変換特性を得ることができる。また、半導体層8の膜厚は0.1〜100[μm]の範囲内にあることが望ましい。この範囲内であれば、十分な光電変換効果が得られ、また可視光及び近赤外光に対する透過性が悪化することがない。半導体層8は、ドクターブレードやバーコータ等を用いる塗布方法,スプレー法,ディップコーティング法,スクリーン印刷法,スピンコート法等の公知の方法を用いて半導体粒子とバインダーの混合溶液を電極層7の表面に塗布した後、基材6がガラス基板であれば500[℃]前後で加熱焼成し、基材6がフィルム基板であればプレス機で圧力を加えることにより形成することができる。
【0033】
上記半導体材料としては、Cd,Zn,In,Pb,Mo,W,Sb,Bi,Cu,Hg,Ti,Ag,Mn,Fe,V,Sn,Zr,Sr,Ga,Si,Cr等の金属元素の酸化物、SrTiO,CaTiO等のペロブスカイト、CdS,ZnS,In,PbS,MoS,WS,Sb,Bi,ZnCdS,CuS等の硫化物、CdSe,InSe,WSe,HgS,PbSe,CdTe等の金属カルコゲナイド、GaAs、Si、Se、Cd、Zn、InP、AgBr、PbI、HgI、BiIを例示することができる。また、上記半導体材料から得らばれる少なくとも一種以上を含む複合体、例えば、CdS/TiO,CdS/AgI,AgS/AgI,CdS/ZnO,CdS/HgS,CdS/PbS,ZnO/ZnS,CdS/HgS,CdS/CdSe1−x,CdS/Te1−x,CdSe/Te1−x,ZnS/CdSe,ZnSe/CdSe,CdS/ZnS,TiO/Cd,CdS/CdSe/CdZn1−yS,CdS/HgS/Cds等を例示することができる。中でもTiOは、電解液中への光溶解の回避と高い光電変換特性の点で好ましい。
【0034】
上記半導体層8が担持する増感色素としては、従来の色素増感型光電変換素子において常用されている色素であれば全て使用することができる。具体的には、RuL(HO)タイプのルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体、ルテニウム−トリス(RuL),ルテニウム−ビス(RuL),オスニウム−トリス(OsL),オスニウム−ビス(OsL)タイプの遷移金属錯体、亜鉛−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄−エキサシアニド錯体、フタロシアニン等を例示することができる。また、有機色素としては、9−フェニルキサンテン系色素,クマリン系色素,アクリジン系色素,トリフェニルメタン系色素,テトラフェニルメタン系色素,キノン系色素,アゾ色素,インジゴ系色素,シアニン系色素,メロシアニン系色素,キサンテン色素等を例示することができる。中でも、ルテニウム−ビス(RuL)誘導体は可視光域で広い吸収スペクトルを有するため特に好ましい。
【0035】
上記半導体層8に増感色素を担持させる方法としては、例えば増感色素を溶かした溶液に基板2を侵漬させる方法が挙げられる。この溶液の溶媒としては、水,アルコール,トルエン,ジメチルホルムアミド等、増感色素を溶解可能なものであれば全て使用することができる。また侵漬方法として、増感色素溶液に基板2を一定時間侵漬させている時に加熱環流したり、超音波を印加したりすることもできる。半導体層8への色素担持後、担持せずに半導体層8に残ってしまった増感色素を取り除くために、アルコールで洗浄又は加熱環流することが望ましい。半導体層8への増感色素の担持量は、1×10−8〜1×10−6[mol/cm]、より好ましくは0.1×10−7〜9.0×10−7[mol/cm]の範囲内にあることが望ましい。この範囲内であれば、経済的、且つ、十分に光電変換効率向上を期待することができる。
【0036】
上記基材9は、基材6と同じ材料を使用することができる。基材9の透明性は透明,不透明のいずれでもよいが、両側の基板から光を入射させることができる点で透明であることが望ましい。基材6のフィルムとして金属箔を使用した場合には、基材9は前述の透光性のあるフィルムであることが望ましい。基材6の一方の表面に成膜される電極層7は、光電変換素子1の負極として機能し、金属で形成されるか、フィルム上に導電材層を積層することにより形成される。導電材としては、白金,金,銀,銅,アルミニウム,ロジウム,インジウム等の金属、炭素、インジウム−スズ複合酸化物,アンチモンをドープした酸化スズ,フッ素をドープした酸化スズ等の導電性金属酸化物、これら酸化物の複合体、これら酸化物上に酸化シリコン,酸化スズ,酸化チタン,酸化ジルコニウム,酸化アルミニウム等をコートした材料を例示することができる。
【0037】
上記電極層10は光電変換素子1の正極として機能し、増感色素が担持された半導体層8が被着される側の電極層7と同様に形成することができる。電極層10としては、光電変換素子1の正極として効率よく作用させるために、電解質の還元体に電子を与える触媒作用を有する素材を使用することが望ましい。このような素材としては、白金,金,銀,銅、アルミニウム,ロジウム,インジウム等の金属、グラファイト,カーボンナノチューブ,白金を担持したカーボン等の炭素材料、インジウム−スズ複合酸化物,アンチモンをドープした酸化スズ,フッ素をドープした酸化スズ等の導電性金属酸化物、ポリエチレンジオキシチオフェン,ポリピロール,ポリアニリン等の導電性高分子を例示することができ、中でも、白金,グラファイト,ポリエチレンジオキシチオフェン等が特に好ましい。なお、基材9の電極層10が被着されている表面側に透明導電膜を設けてもよく、透明導電膜は電極層7と同じ材料から成膜することができる。この場合、電極層10も透明であることが望ましく、電極層10が透明であれば、電極層10側又は両側から光を照射してもよい。これは、反射光等の影響によって光電変換素子1の表裏面両側から光照射が期待される場合有効である。
【実施例】
【0038】
次に、本発明に係る光電変換素子の製造方法を実施例に基づき具体的に説明する。
【0039】
〔実施例〕
実施例では、始めに、平均1次粒子径が18[nm]の高純度酸化チタン粉末をエチルセルロース中に分散させることによりスクリーン印刷用のペーストを第1のペーストとして作製した。次に、平均1次粒子径が18[nm]と平均1次粒子径が400[nm]の高純度酸化チタン粉末をエチルセルロース中に分散させることによりスクリーン印刷用のペーストを第2のペーストとして作製した。次に、第1のペーストを厚さ1[mm]の導電性ガラス基板(旭硝子製,F−SnO,表面抵抗10[Ω/□])上に塗布,乾燥し、得られた乾燥物を500[℃]で30分間空気中で焼成することにより基板上に厚さ10[μm]の多孔質酸化チタン膜を形成した。次に、多孔質酸化チタン膜上に第2のペーストを塗布,乾燥し、得られた乾燥物を500[℃]で30分間空気中で焼成することにより、多孔質酸化チタン膜上に厚さ4[μm]の酸化チタン膜を形成した。次に、基板を[Ru(4,4’−ジカルボキシル−2,2’−ピピリジン)−(NCS)]で表される増感色素溶液中に浸漬し、室温で24時間暗所下静置することにより色素吸着処理を行い基板2を形成した。なお、電極(酸化チタン膜))の有効面積は縦約10[mm]×横約30[mm]であった。次に、導電性ガラス基板(旭硝子製,フッ素ドープSnO,表面抵抗10[Ω/□])表面上に白金をスパッタ法により取り付けることにより基板3を形成した。次に、基板2の酸化チタン膜の周囲に一部残して囲うように切られたC字状の厚さ50[μm]の熱溶融性バイネル(Bynel 14164,デュポン社製)をのせ、さらに基板3上に配置した。次に、基板2/樹脂/基板3の順に重ねられた材料を樹脂の部分のみが抵抗加熱され、電極の部分が水冷冷却された加熱装置を用いて両面から加熱冷却しつつ加圧した。加熱装置の表面温度は220[℃],冷却装置の表面温度は20[℃],圧力は加熱部分が3[kgf/cm]、冷却部分が0.5[kgf/cm]で30秒間加熱した。最後に、重ねられたガラス基板の側面の封止材が存在しない部分から電子輸送層として、0.5[mol/dm3]のテトラプロピルアンモニウムヨージド,0.1[mol/dm3]のヨウ化リチウム,0.005[mol/dm3]のヨウ素,及び0.5[mol/dm3]の4-tert-プチルピリジンを含むγ-ブチルラクトンを用いた電解液を注入した後、注液口をUV硬化樹脂で封止することにより、実施例の光電変換素子を作製した。
【0040】
〔比較例〕
比較例では、基板2と基板3とを表面温度を220[℃]に設定したホットプレートを用いて貼り合わせた以外は上記実施例と同じ処理を行うことにより比較例の光電変換素子を作製した。
【0041】
〔太陽電池出力の評価〕
実施例及び比較例の光電変換素子に対し、キセノンランプ(擬似太陽光スペクトル,AM1.5)を用いて1[mW/cm2]の照度の光を照射し、その時の太陽電池出力を測定した。また、85[℃]−85[%]RHの恒温恒湿槽内に200時間放置した後の太陽電池出力も測定した。実施例の光電変換素子の初期の太陽電池出力を100とすると、85[℃]−85[%]RHの恒温恒湿槽内に200時間放置した後の実施例の光電変換素子の太陽電池出力は97であった。一方、比較例の光電変換素子の初期の太陽電池出力は80であり、85[℃]−85[%]RHの恒温恒湿槽内に200時間放置した後の比較例の光電変換素子の太陽電池出力は33であった。
【0042】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態となる光電変換素子の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態となる光電変換素子の製造装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1:光電変換素子
2,3:基板
4:電荷輸送層
5:封止材
6,9:基材
7,10:電極層
8:半導体層
11:加熱装置
12:冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増感色素が担持された半導体を付着した第1の電極を表面側に有する第1の基板と第2の電極を表面側に有する第2の基板とを、第1の電極と第2の電極が対向するように第1の基板と第2の基板の表面側を対向配置し、基板表面間に封止材を挟んで封止材を加熱することにより、接着する光電変換素子の製造方法において、
第1及び第2の基板の少なくとも一方の基板表面うち、第1の電極が形成されている基板表面に対応する領域を冷却すると共に、封止材に対応する領域を加熱し、加熱領域と冷却領域にかかる圧力が異なる状態で第1の基板と第2の基板とを接着することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換素子の製造方法であって、前記封止材は熱可塑性樹脂であることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光電変換素子の製造方法であって、第1及び第2の基板の裏面側を加熱,冷却して第1の基板と第2の基板とを張り合わせることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、第1の電極が形成された基板表面に対応する領域を予め冷却した後に封止材を加熱することにより第1の基板と第2の基板とを接着することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、前記第1及び第2の基板の少なくとも一方は厚さが0.3[mm]以上0.7[mm]以下の数値範囲内にあるガラス基板であることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、冷却領域にかかる圧力を加熱領域にかかる圧力よりも小さくすることを特徴とする光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−10204(P2008−10204A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177081(P2006−177081)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】