説明

光電変換素子及び光電気化学電池

【課題】変換効率が高く、耐久性に優れた光電変換素子および光電気化学電池を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に色素が吸着された半導体微粒子層を有する感光体、電荷移動体、および対極を含む積層構造よりなる光電変換素子であって、色素が一般式(1)で表される構造を有し、電荷移動体がヘテロ環4級塩化合物を含有する電解質組成物を有する光電変換素子。


[一般式(1)中、Dは色素残基を表し、nは1以上の整数を表す。ACCは、ヘテロ環酸性核を有する基又は電子吸引基で置換されたメチン基を表す。但し、ACCは、直接又は連結基を介して少なくとも2つの酸性基を有する。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換効率が高く、耐久性に優れた光電変換素子及び光電気化学電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。中でも、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は、燃料が不要であり、無尽蔵なクリーンエネルギーを利用したものとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。この中でも、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められてきた。各国の政策的な配慮もあって普及が進んでいる。しかし、シリコンは無機材料であり、スループット及び分子修飾には自ずと限界がある。
【0003】
そこで色素増感型太陽電池の研究が精力的に行われている。とくに、スイスのローザンヌ工科大学のGraetzel等がポーラス酸化チタン薄膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した色素増感型太陽電池を開発し、アモルファスシリコン並の変換効率を実現した。これにより、色素増感型太陽電池が一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
【0004】
特許文献1には、この技術を応用し、ルテニウム錯体色素によって増感された半導体微粒子を用いた色素増感光電変換素子が記載されている。
しかしながら、ルテニウム錯体色素は極めて高価である。その上、ルテニウムは供給性に懸念があり、次世代のクリーンエネルギーを支える技術として本格的に対応するにはまだ十分といえない。そこで、資源的制約が小さく廉価な有機色素を増感剤として用い、十分な変換効率を有する光電変換素子の開発が望まれており、有機色素を増感剤として用いたものが報告されている(特許文献2参照)。
ところで、光電変換素子には、初期の変換効率が高く、使用後も変換効率の低下が少なく耐久性に優れることが必要とされる。しかし耐久性という点では、特許文献2及び3記載の光電変換素子では十分とはいえない。
また、特定の化合物を用いた電解質組成物を電荷移動層に使用することにより、電解液の漏洩を低減した光電変換素子が報告されている(特許文献3)。この光電変換素子により電解質の漏洩という点は改善されているものの、さらに耐久性に優れた光電変換素子及び光電気化学電池が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5463057号明細書
【特許文献2】特許第4148374号公報
【特許文献3】特開2001−256828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、変換効率が高く、さらに耐久性に優れた光電変換素子および光電気化学電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、導電性支持体上に特定の色素(色素化合物)が吸着された多孔質半導体微粒子層を有する感光体、特定の化合物を含有する電解質組成物を有する電荷移動体、及び対極を含む積層構造よりなる光電変換素子とこれを用いた光電気化学電池が、変換効率が高く、耐久性に優れることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
【0008】
<1>導電性支持体上に色素が吸着された半導体微粒子層を有する感光体、電荷移動体、および対極を含む積層構造よりなる光電変換素子であって、前記色素が下記一般式(1)で表される構造を有し、前記電荷移動体がヘテロ環4級塩化合物を含有する電解質組成物を有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】

[一般式(1)中、Dは色素残基を表し、nは1以上の整数を表す。ACCは、ヘテロ環酸性核を有する基又は電子吸引基で置換されたメチン基を表す。但し、ACCは、直接又は連結基を介して少なくとも2つの酸性基を有する。]
<2>前記へテロ環4級塩化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする<1>項記載の光電変換素子。
【化2】

[一般式(2)中、Rは−(CR3132−CR3334−O)−結合(R31〜R34はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、aは2〜20の整数を表す。)を含む置換基を表し、Qは窒素原子と共に5又は6員環の芳香族カチオンを形成しうる原子団を表し、置換基を有していてもよく、Zはアニオンを表す。]
<3>前記一般式(1)で表される構造を有する色素が、下記一般式(3)で表される構造を有することを特徴とする<1>又は<2>項記載の光電変換素子。
【化3】

[一般式(3)中、Aは炭素−窒素結合とともに環を形成するために必要な原子群を表す。YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基を表す場合は、他方は電子求引基を表す。Dは色素残基を表し、nは1以上の整数を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。]
<4>前記一般式(3)で表される色素が、下記一般式(4)〜(7)のいずれかで表されることを特徴とする<3>項記載の光電変換素子。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

[一般式(4)〜(7)中、YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基を表す場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、単結合または、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。R及びRはLL上の置換基とともに環を形成していても良い。]
<5>前記一般式(4)で表される色素が、下記一般式(8)で表されることを特徴とする<4>項記載の光電変換素子。
【化8】

[一般式(6)中、YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基の場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、単結合または、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。R、Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Bはベンゼン環上の2つの炭素原子および窒素原子とともに環を形成するために必要な原子群を表す。]
<6>前記一般式(7)で表される色素が、下記一般式(9)で表されることを特徴とする<4>項記載の光電変換素子。
【化9】

[一般式(9)中、YとYの少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基の場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、単結合または、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Bはベンゼン環上の2つの炭素原子および窒素原子とともに環を形成するために必要な原子群を表す。
<7>前記Y及びYの酸性基がカルボン酸基であることを特徴とする<3>〜<6>のいずれか1項記載の光電変換素子。
<8>前記一般式(2)で表されるヘテロ環4級塩化合物が、下記一般式(10)又は(11)で表されることを特徴とする<2>〜<7>のいずれか1項記載の光電変換素子。
【化10】

【化11】

[一般式(10)及び(11)において、R55は−(CR5152−CR5354−O)−結合(R51〜R54はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、bは2〜20の整数を表す。)を含む置換基を表し、R56〜R60はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、Zはアニオンを表し、R55〜R60のうち2つ以上が互いに連結して環構造を形成していてもよい。]
<9>前記ZがI、N(CFSO、BF、R−COO(Rは水素原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基又はアリール基を表す。)、R−SO(Rはアルキル基、パーフルオロアルキル基又はアリール基を表す。)又はSCNであることを特徴とする<2>〜<8>のいずれか1項記載の光電変換素子。
<10><1>〜<9>のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えることを特徴とする光電気化学電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、変換効率が高く、耐久性に優れた光電変換素子および光電気化学電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によって製造される光電変換素子の一実施態様について模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、導電性支持体上に特定の色素(色素化合物)が吸着された半導体微粒子層を有する感光体、特定の化合物を含有する電解質組成物を有する電荷移動体、及び対極を含む積層構造よりなる光電変換素子とこれを用いた光電気化学電池が、変換効率が高く、耐久性、特に変換効率の低下が少ないことを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
【0012】
本発明の光電変換素子の好ましい実施態様を、図面を参照して説明する。図1に示すように、光電変換素子10は、導電性支持体1、導電性支持体1上に色素が吸着された半導体微粒子を有する感光体2、電荷移動体3及び対極4からなる。感光体2が形成された導電性支持体1は光電変換素子10において作用電極として機能する。この光電変換素子10を外部回路6で仕事をさせる電池用途に使用できるようにして、光電気化学電池(図示せず)として作動させることができる。
【0013】
受光電極5は、導電性支持体1および導電性支持体上に塗設される色素21の吸着した半導体微粒子22の感光層(半導体膜)2よりなる電極である。感光体(半導体膜)2に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有している。そこでこの電子が色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき色素21の分子は酸化体となっている。電極上の電子が外部回路で仕事をしながら色素酸化体に戻ることにより、光電気化学電池として作用する。この際、受光電極5はこの電池の負極として働く。
【0014】
本発明の光電変換素子は、導電性支持体上に後述の色素が吸着された多孔質半導体微粒子層を有する感光体を有する。感光体は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。感光体中の色素は一種類でも多種類の色素が混合されたものでもよいが、このうちの少なくとも1種は、後述の色素を用いる。本発明の光電変換素子の感光体には、この色素が吸着した半導体微粒子を含み、感度が高く、光電気化学電池として使用する場合に、高い変換効率を得ることができる。
さらに同時に、後述のヘテロ環4級塩化合物を含有する電解質組成物を電荷移動体に用いることにより、変換効率が高いだけでなく、変換効率の低下が少なく耐久性に優れている光電変換素子を得ることができる。
【0015】
(A)色素
従来、色素増感光電変換素子に使用される色素の開発は、主にドナー部位に着目して行われていた。そこで吸着部位に環状化合物を導入した色素に着目し、鋭意検討を重ねた結果、炭素原子と窒素原子からなる環状構造の窒素原子に単結合又は2価の連結基を介して酸性基が結合するとともに、該環状構造のエキソメチレンが1つ以上の酸性基で置換された特定の色素(色素化合物)を増感色素として用いることで、太陽光のうち比較的長波長領域まで吸収することができ、変換効率の高い光電気化学電池を提供することができることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
【0016】
本発明で使用される一般式(1)〜(8)の構造を有する色素(色素化合物)は、本発明の光電気化学電池において、増感色素として作用する。
下記一般式(1)において、Dは色素残基を表す。色素残基Dは、ヘテロ環酸性核を有する基又は電子吸引基で置換されたメチン基を表すACCと、連結基を介して単結合又は二重結合により、直接又は間接に結合している。色素残基Dは、少なくとも2つ結合する酸性基を除いた構造とともに全体として色素を構成するのに必要な原子群を示す。Dによって形成される色素としては、例えば、メロシアニン、ヘミシアニン、スチリル、オキソノール、シアニンなどのポリメチン色素、アクリジン、キサンテン、チオキサンテンなどを含むジアリールメチン、トリアリールメチン、クマリン、インドアニリン、インドフェノール、ジアジン、オキサジン、チアジン、ジケトピロロピロール、インジゴ、アントラキノン、ペリレン、キナクリドン、ナフトキノン、ビピリジル、ターピリジル、テトラピリジル、フェナントロリンなどが挙げられる。好ましくは、ポリメチン色素、ポリアリール色素等が挙げられる。
nは1以上の整数を表し、好ましくは1〜5、さらに好ましくは、1〜3であり、特に好ましくは1である。
【0017】
【化12】

前記一般式(1)中、ACCはヘテロ環酸性核を有する基又は電子吸引基で置換されたメチン基を表す。但し、ACCは直接に又は連結基を介して少なくとも2つの酸性基を有する。それによって、酸化物半導体吸着時にエントロピー的に有利となり、吸着力が飛躍的に向上すると考えられる。ヘテロ環酸性核としてT.H.James著「TheTheory of the photografic process. forth edition.」Macmillan publishing社,1977年刊の199ページに記載のものが挙げられる。ヘテロ環酸性核として好ましくは、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ピラゾリジンジオン、ピラゾロン、インダンジオン、イソオキサゾロン、さらに好ましくは、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、特に好ましくはロダニンである。
【0018】
電子吸引基としては、後述の効果(−I効果、−M効果)を持つ置換基が挙げられる。一般に、電子吸引基は分子の特定の位置について電子密度を減弱させる。電子求引性あるいは電子供与性は単に電気陰性度の差だけでは説明できない。すなわち、誘起効果やメソメリー効果などが複合的に作用するので、芳香性や共役系の存在やトポロジー的な位置関係によって現れ方が変わってくる。これらの効果を、パラ及びメタ置換安息香酸の酸解離定数をもとに定量的に評価、予測する経験則としてハメット則が知られる。誘起効果の場合、電子求引性のものを−I効果、電子供与性のものを+I効果と表すが、炭素よりも電気陰性度の高い原子は−I効果を示す。また、アニオンは+I効果を、カチオンは−I効果を示す。メソメリー効果の場合は、電子求引性のものを−M効果、電子供与性のものを+M効果と表す。電子求引基の例として例えば以下のものが挙げられる。
誘起効果
(−I効果)
・−O > −N
・−N > −P> …
・−O > −S > …
・−N > −NO > −SOR > −SOR
・−SOR > −SO
・−N > −NR
・−O > −OR
・−S > −SR
・−F > −Cl > −Br > −I
・=O > =NR > =CR
・=O > −OR
・≡N > ≡CR
・≡N > =NR > −NR
・−C≡CR > −CR=CR > −CRCR
メソメリー効果
(−M効果)
・=N > =NR
・=O > =NR > =CR
・=S > =O > ≡N
電子吸引基として、好ましくはシアノ基、ニトロ基、スルフォニル基、スルフォキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、さらに好ましくはシアノ基、ニトロ基、スルフォニル基、特に好ましくはシアノ基である。
【0019】
酸性基とは、その基を構成する最も酸性の水素原子のpKaが13以下の基である。酸性基の例として例えばカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、アルキルスルフォニルカルバモイル基、リン酸基が挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボン酸基である。
【0020】
前記一般式(1)の構造を有する色素は、下記一般式(3)の構造を有する色素であることが好ましい。
【化13】

一般式(3)において、Aは炭素−窒素結合とともに環を形成するために必要な原子群を表す。Aは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1種以上の原子により構成されるのが好ましい。また、Aによって形成される環は5から7員環が好ましく、5員環、6員環が好ましい。さらに、Aによって形成された環は色素としての吸収の長波化の観点から、ヘテロ原子(窒素原子、酸素原子及び硫黄原子等)を少なくとも2個以上(好ましくは2個で、さらに好ましくは窒素原子および硫黄原子から選択される)含有するのが好ましい。
とYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基を表す場合は、他方は電子求引基を表す。
Dは一般式(1)と同様、色素残基を表し、連結基を介して単結合又は二重結合により、炭素−窒素結合とともに形成された環を形成するAと結合している。色素残基とは、一般式(3)において全体として色素を構成するのに必要な原子群を示す。色素残基としては、例えば、メロシアニン、ヘミシアニン、スチリル、オキソノール、シアニンなどのポリメチン色素、アクリジン、キサンテン、チオキサンテンなどを含むジアリールメチン、トリアリールメチン、クマリン、インドアニリン、インドフェノール、ジアジン、オキサジン、チアジン、ジケトピロロピロール、インジゴ、アントラキノン、ペリレン、キナクリドン、ナフトキノン、ビピリジル、ターピリジル、テトラピリジル、フェナントロリンなどが挙げられる。好ましくは、ポリメチン色素、ポリアリール色素等が挙げられる。
nは1以上の整数を表し、好ましくは1〜5、さらに好ましくは、1〜3であり、特に好ましくは1である。
【0021】
一般式(3)〜(9)において、Lは単結合又は2価の連結基を表し、好ましくは2価の連結基である。2価の連結基としては、特に限定されないが、好ましくは炭素数0〜30の2価の連結基であり、例えばアルキレン基やアリーレン基などが挙げられる。2価の連結基はヘテロ原子を含んでいても良い。Lとして好ましくは、メチレン、エチレン、プロピレン、フェニレン、エテニレンなどが挙げられる。さらに好ましくはメチレン、フェニレンであり、これらは置換基を有していてもよい。
【0022】
一般式(3)〜(9)中のR、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。R、Rとして、さらに好ましくは脂肪族基、芳香族性基、特に好ましくは脂肪族基である。Rとしてさらに好ましくは、脂肪族基、水素原子、特に好ましくは水素原子である。
【0023】
脂肪族基として例えば、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)が挙げられる。好ましい脂肪族基として、炭素数1から30の、更に好ましくは炭素数1から25の、特に好ましくは炭素数1から20のアルキル基、アルケニル基であり、置換基を有していても良い。
【0024】
芳香族性基として例えば、ベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環もしくはこれらが縮環した環であり、これらは置換されていてもよい。好ましくはベンゼン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、さらに好ましくはベンゼン環、チオフェン環である。特に好ましくはベンゼン環である。これらは置換されていてもよい。
【0025】
炭素原子で結合する複素環基として、3〜6員の置換もしくは無置換の複素環基、更に好ましくは5もしくは6員の無置換の複素環基、特に好ましくは6員環の複素環基(例えば、ピペリジン、モルフォリン)である。これらは置換基を有していても良い。
【0026】
一般式(4)〜(9)において、LLは、単結合または、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。これらの組み合わせでも良く、置換基を有していても良い。
アルケニレン基としては、例えば、エテニレンが挙げられる。アルキニレン基としては、エチニレンを挙げることができる。アリーレン基としては、例えば、ベンゼン環、フラン環、ピロール環もしくはこれらが縮環した2価の環を挙げることができる。LLの例として例えば、下記式で挙げたものなどを挙げることができる。下記式のうち、好ましくは、LL−a、LL−d、LL−x、LL−y、LL−z、LL−vであり、さらに好ましくはLL−a、LL−x、LL−yであり、特に好ましくは、LL−x、LL−yである。なお、二重結合はE体またはZ体のどちらでもよく、それらの混合物であってもよい。
【0027】
【化14】

【化15】

【化16】

【0028】
前記一般式(8)及び(9)中、Bはベンゼン環上の2つの炭素原子および窒素原子とともに環を形成するために必要な原子群を表す。Bは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1種以上の原子により構成されるのが好ましい。Bが形成する環としては、好ましくは5〜8員環、さらに好ましくは5〜7員環、より好ましくは6員環又は7員環、特に好ましくは7員環である。Aによって形成された環は芳香環や脂環で縮環されていてもよい。
【0029】
前記一般式(1)及び(3)〜(9)における酸性基(例えば、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等)は、解離して対カチオンを有していても良い。対カチオンとしては特に制限はなく、有機、無機のいずれでもよい。代表的な例としてはアルカリ金属イオン(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属イオン(マグネシウム、カルシウム等)、アンモニウム、アルキルアンモニウム(例えばジエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等)、ピリジニウム、アルキルピリジニウム(例えばメチルピリジニウム)、グアニジニウム、テトラアルキルホスホニウム等のカチオンが挙げられる。
【0030】
(任意の置換基)
本発明においては、適宜、置換基(以下、置換基Wとする。)を有してもよい。例えば下記に示すものを挙げることができる。
・ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、
・アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
・アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、
・アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、
・芳香族性基(例えば、ベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環もしくはこれらが縮環した環)
・ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
・シアノ基、
・ヒドロキシル基、
・ニトロ基、
・カルボキシル基、
・アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、
・アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、
・シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、
・ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
・アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
・カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
・アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、
・アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
・アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、
・アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
・アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
・アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、
・アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
・スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
・アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
・メルカプト基、
・アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、
・アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、
・ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
・スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、
・スルホ基、
・アルキルもしくはアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
・アルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
・アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、
・アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
・アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、
・カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
・アリールもしくはヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、
・イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、
・ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、
・ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
・ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、
・ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、
・シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)。
また、置換基は更に置換されていても良い。その際、置換基の例としては、上述の置換基Wを挙げることができる。
【0031】
以下に、前記一般式(1)及び(3)〜(9)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ有する色素の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0032】
【化17】

【0033】
【化18】

【0034】
【化19】

【0035】
【化20】

【0036】
【化21】

【0037】
前記一般式(1)及び(3)〜(9)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ有する色素(色素化合物)は、例えば、F.M.Harmer著「Heterocyclic Compounds−Cynaine Dyes and Related Compounds」John Willey & Sons社,NewYork and London,1994年刊などに記載、引用もしくはこれらに類似の方法により合成することができる。
本発明の色素は、溶液における最大吸収波長が、好ましくは350〜1000nmの範囲であり、より好ましくは370〜700nmの範囲であり、特に好ましくは390〜650nmの範囲である。
【0038】
(B)へテロ環4級塩化合物
本発明の光電変換素子においては、電荷移動体にヘテロ環4級塩化合物を含有する電解質組成物を有するが、ヘテロ環4級塩化合物としては5員環又は6員環のヘテロ環4級塩化合物が好ましく、イミダゾール環またはピリジン環の4級塩化合物がさらに好ましい。 本発明において最も好ましいヘテロ環4級塩化合物は下記一般式(2)で表されるヘテロ環4級塩化合物である。
本発明の電解質組成物からなる電荷移動体は、後述の導電性支持体上に色素が吸着された半導体微粒子層を有する感光体上に、電解質組成物を塗布することにより、形成することができる。電荷移動体の厚さは0.001〜200μmであるのが好ましく、0.1〜100μmであるのがより好ましく、0.1〜50μmであるのが特に好ましい。
【化22】

【0039】
一般式(2)により表される化合物は低融点の塩、いわゆる溶融塩である。一般式(2)により表される化合物の融点は100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましく、60℃以下であるのが特に好ましい。この化合物には常温(25℃付近)で液体である化合物、いわゆる室温溶融塩が含まれる。
【0040】
一般式(2)により表される化合物は溶媒をほとんど用いずに電解質として使用できることが多く、単独で電解質として使用できる場合も多い。常温で固体であっても少量の溶媒や添加剤等を加えることで液状とし、電解質として使用できる。また何も添加しなくても、加熱溶解して電極上に浸透させる方法、低沸点溶媒(メタノール、アセトニトリル、塩化メチレン等)等を用いて電極上に浸透させ、その後溶媒を加熱により除去する方法等により光電変換素子に組み込むことができる。
【0041】
一般式(2)中、Rは−(CR3132−CR3334−O)−結合を含む置換基を表す。ここで、R31〜R34はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、このアルキル基の炭素原子数は1〜4個であるのが好ましい。R31〜R34はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であるのが好ましく、水素原子であるのがより好ましい。また、aは2〜20の整数を表し、2〜6の整数であるのが好ましく、さらに好ましくは2〜5の整数、特に好ましくは2〜4の整数である。aが小さすぎると光電変換素子に用いたときの開放電圧が低く、aが大きすぎるとイオン輸送能(電流密度)が大きく低下するため好ましくない。なお、Rは直鎖状であっても分岐状であっても、また環状であってもよい。
【0042】
本発明の電解質組成物が含有する一般式(2)により表される化合物は、置換又は無置換のエチレンオキシ基の繰り返しを含む置換基を、特定の位置に有する。メチレンオキシ基の繰り返しは合成が困難である。また、一般式(2)により表される化合物に、トリメチレンオキシ基又はそれ以上のメチレン基を有するアルキレンオキシ基の繰り返しを含む置換基を導入すると、電解質組成物のイオン輸送能が大きく低下し、光電変換素子に用いた際に光電変換効率が悪化してしまうため好ましくない。
【0043】
一般式(2)中、Qは窒素原子と共に5員環又は6員環の芳香族カチオンを形成しうる原子団を表す。Qは置換基を有していてもよく、この置換基は−(CR3132−CR3334−O)−結合を含むのが好ましい。ここで、R31〜R34はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、aは2〜20の整数を表す。R31〜R34及びaの好ましい態様は上記Rに含まれる、−(CR3132−CR3334−O)−結合の場合と同様である。なお、一般式(2)により表される化合物が複数の−(CR3132−CR3334−O)−結合を含む場合、それらのR31〜R34及びaは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
一般式(2)の化合物は、窒素原子に一般式(2)中のQ又は置換基が結合することによりカチオンとなっている。そのカチオンは、後述のZとともに、電気的に中性となり、ヘテロ環4級塩化合物となっている。
【0044】
Qは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1種以上の原子により構成されるのが好ましい。
Qが形成する5員環はオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環又はトリアゾール環であるのが好ましく、オキサゾール環、チアゾール環又はイミダゾール環であるのがより好ましく、イミダゾール環であるのが特に好ましい。Qが形成する6員環はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環又はトリアジン環であるのが好ましく、ピリジン環であるのが特に好ましい。
【0045】
前述のようにQ上の置換基は−(CR3132−CR3334−O)−結合を含むのが好ましい。加えて、好ましいQ上の置換基の例としてアルコキシ基(メトキシ、エトキシ等)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(エトキシカルボニル、メトキシエトキシカルボニル等)、炭酸エステル基(エトキシカルボニルオキシ等)、アミド基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、カルバモイル基(N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、ホスホニル基(ジエチルホスホニル等)、複素環基(ピリジル、イミダゾリル、フラニル、オキサゾリジノニル等)、アリーロキシ基(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、スルホニル基(メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、ベンゾイルオキシ等)、スルホニルオキシ基(メタンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ等)、アリール基(フェニル、トルイル等)、アリーロキシ基(フェノキシ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、2−カルボキシエチル、ベンジル等)等が挙げられる。これらの中ではアルコキシ基、シアノ基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ホスホニル基、複素環基、アシル基、スルホニル基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基及びアルキル基がより好ましく、アルコキシ基、シアノ基、炭酸エステル基、ホスホニル基、複素環基及びアルキル基が特に好ましい。
【0046】
一般式(2)中、Zはアニオンを表す。Zの例としてはハロゲン化物イオン(I、Cl、Br等)、N(CFSO、N(CFCFSO、C(CFSO、BF、BPh、PF、ClO、R−COO、R−SO、SCN等が挙げられる。ZはI、N(CFSO、BF、R−COO、R−SO又はSCNであるのが好ましく、Iであるのがより好ましい。すなわち、一般式(2)により表される化合物はヨウ素塩であるのがより好ましい。
【0047】
上記Rは水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜10で、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また環状であってもよく、例えばメチル、エチルプロピル、ブチル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、デシル、シクロヘキシル、シクロペンチル等)、パーフルオロアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜10、例えばトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル等)又は置換若しくは無置換のアリール基(好ましくは炭素原子数6〜12、例えばフェニル、トリル、ナフチル等)を表す。Rはより好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基又はパーフルオロアルキル基であり、特に好ましくは炭素原子数1〜10のパーフルオロアルキル基である。
が置換基を有するアルキル基又はアリール基の場合、この置換基の好ましい例としては上記Q上の置換基の例と同様のものが挙げられる。加えて、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)も好ましい。より好ましくはアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0048】
上記Rは置換若しくは無置換のアルキル基、パーフルオロアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基(以上、好ましい例は上記Rと同様)を表す。Rはより好ましくは炭素原子数1〜7のアルキル基であり、特に好ましくは炭素原子数1〜5のアルキル基である。
が置換基を有するアルキル基又はアリール基の場合、この置換基の好ましい例としては上記Q上の置換基の例と同様のものが挙げられる。中でもアルコキシ基がより好ましい。
−COO及びR−SOは、R又はRを介して多量体を形成してもよい。多量体を形成する場合には2〜4量体が好ましく、2量体がより好ましい。
【0049】
一般式(2)により表される化合物は、更に下記一般式(10)又は(11)により表されるのが好ましい。
【化23】

【化24】

【0050】
一般式(10)及び(11)中、R55は−(CR5152−CR5354−O)−結合(R51〜R54はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、bは2〜20の整数を表す。)を含む置換基を表すが、このR55は上記一般式(2)中のRと同義であり、好ましい態様もRと同様である。R56〜R60はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R56〜R60が置換基である場合の好ましい例としては、上記Q上の置換基の例と同様のもの等が挙げられる。一般式(10)中のR56〜R59のうち少なくとも1つ、及び一般式(11)中のR56〜R60のうち少なくとも1つは、それぞれ−(CR5152−CR5354−O)−結合を含むのが好ましい。R55〜R60のうち2つ以上が互いに連結して環構造を形成してもよい。この環は5〜7員環が好ましく、5員環又は6員環がさらに好ましく、5員環が特に好ましい。Zはアニオンを表し、好ましい例は一般式(2)中のZのそれと同様である。
【0051】
一般式(2)により表される化合物中の−CR3132−CR3334−O−結合(R31〜R34はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。)の総数は、4〜6が好ましい。
一般式(2)により表される化合物はR又はQを介して多量体を形成してもよい。形成する多量体は2〜4量体が好ましく、2量体がより好ましい。
【0052】
本発明の電解質組成物に含有される一般式(2)、一般式(10)又は一般式(11)により表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化25】

【表1】

【0053】
【化26】

【表2】

【0054】
本発明の電解質組成物に含有されるヘテロ環4級塩化合物として、特に好ましくは一般式(2)、一般式(10)、一般式(11)であり、最も好ましくは、一般式(10)及び一般式(11)であるが、下記一般式(16)で表される化合物も好ましい。
一般式(16)は前記一般式(10)において、R56=R57=R59=Hである。R101は置換基を表し、該置換基としてはQ上の置換基が挙げられる。このなかでもR101は脂肪族基、芳香族基または複素環基が好ましく、脂肪族基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が最も好ましい。なかでもメチル基が好ましい。R102は一般式(10)のR58と同義であり、好ましい範囲も同じであるが、このうち脂肪族基が好ましく、アルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−メトキシエチル基)が最も好ましい。
以下に一般式(16)で表される化合物の具体例を示す。
【化27】

【表3】

【0055】
本発明の光電変換素子に用いられる電解質組成物には、一般式(2)で表される化合物を代表とするヘテロ環4級塩化合物以外に酸化還元対として、例えばヨウ素とヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム等)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体(例えば赤血塩と黄血塩)の組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物との組み合わせが好ましい。
ヨウ素塩のカチオンは5員環又は6員環の含窒素芳香族カチオンであるのが好ましい。特に、一般式(2)で表される化合物を代表とするヘテロ環4級塩化合物がヨウ素塩でない場合は、WO95/18456号、特開平8−259543号公報、電気化学,第65巻,11号,923頁(1997年)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等のヨウ素塩を併用するのが好ましい。
本発明においては、電解質組成中にヘテロ環4級塩化合物を少なくとも1種含有するものであるが、2種以上含有することが好ましく、本発明におけるヘテロ環4級塩化合物を組み合わせて使用することはさらに好ましい。
本発明の光電変換素子に使用される電解質組成物中には、ヘテロ環4級塩化合物と共にヨウ素を含有するのが好ましい。ヨウ素の含有量は電解質組成物全体に対して0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0056】
本発明の光電変換素子に用いられる電解質組成物は溶媒を含んでいてもよい。電解質組成物中の溶媒含有量は組成物全体の50質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのが特に好ましい。
溶媒としては低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度を高めることができるか、あるいはその両方であるために優れたイオン伝導性を発現できるものが好ましい。このような溶媒としてカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン等)、エーテル化合物(ジオキサン、ジエチルエーテル等)、鎖状エーテル類(エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ビスシアノエチルエーテル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルフォラン等)、水、特開2002−110262号公報記載の含水電解液、特開2000−36332号公報、特開2000−243134号公報、及び再公表WO/00−54361号公報記載の電解質溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は二種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
本発明の光電変換素子に用いられる電解質組成物には、ポリマーやオイルゲル化剤を添加したり、多官能モノマー類の重合やポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(固体化)してもよい。
【0058】
ポリマーを添加することにより電解質組成物をゲル化させる場合、Polymer Electrolyte Reviews−1及び2(J. R. MacCallumとC. A. Vincentの共編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)に記載された化合物等を添加することができる。この場合、ポリアクリロニトリル又はポリフッ化ビニリデンを用いるのが好ましい。
【0059】
オイルゲル化剤を添加することにより電解質組成物をゲル化させる場合は、オイルゲル化剤としてJ. Chem. Soc. Japan, Ind. Chem. Soc., 46779 (1943)、J. Am. Chem. Soc., 111, 5542 (1989)、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 390 (1993)、Angew. Chem. Int.Ed. Engl., 35, 1949 (1996)、Chem. Lett., 885, (1996)、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 545, (1997)等に記載された化合物を使用することができ、アミド構造を有する化合物を用いるのが好ましい。
【0060】
多官能モノマー類の重合によって電解質組成物をゲル化する場合は、多官能モノマー類、重合開始剤、電解質及び溶媒から溶液を調製し、キャスト法、塗布法、浸漬法、含浸法等の方法により色素を担持した電極上にゾル状の電解質層を形成し、その後多官能モノマーのラジカル重合によってゲル化させる方法が好ましい。多官能モノマー類はエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であることが好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が好ましい。
【0061】
ゲル電解質は上記多官能モノマー類の他に単官能モノマーを含む混合物の重合によって形成してもよい。単官能モノマーとしては、アクリル酸又はα−アルキルアクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等)或いはそれらのエステル又はアミド(メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、t−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2,2−ジメチルブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチルアクリレート、セチルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、t−ペンチルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、エチレングリコールエチルカーボネートメタクリレート、2−イソボルニルメタクリレート、2−ノルボルニルメチルメタクリレート、5−ノルボルネン−2−イルメチルメタクリレート、3−メチル−2−ノルボニルメチルメタクリレート、アクリルアミド、N−i−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル等)、マレイン酸又はフマル酸或いはそれらから誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル等)、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン等)、芳香族ビニル化合物(スチレン、p−クロロスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタクリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、N−フェニルマレイミド等が使用可能である。
【0062】
多官能モノマーの配合量は、モノマー全体に対して0.5〜70質量%とすることが好ましく、1.0〜50質量%であるのがより好ましい。上述のモノマーは、大津隆行・木下雅悦共著「高分子合成の実験法」(化学同人)や大津隆行「講座重合反応論1ラジカル重合(I)」(化学同人)に記載された一般的な高分子合成法であるラジカル重合によって重合することができる。本発明で使用するゲル電解質用モノマーは加熱、光又は電子線によって、或いは電気化学的にラジカル重合させることができるが、特に加熱によってラジカル重合させるのが好ましい。この場合、好ましく使用できる重合開始剤は2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート等の過酸化物系開始剤等である。重合開始剤の好ましい添加量はモノマー総量に対し0.01〜20質量%であり、より好ましくは0.1〜10質量%である。
ゲル電解質に占めるモノマーの重量組成範囲は0.5〜70質量%であるのが好ましい
。より好ましくは1.0〜50質量%である。ポリマーの架橋反応により電解質組成物をゲル化させる場合は、組成物に架橋可能な反応性基を有するポリマー及び架橋剤を添加するのが好ましい。好ましい反応性基はピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の含窒素複素環であり、好ましい架橋剤は窒素原子が求核攻撃できる官能基を2つ以上有する化合物(求電子剤)であり、例えば2官能以上のハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネート等である。
【0063】
本発明の電解質組成物には、金属ヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI等)、金属臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr等)、4級アンモニウム臭素塩(テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等)、金属錯体(フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等)、イオウ化合物(ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等)、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等を添加してよい。これらは混合して用いてもよい。
【0064】
また、本発明ではJ. Am. Ceram. Soc., 80, (12), 3157−3171 (1997)に記載のt−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を添加してもよい。塩基性化合物を添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05〜2Mである。
【0065】
(C)導電性支持体
図1に示すように、本発明の光電変換素子には、導電性支持体1上には多孔質の半導体微粒子22に色素21が吸着された感光体2が形成されている。後述する通り、例えば、半導体微粒子の分散液を導電性支持体に塗布・乾燥後、本発明の色素溶液に浸漬することにより、感光層を製造することができる。
導電性支持体としては、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、または表面に導電膜層を有するガラスや高分子材料を使用することができる。導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。導電性支持体としては、ガラスや高分子材料に導電性の金属酸化物を塗設したものを使用することができる。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスや高分子材料の支持体1m2当たり、0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。好ましく使用される高分子材料の一例として、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等を挙げることができる。導電性支持体上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003−123859号公報記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002−260746号公報記載のライトガイド機能が挙げられる。
この他にも、金属支持体も好ましく使用することができる。その一例としては、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、ステンレス、銅を挙げることができる。これらの金属は合金であってもよい。さらに好ましくは、チタン、アルミニウム、銅が好ましく、特に好ましくは、チタンやアルミニウムである。
【0066】
導電性支持体上には、紫外光を遮断する機能を持たせることが好ましい。例えば、紫外光を可視光に変えることが出来る蛍光材料を透明支持体中または、透明支持体表面に存在させる方法や紫外線吸収剤を用いる方法も挙げられる。
導電性支持体上には、さらに特開平11−250944号公報等に記載の機能を付与してもよい。
【0067】
好ましい導電膜としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、もしくは導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。
導電膜層の厚さは0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることが更に好ましく、特に好ましくは0.05〜20μmである。
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲としては50Ω/cm2以下であり、さらに好ましくは10Ω/cm2以下である。この下限に特に制限はないが、通常0.1Ω/cm2程度である。
【0068】
導電膜の抵抗値はセル面積が大きくなると大きくなる為、集電電極を配置してもよい。支持体と透明導電膜の間にガスバリア膜及び/又はイオン拡散防止膜を配置しても良い。ガスバリア層としては、樹脂膜や無機膜を使用することができる。
また、透明電極と多孔質半導体電極光触媒含有層を設けてもよい。透明導電層は積層構造でも良く、好ましい方法としてたとえば、ITO上にFTOを積層することができる。
【0069】
(D)半導体微粒子
図1に示すように、本発明の光電変換素子には、導電性支持体1上には半導体微粒子22に色素21が吸着された感光体2が形成されている。後述する通り、例えば、半導体微粒子の分散液を前記の導電性支持体に塗布・乾燥後、本発明の色素溶液に浸漬することにより、感光体を製造することができる。
半導体微粒子としては、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイトの微粒子が用いられる。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
【0070】
半導体には伝導に関わるキャリアーが電子であるn型とキャリアーが正孔であるp型が存在するが、本発明の素子ではn型を用いることが変換効率の点で好ましい。n型半導体には、不純物準位をもたず伝導帯電子と価電子帯正孔によるキャリアーの濃度が等しい固有半導体(あるいは真性半導体)の他に、不純物に由来する構造欠陥により電子キャリアー濃度の高いn型半導体が存在する。本発明で好ましく用いられるn型の無機半導体は、TiO、TiSrO、ZnO、Nb、SnO、WO、Si、CdS、CdSe、V、ZnS、ZnSe、SnSe、KTaO、FeS、PbS、InP、GaAs、CuInS、CuInSeなどである。これらのうち最も好ましいn型半導体はTiO、ZnO、SnO、WO、ならびにNbである。また、これらの半導体の複数を複合させた半導体材料も好ましく用いられる。
【0071】
半導体微粒子の粒径は、半導体微粒子分散液の粘度を高く保つ目的で、一次粒子の平均粒径が2nm以上50nm以下であることが好ましく、また一次粒子の平均粒径が2nm以上30nm以下の超微粒子であることがより好ましい。粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは5nm以下であるのが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、上記の超微粒子に対して平均粒径が50nmを越える大きな粒子を、低含率で添加することもできる。この場合、大粒子の含率は、平均粒径が50nm以下の粒子の質量の50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。上記の目的で添加混合する大粒子の平均粒径は、100nm以上が好ましく、250nm以上がより好ましい。
【0072】
半導体微粒子の作製法としては、作花済夫の「ゾル・ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)等に記載のゲル・ゾル法が好ましい。またDegussa社が開発した塩化物を酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法も好ましい。半導体微粒子が酸化チタンの場合、上記ゾル・ゲル法、ゲル・ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に記載の硫酸法および塩素法を用いることもできる。さらにゾル・ゲル法として、バルべ等のジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第80巻,第12号,3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、バーンサイドらのケミストリー・オブ・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419〜2425頁に記載の方法も好ましい。
【0073】
この他に、半導体微粒子の製造方法として、例えば、チタニアナノ粒子の製造方法として好ましくは、四塩化チタンの火炎加水分解による方法、四塩化チタンの燃焼法、安定なカルコゲナイド錯体の加水分解、オルトチタン酸の加水分解、可溶部と不溶部から半導体微粒子を形成後可溶部を溶解除去する方法、過酸化物水溶液の水熱合成、またはゾル・ゲル法によるコア/シェル構造の酸化チタン微粒子の製造方法が挙げられる。
【0074】
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、または、ルチル型があげられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。
チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドをチタニア微粒子に混合してもよい。
【0075】
チタニアは、非金属元素などによりドーピングされていても良い。チタニアへの添加剤としてド―パント以外に、ネッキングを改善する為のバインダーや逆電子移動防止の為に表面へ添加剤を用いても良い。好ましい添加剤の例としては、ITO、SnO粒子、ウイスカー、繊維状グラファイト・カーボンナノチューブ、酸化亜鉛ネッキング結合子、セルロース等の繊維状物質、金属、有機シリコン、ドデシルベンゼンスルホン酸、シラン化合物等の電荷移動結合分子、及び電位傾斜型デンドリマーなどが挙げられる。
【0076】
チタニア上の表面欠陥を除去するなどの目的で、色素吸着前にチタニアを酸塩基又は酸化還元処理しても良い。エッチング、酸化処理、過酸化水素処理、脱水素処理、UV−オゾン、酸素プラズマなどで処理してもよい。
【0077】
(C)半導体微粒子分散液
本発明においては、半導体微粒子以外の固形分の含量が、半導体微粒子分散液全体の10質量%以下よりなる半導体微粒子分散液を前記の導電性支持体に塗布し、適度に加熱することにより、多孔質半導体微粒子塗布層を得ることができる。
半導体微粒子分散液を作製する方法としては、前述のゾル・ゲル法の他に、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法、微粒子に超音波などを照射して超微粒子に粉砕する方法、あるいはミルや乳鉢などを使って機械的に粉砕しすり潰す方法、等が挙げられる。分散溶媒としては、水および/または各種の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,シトロネロール,ターピネオールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ジクロロメタン、アセトニトリル等が挙げられる。
分散の際、必要に応じて例えばポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、またはキレート剤等を分散助剤として少量用いてもよい。しかし、これらの分散助剤は、導電性支持体上へ製膜する工程の前に、ろ過法や分離膜を用いる方法、あるいは遠心分離法などによって大部分を除去しておくことが好ましい。半導体微粒子分散液は、半導体微粒子以外の固形分の含量が分散液全体の10質量%以下とすることができる。この濃度は好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.2%である。すなわち、半導体微粒子分散液中に、溶媒と半導体微粒子以外の固形分を半導体微分散液全体の10質量%以下とすることができる。実質的に半導体微粒子と分散溶媒のみからなることが好ましい。
半導体微粒子分散液の粘度が高すぎると分散液が凝集してしまい製膜することができず、逆に半導体微粒子分散液の粘度が低すぎると液が流れてしまい製膜することができないことがある。したがって分散液の粘度は、25℃で10〜300N・s/mが好ましい。さらに好ましくは、25℃で50〜200N・s/mである。
【0078】
半導体微粒子分散液の塗布方法としては、アプリケーション系の方法としてローラ法、ディップ法等を使用することができる。またメータリング系の方法としてエアーナイフ法、ブレード法等を使用することができる。またアプリケーション系の方法とメータリング系の方法を同一部分にできるものとして、特公昭58−4589号公報に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号明細書等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機を使用してスピン法やスプレー法で塗布するのも好ましい。湿式印刷方法としては、凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択する。また本発明の半導体微粒子分散液は粘度が高く、粘稠性を有するため、凝集力が強いことがあり、塗布時に支持体とうまく馴染まない場合がある。このような場合に、UVオゾン処理で表面のクリーニングと親水化を行うことにより、塗布した半導体微粒子分散液と導電性支持体表面の結着力が増し、半導体微粒子分散液の塗布が行い易くなる。
半導体微粒子層全体の好ましい厚さは0.1〜100μmである。半導体微粒子層の厚さはさらに1〜30μmが好ましく、2〜25μmがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m当りの担持量は0.5g〜400gが好ましく、5〜100gがより好ましい。
【0079】
塗布した半導体微粒子の層に対し、半導体微粒子同士の電子的接触の強化と、支持体との密着性の向上のため、また塗布した半導体微粒子分散液を乾燥させるために、加熱処理が施される。この加熱処理により多孔質半導体微粒子層を形成することができる。
また、加熱処理に加えて光のエネルギーを用いることもできる。例えば、半導体微粒子として酸化チタンを用いた場合に、紫外光のような半導体微粒子が吸収する光を与えることで表面を活性化してもよいし、レーザー光などで半導体微粒子表面のみを活性化することができる。半導体微粒子に対して該微粒子が吸収する光を照射することで、粒子表面に吸着した不純物が粒子表面の活性化によって分解され、上記の目的のために好ましい状態とすることができる。加熱処理と紫外光を組み合わせる場合は、半導体微粒子に対して該微粒子が吸収する光を照射しながら、加熱が100℃以上250℃以下あるいは好ましくは100℃以上150℃以下で行われることが好ましい。このように、半導体微粒子を光励起することによって、微粒子層内に混入した不純物を光分解により洗浄するとともに、微粒子の間の物理的接合を強めることができる。
【0080】
また、半導体微粒子分散液を前記の導電性支持体に塗布し、加熱や光を照射する以外に他の処理を行ってもよい。好ましい方法として例えば、通電、化学的処理などが挙げられる。
塗布後に圧力をかけても良く、圧力をかける方法としては、特表2003−500857号公報等が挙げられる。光照射の例としては、特開2001−357896号公報等が挙げられる。プラズマ・マイクロ波・通電の例としては、特開2002−353453号公報等が挙げられる。化学的処理としては、例えば特開2001−357896号公報が挙げられる。
【0081】
上述の半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法は、上述の半導体微粒子分散液を導電性支持体上に塗布する方法のほか、特許第2664194号公報に記載の半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し空気中の水分によって加水分解して半導体微粒子膜を得る方法などの方法を使用することができる。
前駆体として例えば、(NHTiF、過酸化チタン、金属アルコキシド・金属錯体・金属有機酸塩等が挙げられる。
また、金属有機酸化物(アルコキシドなど)を共存させたスラリーを塗布し加熱処理、光処理などで半導体膜を形成する方法、無機系前駆体を共存させたスラリー、スラリーのpHと分散させたチタニア粒子の性状を特定した方法が挙げられる。これらスラリーには、少量であればバインダーを添加しても良く、バインダーとしては、セルロース、フッ素ポリマー、架橋ゴム、ポリブチルチタネート、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
半導体微粒子又はその前駆体層の形成に関する技術としては、コロナ放電、プラズマ、UVなどの物理的な方法で親水化する方法、アルカリやポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸などによる化学処理、ポリアニリンなどの接合用中間膜の形成などが挙げられる。
【0082】
半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法として、上述の(1)湿式法とともに、(2)乾式法、(3)その他の方法を併用しても良い。
(2)乾式法として好ましくは、特開2000−231943号公報等が挙げられる。
(3)その他の方法として、好ましくは、特開2002−134435号公報等が挙げられる。
【0083】
乾式法としては、蒸着やスパッタリング、エアロゾルデポジション法などが挙げられる。また、電気泳動法・電析法を用いても良い。
また、耐熱基板上でいったん塗膜を作製した後、プラスチック等のフィルムに転写する方法を用いても良い。好ましくは、特開2002−184475号公報記載のEVAを介して転写する方法、特開2003−98977号公報記載の紫外線、水系溶媒で除去可能な無機塩を含む犠牲基盤上に半導体層・導電層を形成後、有機基板に転写後、犠牲基板を除去する方法などが挙げられる。
【0084】
半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子を支持体上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。好ましい半導体微粒子の構造としては、特開2001−93591号公報等が挙げられる。
【0085】
一般に、半導体微粒子の層の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。半導体微粒子層の好ましい厚みは素子の用途によって異なるが、典型的には0.1〜100μmである。光電気化学電池として用いる場合は1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。半導体微粒子は、支持体に塗布した後に粒子同士を密着させるために、100〜800℃の温度で10分〜10時間加熱してもよい。支持体としてガラスを用いる場合、製膜温度は400〜600℃が好ましい。
支持体として高分子材料を用いる場合、250℃以下で製膜後加熱することが好ましい。その場合の製膜方法としては、(1)湿式法、(2)乾式法、(3)電気泳動法(電析法を含む)の何れでも良く、好ましくは、(1)湿式法、又は(2)乾式であり、更に好ましくは、(1)湿式法である。
なお、半導体微粒子の支持体1m当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。
【0086】
半導体微粒子に色素を吸着させるには、溶液と本発明の色素よりなる色素吸着用色素溶液の中に、よく乾燥した半導体微粒子を長時間浸漬するのが好ましい。色素吸着用色素溶液に使用される溶液は、本発明の色素が溶解できる溶液なら特に制限なく使用することができる。例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、t-ブタノール、アセトニトリル、アセトン、n−ブタノールなどを使用することができる。その中でも、エタノール、トルエンを好ましく使用することができる。
溶液と本発明の色素よりなる色素吸着用色素溶液は必要に応じて50℃ないし100℃に加熱してもよい。色素の吸着は半導体微粒子の塗布前に行っても塗布後に行ってもよい。また、半導体微粒子と色素を同時に塗布して吸着させてもよい。未吸着の色素は洗浄によって除去する。塗布膜の焼成を行う場合は色素の吸着は焼成後に行うことが好ましい。焼成後、塗布膜表面に水が吸着する前にすばやく色素を吸着させるのが特に好ましい。吸着する色素は1種類でもよいし、数種混合して用いてもよい。混合する場合、本発明の色素を2種以上混合してもよいし、本発明の趣旨を損なわない範囲内で錯体色素と本発明の色素を混合してもよい。光電変換の波長域をできるだけ広くするように、混合する色素が選ばれる。色素を混合する場合は、すべての色素が溶解するようにして、色素吸着用色素溶液とすることが必要である。
【0087】
色素の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。この場合、本発明の色素の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。
また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。
このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
【0088】
また、会合など色素同士の相互作用を低減する目的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばコール酸、ピバロイル酸)等が挙げられる。
色素を吸着した後に、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としては4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0089】
対向電極は、光電気化学電池の正極として働くものである。対向電極は、通常前述の導電性支持体と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。ただし、支持体を有する方が密閉性の点で有利である。対向電極の材料としては、白金、カーボン、導電性ポリマー、などがあげられる。好ましい例としては、白金、カーボン、導電性ポリマーが挙げられる。
【0090】
対極の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。好ましい例としては、特開平10−505192号公報などが挙げられる。
受光電極は酸化チタンと酸化スズ(TiO/SnO)などの複合電極を用いても良く、チタニアの混合電極として例えば、特開2000−113913号公報等が挙げられる。チタニア以外の混合電極として例えば、特開2001−185243号公報、特開2003−282164号公報等が挙げられる。
【0091】
受光電極は、入射光の利用率を高めるなどのためにタンデム型にしても良い。好ましいタンデム型の構成例としては、特開2002−90989号公報等に記載の例が挙げられる。
受光電極層内部で光散乱、反射を効率的に行う光マネージメント機能を設けてもよい。好ましくは、特開2002−93476号公報に記載のものが挙げられる。
【0092】
導電性支持体と多孔質半導体微粒子層の間には、電解液と電極が直接接触することによる逆電流を防止する為、短絡防止層を形成することが好ましい。好ましい例としては、特開平06−507999号公報等が挙げられる。
受光電極と対極の接触を防ぐ為に、スペーサーやセパレータを用いることが好ましい。好ましい例としては、特開2001−283941号公報が挙げられる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
1.色素の調製
下記の方法により例示色素D−3を調製した。
【0095】
(合成例1)例示色素D−3の調製
下記の方法に従って例示色素D−3を調製した。
【0096】
【化28】

【0097】
(i)化合物D−3−aの調製
10,11−ジヒドロ−5H−ジベンズ[b,f]アゼピン15.0gと1−ヨードヘキサン21.0gとをDMF60mlに室温で攪拌溶解した後に氷冷した。50〜70%水素化ナトリウム7.5gを分割添加し内温10℃以下で1.5時間攪拌した。反応終了後、反応液に水を滴下し残存している水素化ナトリウムを失活させ、ヘキサンを加えて分液し、有機層を濃縮、カラムクロマトグラフィーで精製することで化合物D−3−a 20.4gを得た。
【0098】
(ii)化合物D−3−bの調製
DMF 60mlに氷冷下でオキシ塩化リン20mlを加え30分攪拌し、化合D−3−a 9.5gをこれに加え60℃に加温し3時間攪拌した。放冷し室温にした後に反応液に水を加え攪拌し、さらに10%水酸化ナトリウム水溶液を加え、1時間撹拌した。酢酸エチルで抽出、濃縮後、カラム精製を行い化合物D−3−b 9.9gを得た。
【0099】
(iii)化合物D−3−cの調製
化合物D−3−b 15.0g、メチルトリフェニルホスホニウムヨージド23.7gをDMF150mlに室温で攪拌した後、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液11.8gを滴下した。反応液は外設60℃に加温し2時間攪拌した。その後、放冷し室温にした後、水を滴下し、ヘキサンで抽出し、有機層を濃縮、カラムクロマトグラフィーで精製することで化合物D−3−c 14.2gを得た。
【0100】
(iv)化合物D−3−dの調製
DMF70mlに氷冷下オキシ塩化リン20mlを加え30分攪拌し、化合D−3−c13.5gをこれに加え50℃に加温し1時間攪拌した。放冷し室温にした後に反応液に水を加え攪拌し、さらに20%水酸化ナトリウム水溶液を加え、1時間撹拌した。酢酸エチルで抽出、濃縮後、カラム精製を行い化合物D−3−d 14.7gを得た。
【0101】
(v)化合物D−3−eの調製
化合物D−3−d 1.0gとD−1−b 846mgとを酢酸30mlに室温攪拌溶解した。これに酢酸アンモニウム462mgを加え90℃で2時間加温攪拌した。冷却後水60mlを加え、析出した結晶を濾取し、メタノール/CHCl系で再結晶することで化合物D−3−e 1.62gを得た。
【0102】
(vi)例示色素D−3の調製
化合物D−3−e 1.20gをアセトニトリル40mlに0℃で攪拌溶解した。これにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム116mg、モルフォリン3mlを加え1時間攪拌した。その後水を加えろ過し、ろ液に1規定の塩酸を滴下し析出した結晶を濾取し、酢酸エチル/ヘキサン系で再結晶することで例示色素D−3 1.02gを得た。
上記の(i)〜(vi)の工程による、D−3の収率は17.5%であった。
以下に例示色素D−3のNMRスペクトルデータ、マススペクトルデータを示す。

H−NMR(DMSO−d、400MHz):δ(ppm)
7.60(1H,d),7.52−7.47(2H,m),7.29(1H,d)、7.20−7.05(5H、m),7.01−6.95(1H,m),4.94(2H,s),3.75(2H、t),3.10(4H、s),1.47(2H,dt),1.32−1.12(6H、m),0.80(3H、t)
MS−ESI m/z : 558.20 (M+H)
【0103】
(そのほかの例示色素の調製)
合成例1と同様にして他の例示色素も調製した。
【0104】
2.色素の最大吸収波長の測定
色素の最大吸収波長を測定した。測定は分光光度計(U−4100(商品名、日立ハイテク(株)製))によって行い、溶液はエタノールを用いた。
【0105】
【表4】

【0106】
2.ヘテロ環4級塩化合物の調製
4.8g(0.028mol)の下記化合物XC−1と7.32g(0.03mol)の化合物XC−2を12mlの酢酸エチルに溶解し、加熱還流下24時間反応させた。次に減圧加熱下、酢酸エチル及び過剰の化合物XC−2を留去し、12gの下記に示す表1記載のB−1を得た。
【化29】

【化30】

【化31】

【0107】
3.光電気化学電池の作製
(A)半導体微粒子分散液の調製
内側をテフロン(登録商標)コーティングした内容積200mlのステンレス製容器に、二酸化チタン微粒子(Degussa P−25(商品名、日本アエロジル(株)製))15g、水45g、分散剤(Triton X−100(商品名、アルドリッチ社製))1g、直径0.5mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)30gを入れ、サンドグラインダーミル(アイメックス社製)を用いて1500rpmで2時間分散処理した。得られた分散液からジルコニアビーズをろ過により除去して、半導体微粒子分散液を得た。得られた分散液中の二酸化チタン微粒子の平均粒径は2.5μmであった。なお粒径は、レーザー回折式粒度分布計のマスターサイザー(商品名、MALVERN社製)で測定した。
【0108】
(B)色素を吸着した半導体微粒子電極の作製
フッ素をドープした酸化スズ層を有する導電性ガラス(TCOガラス−U(商品名、旭硝子(株)製)を20mm×20mmの大きさに切断した。この切断した導電性ガラス(表面抵抗約30Ω/cm)の導電面側にガラス棒を用いて、(A)で調製した半導体微粒子分散液を塗布した。半導体微粒子の塗布量は20g/mとした。その際、導電面側の一部(端から3mm)に粘着テープを張ってスペーサーとし、該粘着テープが両端に来るように導電性ガラスを並べて一度に8枚ずつ、半導体微粒子分散液を塗布した。その後、該粘着テープを剥離し、室温で1日間放置した。次にこの導電性ガラスを電気炉(マッフル炉FP−32型(商品名、ヤマト科学(株)製))に入れ、450℃にて30分間焼成することにより、半導体微粒子電極を得た。この電極を取り出し冷却した後、表1に示す色素のエタノール溶液(3×10‐4mol/l)に3時間浸漬した。その後、この電極を4‐t‐ブチルピリジンに15分間浸漬した後、エタノールで洗浄し自然乾燥し、色素を吸着した半導体微粒子電極を得た。色素の塗布量は、色素の種類に応じ、適宜0.1〜10mmol/mの範囲から増感度が最適になるように選択した。
【0109】
(C)光電気化学電池の作製
(B)に記載の通り作製した、色素を吸着した半導体微粒子電極(20mm×20mm)に、これと同じ大きさの白金蒸着ガラスと重ね合わせた。次に、両ガラスの隙間に毛細管現象を利用して電解質組成物を染み込ませ、電解質を半導体微粒子電極中に導入した。これにより、図1に示すように、導電性ガラスからなる導電性支持体1(ガラスの透明基板上に導電層が形成されたもの)、色素が吸着された半導体微粒子層を有する感光体2、電荷移動体3、白金からなる対極4及びガラスの透明基板(図示せず)をこの順に積層して光電気化学電池を作製した。なお電解質組成物を導入後は端部をエポキシ系封止剤で封止した。電解質組成物の粘度が高く毛細管現象を利用して電解質組成物を半導体微粒子電極中に導入することが困難な場合は、電解質組成物を50℃に加温し、これを色素が吸着された半導体微粒子電極に塗布した。その後、この電極を減圧下に置き電解質組成物が十分浸透し電極中の空気を抜いた後、白金蒸着ガラス(対極)を重ね合わせて同様に光電気化学電池を作製した。
【0110】
電解質組成物と色素を変更して同様の工程により、実施例1〜22及び比較例1〜8の光電気化学電池を作製した。各光電気化学電池に用いた電解質組成物中に含まれるヘテロ環4級塩化合物と半導体微粒子に吸着させた色素を併せて表1に示す。なおいずれの実施例及び比較例においても、電解質組成物中に、ヨウ素を2質量%配合した。また比較例5及び6においては、ヘテロ環4級塩化合物を配合せずに、γ−ブチロラクトンを70質量%及びテトラブチルアンモニウムヨージドを28質量%配合した。また、比較例7及び8においては、比較電解質Eを使用した。
【0111】
4.光電変換効率の測定とその評価
500Wのキセノンランプ(ウシオ電気(株)製)の光をAM1.5フィルター(Oriel社製)及びシャープカットフィルター(L−42(商品名)、Kenko社製)に通すことにより、紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度を測定したところ、70mW/cmであった。この模擬太陽光を、50℃で実施例1〜22及び比較例1〜8の光電気化学電池に照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型(商品名、ケースレー社製))で測定した。各光電気化学電池の変換効率(η)の初期値と、140時間暗所保存後及び24時間連続光照射後の変換効率の低下率を表5に示す。
変換効率の初期値が3%以上で、変換効率低下率が12%以下のものを合格とした。
【0112】
【表5】

【化32】

比較色素として、上記の比較色素Aを用いた。
【化33】

また比較電解質として、上記の比較電解質Eを用いた。
【0113】
表5からわかるように、比較色素Aを用いた場合は、本発明の化合物を含有する電解質組成物を使用し場合であっても、変換効率の初期値は3%の合格ラインに到達せず、暗所保存後変換効率の低下率も、連続光照射後変換効率の低下率も、ともに高く、耐久性が不合格となった(比較例1〜4)。また本発明の色素を用いても、本発明の化合物を含有する電解質組成物を使用しない場合は、変換効率の初期値は3%以上で合格レベルであったが、暗所保存後変換効率の低下率も、連続光照射後変換効率の低下率も、ともに高く、耐久性が不合格となった(比較例5、6)。さらに本発明の色素を用いても、本発明の化合物を用いずに、比較電解質Eを用いた場合には、耐久性が不合格であるばかりでなく、変換効率の初期値も不合格となった(比較例7、8)。
これに対して、本発明の色素が吸着され、本発明の化合物を含有する電解質組成物を使用した実施例1〜22では、変換効率の初期値及び変換効率の低下率ともに合格であった。
【符号の説明】
【0114】
1 導電性支持体
2 感光体
21 色素化合物
22 半導体微粒子
23 電解質
3 電荷移動体
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に色素が吸着された半導体微粒子層を有する感光体、電荷移動体、および対極を含む積層構造よりなる光電変換素子であって、前記色素が下記一般式(1)で表される構造を有し、前記電荷移動体がヘテロ環4級塩化合物を含有する電解質組成物を有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】

[一般式(1)中、Dは色素残基を表し、nは1以上の整数を表す。ACCは、ヘテロ環酸性核を有する基又は電子吸引基で置換されたメチン基を表す。但し、ACCは、直接又は連結基を介して少なくとも2つの酸性基を有する。]
【請求項2】
前記へテロ環4級塩化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
【化2】

[一般式(2)中、Rは−(CR3132−CR3334−O)−結合(R31〜R34はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、aは2〜20の整数を表す。)を含む置換基を表し、Qは窒素原子と共に5又は6員環の芳香族カチオンを形成しうる原子団を表し、置換基を有していてもよく、Zはアニオンを表す。]
【請求項3】
前記一般式(1)で表される構造を有する色素が、下記一般式(3)で表される構造を有することを特徴とする請求項2記載の光電変換素子。
【化3】

[一般式(3)中、Aは炭素−窒素結合とともに環を形成するために必要な原子群を表す。YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基を表す場合は、他方は電子求引基を表す。Dは色素残基を表し、nは1以上の整数を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。]
【請求項4】
前記一般式(3)で表される色素が、下記一般式(4)〜(7)のいずれかで表されることを特徴とする請求項3記載の光電変換素子。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

[一般式(4)〜(7)中、YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基を表す場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、単結合または、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。R及びRはLL上の置換基とともに環を形成していても良い。]
【請求項5】
前記一般式(4)で表される色素が、下記一般式(8)で表されることを特徴とする請求項4記載の光電変換素子。
【化8】

[一般式(6)中、YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基の場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、単結合または、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。R、Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Bはベンゼン環上の2つの炭素原子および窒素原子とともに環を形成するために必要な原子群を表す。]
【請求項6】
前記一般式(7)で表される色素が、下記一般式(9)で表されることを特徴とする請求項4記載の光電変換素子。
【化9】

[一般式(9)中、YとYの少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基の場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、単結合または、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Bはベンゼン環上の2つの炭素原子および窒素原子とともに環を形成するために必要な原子群を表す。]
【請求項7】
前記Y及びYの酸性基がカルボン酸基であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記一般式(2)で表されるヘテロ環4級塩化合物が、下記一般式(10)又は(11)で表されることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項記載の光電変換素子。
【化10】

【化11】

[一般式(10)及び(11)において、R55は−(CR5152−CR5354−O)−結合(R51〜R54はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、bは2〜20の整数を表す。)を含む置換基を表し、R56〜R60はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、Zはアニオンを表し、R55〜R60のうち2つ以上が互いに連結して環構造を形成していてもよい。]
【請求項9】
前記ZがI、N(CFSO、BF、R−COO(Rは水素原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基又はアリール基を表す。)、R−SO(Rはアルキル基、パーフルオロアルキル基又はアリール基を表す。)又はSCNであることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項記載の光電変換素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えることを特徴とする光電気化学電池。

【図1】
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【公開番号】特開2011−204678(P2011−204678A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44313(P2011−44313)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】