説明

光電変換素子

【課題】色素により増感された半導体微粒子を用いた、安価で変換効率の良い光電気変換素子および太陽電池の開発。
【解決手段】式(1)で表されるメチン系色素又はその塩によって増感された酸化物半導体微粒子を用いることを特徴とする光電変換素子。
【化1】


(式(1)中、nは1乃至7の整数を表す。Xは酸素原子、硫黄原子及びセレン原子を表す。Yは置換基を有していても良い芳香族残基、置換基を有していても良い有機金属錯体残基を表す。A1及びA2はそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、リン酸基、シアノ基、ハロゲン原子他を表す。nが2以上でA1及びA2が複数存在する場合、それぞれのA1及びそれぞれのA2は互いに同じか又は異なってもよい。また、n個存在するA1及びA2は、2個以上のA1及び/又はA2で構成され、置換基を有してもよい1乃至2個以上の環を形成してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機色素で増感された光電変換素子及び太陽電池に関し、詳しくは特定の骨格を有する色素によって増感された酸化物半導体微粒子を用いることを特徴とする光電変換素子及びそれを利用した太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、石炭等の化石燃料に代わるエネルギー資源として太陽光を利用する太陽電池が注目されている。現在、結晶又はアモルファスのシリコンを用いたシリコン太陽電池、あるいはガリウム、ヒ素等を用いた化合物半導体太陽電池等について高効率化などの開発検討がなされている。しかしそれらは製造に要するエネルギー及びコストが高いため、汎用的に使用するのが困難であるという問題点がある。また色素で増感した半導体微粒子を用いた光電変換素子、あるいはこれを用いた太陽電池も知られ、これを作成する材料、製造技術が開示されている。(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2を参照) この光電変換素子は酸化チタン等の比較的安価な酸化物半導体を用いて製造され、従来のシリコン等を用いた太陽電池に比べコストの安い光電変換素子が得られる可能性があり、またカラフルな太陽電池が得られることなどにより注目を集めている。しかし変換効率の高い素子を得るために増感色素としてルテニウム系の錯体が使用されており、色素自体のコストが高く、またその供給にも問題が残っている。また増感用色素として有機色素を用いる試みも既に行われているが、変換効率、安定性、耐久性が低いなどまだ実用化には至っていないというのが現状であり、更なる変換効率の向上が望まれている(特許文献2を参照)。またこれまでメチン系の色素を用いて光電変換素子を作成した例も挙げられ、クマリン系の色素(特許文献3を参照)やメロシアニン系の色素は比較的検討例が多く見られるが(特許文献4,5,6を参照)、更なる低コスト化、安定性及び変換効率の向上が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特許第2664194号公報
【特許文献2】WO2002011213号公報
【特許文献3】特開2002−164089号公報
【特許文献4】特開平8-81222号公報
【特許文献5】特開平11-214731号公報
【特許文献6】特開2001-52766号公報
【非特許文献1】B.O'Regan and M.Graetzel Nature, 第353巻, 737頁 (1991年)
【非特許文献2】M.K.Nazeeruddin, A.Kay, I.Rodicio, R.Humphry-Baker, E.Muller, P.Liska, N.Vlachopoulos, M.Graetzel, J.Am.Chem.Soc., 第115巻, 6382頁 (1993年)
【非特許文献3】W.Kubo, K.Murakoshi, T.Kitamura, K.Hanabusa, H.Shirai, and S.Yanagida, Chem.Lett., 1241頁(1998年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機色素増感半導体を用いた光電変換素子において、安価な有機色素を用い、安定性に優れかつ変換効率が高く実用性の高い光電変換素子の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記の課題を解決するために鋭意努力した結果、特定の色素を用いて半導体微粒子を増感し、光電変換素子を作成する事により安定性(色素増感光電変換素子としての経時安定性)に優れかつ変換効率の高い光電変換素子が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は
(1) 式(1)で表されるメチン系色素又はその塩によって増感された酸化物半導体微粒子を用いることを特徴とする光電変換素子、
【0007】
【化1】

【0008】
(式(1)中、nは1乃至7の整数を表す。Xは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。Yは置換基を有していても良い芳香族残基、置換基を有していても良い有機金属錯体残基を表す。A1及びA2はそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、リン酸基、シアノ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい芳香族残基、置換基を有しても良い脂肪族炭化水素残基、カルボキシル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、スルフォニルベンゼン基又はアシル基を表す。nが2以上でA1及びA2が複数存在する場合、それぞれのA1及びそれぞれのA2は互いに同じか又は異なってもよい。また、n個存在するA1及びA2は、2個以上のA1及び/又はA2で構成され、置換基を有してもよい1乃至2個以上の環を形成してもよい。)
(2) 式(1)におけるYが下記式(2)で表される基である(1)記載の光電変換素子、
【0009】
【化2】

【0010】
(式(2)中、R1およびR2はそれぞれ水素原子、置換基を有していても良い芳香族残基、置換基を有していても良い脂肪族炭化水素残基又はアシル基を表す。R1及びR2は互いに、またはベンゼン環Aと結合して置換基を有しても良い環を形成しても良い。ベンゼン環Aは、ハロゲン原子、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシル基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換アミノ基、置換基を有していてもよい芳香族残基及び置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素残基からなる群から選ばれる1個又は2個以上の置換基を有していても良く、複数の置換基が存在する場合それらの置換基は互いに結合して置換基を有しても良い環を形成しても良い。)
(3)式(1)におけるXが酸素原子である(1)又は(2)記載の光電変換素子、
(4)式(1)におけるnが1乃至5である(1)乃至(3)の何れか一項に記載の光電変換素子、
(5)式(1)で表されるメチン系色素又はその塩の一種以上と金属錯体及び/又式(1)以外の構造を有する有機色素によって増感された酸化物半導体微粒子を用いることを特徴とする光電変換素子、
(6)酸化物半導体微粒子が二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化スズを含有する(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の光電変換素子、
(7)メチン系色素又はその塩によって増感された酸化物半導体微粒子が酸化物半導体微粒子に包摂化合物の存在下、式(1)で表されるメチン系色素又はその塩を担持させたものである(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の光電変換素子、
(8)メチン系色素又はその塩によって増感された酸化物半導体微粒子が酸化物半導体微粒子の薄膜に該色素を担持させて得られたものである(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の光電変換素子、
(9)(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の光電変換素子を用いる事を特徴とする太陽電池、
に関する、
【発明の効果】
【0011】
本発明の色素増感光電変換素子において、特定の部分構造を有する色素を用いることにより、変換効率が高く経時安定性の高い太陽電池を提供する事が出来た。さらに2種以上の色素の併用により増感された酸化物半導体微粒子を用いることで、変換効率の一層の向上が見られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の光電変換素子は下記式(1) で表されるメチン系色素又はその塩よって増感された酸化物半導体を用いる。
【0013】
【化3】

【0014】
式(1)におけるnは1乃至7の整数を表し、1乃至6であることが好ましく、1乃至5であることが特に好ましい。
式(1)におけるXは酸素原子、硫黄原子及びセレン原子を表し、酸素原子であることが好ましい。
式(1)におけるYは置換基を有していても良い芳香族残基、置換基を有していても良い有機金属錯体残基を表す。
【0015】
上記において、「置換基を有していても良い芳香族残基」における芳香族基としては、芳香環から水素原子1個を除いた基を意味し、芳香環としては例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、ペリレン、テリレン等の芳香族炭化水素環、インデン、アズレン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピラゾール、ピラゾリジン、チアゾリジン、オキサゾリジン、ピラン、クロメン、ピロール、ピロリジン、ベンゾイミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ジアゾール、インドリン、チオフェン、チエノチオフェン、フラン、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジン、チアゾール、インドール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、インドレニン、ベンゾインドレニン、ピラジン、キノリン、クマリン、キナゾリン等の複素環型芳香環、フルオレン、カルバゾール等の縮合型芳香環等が挙げられ、炭素数5乃至16の芳香環(芳香環及び芳香環を含む縮合環)を有する芳香族残基であることが好ましい。
【0016】
また、上記において「置換基を有していても良い有機金属錯体残基」における有機金属錯体残基としては、有機金属錯体から水素原子1個を除いた基を意味し、有機金属錯体としては例えば、含金ポルフィリン錯体(鉄、銅、アルミニウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、銀、チタン及び珪素を中心金属とする含金ポルフィリン)、フタロシアニン錯体(鉄、銅、アルミニウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、銀、チタン及び珪素を中心金属とするフタロシアニン)、ビピリジル錯体(ルテニウム、オキソニウム、イリジウムと[2,2’]ビピリジルとの錯体)、フェロセン、ルテノセン、チタノセン、ジルコノセン等が挙げられる。
【0017】
「置換基を有していてもよい芳香族残基」及び「置換基を有していても良い有機金属錯体残基」における置換基としては、特に制限はないが、スルホン酸基、スルファモイル基、シアノ基、イソシアノ基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ニトロ基、ニトロシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、置換もしくは非置換アミノ基、置換されていても良いメルカプト基、置換されていても良いアミド基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアリールオキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アシル基、アルデヒド基、アルコキシカルボニル基等の置換カルボニル基、置換基を有していても良い芳香族残基、置換基を有していても良い脂肪族炭化水素残基等が挙げられる。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等の原子が挙げられる。リン酸エステル基としてはリン酸(炭素数1ないし4の)アルキルエステル基等が挙げられる。置換もしくは非置換アミノ基としては、アミノ基、モノ又はジメチルアミノ基、モノ又はジエチルアミノ基、モノ又はジプロピルアミノ基等のアルキル置換アミノ基、モノ又はジフェニルアミノ基、モノ又はジナフチルアミノ基等の芳香族置換アミノ基、モノアルキルモノフェニルアミノ基等のアルキル基と芳香族炭化水素残基が一つずつ置換したアミノ基又はベンジルアミノ基、またアセチルアミノ基、フェニルアセチルアミノ基等が挙げられる。置換されていても良いメルカプト基としてはメルカプト基、アルキルメルカプト基、フェニルメルカプト基等が挙げられる。置換されていても良いアミド基としてはアミド基、アルキルアミド基、アリールアミド基等が挙げられる。アルコキシ基とは、下記脂肪族炭化水素残基と酸素原子との結合によりなる基を意味し、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられ、また、上記において置換基を有していてもよいアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられ、これらはフェニル基、メチル基を置換基として有していても良い。置換基としては、置換基を有していてもよい芳香族残基の項で述べたものと同様でよい。アシル基としては、例えば炭素数1乃至10のアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1乃至4のアルキルカルボニル基で具体的にはアセチル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタフルオロエチルカルボニル基、プロピオニル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては例えば炭素数1乃至10のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。置換基を有していても良い芳香族残基としてはそれぞれ前記と同様でよい。
【0018】
又、上記において、「置換基を有していても良い脂肪族炭化水素残基」における脂肪族炭化水素残基としては飽和及び不飽和の直鎖、分岐及び環状のアルキル基が挙げられ、炭素数は1から36が好ましく、さらに好ましくは炭素数が1から20であるものが挙げられる。環状のものとして例えば炭素数3乃至8のシクロアルキルなどが挙げられる。具体的な例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、ter−ブチル基、オクチル基、オクタデシル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、プロペニル基、ペンチニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、イソプロペニル基、イソへキセニル基、シクロへキセニル基、シクロペンタジエニル基、エチニル基、プロピニル基、ペンチニル基、へキシニル基、イソへキシニル基、シクロへキシニル基等が挙げられる。
【0019】
「置換基を有していても良い脂肪族炭化水素残基」における置換基としては、特に限定されないが、上記「置換基を有していてもよい芳香族残基」及び「置換基を有していても良い有機金属錯体残基」における置換基と同様でよい。
式(1)におけるA1及びA2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香族残基、ヒドロキシル基、リン酸基、シアノ基、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していても良い脂肪族炭化水素残基、カルボキシル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、スルフォニルベンゼン基又はアシル基を表す。置換基を有していてもよい芳香族残基、ハロゲン原子、置換基を有していても良い脂肪族炭化水素残基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アシル基としてはそれぞれ、「置換基を有していてもよい芳香族残基」及び「置換基を有していても良い有機金属錯体残基」における置換基の項で示したものと同様でよい。
【0020】
また、nが2以上でA1及びA2が複数存在する場合、それぞれのA1及びそれぞれのA2は互いに独立に同じか又は異なってもよい。好ましくはA1及びA2が独立に水素原子、シアノ基、脂肪族炭化水素残基及びハロゲン原子であるものが挙げられる。脂肪族炭化水素残基及びハロゲン原子としてはそれぞれ前記と同様でよい。また、式(1)におけるA2、特にnが2以上の場合、Yに最も近接するA2が置換基を有していても良い芳香族残基であることも好ましい。芳香族残基としては前記と同様でよく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、ピロール、フラン、クマリン等の残基であることが好ましい。これら芳香族残基は前記するように置換基を有していても良い。置換基としては特に限定されないが、前記置換基を有していても良い芳香族残基の項で述べたものと同様でよく、置換もしくは非置換アミノ基及び置換基を有していても良い芳香族残基であることが好ましい。
【0021】
また、n個存在するA1及びA2は、2個以上のA1及び/又はA2で構成され、置換基を有してもよい1乃至2個以上の環を形成してもよい。特にA1若しくはA1が複数存在する場合にはそれぞれのA1およびA2若しくはA2が複数存在する場合にはそれぞれのA2が、A1およびA2の任意の組み合わせで、置換基を有してもよい環を形成することが好ましく、形成する環としては不飽和炭化水素環又は複素環が挙げられる。不飽和炭化水素環としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環、ピレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、シクロブテン環、シクロヘキセン環、シクロペンテン環、シクロヘキサジエン環、シクロペンタジエン環等が挙げられ、複素環としては、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、ピペリジン環、インドリン環、フラン環、ピラン環、オキサゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、カルバゾール環、ベンゾピラン環等が挙げられる。またこれらのうちの好ましいものとしてはベンゼン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ピラン環、フラン環などが挙げられる。これらは前記するように置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基を有していてもよい芳香族残基及び置換基を有していてもよい有機金属錯体残基における置換基の項で述べたものと同様でよい。また、カルボニル基、チオカルボニル基等を有する場合には環状ケトン又は環状チオケトンなどを形成しても良く、これらの環も置換基を有していても良い。置換基としては前記「置換基を有していてもよい芳香族残基」及び「置換基を有していても良い有機金属錯体残基」における置換基の項で示したものと同様でよい。
【0022】
さらに前記したYが窒素原子を有する複素環型芳香環、縮合型芳香環及び/又はYとA1およびA2で形成する複素環が窒素原子を有する場合、その窒素原子は4級化されていても良く、その時に対イオンを有しても良い。具体的には特に限定はされないが、通常のアニオンで良い。塩を形成しうる対イオンの具体例としてはF-, Cl-, Br-, I-, ClO4-, BF4-, PF6-, OH-, SO42-, CH3SO4-, N(CN)2-,N(SO2CF32-,CF3SO4-,トルエンスルホン酸イオンなどが挙げられ、Br-, I-, ClO4-, BF4-, PF6-, CH3SO4-, N(CN)2-,N(SO2CF32-,CF3SO4-,トルエンスルホン酸イオンなどが好ましい。また対イオンではなく分子内又は分子間のカルボキシル基などの酸性基により中和されていても良い。
【0023】
また、式(1)で表されるメチン系色素又はその塩におけるカルボキシル基、またYとA1およびA2で形成する複素環がヒドロキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びカルボキシル基等の酸性基を置換基として有する場合は、それぞれ塩を形成してもよく、塩としては例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属などとの塩、又は有機塩基、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、ピペラジニウム、ピペリジニウムなどの4級アンモニウム塩のような塩を挙げることができる。
【0024】
また、式(1)におけるYが下記式(2)で表される基であることが好ましい。
【0025】
【化4】

【0026】
式(2)におけるR1およびR2はそれぞれ水素原子、置換基を有しても良い芳香族残基、置換基を有しても良い脂肪族炭化水素残基及びアシル基を表す。置換基を有しても良い芳香族残基、置換基を有しても良い脂肪族炭化水素残基としてはそれぞれ前記と同様でよい。アシル基としては前記「置換基を有してもよい芳香族残基」及び「置換基を有しても良い有機金属錯体残基」における置換基の項で示したものと同様でよい。R1及びR2は互いに、またはベンゼン環Aと結合して置換基を有しても良い環を形成しても良い。R1及びR2が互いに結合して形成する環としてはモルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロリジン環、カルバゾール環、インドール環等が挙げられる。またR1及びR2がベンゼン環Aと結合して形成する環としては、インドール環、ジュロリジン環等が挙げられる。これらは前記するように置換基を有していても良い。置換基としては前記置換基を有してもよい芳香族残基及び置換基を有してもよい有機金属錯体残基における置換基の項で述べたものと同様でよい。
【0027】
式(2)における環Aは、ハロゲン原子、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシル基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換アミノ基、置換基を有していてもよい芳香族残基及び置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素残基からなる群から選ばれる1個又は2個以上の置換基を有していても良く、複数の置換基が存在する場合それらの置換基は互いに結合して置換基を有しても良い環を形成しても良い。置換基を有しても良い環としては上記不飽和炭化水素環又は複素環の例として述べたものと同様でよく、ベンゼン環、ナフタレン環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環、フラン環及びピロール環であることが好ましい。
【0028】
式(1)で示される化合物はシス体、トランス体、ラセミ体等の構造異性体をとり得るが、特に限定されず、いずれの異性体も光増感用色素として良好に使用しうるものである。
【0029】
式(1)で表されるメチン系色素は、例えば、以下に示す反応式によって製造できる。 先ず、式(3)で表される上記「置換基を有してもよい芳香族残基」及び「置換基を有しても良い有機金属錯体残基」における芳香環及び有機金属錯体をブチルリチウムなどの塩基を用いて金属化した後、ジメチルホルムアミドなどのアミド誘導体を作用させる方法や、ジメチルホルムアミドなどに塩化ホスホリルなどを作用させたビルスマイヤー試薬と反応させる方法等により、化合物(1)の前駆体である化合物(4)を得る。nが2以上の場合は、ホルミル基などをクライゼン縮合する方法、ジメチルアミノアクロレイン、ジメチルアミノビニルアクロレインなどのアミド誘導体を用いる方法、同じくホルミル基等をウィティッヒ反応やグリニアール反応等によりビニル基等とし、さらに上記ホルミル化反応等を行うことなどにより、プロペナール基、ペンタジエナール基等として得ることが可能である。さらに化合物(4)と活性メチレンを有する化合物(5)を必要であれば苛性ソーダ、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、ジアザビシクロウンデセンなどの塩基性触媒の存在下、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類やジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒やトルエン、無水酢酸などの溶媒中、20℃〜180℃好ましくは50℃〜150℃で縮合することにより式(1)のメチン系色素が得られる。また、反応が進行しにくいものについてはカルボキシル基をアルコキシカルボニル基とした活性メチレン化合物と化合物(4)を反応させた後アルコキシカルボニル基を加水分解することにより式(1)のメチン系色素を得ることも可能である。
また、前記のように一般式(1)におけるカルボキシル基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は有機塩基等と塩を形成しても良い。塩を形成させる方法としては、例えば一般式(1)で表されるメチン系色素(遊離酸)をメタノールやエタノール等のアルコール類に溶解させた溶液(A)を作製し、ついでアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物(塩)を水に溶解させた水溶液又は有機塩基、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、ピペラジニウム、ピペリジニウムなどの4級アンモニウムのハロゲン化物(塩)を水または前述と同様のアルコール類に溶解させた溶液(B)を作製する。溶液(A)に溶液(B)を添加し、必要であれば濃縮することにより(カルボキシル基の末端の水素原子とアルカリ金属、アルカリ土類金属又は有機塩基が交換されたカルボン酸塩とし)メチン系色素の塩を結晶として得ることが可能である。
【0030】
【化5】

【0031】
以下、本発明において使用しうるメチン系色素又はその塩の具体例を以下に示す。
本発明において式(1)で示されるメチン系色素又はその塩の例として下記式(6)で表される色素の具体例を表1乃至表2に示す。表1乃至表2において、フェニル基をPhと略する。
【0032】
【化6】

【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
本発明において式(1)で示されるメチン系色素又はその塩の例として下記式(7)で表される色素の具体例を表3乃至表4に示す。表3乃至表4において、フェニル基をPhと略する。
【0036】
【化7】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
式(1)で示されるメチン系色素又はその塩のその他の例を以下に示す。
【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
本発明の色素増感光電変換素子は、例えば、酸化物半導体微粒子を用いて基板上に酸化物半導体の薄膜を製造し、次いでこの薄膜に式(1)のメチン系色素又はその塩を担持させたものである。
本発明で酸化物半導体の薄膜を設ける基板としてはその表面が導電性であるものが好ましいが、そのような基板は市場にて容易に入手可能である。具体的には、例えば、ガラスの表面又はポリエチレンテレフタレート若しくはポリエーテルスルフォン等の透明性のある高分子材料の表面にインジウム、フッ素、アンチモンをドープした酸化スズなどの導電性金属酸化物や銅、銀、金等の金属の薄膜を設けたものを用いることが出来る。その導電性としては通常1000Ω以下であれば良く、特に100Ω以下のものが好ましい。
また、酸化物半導体の微粒子としては金属酸化物が好ましく、その具体例としてはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、インジウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、バナジウムなどの酸化物が挙げられる。これらのうちチタン、スズ、亜鉛、ニオブ、インジウム等の酸化物が好ましく、これらのうち酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズが最も好ましい。これらの酸化物半導体は単一で使用することも出来るが、混合したり、半導体の表面にコーティングさせて使用することも出来る。また酸化物半導体の微粒子の平均一次粒子径は、通常1〜500nmで、好ましくは1〜200nmであり、更に好ましくは1〜100nmである。またこの酸化物半導体の微粒子は大きな粒径のものと小さな粒径のものを混合したり、多層にして用いることも出来る。
【0047】
酸化物半導体薄膜は酸化物半導体微粒子をスプレイ噴霧などで直接基板上に薄る方法、半導体微粒子のスラリー又は半導体アルコキサイド等の半導体微粒子の膜として形成する方法、基板を電極として電気的に半導体微粒子薄膜を析出させ前駆体を加水分解することにより得られた微粒子を含有するペーストを基板上に塗布した後、乾燥、硬化もしくは焼成する等によって製造することが出来る。酸化物半導体電極の性能上、スラリーを用いる方法が好ましい。この方法の場合、スラリーは2次凝集している酸化物半導体微粒子を常法により分散媒中に平均1次粒子径が通常1〜500nm、好ましくは1〜200nm、更に好ましくは1〜100nmになるように分散させることにより得られる。
【0048】
スラリーを分散させる分散媒としては半導体微粒子を分散させ得るものであれば何でも良く、水、エタノール等のアルコール、アセトン、アセチルアセトン等のケトン又はヘキサン等の炭化水素が用いられ、これらは混合して用いても良く、また水を用いることはスラリーの粘度変化を少なくするという点で好ましい。また酸化物半導体微粒子の分散状態を安定化させる目的で分散安定剤を用いることが出来る。用いうる分散安定剤の例としては例えば酢酸、塩酸、硝酸などの酸、又はアセチルアセトン、アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0049】
スラリーを塗布した基板は焼成してもよく、その焼成温度は通常100℃以上、好ましくは200℃以上で、かつ上限はおおむね基材の融点(軟化点)以下であり、通常上限は900℃であり、好ましくは600℃以下である。また焼成時間には特に限定はないがおおむね4時間以内が好ましい。基板上の薄膜の厚みは通常1〜200μmで好ましくは1〜50μmである。
【0050】
酸化物半導体薄膜に2次処理を施してもよい。すなわち例えば半導体と同一の金属のアルコキサイド、塩化物、硝化物、硫化物等の溶液に直接、基板ごと薄膜を浸積させて乾燥もしくは再焼成することにより半導体薄膜の性能を向上させることもできる。金属アルコキサイドとしてはチタンエトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンt−ブトキサイド、n−ジブチル−ジアセチルスズ等が挙げられ、それらのアルコール溶液が用いられる。塩化物としては例えば四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛等が挙げられ、その水溶液が用いられる。このようにして得られた酸化物半導体薄膜は酸化物半導体の微粒子から成っている。
【0051】
次に酸化物半導体薄膜に色素を担持させる方法について説明する。前記式(1)のメチン系色素又はその塩を担持させる方法としては、該化合物を溶解しうる溶媒にて色素を溶解して得た溶液、又は溶解性の低い色素にあっては色素を分散せしめて得た分散液に上記酸化物半導体薄膜の設けられた基板を浸漬する方法が挙げられる。溶液又は分散液中の濃度は色素によって適宜決める。その溶液中に基板上に作成した半導体薄膜を浸す。浸積時間はおおむね常温から溶媒の沸点までであり、また浸積時間は1分から48時間程度である。色素を溶解させるのに使用しうる溶媒の具体例として、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、アセトン、t -ブタノール等が挙げられる。溶液の色素濃度は通常1×10-6M〜1Mが良く、好ましくは1×10-5 M〜1×10-1Mである。このようにして色素で増感された酸化物半導体微粒子薄膜を有した本発明の光電変換素子が得られる。
【0052】
酸化物半導体微粒子に担持する前記式(1)のメチン系色素又はその塩は1種類でも良いし、数種類混合しても良い。又、混合する場合は本発明のメチン系色素又はその塩同志でも良いし、他の色素や金属錯体色素を混合しても良い。特に吸収波長の異なる色素同志を混合することにより、幅広い吸収波長を利用することが出来、変換効率の高い太陽電池が得られる。混合しうる金属錯体色素の例としては特に制限は無いが非特許文献2に示されているルテニウム錯体やその4級塩、フタロシアニン、ポルフィリンなどが好ましく、混合利用する有機色素としては無金属のフタロシアニン、ポルフィリンやシアニン、メロシアニン、オキソノール、トリフェニルメタン系、特許文献2に示されるアクリル酸系色素などのメチン系色素や、キサンテン系、アゾ系、アンスラキノン系、ペリレン系等の色素が挙げられる。好ましいものとしてはルテニウム錯体やメロシアニン、アクリル酸系等のメチン系色素が挙げられる。色素を2種以上用いる場合は色素を半導体薄膜に順次吸着させても、混合溶解して吸着させても良い。
【0053】
混合する色素の比率は特に限定は無く、それぞれの色素より最適化選択されるが、一般的に等モルずつの混合から、1つの色素につき、10%モル程度以上使用するのが好ましい。混合色素を混合溶解もしくは分散した溶液を用いて、酸化物半導体微粒子薄膜に色素を吸着する場合、溶液中の色素合計の濃度は1種類のみ担持する場合と同様でよい。色素を混合して使用する場合の溶媒としては前記したような溶媒が使用可能であり、使用する各色素用の溶媒は同一でも異なっていてもよい。
【0054】
酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を担持する際、色素同士の会合を防ぐために包摂化合物の共存下、色素を担持することが効果的である。ここで使用しうる包摂化合物の具体例としてはコール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレン、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられるが、好ましいものとしてはデオキシコール酸、デヒドロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム等のコール酸類、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。又、色素を担持させた後、4−t−ブチルピリジン等のアミン化合物で半導体電極表面を処理しても良い。処理の方法は例えばアミンのエタノール溶液に色素を担持した半導体微粒子薄膜の設けられた基板を浸す方法等が採られる。包摂化合物を用いる場合、包摂化合物の濃度は色素の溶液に対して1M〜1×10-7Mであり、1M〜1×10-6Mであることが好ましく、0.4M〜1×10-5Mであることが特に好ましい。
【0055】
本発明の太陽電池は上記酸化物半導体薄膜に色素を担持させた光電変換素子電極、対極、レドックス電解質又は正孔輸送材料又はp型半導体等から構成される。レドックス電解質、正孔輸送材料、p型半導体等の形態としては、液体、凝固体(ゲル及びゲル状)、固体などが挙げられる。液状のものとしてはレドックス電解質、溶融塩、正孔輸送材料、p型半導体等をそれぞれ溶媒に溶解させたものや常温溶融塩などが、凝固体(ゲル及びゲル状)の場合は、これらをポリマーマトリックスや低分子ゲル化剤等に含ませたもの等がそれぞれ挙げられる。固体のものとしてはレドックス電解質、溶融塩、正孔輸送材料、p型半導体等を用いることができる。正孔輸送材料としてはアミン誘導体やポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子、トリフェニレン系化合物などのディスコティック液晶相を用いる物などが挙げられる。又、p型半導体としてはCuI、CuSCN等が挙げられる。対極としては導電性を持っており、レドックス電解質の還元反応を触媒的に作用するものが好ましい。例えばガラス、もしくは高分子フィルムに白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等を蒸着したり、導電性微粒子を塗り付けたものが用いうる。
【0056】
本発明の太陽電池に用いるレドックス電解質としてはハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物及びハロゲン分子からなるハロゲン酸化還元系電解質、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン、コバルト錯体などの金属錯体等の金属酸化還元系電解質、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等の有機酸化還元系電解質等をあげることができるが、ハロゲン酸化還元系電解質が好ましい。ハロゲン化合物−ハロゲン分子からなるハロゲン酸化還元系電解質におけるハロゲン分子としては、例えばヨウ素分子や臭素分子等があげられ、ヨウ素分子が好ましい。又、ハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物としては、例えばLiBr、NaBr、KBr、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2、MgI2、CuI等のハロゲン化金属塩あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイドなどのハロゲンの有機4級アンモニウム塩等があげられるが、ヨウ素イオンを対イオンとする塩類が好ましい。また、上記ヨウ素イオンの他にビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ジシアノイミドイオン等のイミドイオンを対イオンとする電解質を用いることも好ましい。
【0057】
又、レドックス電解質はそれを含む溶液の形で構成されている場合、その溶媒には電気化学的に不活性なものが用いられる。例えばアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、ジメトキシエタン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1、2−ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、1、3−ジオキソラン、メチルフォルメート、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メトキシ−オキサジリジン−2−オン、スルフォラン、テトラヒドロフラン、水等が挙げられ、これらの中でも、特に、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、3−メトキシ−オキサジリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン等が好ましい。これらは単独もしくは2種以上組み合わせて用いても良い。ゲル状電解質の場合は、オリゴマ−及びポリマー等のマトリックスに電解質あるいは電解質溶液を含有させたものや、非特許文献3に記載の低分子ゲル化剤等に同じく電解質あるいは電解質溶液を含有させたもの等が挙げられる。レドックス電解質の濃度は通常0.01〜99重量%で好ましくは0.1〜90重量%程度である。
【0058】
本発明の太陽電池は、基板上の酸化物半導体薄膜に前記色(1)のメチン系色素又はその塩を担持した光電変換素子の電極に、それを挟むように対極を配置する。その間にレドックス電解質を含んだ溶液を充填することにより得られる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例に基づき、本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、部は特に指定しない限り重量部を表す。
【0060】
合成例1
N、N−ジメチルアミノシンナムアルデヒド17.5部とフェニルピルビン酸18.4部をエタノール100部に溶解し、ここにピペラジン無水物0.5部を加える。還流で2時間反応させた後、冷却し析出した橙色結晶をろ過、水洗し、乾燥させる。得られた結晶をカラムクロマトで精製し、更にトルエンで再結晶することで化合物(73)19部を橙色結晶として得た。
λmax=432nm(水:アセトニトリル=7:3)
【0061】
実施例
色素を3.2×10-4MになるようにEtOHに溶解した。この溶液中に多孔質基板(透明導電性ガラス電極上に多孔質酸化チタンを450℃にて30分焼結した半導体薄膜電極)を室温(25℃)で12時間浸漬し色素を担持せしめ、溶剤で洗浄、乾燥させ、色素増感した半導体薄膜の光電変換素子を得た。実施例5については2種類の色素をそれぞれ1.6×10-4MになるようにEtOH溶液を調製し、2種類の色素を担持することで同様に光電変換素子を得た。また実施例2、4及び5においては半導体薄膜電極の酸化チタン薄膜部分に0.2M四塩化チタン水溶液を滴下し、室温にて24時間静置後、水洗して、再度450℃にて30分焼成して得た、四塩化チタン処理半導体薄膜電極を用いて色素を同様に担持した。さらに実施例3については色素の担持時に包摂化合物としてコール酸を3×10-2Mとなるように加えて先の色素溶液を調製し、半導体薄膜に担持して、コール酸処理色素増感半導体薄膜を得た。これと挟むように表面を白金でスパッタされた導電性ガラスを固定してその空隙に電解質を含む溶液を注入した。電解液は、3−メトキシプロピオニトリルにヨウ素/ヨウ化リチウム/1、2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウムアイオダイド/t−ブチルピリジンをそれぞれ0.1M/0.1M/0.6M/1Mになるように溶解したものを使用した。
測定する電池の大きさは実効部分を0.25cm2とした。光源は500Wキセノンランプを用いて、AM(大気圏通過空気量)1.5フィルターを通して100mW/cm2とした。短絡電流、解放電圧、変換効率はポテンシオ・ガルバノスタットを用いて測定した。
【0062】
【化14】

【0063】
【表5】

【0064】
表5より、式(1)で表されるメチン系の色素によって増感された光電変換素子を用いることにより、可視光を効果的に電気に変換できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるメチン系色素又はその塩によって増感された酸化物半導体微粒子を用いることを特徴とする光電変換素子。
【化1】

(式(1)中、nは1乃至7の整数を表す。Xは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。Yは置換基を有していても良い芳香族残基、置換基を有していても良い有機金属錯体残基を表す。A1及びA2はそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、リン酸基、シアノ基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい芳香族残基、置換基を有しても良い脂肪族炭化水素残基、カルボキシル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、スルフォニルベンゼン基又はアシル基を表す。nが2以上でA1及びA2が複数存在する場合、それぞれのA1及びそれぞれのA2は互いに同じか又は異なってもよい。また、n個存在するA1及びA2は、2個以上のA1及び/又はA2で構成され、置換基を有してもよい1乃至2個以上の環を形成してもよい。)
【請求項2】
式(1)におけるYが下記式(2)で表される基である請求項1記載の光電変換素子。
【化2】

(式(2)中、R1およびR2はそれぞれ水素原子、置換基を有していても良い芳香族残基、置換基を有していても良い脂肪族炭化水素残基又はアシル基を表す。R1及びR2は互いに、またはベンゼン環Aと結合して置換基を有しても良い環を形成しても良い。ベンゼン環Aは、ハロゲン原子、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシル基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換アミノ基、置換基を有していてもよい芳香族残基及び置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素残基からなる群から選ばれる1個又は2個以上の置換基を有していても良く、複数の置換基が存在する場合それらの置換基は互いに結合して置換基を有しても良い環を形成しても良い。)
【請求項3】
式(1)におけるXが酸素原子である請求項1又は2記載の光電変換素子。
【請求項4】
式(1)におけるnが1乃至5である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
式(1)で表されるメチン系色素又はその塩の一種以上と金属錯体及び/又式(1)以外の構造を有する有機色素によって増感された酸化物半導体微粒子を用いることを特徴とする光電変換素子。
【請求項6】
酸化物半導体微粒子が二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化スズを含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
メチン系色素又はその塩によって増感された酸化物半導体微粒子が酸化物半導体微粒子に包摂化合物の存在下、式(1)で表されるメチン系色素又はその塩を担持させたものである請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
メチン系色素又はその塩によって増感された酸化物半導体微粒子が酸化物半導体微粒子の薄膜に該色素を担持させて得られたものである請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光電変換素子を用いる事を特徴とする太陽電池。

【公開番号】特開2006−134649(P2006−134649A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320699(P2004−320699)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】