光電変換素子
【課題】電場増強性能の高い新規なプラズモン材料による電場増強により、高い変換効率を示すことができる光電変換素子を提供する。
【解決手段】活性層50と、30個以上の金属系粒子20が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、金属系粒子20は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、アスペクト比が0.5〜8の範囲内にあり、隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように金属系粒子20を配置した金属系粒子集合体層とを備える光電変換素子である。
【解決手段】活性層50と、30個以上の金属系粒子20が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、金属系粒子20は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、アスペクト比が0.5〜8の範囲内にあり、隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように金属系粒子20を配置した金属系粒子集合体層とを備える光電変換素子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属系粒子集合体のプラズモン共鳴を利用して変換効率の向上が図られた、光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子をナノサイズにまで微細化すると、バルク状態では見られなかった機能を発現するようになることが従来知られており、なかでも応用が期待されているのが「局在プラズモン共鳴」である。プラズモンとは、金属ナノ構造体中の自由電子の集団的な振動によって生起する自由電子の粗密波のことである。
【0003】
近年、上記プラズモンを扱う技術分野は、「プラズモニクス」と呼ばれ大きな注目を集めているとともに活発な研究が行なわれており、かかる研究は金属ナノ粒子の局在プラズモン共鳴現象を利用した発光素子の発光効率向上や、光電変換素子の変換効率(光電変換効率)向上を目的とするものを含む。
【0004】
たとえば特許文献1には、局在プラズモン共鳴現象を利用して蛍光物質の蛍光を増強させる技術が開示されている。非特許文献1には、銀ナノ粒子による局在プラズモン共鳴に関する研究が示されている。
【0005】
また特許文献2には、光吸収層として白金系の金属ナノ粒子超薄膜を備え、光吸収層におけるエバネッセント波の発生などに基づいて光吸収層の光吸収率が増強された光吸収増強素子が開示されている。特許文献3には、電極の透明導電性薄膜上に、規則的に配列した金属微粒子と半導体微粒子とからなる微粒子積層構造を有する色素増感太陽電池によれば、金属微粒子同士の相互作用により局在型表面プラズモン共鳴が増強し、エネルギー変換効率を向上し得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−139540号公報
【特許文献2】特許第4565197号公報
【特許文献3】特開2007−335222号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Fukuura and M. Kawasaki, "Long Range Enhancement of Molecular Fluorescence by Closely Packed Submicro-scale Ag Islands", e-Journal of Surface Science and Nanotechnology, 2009, 7, 653
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の金属ナノ粒子による局在プラズモン共鳴を利用した、太陽電池に代表される光電変換素子においては、次のような理由から十分な変換効率向上効果が認められておらず、満足できる変換効率を示す光電変換素子は実現されていない。すなわち、金属ナノ粒子の局在プラズモンに基づく光電変換素子の変換効率向上は、金属ナノ粒子中に生起した局在プラズモンによって金属ナノ粒子近傍の電場が増強され、これにより活性層における励起子の生成効率が増強されることが大きな要因の1つであるところ、従来の金属ナノ粒子では、プラズモンによる近接増強電場自体が実用上比較的強くないことに加えて、電場増強効果の及ぶ範囲(プラズモンによる近接増強電場の有効な作用範囲)が一般的に有効な多くの活性層の厚みに比べて狭く、電場増強効果を活性層のごく一部でしか得ることができないために、十分な電場増強効果が得られなかった。
【0009】
そこで本発明の目的は、電場増強性能の高い新規なプラズモン材料による電場増強により、活性層の光励起効率を向上させ、これによって高い変換効率を示すことができる光電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、活性層と金属系粒子集合体層とを備える光電変換素子を提供する。該金属系粒子集合体層は、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であり、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、平均高さに対する平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にある。
【0011】
本発明の光電変換素子において上記金属系粒子集合体層は、次の〔i〕〜〔iii〕の少なくとも1つ、好ましくはいずれか2つ以上、より好ましくは3つすべてを満たすものである。
【0012】
〔i〕金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子が、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている、
〔ii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている、
〔iii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い。
【0013】
本発明の光電変換素子は、上記金属系粒子集合体層を複数備えることが好ましい。金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、好ましくは、その隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性である。
【0014】
好ましい実施形態において金属系粒子集合体層は、吸光光度法により測定される可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークが350〜550nmの範囲内に極大波長を有する。また、好ましい実施形態において金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が1以上である。
【0015】
本発明の光電変換素子において、活性層の厚みは10nm以上であることができる。本発明の光電変換素子の好ましい実施形態の1つは有機薄膜太陽電池である。
【0016】
また本発明は、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層を、光電変換素子内に配置することを特徴とする光電変換素子の変換効率向上方法を提供する。該金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、平均高さに対する平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にある。また、本発明の変換効率向上方法において金属系粒子集合体層は、上記〔i〕〜〔iii〕の少なくとも1つ、好ましくはいずれか2つ以上、より好ましくは3つすべてを満たすものである。
【発明の効果】
【0017】
電場増強性能に優れる所定の金属系粒子集合体層を備える本発明の光電変換素子によれば、高い変換効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る光電変換素子の一例を示す断面模式図である。
【図2】製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(10000倍および50000倍スケール)である。
【図3】製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層のAFM画像である。
【図4】製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(10000倍および50000倍スケール)である。
【図5】製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層のAFM画像である。
【図6】比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(10000倍スケール)である。
【図7】比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層のAFM画像である。
【図8】製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。
【図9】製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。
【図10】参照金属系粒子集合体の製造方法を示す概略フロー図である。
【図11】参照金属系粒子集合体層積層基板における参照金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(20000倍および50000倍スケール)である。
【図12】顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた吸光スペクトル測定方法を説明する図である。
【図13】顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた方法により測定された製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。
【図14】顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた方法により測定された製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。
【図15】顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた方法により測定された比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の光電変換素子は、活性層(光吸収層)と、30個以上の金属系粒子を互いに離間して二次元的に配置してなる、光電変換素子内に配置される粒子集合体からなる層(膜)である金属系粒子集合体層を少なくとも含んで構成される。
【0020】
本発明において、金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、平均高さに対する平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内とされる。
【0021】
<金属系粒子集合体層>
本発明の光電変換素子の好ましい実施形態において、金属系粒子集合体層は下記のいずれかの特徴を有する。
【0022】
〔i〕金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子が、その隣り合う金属系粒子との平均距離(平均粒子間距離)が1〜150nmの範囲内となるように配置されている(第1の実施形態)、
〔ii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている(第2の実施形態)、
〔iii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い(第3の実施形態)。
【0023】
本明細書において、金属系粒子集合体の平均粒径および平均高さが参照金属系粒子集合体(X)または(Y)と「同じ」であるとは、平均粒径の差が±5nmの範囲内であり、平均高さの差が±10nmの範囲内であることをいう。
【0024】
(第1の実施形態)
上記〔i〕の特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態の光電変換素子は、次の点において極めて有利である。
【0025】
(1)本実施形態に係る金属系粒子集合体層が比較的強いプラズモン共鳴を示すため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い電場増強効果(金属系粒子近傍の電場を増強する効果)を金属系粒子表面からある程度の距離を離して隔離された活性層構成物質(光吸収体)に対しても得ることができ、これにより活性層の光励起効率が増強されるため、変換効率を飛躍的に高めることができる。本実施形態に係る金属系粒子集合体層が示すプラズモンによる近接増強電場は、空間内の特定座標に位置する光吸収体に対して、特定波長における個々の金属系粒子に由来するプラズモン近接増強電場の単なる総和ではなく、それ以上の強さとなり得る。すなわち、30個以上の所定形状の金属系粒子が上記の所定間隔で密に配置されることにより、個々の金属系粒子が相互作用して、極めて強いプラズモン増強電場が発現する。これは、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。
【0026】
一般にプラズモン材料は、吸光光度法で吸光スペクトルを測定したとき、紫外〜可視領域におけるピークとしてプラズモン共鳴ピーク(以下、プラズモンピークともいう)が観測され、このプラズモンピークの極大波長における吸光度値の大小から、そのプラズモン材料のプラズモン共鳴の強さを略式に評価することができるが、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
【0027】
金属系粒子集合体層の吸光スペクトルは、吸光光度法によって、ガラス基板に積層した状態で測定される。具体的には、吸光スペクトルは、金属系粒子集合体層が積層されたガラス基板の裏面側(金属系粒子集合体層とは反対側)であって、基板面に垂直な方向から紫外〜可視光領域の入射光を照射し、金属系粒子集合体層側に透過した全方向における透過光の強度Iと、前記金属系粒子集合体膜積層基板の基板と同じ厚み、材質の基板であって、金属系粒子集合体膜が積層されていない基板の面に垂直な方向から先と同じ入射光を照射し、入射面の反対側から透過した全方向における透過光の強度I0を、それぞれ積分球分光光度計を用いて測定することにより得られる。このとき、吸光スペクトルの縦軸である吸光度は、下記式:
吸光度=−log10(I/I0)
で表される。
【0028】
(2)金属系粒子集合体層によるプラズモン増強電場の有効な作用範囲が著しく伸長されているため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より広い空間領域にわたって電場増強効果を得ることができ、このことは上記と同様、変換効率の飛躍的な向上に寄与する。すなわち、この作用範囲の大幅な伸長によって、一般的な光電変換素子の活性層の厚みスケールで広く光励起効率増強効果を及ぼすことができ、従来のように増強効果範囲が狭く、活性層の一部しか増強できない場合に比べて、光電変換素子の変換効率を著しく向上させることができる。
【0029】
このような伸長作用もまた、30個以上の所定形状の金属系粒子を所定間隔で密に配置したことによって生じた金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。本実施形態に係る金属系粒子集合体層によれば、プラズモン増強電場の作用範囲を、たとえば数百nm程度まで伸長することができる。したがって本実施形態の光電変換素子によれば、活性層から、たとえば10nm、さらには数十nm(たとえば20nm、30nmまたは40nm超)、なおさらには数百nm離れた位置に金属系粒子集合体層を配置してもプラズモンによる電場増強効果およびこれに伴う変換効率向上効果を得ることができる。
【0030】
このように本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、所定形状の金属系粒子の特定数以上を、特定の間隔を置いて密に配置することにより、光電変換素子における強いプラズモン共鳴およびプラズモン増強電場の有効な作用範囲の著しい伸長の実現を可能にしたものである。
【0031】
また、本実施形態の光電変換素子は、その金属系粒子集合体層が特定形状の金属系粒子の特定数以上を二次元的に特定の間隔で離間して配置した構造を有していることに起因して、次のような有利な効果を奏し得る。
【0032】
(3)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、金属系粒子の平均粒径および平均粒子間距離に依存して、プラズモンピークの極大波長が特異なシフトを示し得る。具体的には、所定のアスペクト比の金属系粒子について、平均粒子間距離を、粒子間相互作用を発現できる範囲で一定にして金属系粒子の平均粒径を大きくするに従い、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が短波長側にシフト(ブルーシフト)する。同様に、あるサイズより大きい金属系粒子では、金属系粒子の平均粒径を一定にして平均粒子間距離を小さくするに従い(金属系粒子をより密に配置すると)、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が短波長側にシフトする。この特異な現象は、プラズモン材料に関して一般的に認められているミー散乱理論(この理論に従えば、粒径が大きくなるとプラズモンピークの極大波長は長波長側にシフト(レッドシフト)する。)に反するものである。
【0033】
上記のような特異なブルーシフトもまた、金属系粒子集合体層が所定形状の金属系粒子を特定の間隔を置いて密に配置した構造を有しており、これに伴い、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じていることによるものと考えられる。本実施形態に係る金属系粒子集合体層(ガラス基板上に積層した状態)は、金属系粒子の形状や平均粒子間距離に応じて、吸光光度法によって測定される可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークが、たとえば350〜550nmの波長領域に極大波長を示し得る。また、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、金属系粒子が十分に長い粒子間距離(たとえば1μm)を置いて配置される場合と比較して、典型的には30〜500nm程度(たとえば30〜250nm)のブルーシフトを生じ得る。
【0034】
このようなプラズモンピークの極大波長がブルーシフトした金属系粒子集合体層、たとえば紫外あるいは近紫外波長領域または可視光の短波長領域にプラズモンピークを有する金属系粒子集合体層は、太陽電池等の光電変換素子の変換効率向上に有利である。現在広く知られている太陽電池では、構成によっては紫外あるいは近紫外波長領域または可視光の短波長領域の太陽光の一部をほとんど利用できていないが、上記金属系粒子集合体層を備えることにより、上記波長領域の太陽光による光励起効率を向上できるようになるため、変換効率を向上させ得る。
【0035】
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。
金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、ナノ粒子またはその集合体としたときに、吸光光度法による吸光スペクトル測定において、紫外〜可視領域にプラズモンピークを有する材料からなる限り特に限定されず、たとえば、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属や、アルミニウム、タンタル等の金属;該貴金属または金属を含有する合金;該貴金属または金属を含む金属化合物(金属酸化物や金属塩など)を挙げることができる。これらのなかでも、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属が好ましい。
【0036】
金属系粒子の平均粒径は10〜1600nmの範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均粒径は、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。
【0037】
金属系粒子の平均粒径とは、二次元的に金属系粒子が配置された金属系粒子集合体層の直上からのSEM観察画像において、無作為に粒子を10個選択し、各粒子像内に無作為に接線径を5本引き(ただし、接線径となる直線はいずれも粒子像内部のみを通ることができ、このうち1本は粒子内部のみ通り、最も長く引ける直線であるものとする)、その平均値を各粒子の粒径としたときの、選択した10個の粒径の平均値である。接線径とは、粒子の輪郭(投影像)をこれに接する2本の平行線で挟んだときの間隔(日刊工業新聞社 「粒子計測技術」,1994,第5頁)を結ぶ垂線と定義する。
【0038】
金属系粒子の平均高さは5〜500nmの範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均高さは、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。金属系粒子の平均高さとは、金属系粒子集合体層(膜)のAFM観察画像において、無作為に粒子を10個選択し、これら10個の粒子の高さを測定したときの、10個の測定値の平均値である。
【0039】
金属系粒子のアスペクト比は0.5〜8の範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは1〜5の範囲内である。より強い電場増強効果を得るために、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用を十分確保できる範囲でアスペクト比は小さい方が好ましい。ただし、アスペクト比を小さくとり、かつ平均粒径を小さくしすぎると、粒子間を極めて近接させなければ金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じない場合がある。金属系粒子は真球状であることが好ましい。金属系粒子のアスペクト比は、上記平均高さに対する上記平均粒径の比(平均粒径/平均高さ)で定義される。
【0040】
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面は滑らかな曲面からなることが好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。
【0041】
金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性に鑑み、金属系粒子間のサイズのバラツキはできるだけ小さいことが好ましい。ただし、粒径に多少バラツキが生じたとしても、比較的大型な粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間をより小型の粒子が埋めることで比較的大型な粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
【0042】
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離(平均粒子間距離)が1〜150nmの範囲内となるように配置される。このように金属系粒子を密に配置することにより、強いプラズモン共鳴およびプラズモン増強電場の有効な作用範囲の著しい伸長、さらには上記(3)の効果を実現することができる。平均粒子間距離は、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nm、さらに好ましくは1〜20nmの範囲内である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、金属系粒子集合体中の各粒子のプラズモンおよび金属系粒子集合体として生起するプラズモンの共鳴性能が損なわれる(たとえばプラズモンピークの先鋭性が損なわれる点で不利となる。
【0043】
ここでいう平均粒子間距離とは、二次元的に金属系粒子が配置された金属系粒子集合体層の直上からのSEM観察画像において、無作為に粒子を30個選択し、選択したそれぞれの粒子について、隣り合う粒子との粒子間距離を求めたときの、これら30個の粒子の粒子間距離の平均値である。隣り合う粒子との粒子間距離とは、すべての隣り合う粒子との距離(表面同士間の距離である)をそれぞれ測定し、これらを平均した値である。
【0044】
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用によって強いプラズモン共鳴およびプラズモン増強電場の有効な作用範囲の伸長が発現する。
【0045】
光電変換素子の一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
【0046】
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
【0047】
金属系粒子集合体層において、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。一部もしくは全ての金属系粒子間で電子の授受が可能であると、プラズモンピークは先鋭さを失い、バルク金属の吸光スペクトルに近づき、また高いプラズモン共鳴が得られない。したがって、金属系粒子間は確実に離間されており、金属系粒子間には導電性物質が介在されないことが好ましい。
【0048】
(第2の実施形態)
本実施形態の光電変換素子は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている(上記〔ii〕の特徴を有する)金属系粒子集合体層を備えるものである。このような特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態の光電変換素子は、次の点において極めて有利である。
【0049】
(I)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が特異的な波長領域に存在する。具体的には、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、吸光スペクトルを測定したとき、上記プラズモンピークの極大波長が、後述する参照金属系粒子集合体(X)の極大波長に比べて、30〜500nmの範囲(たとえば30〜250nmの範囲)で短波長側にシフト(ブルーシフト)しており、典型的には、上記プラズモンピークの極大波長は350〜550nmの範囲内にある。
【0050】
上記ブルーシフトは、金属系粒子集合体層が所定形状の金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有しており、これに伴い、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じていることによるものと考えられる。
【0051】
上述のように、このようなプラズモンピークの極大波長がブルーシフトした金属系粒子集合体層、たとえば紫外あるいは近紫外波長領域または可視光の短波長領域にプラズモンピークを有する金属系粒子集合体層は、従来知られている太陽電池ではほとんど利用できていない上記波長領域の太陽光による光励起効率が向上され得るため、光電変換素子の変換効率を向上させ得る点で有利である。
【0052】
ここで、ある金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(X)との間で最も長波長側にあるピークの極大波長や該極大波長における吸光度を比較する場合には、両者について、顕微鏡(Nikon社製「OPTIPHOT−88」と分光光度計(大塚電子社製「MCPD−3000」)とを用い、測定視野を絞って吸光スペクトル測定を行なう。
【0053】
参照金属系粒子集合体(X)は、吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層が有する平均粒径、平均高さと同じ粒径、高さおよび同じ材質を有する金属系粒子Aを、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した金属系粒子集合体であって、ガラス基板に積層した状態で、上記の顕微鏡を利用した吸光スペクトル測定を行ない得る程度の大きさを有するものである。
【0054】
参照金属系粒子集合体(X)の吸光スペクトル波形は、金属系粒子Aの粒径および高さ、金属系粒子Aの材質の誘電関数、金属系粒子A周辺の媒体(たとえば空気)の誘電関数、基板(たとえばガラス基板)の誘電関数を用いて、3D−FDTD法によって理論上計算することも可能である。
【0055】
また、本実施形態の光電変換素子は、その金属系粒子集合体層が所定形状の金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有していることに起因して、(II)金属系粒子集合体層が比較的強いプラズモン共鳴を示し得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い電場増強効果を得ることができ、これにより変換効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(1)と同様)、および(III)金属系粒子集合体層によるプラズモン増強電場の有効な作用範囲(プラズモンによる電場増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長され得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より高い光励起効率増強効果を得ることができ、同様に変換効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(2)と同様)、などの効果を奏し得る。本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
【0056】
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成は、第1の実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成(金属系粒子の材質、平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離、金属系粒子の数、金属系粒子集合体層の非導電性など)と基本的には同様であることができる。平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離などの用語の定義も第1の実施形態と同じである。
【0057】
金属系粒子の平均粒径は10〜1600nmの範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均粒径は、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は、金属系粒子の平均粒径に依存する。すなわち、金属系粒子の平均粒径が一定の値を超えると、当該プラズモンピークの極大波長は短波長側にシフト(ブルーシフト)する。
【0059】
金属系粒子の平均高さは5〜500nmの範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均高さは、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。
【0060】
金属系粒子のアスペクト比は0.5〜8の範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは1〜5の範囲内である。より強い電場増強効果を得るために、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用を十分確保できる範囲でアスペクト比は小さい方が好ましい。ただし、アスペクト比を小さくとり、かつ平均粒径を小さくしすぎると、粒子間を極めて近接させなければ金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じない場合がある。金属系粒子は真球状であることが好ましい。
【0061】
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面は滑らかな曲面からなることが好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。また、金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性に鑑み、金属系粒子間のサイズのバラツキはできるだけ小さいことが好ましい。ただし上述のように、粒径に多少バラツキが生じたとしても、比較的大型な粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間をより小型の粒子が埋めることで比較的大型な粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
【0062】
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、平均粒子間距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されることが好ましい。より好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm、特に好ましくは1〜20nmの範囲内である。このように金属系粒子を密に配置することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記(I)〜(III)の効果が発現されやすくなる。プラズモンピークの極大波長は、金属系粒子の平均粒子間距離に依存するので、平均粒子間距離の調整により、最も長波長側にあるプラズモンピークのブルーシフトの程度や当該プラズモンピークの極大波長を制御することが可能である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、金属系粒子集合体中の各粒子のプラズモンおよび金属系粒子集合体として生起するプラズモンの共鳴性能が損なわれる(たとえばプラズモンピークの先鋭性が損なわれる点で不利となる。
【0063】
上記〔ii〕の特徴(短波長側へのプラズモンピークのシフト)を発現させる上記以外の他の手段としては、たとえば、金属系粒子間に、空気とは誘電率の異なる誘電体物質(後述するように非導電性物質であることが好ましい)を介在させる方法を挙げることができる。
【0064】
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔ii〕の特徴および上記(I)〜(III)の効果の発現が可能となる。
【0065】
光電変換素子の一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
【0066】
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
【0067】
本実施形態の金属系粒子集合体層においても、第1の実施形態と同様、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。
【0068】
(第3の実施形態)
本実施形態の光電変換素子は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い(上記〔iii〕の特徴を有する)金属系粒子集合体層を備えるものである。このような特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態の光電変換素子は、次の点において極めて有利である。
【0069】
(A)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、プラズモンピークである可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が、金属系粒子が何らの粒子間相互作用もなく単に集合した集合体とみなすことができる上記参照金属系粒子集合体(Y)よりも大きく、したがって、より強いプラズモン共鳴を示すため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い電場増強効果を得ることができ、これにより変換効率を飛躍的に高めることができる。このような強いプラズモン共鳴は、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。
【0070】
上記のように、プラズモンピークの極大波長における吸光度値の大小から、そのプラズモン材料のプラズモン共鳴の強さを略式に評価することが可能であるが、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
【0071】
上述のように、ある金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(Y)との間で最も長波長側にあるピークの極大波長や該極大波長における吸光度を比較する場合には、両者について、顕微鏡(Nikon社製「OPTIPHOT−88」と分光光度計(大塚電子社製「MCPD−3000」)とを用い、測定視野を絞って吸光スペクトル測定を行なう。
【0072】
参照金属系粒子集合体(Y)は、吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層が有する平均粒径、平均高さと同じ粒径、高さおよび同じ材質を有する金属系粒子Bを、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した金属系粒子集合体であって、ガラス基板に積層した状態で、上記の顕微鏡を利用した吸光スペクトル測定を行ない得る程度の大きさを有するものである。
【0073】
吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層と参照金属系粒子集合体(Y)との間で、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較する際には、以下に述べるように、同じ金属系粒子数になるように換算した参照金属系粒子集合体(Y)の吸光スペクトルを求め、当該吸光スペクトルにおける最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較の対象とする。具体的には、金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(Y)の吸光スペクトルをそれぞれ求め、それぞれの吸光スペクトルにおける最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を、それぞれの被覆率(金属系粒子による基板表面の被覆率)で除した値を算出し、これらを比較する。
【0074】
また、本実施形態の光電変換素子は、その金属系粒子集合体層が所定形状の金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有していることに起因して、(B)金属系粒子集合体層によるプラズモン増強電場の有効な作用範囲(プラズモンによる電場増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長され得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より高い光励起効率増強効果を得ることができ、これにより変換効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(2)と同様)、および(C)金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長が特異なシフトを示し得るため、上記した波長領域の太陽光による光励起効率の向上およびこれに伴う変換効率の向上が可能になる(上記第1の実施形態の効果(3)と同様)、などの効果を奏し得る。
【0075】
本実施形態の金属系粒子集合体層(ガラス基板上に積層した状態)は、金属系粒子の形状や平均粒子間距離に応じて、吸光光度法によって測定される可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークが、たとえば350〜550nmの波長領域に極大波長を示し得る。また、本実施形態の金属系粒子集合体層は、金属系粒子が十分に長い粒子間距離(たとえば1μm)を置いて配置される場合と比較して、典型的には30〜500nm程度(たとえば30〜250nm)のブルーシフトを生じ得る。
【0076】
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成は、第1の実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成(金属系粒子の材質、平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離、金属系粒子の数、金属系粒子集合体層の非導電性など)と基本的には同様であることができる。平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離などの用語の定義も第1の実施形態と同じである。
【0077】
金属系粒子の平均粒径は10〜1600nmの範囲内であり、上記〔iii〕の特徴(最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が参照金属系粒子集合体(Y)のそれよりも高いという特徴)、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均粒径は、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。
【0078】
金属系粒子の平均高さは5〜500nmの範囲内であり、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均高さは、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。
【0079】
金属系粒子のアスペクト比は0.5〜8の範囲内であり、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは1〜5の範囲内である。より強い電場増強効果を得るために、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用を十分確保できる範囲でアスペクト比は小さい方が好ましい。ただし、アスペクト比を小さくとり、かつ平均粒径を小さくしすぎると、粒子間を極めて近接させなければ金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じない場合がある。金属系粒子は真球状であることが好ましい。
【0080】
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面は滑らかな曲面からなることが好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。
【0081】
上記〔iii〕の特徴が効果的に得られることから、金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、それらの形状(平均粒径、平均高さ、アスペクト比)ができるだけ均一であることが好ましい。すなわち、金属系粒子の形状を均一にすることにより、プラズモンピークが先鋭化し、これに伴い、最も長波長側にあるプラズモンピークの吸光度が参照金属系粒子集合体(Y)のそれよりも高くなりやすくなる。金属系粒子間の形状のバラツキの低減は、金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性の観点からも有利である。ただし上述のように、粒径に多少バラツキが生じたとしても、比較的大型な粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間をより小型の粒子が埋めることで比較的大型な粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
【0082】
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、平均粒子間距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されることが好ましい。より好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm、特に好ましくは1〜20nmの範囲内である。このように金属系粒子を密に配置することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に発現させることができる。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、金属系粒子集合体中の各粒子のプラズモンおよび金属系粒子集合体として生起するプラズモンの共鳴性能が損なわれる(たとえばプラズモンピークの先鋭性が損なわれる点で不利となる。
【0083】
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に発現させることができる。
【0084】
光電変換素子の一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
【0085】
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
【0086】
本実施形態の金属系粒子集合体層においても、第1の実施形態と同様、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。
【0087】
以上のように、上記〔iii〕の特徴を有する本実施形態の金属系粒子集合体層は、これを構成する金属系粒子の金属種、形状、金属系粒子間の平均距離などの制御により得ることができる。
【0088】
本発明の光電変換素子が備える金属系粒子集合体層は、上記〔i〕〜〔iii〕のいずれか1つの特徴を有することが好ましく、〔i〕〜〔iii〕のいずれか2つ以上の特徴を有することがより好ましく、〔i〕〜〔iii〕のすべての特徴を有することがさらに好ましい。
【0089】
<金属系粒子集合体層の製造方法>
上記第1〜第3の実施形態に係る金属系粒子集合体層を含む本発明に係る金属系粒子集合体層は、次のような方法によって作製することができる。
【0090】
(1)基板上において微小な種(seed)から金属系粒子を成長させていくボトムアップ法、
(2)所定の形状を有する金属系粒子を所定の厚みを有する両親媒性材料からなる保護層で被覆した後、LB(Langmuir Blodgett)膜法により、これを基板上にフィルム化する方法、
(3)その他、蒸着またはスパッタリングにより作製した薄膜を後処理する方法、レジスト加工、エッチング加工、金属系粒子が分散された分散液を用いたキャスト法など。
【0091】
上記方法(1)においては、所定温度に調整された基板上に、極めて低速で金属系粒子を成長させる工程(以下、粒子成長工程ともいう。)を含むことが肝要である。かかる粒子成長工程を含む製造方法によれば、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されており、該金属系粒子が、所定範囲内の形状(平均粒径10〜1600nm、平均高さ5〜500nmおよびアスペクト比0.5〜8)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離(1〜150nm)を有する金属系粒子集合体の層(薄膜)を制御良く得ることができる。
【0092】
粒子成長工程において、基板上に金属系粒子を成長させる速度は、平均高さ成長速度で1nm/分未満であることが好ましく、0.5nm/分以下であることがより好ましい。ここでいう平均高さ成長速度とは、平均堆積速度または金属系粒子の平均厚み成長速度とも呼ぶことができ、下記式:
金属系粒子の平均高さ/金属系粒子成長時間(金属系材料の供給時間)
で定義される。「金属系粒子の平均高さ」の定義は上述のとおりである。
【0093】
粒子成長工程における基板の温度は、好ましくは100〜450℃の範囲内、より好ましくは200〜450℃、さらに好ましくは200〜350℃、特に好ましくは250〜350℃である。
【0094】
100〜450℃の範囲内に温度調整された基板上に、1nm/分未満の平均高さ成長速度で金属系粒子を成長させる粒子成長工程を含む製造方法では、粒子成長初期において、供給された金属系材料からなる島状構造物が複数形成され、この島状構造物が、さらなる金属系材料の供給を受けて大きく成長しながら、周囲の島状構造物と合体していき、その結果、個々の金属系粒子が互いに完全に分離されていながらも、粒子が密に配置された金属系粒子集合体層が形成される。したがって、所定範囲内の形状(平均粒径、平均高さおよびアスペクト比)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離を有するように制御された金属系粒子からなる金属系粒子集合体層を製造することが可能となる。
【0095】
また、平均高さ成長速度、基板温度および/または金属系粒子の成長時間(金属系材料の供給時間)の調整によって、基板上に成長される金属系粒子の平均粒径、平均高さ、アスペクト比および/または平均粒子間距離を所定の範囲内で制御することも可能である。
【0096】
さらに、上記粒子成長工程を含む製造方法によれば、粒子成長工程における基板温度および平均高さ成長速度以外の諸条件を比較的自由に選択できることから、所望のサイズの基板上に所望のサイズの金属系粒子集合体層を効率的に形成できるという利点もある。
【0097】
平均高さ成長速度が1nm/分以上である場合や、基板温度が100℃未満または450℃を超える場合には、島状構造物が大きく成長する前に周囲の島状構造物と連続体を形成し、互いに完全に分離された金属系粒子からなる金属系集合体を得ることができないか、または、所望の形状を有する金属系粒子からなる金属系集合体を得ることができない(たとえば平均高さや平均粒子間距離、アスペクト比などが所望の範囲から外れてしまう)。
【0098】
金属系粒子を成長させる際の圧力(装置チャンバ内の圧力)は、粒子成長可能な圧力である限り特に制限されないが、通常、大気圧未満である。圧力の下限は特に制限されないが、平均高さ成長速度を上記範囲内に調整し易いことから、好ましくは6Pa以上、より好ましくは10Pa以上、さらに好ましくは30Pa以上である。
【0099】
基板上に金属系粒子を成長させる具体的方法は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長できる方法である限り特に制限されないが、スパッタリング法、真空蒸着等の蒸着法を挙げることができる。スパッタリング法のなかでも、比較的簡便に金属系粒子集合体層を成長させることができ、かつ、1nm/分未満の平均高さ成長速度を維持しやすいことから、直流(DC)スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタンリング方式に特に制限はなく、イオンガンやプラズマ放電で発生したアルゴンイオンを電界で加速してターゲットに照射する直流アルゴンイオンスパッタリング法などを用いることができる。スパッタリング法における電流値、電圧値、基板・ターゲット間距離等の他の諸条件は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長がなされるよう適宜調整される。
【0100】
なお、所定範囲内の形状(平均粒径、平均高さおよびアスペクト比)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離を有する金属系粒子からなる金属系粒子集合体層を制御良く得るためには、粒子成長工程において平均高さ成長速度を1nm/分未満とすることに加えて、平均粒径成長速度を5nm未満とすることが好ましいが、平均高さ成長速度が1nm/分未満である場合、通常、平均粒径成長速度は5nm未満となる。平均粒径成長速度は、より好ましくは1nm/分以下である。平均粒径成長速度とは、下記式:
金属系粒子の平均粒径/金属系粒子成長時間(金属系材料の供給時間)
で定義される。「金属系粒子の平均粒径」の定義は上述のとおりである。
【0101】
粒子成長工程における金属系粒子の成長時間(金属系材料の供給時間)は、少なくとも、基板上に担持された金属系粒子が所定範囲内の形状、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離に達する時間であり、かつ、当該所定範囲内の形状、平均粒子間距離から逸脱し始める時間未満である。たとえば、上記所定範囲内の平均高さ成長速度および基板温度で粒子成長を行なっても、成長時間が極端に長すぎる場合には、金属系材料の担持量が多くなり過ぎて、互いに離間して配置された金属系粒子の集合体とはならずに連続膜となったり、金属系粒子の平均粒径や平均高さが大きくなり過ぎたりする。
【0102】
したがって、金属系粒子の成長時間を適切な時間に設定する(粒子成長工程を適切な時間で停止する)必要があるが、このような時間の設定は、たとえば、あらかじめ予備実験を行なうことにより得られる、平均高さ成長速度および基板温度と、得られる金属系粒子集合体における金属系粒子の形状および平均粒子間距離との関係に基づいて行なうことができる。あるいは、基板上に成長された金属系材料からなる薄膜が導電性を示すまでの時間(すなわち、薄膜が金属系粒子集合体膜ではなく、連続膜となってしまう時間)をあらかじめ予備実験により求めておき、この時間に達するまでに粒子成長工程を停止するようにしてもよい。
【0103】
金属系粒子を成長させる基板表面は、できるだけ平滑であることが好ましく、とりわけ、原子レベルで平滑であることがより好ましい。基板表面が平滑であるほど、基板から受け取った熱エネルギーにより、成長中の金属系粒子が別の周囲の隣接金属系粒子と合体成長しやすくなるため、より大きなサイズの金属系粒子からなる膜が得られやすい傾向にある。
【0104】
金属系粒子を成長させる基板は、光電変換素子の基板としてそのまま用いることが可能である。すなわち、上記した方法で作製された、金属系粒子集合体層が積層、担持された基板(金属系粒子集合体層積層基板)を光電変換素子の構成部材として用いることができる。
【0105】
<光電変換素子の構成>
本発明の光電変換素子は、活性層(光吸収層)と、上述の金属系粒子集合体層とを少なくとも備えるものである。本発明の光電変換素子によれば、上述の金属系粒子集合体層を備えることによって光励起効率の向上を図ることができ、もって高い変換効率を示すことができる。本発明の光電変換素子は、上述の金属系粒子集合体層を素子内に含むこと以外は、従来公知の光電変換素子と同様の構成を採ることができる。
【0106】
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す断面模式図であり、光電変換素子の一例としての有機薄膜太陽電池の構造例を示したものである。図1に示される有機薄膜太陽電池は、第1電極層40および第2電極層60の一対の電極層;第1電極層40と第2電極層60との間に配置される、有機物からなる活性層(光吸収層)50;ならびに、30個以上の金属系粒子20を互いに離間して二次元的に配置してなる、有機薄膜太陽電池内に配置される粒子集合体からなる層(膜)である金属系粒子集合体層を含む。図1に示されるように、有機薄膜太陽電池(他の光電変換素子についても同様)は、通常の光電変換素子と同様に、上記のような構成層を基板10上に積層したものであることができる。
【0107】
金属系粒子集合体層は、これを基板10における活性層50側表面に積層した図1の例に限定されず、光電変換素子内のいずれの位置に配置してもよく、たとえば、第1電極層40における活性層50側表面や、第2電極層60における活性層50側表面、第2電極層60における外側表面上などに配置することもできる。上述のとおり本発明においては、金属系粒子集合体層によるプラズモン増強電場の有効な作用範囲を著しく伸長できるため、活性層50から離れた位置に金属系粒子集合体層を配置しても、良好な電場増強効果およびこれに伴う変換効率向上効果を得ることが可能である。
【0108】
図1に示される有機薄膜太陽電池においては、金属系粒子集合体層は基板10に直接積層(担持)されており、このような金属系粒子集合体層と基板10との積層体として、上述の方法によって作製できる金属系粒子集合体層積層基板を好ましく用いることができる。
【0109】
基板10は、透光性(好ましくは光学的透明性)を有する限り、太陽電池等の光電変換素子の基板に従来用いられている材料などを含む、いずれの材料で構成されてもよいが、特に金属系粒子集合体層が基板10に直接積層される場合には、金属系粒子集合体層の非導電性を確保する観点から、非導電性基板を用いることが好ましい。非導電性基板としては、ガラス、その他の各種無機絶縁材料(SiO2、ZrO2、マイカ等)、各種プラスチック材料を用いることができる。
【0110】
図1に示されるように、本発明の有機薄膜太陽電池(他の光電変換素子についても同様)は、金属系粒子集合体層を構成するそれぞれの金属系粒子20の表面を覆う絶縁層30をさらに含んでもよい。このような絶縁層30により、上述した金属系粒子集合体層の非導電性(金属系粒子間の非導電性)を担保できるとともに、金属系粒子集合体層とこれに隣り合う他の層との間の電気的絶縁を図ることができる。光電変換素子では、これを構成する各層に電流が流れるが、金属系粒子集合体層に電流が流れてしまうと、プラズモン共鳴による電場増強効果が十分に得られないおそれがある。金属系粒子集合体層をキャップする絶縁層30を設けることにより、金属系粒子集合体層とこれに隣り合う他の層との間の電気的絶縁を図ることができるため、金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子に電流が注入されることを防止することができる。
【0111】
ただし、励起を受けたプラズモン(電子振動)を電子遷移へと変換するプロセスが機能する構成の光電変換素子に金属系粒子集合体層を適用する場合、絶縁層はその電子遷移を阻害してしまうため、絶縁層により金属系粒子を電気的に絶縁することは好ましくない。
【0112】
絶縁層30を構成する材料としては、良好な絶縁性を有するものであれば特に制限されず、たとえば、スピンオングラス(SOG;たとえば有機シロキサン材料を含有するもの)のほか、SiO2やSi3N4などを用いることができる。絶縁層30の厚みは、所望の絶縁性が確保される限り特に制限はないが、後述するように活性層50と金属系粒子集合体層との距離は近いほど好ましいことから、所望の絶縁性が確保される範囲で薄いほどよい。
【0113】
図1に示される有機薄膜太陽電池において活性層50、第1電極層40および第2電極層60は、当該分野において従来公知の材料で構成することができ、またそれらの厚みも光電変換素子が通常有する厚みであってよい。活性層50は、たとえばバルクヘテロジャンクション型の活性層であることができる。かかる活性層としては、p型導電性高分子(たとえばP3HTなどのポリチオフェンなど)と、n型半導体として機能するフラーレン類(たとえばPCBMなど)との混合膜を挙げることができる。第1電極層40は、たとえば酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等からなる透明電極であることができ、第2電極層60は、たとえばAl、Ag等からなる金属電極であることができる。本発明の光電変換素子は、たとえば有機薄膜太陽電池であれば電子輸送層、ホール輸送層など、従来の光電変換素子が有し得る他の層を、構成に応じてさらに含むことができる。
【0114】
本発明の光電変換素子は、上記有機薄膜太陽電池に限定されず、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、色素増感型太陽電池、量子ドット型太陽電池などであることができる。なかでも、製造コスト的に有利である一方、現状において変換効率が低く、変換効率向上が強く望まれている有機薄膜太陽電池であることが好ましい。
【0115】
光電変換素子において活性層は、たとえば10nm以上、さらには20nm以上、なおさらにはそれ以上の厚み(たとえば100nm程度)を有し得るが、本発明によれば、強いプラズモン電場増強を示すとともに、プラズモン増強電場の有効な作用範囲(プラズモンによる電場増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長された金属系粒子集合体層を備えるため、活性層の厚みが大きい場合であっても活性層全体にわたって光励起効率を向上させることが可能になり、これにより変換効率を大きく向上させることができる。
【0116】
本発明の光電変換素子において、活性層と金属系粒子集合体層との間の距離(金属系粒子集合体層の活性層側表面から活性層までの距離)は特に制限されず、上述のように活性層から、たとえば10nm、さらには数十nm(たとえば20nm、30nmまたは40nm超)、なおさらには数百nm離れた位置に金属系粒子集合体層を配置してもプラズモン増強電場による電場増強効果およびこれに伴う光励起効率向上効果、変換効率向上効果を得ることができる。
【0117】
本発明の好ましい実施形態においては、光電変換素子内に複数の金属系粒子集合体層が設けられ、とりわけ、複数(2またはそれ以上)の金属系粒子集合体層が隣接して積層される(複数の金属系粒子集合体層はスペーサ層を介して隣接して積層されることが好ましい)。複数の金属系粒子集合体層を積層して配置すると、単層にわたって発現するプラズモン間の相互作用に加えて、金属系粒子集合体層同士で各層に励起されるプラズモン間における相互作用が生じるため、電場増強効果および電場増強の及ぶ範囲の伸長効果をより高めることができる。
【0118】
なお、プラズモンによる電場増強効果は、その性質上、活性層と金属系粒子集合体層との間の距離が大きくなるほど小さくなる傾向にあることから、当該距離は小さいほど好ましい。活性層と金属系粒子集合体層との間の距離は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは20nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。
【0119】
金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長は、利用する励起光の波長、および活性層の吸収波長と一致するかまたは近いことが好ましい。これにより、プラズモン共鳴による電場増強効果をより効果的に高めることができる。金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長は、これを構成する金属系粒子の金属種、平均粒径、平均高さ、アスペクト比および/または平均粒子間距離の調整により制御可能である。
【実施例】
【0120】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0121】
〔金属系粒子集合体層積層基板の作製〕
<製造例1>
直流マグネトロンスパッタリング装置を用いて、下記の条件で、ソーダガラス基板上に、銀粒子を極めてゆっくりと成長させ、基板表面の全面に金属系粒子集合体の薄膜を形成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
【0122】
使用ガス:アルゴン、
チャンバ内圧力(スパッタガス圧):10Pa、
基板・ターゲット間距離:100mm、
スパッタ電力:4W、
平均粒径成長速度(平均粒径/スパッタ時間):0.9nm/分、
平均高さ成長速度(=平均堆積速度=平均高さ/スパッタ時間):0.25nm/分、
基板温度:300℃、
基板サイズおよび形状:一辺が5cmの正方形。
【0123】
図2は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図2(a)は10000倍スケールの拡大像であり、図2(b)は50000倍スケールの拡大像である。また図3は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。AFM像撮影にはキーエンス社製「VN−8010」を用いた(以下同様)。図3に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
【0124】
図2に示されるSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は335nm、平均粒子間距離は16.7nmと求められた。また図3に示されるAFM画像より、平均高さは96.2nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は3.48と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層は、約6.25×1010個(約25個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
【0125】
また、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層の表面にテスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」〕を接続して導電性を確認したところ、導電性を有しないことが確認された。
【0126】
<製造例2>
銀ナノ粒子水分散物(三菱製紙社製、銀ナノ粒子濃度:25重量%)を純水で、銀ナノ粒子濃度が2重量%となるように希釈した。次いで、この銀ナノ粒子水分散物に対して1体積%の界面活性剤を添加して良く攪拌した後、得られた銀ナノ粒子水分散物に対して80体積%のアセトンを添加して常温で十分撹拌し、銀ナノ粒子塗工液を調製した。
【0127】
次に、表面をアセトン拭きした1mm厚のソーダガラス基板上に上記銀ナノ粒子塗工液を1000rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で40秒間焼成した。次いで、形成された銀ナノ粒子層上に再度、上記銀ナノ粒子塗工液を1000rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で40秒間焼成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
【0128】
図4は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図4(a)は10000倍スケールの拡大像であり、図4(b)は50000倍スケールの拡大像である。また図5は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。図5に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
【0129】
図4に示されるSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は293nm、平均粒子間距離は107.8nmと求められた。また図5に示されるAFM画像より、平均高さは93.0nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は3.15と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層は、約3.13×1010個(約12.5個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
【0130】
また、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層の表面にテスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」〕を接続して導電性を確認したところ、導電性を有しないことが確認された。
【0131】
<比較製造例1>
銀ナノ粒子水分散物(三菱製紙社製、銀ナノ粒子濃度:25重量%)を純水で、銀ナノ粒子濃度が6重量%となるように希釈した。次いで、この銀ナノ粒子水分散物に対して1体積%の界面活性剤を添加して良く攪拌した後、得られた銀ナノ粒子水分散物に対して80体積%のアセトンを添加して常温で十分振り混ぜ、銀ナノ粒子塗工液を調製した。
【0132】
次に、表面をアセトン拭きした1mm厚のソーダガラス基板上に上記銀ナノ粒子塗工液を1500rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で5分間焼成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
【0133】
図6は、本比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像であり、10000倍スケールの拡大像である。また図7は、本比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。図7に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
【0134】
図6に示されるSEM画像より、本比較製造例1の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は278nm、平均粒子間距離は195.5nmと求められた。また図7に示されるAFM画像より、平均高さは99.5nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は2.79と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本比較製造例1の金属系粒子集合体層は、約2.18×1010個(約8.72個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
【0135】
〔金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトル測定〕
図8は、製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光光度法により測定された吸光スペクトルである。非特許文献(K. Lance Kelly, et al., "The Optical Properties of Metal Nanoparticles: The Influence of Size, Shape, and Dielectric Environment", The Journal of Physical Chemistry B, 2003, 107, 668)に示されているように、製造例1のような扁平形状の銀粒子は、平均粒径が200nmのとき約550nm付近に、平均粒径が300nmのときは650nm付近にプラズモンピークを持つことが一般的である(いずれも銀粒子単独の場合である)。
【0136】
一方、製造例1の金属系粒子集合体層積層基板は、これを構成する銀粒子の平均粒径が約300nm(335nm)であるにもかかわらず、図8に示されるように、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は約450nm付近と、短波長側にシフトしていることがわかる。また、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が約1.9と高く、極めて強いプラズモン共鳴を示すことがわかる。
【0137】
図9に、製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光光度法により測定された吸光スペクトルを示した。可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は488nmであった。
【0138】
なお、図8および図9に示される吸光スペクトルは、金属系粒子集合体層積層基板の裏面(金属系粒子集合体層とは反対側)側であって、基板面に垂直な方向から紫外〜可視光領域の入射光を照射し、金属系粒子集合体層側に透過した全方向における透過光の強度Iと、前記金属系粒子集合体膜積層基板の基板と同じ厚み、材質の基板であって、金属系粒子集合体膜が積層されていない基板の面に垂直な方向から先と同じ入射光を照射し、入射面の反対側から透過した全方向における透過光の強度I0を、それぞれ積分球分光光度計を用いて測定することによって得られたものである。縦軸の吸光度は、下記式:
吸光度=−log10(I/I0)
で表される。
【0139】
〔参照金属系粒子集合体の作製および吸光スペクトル測定〕
図10に示される方法に従って、参照金属系粒子集合体が積層された基板を作製した。まず、縦5cm、横5cmのソーダガラス基板100のおよそ全面にレジスト(日本ゼオン株式会社製 ZEP520A)をスピンコートした(図10(a))。レジスト400の厚みは約120nmとした。次に、電子ビームリソグラフィーによってレジスト400に円形開口401を形成した(図10(b))。円形開口401の直径は約350nmとした。また、隣り合う円形開口401の中心間距離は約1500nmとした。
【0140】
ついで、円形開口401を有するレジスト400に、真空蒸着法により銀膜201を蒸着した(図10(c))。銀膜201の膜厚は約100nmとした。最後に、銀膜201を有する基板をNMP(東京化成工業製 N−メチル−2−ピロリドン)に浸漬し、超音波装置内で1分間常温静置することによりレジスト400およびレジスト400上に成膜された銀膜201を剥離して、円形開口401内の銀膜201(銀粒子)のみがソーダガラス基板100上に残存、積層された参照金属系粒子集合体層積層基板を得た(図10(d))。
【0141】
図11は、得られた参照金属系粒子集合体層積層基板における参照金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図11(a)は20000倍スケールの拡大像であり、図11(b)は50000倍スケールの拡大像である。図11に示されるSEM画像より、参照金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は333nm、平均粒子間距離は1264nmと求められた。また別途取得したAFM画像より、平均高さは105.9nmと求められた。またSEM画像より、参照金属系粒子集合体は、約62500個の銀粒子を有することがわかった。
【0142】
上述した顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた測定法により、製造例1の金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトル測定を行なった。具体的には、図12を参照して、金属系粒子集合体層積層基板500の基板501側(金属系粒子集合体層502とは反対側)であって、基板面に垂直な方向から可視光領域の入射光を照射した。そして、金属系粒子集合体層502側に透過し、かつ100倍の対物レンズ600に到達した透過光を対物レンズ600で集光し、この集光光を分光光度計700によって検出して吸光スペクトルを得た。
【0143】
分光光度計700には大塚電子社製の紫外可視分光光度計「MCPD−3000」を、対物レンズ600にはNikon社製の「BD Plan 100/0.80 ELWD」を用いた。結果を図13に示す。可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は、図8の吸光スペクトルと同様、約450nmであった。一方、同じく顕微鏡の対物レンズを用いた測定法により参照金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトル測定を行なったところ、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長は、654nmであった。製造例1の金属系粒子集合体層積層基板は、参照金属系粒子集合体層積層基板と比べて、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長が約200nmブルーシフトしている。
【0144】
製造例1の金属系粒子集合体層積層基板は、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が1.744であり(図13)、参照金属系粒子集合体層積層基板は0.033であった。製造例1の金属系粒子集合体層積層基板と参照金属系粒子集合体層積層基板との間で最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較するにあたって同じ金属系粒子数での比較となるようにするために、吸光スペクトルから得られる吸光度を、金属系粒子数に相当するパラメータである、金属系粒子による基板表面の被覆率で除して、吸光度/被覆率を算出した。製造例1の金属系粒子集合体層積層基板の吸光度/被覆率は2.04であり(被覆率85.3%)、参照金属系粒子集合体層積層基板の吸光度/被覆率は0.84であった(被覆率3.9%)。
【0145】
図14および図15は、顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた測定法による製造例2、比較製造例1の金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板は、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長が611nmであった。この極大波長は、比較製造例1の金属系粒子集合体膜積層基板に対応する参照金属系粒子集合体膜積層基板の極大波長とほぼ同じであり、したがって比較製造例1の金属系粒子集合体膜はほとんどブルーシフトを示さない。図15の吸光スペクトルから得られる可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度は0.444であり、金属系粒子による基板表面の被覆率が53.2%であることから、吸光度/被覆率は0.83と算出される。この吸光度/被覆率は、参照金属系粒子集合体層積層基板より小さい。
【0146】
製造例2の金属系粒子集合体は、比較製造例1の金属系粒子集合体に比べ、金属系粒子の平均粒径が大きいため、製造例2の金属系粒子集合体のプラズモンピークは、比較製造例1に比べて、より長波長側に現れることがミー散乱理論から合理的に推測される。しかし実際には、製造例2の金属系粒子集合体のプラズモンピークは、比較製造例1に比べて、100nm以上も短波長側に現れた。このことから、製造例2の金属系粒子集合体は、プラズモンピークの極大波長がその参照金属系粒子集合体に比べて、30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしていることが合理的に示唆される。
【0147】
〔光電変換素子の作製および電流特性の評価〕
<実施例1>
製造例1と類似の条件で銀粒子を成長させることにより、平均高さが79.9nmであること以外は製造例1に記載のものと同じ金属系粒子集合体層を0.5mm厚のソーダガラス基板上に形成した。その後直ちに、スピンオングラス(SOG)溶液を金属系粒子集合体層上にスピンコートして、平均厚み80nmの絶縁層を積層した。SOG溶液には、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD T−7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。
【0148】
次に、イオンスパッタリング法により、アノード極としてのIZO層(厚み22nm)を絶縁層上に積層した後、正孔輸送層形成用溶液をアノード極上にスピンコートして、平均厚み20nmの正孔輸送層を積層した。正孔輸送層形成用溶液には、PLEXTRONICS社製、商品名「Plexcore AQ 1200」を、エタノールを用いて所定濃度に希釈したものを用いた。絶縁層、アノード極および正孔輸送層の合計平均厚み(すなわち、金属系粒子集合体膜表面から発光層までの平均距離)は122nmである。
【0149】
ついで、光吸収層用溶液をスピンコートした後、ホットプレートで150℃、15分間熱処理して、平均厚み50nmの光吸収層を形成した。光吸収層用溶液は、P3HT(シグマアルドリッチ社製)30mgと、PCBM(シグマアルドリッチ社製)24mgをクロロベンゼン3mLに溶解して調製した。その後、真空蒸着法により、バッファ層としてのNaF層(2nm厚)、カソード極としてのMg層(2nm厚)およびAg層(10nm厚)をこの順で光吸収層上に積層した。得られた素子を表面側から封止剤(ナガセケムテックス社製 紫外線硬化性樹脂「XNR5516ZLV」)を用いて封止し、光電変換素子を得た。
【0150】
<比較例1>
金属系粒子集合体層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
【0151】
実施例1の光電変換素子に、電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製「R6240A」)を電極間の印加電圧を0Vとした状態で接続した。このときに測定された光照射前の電流値をバックグラウンド電流I0とした。次に、素子のカソード極面に対して垂直な方向の光を、素子のカソード極側からハロゲンランプ(株式会社モリテックス製「MHAB-150W」)を用いて照射し、このときに流れた電流値I1を測定した。電流値I1からバックグラウンド電流I0を差し引いて、実施例1の光電変換素子の電流値I2を求めた。実施例1の光電変換素子と同様にして、比較例1の光電変換素子についても電流値I2を求めた。その結果、実施例1の光電変換素子は、比較例1の光電変換素子と比較して約17.4倍の電流値I2を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0152】
10 基板、20 金属系粒子、30 絶縁層、40 第1電極層、50 活性層(光吸収層)、60 第2電極層、100 ソーダガラス基板、201 銀膜、400 レジスト、401 円形開口、500 金属系粒子集合体層積層基板、501 基板、502 金属系粒子集合体層、600 対物レンズ、700 分光光度計。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属系粒子集合体のプラズモン共鳴を利用して変換効率の向上が図られた、光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子をナノサイズにまで微細化すると、バルク状態では見られなかった機能を発現するようになることが従来知られており、なかでも応用が期待されているのが「局在プラズモン共鳴」である。プラズモンとは、金属ナノ構造体中の自由電子の集団的な振動によって生起する自由電子の粗密波のことである。
【0003】
近年、上記プラズモンを扱う技術分野は、「プラズモニクス」と呼ばれ大きな注目を集めているとともに活発な研究が行なわれており、かかる研究は金属ナノ粒子の局在プラズモン共鳴現象を利用した発光素子の発光効率向上や、光電変換素子の変換効率(光電変換効率)向上を目的とするものを含む。
【0004】
たとえば特許文献1には、局在プラズモン共鳴現象を利用して蛍光物質の蛍光を増強させる技術が開示されている。非特許文献1には、銀ナノ粒子による局在プラズモン共鳴に関する研究が示されている。
【0005】
また特許文献2には、光吸収層として白金系の金属ナノ粒子超薄膜を備え、光吸収層におけるエバネッセント波の発生などに基づいて光吸収層の光吸収率が増強された光吸収増強素子が開示されている。特許文献3には、電極の透明導電性薄膜上に、規則的に配列した金属微粒子と半導体微粒子とからなる微粒子積層構造を有する色素増感太陽電池によれば、金属微粒子同士の相互作用により局在型表面プラズモン共鳴が増強し、エネルギー変換効率を向上し得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−139540号公報
【特許文献2】特許第4565197号公報
【特許文献3】特開2007−335222号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Fukuura and M. Kawasaki, "Long Range Enhancement of Molecular Fluorescence by Closely Packed Submicro-scale Ag Islands", e-Journal of Surface Science and Nanotechnology, 2009, 7, 653
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の金属ナノ粒子による局在プラズモン共鳴を利用した、太陽電池に代表される光電変換素子においては、次のような理由から十分な変換効率向上効果が認められておらず、満足できる変換効率を示す光電変換素子は実現されていない。すなわち、金属ナノ粒子の局在プラズモンに基づく光電変換素子の変換効率向上は、金属ナノ粒子中に生起した局在プラズモンによって金属ナノ粒子近傍の電場が増強され、これにより活性層における励起子の生成効率が増強されることが大きな要因の1つであるところ、従来の金属ナノ粒子では、プラズモンによる近接増強電場自体が実用上比較的強くないことに加えて、電場増強効果の及ぶ範囲(プラズモンによる近接増強電場の有効な作用範囲)が一般的に有効な多くの活性層の厚みに比べて狭く、電場増強効果を活性層のごく一部でしか得ることができないために、十分な電場増強効果が得られなかった。
【0009】
そこで本発明の目的は、電場増強性能の高い新規なプラズモン材料による電場増強により、活性層の光励起効率を向上させ、これによって高い変換効率を示すことができる光電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、活性層と金属系粒子集合体層とを備える光電変換素子を提供する。該金属系粒子集合体層は、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であり、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、平均高さに対する平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にある。
【0011】
本発明の光電変換素子において上記金属系粒子集合体層は、次の〔i〕〜〔iii〕の少なくとも1つ、好ましくはいずれか2つ以上、より好ましくは3つすべてを満たすものである。
【0012】
〔i〕金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子が、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている、
〔ii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている、
〔iii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い。
【0013】
本発明の光電変換素子は、上記金属系粒子集合体層を複数備えることが好ましい。金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、好ましくは、その隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性である。
【0014】
好ましい実施形態において金属系粒子集合体層は、吸光光度法により測定される可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークが350〜550nmの範囲内に極大波長を有する。また、好ましい実施形態において金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が1以上である。
【0015】
本発明の光電変換素子において、活性層の厚みは10nm以上であることができる。本発明の光電変換素子の好ましい実施形態の1つは有機薄膜太陽電池である。
【0016】
また本発明は、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層を、光電変換素子内に配置することを特徴とする光電変換素子の変換効率向上方法を提供する。該金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、平均高さに対する平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にある。また、本発明の変換効率向上方法において金属系粒子集合体層は、上記〔i〕〜〔iii〕の少なくとも1つ、好ましくはいずれか2つ以上、より好ましくは3つすべてを満たすものである。
【発明の効果】
【0017】
電場増強性能に優れる所定の金属系粒子集合体層を備える本発明の光電変換素子によれば、高い変換効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る光電変換素子の一例を示す断面模式図である。
【図2】製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(10000倍および50000倍スケール)である。
【図3】製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層のAFM画像である。
【図4】製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(10000倍および50000倍スケール)である。
【図5】製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層のAFM画像である。
【図6】比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(10000倍スケール)である。
【図7】比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層のAFM画像である。
【図8】製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。
【図9】製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。
【図10】参照金属系粒子集合体の製造方法を示す概略フロー図である。
【図11】参照金属系粒子集合体層積層基板における参照金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像(20000倍および50000倍スケール)である。
【図12】顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた吸光スペクトル測定方法を説明する図である。
【図13】顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた方法により測定された製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。
【図14】顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた方法により測定された製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。
【図15】顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた方法により測定された比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の光電変換素子は、活性層(光吸収層)と、30個以上の金属系粒子を互いに離間して二次元的に配置してなる、光電変換素子内に配置される粒子集合体からなる層(膜)である金属系粒子集合体層を少なくとも含んで構成される。
【0020】
本発明において、金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、平均高さに対する平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内とされる。
【0021】
<金属系粒子集合体層>
本発明の光電変換素子の好ましい実施形態において、金属系粒子集合体層は下記のいずれかの特徴を有する。
【0022】
〔i〕金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子が、その隣り合う金属系粒子との平均距離(平均粒子間距離)が1〜150nmの範囲内となるように配置されている(第1の実施形態)、
〔ii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている(第2の実施形態)、
〔iii〕金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記平均粒径と同じ粒径、上記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い(第3の実施形態)。
【0023】
本明細書において、金属系粒子集合体の平均粒径および平均高さが参照金属系粒子集合体(X)または(Y)と「同じ」であるとは、平均粒径の差が±5nmの範囲内であり、平均高さの差が±10nmの範囲内であることをいう。
【0024】
(第1の実施形態)
上記〔i〕の特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態の光電変換素子は、次の点において極めて有利である。
【0025】
(1)本実施形態に係る金属系粒子集合体層が比較的強いプラズモン共鳴を示すため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い電場増強効果(金属系粒子近傍の電場を増強する効果)を金属系粒子表面からある程度の距離を離して隔離された活性層構成物質(光吸収体)に対しても得ることができ、これにより活性層の光励起効率が増強されるため、変換効率を飛躍的に高めることができる。本実施形態に係る金属系粒子集合体層が示すプラズモンによる近接増強電場は、空間内の特定座標に位置する光吸収体に対して、特定波長における個々の金属系粒子に由来するプラズモン近接増強電場の単なる総和ではなく、それ以上の強さとなり得る。すなわち、30個以上の所定形状の金属系粒子が上記の所定間隔で密に配置されることにより、個々の金属系粒子が相互作用して、極めて強いプラズモン増強電場が発現する。これは、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。
【0026】
一般にプラズモン材料は、吸光光度法で吸光スペクトルを測定したとき、紫外〜可視領域におけるピークとしてプラズモン共鳴ピーク(以下、プラズモンピークともいう)が観測され、このプラズモンピークの極大波長における吸光度値の大小から、そのプラズモン材料のプラズモン共鳴の強さを略式に評価することができるが、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
【0027】
金属系粒子集合体層の吸光スペクトルは、吸光光度法によって、ガラス基板に積層した状態で測定される。具体的には、吸光スペクトルは、金属系粒子集合体層が積層されたガラス基板の裏面側(金属系粒子集合体層とは反対側)であって、基板面に垂直な方向から紫外〜可視光領域の入射光を照射し、金属系粒子集合体層側に透過した全方向における透過光の強度Iと、前記金属系粒子集合体膜積層基板の基板と同じ厚み、材質の基板であって、金属系粒子集合体膜が積層されていない基板の面に垂直な方向から先と同じ入射光を照射し、入射面の反対側から透過した全方向における透過光の強度I0を、それぞれ積分球分光光度計を用いて測定することにより得られる。このとき、吸光スペクトルの縦軸である吸光度は、下記式:
吸光度=−log10(I/I0)
で表される。
【0028】
(2)金属系粒子集合体層によるプラズモン増強電場の有効な作用範囲が著しく伸長されているため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より広い空間領域にわたって電場増強効果を得ることができ、このことは上記と同様、変換効率の飛躍的な向上に寄与する。すなわち、この作用範囲の大幅な伸長によって、一般的な光電変換素子の活性層の厚みスケールで広く光励起効率増強効果を及ぼすことができ、従来のように増強効果範囲が狭く、活性層の一部しか増強できない場合に比べて、光電変換素子の変換効率を著しく向上させることができる。
【0029】
このような伸長作用もまた、30個以上の所定形状の金属系粒子を所定間隔で密に配置したことによって生じた金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。本実施形態に係る金属系粒子集合体層によれば、プラズモン増強電場の作用範囲を、たとえば数百nm程度まで伸長することができる。したがって本実施形態の光電変換素子によれば、活性層から、たとえば10nm、さらには数十nm(たとえば20nm、30nmまたは40nm超)、なおさらには数百nm離れた位置に金属系粒子集合体層を配置してもプラズモンによる電場増強効果およびこれに伴う変換効率向上効果を得ることができる。
【0030】
このように本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、所定形状の金属系粒子の特定数以上を、特定の間隔を置いて密に配置することにより、光電変換素子における強いプラズモン共鳴およびプラズモン増強電場の有効な作用範囲の著しい伸長の実現を可能にしたものである。
【0031】
また、本実施形態の光電変換素子は、その金属系粒子集合体層が特定形状の金属系粒子の特定数以上を二次元的に特定の間隔で離間して配置した構造を有していることに起因して、次のような有利な効果を奏し得る。
【0032】
(3)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、金属系粒子の平均粒径および平均粒子間距離に依存して、プラズモンピークの極大波長が特異なシフトを示し得る。具体的には、所定のアスペクト比の金属系粒子について、平均粒子間距離を、粒子間相互作用を発現できる範囲で一定にして金属系粒子の平均粒径を大きくするに従い、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が短波長側にシフト(ブルーシフト)する。同様に、あるサイズより大きい金属系粒子では、金属系粒子の平均粒径を一定にして平均粒子間距離を小さくするに従い(金属系粒子をより密に配置すると)、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が短波長側にシフトする。この特異な現象は、プラズモン材料に関して一般的に認められているミー散乱理論(この理論に従えば、粒径が大きくなるとプラズモンピークの極大波長は長波長側にシフト(レッドシフト)する。)に反するものである。
【0033】
上記のような特異なブルーシフトもまた、金属系粒子集合体層が所定形状の金属系粒子を特定の間隔を置いて密に配置した構造を有しており、これに伴い、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じていることによるものと考えられる。本実施形態に係る金属系粒子集合体層(ガラス基板上に積層した状態)は、金属系粒子の形状や平均粒子間距離に応じて、吸光光度法によって測定される可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークが、たとえば350〜550nmの波長領域に極大波長を示し得る。また、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、金属系粒子が十分に長い粒子間距離(たとえば1μm)を置いて配置される場合と比較して、典型的には30〜500nm程度(たとえば30〜250nm)のブルーシフトを生じ得る。
【0034】
このようなプラズモンピークの極大波長がブルーシフトした金属系粒子集合体層、たとえば紫外あるいは近紫外波長領域または可視光の短波長領域にプラズモンピークを有する金属系粒子集合体層は、太陽電池等の光電変換素子の変換効率向上に有利である。現在広く知られている太陽電池では、構成によっては紫外あるいは近紫外波長領域または可視光の短波長領域の太陽光の一部をほとんど利用できていないが、上記金属系粒子集合体層を備えることにより、上記波長領域の太陽光による光励起効率を向上できるようになるため、変換効率を向上させ得る。
【0035】
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。
金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、ナノ粒子またはその集合体としたときに、吸光光度法による吸光スペクトル測定において、紫外〜可視領域にプラズモンピークを有する材料からなる限り特に限定されず、たとえば、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属や、アルミニウム、タンタル等の金属;該貴金属または金属を含有する合金;該貴金属または金属を含む金属化合物(金属酸化物や金属塩など)を挙げることができる。これらのなかでも、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属が好ましい。
【0036】
金属系粒子の平均粒径は10〜1600nmの範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均粒径は、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。
【0037】
金属系粒子の平均粒径とは、二次元的に金属系粒子が配置された金属系粒子集合体層の直上からのSEM観察画像において、無作為に粒子を10個選択し、各粒子像内に無作為に接線径を5本引き(ただし、接線径となる直線はいずれも粒子像内部のみを通ることができ、このうち1本は粒子内部のみ通り、最も長く引ける直線であるものとする)、その平均値を各粒子の粒径としたときの、選択した10個の粒径の平均値である。接線径とは、粒子の輪郭(投影像)をこれに接する2本の平行線で挟んだときの間隔(日刊工業新聞社 「粒子計測技術」,1994,第5頁)を結ぶ垂線と定義する。
【0038】
金属系粒子の平均高さは5〜500nmの範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均高さは、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。金属系粒子の平均高さとは、金属系粒子集合体層(膜)のAFM観察画像において、無作為に粒子を10個選択し、これら10個の粒子の高さを測定したときの、10個の測定値の平均値である。
【0039】
金属系粒子のアスペクト比は0.5〜8の範囲内であり、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは1〜5の範囲内である。より強い電場増強効果を得るために、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用を十分確保できる範囲でアスペクト比は小さい方が好ましい。ただし、アスペクト比を小さくとり、かつ平均粒径を小さくしすぎると、粒子間を極めて近接させなければ金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じない場合がある。金属系粒子は真球状であることが好ましい。金属系粒子のアスペクト比は、上記平均高さに対する上記平均粒径の比(平均粒径/平均高さ)で定義される。
【0040】
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面は滑らかな曲面からなることが好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。
【0041】
金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性に鑑み、金属系粒子間のサイズのバラツキはできるだけ小さいことが好ましい。ただし、粒径に多少バラツキが生じたとしても、比較的大型な粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間をより小型の粒子が埋めることで比較的大型な粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
【0042】
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離(平均粒子間距離)が1〜150nmの範囲内となるように配置される。このように金属系粒子を密に配置することにより、強いプラズモン共鳴およびプラズモン増強電場の有効な作用範囲の著しい伸長、さらには上記(3)の効果を実現することができる。平均粒子間距離は、上記(1)〜(3)の効果を効果的に得るために、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nm、さらに好ましくは1〜20nmの範囲内である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、金属系粒子集合体中の各粒子のプラズモンおよび金属系粒子集合体として生起するプラズモンの共鳴性能が損なわれる(たとえばプラズモンピークの先鋭性が損なわれる点で不利となる。
【0043】
ここでいう平均粒子間距離とは、二次元的に金属系粒子が配置された金属系粒子集合体層の直上からのSEM観察画像において、無作為に粒子を30個選択し、選択したそれぞれの粒子について、隣り合う粒子との粒子間距離を求めたときの、これら30個の粒子の粒子間距離の平均値である。隣り合う粒子との粒子間距離とは、すべての隣り合う粒子との距離(表面同士間の距離である)をそれぞれ測定し、これらを平均した値である。
【0044】
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用によって強いプラズモン共鳴およびプラズモン増強電場の有効な作用範囲の伸長が発現する。
【0045】
光電変換素子の一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
【0046】
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
【0047】
金属系粒子集合体層において、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。一部もしくは全ての金属系粒子間で電子の授受が可能であると、プラズモンピークは先鋭さを失い、バルク金属の吸光スペクトルに近づき、また高いプラズモン共鳴が得られない。したがって、金属系粒子間は確実に離間されており、金属系粒子間には導電性物質が介在されないことが好ましい。
【0048】
(第2の実施形態)
本実施形態の光電変換素子は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記参照金属系粒子集合体(X)と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている(上記〔ii〕の特徴を有する)金属系粒子集合体層を備えるものである。このような特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態の光電変換素子は、次の点において極めて有利である。
【0049】
(I)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長が特異的な波長領域に存在する。具体的には、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、吸光スペクトルを測定したとき、上記プラズモンピークの極大波長が、後述する参照金属系粒子集合体(X)の極大波長に比べて、30〜500nmの範囲(たとえば30〜250nmの範囲)で短波長側にシフト(ブルーシフト)しており、典型的には、上記プラズモンピークの極大波長は350〜550nmの範囲内にある。
【0050】
上記ブルーシフトは、金属系粒子集合体層が所定形状の金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有しており、これに伴い、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じていることによるものと考えられる。
【0051】
上述のように、このようなプラズモンピークの極大波長がブルーシフトした金属系粒子集合体層、たとえば紫外あるいは近紫外波長領域または可視光の短波長領域にプラズモンピークを有する金属系粒子集合体層は、従来知られている太陽電池ではほとんど利用できていない上記波長領域の太陽光による光励起効率が向上され得るため、光電変換素子の変換効率を向上させ得る点で有利である。
【0052】
ここで、ある金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(X)との間で最も長波長側にあるピークの極大波長や該極大波長における吸光度を比較する場合には、両者について、顕微鏡(Nikon社製「OPTIPHOT−88」と分光光度計(大塚電子社製「MCPD−3000」)とを用い、測定視野を絞って吸光スペクトル測定を行なう。
【0053】
参照金属系粒子集合体(X)は、吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層が有する平均粒径、平均高さと同じ粒径、高さおよび同じ材質を有する金属系粒子Aを、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した金属系粒子集合体であって、ガラス基板に積層した状態で、上記の顕微鏡を利用した吸光スペクトル測定を行ない得る程度の大きさを有するものである。
【0054】
参照金属系粒子集合体(X)の吸光スペクトル波形は、金属系粒子Aの粒径および高さ、金属系粒子Aの材質の誘電関数、金属系粒子A周辺の媒体(たとえば空気)の誘電関数、基板(たとえばガラス基板)の誘電関数を用いて、3D−FDTD法によって理論上計算することも可能である。
【0055】
また、本実施形態の光電変換素子は、その金属系粒子集合体層が所定形状の金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有していることに起因して、(II)金属系粒子集合体層が比較的強いプラズモン共鳴を示し得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い電場増強効果を得ることができ、これにより変換効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(1)と同様)、および(III)金属系粒子集合体層によるプラズモン増強電場の有効な作用範囲(プラズモンによる電場増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長され得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より高い光励起効率増強効果を得ることができ、同様に変換効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(2)と同様)、などの効果を奏し得る。本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
【0056】
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成は、第1の実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成(金属系粒子の材質、平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離、金属系粒子の数、金属系粒子集合体層の非導電性など)と基本的には同様であることができる。平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離などの用語の定義も第1の実施形態と同じである。
【0057】
金属系粒子の平均粒径は10〜1600nmの範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均粒径は、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は、金属系粒子の平均粒径に依存する。すなわち、金属系粒子の平均粒径が一定の値を超えると、当該プラズモンピークの極大波長は短波長側にシフト(ブルーシフト)する。
【0059】
金属系粒子の平均高さは5〜500nmの範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均高さは、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。
【0060】
金属系粒子のアスペクト比は0.5〜8の範囲内であり、上記(I)〜(III)の効果を効果的に得るために、好ましくは1〜5の範囲内である。より強い電場増強効果を得るために、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用を十分確保できる範囲でアスペクト比は小さい方が好ましい。ただし、アスペクト比を小さくとり、かつ平均粒径を小さくしすぎると、粒子間を極めて近接させなければ金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じない場合がある。金属系粒子は真球状であることが好ましい。
【0061】
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面は滑らかな曲面からなることが好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。また、金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性に鑑み、金属系粒子間のサイズのバラツキはできるだけ小さいことが好ましい。ただし上述のように、粒径に多少バラツキが生じたとしても、比較的大型な粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間をより小型の粒子が埋めることで比較的大型な粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
【0062】
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、平均粒子間距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されることが好ましい。より好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm、特に好ましくは1〜20nmの範囲内である。このように金属系粒子を密に配置することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記(I)〜(III)の効果が発現されやすくなる。プラズモンピークの極大波長は、金属系粒子の平均粒子間距離に依存するので、平均粒子間距離の調整により、最も長波長側にあるプラズモンピークのブルーシフトの程度や当該プラズモンピークの極大波長を制御することが可能である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、金属系粒子集合体中の各粒子のプラズモンおよび金属系粒子集合体として生起するプラズモンの共鳴性能が損なわれる(たとえばプラズモンピークの先鋭性が損なわれる点で不利となる。
【0063】
上記〔ii〕の特徴(短波長側へのプラズモンピークのシフト)を発現させる上記以外の他の手段としては、たとえば、金属系粒子間に、空気とは誘電率の異なる誘電体物質(後述するように非導電性物質であることが好ましい)を介在させる方法を挙げることができる。
【0064】
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔ii〕の特徴および上記(I)〜(III)の効果の発現が可能となる。
【0065】
光電変換素子の一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
【0066】
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
【0067】
本実施形態の金属系粒子集合体層においても、第1の実施形態と同様、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。
【0068】
(第3の実施形態)
本実施形態の光電変換素子は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、上記参照金属系粒子集合体(Y)よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い(上記〔iii〕の特徴を有する)金属系粒子集合体層を備えるものである。このような特徴を有する金属系粒子集合体層を備える本実施形態の光電変換素子は、次の点において極めて有利である。
【0069】
(A)本実施形態に係る金属系粒子集合体層では、プラズモンピークである可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が、金属系粒子が何らの粒子間相互作用もなく単に集合した集合体とみなすことができる上記参照金属系粒子集合体(Y)よりも大きく、したがって、より強いプラズモン共鳴を示すため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より強い電場増強効果を得ることができ、これにより変換効率を飛躍的に高めることができる。このような強いプラズモン共鳴は、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現したものと考えられる。
【0070】
上記のように、プラズモンピークの極大波長における吸光度値の大小から、そのプラズモン材料のプラズモン共鳴の強さを略式に評価することが可能であるが、本実施形態に係る金属系粒子集合体層は、これをガラス基板上に積層した状態で吸光スペクトルを測定したとき、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が1以上、さらには1.5以上、なおさらには2程度となり得る。
【0071】
上述のように、ある金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(Y)との間で最も長波長側にあるピークの極大波長や該極大波長における吸光度を比較する場合には、両者について、顕微鏡(Nikon社製「OPTIPHOT−88」と分光光度計(大塚電子社製「MCPD−3000」)とを用い、測定視野を絞って吸光スペクトル測定を行なう。
【0072】
参照金属系粒子集合体(Y)は、吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層が有する平均粒径、平均高さと同じ粒径、高さおよび同じ材質を有する金属系粒子Bを、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した金属系粒子集合体であって、ガラス基板に積層した状態で、上記の顕微鏡を利用した吸光スペクトル測定を行ない得る程度の大きさを有するものである。
【0073】
吸光スペクトル測定の対象となる金属系粒子集合体層と参照金属系粒子集合体(Y)との間で、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較する際には、以下に述べるように、同じ金属系粒子数になるように換算した参照金属系粒子集合体(Y)の吸光スペクトルを求め、当該吸光スペクトルにおける最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較の対象とする。具体的には、金属系粒子集合体と参照金属系粒子集合体(Y)の吸光スペクトルをそれぞれ求め、それぞれの吸光スペクトルにおける最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を、それぞれの被覆率(金属系粒子による基板表面の被覆率)で除した値を算出し、これらを比較する。
【0074】
また、本実施形態の光電変換素子は、その金属系粒子集合体層が所定形状の金属系粒子の特定数以上を二次元的に離間して配置した構造を有していることに起因して、(B)金属系粒子集合体層によるプラズモン増強電場の有効な作用範囲(プラズモンによる電場増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長され得るため、従来のプラズモン材料を用いる場合と比較して、より高い光励起効率増強効果を得ることができ、これにより変換効率を飛躍的に高めることが可能となる(上記第1の実施形態の効果(2)と同様)、および(C)金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長が特異なシフトを示し得るため、上記した波長領域の太陽光による光励起効率の向上およびこれに伴う変換効率の向上が可能になる(上記第1の実施形態の効果(3)と同様)、などの効果を奏し得る。
【0075】
本実施形態の金属系粒子集合体層(ガラス基板上に積層した状態)は、金属系粒子の形状や平均粒子間距離に応じて、吸光光度法によって測定される可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるプラズモンピークが、たとえば350〜550nmの波長領域に極大波長を示し得る。また、本実施形態の金属系粒子集合体層は、金属系粒子が十分に長い粒子間距離(たとえば1μm)を置いて配置される場合と比較して、典型的には30〜500nm程度(たとえば30〜250nm)のブルーシフトを生じ得る。
【0076】
次に、本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成について説明する。本実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成は、第1の実施形態に係る金属系粒子集合体層の具体的構成(金属系粒子の材質、平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離、金属系粒子の数、金属系粒子集合体層の非導電性など)と基本的には同様であることができる。平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離などの用語の定義も第1の実施形態と同じである。
【0077】
金属系粒子の平均粒径は10〜1600nmの範囲内であり、上記〔iii〕の特徴(最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が参照金属系粒子集合体(Y)のそれよりも高いという特徴)、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均粒径は、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。
【0078】
金属系粒子の平均高さは5〜500nmの範囲内であり、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは10〜500nmの範囲内であり、より好ましくは10〜250nmの範囲内である。金属系粒子の平均高さは、金属系粒子を構成する金属系材料の種類などに応じて適切に選択されることが好ましい。
【0079】
金属系粒子のアスペクト比は0.5〜8の範囲内であり、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に得るために、好ましくは1〜5の範囲内である。より強い電場増強効果を得るために、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用を十分確保できる範囲でアスペクト比は小さい方が好ましい。ただし、アスペクト比を小さくとり、かつ平均粒径を小さくしすぎると、粒子間を極めて近接させなければ金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が生じない場合がある。金属系粒子は真球状であることが好ましい。
【0080】
金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面は滑らかな曲面からなることが好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。
【0081】
上記〔iii〕の特徴が効果的に得られることから、金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、それらの形状(平均粒径、平均高さ、アスペクト比)ができるだけ均一であることが好ましい。すなわち、金属系粒子の形状を均一にすることにより、プラズモンピークが先鋭化し、これに伴い、最も長波長側にあるプラズモンピークの吸光度が参照金属系粒子集合体(Y)のそれよりも高くなりやすくなる。金属系粒子間の形状のバラツキの低減は、金属系粒子集合体層面内におけるプラズモン共鳴の強さの均一性の観点からも有利である。ただし上述のように、粒径に多少バラツキが生じたとしても、比較的大型な粒子間の距離が大きくなることは好ましくなく、その間をより小型の粒子が埋めることで比較的大型な粒子間の相互作用を発現しやすくすることが好ましい。
【0082】
本実施形態に係る金属系粒子集合体層において金属系粒子は、平均粒子間距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されることが好ましい。より好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm、特に好ましくは1〜20nmの範囲内である。このように金属系粒子を密に配置することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に発現させることができる。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、金属系粒子集合体中の各粒子のプラズモンおよび金属系粒子集合体として生起するプラズモンの共鳴性能が損なわれる(たとえばプラズモンピークの先鋭性が損なわれる点で不利となる。
【0083】
金属系粒子集合体層に含まれる金属系粒子の数は30個以上であり、好ましくは50個以上である。金属系粒子を30個以上含む集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用が効果的に生じ、上記〔iii〕の特徴、さらには上記(A)〜(C)の効果を効果的に発現させることができる。
【0084】
光電変換素子の一般的な素子面積に照らせば、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、たとえば300個以上、さらには17500個以上となり得る。
【0085】
金属系粒子集合体層における金属系粒子の数密度は、7個/μm2以上であることが好ましく、15個/μm2以上であることがより好ましい。
【0086】
本実施形態の金属系粒子集合体層においても、第1の実施形態と同様、金属系粒子間は互いに絶縁されている、換言すれば、隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性(金属系粒子集合体層として非導電性)であることが好ましい。
【0087】
以上のように、上記〔iii〕の特徴を有する本実施形態の金属系粒子集合体層は、これを構成する金属系粒子の金属種、形状、金属系粒子間の平均距離などの制御により得ることができる。
【0088】
本発明の光電変換素子が備える金属系粒子集合体層は、上記〔i〕〜〔iii〕のいずれか1つの特徴を有することが好ましく、〔i〕〜〔iii〕のいずれか2つ以上の特徴を有することがより好ましく、〔i〕〜〔iii〕のすべての特徴を有することがさらに好ましい。
【0089】
<金属系粒子集合体層の製造方法>
上記第1〜第3の実施形態に係る金属系粒子集合体層を含む本発明に係る金属系粒子集合体層は、次のような方法によって作製することができる。
【0090】
(1)基板上において微小な種(seed)から金属系粒子を成長させていくボトムアップ法、
(2)所定の形状を有する金属系粒子を所定の厚みを有する両親媒性材料からなる保護層で被覆した後、LB(Langmuir Blodgett)膜法により、これを基板上にフィルム化する方法、
(3)その他、蒸着またはスパッタリングにより作製した薄膜を後処理する方法、レジスト加工、エッチング加工、金属系粒子が分散された分散液を用いたキャスト法など。
【0091】
上記方法(1)においては、所定温度に調整された基板上に、極めて低速で金属系粒子を成長させる工程(以下、粒子成長工程ともいう。)を含むことが肝要である。かかる粒子成長工程を含む製造方法によれば、30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されており、該金属系粒子が、所定範囲内の形状(平均粒径10〜1600nm、平均高さ5〜500nmおよびアスペクト比0.5〜8)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離(1〜150nm)を有する金属系粒子集合体の層(薄膜)を制御良く得ることができる。
【0092】
粒子成長工程において、基板上に金属系粒子を成長させる速度は、平均高さ成長速度で1nm/分未満であることが好ましく、0.5nm/分以下であることがより好ましい。ここでいう平均高さ成長速度とは、平均堆積速度または金属系粒子の平均厚み成長速度とも呼ぶことができ、下記式:
金属系粒子の平均高さ/金属系粒子成長時間(金属系材料の供給時間)
で定義される。「金属系粒子の平均高さ」の定義は上述のとおりである。
【0093】
粒子成長工程における基板の温度は、好ましくは100〜450℃の範囲内、より好ましくは200〜450℃、さらに好ましくは200〜350℃、特に好ましくは250〜350℃である。
【0094】
100〜450℃の範囲内に温度調整された基板上に、1nm/分未満の平均高さ成長速度で金属系粒子を成長させる粒子成長工程を含む製造方法では、粒子成長初期において、供給された金属系材料からなる島状構造物が複数形成され、この島状構造物が、さらなる金属系材料の供給を受けて大きく成長しながら、周囲の島状構造物と合体していき、その結果、個々の金属系粒子が互いに完全に分離されていながらも、粒子が密に配置された金属系粒子集合体層が形成される。したがって、所定範囲内の形状(平均粒径、平均高さおよびアスペクト比)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離を有するように制御された金属系粒子からなる金属系粒子集合体層を製造することが可能となる。
【0095】
また、平均高さ成長速度、基板温度および/または金属系粒子の成長時間(金属系材料の供給時間)の調整によって、基板上に成長される金属系粒子の平均粒径、平均高さ、アスペクト比および/または平均粒子間距離を所定の範囲内で制御することも可能である。
【0096】
さらに、上記粒子成長工程を含む製造方法によれば、粒子成長工程における基板温度および平均高さ成長速度以外の諸条件を比較的自由に選択できることから、所望のサイズの基板上に所望のサイズの金属系粒子集合体層を効率的に形成できるという利点もある。
【0097】
平均高さ成長速度が1nm/分以上である場合や、基板温度が100℃未満または450℃を超える場合には、島状構造物が大きく成長する前に周囲の島状構造物と連続体を形成し、互いに完全に分離された金属系粒子からなる金属系集合体を得ることができないか、または、所望の形状を有する金属系粒子からなる金属系集合体を得ることができない(たとえば平均高さや平均粒子間距離、アスペクト比などが所望の範囲から外れてしまう)。
【0098】
金属系粒子を成長させる際の圧力(装置チャンバ内の圧力)は、粒子成長可能な圧力である限り特に制限されないが、通常、大気圧未満である。圧力の下限は特に制限されないが、平均高さ成長速度を上記範囲内に調整し易いことから、好ましくは6Pa以上、より好ましくは10Pa以上、さらに好ましくは30Pa以上である。
【0099】
基板上に金属系粒子を成長させる具体的方法は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長できる方法である限り特に制限されないが、スパッタリング法、真空蒸着等の蒸着法を挙げることができる。スパッタリング法のなかでも、比較的簡便に金属系粒子集合体層を成長させることができ、かつ、1nm/分未満の平均高さ成長速度を維持しやすいことから、直流(DC)スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタンリング方式に特に制限はなく、イオンガンやプラズマ放電で発生したアルゴンイオンを電界で加速してターゲットに照射する直流アルゴンイオンスパッタリング法などを用いることができる。スパッタリング法における電流値、電圧値、基板・ターゲット間距離等の他の諸条件は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長がなされるよう適宜調整される。
【0100】
なお、所定範囲内の形状(平均粒径、平均高さおよびアスペクト比)、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離を有する金属系粒子からなる金属系粒子集合体層を制御良く得るためには、粒子成長工程において平均高さ成長速度を1nm/分未満とすることに加えて、平均粒径成長速度を5nm未満とすることが好ましいが、平均高さ成長速度が1nm/分未満である場合、通常、平均粒径成長速度は5nm未満となる。平均粒径成長速度は、より好ましくは1nm/分以下である。平均粒径成長速度とは、下記式:
金属系粒子の平均粒径/金属系粒子成長時間(金属系材料の供給時間)
で定義される。「金属系粒子の平均粒径」の定義は上述のとおりである。
【0101】
粒子成長工程における金属系粒子の成長時間(金属系材料の供給時間)は、少なくとも、基板上に担持された金属系粒子が所定範囲内の形状、さらに好ましくは所定範囲内の平均粒子間距離に達する時間であり、かつ、当該所定範囲内の形状、平均粒子間距離から逸脱し始める時間未満である。たとえば、上記所定範囲内の平均高さ成長速度および基板温度で粒子成長を行なっても、成長時間が極端に長すぎる場合には、金属系材料の担持量が多くなり過ぎて、互いに離間して配置された金属系粒子の集合体とはならずに連続膜となったり、金属系粒子の平均粒径や平均高さが大きくなり過ぎたりする。
【0102】
したがって、金属系粒子の成長時間を適切な時間に設定する(粒子成長工程を適切な時間で停止する)必要があるが、このような時間の設定は、たとえば、あらかじめ予備実験を行なうことにより得られる、平均高さ成長速度および基板温度と、得られる金属系粒子集合体における金属系粒子の形状および平均粒子間距離との関係に基づいて行なうことができる。あるいは、基板上に成長された金属系材料からなる薄膜が導電性を示すまでの時間(すなわち、薄膜が金属系粒子集合体膜ではなく、連続膜となってしまう時間)をあらかじめ予備実験により求めておき、この時間に達するまでに粒子成長工程を停止するようにしてもよい。
【0103】
金属系粒子を成長させる基板表面は、できるだけ平滑であることが好ましく、とりわけ、原子レベルで平滑であることがより好ましい。基板表面が平滑であるほど、基板から受け取った熱エネルギーにより、成長中の金属系粒子が別の周囲の隣接金属系粒子と合体成長しやすくなるため、より大きなサイズの金属系粒子からなる膜が得られやすい傾向にある。
【0104】
金属系粒子を成長させる基板は、光電変換素子の基板としてそのまま用いることが可能である。すなわち、上記した方法で作製された、金属系粒子集合体層が積層、担持された基板(金属系粒子集合体層積層基板)を光電変換素子の構成部材として用いることができる。
【0105】
<光電変換素子の構成>
本発明の光電変換素子は、活性層(光吸収層)と、上述の金属系粒子集合体層とを少なくとも備えるものである。本発明の光電変換素子によれば、上述の金属系粒子集合体層を備えることによって光励起効率の向上を図ることができ、もって高い変換効率を示すことができる。本発明の光電変換素子は、上述の金属系粒子集合体層を素子内に含むこと以外は、従来公知の光電変換素子と同様の構成を採ることができる。
【0106】
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す断面模式図であり、光電変換素子の一例としての有機薄膜太陽電池の構造例を示したものである。図1に示される有機薄膜太陽電池は、第1電極層40および第2電極層60の一対の電極層;第1電極層40と第2電極層60との間に配置される、有機物からなる活性層(光吸収層)50;ならびに、30個以上の金属系粒子20を互いに離間して二次元的に配置してなる、有機薄膜太陽電池内に配置される粒子集合体からなる層(膜)である金属系粒子集合体層を含む。図1に示されるように、有機薄膜太陽電池(他の光電変換素子についても同様)は、通常の光電変換素子と同様に、上記のような構成層を基板10上に積層したものであることができる。
【0107】
金属系粒子集合体層は、これを基板10における活性層50側表面に積層した図1の例に限定されず、光電変換素子内のいずれの位置に配置してもよく、たとえば、第1電極層40における活性層50側表面や、第2電極層60における活性層50側表面、第2電極層60における外側表面上などに配置することもできる。上述のとおり本発明においては、金属系粒子集合体層によるプラズモン増強電場の有効な作用範囲を著しく伸長できるため、活性層50から離れた位置に金属系粒子集合体層を配置しても、良好な電場増強効果およびこれに伴う変換効率向上効果を得ることが可能である。
【0108】
図1に示される有機薄膜太陽電池においては、金属系粒子集合体層は基板10に直接積層(担持)されており、このような金属系粒子集合体層と基板10との積層体として、上述の方法によって作製できる金属系粒子集合体層積層基板を好ましく用いることができる。
【0109】
基板10は、透光性(好ましくは光学的透明性)を有する限り、太陽電池等の光電変換素子の基板に従来用いられている材料などを含む、いずれの材料で構成されてもよいが、特に金属系粒子集合体層が基板10に直接積層される場合には、金属系粒子集合体層の非導電性を確保する観点から、非導電性基板を用いることが好ましい。非導電性基板としては、ガラス、その他の各種無機絶縁材料(SiO2、ZrO2、マイカ等)、各種プラスチック材料を用いることができる。
【0110】
図1に示されるように、本発明の有機薄膜太陽電池(他の光電変換素子についても同様)は、金属系粒子集合体層を構成するそれぞれの金属系粒子20の表面を覆う絶縁層30をさらに含んでもよい。このような絶縁層30により、上述した金属系粒子集合体層の非導電性(金属系粒子間の非導電性)を担保できるとともに、金属系粒子集合体層とこれに隣り合う他の層との間の電気的絶縁を図ることができる。光電変換素子では、これを構成する各層に電流が流れるが、金属系粒子集合体層に電流が流れてしまうと、プラズモン共鳴による電場増強効果が十分に得られないおそれがある。金属系粒子集合体層をキャップする絶縁層30を設けることにより、金属系粒子集合体層とこれに隣り合う他の層との間の電気的絶縁を図ることができるため、金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子に電流が注入されることを防止することができる。
【0111】
ただし、励起を受けたプラズモン(電子振動)を電子遷移へと変換するプロセスが機能する構成の光電変換素子に金属系粒子集合体層を適用する場合、絶縁層はその電子遷移を阻害してしまうため、絶縁層により金属系粒子を電気的に絶縁することは好ましくない。
【0112】
絶縁層30を構成する材料としては、良好な絶縁性を有するものであれば特に制限されず、たとえば、スピンオングラス(SOG;たとえば有機シロキサン材料を含有するもの)のほか、SiO2やSi3N4などを用いることができる。絶縁層30の厚みは、所望の絶縁性が確保される限り特に制限はないが、後述するように活性層50と金属系粒子集合体層との距離は近いほど好ましいことから、所望の絶縁性が確保される範囲で薄いほどよい。
【0113】
図1に示される有機薄膜太陽電池において活性層50、第1電極層40および第2電極層60は、当該分野において従来公知の材料で構成することができ、またそれらの厚みも光電変換素子が通常有する厚みであってよい。活性層50は、たとえばバルクヘテロジャンクション型の活性層であることができる。かかる活性層としては、p型導電性高分子(たとえばP3HTなどのポリチオフェンなど)と、n型半導体として機能するフラーレン類(たとえばPCBMなど)との混合膜を挙げることができる。第1電極層40は、たとえば酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等からなる透明電極であることができ、第2電極層60は、たとえばAl、Ag等からなる金属電極であることができる。本発明の光電変換素子は、たとえば有機薄膜太陽電池であれば電子輸送層、ホール輸送層など、従来の光電変換素子が有し得る他の層を、構成に応じてさらに含むことができる。
【0114】
本発明の光電変換素子は、上記有機薄膜太陽電池に限定されず、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、色素増感型太陽電池、量子ドット型太陽電池などであることができる。なかでも、製造コスト的に有利である一方、現状において変換効率が低く、変換効率向上が強く望まれている有機薄膜太陽電池であることが好ましい。
【0115】
光電変換素子において活性層は、たとえば10nm以上、さらには20nm以上、なおさらにはそれ以上の厚み(たとえば100nm程度)を有し得るが、本発明によれば、強いプラズモン電場増強を示すとともに、プラズモン増強電場の有効な作用範囲(プラズモンによる電場増強効果の及ぶ範囲)が著しく伸長された金属系粒子集合体層を備えるため、活性層の厚みが大きい場合であっても活性層全体にわたって光励起効率を向上させることが可能になり、これにより変換効率を大きく向上させることができる。
【0116】
本発明の光電変換素子において、活性層と金属系粒子集合体層との間の距離(金属系粒子集合体層の活性層側表面から活性層までの距離)は特に制限されず、上述のように活性層から、たとえば10nm、さらには数十nm(たとえば20nm、30nmまたは40nm超)、なおさらには数百nm離れた位置に金属系粒子集合体層を配置してもプラズモン増強電場による電場増強効果およびこれに伴う光励起効率向上効果、変換効率向上効果を得ることができる。
【0117】
本発明の好ましい実施形態においては、光電変換素子内に複数の金属系粒子集合体層が設けられ、とりわけ、複数(2またはそれ以上)の金属系粒子集合体層が隣接して積層される(複数の金属系粒子集合体層はスペーサ層を介して隣接して積層されることが好ましい)。複数の金属系粒子集合体層を積層して配置すると、単層にわたって発現するプラズモン間の相互作用に加えて、金属系粒子集合体層同士で各層に励起されるプラズモン間における相互作用が生じるため、電場増強効果および電場増強の及ぶ範囲の伸長効果をより高めることができる。
【0118】
なお、プラズモンによる電場増強効果は、その性質上、活性層と金属系粒子集合体層との間の距離が大きくなるほど小さくなる傾向にあることから、当該距離は小さいほど好ましい。活性層と金属系粒子集合体層との間の距離は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは20nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。
【0119】
金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長は、利用する励起光の波長、および活性層の吸収波長と一致するかまたは近いことが好ましい。これにより、プラズモン共鳴による電場増強効果をより効果的に高めることができる。金属系粒子集合体層のプラズモンピークの極大波長は、これを構成する金属系粒子の金属種、平均粒径、平均高さ、アスペクト比および/または平均粒子間距離の調整により制御可能である。
【実施例】
【0120】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0121】
〔金属系粒子集合体層積層基板の作製〕
<製造例1>
直流マグネトロンスパッタリング装置を用いて、下記の条件で、ソーダガラス基板上に、銀粒子を極めてゆっくりと成長させ、基板表面の全面に金属系粒子集合体の薄膜を形成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
【0122】
使用ガス:アルゴン、
チャンバ内圧力(スパッタガス圧):10Pa、
基板・ターゲット間距離:100mm、
スパッタ電力:4W、
平均粒径成長速度(平均粒径/スパッタ時間):0.9nm/分、
平均高さ成長速度(=平均堆積速度=平均高さ/スパッタ時間):0.25nm/分、
基板温度:300℃、
基板サイズおよび形状:一辺が5cmの正方形。
【0123】
図2は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図2(a)は10000倍スケールの拡大像であり、図2(b)は50000倍スケールの拡大像である。また図3は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。AFM像撮影にはキーエンス社製「VN−8010」を用いた(以下同様)。図3に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
【0124】
図2に示されるSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は335nm、平均粒子間距離は16.7nmと求められた。また図3に示されるAFM画像より、平均高さは96.2nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は3.48と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層は、約6.25×1010個(約25個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
【0125】
また、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層の表面にテスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」〕を接続して導電性を確認したところ、導電性を有しないことが確認された。
【0126】
<製造例2>
銀ナノ粒子水分散物(三菱製紙社製、銀ナノ粒子濃度:25重量%)を純水で、銀ナノ粒子濃度が2重量%となるように希釈した。次いで、この銀ナノ粒子水分散物に対して1体積%の界面活性剤を添加して良く攪拌した後、得られた銀ナノ粒子水分散物に対して80体積%のアセトンを添加して常温で十分撹拌し、銀ナノ粒子塗工液を調製した。
【0127】
次に、表面をアセトン拭きした1mm厚のソーダガラス基板上に上記銀ナノ粒子塗工液を1000rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で40秒間焼成した。次いで、形成された銀ナノ粒子層上に再度、上記銀ナノ粒子塗工液を1000rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で40秒間焼成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
【0128】
図4は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図4(a)は10000倍スケールの拡大像であり、図4(b)は50000倍スケールの拡大像である。また図5は、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。図5に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
【0129】
図4に示されるSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は293nm、平均粒子間距離は107.8nmと求められた。また図5に示されるAFM画像より、平均高さは93.0nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は3.15と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本製造例の金属系粒子集合体層は、約3.13×1010個(約12.5個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
【0130】
また、得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層の表面にテスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」〕を接続して導電性を確認したところ、導電性を有しないことが確認された。
【0131】
<比較製造例1>
銀ナノ粒子水分散物(三菱製紙社製、銀ナノ粒子濃度:25重量%)を純水で、銀ナノ粒子濃度が6重量%となるように希釈した。次いで、この銀ナノ粒子水分散物に対して1体積%の界面活性剤を添加して良く攪拌した後、得られた銀ナノ粒子水分散物に対して80体積%のアセトンを添加して常温で十分振り混ぜ、銀ナノ粒子塗工液を調製した。
【0132】
次に、表面をアセトン拭きした1mm厚のソーダガラス基板上に上記銀ナノ粒子塗工液を1500rpmでスピンコートした後、そのまま大気中で1分間放置し、その後550℃の電気炉内で5分間焼成して、金属系粒子集合体層積層基板を得た。
【0133】
図6は、本比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像であり、10000倍スケールの拡大像である。また図7は、本比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板における金属系粒子集合体層を示すAFM画像である。図7に示される画像のサイズは5μm×5μmである。
【0134】
図6に示されるSEM画像より、本比較製造例1の金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は278nm、平均粒子間距離は195.5nmと求められた。また図7に示されるAFM画像より、平均高さは99.5nmと求められた。これらより銀粒子のアスペクト比(平均粒径/平均高さ)は2.79と算出され、また、取得した画像からも銀粒子は扁平形状を有していることがわかる。さらにSEM画像より、本比較製造例1の金属系粒子集合体層は、約2.18×1010個(約8.72個/μm2)の銀粒子を有することがわかる。
【0135】
〔金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトル測定〕
図8は、製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光光度法により測定された吸光スペクトルである。非特許文献(K. Lance Kelly, et al., "The Optical Properties of Metal Nanoparticles: The Influence of Size, Shape, and Dielectric Environment", The Journal of Physical Chemistry B, 2003, 107, 668)に示されているように、製造例1のような扁平形状の銀粒子は、平均粒径が200nmのとき約550nm付近に、平均粒径が300nmのときは650nm付近にプラズモンピークを持つことが一般的である(いずれも銀粒子単独の場合である)。
【0136】
一方、製造例1の金属系粒子集合体層積層基板は、これを構成する銀粒子の平均粒径が約300nm(335nm)であるにもかかわらず、図8に示されるように、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は約450nm付近と、短波長側にシフトしていることがわかる。また、可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長における吸光度が約1.9と高く、極めて強いプラズモン共鳴を示すことがわかる。
【0137】
図9に、製造例2で得られた金属系粒子集合体層積層基板の吸光光度法により測定された吸光スペクトルを示した。可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は488nmであった。
【0138】
なお、図8および図9に示される吸光スペクトルは、金属系粒子集合体層積層基板の裏面(金属系粒子集合体層とは反対側)側であって、基板面に垂直な方向から紫外〜可視光領域の入射光を照射し、金属系粒子集合体層側に透過した全方向における透過光の強度Iと、前記金属系粒子集合体膜積層基板の基板と同じ厚み、材質の基板であって、金属系粒子集合体膜が積層されていない基板の面に垂直な方向から先と同じ入射光を照射し、入射面の反対側から透過した全方向における透過光の強度I0を、それぞれ積分球分光光度計を用いて測定することによって得られたものである。縦軸の吸光度は、下記式:
吸光度=−log10(I/I0)
で表される。
【0139】
〔参照金属系粒子集合体の作製および吸光スペクトル測定〕
図10に示される方法に従って、参照金属系粒子集合体が積層された基板を作製した。まず、縦5cm、横5cmのソーダガラス基板100のおよそ全面にレジスト(日本ゼオン株式会社製 ZEP520A)をスピンコートした(図10(a))。レジスト400の厚みは約120nmとした。次に、電子ビームリソグラフィーによってレジスト400に円形開口401を形成した(図10(b))。円形開口401の直径は約350nmとした。また、隣り合う円形開口401の中心間距離は約1500nmとした。
【0140】
ついで、円形開口401を有するレジスト400に、真空蒸着法により銀膜201を蒸着した(図10(c))。銀膜201の膜厚は約100nmとした。最後に、銀膜201を有する基板をNMP(東京化成工業製 N−メチル−2−ピロリドン)に浸漬し、超音波装置内で1分間常温静置することによりレジスト400およびレジスト400上に成膜された銀膜201を剥離して、円形開口401内の銀膜201(銀粒子)のみがソーダガラス基板100上に残存、積層された参照金属系粒子集合体層積層基板を得た(図10(d))。
【0141】
図11は、得られた参照金属系粒子集合体層積層基板における参照金属系粒子集合体層を直上から見たときのSEM画像である。図11(a)は20000倍スケールの拡大像であり、図11(b)は50000倍スケールの拡大像である。図11に示されるSEM画像より、参照金属系粒子集合体層を構成する銀粒子の上記定義に基づく平均粒径は333nm、平均粒子間距離は1264nmと求められた。また別途取得したAFM画像より、平均高さは105.9nmと求められた。またSEM画像より、参照金属系粒子集合体は、約62500個の銀粒子を有することがわかった。
【0142】
上述した顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた測定法により、製造例1の金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトル測定を行なった。具体的には、図12を参照して、金属系粒子集合体層積層基板500の基板501側(金属系粒子集合体層502とは反対側)であって、基板面に垂直な方向から可視光領域の入射光を照射した。そして、金属系粒子集合体層502側に透過し、かつ100倍の対物レンズ600に到達した透過光を対物レンズ600で集光し、この集光光を分光光度計700によって検出して吸光スペクトルを得た。
【0143】
分光光度計700には大塚電子社製の紫外可視分光光度計「MCPD−3000」を、対物レンズ600にはNikon社製の「BD Plan 100/0.80 ELWD」を用いた。結果を図13に示す。可視光領域において最も長波長側にあるプラズモンピークの極大波長は、図8の吸光スペクトルと同様、約450nmであった。一方、同じく顕微鏡の対物レンズを用いた測定法により参照金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトル測定を行なったところ、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長は、654nmであった。製造例1の金属系粒子集合体層積層基板は、参照金属系粒子集合体層積層基板と比べて、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長が約200nmブルーシフトしている。
【0144】
製造例1の金属系粒子集合体層積層基板は、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が1.744であり(図13)、参照金属系粒子集合体層積層基板は0.033であった。製造例1の金属系粒子集合体層積層基板と参照金属系粒子集合体層積層基板との間で最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度を比較するにあたって同じ金属系粒子数での比較となるようにするために、吸光スペクトルから得られる吸光度を、金属系粒子数に相当するパラメータである、金属系粒子による基板表面の被覆率で除して、吸光度/被覆率を算出した。製造例1の金属系粒子集合体層積層基板の吸光度/被覆率は2.04であり(被覆率85.3%)、参照金属系粒子集合体層積層基板の吸光度/被覆率は0.84であった(被覆率3.9%)。
【0145】
図14および図15は、顕微鏡の対物レンズ(100倍)を用いた測定法による製造例2、比較製造例1の金属系粒子集合体層積層基板の吸光スペクトルである。比較製造例1で得られた金属系粒子集合体層積層基板は、可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長が611nmであった。この極大波長は、比較製造例1の金属系粒子集合体膜積層基板に対応する参照金属系粒子集合体膜積層基板の極大波長とほぼ同じであり、したがって比較製造例1の金属系粒子集合体膜はほとんどブルーシフトを示さない。図15の吸光スペクトルから得られる可視光領域において最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度は0.444であり、金属系粒子による基板表面の被覆率が53.2%であることから、吸光度/被覆率は0.83と算出される。この吸光度/被覆率は、参照金属系粒子集合体層積層基板より小さい。
【0146】
製造例2の金属系粒子集合体は、比較製造例1の金属系粒子集合体に比べ、金属系粒子の平均粒径が大きいため、製造例2の金属系粒子集合体のプラズモンピークは、比較製造例1に比べて、より長波長側に現れることがミー散乱理論から合理的に推測される。しかし実際には、製造例2の金属系粒子集合体のプラズモンピークは、比較製造例1に比べて、100nm以上も短波長側に現れた。このことから、製造例2の金属系粒子集合体は、プラズモンピークの極大波長がその参照金属系粒子集合体に比べて、30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしていることが合理的に示唆される。
【0147】
〔光電変換素子の作製および電流特性の評価〕
<実施例1>
製造例1と類似の条件で銀粒子を成長させることにより、平均高さが79.9nmであること以外は製造例1に記載のものと同じ金属系粒子集合体層を0.5mm厚のソーダガラス基板上に形成した。その後直ちに、スピンオングラス(SOG)溶液を金属系粒子集合体層上にスピンコートして、平均厚み80nmの絶縁層を積層した。SOG溶液には、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD T−7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。
【0148】
次に、イオンスパッタリング法により、アノード極としてのIZO層(厚み22nm)を絶縁層上に積層した後、正孔輸送層形成用溶液をアノード極上にスピンコートして、平均厚み20nmの正孔輸送層を積層した。正孔輸送層形成用溶液には、PLEXTRONICS社製、商品名「Plexcore AQ 1200」を、エタノールを用いて所定濃度に希釈したものを用いた。絶縁層、アノード極および正孔輸送層の合計平均厚み(すなわち、金属系粒子集合体膜表面から発光層までの平均距離)は122nmである。
【0149】
ついで、光吸収層用溶液をスピンコートした後、ホットプレートで150℃、15分間熱処理して、平均厚み50nmの光吸収層を形成した。光吸収層用溶液は、P3HT(シグマアルドリッチ社製)30mgと、PCBM(シグマアルドリッチ社製)24mgをクロロベンゼン3mLに溶解して調製した。その後、真空蒸着法により、バッファ層としてのNaF層(2nm厚)、カソード極としてのMg層(2nm厚)およびAg層(10nm厚)をこの順で光吸収層上に積層した。得られた素子を表面側から封止剤(ナガセケムテックス社製 紫外線硬化性樹脂「XNR5516ZLV」)を用いて封止し、光電変換素子を得た。
【0150】
<比較例1>
金属系粒子集合体層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
【0151】
実施例1の光電変換素子に、電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製「R6240A」)を電極間の印加電圧を0Vとした状態で接続した。このときに測定された光照射前の電流値をバックグラウンド電流I0とした。次に、素子のカソード極面に対して垂直な方向の光を、素子のカソード極側からハロゲンランプ(株式会社モリテックス製「MHAB-150W」)を用いて照射し、このときに流れた電流値I1を測定した。電流値I1からバックグラウンド電流I0を差し引いて、実施例1の光電変換素子の電流値I2を求めた。実施例1の光電変換素子と同様にして、比較例1の光電変換素子についても電流値I2を求めた。その結果、実施例1の光電変換素子は、比較例1の光電変換素子と比較して約17.4倍の電流値I2を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0152】
10 基板、20 金属系粒子、30 絶縁層、40 第1電極層、50 活性層(光吸収層)、60 第2電極層、100 ソーダガラス基板、201 銀膜、400 レジスト、401 円形開口、500 金属系粒子集合体層積層基板、501 基板、502 金属系粒子集合体層、600 対物レンズ、700 分光光度計。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層と、
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
を備え、
前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている光電変換素子。
【請求項2】
活性層と、
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
を備え、
前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている光電変換素子。
【請求項3】
活性層と、
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
を備え、
前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い光電変換素子。
【請求項4】
前記金属系粒子集合体層を複数備える請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性である請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークが350〜550nmの範囲内に極大波長を有する請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が1以上である請求項1〜6のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記活性層の厚みが10nm以上である請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項9】
有機薄膜太陽電池である請求項1〜8のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項10】
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にあり、かつ金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている金属系粒子集合体層を、光電変換素子内に配置することを特徴とする光電変換素子の変換効率向上方法。
【請求項11】
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にあり、かつ可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている金属系粒子集合体層を、光電変換素子内に配置することを特徴とする光電変換素子の変換効率向上方法。
【請求項12】
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にあり、かつ可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い金属系粒子集合体層を、光電変換素子内に配置することを特徴とする光電変換素子の変換効率向上方法。
【請求項1】
活性層と、
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
を備え、
前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている光電変換素子。
【請求項2】
活性層と、
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
を備え、
前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている光電変換素子。
【請求項3】
活性層と、
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にある金属系粒子集合体層と、
を備え、
前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い光電変換素子。
【請求項4】
前記金属系粒子集合体層を複数備える請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記金属系粒子集合体層を構成する金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との間に関して非導電性である請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークが350〜550nmの範囲内に極大波長を有する請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記金属系粒子集合体層は、可視光領域における吸光スペクトルにおいて、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が1以上である請求項1〜6のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記活性層の厚みが10nm以上である請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項9】
有機薄膜太陽電池である請求項1〜8のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項10】
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にあり、かつ金属系粒子は、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1〜150nmの範囲内となるように配置されている金属系粒子集合体層を、光電変換素子内に配置することを特徴とする光電変換素子の変換効率向上方法。
【請求項11】
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にあり、かつ可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体と比べて、最も長波長側にあるピークの極大波長が30〜500nmの範囲で短波長側にシフトしている金属系粒子集合体層を、光電変換素子内に配置することを特徴とする光電変換素子の変換効率向上方法。
【請求項12】
30個以上の金属系粒子が互いに離間して二次元的に配置されてなる粒子集合体からなる層であって、前記金属系粒子は、その平均粒径が10〜1600nmの範囲内、平均高さが5〜500nmの範囲内、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が0.5〜8の範囲内にあり、かつ可視光領域における吸光スペクトルにおいて、前記平均粒径と同じ粒径、前記平均高さと同じ高さおよび同じ材質からなる金属系粒子を、金属系粒子間の距離がすべて1〜2μmの範囲内となるように配置した参照金属系粒子集合体よりも、同じ金属系粒子数での比較において、最も長波長側にあるピークの極大波長における吸光度が高い金属系粒子集合体層を、光電変換素子内に配置することを特徴とする光電変換素子の変換効率向上方法。
【図1】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【公開番号】特開2013−110395(P2013−110395A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230445(P2012−230445)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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