説明

光電変換装置

【課題】複数の光電変換セルが所定の距離を隔てて複数配置され、隣接する光電変換セル同士を電気的に直列に接続した光電変換装置において、従来の光電変換装置に比して発電効率の向上を図ることができる光電変換装置を得ること。
【解決手段】絶縁性透明基板2上に、透明電極層11、光電変換を行う光電変換層、および裏面電極層13が順に積層された光電変換素子10が、隣接する光電変換素子10の光電変換層12同士の間隔をあけて複数配置される光電変換装置1において、絶縁性透明基板1における、光電変換層12の形成位置に対応する領域を第1の領域とし、隣接する第1の領域間に挟まれる領域を第2の領域とした場合に、第2の領域は、絶縁性透明基板2の第2の領域に入射する光の進路を光電変換層12の方向に変えるように形成された構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体薄膜を用いて光電変換を行う光電変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の薄膜型光電変換セルは、透明な基板上に、透過性電極と、光拡散を生じさせるのに適した微細な凹凸を含む表面テクスチャを生じさせるように微粒子を含有する樹脂からなる光拡散層と、光電変換層としての非晶質シリコン層と、反射電極と、を形成した構造を有する(たとえば、特許文献1参照)。このような構造により、光拡散層よりも上位に形成された層の表面にも微細な凹凸を含む表面テクスチャが形成され、光拡散層以上の層の相互の界面における入射光の光拡散による光閉じ込め効果が生じ、非晶質シリコン層内での光路長を長くして光電変換効率を向上させている。
【0003】
一般的に、このような構造の光電変換セルを、所定の距離を隔てて複数配置するとともに、隣接する光電変換セル同士を電気的に直列に接続することで、光電変換装置が形成される。なお、このとき隣接する光電変換セル間の非晶質シリコン層は、物理的に直接接続されずに分離された構造となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−124485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような構造の光電変換装置を用いて光電変換を行った場合の入射光の経路について説明する。光電変換装置内の光電変換セルが存在する領域に表面から入射した光は、その光電変換セルに入射して起電力発生に寄与できる。しかし、光電変換装置内の光電変換セルが存在しない領域、すなわち隣接する光電変換セルの間の領域に入射した光は、光電変換セルに入射することなくそのまま光電変換装置を通過していってしまう。つまり、従来の光電変換装置では、隣接する光電変換セル間の領域に入射される光の分だけ、発電効率が悪く、出力電圧が低くなってしまうという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、複数の光電変換セルが所定の距離を隔てて複数配置され、隣接する光電変換セル同士を電気的に直列に接続した光電変換装置において、従来の光電変換装置に比して発電効率の向上を図ることができる光電変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明にかかる光電変換装置は、透明な絶縁性の基板上に、透明な第1の電極層、光電変換を行う半導体層からなる光電変換層、および第2の電極層が順に積層された光電変換素子が、隣接する光電変換素子の光電変換層同士の間隔をあけて複数配置される光電変換装置において、前記基板における、前記光電変換層の形成位置に対応する領域を第1の領域とし、隣接する前記第1の領域間に挟まれる領域を第2の領域とした場合に、前記第2の領域は、前記基板の前記第2の領域に入射する光の進路を前記光電変換層の方向に変えるように形成された構成を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、光電変換装置内の隣接する光電変換セル間の無効領域に、光を散乱し得る構成を設けたので、隣接する光電変換セル間の無効領域に入射した光が散乱、屈曲され、光電変換装置内の無効領域以外の光電変換層形成領域へ導かれる。その結果、無効領域への入射光も光電変換層形成領域で光電変換に有効に利用され、光電変換装置の発電効率および出力特性を従来の光電変換装置に比して向上させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる光電変換装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施の形態で用いられる光電変換装置の断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる。
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明にかかる光電変換装置の実施の形態1の構成を模式的に示す断面図である。この光電変換装置1は、ガラスなどの絶縁性透明基板2上に、後述する光電変換層12への不純物の阻止層として設けられる酸化珪素(SiO2 )などからなるアンダーコート層3が形成されており、このアンダーコート層3上に、複数の素子形成領域Rが設けられ、この素子形成領域R上に光電変換素子10が形成される。なお、ここで、素子形成領域R内の後述する光電変換層12が形成される位置に対応する領域を有効領域Reといい、有効領域Re以外の領域を無効領域Riというものとする。
【0011】
絶縁性透明基板2のアンダーコート層3形成面と反対側の面(光の入射側の面)の無効領域Riには、この部分に入射させた光を、有効領域Re側へと散乱・屈曲させる入射光進路変更部が設けられている。つまり、この入射光進路変更部は、所定の間隔で絶縁性透明基板2の入射面側に形成されている。この例では、入射光進路変更部は、紙面に垂直な方向に延在した楔状の溝21であり、延在方向に垂直な断面はV字型を有している。
【0012】
この楔状の溝21は、切削加工、たとえばダイサーなどを使用した加工によって、ガラス基板上の無効領域Riに形成される。なお、ここでは、絶縁性透明基板2として入射面側には楔状の溝21を設けたガラス基板を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。図2は、絶縁性透明基板の他の例を示す断面図である。ガラス基板を切削する代わりに、この図に示されるように、金型などで楔状に溝21を形成した樹脂片2bを平板なガラス基板2aの一方の主面側に貼り付けたものを絶縁性透明基板2として用いてもよい。
【0013】
また、この楔状の溝21の深さや形成する面の角度は、隣接する2つの光電変換素子10の間の無効領域Riに入射した光が、絶縁性透明基板2上に形成する光電変換層12へと散乱・屈曲されるように、使用する絶縁性透明基板2の厚さと光電変換層12の形成位置に基づいて定められる。さらに、ここでは、入射光進路変更部が、その延在方向に垂直な断面が楔状(V字型)である溝21の場合を例に挙げて説明しているが、無効領域Riに入射した光が光電変換層12へと導かれる形状であれば、どのような凹部であってもよい。また、このように形成した凹部(溝21)に、絶縁性透明基板2とは異なる屈折率の物質を充填してもよい。
【0014】
ここで、隣接する入射光進路変更部によって区切られる1つの素子形成領域Rに形成される光電変換素子10の構造について説明する。素子形成領域R上には、素子形成領域Rの幅よりも短い幅を有し、素子形成領域Rに沿って延在するようにパターニングされた透明電極層11が設けられている。この透明電極層11上の一部と素子形成領域R上の一部とを一体的に覆うように、より具体的には絶縁性透明基板2上の入射光進路変更部形成領域(無効領域Riに対応)以外の領域に、光電変換層12が形成される。この光電変換層12は、自素子形成領域Rの透明電極層11とは接触しているが、隣接する素子形成領域Rの透明電極層11とは接触しないように、自素子形成領域Rの面積よりも小さく形成される。また、この光電変換層12は、a−SiC:H、i型a−Si:Hおよびn型μc−Si:Hが順に積層されたpin接合を形成している。なお、光電変換層12は、これに限定されるものではなく、他の種類のものを用いたり、組み合わせて用いたりすることも可能である。
【0015】
そして、この光電変換層12上の少なくとも一部と、隣接する一方の素子形成領域Rに形成された透明電極層11上の一部と、これらの間の露出した素子形成領域R(アンダーコート層3)上とを一体的に覆うように裏面電極層13が形成される。この裏面電極層13は、隣接する一方の素子形成領域R上の透明電極層11とは接触するように形成されるが、自素子形成領域R上の透明電極層11とは接触しないように形成される。この例では、裏面電極層13は、光電変換層12に接触して形成されるSnO2などの透明な導電性金属化合物からなる第1の裏面電極膜13aと、AgまたはAlなどの金属からなる第2の裏面電極膜13bと、から構成されている。
【0016】
このように、隣接する光電変換素子10の裏面電極層13と透明電極層11とが電気的に接続されることによって、複数の光電変換素子10が直列に接続される。
【0017】
以上の構造において、アンダーコート層3は必要に応じて設ければよい。たとえば、絶縁性透明基板2としてよく用いられるガラス基板にはNaなどのアルカリ金属が含まれており、このアルカリ金属が透明導電膜中に拡散して、透明導電膜の電気伝導率を低下させてしまう。そのため、このようなアルカリ金属を含むガラス基板を用いる場合には、上記したようにSiO2膜などの酸化膜をアンダーコート層3として設けた方がよい。しかし、絶縁性透明基板2にアルカリ金属を含まない無塩ガラス基板を用いる場合や、アルカリ金属の透明電極層11への拡散が問題にならない場合には、このアンダーコート層3を設けなくてもよい。また、絶縁性透明基板2側から入射した光が透明電極層11との界面で反射することを低減するために、反射防止膜をアンダーコート層3として設けられる場合もあるが、この反射防止膜としてのアンダーコート層3は必ずしも必要であるわけではないので、設けなくてもよい。
【0018】
つぎに、このような構造を有する光電変換装置1内に入射する光の光路について説明する。図3は、光電変換装置内における入射光の光路を模式的に示す図である。絶縁性透明基板2の光電変換素子10が形成されていない面側から有効領域Re内に光が入射した場合(図中のL1の場合)には、その光はそのまま光電変換層12へと到達する。到達した光は光電変換層12で吸収され電子−正孔対を形成し、形成された電子と正孔が内蔵電位によってそれぞれ異なる電極へと到達し、光起電力が発生する。
【0019】
一方、絶縁性透明基板2の光電変換素子10が形成されていない面側から無効領域Ri内に光が入射する場合(図中のL2の場合)には、その光は、楔状の溝21の領域に入射するが、このとき、絶縁性透明基板2への入射時に光は溝21の側壁で屈折し、光電変換層12に対応する領域に光路が屈曲され、光電変換層12へと到達する。そして、到達した光は光電変換層12で吸収され電子−正孔対を形成し、形成された電子と正孔が内蔵電位によってそれぞれ異なる電極へと到達し、光起電力が発生する。
【0020】
つぎに、このような構造を有する光電変換装置1の製造方法について説明する。図4−1〜図4−7は、この実施の形態による光電変換装置の製造方法の一例を示す断面図である。なお、ここでは、図1に示される構造の光電変換装置1を製造する場合を例に挙げる。
【0021】
まず、図4−1に示されるような加工されていないガラス基板などの絶縁性透明基板2に対して、ダイサーなどを用いた切削加工を行い、楔状の溝21を形成する(図4−2)。この楔状の溝21によって区切られる領域を素子形成領域Rとする。ついで、この絶縁性透明基板2の楔状の溝21を形成していない側の主面上の全面にSiO2膜からなるアンダーコート層3を形成し(図4−3)、さらにこのアンダーコート層3上の全面にSnO2,ZnO,ITO(Indium Tin Oxide)などからなる透明電極層11を形成する(図4−4)。この透明電極層11は、蒸着、スパッタ、CVD(Chemical Vapor Deposition)、イオンプレーティング、レーザアブレーションなどの薄膜形成技術によって形成される。
【0022】
その後、各素子形成領域Rにおける透明電極層11の幅が、素子形成領域Rの幅よりも小さくなるように、不要な部分(透明電極層11を形成しない領域)にレーザを照射して、その部分の透明電極層11を除去することによってパターニングを行う(図4−5)。この照射するレーザとして、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザなどを用いることができる。これにより、各素子形成領域R内には、楔状の溝21と並行して延びる透明電極層11が形成される。
【0023】
ついで、透明電極層11を形成したアンダーコート層3上に、光電変換層12を形成する(図4−6)。この光電変換層12として、p型の非晶質炭化シリコン膜(a−SiC:H)、i型の非晶質シリコン膜(a−Si:H)、n型の微結晶シリコン(μc−Si:H)を順に積層した構造のものを例示することができる。なお、これらの膜は、水素ガスを希釈ガスとして用いる蒸着、スパッタ、CVD、イオンプレーティング、レーザアブレーションなどの薄膜形成技術によって形成される。その後、この光電変換層12が、透明電極層11とこの透明電極層11が形成される素子形成領域Rのアンダーコート層3内にのみ形成されるように、レーザ照射によってパターニングを行う(図4−7)。これによって、素子形成領域Rに透明電極層11の一部を被覆し、透明電極層11と並行した光電変換層12が形成される。
【0024】
ついで、光電変換層12と透明電極層11が形成されたアンダーコート層3上に、SnO2などの透明な導電性金属化合物からなる第1の裏面電極膜13aと、AgまたはAlなどの金属からなる第2の裏面電極膜3bと、を順に積層して裏面電極層13を形成する(図4−8)。この裏面電極層13は、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、レーザアブレーションなどの薄膜形成技術によって形成することができる。その後、光電変換層12の一部を少なくとも多い、隣接する一方の素子形成領域Rの透明電極層11の露出部分を覆うように、レーザ照射によってパターニングを行うことによって、図1に示される構造の光電変換装置1が得られる。なお、上述した説明では、形成した各層に対してレーザ照射によって、パターニングを行う場合を示したが、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて、パターニングを行ってもよい。
【0025】
この実施の形態1によれば、絶縁性透明基板2上に複数の光電変換素子10を直列に接続して配置した光電変換装置1において、絶縁性透明基板2側の光電変換素子10間に対応する位置に、楔状の溝21を形成したので、この部分に入射した光は溝21の側壁で屈折し、光電変換層12が形成されている領域へと光路が屈曲される。その結果、従来では、光電変換に寄与していなかった領域の入射光を光電変換に利用することができ、光電変換装置1の実質的な発電効率が向上するという効果を有する。
【0026】
実施の形態2.
図5は、この発明にかかる光電変換装置の実施の形態2の構成を模式的に示す断面図である。この光電変換装置1は、実施の形態1では楔状の溝21からなっていた絶縁性透明基板2の入射光進路変更部が、楔状の突起構造22で構成されている。この例の突起構造22は、紙面に垂直な方向に延在している。このような突起構造22を有する絶縁性透明基板2として、切削加工で楔状突起を形成させたガラス基板を用いることができる。なお、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略している。また、このような構造の光電変換装置1の製造方法も実施の形態1で説明した工程と同様であるので、その説明を省略する。
【0027】
なお、ここでは、絶縁性透明基板2として入射面側には楔状の突起構造22を設けたガラス基板を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。図6は、絶縁性透明基板の他の例を示す断面図である。この図に示されるように、ガラス基板を切削する代わりに、金型などで突起状に形成した樹脂基片2cを平板なガラス基板2aの一方の主面側に貼り付けたものを絶縁性透明基板2として用いてもよい。また、この楔状の突起構造22の高さや形成する面の角度は、隣接する2つの光電変換素子10の間の領域に入射した光が、絶縁性透明基板2の入射面とは反対側の主面上に形成される光電変換素子10へと散乱されるように、使用する絶縁性透明基板2の厚さと光電変換素子10の形成位置に基づいて定められる。
【0028】
つぎに、このような構造を有する光電変換装置1内に入射する光の光路について説明する。図7は、光電変換装置内における入射光の光路を模式的に示す図である。絶縁性透明基板2の光電変換素子10が形成されていない面側から有効領域Re内に光が入射した場合(図中のL1の場合)には、その光はそのまま光電変換層12へと到達する。到達した光は光電変換層12で吸収され電子−正孔対を形成し、形成された電子と正孔が内蔵電位によってそれぞれ異なる電極へと到達し、光起電力が発生する。
【0029】
一方、絶縁性透明基板2の光電変換素子10が形成されていない面側から無効領域Ri内に光が入射する場合(図中のL2の場合)には、その光は、楔状の突起構造22の領域に入射するが、このとき、絶縁性透明基板2への入射時に光は突起構造22の側壁で屈折し、光電変換層12に対応する領域に光路が屈曲され、光電変換層12へと到達する。そして、到達した光は光電変換層12で吸収され電子−正孔対を形成し、形成された電子と正孔が内蔵電位によってそれぞれ異なる電極へと到達し、光起電力が発生する。なお、上述した説明では、入射光進路変更部として楔状の突起構造22を例に挙げているが、楔状ではなく、無効領域Riに入射した光を光電変換層12へと光路を屈曲・散乱させることができるものであれば、どのような突起構造であってもよい。
【0030】
この実施の形態2によっても、実施の形態1と同様に、従来では、光電変換に寄与していなかった領域の入射光を光電変換に利用することができ、光電変換装置1の実質的な発電効率が向上するという効果を有する。
【0031】
実施の形態3.
図8は、この発明にかかる光電変換装置の実施の形態3の構成を模式的に示す断面図である。この光電変換装置1は、実施の形態1では楔状の溝21からなっていた絶縁性透明基板2の入射光進路変更部が、周囲とは異なる屈折率を有する屈折率変化領域23によって構成されている。この例の屈折率変化領域23は、紙面に垂直な方向に延在して形成されている。このような屈折率変化領域23を有する絶縁性透明基板2として、イオン照射(イオン注入法)などによって局所的に屈折率を変化させたガラス基板や樹脂基板を用いることができる。つまり、無効領域Riに対応する絶縁性透明基板2上の領域に、周囲とは屈折率の異なる屈折率変化領域23が形成された構成となっている。この屈折率変化領域23の屈折率は、隣接する2つの光電変換素子10の光電変換層12間の領域(無効領域Ri)に入射した光が、絶縁性透明基板2上に形成する光電変換素子10へと散乱されるように、使用する絶縁性透明基板2の厚さと光電変換素子10の形成位置に基づいて定められる。なお、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略している。また、このような構造の光電変換装置1の製造方法も実施の形態1で説明した工程と同様であるので、その説明を省略する。
【0032】
つぎに、このような構造を有する光電変換装置1内に入射する光の光路について説明する。図9は、光電変換装置内における入射光の光路を模式的に示す図である。絶縁性透明基板2の光電変換素子10が形成されていない面側から有効領域Re内に光が入射した場合(図中のL1の場合)には、その光はそのまま光電変換層12へと到達する。到達した光は光電変換層12で吸収され電子−正孔対を形成し、形成された電子と正孔が内蔵電位によってそれぞれ異なる電極へと到達し、光起電力が発生する。
【0033】
一方、絶縁性透明基板2の光電変換素子10が形成されていない面側から無効領域Ri内に光が入射する場合(図中のL2の場合)には、その光は、屈折率変化領域23に入射するが、この絶縁性透明基板2への入射時に光は屈折率変化領域23で屈折し、光電変換層12に対応する領域に光路が屈曲され、光電変換層12へと到達する。そして、到達した光は光電変換層12で吸収され電子−正孔対を形成し、形成された電子と正孔が内蔵電位によってそれぞれ異なる電極へと到達し、光起電力が発生する。
【0034】
この実施の形態3によっても、実施の形態1と同様に、従来では、光電変換に寄与していなかった領域の入射光を光電変換に利用することができ、光電変換装置1の実質的な発電効率が向上するという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、この発明にかかる光電変換装置は、太陽光を用いて発電を行う太陽光発電システムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明にかかる光電変換装置の実施の形態1の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】絶縁性透明基板の他の例を示す断面図である。
【図3】光電変換装置内における入射光の光路を模式的に示す図である。
【図4−1】この実施の形態による光電変換装置の製造方法の一例を示す断面図である(その1)。
【図4−2】この実施の形態による光電変換装置の製造方法の一例を示す断面図である(その2)。
【図4−3】この実施の形態による光電変換装置の製造方法の一例を示す断面図である(その3)。
【図4−4】この実施の形態による光電変換装置の製造方法の一例を示す断面図である(その4)。
【図4−5】この実施の形態による光電変換装置の製造方法の一例を示す断面図である(その5)。
【図4−6】この実施の形態による光電変換装置の製造方法の一例を示す断面図である(その6)。
【図4−7】この実施の形態による光電変換装置の製造方法の一例を示す断面図である(その7)。
【図4−8】この実施の形態による光電変換装置の製造方法の一例を示す断面図である(その8)。
【図5】この発明にかかる光電変換装置の実施の形態2の構成を模式的に示す断面図である。
【図6】絶縁性透明基板の他の例を示す断面図である。
【図7】光電変換装置内における入射光の光路を模式的に示す図である。
【図8】この発明にかかる光電変換装置の実施の形態3の構成を模式的に示す断面図である。
【図9】光電変換装置内における入射光の光路を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 光電変換装置
2 絶縁性透明基板
2a ガラス基板
2b 樹脂片
2c 樹脂基片
3 アンダーコート層
10 光電変換素子
11 透明電極層
12 光電変換層
13 裏面電極層
13a 第1の裏面電極膜
13b 第2の裏面電極膜
21 溝
22 突起構造
23 屈折率変化領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な絶縁性の基板上に、透明な第1の電極層、光電変換を行う半導体層からなる光電変換層、および第2の電極層が順に積層された光電変換素子が、隣接する光電変換素子の光電変換層同士の間隔をあけて複数配置される光電変換装置において、
前記基板における、前記光電変換層の形成位置に対応する領域を第1の領域とし、隣接する前記第1の領域間に挟まれる領域を第2の領域とした場合に、
前記第2の領域は、前記基板の前記第2の領域に入射する光の進路を前記光電変換層の方向に変えるように形成された構成を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記基板の前記第2の領域の前記光電変換素子形成面に対向する面側に凹部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記基板の屈折率とは異なる屈折率を有する透明な物質で充填されていることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記基板の前記第2の領域の前記光電変換素子形成面に対向する面側に突起部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記基板の前記第2の領域は、前記第1の領域の屈折率と異なる屈折率を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図4−5】
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【図4−6】
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【図4−7】
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【図4−8】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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