説明

光電子デバイス

本発明は、フッ素含有基を含む高分子を含む層を有する光電子デバイスに関し、付着性のフッ素−フッ素相互作用が少なくともいくらかの前記層のフッ素含有基間に存在する。本発明はさらに、前記光電子デバイスの使用、およびその製造方法を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有基を含む高分子を含む層を含有する光電子デバイスに関し、凝集性のフッ素−フッ素相互作用が、前記層のいくらかのフッ素含有基間に存在する。本発明はさらに、光電子デバイスの使用およびその製造方法も対象とする。
【0002】
有機、有機金属および/または高分子の半導体を含む電子デバイスは、よりいっそう頻繁に商業用の製品に使用されているか、またはまさに市場に導入されようとしているところである。ここで言及され得る例は、写真複写機における有機材料に基づく電荷輸送材料(例えばトリアリールアミンをベースとする正孔輸送材料)およびディスプレイ装置における有機もしくは高分子発光ダイオード(OLEDもしくはPLED)またはコピー機における有機光受容体である。有機太陽電池(O−SC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC)、有機光増幅器および有機レーザーダイオード(O−laser)は、発展の進行段階にあり、将来的に大きな重要性を獲得し得る。
【0003】
これらの電子デバイスまたは光電子デバイスの多くは、それぞれの用途に関係なく、以下の一般的な層構造を有し、それぞれの用途に対して適応し得る:
(1)基板と、
(2)一般的に金属または無機であるが、有機または高分子の導電性材料から構築されてもよい電極と、
(3)任意に、一般的に1以上の導電性のドープポリマーから形成される、たとえば電極の不均一さを埋め合わせるための1以上の電荷注入層またはバッファ層と、
(4)少なくとも1層の有機半導体と、
(5)任意に、1以上のさらなる電荷輸送層または電荷注入層または電荷遮断層と、
(6)前記(2)に記載した材料を使用した対向電極と、
(7)封止材料。
【0004】
本発明は、特に、しかし非限定的に、有機発光ダイオード(OLED)を対象としており、これらは高分子材料を用いた場合には一般的に高分子発光ダイオード(PLED)としても既知である。上記配置は、光電子デバイスの一般的な構造を表し、種々の層を組み合わせてよく、最も単純な場合には間に有機層が位置する2つの電極からなる配置を意味する。この場合において、有機層は、発光を含む全ての機能を果たす。このタイプのシステムは、例えば、ポリ(p−フェニレン)に基づくものがWO90/13148に記載されている。
【0005】
しかしながら、このタイプの「三層系」において生じる問題は、電荷分離の制御の欠如または異なる層における個々の構成要素をそれらの特性に関して最適化する可能性の欠如であり、例えば、SMOLED(「小分子OLED」)の場合、多層構造によって単純な態様で解決されている。「小分子OLED」は、例えば、1以上の有機正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層ならびに陽極および陰極からなり、通常、系全体がガラス基板上に配置される。このタイプの多層構造の利点は、電荷注入、電荷輸送および発光の種々の機能が異なる層に分けられ、それぞれの層の特性が別々に修飾され得ることである。
【0006】
SMOLEDにおける典型的な正孔輸送材料は、例えば、ジ−およびトリ−アリールアミン、チオフェン、フランまたはカルバゾールであり、光導電体の用途においても研究され、使用されている。
【0007】
金属キレート、共役芳香族炭化水素、オキサジアゾール、イミダゾール、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、フェナントロリン、ケトンまたはホスフィンオキシドが、SMOLEDにおける発光層および電子輸送層に通常使用される。
【0008】
SMOLEDにおいて使用される化合物は、一般的に昇華により精製されてよく、それ故、99%より高い純度で利用可能である。
【0009】
SMOLEDデバイスにおける層は、通常、真空チャンバーにおいて蒸着により塗布される。しかしながら、この方法は複雑であるため高価であり、特に高分子のような大きな分子に対しては不適切である。
【0010】
高分子OLED材料は、それ故、通常、溶液からのコーティングにより塗布される。しかしながら、溶液からのコーティングによる多層有機構造の形成は、溶媒がそれぞれの直前の層に対して不相溶であり、直前の層を再び部分的に溶解せず、膨潤せず、またはさらに破壊しないようにする必要がある。しかしながら、使用される有機化合物は、通常、同様の特性、特に同様の溶液特性を有するため、溶媒の選択は難しいことがわかっている。溶液からのさらなる層の塗布は、それ故、実質的に不可能となるか、または少なくとも著しく困難になる。
【0011】
同様に、先行技術による高分子OLEDは、通常、単層またはせいぜい二層の有機構造のみが構築され、例えば、前記層の一つが正孔注入および正孔輸送のために使用され、第2の層が電子の注入および輸送ならびに発光のために使用される。
【0012】
特に、白色発光PLEDの製造において、一般的に、可視範囲の全域にわたって発光する単一の発色団を見出すことが困難であるかまたは不可能であるという問題が存在する。したがって、先行技術では通常、異なる発色団が共重合されるが、ここでは色ずれまたはクエンチ効果(quench effect)が頻繁に生ずる。
【0013】
この先行技術の問題を回避するための一つの可能性として、混合物、例えば青色発光高分子および少ない割合の黄色〜赤色発光高分子または低分子量化合物の混合物の使用がある(例えば、US 6127693)。緑色および赤色発光高分子または低分子量化合物が青色発光高分子と混合されている三元の混合物は、文献(例えば、Y.C.Kim et al.,Polymeric Materials Science and Engineering 2002,87,286;T.−W.Lee et al.,Synth.Metals 2001,122,437)においても既知である。前記混合物の概説はS.−A.Chen et al.,ACS Symposium Series 1999,735 (Semiconducting Polymers),163に提供される。これらの混合物には、それらが高分子または低分子量化合物との配合物であるか否かに関係なく、2つの重大な不利益がある:混合物中の高分子は一般的に互いと理想的には混和せず、その結果、著しく劣った膜形成または膜中での相分離へ向かう傾向がある。均質な膜の形成は、発光ダイオードにおける使用に不可欠であるが、それは一般的に不可能である。長期に動作させると前記デバイス中の相分離も観察され、寿命の短縮および色の不安定さにつながる。個々の混合物の構成要素は異なる速度で老化し、それにより色ずれが生じるため、ここでもまた混合物は不利である。したがって混合物はPLEDでの使用には共重合体よりも不適当である。
【0014】
白色発光PLEDは、フルカラーディスプレイの製造に特に有利であると同時に、複雑な印刷技術を単純化あるいは回避するために有利である。このため、白色発光高分子は、広い範囲に亘って塗布されるか、または構造化された方法のいずれかで塗布されてよく、液晶ディスプレイ(LCD)の場合にすでに先行技術となっているように、カラーフィルターによりそこからそれぞれの色が生じる。白色発光高分子は、さらにモノクロ白色ディスプレイに使用されてもよい。さらに、白色発光高分子は、液晶ディスプレイのバックライトとして、モノクロディスプレイおよびマルチカラーディスプレイの両方に使用することが可能である。白色発光は太陽光に最も類似するため、可能な最も広範な使用において一般的な照明目的のために使用されてよい。
【0015】
白色発光PLEDが適当であることが上述の先行技術から明らかであるが、いかにして高品質の白色発光PLEDを得ることができるかについて、今のところ解決策がない。
【0016】
SMOLEDの場合と同様、高分子OLEDの場合もまた多層構造が明らかに有利であり、先行技術では種々のアプローチが試みられた。
【0017】
それ故、例えばEP 0 637 899 A1では、1以上の層が熱または放射線誘起性の架橋により得られる、1以上の有機層を含む電界発光装置を開示している。熱的な架橋の場合の問題は、高分子層が相対的に高い温度に曝され、対応する層の破壊または望ましくない副産物の形成を生じる場合が再びあることである。化学線を用いた架橋の場合、一般的に、フリーラジカル、陽イオン性または陰イオン性の重合を開始することができる分子または部分を使用する必要がある。しかしながら、このタイプの分子または部分は、光電子デバイスの機能に逆効果を及ぼし得ることが先行技術において既知である。高エネルギーの化学線の使用も、問題を含む。
【0018】
従って、本発明の目的は、高エネルギー放射を使用することなく高分子層が固定される光電子デバイスの提供にある。
【0019】
前記目的は、フッ素含有基を含む高分子を含有する少なくとも一つの層を具備し、前記層の少なくともいくらかのフッ素含有基間に凝集性のフッ素−フッ素相互作用が存在する光電子デバイスによって達成される。
【0020】
この相互作用は、前記層のある種の物理的な架橋を確実にし、二以上の高分子ストランドのフッ化基が互いに隣接し、それ故、化学反応を起こすことなく「分子量の増加」(分子間ダイマー、トリマーなど)を生じる。層の溶解性は、架橋度および有効分子量に依存するので、凝集性の相互作用により、本来それから成膜された溶媒においてさえも、前記層の不溶性を生じる。したがって、このような方法で、先に成膜されていた層を再溶解させることなく、複数の層を溶媒から成膜することが可能である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、前記層は電荷注入および/または電荷輸送機能を有する高分子を含有する。
【0022】
同様に、前記層は発光機能を有する高分子を含有することが好ましい。さらに、前記層は正孔注入および/もしくは正孔輸送機能ならびに/または発光機能を有する高分子を含有することが好ましい。
【0023】
本発明の更なる実施形態において、好ましくは、前記高分子が二以上の高分子の混合物である。特に好ましくは、前記高分子のうち少なくとも一つが、特に非常に好ましくは、すべての高分子がフッ素含有基を含む。
【0024】
本発明に従うデバイスはさらに、少なくとも一つの更なる層を含む。
【0025】
本発明の目的のために、前記更なる層は正孔注入機能、正孔輸送機能、正孔遮断機能、発光機能、電子注入機能、電子遮断機能、および/または電子輸送機能を有する高分子を含有することが同様に好ましい。
【0026】
前記更なる層は、フッ素含有基を含む更なる高分子を含有してもよい。更なる層が成膜される場合、このことは常に好ましい。前記更なる層の高分子の代わりに、フッ化オリゴマーまたはフッ化小分子を使用することも可能である。本発明の目的のために、オリゴマーは、2より多い、好ましくは3〜9の繰り返し単位を含む分子を意味するものとする。ポリマーは、好ましくは10以上の繰り返し単位を含む。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態において、さらなる層の高分子は、少なくとも1つの発光機能を有することが好ましい。特に、発光機能を有する高分子は、種々の波長の光を発光すべきである。これは、層における1以上の高分子または混合物中に存在する異なる発光体により達成され得る。
【0028】
さらに、前記デバイスは、発光機能を有する高分子の複数の層を含むことが好ましい。ここでは、複数の高分子層が、それぞれ異なる波長の光を発光する発光機能を有することが特に好ましい。
【0029】
特に好ましい実施形態において、前記種々の波長が全部合わさって白色になることがさらに好ましい。
【0030】
例えば、本発明の好ましい実施形態は、白色発光体のための多層配置を含み、中間層ならびに、例えば三原色である赤、緑および青(RGB)の発光のための三つの層を含有する。これらは順次、電荷と色のバランスに適切な層の厚さで成膜され、初めに成膜された層はフッ素−フッ素相互作用の凝集力によって不溶性となる。一重項発光体および高効率の三重項発光体は、複数の層にわたる分布によって組み合わされてよく、これは1つの層においては不可能である。
【0031】
更に好ましい実施形態は、F−F相互作用によって不溶性となり、黄色の三重項発光体を含有する層によって上塗りした青色の高分子層を含有する。前記黄色の三重項発光体は、真正の黄色発光体または赤色発光体および緑色発光体から成る発光体であってよい。高効率の安定な三重項発光体の使用によって、高効率かつ長寿命の白色発光系を得ることができる。さらに、この系は単純な製造方法によって区別され(真空蒸着が不要)、従ってより低コストである。
【0032】
本発明のさらなる実施形態において、前記デバイスは、正孔伝導機能を有する高分子の複数の層を含んでよく、前記正孔伝導体は、エネルギー的に異なる最高被占軌道(HOMO)を有する。
【0033】
ここでは、最後に塗布される正孔伝導機能を有する高分子層が、エネルギー的に高い最低空軌道(LUMO)を有することが好ましい。このような方法で、最後に塗布される高分子層は、電子遮断層である。
【0034】
本発明のさらなる実施形態において、前記デバイスは、電子伝導機能を有する高分子の複数の層を含んでよく、前記電子伝導体は、エネルギー的に異なる最低空軌道(LUMO)を有する。
【0035】
ここでは、最初に塗布される電子導体の機能を有する高分子層が、エネルギー的に低い最高被占軌道(HOMO)を有することが好ましい。このような方法で、最初に塗布される高分子層は、正孔遮断層である。
【0036】
したがって好ましい実施形態は、異なるHOMO(「最高被占軌道」)および対応する電子または正孔遮断機能を有する複数の(部分的に)フッ素化された高分子正孔伝導体および/または電子伝導体(中間層)を含む多層配置を含む。したがって、累進的なバリア段差によって改善された正孔または電子注入を達成することができる。
【0037】
本発明に従うと、前記デバイスが低分子またはオリゴマーを含む層(または複数の層)を含有することがさらに有利であってよい。これは、好ましくは(陰極の前の)最後の層として塗布される。前記層は、溶液からのコーティング、印刷プロセス、蒸着、または先行技術により公知の他の方法によって、塗布されてよい。
【0038】
フッ素含有基の「いくらか」とは、約1〜100%、好ましくは40〜100%、特に好ましくは80〜100%のフッ素含有基が相互作用を受けることを意味する。ここで、前記フッ素含有基は、前記層の架橋性を増強するため、層内で可能な最高の割合で互いに相互作用する。互いに相互作用を受けるために、フッ素原子の間隔は、例えば、ほぼファンデルワールス半径に対応すべきである。フッ素原子の相互の間隔は、少なくとも吸引性のF−F相互作用が生じる程度であり、水素結合の場合における相互作用に匹敵する。本発明による層における高分子は、高分子の繰り返し単位に基づいて、好ましくは0.5〜100%、特に好ましくは1〜50%、特に1〜25%のフッ素含有基を含む。故に、100%とは、高分子の全ての繰り返し単位がフッ素含有基を含むことを意味する。
【0039】
本発明に従うデバイスはさらに、電極(陽極)を含有し、前記電極(陽極)は好ましくはインジウムスズ酸化物(ITO)層もしくはインジウム亜鉛酸化物(IZO)層または導電性高分子、またはその2つの組み合わせである。前記導電性高分子は好ましくは、PEDOTまたはPANIから選択される。さらに好ましい(本質的に)導電性高分子は、ポリチオフェン(PTh)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)、ポリジアセチレン、ポリアセチレン(PAc)、ポリピロール(PPy)、ポリイソチアナフタレン(PITN)、ポリへテロアリーレンビニレン(PArV)であり、前記へテロアリーレン基は、とりわけ、例えばチオフェン、フラン、またはピロール、ポリ−p−フェニレン(PpP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリペリナフタレン(PPN)、ポリフタロシアニン(PPc)、およびその誘導体(例えば、側鎖または基によって置換されるモノマーから形成される)、その共重合体、およびそれらの物理的混合物であってよい。
【0040】
さらに、本発明に従う光電子デバイスは、好ましくは陰極を、有利には封止材料も具備する。
【0041】
本発明に従う光電子デバイスは、有機または高分子発光デバイス、有機太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機集積回路、有機電界クエンチ素子(organic field-quench element)、有機光増幅器、有機レーザーダイオード、有機感光体、および有機フォトダイオードとして使用されてよい。
【0042】
本発明に従う光電子デバイスはディスプレイ、カラーディスプレイ、マルチカラーディスプレイ、またはフルカラーディスプレイにおけるOLEDとして、液晶ディスプレイ(LCD)における照明素子またはバックライトとして使用されてよい。好ましくは、前記光電子デバイスは白色発光OLEDとして使用されてよい。
【0043】
本発明に従う光電子デバイスは、白色発光ディスプレイにおいて使用されてよい。
【0044】
本発明に従う光電子デバイスは、カラーの、マルチカラーの、またはフルカラーのディスプレイにおいて使用されてよく、その色は白色発光PLED上に着色フィルターを使用することにより発生する。
【0045】
本発明に従う光電子デバイスは、照明素子として使用されてよい。
【0046】
本発明に従う光電子デバイスは、白色発光PLEDをバックライトとして含む液晶ディスプレイ(LCD)に使用されてよい。
【0047】
本発明の目的のために、フッ素含有基Rは、好ましくは一般式Cを有し、x≧0、y≧0およびz≧1であり、隣接してもよい0または1以上のCH基は、O、S、Se、Te、Si(R)、Ge(R)、NR、PR、CO、P(R)Oで置換されてよく、式中のRは、各々の存在について、同じまたは異なってよく、直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールもしくはヘテロアルキル基であり、さらに、1以上の非芳香族部分の隣接しないC原子は、O、S、CO、COOまたはOCOで置換されてよく、ただし2つの基Rが互いに環系を形成してもよい。好ましい基には、例えば、F、CF、C、CF(CH)S、CFCFSおよび(CF−(CH))Nが含まれ、式中のaは、好ましくは0〜5の整数を意味する。
【0048】
驚くべきことに、フッ化された高分子またはフッ化もしくは過フッ化された側鎖を含有する高分子を溶液から塗布した後は、前記高分子はもはや溶解せずまたは洗い流されず、溶媒の除去後にも膨潤しない。それ故、高温を使用することなく、且つ高エネルギーの放射線を使用することなく、層を固定することが可能になる。それ故、直前の層の構造にダメージを与えるという問題を生じることなく、さらなる層を溶液により塗布することが可能になる。驚くべきことに、さらに、複数のフッ化された高分子(またはフッ化されたオリゴマーもしくはフッ化された小分子)の塗布において、前記層のフッ素−フッ素相互作用によって互いの付着が起こることがわかった。個々の層は部分的に再溶解されることなく、また溶液からの更なる層の塗布によって膨潤することもない。このようにして、「小分子OLED」により既知の通り、高分子の多層デバイスが提供され得る。
【0049】
第1層は好ましくは基板上に位置し、この基板上には通常電極が位置する。前記基板にとって好ましい材料は、例えば、十分な機械的安定性を有し、かつバリア作用を保証するガラスおよび薄膜である。例えば、前記基板は導電性のコーティングを有してよく、あるいはインジウムスズ酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)が塗布されてもよく、これは通常スパッタリングにより行われる。
【0050】
同様に、導電性高分子は例えば、溶液からのコーティングによって前記基板に塗布され、電極としての役割を果たすことが可能である。前記導電性高分子は、好ましくはPEDOTおよびPANIから選択される。これはフッ化基によって修飾されてよい。前記高分子は、好ましくはドープされ、それにより電荷注入層として機能し得る。前記高分子は、好ましくはポリチオフェン誘導体、特に好ましくはポリ(3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン)(PEDOT)またはポリアニリン(PANI)である。前記高分子は、好ましくは、ポリスチレンスルホン酸または他の高分子結合性ブレンステッド酸でドープされてよく、それにより導電性の状態に変換される。
【0051】
さらに、第1層が正孔注入機能および/または正孔輸送機能を含むことが好ましい。両方の機能は、例えば、ドープされたポリチオフェン誘導体またはポリアニリンにより提供され得る。
【0052】
本発明の目的のために、第1層は、同様に、好ましくは発光機能を含んでよい。これは、例えば、発光性化合物またはフォトルミネセント化合物と、対応する高分子のモノマーを共重合することにより行うことができる。発光性化合物またはフォトルミネセントもしくはエレクトロルミネセント化合物は、前記高分子の主鎖または側鎖に存在してよく、または、例えば、適切な部位にグラフトされてもよい。同様に、モノマーまたはポリマーの発光性化合物を使用することができ、これらは同様にフッ素含有基を含んでよい。
【0053】
本発明による光電子デバイスは、好ましくは第2層を含む。さらなる付加的な層が、第2層の他にデバイス中に存在することが同様に好ましい。本発明の目的のために、前記付加的な層(または複数の付加的な層)は、好ましくは上述したように、フッ素含有基を含む化合物を含むことが好ましい。前記付加的な層は、それ故、フッ化基を含有する高分子、部分的にフッ化された高分子またはフッ化もしくは過フッ化された側鎖を含有する高分子、フッ化基を含有するオリゴマーまたはフッ化された分子(小分子)も含んでもよい。
【0054】
本発明によると、前記光電子デバイスは、前記付加的な層および先行するそれぞれ層のフッ素含有基のいくらかが、凝集性のフッ素−フッ素相互作用が存在するように、互いからある間隔で位置するという事実により区別される。本発明の目的のために、前記付加的な層は、電荷注入層(正孔もしくは電子注入層)、電荷輸送層(正孔または電子輸送層)、発光層、正孔もしくは電子遮断層および/またはそれらの組み合わせであってよい。この場合は、前記付加的な層が1つの層中に複数の機能を兼ね備えてよいこと、または複数の付加的な層が対応する機能を有することを意味する。
【0055】
基板、電極、多機能層および陰極を備えた古典的な構造、または小分子OLEDのような構造、すなわち、
1)基板と、
2)電極または陽極と、
3)正孔注入層と、
4)正孔輸送層と、
5)発光層と、
6)電子輸送層と、
7)電子注入層と、
8)対向電極または陰極と
を備えた構造は、それ故、本発明に従うことが可能である。
【0056】
本発明によると、1以上の層は、互いに組み合わされてよく、または高分子層を含む構造は、SMOLEDにおいて既知の層と組み合わされてよい。例えば、成分は、蒸着または印刷により塗布されてよく、または望ましい場合、成分は溶液から塗布されてよく、前記成分は好ましくはフッ素含有基を含む。
【0057】
このような方法で、比較的厚い層を有するデバイスが提供されてよく、これらの層は、例えば正孔注入層または電子バリア層として機能してもよい。このタイプの層は、その色および有効性について単純な方法によって最適化されてよい。その上、このタイプの層の寿命は、改善された電子バリア機能(下層におけるより少ないトンネル効果、特にPEDOTの場合)によって増加する。
【0058】
本発明の目的のために、光電子デバイスは、有機または高分子の発光ダイオードとして、有機太陽電池(O−SC、例えば、WO98/48433、WO94/05045)として、有機電界効果トランジスタ(O−FET)として、有機集積回路(O−IC、例えば、WO95/31833、WO99/10939)として、有機電界クエンチ素子(FDQ、例えばUS 2004/017148)として、有機光増幅器として、有機光受容体として、有機フォトダイオードとしてまたは有機レーザーダイオード(O−LASER、例えばWO98/03566)として適しており、それらに応じて使用することができる。
【0059】
O−FETにおける使用に対して、高い電荷−キャリア移動度を有する材料は、特に興味深い。例えば、オリゴまたはポリ(トリアリールアミン)、オリゴまたはポリ(チオフェン)およびこれらの単位を高い割合で含む共重合体がある。
【0060】
前記デバイスは、(適用に依存して)相応に構造化され、端子が設けられ最後に密封される。これはこのタイプのデバイスの寿命は水および/または空気の存在下で激しく短縮されるためである。ここでは、電極の一方または両方に対する電極材料として導電性のドープポリマーを使用すること、および導電性のドープポリマーを含む中間層を導入しないことも好ましい。
【0061】
O−FETおよびO−TFTへの応用の場合、構造が、電極および対向電極(ソースおよびドレイン)と別に、さらなる電極(ゲート)を具備することがさらに必要であり、それは、一般的に高い(またはまれに低い)比誘電率を有する絶縁体層により有機半導体から絶縁される。さらに、前記デバイスにさらなる層を導入することが適切であり得る。
【0062】
本発明の目的のために、電極は、可能な最も効率的な電子または正孔の注入の可能性を保証するために、それらの電位が隣接する有機層の電位に可能な限り対応するように選択される。
【0063】
陰極は、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、金属合金または多層構造を含み、これらは種々の金属、例えば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属またはランタノイド(例えば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)を含む。多層構造の場合、相対的に高い仕事関数を有するさらなる金属(例えばAg)を、前記金属に加えて使用することもでき、その場合、金属の組み合わせ、例えば、Ca/AgまたはBa/Agが一般的に使用される。金属陰極と有機半導体との間に、高い誘電率を有する金属の薄い中間層を導入することが好ましいこともある。この目的に適しているのは、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物でだけでなく、対応する酸化物である(例えば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF等)。この層の厚さは、好ましくは1〜10nmである。
【0064】
陽極は、好ましくは、高い仕事関数を有する金属を含む。陽極は、好ましくは、真空に対して4.5eVより大きな電位を有する。この目的に適しているのは、一方では高い酸化還元電位を有する金属、例えば、Ag、PtまたはAuである。他方では、金属/金属酸化物電極(例えば、Al/Ni/NiO、Al/PtO)も好ましい。いくつかの用途では、少なくとも1つの電極は、有機材料への照射を可能にするため(O−SC)、または光の取り出しを可能にするために(PLED/PLED、O−laser)、透明であるべきである。好ましい構造は、透明な陽極を使用する。ここでの好ましい陽極材料は、導電性の混合金属酸化物である。特に好ましいのは、フッ素含有基を含むインジウム錫酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)を使用することである。さらに好ましいのは、導電性のドープされた有機金属、特に導電性のドープポリマーであり、これは上述した通り、好ましくはフッ素含有基を含む。
【0065】
陽極上の正孔注入層として適切なのは、種々のドープされた導電性高分子である。用途に依存するが、好ましいのは10−8S/cmより大きい導電率を有する高分子である。層の電位は、好ましくは、真空に対して4〜6eVである。層の厚さは、好ましくは10〜500nmであり、特に好ましくは20〜250nmである。特に好ましいのは、ポリチオフェンの誘導体(特にポリ(3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン)(PEDOT)およびポリアニリン(PANI))を使用することである。さらに好ましい(本質的に)導電性の高分子は、とりわけ、ポリチオフェン(PTh)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリジアセチレン、ポリアセチレン(PAc)、ポリピロール(PPy)、ポリイソチアナフテン(PITN)、ポリヘテロアリーレンビニレン(PArV)(ここでのヘテロアリーレン基は、例えば、チオフェン、フランもしくはピロール)、ポリ−p−フェニレン(PpP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリペリナフタレン(PPN)、ポリフタロシアニン(PPc)、それらの誘導体(例えば側鎖または基により置換されたモノマーから形成される)、それらの共重合体およびそれらの物理的な混合物である。ドーピングは、一般的に、酸または酸化剤により行われる。ドーピングは、好ましくは、高分子結合ブレンステッド酸により行われる。この目的のために特に好ましいのは、高分子結合スルホン酸、特にポリ(スチレンスルホン酸)およびポリ(ビニルスルホン酸)である。電荷注入層のための導電性高分子は、好ましくはフッ素−フッ素含有基を含み、溶液からの塗布および溶媒の除去の後に生じる凝集性のF−F相互作用を通して層を固定する。
【0066】
発光性の繰り返し単位の他に、発光層の高分子は、好ましくはさらなる繰り返し単位を含み、これは同様に、フッ素含有基または置換基を含むことが好ましい。これは、単一の高分子化合物または2以上の高分子化合物の混合物または1以上の高分子化合物と1以上の低分子量有機化合物の混合物であってよい。有機発光層は、好ましくは、溶液からのコーティングまたは種々の印刷法、特にインクジェット印刷法により塗布され得る。高分子化合物および/またはさらなる化合物は、好ましくはフッ素含有基を含む。有機半導体の層の厚さは、適用に依存して、好ましくは10〜500nm、特に好ましくは20〜250nmである。
【0067】
発光層の高分子における好ましい繰り返し単位は、これらに限定されるものではないが、例えば以下に示す化合物である:
【化1】

【0068】
これらの式において、Rは一般式Cのフッ化基を示し、x≧0、y≧0、z≧1であり、隣接してもよい0または1以上のCH基は、O、S、Se、Te、Si(R)、Ge(R)、NR、PR、CO、P(R)Oで置換されてよく、式中のRおよびRは、各々の存在について、同じまたは異なってよく、直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールもしくはヘテロアルキル基であり、さらに、1以上の非芳香族部分の隣接しないC原子は、O、S、CO、COOまたはOCOで置換されてよく、ただし2つの基Rが互いに環系を形成してもよい。好ましい基には、例えば、F、CF、C、CF(CH)S、CFCFSおよび(CF−(CH))Nが含まれ、式中のaは、好ましくは0〜5の整数を意味する。
【0069】
本発明の目的のために好ましい高分子またはフッ素含有高分子(またはフッ化もしくは過フッ化された側鎖を含む高分子)は、主鎖にsp混成した炭素原子を含む共役高分子または部分的な共役高分子であり、これは対応するヘテロ原子で置換されてもよい。さらに、共役という用語は、同様に本発明の目的のために使用され、例えば、アリールアミン単位および/またはある一定のヘテロ環(すなわち、N、OまたはS原子を介した共役)および/または有機金属錯体(すなわち、金属原子を介した共役)が主鎖にある場合である。例えばPLEDまたはO−SCにおいて使用され得る共役高分子の典型的な例は、ポリ−パラ−フェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、ポリスピロビフルオレン、ポリフェナントレン、ポリジヒドロフェナントレン、ポリインデノフルオレン、最も広い意味でポリ−p−フェニレン(PPP)に基づく系、およびこれらの構造の誘導体、特にフッ素含有基を含む誘導体である。
【0070】
本発明によると、特に好ましいものはさらなる構造要素を含み、共重合体と呼ばれるべき高分子である。特に、参照すべきものは、WO02/077060、WO2005/014689およびこれらの明細書中の引用された参照文献における考えられる構造要素の相対的に広範なリストである。これらのさらなる構造単位は、例えば以下に述べる分類から生じ得る:
グループ1:高分子骨格を表す構造単位
グループ2:高分子の正孔注入および/または輸送特性を増強する構造単位
グループ3:高分子の電子注入および/または輸送特性を増強する構造単位
グループ4:グループ2およびグループ3からの個々の単位の組み合わせを有する構造単位
グループ5:得られる高分子の形態および/または発光色に影響を及ぼす構造単位
グループ6:エレクトロフルオレセンスの代わりにエレクトロフォスフォレセンスが得られる程度に発光特性を修飾する構造単位
グループ7:一重項状態から三重項状態への遷移を改善する構造単位。
【0071】
上述したグループについて適切且つ好ましい単位を以下に示すが、これらは、本発明により定義されるフッ素含有基を含むことが好ましい。
【0072】
グループ1−高分子骨格を表す構造単位:
グループ1における好ましい単位は、特に、6〜40C原子を有する芳香族または炭素環構造を含むものである。適切且つ好ましい単位は、特に、例えばEP0842208、WO99/54385、WO00/22027、WO00/22026およびWO00/46321に開示されているようなフルオレン誘導体、インデノフルオレン、さらに、例えばEP0707020、EP0894107およびWO03/020790に開示されているようなスピロビフルオレン誘導体、例えばWO2005/014689に開示されているようなフェナントレン誘導体またはジヒドロフェナントレン誘導体である。例えばWO02/077060に記載されているように、これらのモノマー単位の2以上の組み合わせも使用することができる。高分子主鎖についての好ましい単位は、特に、スピロビフルオレン、インデノフルオレン、フェナントレンおよびジヒドロフェナントレン誘導体である。
【0073】
グループ1において特に好ましい単位は、以下の式の二価の単位であり、破線は隣接する単位への結合を示す:
【化2】

【0074】
個々の基は、以下の意味を有する:
YYは、SiまたはGeであり、
VVは、O、SまたはSeであり、
種々の式は、その自由な位置において、1以上の置換基Rで付加的に置換されてもよく、Rは以下の意味を有する:
は、各々の存在について、同じまたは異なり、H、直鎖、分枝鎖もしくは環状の1〜22C原子を有するアルキルまたはアルコキシ鎖であり、さらに、1以上の隣接しないC原子は、O、S、CO、O−CO、CO−OまたはO−CO−Oで置換されてよく、さらに、1以上のH原子は、フッ素、5〜40C原子を有するアリールもしくはアリールオキシ基で置換されてよく、さらに、1以上のC原子は、O、SまたはNで置換されてよく、1以上の非芳香族基R、またはF、CN、N(R)もしくはB(R)で置換されてもよい。
【0075】
は、各々の存在について、同じまたは異なり、H、直鎖、分枝鎖もしくは環状の1〜22のC原子を有するアルキル鎖であり、さらに、1以上の隣接しないC原子は、O、S、CO、O−CO、CO−OまたはO−CO−Oで置換されてよく、さらに、1以上のH原子は、フッ素、または任意に5〜40のC原子を有する置換されたアリール基で置換されてよく、さらに、1以上のC原子は、O、SまたはNで置換されてよい。
【0076】
グループ2−高分子の正孔注入および/または輸送特性を増強する構造単位:
これらは、一般的に、芳香族アミンまたは電子に富んだヘテロ環があり、例えば、置換または非置換のトリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリーレン−パラ−フェニレンジアミン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、チアントレン、ジベンゾ−p−ジオキシン、フェノキサチイン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロール、フランおよびさらにO−、S−またはN−を含む高いHOMOを有するヘテロ環である(HOMO=最高被占軌道)。しかしながら、例えばWO2005/017065 A1に記載されているトリアリールフォスフィンも、ここでは適している。
【0077】
グループ2において特に好ましい単位は、以下の式の二価の単位であり、破線は隣接する単位への結合を示す:
【化3】

【0078】
式中のR11は、上記に示したRの意味の1つを有し、種々の式は、その自由な位置において、1以上の置換基R11で付加的に置換されてもよく、記号および指数は以下の意味を有する:
nは、各々の存在について、同じまたは異なり、0、1または2であり;
pは、各々の存在について、同じまたは異なり、0、1または2であり、好ましくは0または1であり;
oは、各々の存在について、同じまたは異なり、1、2または3であり、好ましくは1または2であり;
Ar11、Ar13は、各々の存在について、同じまたは異なり、2〜40のC原子を有する芳香環または芳香族複素環系であり、R11によりモノ−またはポリ−置換されるか、または非置換であってもよく;ここで考えられる置換基R11は、いずれかの自由な位置にある可能性があり;
Ar12、Ar14は、各々の存在について、同じまたは異なり、Ar11、Ar13または置換もしくは非置換のスチルベニレンもしくはトラニレン単位であり;
Ar15は、各々の存在について、同じまたは異なり、Ar11により記載したような系または9〜40の芳香族原子(Cまたはへテロ原子)を有する芳香環もしくは芳香族複素環系であり、R11によりモノ−またはポリ−置換されるか、または非置換であってよく、少なくとも2の縮合環からなり;ここで考えられる置換基R11は、いずれかの自由な位置にある可能性がある。
【0079】
グループ3−高分子の電子注入および/または輸送特性を増強する構造単位:
これらは、一般的に、電子欠乏性の芳香環または芳香族複素環、例えば、置換または非置換のピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピレン、ペリレン、アントラセン、ベンズアントラセン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、フェナジン、ベンズイミダゾール、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドまたはトリアジンだけでなく、トリアリールボランおよび低いLUMO(LUMO=最低空軌道)を有するさらにO−、S−またはN−を含有する複素環、ならびに例えばWO05/040302に開示されているようなベンゾフェノンおよびその誘導体のような化合物である。
【0080】
グループ3において特に好ましい単位は、以下の式の二価の単位であり、破線は隣接する単位への結合を示す:
【化4】

【0081】
種々の式は、自由な位置において、上述した1以上の置換基R11により置換されてよい。
【0082】
グループ4−グループ2およびグループ3からの個々の単位の組み合わせを有する構造単位:
高分子は、正孔移動度および電子移動度を増大させる構造単位を含むこともでき、両者は互いに直接的に結合する。しかしながら、これらの単位のいくらかは、発光色を黄色または赤色にシフトする。それ故、青色または緑色の発光を生じさせるための本発明による光電子デバイスにおけるそれらの使用は、あまり好ましくない。
【0083】
グループ4におけるそのような単位が高分子中に存在する場合、それらは、好ましくは以下の式の2価の単位から選択され、点線は隣接する単位への結合を示す:
【化5】

【0084】
種々の式は、その自由な位置において、1以上の置換基R11により置換されてよく、記号R11、Ar11、pおよびoは、上述した意味を有し、Yは、各々の存在について、同じまたは異なり、O、S、Se、N、P、SiまたはGeである。
【0085】
グループ5−得られる高分子の形態および/または発光色に影響を及ぼす構造単位:
上述した単位の他に、上述したグループの中には該当しない少なくとも1のさらなる芳香族または他の共役構造を有するものがあり、すなわち、電荷−キャリア移動度にわずかな影響しか及ぼさず、有機金属錯体ではなく、または、一重項−三重項遷移における影響を有さないものである。このタイプの構造要素は、形態だけでなく、得られる高分子の発光色にも影響を及ぼし得る。それ故、単位に依存して、それらは発光体として使用することもできる。ここで好ましいのは、6〜40C原子を有する置換もしくは非置換の芳香族構造またはトラン、スチルベンもしくはビス−スチリルアリーレン誘導体であり、これらのそれぞれは、1以上の基R11で置換されてよい。ここで特に好ましいのは、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,4−または9,10−アントリレン、1,6−、2,7−または4,9−ピレニレン、3,9−または3,10−ペリレニレン、4,4’−ビフェニリレン、4,4”−テルフェニリレン、4,4’−ビ−1,1’−ナフチリレン、4,4’−トラニレン、4,4’−スチルベニレンまたは4,4”−ビススチリルアリーレン誘導体を組み込むことである。
【0086】
まさに特に好ましいのは、以下の式の置換または非置換の構造であり、破線は隣接する単位への結合を示す:
【化6】

【0087】
種々の式は、その自由な位置において、上述したような1以上の置換基R11により置換されてよい。
【0088】
グループ6−エレクトロフルオレセントの代わりにエレクトロフォスフォレセントが得られる程度に発光特性を修飾する構造単位:
これらは、特に、室温でも高い効率を有する三重項状態からの発光を可能にする、すなわち、エレクトロフルオレセントの代わりにエレクトロフォスフォレセントを示す単位であり、一般的にエネルギー効率の増大を生じる。この目的のために適切なのは、第1に、36より大きな原子番号を有する重い原子を含む化合物である。特に適した化合物は、上述した条件を満たすd−またはf−遷移金属を含むものである。ここでまさに特に好ましいのは、8〜10族からの元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含む対応する構造単位である。ここでの高分子について適切な構造単位は、例えば、WO02/068435、WO02/081488、EP1239526およびWO04/026886に記載されている種々の錯体である。対応するモノマーは、WO02/068435およびWO2005/042548A1に記載されている。
【0089】
グループ6における好ましい単位は、以下の式で表されるものであり、破線は隣接する単位への結合を示す:
【化7】

【0090】
Mは、RhまたはIrを意味し、Yは上述した意味を有し、種々の式は、その自由な位置において、上記で定義したような1以上の置換基R11で置換されてよい。
【0091】
グループ7−一重項状態から三重項状態への遷移を改善する構造単位:
これらは、特に、一重項状態から三重項状態への遷移を改善し、グループ6からの構造要素を支持するように使用され、これらの構造要素のリン光特性を改善する単位である。この目的のために適しているのは、特に、例えばWO04/070772およびWO04/113468に記載されているように、カルバゾールおよび架橋したカルバゾール2量体単位である。また、この目的のために適しているのは、例えばWO2005/040302A1に記載されているように、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよび同様の化合物である。
【0092】
グループ1〜7の1つからの2以上の構造単位が同時に存在することも可能である。
【0093】
さらに、高分子は同様に、金属錯体を含んでよく、これは一般的に1以上のリガンドおよび1以上の金属中心から構築され、主鎖または側鎖に結合する。
【0094】
好ましいのは、グループ1〜7から選択される1以上の単位も付加的に含む高分子である。
【0095】
同様に、前記高分子は、電荷輸送または電荷注入を改善する単位、すなわちグループ2および/または3からの単位を含むことが好ましく;これらの単位が1〜30mol%の割合であることが特に好ましく;これらの単位が2〜10mol%の割合であることがまさに特に好ましい。
【0096】
さらに、前記高分子は、グループ1からの単位、グループ2および/または3からの単位、ならびにグループ5からの単位を含むことが特に好ましい。
【0097】
前記高分子は、繰り返し単位を好ましくは10〜10,000、特に好ましくは20〜5000、特に50〜2000含む。これらと、3〜9の繰り返し単位を含む本発明によるフッ化オリゴマーとの区別がなされるべきである。他に、前記オリゴマーは、発光体を含む上記で定義した全ての繰り返し単位を含んでもよい。
【0098】
前記高分子に必要な溶解性は、特に、種々の繰り返し単位における置換基により保証される。
【0099】
前記高分子は、直鎖状、分枝状または架橋したものであってよい。本発明による共重合体は、ランダム、交互またはブロック様の構造であってよく、交互の配列において複数のこれらの構造を有していてもよい。ブロック様構造を有する共重合体を得る方法およびさらなる構造要素がこの目的のために特に好ましいことは、例えばWO2005/014688に記載されている。この明細書は、参照により本出願に組み込まれている。
【0100】
高分子は、一般的に、1以上のタイプのモノマーの重合により調製される。適切な重合反応は、当業者に既知であり、文献に記載されている。特に適切であり、好ましい重合およびカップリング反応(その全てが結果としてC−C結合を生じる)は、SUZUKI、YAMAMOTO、STILLE、HECK、NEGISHI、SONOGASHIRAまたはHIYAMA反応である。
【0101】
重合をこれらの方法により行う方法、その後、高分子を反応媒質から分離し、精製する方法は、当業者に既知であり、文献、例えばWO2003/048225およびWO2004/037887に詳細に記載されている。
【0102】
C−C結合反応は、好ましくは、SUZUKIカップリング、YAMAMOTOカップリングおよびSTILLEカップリングからなる群より選択される。
【0103】
高分子の合成のためには、対応するモノマーが必要である。グループ1〜7における単位の合成は、当業者に既知であり、文献、例えばWO2005/014689に記載されている。この文献およびそこで引用されている文献は、参照により本出願に組み込まれている。
【0104】
前記高分子の部分的なフッ化を達成するために、前記モノマーが上述の一般式Cの群によって修飾されてもよく、前記共重合体の構成成分として共重合されてもよい。
【0105】
さらに、純粋な物質としてではなく、その代わりにいずれかの所望のタイプのさらなる高分子の、オリゴマーの、樹状のまたは低分子量の物質との混合物(ブレンド)として、高分子を使用することが好ましい。これらは、例えば、電気的特性を改善するかまたはそれら自体発光し得る。それ故、本発明は、このタイプの混合物にも関する。
【0106】
本発明はさらに、1以上の溶媒中の本発明による1以上のフッ素含有高分子および/またはフッ素含有混合物および/またはフッ化小分子(上記で定義した通り)を含む溶液および組成物(formulation)にも関する。高分子溶液または小分子の溶液を調製することができる方法は当業者に既知であり、例えば、WO02/072714、WO03/019694およびこれらで引用されている文献に記載されている。前記溶液および製剤は、任意に、1以上の添加物を含んでよい。
【0107】
これらの溶液は、特に本発明による方法において、例えば、エリアコーティング法(例えばスピンコーティング)または印刷法(例えばインクジェット印刷)により、薄い高分子層を作るために使用され得る。
【0108】
本発明はまた、光電子デバイスの製造のための方法にも関連し、これはフッ素含有基を含む高分子の層の製造を含む。
【0109】
前記方法は好ましくは、
a)基板に第1層を塗布する工程、および
b)少なくとも一つの第2層を塗布する工程
を含む。
【0110】
第1層は好ましくは、フッ化されたモノマーによる共重合または高分子に類似するフッ化によって成膜前に調製された部分的にフッ化された共重合体からなる、部分的にフッ化された正孔注入層である。
【0111】
好ましい実施形態において、使用される電極はインジウムスズ酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。これは、以後のフッ化膜との付着性の相互作用をさらに生じさせるため、CFプラズマ処理を用いて修飾されてもよい。
【0112】
第1層は同様に、好ましくはそれ自身発光層であり、あらかじめフッ化モノマーを使用することにより機能を付与され、PANIまたはPEDOT層または正孔注入中間層に塗布される。さらに、電子輸送または正孔遮断層が、その後、他の溶媒または同じ溶媒からさえ塗布されてもよい。
【0113】
本発明により使用される基板は、ガラスまたは高分子フィルムであり、好ましくはガラスである。
【0114】
さらに好ましい実施形態において、前記電極は、導電性の高分子であり、フッ素含有基は、基板への電極の塗布の前に導電性高分子に導入される。使用される導電性高分子は、好ましくは、上述した共役高分子PEDOTまたはPANIの1つであり、好ましくは、フッ素含有基を有する。導電性高分子の場合、フッ化は、先行技術に従った方法により行われ、例えば、フッ化モノマーの重合または完成した高分子のフッ化により行われる。フッ素含有基を含む構成要素は、好ましくは、部分的にフッ化された高分子またはフッ化もしくは過フッ化された側鎖を含む高分子、フッ化基を含むオリゴマー、フッ化された分子、またはこれらの組み合わせである。
【0115】
第2層は、好ましくは、高分子を含有する溶液から、例えばスピンコーティングまたはナイフコーティングによりコーティングすることにより塗布される。第2層に対して、部分的にフッ化された高分子、過フッ化された側鎖を含む高分子、フッ化基を含むオリゴマーまたはフッ化された分子が使用される。さらに、第2層が、電荷注入機能、発光機能、バリヤー機能または前記機能の組み合わせを有することが好ましい。この目的のために、例えば、対応する機能を有する上記で定義した共役高分子を使用するか、または対応するオリゴマーもしくは分子を使用することが可能である。上記で定義した発光体も同様に、本発明による方法において使用することが可能である。
【0116】
次に、一以上の付加的な層が、固定された層を部分的に溶解または膨張させることなく塗布された層に塗布される。この層の前記フッ素含有基は、強い分子間相互作用によって、塗布した物質の剥離を防ぎ、これは架橋反応の作用と同等である。
【0117】
さらに、例えば、正孔注入層または電子遮断層として機能するより厚い層はこの方法により製造されてよく、これらの層は色および有効性について最適化されてよい。さらに、このタイプの層の寿命は、改善された電子バリア機能(特にPEDOTの場合、下層へのより少ないトンネル効果)によって増加され得る。
【0118】
全ての付加的な層が首尾よく塗布された場合、陰極は、さらに、先行技術から既知の方法により塗布される。最後に、封止が行われ、水蒸気、酸素等の外部の影響からデバイスを保護する。
【0119】
次に、実例の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明するが、発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、図1および2に参照する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】フッ化された高分子の層を示す図。
【図2】層構造を示す図。
【0121】
実施形態:
例1:
図1に示される通り、フッ化された高分子の層は、連続的なスピンコーティングにより製造された。このために、テクノプリントによりあらかじめ加工されたITOによってその面積全体をコーティングした基板を購入した。前記ITOでコーティングされた基板を、クリーンルームで脱イオン化水および洗剤(Deconex 15 PF)で洗浄し、次にUV/オゾンプラズマ処理により活性化した。次に、クリーンルームでスピンコーティングにより、厚さ80nmを有するPEDOT層(PEDOTはH.C.Starck,Goslarからのポリチオフェン誘導体(Baytron(現在は「Clevios」)P VAI 4083sp.)である)を塗布し、残余の水を除去するため、180℃で10分乾燥した。次に20nmの高分子IL1をスピンコーティングによりアルゴン雰囲気下のグローブ・ボックス内で塗布した。
【0122】
この高分子は部分的にフッ化された共重合体である。WO 03/048225 A2に記載される通り、以下に示すモノマー(パーセントデータはmol%)を使用して、前記高分子をSuzuki重合により調製した。その高いトリフェニルアミン含有率のため、この高分子は溶液処理されるOLEDにおける中間層として適している、即ちそれは以降のステップで成膜されるバッファPEDOT/PSSHおよび高分子P1またはP2の間の中間層の役割を果たし、PEDOTからこの(または別の)更なる高分子層への効率的な正孔注入を確実にする。
【化8】

【0123】
5mg/mlの濃度を有する溶液からガラス基板上に前記高分子をスピンコーティングすることにより、20nmの層の厚さに必要とされるスピン速度を決定した。このために、デバイスの製造条件の下、グローブ・ボックス中で前記膜をスピンコーティングにより塗布し、180℃で1時間乾燥させた。層の厚さの測定はプロフィルメーター(Veeco InstrumentsによるDektat 3ST surface profiler)を使用して行い、これはメスを使用して膜に形成した切り込みの上を動き、力測定によりその深さを測定する針によって層の厚さを測定する。
【0124】
高分子IL1のスピン速度は:
IL1(トルエン中5mg/ml):ガラス上の20nmに対して2400rpmであった。
【0125】
比較例2:
層は例1と同様、連続的なスピンコーティングによって製造した。
【0126】
しかしながら、対応するフッ化されていない共重合体IL2を部分的にフッ化された高分子の代わりに使用した。この高分子もWO 03/048225 A2に記載される通り、以下に示すモノマー(パーセントデータはmol%)を使用してSuzuki重合により調製した。その高いトリフェニルアミン含有率のため、この高分子もまた溶液処理されたOLEDにおける中間層として適している、即ち、以降のステップで成膜されるバッファPEDOT/PSSHおよび高分子P1またはP2の間の中間層としての役割を果たし、PEDOTからこの(または別の)更なる高分子層への効率的な正孔注入を確実にする。
【化9】

【0127】
層の厚さ20nmに必要なスピン速度を例1と同様に決定した。高分子IL2について:
IL2(トルエン中5mg/ml):ガラス上の20nmに対して1810rpmであった。
【0128】
高分子P1およびP2について前記スピン速度を比較することにより、IL1に必要とされる前記スピン速度がIL2よりも有意に高いため、溶液IL1の凝集力がIL2よりも有意に大きいことが示された。
【0129】
例3
例1および2で使用される中間層高分子は、化学的に架橋可能な基(例えばオキセタン基)を含まない高分子であるため、図2に示される層構造の更なる構築は、最初に塗布された中間層が少なくとも部分的に再び洗い落とされることをもたらすであろう。高分子IL1およびIL2についてこれを調べるため、ガラスについて決定されたスピン速度でPEDOT上に層を形成し、180℃で1時間加熱することにより再び乾燥した。両方の高分子は(異なるスピン速度によって)同じ15nmの層の厚さを生じた。
【0130】
IL1(トルエン中5mg/ml)、PEDOT上に2400rpm:15nm
IL2(トルエン中5mg/ml)、PEDOT上に1810rpm:15nm
続いて前記層をトルエン(純粋な溶媒)で1000rpmのスピンコーティングによりコーティングした。前記部分的にフッ化された高分子IL1は強いフッ素−フッ素相互作用によって物理的に架橋されたかのように挙動し、それ故、再び溶解しなかったのに対して、IL2の50%以上が洗い流された。
【0131】
1000rpmでスピンコーティングによりトルエンでコーティングされたPEDOT上の15nmのIL1:15nm
1000rpmスピンコーティングによりトルエンでコーティングされたPEDOT上の15nmのIL2:6nmで
これは明らかに、部分的にフッ化された高分子の膜が、前記凝集性の相互作用によりもはや更なるコーティング工程において部分的に溶解または洗い落とされ得ず、一方で、フッ化されていない同じ高分子の膜は、非常に容易に部分的に溶解または洗い落とされる可能性があることを示す。
【0132】
例4:
次の目的は、フッ素−フッ素相互作用による物理的架橋へのアプローチが複数の層を同じ溶媒(トルエン)から順に重ねて成膜することにも適しているか否か試験することである。
【0133】
このために、図2に示す通り、80nmの高分子P1およびP2のそれぞれを、形成されたIL1およびIL2の層の上にコーティングした(トルエンから、5mg/ml、上記のスピン速度で、180℃で1時間)。WO 03/048225 A2に記載される通り、以下に示すモノマー(パーセントデータはmol%)を使用して高分子をSuzuki重合により調製した。
【化10】

【化11】

【0134】
共役ポリ−パラ−フェニレン骨格および低い割合のトリアリールアミン発光体のため、これらの高分子P1およびP2は青色発光高分子である。WO 03/048225 A2に記載される通り、同様にSuzuki重合によってそれらを調製した。8mg/mlの濃度のトルエン溶液を調製し、高分子層の厚さ80nmのためのガラス上でのスピン速度を決定した。次に、前記溶液を使用し、形成したIL1およびIL2の膜の上に層をコーティングした。コーティング後、180℃で10分間加熱することにより膜を乾燥した。
【0135】
以下の層の厚さの合計を決定した:
IL1とP1:95nmの層の厚さ(IL1の15nmプラスP1の80nm)
IL1とP2:95nmの層の厚さ(IL1の15nmプラスP2の80nm)
IL2とP1:86nmの層の厚さ(IL2の6nmプラスP1の80nm)
IL2とP2:86nmの層の厚さ(IL2の6nmプラスP2の80nm)
初めの2つのケースでは、高分子P1またはP2を中間層IL1(部分的にフッ化された高分子)に塗布し、中間層(15nm)とP1またはP2の高分子層の厚さ(80nm)との加算に相当する全体の層の厚さを得た。
【0136】
後者の2つのケースでは、高分子P1またはP2を中間層IL2(フッ化されていない共重合体)に塗布し、中間層(15nm)とP1またはP2の高分子層の厚さ(80nm)の合計よりも小さい全体の層の厚さを得た。すなわち、純粋な溶媒によるスピンコーティングによってコーティングする場合のように、中間層の少なくとも一部が前記高分子層の塗布の間に部分的に溶解し、洗い落とされた。
【0137】
例5:
部分的にフッ化された膜の物理的な架橋を再び試験するために、例4で得られた層を純粋なトルエンで、1000rpmのスピンコーティングにより再びコーティングした。
【0138】
トルエンによる処理の前後で、全体の層の厚さを決定した。結果を以下の表に示す:
【表1】

【0139】
表が示す通り、例5aおよび5cでは、「物理的な架橋」を生ずるフッ素−フッ素相互作用のため、高分子層のわずかな部分だけが洗い落された。このことは、下の層に関係なく各ケースで同じ量のフッ化された高分子P1が除去される(各ケースで19nm)という事実によって再度はっきり示される。
【0140】
対照的に、例5bおよび5dにおいては、フッ素−フッ素相互作用の欠如のため、高分子層の実質的に全体または全体が洗い流された。さらに例5dにおいて、フッ化されていない中間層の一部がさらに洗い落とされた。
【0141】
例6:
例1および2に示される通り、前記異なるスピン速度(同じ濃度に対して)は、鎖の異なる凝集性、およびその結果として、前記溶液の異なる粘度を示す。次に、逆に2つの溶液を同一のスピン条件でコーティングした。
【0142】
以下に示す層の厚さを得た:
IL1(トルエン中5mg/ml):2400rpm => ガラス上で20nm
IL2(トルエン中5mg/ml):2400rpm => ガラス上で15nm
前記結果が示す通り、フッ化されていない高分子IL2の場合、部分的にフッ化された高分子IL1の場合よりも多くの材料が有意にスピンオフし、IL1ではフッ素−フッ素相互作用がこれを防いでいる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有基を含む高分子を含む少なくとも一つの層を有する光電子デバイスであって、凝集性のフッ素−フッ素相互作用が少なくとも前記層のいくらかのフッ素含有基間に存在する光電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の光電子デバイスであって、前記層が電荷注入機能および/または電荷輸送機能を有する高分子を含むことを特徴とする光電子デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光電子デバイスであって、前記層が発光体機能を有する高分子を含むことを特徴とする光電子デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3の1項以上に記載の光電子デバイスであって、前記高分子が二以上の高分子の混合物であることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4の1項以上に記載の光電子デバイスであって、少なくとも1つの更なる層を有する光電子デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の光電子デバイスであって、前記更なる層が正孔注入機能、正孔輸送機能、正孔遮断機能、発光体機能、電子注入機能、電子遮断機能および/または電子輸送機能を有する高分子を含むことを特徴とする光電子デバイス。
【請求項7】
請求項5または6に記載の光電子デバイスであって、前記更なる層がフッ素含有基を含む高分子を含むことを特徴とする光電子デバイス。
【請求項8】
請求項6または7に記載の光電子デバイスであって、前記高分子が発光機能を有することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の光電子デバイスであって、前記発光機能を有する高分子が種々の波長の光を発光することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項10】
請求項6または7に記載の光電子デバイスであって、前記デバイスが発光体機能を有する複数の高分子の層を有する光電子デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の光電子デバイスであって、前記発光機能を有する複数の高分子の層のそれぞれが異なる波長の光を発光することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項12】
請求項9〜11の1項以上に記載の光電子デバイスであって、前記種々の光の波長が合わさって白色になることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項13】
請求項9〜12の1項以上に記載の光電子デバイスであって、前記デバイスが赤、緑および青の原色を有する3つの層を有することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項14】
請求項9〜13の1項以上に記載の光電子デバイスであって、前記層のうち少なくとも一つが一重項発光体を含むが、その他の層のうち少なくとも一つが三重項発光体を含むことを特徴とする光電子デバイス。
【請求項15】
請求項2〜14の1項以上に記載の光電子デバイスであって、前記デバイスが正孔輸送機能を有する高分子(いわゆる正孔伝導体)の複数の層を有し、前記正孔伝導体がエネルギー的に異なる最高被占軌道(HOMO)を有することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載の光電子デバイスであって、最後に塗布された正孔輸送機能を有する前記高分子層が、エネルギー的に高い最低空軌道(LUMO)を有することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項17】
請求項16に記載の光電子デバイスであって、最後に塗布された正孔輸送機能を有する前記高分子層が電子遮断層であることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項18】
請求項1〜17の1項以上に記載される光電子デバイスであって、前記デバイスが電子輸送機能を有する高分子(いわゆる電子伝導体)の複数の層を有し、前記電子伝導体がエネルギー的に異なる最低空軌道(LUMO)を有することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載の光電子デバイスであって、最初に塗布された電子輸送機能を有する前記高分子層がエネルギー的に低い最高被占軌道(HOMO)を有することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項20】
請求項19に記載の光電子デバイスであって、最初に塗布された電子輸送機能を有する前記高分子層が正孔遮断層であることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項21】
請求項1〜20の1項以上に記載の光電子デバイスであって、前記デバイスが小分子またはオリゴマーを含む層を有することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項22】
請求項1〜21の1項以上に記載の光電子デバイスであって、第1層のいくらかのフッ素含有基と前記少なくとも1つの更なる層との間に付着性のフッ素−フッ素相互作用が存在することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項23】
請求項1〜22の1項以上に記載の光電子デバイスであって、前記デバイスが陰極および陽極を有することを特徴とする光電子デバイス。
【請求項24】
請求項23に記載の光電子デバイスであって、前記陽極がインジウムスズ酸化物(ITO)層またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)層であることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項25】
請求項23に記載の光電子デバイスであって、前記陰極および/または陽極が導電性高分子であることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項26】
請求項23に記載の光電子デバイスであって、前記陽極がインジウムスズ酸化物(ITO)層またはインジウムスズ酸化物(IZO)層および導電性高分子の層からなることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項27】
請求項1〜24の1項以上に記載の光電子デバイスの有機または高分子発光ダイオードとしての、有機太陽電池としての、有機電界効果トランジスタとしての、有機集積回路としての、有機電界クエンチ素子(organic field-quench element)としての、有機光増幅器としての、有機レーザーダイオードとしての、有機受容体としての、または有機光ダイオードとしての使用。
【請求項28】
請求項27に記載の使用であって、ディスプレイ中、カラー、マルチカラー、またはフルカラーディスプレイ中のOLEDとしての、液晶ディスプレイ(LCD)中の照明素子またはバックライトとしての使用。
【請求項29】
請求項28に記載の使用であって、前記OLEDが白色発光OLEDであることを特徴とする使用。
【請求項30】
請求項1〜26の1項以上に記載の光電子デバイスの製造方法であって、フッ素含有基を含む高分子の層の製造を含む方法。
【請求項31】
1つ以上の溶媒中の1つ以上のフッ素含有高分子および/またはフッ素含有配合物および/またはフッ化小分子を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−501449(P2011−501449A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530345(P2010−530345)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009021
【国際公開番号】WO2009/053089
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】