説明

光電気複合モジュール

【課題】受発光素子の温度特性の向上を図ることが可能な光電気複合モジュールを提供する。
【解決手段】ガラスファイバ15が挿入される光ファイバ挿通孔14を有し、ガラスファイバ15の挿入方向前方側の固定面12aに電極13が設けられたフェルール12と、電極13と導通接続された状態にフェルール12の固定面12aに取り付けられた受発光素子16と、フェルール12が固定された回路基板32と、を備えた光電気複合モジュール11であって、受発光素子16の裏面側にヒートシンク31を有し、ヒートシンク31が回路基板32と接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送等に用いられる光電気複合モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
LSI間信号の高速化に伴い、電気による伝送ではノイズ、消費電力増加を解消することが困難となってきている。そこで、近年、LSI間を、電磁障害や周波数依存性損失が殆どない光通信で伝送する試みがなされている。
【0003】
この光伝送に用いられる光配線部品として、光素子チップ実装用の接続端面、接続端面に相対する対向端面、接続端面と対向端面を接続する複数の側面とで外形を定義される絶縁性の基体と、接続端面と対向端面間を貫通し、光ファイバ等の光伝送路を機械的に保持する保持穴の接続端面における開口部の近傍から、複数の側面の内の1側面上まで延長形成される複数の電気配線とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この光配線部品は、接続端面において、複数の電気配線と互いに交互に配置され、且つ1側面上まで延長形成され、接続端面上での長さが、複数の電気配線の接続端面上での長さより長いか、或いは、1側面上での長さが、複数の電気配線の1側面上での長さより長い複数の熱伝導ストリップを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−195699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の光配線部品は、光ファイバの固定および接続端面への受発光素子の固定強度向上、ならびに光ファイバと受発光素子との光学的な結合効率向上を目的として、受発光素子と基体であるフェルールとの間にアンダーフィル材と呼ばれる樹脂を埋め込むことが行われている。また、受発光素子への電力供給のための電気配線であるリードフレームからドライバICや回路基板の電極パッドにワイヤボンディングを行い、そのボンディングワイヤの保護としてポッティング材と呼ばれる樹脂で封止している。
【0006】
アンダーフィル材やポッティング材などの樹脂は上記目的のためには非常に有効ではあるが、熱伝導率が非常に小さいため、樹脂を介した放熱はほとんど行われず、受発光素子のメインの放熱経路としては、全て金属で構成される、受発光素子のパッド電極、フリップチップ用金バンプ、リードフレーム及びボンディングワイヤとなる。
ところが、これらの放熱経路は、その断面積が小さく、かつ、長いことから熱抵抗をなくすことはできず、そのため受発光素子においては10℃〜20℃程度の温度上昇が起き、上記のように熱伝導ストリップを設けても温度特性が劣化してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、受発光素子の温度特性の向上を図ることが可能な光電気複合モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明の光電気複合モジュールは、光ファイバが挿入される光ファイバ挿通孔を有し、前記光ファイバの挿入方向前方側の固定面に電極が設けられたフェルールと、前記電極と導通接続された状態に前記フェルールの前記固定面に取り付けられた受発光素子と、前記フェルールが固定された基板と、を備えた光電気複合モジュールであって、
前記受発光素子の裏面側にヒートシンクを有し、前記ヒートシンクが前記基板と接触していることを特徴とする。
【0009】
本発明の光電気複合モジュールにおいて、前記ヒートシンクが導電体であり、前記ヒートシンクと前記受発光素子との間または前記ヒートシンクと前記基板との間に、絶縁性を有する放熱シートを設けるのが好ましい。
【0010】
本発明の光電気複合モジュールにおいて、前記ヒートシンクが絶縁体であることが好ましい。
【0011】
本発明の光電気複合モジュールにおいて、前記基板における前記ヒートシンクの接触領域付近に複数のスルーホールが設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の光電気複合モジュールにおいて、前記スルーホールに、前記基板より熱伝導率の高い放熱材が埋め込まれていることが好ましい。
【0013】
本発明の光電気複合モジュールにおいて、前記基板における前記ヒートシンクの接触領域付近に、前記基板より熱伝導率の高い放熱材が埋め込まれていることが好ましい。
【0014】
本発明の光電気複合モジュールにおいて、前記基板への前記ヒートシンクの接触領域付近における前記ヒートシンクと反対側に、放熱用ヒートシンクが設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明の光電気複合モジュールにおいて、前記基板への前記ヒートシンクの接触領域付近における前記ヒートシンクと反対側に、放熱部材を介して筐体が接触されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受発光素子の裏面側にヒートシンクを有し、ヒートシンクが基板と接触しているので、受発光素子の熱がヒートシンクへ伝達され、さらにヒートシンクから基板へ伝達されて逃がされる。これにより、受発光素子の放熱性を大幅に向上させることができ、受発光素子の温度特性の向上を図ることができる。よって、出力の安定化及び伝送速度低下の防止を図り、高い信頼性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態例に係る光電気複合モジュールの断面図である。
【図2】図1の光電気複合モジュールを構成する複数の受発光素子の装着面側から視た平面図である。
【図3】図1の光電気複合モジュールの製造工程を示す図であって、(a)〜(e)は、それぞれ断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態例に係る光電気複合モジュールを示す図であって、(a)は光電気複合モジュールの断面図、(b)は回路基板の平面図である。
【図5】本発明の他の実施形態例に係る光電気複合モジュールを示す図であって、(a)は光電気複合モジュールの断面図、(b)は回路基板の平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態例に係る光電気複合モジュールの断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態例に係る光電気複合モジュールの断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態例に係る光電気複合モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る光電気複合モジュールの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る光電気複合モジュール11は、フェルール12を備えている。このフェルール12は、一方の端面が固定面12aとして形成されており、この固定面12aには、複数の電極13が設けられている。このフェルール12は、例えば、熱可塑性樹脂から形成されたものであり、複数の電極(リードフレーム)13とともに一体成形されたLFI(Lead Frame Inserted)フェルールである。
【0019】
このフェルール12には、光ファイバ挿通孔14が形成されており、この光ファイバ挿通孔14には、光ファイバ心線の端部から露出されたガラスファイバ(光ファイバ)15が後端側から挿入されている。このガラスファイバ15は、コア15aの外周をクラッド15bによって覆った構造とされている。光ファイバとしては、ガラスファイバの他、クラッドが樹脂のものなども使用できる。
【0020】
図2に示すように、受発光素子16は、フェルール12の固定面12aに複数配列されて設けられている。これらの受発光素子16は、ガリウム基板等の基材20に素子部17と端子部18とを備えており、端子部18には、金スタッドバンプからなるバンプ21が設けられている。受発光素子16は、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)などの発光素子やフォトダイオード(Photo Diode)などの受光素子である。受発光素子16の素子部17は、受発光素子16が発光素子である場合は発光部であり、受発光素子16が受光素子である場合は受光部である。
【0021】
この受発光素子16は、フェルール12の固定面12aに重ね合わせた状態で実装される。このとき、受発光素子16の各素子部17がフェルール12の光ファイバ挿通孔14の対向位置に配置され、また、端子部18が電極13に配置されてバンプ21を介して導通接続される。バンプ21による接続は、超音波振動あるいは熱によるフリップチップ接続で行われる。
【0022】
フェルール12には、後端12b側における一側面に、切欠き部23が形成されている。これにより、光ファイバ挿通孔14が切り欠かれて露出される。この切欠き部23には、接着剤として機能するエポキシ樹脂等のアンダーフィル材25が充填されている。このアンダーフィル材25は、切欠き部23からガラスファイバ15と光ファイバ挿通孔14との間にも入り込んでおり、このアンダーフィル材25によって、光ファイバ挿通孔14に挿入されたガラスファイバ15が接着されて固定されている。このアンダーフィル材25は、フェルール12の固定面12aと受発光素子16との間にも充填されており、このアンダーフィル材25によって受発光素子16とフェルール12とが強固に接合されている。このアンダーフィル材25は、フェルール12に対して熱処理を施すことにより硬化されている。
【0023】
フェルール12は、回路基板32に対して、例えばエポキシ樹脂等からなるダイボンド材35によって固定されてモジュール化されている。
【0024】
また、本実施形態に係る光電気複合モジュール11では、受発光素子16の裏面側にヒートシンク31が設けられている。このヒートシンク31は、受発光素子16側の面積が受発光素子16の裏面の面積よりも大きく形成されている。これにより、受発光素子16は、その裏面がヒートシンク31によって完全に覆われている。
【0025】
このヒートシンク31としては、銅(Cu)、タングステン(W)、銅タングステン合金(CuW)、モリブデン(Mo)、鉄にニッケル及びコバルトを配合したコバールなどが用いられる。
【0026】
これらの何れか一つまたは複数の材料から形成されたヒートシンク31は、導電体であるので、ヒートシンク31と受発光素子16との間に絶縁性を有する放熱シート33を設ける。このようにすると、受発光素子16と回路基板32との間における絶縁が確保され、伝送特性の劣化を防止することができる。また、ヒートシンク31と回路基板32との間には、銀ペースト34が塗布されており、ヒートシンク31と回路基板32との間における良好な熱伝達が図られている。なお、ヒートシンク31と受発光素子16との間に銀ペースト34を塗布し、ヒートシンク31と回路基板32との間に放熱シート33を設けても良い。
【0027】
また、このヒートシンク31としては、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al)、酸化ベリリウム(BeO)、炭化ケイ素(SiC)などの絶縁体、ならびにダイヤモンドなどの半絶縁性材料を用いても良い。特に、窒化アルミニウムであるアルミナイトライドは、熱伝導率及び電気絶縁性が高いのでヒートシンク31として用いるのに好適である。
【0028】
このような絶縁体を用いた場合、ヒートシンク31と受発光素子16及び回路基板32とのそれぞれの間に、銀ペースト34が塗布され、ヒートシンク31と受発光素子16及び回路基板32とのそれぞれの間における良好な熱伝達が図られている。このように、絶縁体からなるヒートシンク31を用いれば、ヒートシンク31と受発光素子16及び回路基板32とのそれぞれの間に銀ペースト34を塗布しても、受発光素子16と回路基板32との間が絶縁される。
【0029】
さらに、このヒートシンク31として、ケイ素(Si)、ガリウム砒素(GaAs)等の半導体を用いても良く、ガリウム砒素においては半絶縁性を有する場合は、ヒートシンク31と受発光素子16及び回路基板32とのそれぞれの間に銀ペースト34を塗布するとよい。ヒートシンク31が導電性を有する場合は、伝送特性を劣化させないために、ヒートシンク31と受発光素子16との間またはヒートシンク31と回路基板32との間に、絶縁性を有する放熱シート33を設けるとよい。
【0030】
なお、放熱シート33は安価であるので、モジュールのコストを低く抑えることができる。絶縁体のヒートシンク31を用いる場合では、放熱シート33を不要とすることができ、材料費及び製造費の両面でコストを抑えることができる。
【0031】
また、受発光素子16と同等(±10%〜20%)の熱膨張係数を持つヒートシンク31を選択することで熱応力を低減し、受発光素子16の信頼性を向上させることができる。ガリウム砒素(GaAs)をヒートシンク31に用いる場合は、半絶縁性のものを用いることで絶縁シート33が不要になり、熱応力を低減させると共に、コストを抑えることができる。ケイ素(Si)は価格も安く、しかも、熱膨張係数も受発光素子16に近く、熱応力を良好に抑えることができる。
【0032】
各材料の熱膨張係数、比抵抗及び熱伝導率を表1に示す。
【表1】

【0033】
回路基板32には電極パッド30が設けられ、この電極パッド30は、例えば、金(Au)からなるボンディングワイヤ36によってフェルール12の電極13に導通接続されている。また、回路基板32には、例えば、ドライバ、トランスインピーダンスアンプなどの光素子駆動ICである電子デバイス(図示省略)が実装されている。
【0034】
光電気複合モジュール11は、ボンディングワイヤ36が完全に埋まるようにポッティング材38が塗布されており、このポッティング材38によって、ボンディングワイヤ36及びその周囲が封止されて保護されている。
【0035】
上記の光電気複合モジュール11では、受発光素子16とガラスファイバ15との間で光伝送が行われる。発光素子からなる受発光素子16からガラスファイバ15へ光伝送が行われる場合では、受発光素子16の素子部17から発光された光がガラスファイバ15のコア15aへ入射することとなる。また、ガラスファイバ15から受光素子からなる受発光素子16へ光伝送が行われる場合では、ガラスファイバ15のコア15aから出射した光が受発光素子16の素子部17へ入射することとなる。
【0036】
そして、上記の光電気複合モジュールは、例えば、長距離機器配線用の光DVIケーブル、光USBケーブル、携帯電話用光配線、家庭用電化製品のネットワーク用の光HDMI、データサーバ間通信用の光InfiniBandケーブルあるいは車載情報機器通信用の車載用光ハーネスなどの様々なアクティブオプティカルケーブルや光配線部品として用いることができる。
【0037】
上記の光電気複合モジュール11を製造するには、まず、図3(a)に示すように、フェルール12の固定面12aと、金のバンプ21を有する面発光型半導体レーザ(VCSEL)またはフォトダイオードからなる受発光素子16とを用意し、温度200℃で超音波フリップチップにより受発光素子16をフェルール12に実装する。
【0038】
次に、図3(b)に示すように、フェルール12の光ファイバ挿通孔14に、切欠き部23からアンダーフィル材25を充填し、この光ファイバ挿通孔14へ機械的に位置決めするパッシブアライメントで位置決めしながらガラスファイバ15を挿し込み、接着剤26でガラスファイバ15を仮固定する。このとき、光ファイバ挿通孔14から染み出したアンダーフィル材25によって受発光素子16の表面が覆われるようにする。
【0039】
次いで、図3(c)に示すように、例えば、エポキシ系樹脂からなるダイボンド材35によってフェルール12を、ガラスエポキシ基板からなる回路基板32上にダイボンドして実装し、アンダーフィル材25及びダイボンド材35を硬化させるために、温度120℃で30分間の熱処理を行う。
【0040】
さらに、図3(d)に示すように、受発光素子16の裏面側にヒートシンク31を取り付ける。なお、ヒートシンク31として導電体を用いる場合は、ヒートシンク31受発光素子16との間またはヒートシンク31と回路基板32との間に、絶縁性を有する放熱シート33を設ける。また、ヒートシンク31として絶縁体を用いる場合は、ヒートシンク31と受発光素子16及び回路基板32とのそれぞれの間に銀ペースト34を塗布する。銀ペースト34は100℃で30分間の熱処理で硬化させる。
【0041】
その後、図3(e)に示すように、金からなるボンディングワイヤ36によって電極パッド30とフェルール12の電極13とを導通接続させる。なお、ボンディングワイヤ36によるワイヤボンディングでは、回路基板32が約175℃で約15分加熱される。
【0042】
最後に、ボンディングワイヤ36が完全に埋まるようにポッティング材38を塗布し、ポッティング材38によってボンディングワイヤ36及びその周囲を封止し(図1参照)、アンダーフィル材25及びポッティング材38を硬化させるために、150℃で30分間の熱処理を行う。
【0043】
フェルール12に実装された受発光素子16は、その大半が熱伝導率の小さい樹脂に覆われているため放熱性が低い。このため、受発光素子16の熱を放熱しないと、その素子部17の温度が数十度上昇し、出力低下や伝送速度低下などの温度特性の劣化を招き、信頼性も低下してしまう。
【0044】
本実施形態に係る光電気複合モジュール11によれば、受発光素子16の裏面側にヒートシンク31を有し、ヒートシンク31が回路基板32と接触しているので、受発光素子16の熱がヒートシンク31へ伝達され、さらにヒートシンク31から回路基板32へ伝達されて逃がされる。これにより、受発光素子16の放熱性を大幅に向上させることができ、受発光素子16の温度特性の向上を図ることができる。よって、出力の安定化及び伝送速度低下の防止を図り、高い信頼性を維持することができる。
【0045】
次に、光電気複合モジュール11の他の実施形態例について説明する。なお、図4から図8において、ボンディングワイヤ36及びポッティング材38は図1と同様に設けられるものであるが、図示を省略する。
【0046】
図4に示すように、この光電気複合モジュール11は、回路基板32におけるヒートシンク31の接触領域付近に複数のスルーホール45が設けられている。スルーホール45は、それぞれ100μm以下の径とするのが好ましい。
【0047】
この光電気複合モジュール11によれば、回路基板32に設けたスルーホール45が放熱経路となり、このスルーホール45の空洞からヒートシンク31の熱を容易に回路基板32の裏面側へ逃がすことができる。回路基板32として、放熱効果が高い窒化アルミニウム製の回路基板32を用いずに安価なガラスエポキシ基板を用いたとしても、受発光素子16の放熱効果を高めることができる。また、回路基板32にスルーホール45を形成するだけの構造であるので、コストも極力抑えることができる。
【0048】
図5に示すように、この光電気複合モジュール11は、回路基板32におけるヒートシンク31の接触領域付近に設けたスルーホール45に、回路基板32より熱伝導率の高い放熱材46が埋め込まれている。この放熱材46としては、ヒートシンク31と同様に、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al)、酸化ベリリウム(BeO)、炭化ケイ素(SiC)などの絶縁体を用いることが好ましい。
【0049】
この光電気複合モジュール11によれば、スルーホール45に埋め込んだ放熱材46によってヒートシンク31の熱をさらに良好に回路基板32の裏面側へ逃がすことができ、受発光素子16の放熱効果を高めることができる。
【0050】
図6に示すように、この光電気複合モジュール11は、回路基板32におけるヒートシンク31の接触領域付近に回路基板32より熱伝導率の高い放熱材47が埋め込まれている。この放熱材47としては、ヒートシンク31と同様に、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al)、酸化ベリリウム(BeO)、炭化ケイ素(SiC)などの絶縁体を用いるのが好ましい。
【0051】
この光電気複合モジュール11によれば、回路基板32に埋め込んだ放熱材47を放熱経路とし、この放熱材47によってヒートシンク31の熱を容易にかつ良好に回路基板32の裏面側へ逃がすことができ、回路基板32として、放熱効果が高い窒化アルミニウム製の回路基板32を用いずに安価なガラスエポキシ基板を用いたとしても、受発光素子16の放熱効果を高めることができる。
【0052】
図7に示すように、この光電気複合モジュール11は、回路基板32においてヒートシンク31の接触領域付近におけるヒートシンク31を有する側と反対側に、放熱材47を介して放熱用ヒートシンク51が設けられている。放熱用ヒートシンク51は、露出された表面積が大きくなるように複数の放熱用フィンを有する。
【0053】
この光電気複合モジュール11によれば、ヒートシンク31からの熱を回路基板32に設けた放熱用ヒートシンク51から外部へ極めて良好に放出させることができる。これにより、受発光素子16の放熱効果をさらに高めることができる。
【0054】
図8に示すように、この光電気複合モジュール11は、回路基板32においてヒートシンク31の接触領域付近におけるヒートシンク31を有する側と反対側に、放熱材47を介するとともに、回路基板32よりも熱伝導性の高い材料からなるヒートシンクや放熱シート等の放熱部材52を介して、金属板または樹脂から形成された筐体53が接触されている。
【0055】
この光電気複合モジュール11によれば、ヒートシンク31からの熱を回路基板32に接触させた放熱部材52及び筐体53へ伝達させて、極めて良好に放出させることができる。これにより、受発光素子16の放熱効果をさらに高めることができる。特に、回路基板32に放熱用ヒートシンク51を設けることができない場合であっても、極めて良好な放熱効果を得ることができる。
【0056】
また、放熱用ヒートシンク51を設けた光電気複合モジュール11では、放熱用ヒートシンク51をさらに筐体53に接触させることが好ましく、このようにすると、放熱用ヒートシンク51の熱も筐体53へ伝達させて放出させることができ、放熱効果をより一層高めることができる。
【0057】
なお、上記の実施形態では、ガラスエポキシ基板からなる回路基板32を用いたが、回路基板32として窒化アルミニウム(AlN)から形成されたものを用いて、回路基板32からの放熱効果をさらに高めるようにしても良い。
【0058】
また、受発光素子16の裏面に設けるヒートシンク31及び回路基板32の裏面に設ける放熱用ヒートシンク51は、体積が大きいほど放熱性を向上させることができるが、ボンディングワイヤ36によるワイヤボンディング及び筐体53内における収容スペース等でサイズが制限されることとなる。つまり、これらのヒートシンク31及び放熱用ヒートシンク51としては、高熱伝導率を有する材質から形成し、ワイヤボンディングによる制限及び収容スペースによる制限下において極力大きいサイズにすることが好ましい。
【0059】
一例として、1チャンネルの面発光型半導体レーザ(VCSEL)の受発光素子16は、幅250μm、高さ350μmであり、回路基板32上のフェルール12の高さが1mmである。また、フェルール12の固定面12aから電極パッド30上のボンディングワイヤ36の接続箇所までの距離は1mm以内である。この場合、ヒートシンク31の大きさは、フェルール12の光軸方向に500μm以下、回路基板32上の高さが700〜800μm程度が最大となる。また、受発光素子16を12チャンネルのVCSELとした場合、その幅は3mm程度であるので、ヒートシンク31の幅もこの程度まで大きくできる。
【実施例】
【0060】
構造が異なる比較例1及び実施例1〜7の8種類の光電気複合モジュール11に対して、25℃において6mAでの波長スペクトル(面発光型半導体レーザ(VCSEL)の発振波長(設計波長850nm))を測定した。なお、モジュール化する前に受発光素子16単体でも波長スペクトルを各々測定し、スペクトルの最長波長(基本モード)の差からモジュール化による温度増加分を算出した。温度算出には波長の温度依存性として「0.06nm/K」を用いた。
【0061】
(測定対象の光電気複合モジュールの製造方法)
フェルール12の固定面12aと、金のバンプ21を有する面発光型半導体レーザ(VCSEL)からなる受発光素子16とを用意し、温度200℃で超音波フリップチップにより受発光素子16をフェルール12に実装した。
【0062】
次に、フェルール12の光ファイバ挿通孔14に、切欠き部23からアンダーフィル材25を充填し、この光ファイバ挿通孔14へ機械的に位置決めするパッシブアライメントで位置決めしながらガラスファイバ15を挿し込み、接着剤26でガラスファイバ15を仮固定した。このとき、光ファイバ挿通孔14から染み出したアンダーフィル材25によって受発光素子16の表面が覆われるようにした。
【0063】
次いで、エポキシ系樹脂からなるダイボンド材35によってフェルール12を、ガラスエポキシ基板からなる回路基板32上にダイボンドして実装し、ダイボンド材35を硬化させるために、温度120℃で30分間の熱処理を行った。
【0064】
受発光素子16に電力供給できるように回路基板32上に形成されているパッド電極30とフェルール12の電極13とを金ワイヤからなるボンディングワイヤ36によって導通接続させた。
【0065】
ボンディングワイヤ36の保護のため、パッド電極30からフェルール12の電極13までのボンディングワイヤ36及び受発光素子16が完全に埋もれるようにポッティング材38を塗布し、アンダーフィル材25及びポッティング材38を硬化させるために、150℃で30分間の熱処理を実施した。
【0066】
(光電気複合モジュールの放熱構造)
(比較例1)
受発光素子16の裏面側にヒートシンクを設けず、特に放熱構造を持たない。
【0067】
(実施例1)
受発光素子16の裏面側にヒートシンク31を取り付けた。ヒートシンク31として、銅タングステン合金(CuW)からなる導電体を用い、ヒートシンク31と受発光素子16との間に放熱シート33を設け、ヒートシンク31と回路基板32との間に銀ペースト34を塗布した。銀ペースト34は100℃で30分間の熱処理で硬化させた。
【0068】
(実施例2)
受発光素子16の裏面側にヒートシンク31を取り付けた。ヒートシンク31として、窒化アルミニウム(AlN)からなる絶縁体を用い、受発光素子16及び回路基板32とヒートシンク31との間に銀ペースト34を塗布した。銀ペースト34は100℃で30分間の熱処理で硬化させた。
【0069】
(実施例3)
受発光素子16の裏面側にヒートシンク31を取り付けた。ヒートシンク31として、窒化アルミニウム(AlN)からなる絶縁体を用い、受発光素子16及び回路基板32とヒートシンク31との間に銀ペースト34を塗布した。銀ペースト34は100℃で30分間の熱処理で硬化させた。また、回路基板32におけるヒートシンク31の接触領域付近に複数のスルーホール45を設けた。
【0070】
(実施例4)
受発光素子16の裏面側にヒートシンク31を取り付けた。ヒートシンク31として、窒化アルミニウム(AlN)からなる絶縁体を用い、受発光素子16及び回路基板32とヒートシンク31との間に銀ペースト34を塗布した。銀ペースト34は100℃で30分間の熱処理で硬化させた。また、回路基板32におけるヒートシンク31の接触領域付近に複数のスルーホール45を設け、スルーホール45に、熱伝導率の高い放熱材46を埋め込んだ。
【0071】
(実施例5)
受発光素子16の裏面側にヒートシンク31を取り付けた。ヒートシンク31として、窒化アルミニウム(AlN)からなる絶縁体を用い、受発光素子16及び回路基板32とヒートシンク31との間に銀ペースト34を塗布した。銀ペースト34は100℃で30分間の熱処理で硬化させた。また、回路基板32におけるヒートシンク31の接触領域付近に熱伝導率の高い放熱材47を埋め込んだ。
【0072】
(実施例6)
受発光素子16の裏面側にヒートシンク31を取り付けた。ヒートシンク31として、窒化アルミニウム(AlN)からなる絶縁体を用い、受発光素子16及び回路基板32とヒートシンク31との間に銀ペースト34を塗布した。銀ペースト34は100℃で30分間の熱処理で硬化させた。また、回路基板32におけるヒートシンク31の接触領域付近に熱伝導率の高い放熱材47を埋め込んだ。さらに、回路基板32へのヒートシンク31の接触領域付近におけるヒートシンク31と反対側に、放熱用ヒートシンク51を設けた。
【0073】
(実施例7)
受発光素子16の裏面側にヒートシンク31を取り付けた。ヒートシンク31として、窒化アルミニウム(AlN)からなる絶縁体を用い、受発光素子及び回路基板とヒートシンク31との間に銀ペーストを塗布した。銀ペースト34は100℃で30分間の熱処理で硬化させた。また、回路基板32におけるヒートシンク31の接触領域付近に熱伝導率の高い放熱材47を埋め込んだ。さらに、回路基板32へのヒートシンク31の接触領域付近におけるヒートシンク31と反対側に、放熱部材52を介して筐体53を接触させた。
【0074】
(試験結果)
上記のように、放熱構造が異なる8種類の光電気複合モジュールに対して、25℃において6mAでの波長スペクトルを測定した結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2に示すように、比較例1では、約1.2nmの波長変動Δλがあり、モジュール化後に約20℃の温度上昇ΔTが認められた。
【0077】
これに対して、実施例1〜2では、受発光素子16の裏面にヒートシンク31を設けることで、比較例1に対して温度上昇ΔTを約2℃〜5℃低下させることができた。
【0078】
また、回路基板32にスルーホール45を設けた実施例3、回路基板32にスルーホール45を設けて放熱材46を埋め込んだ実施例4及び回路基板32に放熱材47を埋め込んだ実施例5では、受発光素子16からの放熱経路が確保されたことで、比較例1に対して温度上昇ΔTを約10℃〜15℃低下させることができた。
【0079】
そして、回路基板32の裏面に放熱用ヒートシンク51を設けた実施例6及び回路基板32の裏面を筐体53に接触させた実施例7では、モジュール化による温度上昇ΔTをほぼ無くすことができた。
【0080】
このように、受発光素子16の裏面にヒートシンク31を設け、回路基板32内に放熱経路を設け、更に、回路基板32の裏面にも放熱経路を設けることにより、放熱性を大幅に向上させることが可能となり、光電気複合モジュール11における受発光素子16の温度上昇を略無くすことができた。これにより、温度特性に優れた高品質及び高信頼性を有する光電気複合モジュール11を得ることができた。
【符号の説明】
【0081】
11:光電気複合モジュール、12:フェルール、12a:固定面、13:電極、14:光ファイバ挿通孔、15:ガラスファイバ(光ファイバ)、16:受発光素子、31:ヒートシンク、32:回路基板(基板)、33:放熱シート、45:スルーホール、46,47:放熱材、51:放熱用ヒートシンク、52:放熱部材、53:筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバが挿入される光ファイバ挿通孔を有し、前記光ファイバの挿入方向前方側の固定面に電極が設けられたフェルールと、前記電極と導通接続された状態に前記フェルールの前記固定面に取り付けられた受発光素子と、前記フェルールが固定された基板と、を備えた光電気複合モジュールであって、
前記受発光素子の裏面側にヒートシンクを有し、前記ヒートシンクが前記基板と接触していることを特徴とする光電気複合モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光電気複合モジュールであって、
前記ヒートシンクが導電体であり、前記ヒートシンクと前記受発光素子との間または前記ヒートシンクと前記基板との間に、絶縁性を有する放熱シートを設けたことを特徴とする光電気複合モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の光電気複合モジュールであって、
前記ヒートシンクが絶縁体であることを特徴とする光電気複合モジュール。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の光電気複合モジュールであって、
前記基板における前記ヒートシンクの接触領域付近に複数のスルーホールが設けられていることを特徴とする光電気複合モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の光電気複合モジュールであって、
前記スルーホールに、前記基板より熱伝導率の高い放熱材が埋め込まれていることを特徴とする光電気複合モジュール。
【請求項6】
請求項1から3の何れか一項に記載の光電気複合モジュールであって、
前記基板における前記ヒートシンクの接触領域付近に、前記基板より熱伝導率の高い放熱材が埋め込まれていることを特徴とする光電気複合モジュール。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の光電気複合モジュールであって、
前記基板への前記ヒートシンクの接触領域付近における前記ヒートシンクと反対側に、放熱用ヒートシンクが設けられていることを特徴とする光電気複合モジュール。
【請求項8】
請求項1から6の何れか一項に記載の光電気複合モジュールであって、
前記基板への前記ヒートシンクの接触領域付近における前記ヒートシンクと反対側に、放熱部材を介して筐体が接触されていることを特徴とする光電気複合モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−230218(P2012−230218A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97884(P2011−97884)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】