説明

光電池用シート

本発明は、光電池用シートに関する。本発明の光電池用シートは、シリコーン樹脂;及び400nmの波長の光に対する屈折率が1.55以上の高屈折フィラーを含む樹脂層を有する。前記シリコーン樹脂は、珪素原子に結合しているアリール基を含み、前記シリコーン樹脂に含まれる全体の珪素原子に対する前記アリール基のモル比は、0.3を超過することが好ましい。本発明では、優れた耐熱性、耐光性、耐候性、耐湿性及絶縁性を有し、光電池モジュールに適用されて集光効率を向上させることができる光電池用シートを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電池用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
光電池は、太陽電池とも呼ばれるもので、光を電気に転換させることができる半導体装置である。光電池は、光に露出されると、電圧を発生させて後続的な電子の流れを誘発する。その電子の流れの大きさは電池表面に形成された光電池接合部に対する光の衝突強度に比例する。
【0003】
光電池の代表的な種類には、シリコーンウェハ系光電池及び薄膜型光電池などがある。シリコーンウェハ系光電池は、単結晶または多結晶シリコーンインゴット(ingot)を使用して製造した光電変換素子を使用し、薄膜型光電池での光電変換素子は、スパッタリングまたは蒸着などの方式で基板または強誘電体などに沈着させて形成する。
【0004】
シリコーンウェハ系光電池及び薄膜型光電池は、いずれも脆性を有するので、耐荷重支持部材が要求される。前記支持部材は、光電池の上部に配置される光透過性の上部層であるか、あるいは光電池の裏面に配置される背面層であってもよい。
【0005】
一般的に、光電池の裏面に配置される背面層は、強直性バックスキン形態である。このような背面層に適用できる多様な材料は公知にされており、その例としては、ガラスのような強誘電体、アルミニウムなどのような金属箔、有機フッ素系重合体または前記有機フッ素系重合体のフィルムや金属箔などが積層されているポリエステル系高分子フィルムなどが含まれる。
【0006】
特に、ポリエチレンテレフタルレートなどのような高分子基材に有機フッ素系重合体のシートが積層された構造、または有機フッ素系重合体を前記高分子基材にコーティングしてコーティング層を形成した構造の基材が最もよく使われる。このような素材は、単独でモジュールに適用するか、SiOxなどのような珪素系または酸素系材料で被覆された状態で適用することができる。
【0007】
しかし、現在使われているフッ素系シートは、機械的強度及びモジュールの封止材や高分子基材との接着力が落ちるので、長期間使用時に耐久性の問題が発生する。また、前記フッ素系シートは、加工性が落ちて、価格も非常に高価である。また、フッ素系重合体をコーティングした高分子基材の場合にも、フッ素系重合体自体のコーティング性が良くないため、形成されたコーティング層も高分子基材との接着性が落ちるという短所を相変わらず有している。
【0008】
また、ポリオレフェン系樹脂を使用して積層フィルムを製造する技術も知られているが、この場合にも耐熱性、耐光性及び耐候性などが不十分であり、長期間の信頼性を要求する背面層には不適合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、前記のような従来の諸問題点を解消するために提案されたものであって、本発明の目的は、光電池用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シリコーン樹脂及び400nmの波長の光に対する屈折率が1.55以上の高屈折フィラーを含む樹脂層を有する光電池用シート関する。一例として、前記光電池用シートは、光電池モジュールの裏面シートで使うことができる。
【0011】
以下、本発明の光電池用シートについて具体的に説明する。
【0012】
本発明において、樹脂層に含まれるシリコーン樹脂は、封止材などのようにモジュールに含まれる多様な部品及び素材に対して優れた接着性を示し、耐湿性、耐候性及び耐光性などが優れて、特に、モジュールの集光効率を格段に改善することができる。
【0013】
前記シリコーン樹脂は、好ましくは、アリール基、具体的には、珪素原子に結合されているアリール基を含むシリコーン樹脂であり、このような樹脂は、耐湿性、耐候性、接着特性などが優れて、集光効率が優れた樹脂層を形成することができる。珪素原子に結合されるアリール基の具体的な種類は特別に制限されないが、好ましくは、フェニル基である。
【0014】
本発明のシリコーン樹脂では、前記シリコーン樹脂の全体の珪素原子(Si)に対する前記珪素原子に結合されているアリール基(Ar)のモル比(Ar/Si)は0.3を超過し、好ましくは、0.5を超過し、より好ましくは、0.7以上である。前記モル比(Ar/Si)が0.3を超過するようにすることで、樹脂層の耐湿性、耐候性及び硬度などを優秀に維持し、光電池モジュールの集光効率を高めることができる。本発明では、前記モル比(Ar/Si)の上限は制限されず、例えば、1.5以下または1.2以下である。
【0015】
一例として、前記シリコーン樹脂は、下記化学式1の平均組成式で表示することができる。
【0016】
[化学式1]
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)
【0017】
前記化学式1において、Rは、珪素原子に直接結合している置換基であって、各々独立的に、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基を示し、Rの中で少なくとも一つは、アリール基を示し、aは、0乃至0.6であり、bは、0乃至0.95であり、cは、0乃至0.8であり、dは、0乃至0.4である。但し、a+b+c+dは、1であり、b及びcは同時に0ではない。
【0018】
本発明において、シリコーン樹脂が特定の平均組成式で表示される場合は、単一のシリコーン樹脂が特定平均組成式で表示される場合だけではなく、多数の樹脂成分が存在するが、各樹脂成分の組成の平均を取ると、特定の平均組成式で表示される場合も含む。
【0019】
前記化学式1において、Rは、珪素原子に直接結合されている置換基であり、各々のRは互いに同一であるかまたは相異なっていることがあり、独立的に、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基を示し、必要によって、一つまたは二つ以上の置換基により置換されている。
【0020】
前記化学式1において、アルコキシは、炭素数1乃至12、好ましくは、1乃至8、より好ましくは、1乃至4の直鎖状、分枝状または環状アルコキシであり、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、または tert−ブトキシなどを含む。
【0021】
また、前記1価炭化水素基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基またはアリール基である。
【0022】
前記アルキル基は、炭素数1乃至12、好ましくは、1乃至8、より好ましくは、1乃至4の直鎖状、分枝状または環状アルキル基であり、好ましくは、メチル基である。
【0023】
また、前記アルケニル基は、炭素数2乃至12、好ましくは、2乃至8、より好ましくは、2乃至4のアルケニル基であり、好ましくは、ビニル基である。
【0024】
また、前記アリール基は、炭素数6乃至18、好ましくは、炭素数6乃至12のアリール基であり、好ましくは、フェニル基である。
【0025】
また、前記アリールアルキル基は、炭素数6乃至19、好ましくは、炭素数6乃至13のアリールアルキル基であり、例えば、ベンジル基である。
【0026】
前記化学式1において、Rのうち少なくとも一つは、アリール基、好ましくは、フェニル基であり、前記置換基は、上述のモル比(Ar/Si)を満足するようにシリコーン樹脂内に含まれる。
【0027】
また、前記化学式1において、Rのうち少なくとも一つは、好ましくは、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基またはビニル基であり、より好ましくは、エポキシ基である。このような官能基は、封止材との接着特性などを一層向上させることができる。
【0028】
前記化学式1において、a、b、c及びdは、各シロキサン単位のモル分率を示し、その合計は1である。また、前記化学式1において、aは、0乃至0.6、好ましくは、0乃至0.5であり、bは、0乃至0.95、好ましくは、0乃至0.8であり、cは、0乃至0.8、好ましくは、0乃至0.7であり、dは、0乃至0.4、好ましくは、0乃至0.2である。但し、b及びcは同時に0ではない。
【0029】
本発明で前記化学式1のシリコーン樹脂は、下記化学式2及び3で表示されるシロキサン単位からなる群より選択された一つ以上の物質を含む。
【0030】
[化学式2]
SiO2/2
【0031】
[化学式3]
SiO3/2
【0032】
前記化学式2及び3において、R及びRは、各々独立的にアルキル基またはアリール基を示し、R及びRのうち少なくとも一つは、アリール基であり、Rは、アリール基を示す。
【0033】
前記化学式2のシロキサン単位は、少なくとも一つの珪素原子に結合されたアリール基を含むシロキサン単位であり、前記アリール基は、好ましくは、フェニル基である。また、前記化学式2のシロキサン単位に含まれるアルキル基は、好ましくは、メチル基である。
【0034】
本発明では、前記化学式2のシロキサン単位は、好ましくは、下記化学式4及び化学式5のシロキサン単位からなる群より選択される一つ以上の物質である。
【0035】
[化学式4]
(C)(CH)SiO2/2
【0036】
[化学式5]
(C)SiO2/2
【0037】
また、前記化学式3は、珪素原子に結合されているアリール基を含む3官能性のシロキサン単位であり、好ましくは、下記化学式6で表示されるシロキサン単位である。
【0038】
[化学式6]
(C)SiO3/2
【0039】
本発明のシリコーン樹脂において、好ましくは、前記樹脂に含まれる全ての珪素原子に結合されたアリール基が前記化学式2または3のシロキサン単位に含まれており、この場合、前記化学式2の単位は、化学式4または化学式5の単位であり、前記化学式3の単位は、前記化学式6の単位である。
【0040】
本発明において、前記シリコーン樹脂は、分子量が300乃至100,000、好ましくは、500乃至100,000である。樹脂の分子量を前記のように調節することで、封止材が優れた硬度を有し、工程性も優秀に維持される。本発明で、特定しない限り、用語「分子量」は、重量平均分子量(Mw:Weight Average Molecular Weight)を示す。また、前記重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定された標準ポリスチレンに対する換算数値である。
【0041】
本発明の一つの例示において、前記シリコーン樹脂は、下記化学式7乃至20で表示されるシリコーン樹脂の中でいずれの一つの樹脂であるが、これに制限されるものではない。
【0042】
[化学式7]
(ViMeSiO1/2)(MePhSiO2/2)30
【0043】
[化学式8]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO2/2)10(MeSiO2/2)10
【0044】
[化学式9]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO2/2)15(MeSiO2/2)15(MeEpSiO2/2)
【0045】
[化学式10]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO3/2)10
【0046】
[化学式11]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO3/2)10(MeSiO3/2)
【0047】
[化学式12]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO3/2)10(MeEpSiO2/2)
【0048】
[化学式13]
(HMeSiO1/2)(PhSiO3/2)10
【0049】
[化学式14]
(ViMeSiO1/2)(EpSiO3/2)(MePhSiO2/2)20
【0050】
[化学式15]
(HMeSiO1/2)(PhSiO3/2)10(MeEpSiO2/2)
【0051】
[化学式16]
(HMeSiO1/2)(PhSiO2/2)1.5
【0052】
[化学式17]
(PhSiO3/2)10(MePhSiO2/2)10(MeSiO2/2)10
【0053】
[化学式18]
(PhSiO3/2)(EpMeSiO2/2)(MeSiO2/2)10
【0054】
[化学式19]
(PhSiO3/2)(AcSiO3/2)(MePhSiO2/2)10
【0055】
[化学式20]
(PhSiO3/2)10(AcSiO3/2)(ViMeSiO1/2)
【0056】
前記化学式7乃至20において、Meは、メチル基を示し、Phはフェニル基を示し、Acは、アクリロイル基を示し、Epは、エポキシ基を示す。
【0057】
本発明の前記樹脂層は、前記シリコーン樹脂とともに高屈折フィラーを追加で含む。用語「高屈折フィラー」は、400nmの波長の光に対する屈折率が1.55以上のフィラーを意味する。このような高屈折フィラーを含むことで、樹脂層による集光効率を一層向上させることができる。
【0058】
本発明の高屈折フィラーの種類は、上述の特性を示すものであれば、特別に制限されないが、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化インジウム、酸化柱石、酸化インジウム柱石、酸化亜鉛、珪素、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムまたは酸化マグネシウムなどの1種または2種以上である。
【0059】
本発明の前記高屈折フィラーは、平均粒径が40nm乃至100,000nm、好ましくは、40nm乃至50,000nm、より好ましくは、200nm乃至10,000nmである。高屈折フィラーの平均粒径を40nm以上にすることで、前記フィラーを樹脂層に均一に分散させることができ、100,000nm以下にすることで、工程性及び接着特性を卓越して維持することができる。
【0060】
本発明の樹脂層は、前記高屈折フィラーを上述のシリコーン樹脂100重量部に対して、0.1重量部乃至70重量部、好ましくは、0.1重量部乃至50重量部で含む。本明細書で単位重量部は重量の割合を意味する。本発明では、高屈折フィラーの含量を0.1重量部以上にすることで、入射された光の反射効果を向上させて、70重量部以下にすることで、工程及び接着特性を効果的に維持することができる。
【0061】
本発明の前記樹脂層は、必要によって、この分野の公知の成分を追加で含むことができる。このような成分の例としては、各種熱可塑性樹脂、難燃剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、ガラス・ファイバー、ガラスビッド、または光学増白剤などを挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0062】
また、本発明の光電池用シートは、基材を追加で含み、前記樹脂層が前記基材上に形成されている。この場合、前記樹脂層は、前記基材上にラミネート方式で積層されるか、あるいはコーティング方式で形成されたコーティング層であり、好ましくは、コーティング層である。
【0063】
図1は、本発明の例示的な光電池用シート1を示す模式図である。図1に示したように、光電池用シート1は、基材12及び前記基材上に形成された樹脂層11を含む。前記基材の種類は、特別に制限されない。例えば、前記基材として、アルミニウムなどのような各種金属箔(metal foil)、フッ化ビニル(Vf:vinyl fluoride)またはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE:ethylene tetrafuloroethylene)などを重合単位で含むフッ素系重合体フィルム、またはポリエチレンテレフタルレート(PET:polyethyleneterephthalate)などのポリエステル系フィルムなどを使うことができ、必要によっては、前記素材の中で2種以上が積層された基材を使ってもよい。本発明において、前記基材の厚さは特別に制限されない。また、前記基材には、前記樹脂層との接着力やバリアー性の改善などの観点から、酸化珪素層(SiOx)や、その他のプライマー層またはバリアー層などが形成されてもよい。
【0064】
また、本発明のシートは、図2に示したように、基材12上に形成された前記樹脂層11を含み、また他の面に形成された樹脂層23を追加で含むことができる。前記他の面に形成される樹脂層23は、上述の樹脂層11と同一な樹脂層であるか、あるいは他の素材で形成される樹脂層であってもよい。
【0065】
また、本発明は、シリコーン樹脂またはシリコーン樹脂を形成することができる珪素系材料及び400nmの波長の光に対する屈折率が1.55以上の高屈折フィラーを含む液状のコーティング液をコーティングし、コーティングされた材料を硬化または乾燥させる段階を経て樹脂層を形成する過程を含む光電池用シートの製造方法に関する。
【0066】
具体的に、本発明の光電池用シートは、上述のようなシリコーン樹脂またはそのような樹脂を形成することができる珪素系材料を高屈折フィラーとともに含む液状のコーティング液を、例えば、基材上にコーティングして、これを硬化または乾燥させる段階を経て樹脂層を形成することで製造することができる。
【0067】
前記シリコーン樹脂を形成することができる珪素系成分の種類は、特別に制限されず、この分野で公知である多様な成分を制限なしに採用することができる。例えば、前記成分は、付加硬化型シリコーン系材料、縮合または重縮合硬化型シリコーン系材料、紫外線硬化型シリコーン系材料または過酸化物加硫型シリコーン系材料などであり、好ましくは、付加硬化型シリコーン系材料、縮合または重縮合硬化型シリコーン系材料または紫外線硬化型シリコーン系材料である。
【0068】
付加硬化型シリコーン系材料は、水素珪素化反応(hydro silylation)を通じて硬化する材料である。この材料は、珪素原子に直接結合されている水素原子を有する有機珪素化合物及びビニル基のような脂肪族不飽和基を有する有機珪素化合物を少なくとも含み、前記化合物は、触媒の存在下で互いに反応して硬化される。触媒の例としては、周期律表第8族の金属や、前記金属をアルミナ、シリカまたはカーボンブラックなどの担体に担持させた触媒または前記金属の塩や錯体などが含まれる。前記周期律表第8族の金属としては、白金、ロジウムまたはルテニウムなどを使用することができ、好ましくは、白金を使用することができる。
【0069】
縮合または重縮合硬化型シリコーン系材料を使用する方式は、ハロゲン原子やアルコキシ基などのような加水分解性官能基を有するシランやシロキサンなどの珪素化合物またはその加水分解物の加水分解及び縮合反応を通じてシリコーン樹脂を製造する方式である。このような方式で使用できる単位化合物としては、RSi(OR)、RSi(OR)、RSi(OR)及びSi(OR)などのシラン化合物を例示することができる。前記化合物において、(OR)は、炭素数1乃至8の直鎖状または分枝状アルコキシ基を示し、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシまたはt−ブトキシなどである。また、前記化合物において、Rは、珪素原子に結合されている官能基であり、これは目的のシリコーン樹脂に含まれる置換基を考慮して選択することができる。
【0070】
紫外線硬化型シリコーン系材料を使用する方式は、アクリロイル基などのような紫外線反応基を有するシラン、またはシロキサンなどの珪素化合物、またはその加水分解物を加水分解及び縮合反応に適用して樹脂を製造し、さらに紫外線照射により反応させて目的の樹脂を製造する方式である。
【0071】
この分野では、前記のような付加硬化型、縮合または重縮合硬化型または紫外線硬化型シリコーン系材料が多様に公知とされており、この分野の通常の知識を有した技術者は、目的とするシリコーン樹脂によって前記公知の材料を容易に採用して、上述した液状のコーティング液を製造することができる。
【0072】
本発明で前記のような液状のコーティング液を塗布する方法は、特別に制限されず、バーコーティング、スピンコーティング、コンマコーティングなどの公知の方式を使うことができる。また、コーティングされたコーティング液を硬化または乾燥させて樹脂層を形成する方式も特別に制限されず、使われた成分を考慮した適切な加熱または紫外線の照射方式を採用する。
【0073】
また、本発明は、前記光電池用シートと、前面基板と、前記光電池用シートと前面基板との間で光電変換素子をカプセル化している封止材と、を含む光電池モジュールに関する。
【0074】
本発明の光電池モジュールにおいて、前記光電池用シートは、バックシートまたは支持基板として適用することができる。このような光電池モジュールは、本発明の特徴的な光電池用シートを含むものであれば、特別に制限されず、多様な形態で構成することができ、その例には、シリコーンウェハ系光電池モジュールまたは薄膜型光電池モジュールなどが含まれる。
【0075】
図3及び図4は、本発明の多様な態様による光電池モジュールを模式的に示した図である。
【0076】
図3は、本発明の光電池用シートを含むモジュールの一例として、シリコーン系光電池ウェハを含むモジュール3の一例を示す。図3に示したように、本発明の一例によるモジュールは、通常ガラスのような強誘電体である前面基板31と、バックシート34と、シリコーン系ウェハなどの光電変換素子33と、前記光電変換素子33をカプセル化している封止材32a、32bと、を含むことができ、前記封止材では、EVA系素子またはシリコーン系素子などを使うことができ、好ましくは、シリコーン系素子を使うことができる。本発明の光電池用シートは、前記バックシート34として含まれることができる。
【0077】
図4は、本発明の他の態様によるモジュールとして、薄膜型光電池モジュール4を示した模式図である。図4に示したように、薄膜型光電池モジュール4の場合、光電変換素子43は、通常強誘電体で構成される前面基板41に形成され、前記光電変換素子43は、前面基板41及び支持基板44との間で封止材42により封止されている。前記薄膜の光電変換素子43は、通常化学的蒸着(CVD)などの方法で沈着することができ、本発明の光電池用シートは、例えば、前記のようなモジュール構造で支持基板44として含まれることができる。
【0078】
本発明の前記のような多様な光電池モジュールは、本発明による光電池用シートを少なくとも含むものであれば、その他の構成や構築方法は特別に制限されず、この分野の一般的な方式をそのまま適用することができる。
【発明の効果】
【0079】
本発明では、優れた耐熱性、耐光性、耐候性、耐湿性及び絶縁性を有し、光電池モジュールに適用されて優れた集光効率を示すことができる光電池用シートを提供することができる。これによって、本発明では、優秀な発電効率を有し、耐久性が卓越しており、長期間の使用時にも優れた発電効率が維持される光電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の光電池用シートの多様な例を示す図である。
【図2】本発明の光電池用シートの多様な例を示す図である。
【図3】本発明の光電池用シートが適用された光電池モジュールの多様な例を示す図である。
【図4】本発明の光電池用シートが適用された光電池モジュールの多様な例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲は、下記提示された実施例により限定されるものではない。
【0082】
以下、実施例及び比較例において、Viは、ビニル基を示し、Meは、メチル基を示し、Phは、フェニル基を示し、Epは、エポキシ基を示す。
【0083】
(第1の実施例)
<樹脂組成物(A)及び(B)の製造>
公知の方式で合成したオルガノシロキサン化合物として、各々下記の化学式A、B、C及びDで表示される化合物を混合して、ヒドロシリル化反応により硬化できるシロキサン組成物を製造した(配合量:化合物A:100g、化合物B:10g、化合物C:200g、化合物D:60g)。次に、前記組成物にPt(0)の含量が20ppmになるように触媒(プラチナ(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane))を配合し、均一に混合して樹脂組成物(A)を製造した。前記組成物(A)に平均粒径が100nmであり、400nmの波長に対する屈折率が約2.2である高屈折フィラー(TiO)80gを混合して樹脂組成物(B)を製造した。
【0084】
[化学式A]
(ViMeSiO1/2)(ViMeSiO2/2)(PhSiO2/2)10(MeSiO2/2)10
【0085】
[化学式B]
(ViMeSiO1/2)(EpSiO3/2)(MePhSiO2/2)20
【0086】
[化学式C]
(ViMeSiO1/2)(MePhSiO2/2)(PhSiO3/2)10
【0087】
[化学式D]
(HMeSiO1/2)(PhSiO2/2)1.5
【0088】
<光電池用シートの製造>
前記製造された樹脂組成物(B)をポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」)シートの両面に硬化後の厚さが200μmになるようにコーティングし、硬化させて樹脂層を形成することで、光電池用シートを製造した。前記コーティング後の硬化は、コーティング層を150℃で1時間処理して実行した。
【0089】
(第1の比較例)
樹脂組成物(B)の代わりに樹脂組成物(A)を使用したこと以外は、第1の実施例と同一な方式で光電池用シートを製造した。
【0090】
(第2の比較例)
<樹脂組成物(C)の製造>
公知の方式で合成したオルガノシロキサン化合物として、各々下記の化学式E乃至Gで表示される化合物を混合して、ヒドロシリル化反応により硬化できる樹脂組成物を製造した(配合量:化合物E:100g、化合物F:20g、化合物G:50g)。次に、前記組成物にPt(0)の含量が10ppmになるように触媒(プラチナ(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane))を配合し、均一に混合して樹脂組成物(C)を製造した。
【0091】
[化学式E]
(ViMeSiO1/2)(ViMeSiO2/2)15(MeSiO3/2)(MeSiO2/2)50
【0092】
[化学式F]
(ViMeSiO1/2)(MeSiO3/2)(PhSiO3/2)1.5
【0093】
[化学式G]
(HMeSiO1/2)(HMeSiO2/2)(MeSiO2/2)10
【0094】
<光電池用シートの製造>
前記製造された樹脂組成物(C)をPETシートの両面に200μmの厚さの樹脂層を形成するようにコーティング及び硬化させて、光電池用シートを製造した。前記コーティング後の硬化は、コーティング層を150℃で1時間処理して実行した。
【0095】
(第3の比較例)
<樹脂組成物(D)の製造>
公知の方式で合成したオルガノシロキサン化合物として、各々下記の化学式H乃至Jで表示される化合物を混合して、ヒドロシリル化反応により硬化できるシロキサン組成物を製造した(配合量:化合物H:100g、化合物I:20g、化合物J:50g)。次に、前記組成物にPt(0)含量が20ppmになるように触媒(プラチナ(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane))を配合して、均一に混合して樹脂組成物(D)を製造した。
【0096】
[化学式H]
(ViPhSiO1/2)(MeSiO2/2)20
【0097】
[化学式I]
(ViPhSiO1/2)(MeSiO3/2)10
【0098】
[化学式J]
(HMeSiO1/2)(HMeSiO2/2)(MeSiO2/2)10
【0099】
<光電池用シートの製造>
前記製造された樹脂組成物(D)をPETシートの両面に200μmの厚さの樹脂層を形成するようにコーティング及び硬化させて、光電池用シートを製造した。前記コーティング後の硬化は、コーティング層を150℃で1時間処理して実行した。
【0100】
1.光電池モジュールの電力評価
実施例及び比較例で製造された光電池用シートを使用して下記の方式で光電池モジュールを製造し、モジュールの効率をサムシミュレーター(sum simulator)を使用して評価した。具体的には、製造されたモジュールのガラス基板側に約1kWの光源を同一時間の間照射し、光電池モジュールの電力発生量を測定した。前記測定された結果は、下記表1に整理して記載した。
【0101】
<光電池モジュールの製造>
内線接続された光電変換素子をEVA系の充填材シートを積層した前面ガラス基板上に位置させて、前記と同一材質のEVA系の充填材を更に積層した後、その上に実施例及び比較例で製造された光電池用シートを積層した。次に、減圧下の150℃条件で積層体を30分間真空加熱して光電池モジュールを製造した。
【0102】
【表1】

【0103】
2.水分透過性、耐久信頼性及び黄変抑制効果
(1) 水分透過性の測定
第1の実施例の組成物(A)、第2の比較例の組成物(C)及び第3の比較例の組成物(D)を各々150℃で1時間硬化させて厚さが1mmである板状試片を製造し、製造された前記試片に対して、水分透過性を測定した。水分透過性は、板状試片の厚さ方向に対して、モコン装置を利用して同一の条件で測定して、その結果を下記表2に記載した。
【0104】
(2) 高温高湿条件下での信頼性測定
第1の実施例の組成物(A)、第2の比較例の組成物(C)及び第3の比較例の組成物(DD)をPETシートに同一厚さでコーティング及び硬化させた後、85℃の温度及び85%の相対湿度の条件で1,000時間放置した。その後、樹脂層とPET層との間に剥離現状が誘発されるか否かを観察して、下記方式で信頼性を評価した。
【0105】
<評価基準>
○:樹脂層及びPETシートの界面で剥離が発生しない場合
×:樹脂及びPETシートの界面で剥離が発生した場合
【0106】
(3) 黄変発生程度の測定
水分透過度測定に使用した各試片に対してQ−UVA(340nm、0.89W/Cm2)装置を用いて60℃で3日間光を照射し、黄変発生可否を下記基準よって表示して結果を記載した。
【0107】
<評価基準>
○:450nmの波長の光に対する吸収率が5%未満の場合
×:450nmの波長の光に対する吸収率が5%以上の場合
【0108】
【表2】

【符号の説明】
【0109】
1、2:光電池用シート
11:樹脂層
12:基材
23:高分子コーティング層
3、4:光電池モジュール
31、41:前面基板
32a、32b、42:封止層
33、43:光電変換素子
34、44:支持基板
【その他】
【0110】
2012年9月21日付で提出致しました明細書の翻訳文に代え、本明細書の翻訳文を「国際出願番号PCT/KR2011/000526の翻訳文」としてくださいますよう、よろしくお願い致します。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂;及び
400nmの波長の光に対する屈折率が1.55以上の高屈折フィラーを含む樹脂層
を有する光電池用シート。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂は、珪素原子に結合しているアリール基を含む、請求項1に記載の光電池用シート。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂に含まれる全体の珪素原子に対する前記アリール基のモル比が、0.3を超過する、請求項2に記載の光電池用シート。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂に含まれるアリール基がフェニル基である、請求項2に記載の光電池用シート。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂は、下記化学式1の平均組成式で表示される、請求項1に記載の光電池用シート。
[化学式1]
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)
前記化学式1において、Rは、珪素原子に直接結合している置換基であって、各々独立的に、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基を示し、Rの中で少なくとも一つは、アリール基を示し、aは、0乃至0.6であり、bは、0乃至0.95であり、cは、0乃至0.8であり、dは、0乃至0.4である。但し、a+b+c+dは、1であり、b及びcは同時に0ではない。
【請求項6】
前記Rの中で少なくとも一つは、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、またはビニル基である、請求項5に記載の光電池用シート。
【請求項7】
前記Rの中で少なくとも一つは、エポキシ基である、請求項5に記載の光電池用シート。
【請求項8】
前記化学式1の平均組成式で表示されるシリコーン樹脂は、下記化学式2または化学式3のシロキサン単位を含む、請求項5に記載の光電池用シート。
[化学式2]
SiO2/2
[化学式3]
SiO3/2
前記化学式2及び3において、R及びRは、各々独立的にアルキル基またはアリール基を示し、R及びRの中で少なくとも一つは、アリール基であり、Rは、アリール基を示す。
【請求項9】
前記シリコーン樹脂に含まれる珪素原子に結合されたアリール基が全て化学式2または化学式3のシロキサン単位に含まれる、請求項8に記載の光電池用シート。
【請求項10】
前記化学式2のシロキサン単位が下記化学式4及び化学式5のシロキサン単位から選択される一つ以上である、請求項8に記載の光電池用シート。
[化学式4]
(C)(CH)SiO2/2
[化学式5]
(C)SiO2/2
【請求項11】
前記化学式3のシロキサン単位が下記化学式6のシロキサン単位である、請求項8に記載の光電池用シート。
[化学式6]
(C)SiO3/2
【請求項12】
前記シリコーン樹脂は、重量平均分子量が300乃至100,000である、請求項1に記載の光電池用シート。
【請求項13】
基材を追加で含み、前記樹脂層は、 前記基材上に形成されている、請求項1に記載の光電池用シート。
【請求項14】
前記基材は、金属箔、フッ素系重合体フィルム、ポリエステル系フィルムまたは前記のうち2個以上の積層シートである、請求項12に記載の光電池用シート。
【請求項15】
前記高屈折フィラーは、平均粒径が40nm乃至100,000nmである、請求項1に記載の光電池用シート。
【請求項16】
前記樹脂層は、シリコーン樹脂100重量部に対して、0.1重量部乃至70重量部の高屈折フィラーを含む、請求項1に記載の光電池用シート。
【請求項17】
シリコーン樹脂またはシリコーン樹脂を形成することができる珪素系材料;及び400nmの波長の光に対する屈折率が1.55以上の高屈折フィラーを含む液状のコーティング液をコーティングし、コーティングされた材料を硬化または乾燥させる段階を経て樹脂層を形成する過程を含む、光電池用シートの製造方法。
【請求項18】
請求項1による光電池用シート;前面基板;及び前記光電池用シートと前記前面基板との間で光電変換素子をカプセル化している封止材を含む、光電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−518407(P2013−518407A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549955(P2012−549955)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000526
【国際公開番号】WO2011/090367
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】