説明

免疫分析装置

【課題】攪拌の必要のあるテーブルに攪拌機構を設けることで反応容器の移行の回数を減らして分析処理に要する時間を短縮できる免疫分析装置を提供すること。
【解決手段】この発明にかかる分析装置1は、偏心状態で回転する攪拌子が一つの駆動部によって駆動され、該攪拌子が攪拌領域4に在る複数の反応容器を同時に攪拌する攪拌手段と、ターンテーブルを回転させて攪拌対象の反応容器を前記攪拌領域に移動させて、該反応容器の攪拌を行う攪拌制御部42とを備え、効率良く複数の反応容器を同時に且つ選択的に攪拌することで反応時間を短縮できるとともに、一つの駆動部で攪拌領域を拡大できることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関するものであり、特に、免疫学的分析に適した分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来免疫測定に用いる分析装置は、試薬・検体をセットする試薬・検体セット領域と、反応液(検体と試薬の混合液)を反応させる反応領域と、攪拌する攪拌領域および反応液をBF分離するBF分離領域とを有している。そして、これらの領域に反応容器を順次移送するように、反応容器移送部および反応容器を搭載する搭載孔を有したターンテーブルが回転可能に設けてある。
【0003】
そして、試薬・検体セット領域でセットした試薬と検体とからなる反応液は、反応テーブルに移送されて所定の条件下で反応を促進させる。その後、BF分離領域で磁石を用いて反応液中の磁性粒子(検体を担持した磁性粒子担体)を集磁、洗浄し、攪拌機構によって分散させてBF分離する。攪拌の方式には、個々に設置された攪拌子が回転することによって反応容器の攪拌を行う攪拌方式があり(たとえば、特許文献1参照)、攪拌をする場合は、洗浄部にある攪拌領域に反応容器を移送して攪拌を行っている。また、攪拌棒が移動する機構を持ち、反応テーブルが回転しているときにも攪拌を行って攪拌時間を確保するとともにタクトタイムを短縮する攪拌方式(たとえば、特許文献2参照)や音波を用いた攪拌方式(たとえば、特許文献3参照)などがある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−83988号公報
【特許文献2】特開2003−121450号公報
【特許文献3】特開2007−33413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来用いられている攪拌機構は、一つの反応容器に対して一つの攪拌子が用いられ、攪拌が必要な反応容器の数だけ攪拌子および駆動部が必要であった。したがって、攪拌効率を向上させるために攪拌子を増やすと、駆動の機構もその数だけ増加して装置が大型化または複雑化する可能性がある。
【0006】
また、音波を用いた攪拌方式では、十分な攪拌を行うには時間を要する。さらに、この攪拌方式も装置や反応容器若しくは装置に攪拌を行うための機構を個々に取り付ける必要があり、装置の複雑化や反応容器の規格変更の問題が起こる。
【0007】
また、従来の免疫分析装置では、攪拌領域は洗浄部に設置されているために、反応中の反応液等の攪拌が必要な場合には、洗浄部の攪拌領域まで反応容器を移送する必要があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、偏心運動を行う攪拌子を用いて効率的な攪拌を行うことによって反応時間を短縮するとともに、一つの駆動部で複数の反応容器を同時に攪拌することによって装置を複雑化せず、攪拌の必要のあるテーブルに攪拌機構を設けることで反応容器の移行の回数を減らして分析処理に要する時間も短縮できる免疫分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、反応液を攪拌する攪拌領域を有し、該攪拌領域に反応液を収容した反応容器を順次移送可能にしたターンテーブルを備えた免疫分析装置において、偏心状態で回転する攪拌子が一つの駆動部によって駆動され、該攪拌子が前記攪拌領域に在る複数の前記反応容器を同時に攪拌する攪拌手段と、前記ターンテーブルを回転させて攪拌対象の反応容器を前記攪拌領域に移動させて、該反応容器の攪拌を行う攪拌制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる免疫分析装置は、上記の発明において、前記攪拌子は、前記反応容器の一部を収容する凹みを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる免疫分析装置は、上記の発明において、前記攪拌手段は、前記ターンテーブル上部に前記反応容器を支承する支承部を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる免疫分析装置は、上記の発明において、前記攪拌手段は、攪拌を行う場合に昇降可能な昇降部によって前記攪拌子を上昇させて前記反応容器下部を前記凹みに収容し、該反応容器を攪拌することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる免疫分析装置は、上記の発明において、前記攪拌子は、一部に回避穴を備え、選択的に反応容器の攪拌を回避させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる免疫分析装置は、一つの駆動部によって複数の反応容器を同時に攪拌する攪拌手段を反応テーブル内に備えてあるため、短時間に効率良く複数の反応容器を同時に攪拌することで反応時間を短縮できるとともに、一つの駆動部で攪拌領域を拡大できることを可能とするという効果を奏する。また、反応テーブル内に攪拌領域を備えることで、反応容器の移送を行わずに反応液の攪拌が可能となるため、処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である免疫分析装置について、被検血液を抗原抗体反応などによる免疫検査を行なう分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる分析装置1は、検体と試薬との間の反応物の作用による発光基質の発光量を測定する測定機構20と、測定機構20を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構20における測定結果の分析を行なう制御機構40とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の免疫学的な分析を自動的に行なう。
【0017】
まず、測定機構20について説明する。測定機構20は、大別して検体移送部21、チップ格納部22、検体分注部23、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、第1試薬庫26、第2試薬庫27、第1試薬分注部28、第2試薬分注部29、酵素反応テーブル30、測光部31、第1反応容器移送部32および第2反応容器移送部33を備える。測定機構2の各構成部位は、所定の動作処理を行なう単数または複数のユニットを備える。
【0018】
検体移送部21は、検体を収容した複数の検体容器21aを保持し、図中の矢印方向に順次移送される複数の検体ラック21bを備える。検体容器21aに収容された検体は、検体の提供者から採取した血液または尿などである。
【0019】
チップ格納部22は、複数のチップを整列したチップケースを設置しており、このケースからチップを供給される。このチップは、感染症項目測定時のキャリーオーバー防止のため、検体分注部23のノズル先端に装着され、検体分注ごとに交換されるディスポーザブルのサンプルチップである。
【0020】
検体分注部23は、検体の吸引および吐出を行なうプローブが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。検体分注部23は、検体移送部21によって所定位置に移動された検体容器21a内の検体をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送された反応容器に分注して検体を所定タイミングでBFテーブル25上の反応容器内に移送する。
【0021】
免疫反応テーブル24は、それぞれ配置された反応容器内で検体と分析項目に対応する所定の試薬とを反応させるための反応ラインを有する。免疫反応テーブル24は、免疫反応テーブル24の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、免疫反応テーブル24に配置された反応容器を所定タイミングで所定位置に移送する。免疫反応テーブル24においては、図1に示すように、前処理、前希釈用の外周ライン24a、検体と固相担体試薬との免疫反応用の中周ライン24bおよび検体と標識試薬との免疫反応用の内周ライン24cを有する3重の反応ライン構造を形成してもよい。
【0022】
また、免疫反応テーブル24は、攪拌領域4を備え、攪拌領域においては取付部材7に支承部材6が設置されている。この支承部材6が反応容器上部を押さえることによって反応容器の攪拌を安定化させる。
【0023】
BFテーブル25は、所定の洗浄液を吸引吐出して検体または試薬における未反応物質を分離するBF(bound−free)分離を実施するBF洗浄処理を行なう。BFテーブル25は、BFテーブル25の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、BFテーブル25に配置された反応容器を所定タイミングで所定位置に移送する。
【0024】
第1試薬庫26は、BFテーブル25に配置された反応容器内に分注される第1試薬が収容された第1試薬容器26aを複数収納できる。第2試薬庫27は、BFテーブル25に配置された反応容器内に分注される第2試薬が収容された第2試薬容器27aを複数収納できる。第1試薬庫26および第2試薬庫27は、図示しない駆動機構が駆動することによって、時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器を第1試薬分注部28または第2試薬分注部29による試薬吸引位置まで移送する。第1試薬は、分析対象である検体内の抗原または抗体と特異的に結合する反応物質を固相した不溶性担体である磁性粒子を含む試薬である。第2試薬は、磁性粒子と結合した抗原または抗体と特異的に結合する標識物質(たとえば酵素)を含む試薬である。また、第2試薬庫27は、標識物質との酵素反応によって発光する基質を含む基質液が収容された基質液容器27bを収納し、時計回りまたは反時計回りに回動して所定の基質液容器27bを第1試薬分注部28による基質液吸引位置まで搬送する。
【0025】
第1試薬分注部28は、第1試薬の吸引および吐出を行なうプローブが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。第1試薬分注部28は、第1試薬庫26によって所定位置に移動された第1試薬容器26a内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって第1試薬吐出位置に搬送された反応容器に分注する。また、第1試薬分注部28は、第2試薬庫27によって所定位置に移動された基質液容器27b内の基質液をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって基質液吐出位置に搬送された反応容器に分注する。
【0026】
第2試薬分注部29は、第1試薬分注部と同様の構成を有し、第2試薬庫27によって所定位置に移動された試薬容器内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送された反応容器に分注する。
【0027】
酵素反応テーブル30は、反応容器内に注入された基質液内の基質が発光可能となる酵素反応処理を行なうための反応ラインである。測光部31は、反応容器内の反応液内の基質から発する発光を測定する。測光部31は、たとえば、化学発光で生じた微弱な発光を検出する光電子倍増管を有し、カウント法を用いて発光量を測定する。また、測光部31は、光学フィルターを保持し、発光強度に応じて光学フィルターにより減光された測定値によって真の発光強度を算出する。
【0028】
第1反応容器移送部32は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、液体を収容した反応容器を所定タイミングで、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、酵素反応テーブル30、図示しない反応容器供給部および図示しない反応容器廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。また、第2反応容器移送部33は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、液体を収容した反応容器を所定タイミングで、酵素反応テーブル30、測光部31、図示しない反応容器廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。
【0029】
つぎに、制御機構40について説明する。制御機構40は、制御部41、入力部43、分析部44、記憶部45、出力部46および送受信部48を備える。測定機構20および制御機構40が備えるこれらの各部は、制御部41に電気的に接続されている。制御機構40は、一または複数のコンピュータシステムを用いて実現され、測定機構20に接続する。制御機構40は、分析装置1の各処理にかかわる各種プログラムを用いて、測定機構20の動作処理の制御を行なうとともに測定機構20における測定結果の分析を行なう。
【0030】
制御部41は、制御機能を有するCPU等を用いて構成され、分析装置1の各構成部位の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。制御部41は、記憶部45が記憶するプログラムをメモリから読み出すことにより分析装置1の制御を実行する。制御部41は、攪拌制御部42を有する。
【0031】
入力部43は、種々の情報を入力するためのキーボード、出力部46を構成するディスプレイの表示画面上における任意の位置を指定するためのマウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部44は、測定機構20から取得した測定結果に基づいて検体に対する分析処理等を行なう。
【0032】
記憶部45は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部45は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0033】
出力部46は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、制御部41の制御のもと、分析に関する諸情報を出力する。出力部46は、ディスプレイ等を用いて構成された表示部47を備える。送受信部48は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。
【0034】
この免疫検査を行なう分析装置においては、この反応容器内に磁性粒子を含む第1試薬が第1試薬分注部28によって分注される第1試薬分注処理、チップ格納部22から供給されたチップを装着した検体分注部23によってBFテーブル25上の反応容器内に検体が分注される検体分注処理、BFテーブル25において反応物を集磁させた状態で反応容器内から未反応物質を除去する第1BF洗浄処理、第2試薬分注部29によって反応容器内に標識試薬が分注される第2試薬分注処理、BFテーブル25において免疫複合体を集磁させた状態で反応容器内から未結合である標識抗体を除去する第2BF洗浄処理、反応容器内に基質液が分注される基質液分注処理、基質からの発光を測定する測定処理および測定された光量をもとに検出対象である抗原量を求める分析処理が行われる。
【0035】
続いて、図2は実施の形態1の攪拌領域4を模式的に示した斜視図である。免疫反応テーブル24に鍔部2aによって反応容器2が搭載され、反応容器2の上下に取付部材7と攪拌部材11が配置されている。
【0036】
取付部材7には、免疫反応テーブル24に形成した反応容器搭載孔と同一のピッチを有する取付孔7aが形成してある。これらの取付孔7aには、それぞれブッシュ8が取り付けてあり、各ブッシュ8には、それぞれ支承部材6が昇降可能に取り付けてある。これらのブッシュ8は、たとえば、ゴムのような弾性材料により形成してあるので、各支承部材6は傾倒可能である。
【0037】
支承部材6は、反応容器2を支承する支承部6aと軸部6bとを有している。各支承部6aは、反応容器2の上部開口よりも大径であって、反応容器2を確実に閉塞して支承すべく、上方に向けて漸次幅広となる曲面を有している。軸部6bは、ブッシュ8を貫通して支承部材6をブッシュ8に支承する部分であり、反応容器支承部6aから上方に延在した部分である。また、ブッシュ8を貫通した各支承部材6の軸部6bには、Eリング10が取り付けてある。このEリング10は、支承部材6の自重による支承部材6の脱落を防止する。あるいは、図3に示す圧縮コイルバネ9によって生じる下方への付勢による支承部材6の脱落を防止する。
【0038】
免疫反応テーブル24に搭載された反応容器2を攪拌する場合、攪拌制御部42は免疫反応テーブル24を回転し、攪拌領域4に反応容器2を配置する。この部分に配置された反応容器2の下部には、攪拌部材11が設置されており昇降部13が上昇することによって支承部6aと攪拌子11aとが反応容器2を挟み込んで攪拌を行う。攪拌子11aは、モータ12の動力が回転軸11cに伝えられることによって回転するが、回転軸11cが途中で回転中心から若干偏心して形成されているために偏心状態で回転する。この偏心状態での回転によって反応容器2下部が円を描くように揺動するため、反応容器2内部に収容されている反応液が攪拌される。このとき、ベアリングおよび攪拌子11a下方にある回転制御板11bによって攪拌子11aの自転を防止している。
【0039】
図3〜6は、攪拌処理における装置と反応容器2との位置関係および動作についての模式的な断面図である。
【0040】
先ず、攪拌制御部42は、免疫反応テーブル24を回転させて攪拌を行う反応容器2A,2Bを攪拌領域4に配置する(図3)。その後、攪拌制御部42は、昇降部13を上昇させて反応容器2A,2Bを反応容器溝11dに収容する。同時に、反応容器2A,2B上部が支承部6aによって押さえられて、反応容器2A,2Bは攪拌子11aと支承部6aとで固定される。また、各支承部材6の軸部6bには、それぞれ圧縮コイルバネ9が巻回してあり、各支承部材6を下方に付勢してある。
【0041】
固定された反応容器2A,2Bは、モータ12の駆動によって偏心運動する攪拌子11aの動きに従って反応容器下部が円を描くように運動することで容器内に収容されている反応液が攪拌される(図4)。このとき、攪拌子11aには回転制御軸11eが設置されており、回転制御板11bに形成された回転制御溝11fに回転制御軸11eを這わせることによって攪拌子11aの偏心運動を誘導している。また、攪拌子11a、回転制御板11bにはベアリング11g,11hが回転軸11cとの間に設置されており、各々の自転を防止している。
【0042】
攪拌終了指示を受けた攪拌制御部42は、モータ12を停止して昇降部13を下降する(図5)。攪拌子11aが下降して反応容器2A,2Bが鍔部2aによって再び免疫反応テーブル24に保持される。その後、次に攪拌の必要な反応容器がある場合、免疫反応テーブル24を回転させて当該反応容器を攪拌領域4に配置する。
【0043】
次に攪拌を行う反応容器2C,2Dが、所定の位置に配置されると上述した制御が行われ、反応容器2C,2Dが攪拌される(図6)。この攪拌制御を繰り返すことによって複数の反応容器を同時に攪拌するとともに、選択的に反応液の攪拌を行うことができる。
【0044】
図7は、攪拌部材11を模式的に示した斜視図である。攪拌子11aと回転制御板11bが回転軸11cによって保持されている。また、ベアリング11g,11hが攪拌子11aと回転制御板11bにそれぞれ回転軸11cとの接合部に設置され、回転軸11cの回転によって攪拌子11aおよび回転制御板11bが自転することを防止している。
【0045】
モータ12の駆動によって回転軸11cが回転すると、攪拌子11aは偏心状態で回転する。攪拌子11aおよび回転制御板11bはベアリング11g,11hによって自転しないため、攪拌子11a上の点Aは図中の矢印上を移動する。また、攪拌子11aに回転制御軸11e、回転制御板11bに回転制御溝11fが設けられている。回転制御溝11fは、偏心運動によって回転制御軸11eが動き得る範囲の円状の溝となっており、回転制御軸11eがその溝に沿って動作することで、攪拌子11aの偏心運動の誘導および自転を防止の役割を担っている。
【0046】
このように、攪拌子11aが偏心運動を行うことによって、反応容器溝11dに収容された反応容器が攪拌される。
【0047】
続いて、攪拌制御部42における攪拌制御処理を図8に示すフローチャートを用いて説明する。図8は、攪拌制御部42に攪拌指示があった場合の一連の処理を示すフローチャートである。
【0048】
先ず、攪拌制御部42に攪拌指示があった場合(ステップS102:Yes)、攪拌制御部42はターンテーブルを回転させて攪拌対象の反応容器を攪拌領域4に配置する(ステップS104)。その後、攪拌制御部42は昇降部13を上昇させて攪拌子11aと支承部6aとで反応容器を挟み込んで固定する(ステップS106)。
【0049】
反応容器が固定されると、攪拌制御部42はモータ12を駆動させで攪拌子11aを回転させる(ステップS108)。その後、攪拌制御部42が攪拌終了指示を受けた場合(ステップS110:Yes)、攪拌制御部42はモータ12を停止させる(ステップS112)。攪拌子11aの回転が停止すると、攪拌制御部42は昇降部13を下降させて攪拌子11aと支承部6aとを反応容器から離脱させる(ステップS114)。ここで、制御部41から終了指示が出るまで攪拌を継続する(ステップS110:No)。
【0050】
続いて、攪拌制御部42に次の反応容器の攪拌指示がある場合(ステップS116:Yes)、ステップS104に戻って攪拌対象の反応容器を攪拌領域4まで移動させ、上述した処理を繰り返して反応容器の攪拌を行う。また、攪拌制御部42に次の攪拌指示がない場合(ステップS116:No)、攪拌処理を終了する。
【0051】
このように、実施の形態1においては、免疫反応テーブル24に攪拌領域を設けることで、反応中に複数の反応容器を同時に攪拌することが可能となる。また、偏心運動による攪拌であるため、反応容器は支承部6aを起点とする歳差と類似した運動を行い、反応容器に収容された反応液の攪拌効率は振動子や音波、超音波を用いる場合よりも高効率となる。さらに、一つの攪拌子で複数の反応容器の攪拌することは、すなわち一つの駆動部で複数の反応容器の攪拌が可能となり、攪拌する反応容器数の駆動部を設置する必要はない。また、攪拌子の大きさを変えるのみで攪拌する反応容器数を調節することが可能となる。
【0052】
(実施の形態2)
図9は、本実施の形態2にかかる分析装置の構成を示す模式図である。実施の形態2では、攪拌領域4を拡大してより多くの反応容器を攪拌することが可能となる。また、図10は、本発明にかかる免疫分析装置の実施の形態2の攪拌領域4を模式的に示した斜視図であり、回避穴11iを設けて選択的に反応容器の攪拌を回避させることが可能となる。
【0053】
図10では、取付部材7を一部切り取った斜視図になっており、実際図中は取付部材7に覆われている。また、第一反応容器移送部32の移送領域以外は取付部材7に覆われた攪拌領域4としても良い。実施の形態1と同様に、鍔部2aによって免疫反応テーブル24に保持されている反応容器2が攪拌子11aと支承部6aとに挟まれることによって攪拌を行う。
【0054】
攪拌を回避する反応容器は、回避穴11i上に配置させることで攪拌を回避することが可能となる。回避穴11iは、攪拌子11aの回転によって反応容器2に触れない程度の穴が開いており攪拌子が回転した場合も、当該反応容器が攪拌子11aに触れることはなく、攪拌は行われない。
【0055】
また、図10では回避穴11iを一つ設けてあるが、必要に応じて複数個設置してもよい。また、回避穴11iは外周ラインでなくとも中周ライン若しくは内周ラインに設置してもよい。
【0056】
図11は、実施の形態2における攪拌の様子を示した断面図である。図11中の攪拌子11aの点線部は回避穴11iを表している。回避穴11iによって反応容器2Cと攪拌子11aが接触しないために反応容器2Cは、鍔部2aによって免疫反応テーブル24に保持された状態となり攪拌されない。
【0057】
このように、回避穴11iを設けることで、攪拌する反応容器とインキュベートする反応容器が混在して配置されていても調節することが可能となり、反応過程を同時に進めることができる。したがって、反応時間の短縮が可能となり、全体の作業時間短縮にも繋がる。
【0058】
上述した実施の形態に係る攪拌手段は、攪拌が必要なあらゆる部分に追加してもよい。例えば、BF洗浄を行うBFテーブル25や酵素反応テーブル30に設置してもよく、この設置によって反応容器の移送の回数が減少し、タクトタイムの短縮が可能となる。また、図中では楕円状の攪拌子としたが、反応容器が収容可能であればどの形状でも良い。また、攪拌領域の範囲は設置可能などの範囲でも良く、攪拌の必要な反応容器をより多く覆えることが好ましい。
【0059】
なお、上述した実施の形態1,2に限らず、たとえば、検体の生化学、遺伝学的な分析を行う自動分析装置に対して適用することも可能である。すなわち、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる分析装置は、複数の反応容器を短時間に効率良く攪拌を行う場合に有用であり、特に、血液や体液を含む生化学的分析、免疫学的分析に適している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1にかかる攪拌領域を模式的に示す斜視図である。
【図3】実施の形態1にかかる反応容器および攪拌機構の攪拌の様子を示す断面図である。
【図4】実施の形態1にかかる反応容器および攪拌機構の攪拌の様子を示す断面図である。
【図5】実施の形態1にかかる反応容器および攪拌機構の攪拌の様子を示す断面図である。
【図6】実施の形態1にかかる反応容器および攪拌機構の攪拌の様子を示す断面図である。
【図7】実施の形態1にかかる攪拌子の回転の様子を示す斜視図である。
【図8】攪拌制御部による攪拌制御処理を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態2にかかる攪拌領域を模式的に示す斜視図である。
【図10】実施の形態2にかかる攪拌機構を示す断面斜視図である。
【図11】実施の形態2にかかる反応容器および攪拌機構の攪拌の様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 分析装置
2 反応容器
2a 鍔部
4 攪拌領域
6 支承部材
6a 支承部
6b 軸部
7 取付部材
7a 取付孔
8 ブッシュ
9 圧縮コイルバネ
10 Eリング
11 攪拌部材
11a 攪拌子
11b 回転制御板
11c 回転軸
11d 反応容器溝
11e 回転制御軸
11f 回転制御溝
11g,11h ベアリング
11i 回避穴
12 モータ
13 昇降部
20 測定機構
21 検体移送部
21a 検体容器
21b 検体ラック
22 チップ格納部
23 検体分注部
24 免疫反応テーブル
24a 外周ライン
24b 中周ライン
24c 内周ライン
25 BFテーブル
26 第1試薬庫
26a 第1試薬容器
27 第2試薬庫
27a 第2試薬容器
27b 基質液容器
28 第1試薬分注部
29 第2試薬分注部
30 酵素反応テーブル
31 測光部
32 第1反応容器移送部
33 第2反応容器移送部
40 制御機構
41 制御部
42 攪拌制御部
43 入力部
44 分析部
45 記憶部
46 出力部
47 表示部
48 送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応液を攪拌する攪拌領域を有し、該攪拌領域に反応液を収容した反応容器を順次移送可能にしたターンテーブルを備えた免疫分析装置において、
偏心状態で回転する攪拌子が一つの駆動部によって駆動され、該攪拌子が前記攪拌領域に在る複数の前記反応容器を同時に攪拌する攪拌手段と、
前記ターンテーブルを回転させて攪拌対象の反応容器を前記攪拌領域に移動させて、該反応容器の攪拌を行う攪拌制御手段と、
を備えることを特徴とする免疫分析装置。
【請求項2】
前記攪拌子は、前記反応容器の一部を収容する凹みを備えることを特徴とする請求項1に記載の免疫分析装置。
【請求項3】
前記攪拌手段は、前記ターンテーブル上部に前記反応容器を支承する支承部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の免疫分析装置。
【請求項4】
前記攪拌手段は、攪拌を行う場合に昇降可能な昇降部によって前記攪拌子を上昇させて前記反応容器下部を前記凹みに収容し、該反応容器を攪拌することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の免疫分析装置。
【請求項5】
前記攪拌子は、一部に回避穴を備え、選択的に反応容器の攪拌を回避させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の免疫分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−43879(P2010−43879A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206408(P2008−206408)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】