説明

免疫調節蛋白質の製造方法

【課題】ヒトリンパ球やヒト型ハイブリドーマ細胞等のヒトリンパ球類を用いて、免疫グ
ロブリンやサイトカイン等の免疫調節蛋白質を効率良く製造する方法を提供すること。
【解決手段】
[1]コラーゲンの存在下にヒトリンパ球類を培養することを特徴とする免疫調節蛋白質
の製造方法。
[2]前記ヒトリンパ球類が、ヒトリンパ球およびヒト型ハイブリドーマ細胞からなる群
より選ばれる少なくとも一種であり、
かつ前記免疫調節蛋白質が、免疫グロブリンおよびサイトカインからなる群より選ばれ
る少なくとも一種であることを特徴とする、上記[1]に記載の免疫調節蛋白質の製造方
法。
[3]前記免疫グロブリンが、IgM抗体およびIgG抗体からなる群より選ばれる少な
くとも一種であり、
かつ前記サイトカインが、インターフェロンおよび腫瘍壊死因子からなる群より選ばれる
少なくとも一種であることを特徴とする上記[2]に記載の免疫調節蛋白質の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫調節蛋白質の製造方法に関し、特に免疫グロブリンやサイトカイン等の免
疫調節蛋白質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリンやサイトカイン等の免疫調節蛋白質は、体内診断薬、治療薬等の医薬分
野への応用が期待されている複合蛋白質の一つである。近年の分子生物学的手法の進展に
伴い人工的に前記免疫調節蛋白質を製造する方法が開発されてきている。
一方、前記免疫調節蛋白質を体内診断薬、治療薬等に応用するためには、短時間に効率
よく前記免疫調節蛋白質を製造することが必要である。
前記免疫調節蛋白質は、通常、ヒトリンパ球やヒト型ハイブリドーマ細胞等のヒトリン
パ球類により産生されるが、その生産効率は極めて低いという問題があった。
この様な問題に対応すべく、前記ヒトリンパ球類にミカン果汁を添加する、前記免疫調
節蛋白質の製造方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、前記製造方法では前記免疫調節蛋白質の産生効率は未だ十分なものでは
なかった。
【特許文献1】特開平6−98763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ヒトリンパ球やヒト型ハイブリドーマ細胞等の前記ヒトリンパ球類を
用いて、免疫グロブリンやサイトカイン等の前記免疫調節蛋白質を効率良く製造する方法
を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意検討した結果、コラーゲンの存在下にヒトリンパ球やヒト型ハイブリ
ドーマ細胞等の前記ヒトリンパ球類を培養することにより、免疫グロブリンやサイトカイ
ン等の免疫調節蛋白質の産生効率が高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、
[1]コラーゲンの存在下にヒトリンパ球類を培養することを特徴とする免疫調節蛋白質
の製造方法を提供するものであり、
[2]前記ヒトリンパ球類が、ヒトリンパ球およびヒト型ハイブリドーマ細胞からなる群
より選ばれる少なくとも一種であり、
かつ前記免疫調節蛋白質が、免疫グロブリンおよびサイトカインからなる群より選ばれ
る少なくとも一種であることを特徴とする、上記[1]に記載の免疫調節蛋白質の製造方
法を提供するものであり、
[3]前記免疫グロブリンが、IgM抗体およびIgG抗体からなる群より選ばれる少な
くとも一種であり、
かつ前記サイトカインが、インターフェロンα、βおよびγならびに腫瘍壊死因子αか
らなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[2]に記載の免疫調
節蛋白質の製造方法を提供するものであり、
[4]前記コラーゲンが、ホワイトタイプクラゲ、チャイナタイプクラゲ、セミチャイナ
タイプクラゲ、キャノンボールタイプクラゲおよびボールタイプクラゲからなる群より選
ばれる少なくとも一種から得られたものを含むことを特徴とする、上記[1]〜[3]の
いずれかに記載の免疫調節蛋白質の製造方法を提供するものであり、
[5]コラーゲンを使用することを特徴とするヒトリンパ球類の培養方法を提供するもの
であり、
[6]コラーゲンの存在下に培養されたことを特徴とするヒトリンパ球類を提供するもの
であり、
[7]ヒトリンパ球類培養用コラーゲンを提供するものであり、
[8]ホワイトタイプクラゲ、チャイナタイプクラゲ、セミチャイナタイプクラゲ、キャ
ノンボールタイプクラゲおよびボールタイプクラゲからなる群より選ばれる少なくとも一
種から得られたものを含むことを特徴とする、上記[7]に記載のヒトリンパ球類培養用
コラーゲンを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ヒトリンパ球やヒト型ハイブリドーマ細胞等の前記ヒトリンパ球類を
用いて、免疫グロブリンやサイトカイン等の前記免疫調節蛋白質を効率良く製造する方法
を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず本発明に使用するヒトリンパ球類について説明する。
本発明に使用するヒトリンパ球類としては、例えば、具体的にはB細胞、T細胞、NK
細胞、マクロファージ等のヒトリンパ球、
ガン細胞とBリンパ球とを細胞融合させたヒト型ハイブリドーマ細胞等が挙げられる。
この様なヒト型ハイブリドーマ細胞としては、例えば、具体的にはヒト肺ガン細胞とB
リンパ球とを細胞融合させたヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞等を挙げることができ
る。
本発明に使用するヒトリンパ球類は、単一種類の細胞からなるものに限定されず、二種
類以上の細胞からなるものであってもよい。
【0008】
また前記ヒトリンパ球類は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0009】
次に本発明に使用するコラーゲンについて説明する。
本発明に使用するコラーゲンとしては特に限定はなく、自然界に存在するもの、人工的
に合成されたもの等を使用することができる。この様なコラーゲンとしては、例えば、植
物由来のもの、動物由来のもの等を挙げることができる。動物由来のコラーゲンとしては
、例えば、動物の骨、皮、皮膚、腱等に含まれるものを挙げることができる。
【0010】
前記動物としては、例えば、牛、豚、馬、羊、兎、鼠、鯨等の哺乳類、鶏等の鳥類、サ
ケ、マス、タラ等の魚類、クラゲ等の軟体動物類等が挙げられる。
本発明に使用するコラーゲンは、牛、兎等の哺乳類、クラゲ等の軟体動物類等に由来す
るものが好ましく、クラゲ由来のものであればさらに好ましい。
【0011】
前記クラゲとしては、例えば、ホワイトタイプ、チャイナタイプ、セミチャイナタイプ
、キャノンボールタイプ、ボールタイプ等のクラゲが挙げられる。
【0012】
前記動物からコラーゲンを採取する方法としては、例えば、前記動物や、その動物から
採取された骨、皮、皮膚、腱等の原料をあらかじめ裁断等の処理を施しておき、前記裁断
等の処理後のものを酸性水溶液により抽出する方法が挙げられる。
【0013】
前記抽出に使用する酸性水溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類の水
溶液、シュウ酸、ギ酸、酢酸、酪酸等の有機酸類の水溶液が挙げられる。これらの中でも
取り扱い性の面から無機酸類の水溶液が好ましく、塩酸水溶液であればさらに好ましい。
また、前記酸性水溶液の水素イオン濃度は、pH2〜4の範囲であることが好ましく、
pH2.5〜3.5の範囲であれば更に好ましい。
【0014】
前記酸性水溶液を用いてコラーゲンを抽出する際の温度は通常0〜150℃の範囲であ
るが、0〜130℃の範囲であれば好ましい。
前記酸性水溶液を用いてコラーゲンを抽出する際の圧力は大気圧に限られず、加圧下に
実施することができる。
【0015】
また前記酸性水溶液を用いてコラーゲンを抽出する際の時間は、抽出する際の温度等の
諸条件により適宜決定されるが、通常5分〜24時間の範囲である。
前記酸性水溶液によりコラーゲンを抽出した後、前記抽出操作に供した動物のコラーゲ
ン以外の部分、例えば肉、骨、皮、皮膚、腱の残渣等を除去する操作と、得られた抽出液
を水に対して透析する操作を行なうことにより前記コラーゲンを含む水溶液を得ることが
できる。
【0016】
本発明に使用するコラーゲンは、自然界に存在する形態のものに限定されず、そのコラ
ーゲンを構成する蛋白質成分が熱により変成されたものであってもよい。前記熱により変
成されたものとしては、例えば、ゲラチン状のコラーゲンを挙げることができる。前記ゲ
ラチン状のコラーゲンは自然界に存在する形態のコラーゲンを加熱することにより得るこ
とができる。
抗体産生促進等の見地から、本発明に使用するコラーゲンはゲラチン状のものが好まし
い。前記ゲラチン状のコラーゲンは、自然界に存在する形態のコラーゲンを、通常80〜
150℃程度に加熱することにより得ることができる。
【0017】
次に本発明に係る免疫調節蛋白質の製造方法について説明する。
前記免疫調節蛋白質を製造するためには、前記ヒトリンパ球類を培養する操作が必要で
ある。
【0018】
前記培養操作に使用する培地に特に限定はなく、細胞を培養する目的の培地であればい
かなるものであっても使用することができる。この様な培地としては、例えば、Eagl
eのMEM培地、McCoyの5Aまたは7A培地、HamのF10またはF12培地、
199培地等や、これらの改良型の培地等を挙げることができる。この様な培地は一般に
基本合成培地等として入手することが可能である。
【0019】
前記培地に対しては、ウシ血清等の血清を添加しても良いし、添加しなくても良い。本
発明においては、前記血清を添加しない無血清培地を使用することが血清成分による免疫
調節蛋白質の産生を促進する上で好ましい。
【0020】
本発明に使用する培地には、インスリン、トランスフェリン、エタノールアミン、亜セ
レン酸ナトリウム等の各種添加剤を適宜添加することができる。
【0021】
前記ヒトリンパ球を培養する際の温度は、通常30〜45℃の範囲であり、35〜42
℃の範囲であれば好ましく、36〜38℃の範囲であればさらに好ましい。
【0022】
また、前記ヒトリンパ球を培養する際には、炭酸ガスが1〜10体積%含まれる空気の
雰囲気下に、通常培養が行われる。前記炭酸ガスは3〜8体積%の範囲であれば好ましい

【0023】
前記ヒトリンパ球を培養する際の湿度は、通常80〜100%の範囲であり、90〜1
00%の範囲であれば好ましく、95〜100%の範囲であれば更に好ましい。
【0024】
前記ヒトリンパ球を培養する際の時間は、前記免疫調節蛋白質の製造効率に応じて適宜
決定されるが、通常は5時間〜2週間の範囲である。
【0025】
次に本発明の製造方法を実施するためには、前記ヒトリンパ球類に加えて前記コラーゲ
ンを使用することが必要である。
前記コラーゲンを使用することにより免疫調節蛋白質を効率よく製造することができる

【0026】
本発明の製造方法に使用する前記コラーゲンの量は、ヒトリンパ球類5×10cel
ls/mlを基準として、通常5〜3000μg/mlの範囲である。使用する前記コラ
ーゲンの量は、前記免疫調整蛋白質の製造を促進する観点から、5〜2500μg/mlの範囲であれば好ましく、5〜1000μg/mlの範囲であればより好ましく、10〜100μg/mlの範囲であればさらに好ましい。
【0027】
前記コラーゲンを使用して前記ヒトリンパ球類を培養することにより、前記免疫調整蛋
白質を増殖蓄積させることができる。
【0028】
前記コラーゲンを使用して前記ヒトリンパ球類を培養する操作後に、アフィニティクロ
マトグラフィー等の液体クロマトグラフ法等による分離操作を行なうことにより、前記免
疫調整蛋白質を単離することができる。
【0029】
本発明の製造方法により得られる免疫調節蛋白質としては、例えば、IgM抗体、Ig
G抗体等の免疫グロブリン類、インターフェロンα、β、γ、腫瘍壊死因子α(TNFα
)等のサイトカイン類等を挙げることができる。
前記製造方法により得られた免疫グロブリン類、サイトカイン類等は、例えば、免疫疾
患治療薬、免疫機能検査薬等に広く応用することができる。
【0030】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。
【0031】
[参考例1:ホワイトタイプクラゲからのコラーゲン抽出操作]
漂白加工処理前のホワイトタイプのクラゲを細かく刻み、水素イオン濃度をpH3に調
整した希塩酸水溶液を用いて、温度4℃にて一晩撹拌した。その後、121℃にて20分
間の条件にてコラーゲンの抽出を実施した。
得られた抽出液を超純水に対して透析操作を行い、透析操作後の抽出液をフィルターに
より濾過してコラーゲンを含む水溶液を得た。以下、このコラーゲンを含む水溶液をホワ
イトタイプクラゲコラーゲン水溶液と呼ぶ。
【0032】
[参考例2:セミチャイナタイプクラゲからのコラーゲン抽出操作]
参考例1における前記ホワイトタイプクラゲに換えてセミチャイナタイプクラゲを用い
た以外は全く同様の操作を行い、コラーゲンを含む水溶液を得た。以下、このコラーゲン
を含む水溶液をセミチャイナタイプクラゲコラーゲン水溶液と呼ぶ。
【0033】
[参考例3:キャノンボールタイプクラゲからのコラーゲン抽出操作]
参考例1における前記ホワイトタイプクラゲに換えてキャノンボールタイプクラゲを用
いた以外は全く同様の操作を行い、コラーゲンを含む水溶液を得た。以下、このコラーゲ
ンを含む水溶液をキャノンボールタイプクラゲコラーゲン水溶液と呼ぶ。
【0034】
[参考例4:ウシアキレス腱からのコラーゲン抽出操作]
参考例1における前記ホワイトタイプクラゲに換えてウシアキレス腱を用いた以外は全
く同様の操作を行い、コラーゲンを含む水溶液を得た。以下、このコラーゲンを含む水溶
液をウシアキレス腱コラーゲン水溶液と呼ぶ。
【実施例1】
【0035】
ヒトリンパ球類として、5×10cells/mlのヒト型ハイブリドーマHB4C
5を用い、同体積の85μg/mlのホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いた。
インスリン10μg/ml、トランスフェリン20μg/ml、エタノールアミン20μ
M、亜セレン酸ナトリウム25nMをそれぞれ添加した基本合成培地ERDFを用いて、
37℃の温度で、炭酸ガス体積5%−空気95体積%の雰囲気下、湿度100%の条件下
にて、前記ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液の存在下に前記ヒト型ハイブリドーマ
HB4C5を6時間培養した。
その結果、IgM抗体が154ng/ml産生された。この結果は、前記ホワイトタイ
プクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合に比較して193倍の産生量であった。結果
を表1に示す。
なおIgM抗体の産生量の測定は、酵素抗体法(ELISA法)により実施した。
【0036】
【表1】

【実施例2】
【0037】
濃度を変化させたホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いて、実施例1の場合と
同様にIgM抗体の産生量を測定した。結果を図1に示す。
【実施例3】
【0038】
セミチャイナタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いて、実施例1の場合と同様にIgM
抗体の産生量を測定した。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0039】
濃度を変化させたキャノンボールタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いて、実施例1の
場合と同様にIgM抗体の産生量を測定した。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0040】
濃度を変化させたウシアキレス腱コラーゲン水溶液を用いて、実施例1の場合と同様に
IgM抗体の産生量を測定した。結果を表1に示す。
【実施例6】
【0041】
ヒトリンパ球類として、1×10cells/mlのヒト末梢血リンパ球を用い、同
体積の450μg/mlのホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いた。
ヒト末梢血は健常人の腕の静脈より採取した。前記ヒト末梢血からの前記ヒト末梢血リ
ンパ球の分離は、リンパ球分離液(LSM)を用いた遠心分離法により行った。生理リン
酸緩衝食塩水(PBS)により2倍に希釈した前記ヒト末梢血を前記LSM上に重層した
後、800rpm(回転/分)にて20分間遠心分離し、LSMと前記ヒト末梢血との界
面に層状に分離したヒト末梢血リンパ球を回収し、前記ヒト末梢血リンパ球として使用し
た。
インスリン10μg/ml、トランスフェリン20μg/ml、エタノールアミン20
μM、亜セレン酸ナトリウム25nMをそれぞれ添加した基本合成培地ERDFを用いて
、37℃の温度で、炭酸ガス体積5%−空気95体積%の雰囲気下、湿度100%の条件
下にて、前記ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液の存在下に前記ヒト末梢血リンパ球
を3日間培養した。
その結果、450μg/mlのホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いた場合、
前記ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合と比較して、IgM抗体が
2.8倍多く産生され、IgG抗体が1.4倍多く産生された。結果を図2および図3に
示す。
なおIgM抗体およびIgG抗体の産生量の測定は、酵素抗体法(ELISA法)によ
り実施した。
【実施例7】
【0042】
濃度の異なる種々のホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を使用したこと、リポポリ
サッカライド(LPS)10μg/mlをさらに追加して加えた以外は実施例6の場合と
同様の操作により、インターフェロンγの産生量を測定した。インターフェロンγの産生
量の測定は、酵素抗体法(ELISA法)により実施した。
図4に示す通り、前記ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合と比較
して、インターフェロンγが100倍多く産生された。
【実施例8】
【0043】
ヒトリンパ球類として、2×10cells/mlのヒト型ハイブリドーマHB4C
5を用い、同体積の10μg/mlのホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いた他
は、実施例1の場合と同様の操作により、ヒト型ハイブリドーマHB4C5の生存率を7
日間追跡した。
ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いない場合と比較して、7日目のヒト型ハ
イブリドーマHB4C5の生存率はほとんど変化しなかった。
一方、ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いない場合と比較して、培養後期の
ヒト型ハイブリドーマHB4C5の生存率低下を抑制する働きが観測された。結果を図5
に示す。
また、ヒト型ハイブリドーマHB4C5の細胞増殖に関しては、培養1日目から5日目
にかけての平均細胞倍加時間は、ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いない場合
が32.9時間であるのに対し、ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いた場合は
23.4時間であった。結果を図5に示す。
【実施例9】
【0044】
10μg/mlのホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を用いた他は、実施例1の場
合と同様の操作を行い、IgM抗体の産生蓄積量の経時変化を調べたところ、培養7日目
までIgM抗体の産生蓄積量は増加した。結果を図6に示す。
【実施例10】
【0045】
実施例7の場合においてインターフェロンγの産生蓄積量の経時変化を調べたところ、
培養2日目までインターフェロンγの産生蓄積量は増加した。結果を図7に示す。
【実施例11】
【0046】
実施例7の場合においてならびに腫瘍壊死因子α(TNFα)の産生蓄積量の経時変化
を調べたところ、培養5日目まで腫瘍壊死因子α(TNFα)の産生蓄積量は増加した。
結果を図8に示す。
なお腫瘍壊死因子α(TNFα)の産生量の測定は、酵素抗体法(ELISA法)によ
り実施した。
【比較例】
【0047】
1.6mg/mlのホワイトタイプクラゲコラーゲンを含有するホワイトタイプクラゲ
コラーゲン水溶液に対し、同体積の25μg/mlのコラゲナーゼで10分間処理し、5
分間煮沸してコラゲナーゼの活性を失活させた後、実施例1の場合と同様に、5×10
cells/mlのヒト型ハイブリドーマHB4C5を6時間培養した。
この結果、IgM抗体の産生量は、コラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼによる処理
を実施しない場合と比較して、半分に低下した。
また、250μg/mlのコラゲナーゼを用いた他は全く同様の条件によりヒト型ハイ
ブリドーマHB4C5を6時間培養した後のIgM抗体の産生量を測定したところ、Ig
M抗体の産生量は、ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液を使用しない場合と同程度で
あった。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液の濃度とIgM抗体の産生量との関係を示したグラフである(実施例2)。
【図2】ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液の濃度とIgM抗体の産生量との関係を示したグラフである(実施例6)。
【図3】ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液の濃度とIgG抗体の産生量との関係を示したグラフである(実施例6)。
【図4】ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液の濃度とインターフェロンγの産生量との関係を示したグラフである(実施例7)。
【図5】ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液存在下における、培養時間ならびにヒト型ハイブリドーマHB4C5の生存率および生細胞密度との関係を示したグラフである(実施例8)。
【図6】ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液存在下における、培養時間とIgM抗体の産生量との関係を示したグラフである(実施例9)。
【図7】ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液存在下における、培養時間とインターフェロンγとの産生量との関係を示したグラフである(実施例10)。
【図8】ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液存在下における、培養時間と腫瘍壊死因子α(TNFα)との産生量との関係を示したグラフである(実施例11)。
【符号の説明】
【0050】
1、3 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在する場合のIgM抗体の産生

2、4 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合のIgM抗体の産
生量
5 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在する場合のIgG抗体の産生量
6 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合のIgG抗体の産生量
7 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在する場合のインターフェロンγの
産生量
8 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合のインターフェロンγ
の産生量
9 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在する場合のヒト型ハイブリドーマ
HB4C5の生存率
10 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合のヒト型ハイブリドー
マHB4C5の生存率
11 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在する場合のヒト型ハイブリドーマ
HB4C5の生細胞密度
12 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合のヒト型ハイブリドー
マHB4C5の生細胞密度
13 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在する場合のIgM抗体の産生蓄積

14 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合のIgM抗体の産生蓄
積量
15 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在する場合のインターフェロンγの
産生蓄積量
16 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合のインターフェロンγ
の産生蓄積量
17 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在する場合の腫瘍壊死因子α(TN
Fα)の産生蓄積量
18 ホワイトタイプクラゲコラーゲン水溶液が存在しない場合の腫瘍壊死因子α(
TNFα)の産生蓄積量





【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンの存在下にヒトリンパ球類を培養することを特徴とする免疫調節蛋白質の製
造方法。
【請求項2】
前記ヒトリンパ球類が、ヒトリンパ球およびヒト型ハイブリドーマ細胞からなる群より
選ばれる少なくとも一種であり、
かつ前記免疫調節蛋白質が、免疫グロブリンおよびサイトカインからなる群より選ばれ
る少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載の免疫調節蛋白質の製造方法

【請求項3】
前記免疫グロブリンが、IgM抗体およびIgG抗体からなる群より選ばれる少なくと
も一種であり、
かつ前記サイトカインが、インターフェロンα、βおよびγならびに腫瘍壊死因子αか
らなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載の免疫調節
蛋白質の製造方法。
【請求項4】
前記コラーゲンが、ホワイトタイプクラゲ、チャイナタイプクラゲ、セミチャイナタイ
プクラゲ、キャノンボールタイプクラゲおよびボールタイプクラゲからなる群より選ばれ
る少なくとも一種から得られたコラーゲンを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいず
れかに記載の免疫調節蛋白質の製造方法。
【請求項5】
コラーゲンを使用することを特徴とするヒトリンパ球類の培養方法。
【請求項6】
コラーゲンの存在下に培養されたことを特徴とするヒトリンパ球類。
【請求項7】
ヒトリンパ球類培養用コラーゲン。
【請求項8】
ホワイトタイプクラゲ、チャイナタイプクラゲ、セミチャイナタイプクラゲ、キャノン
ボールタイプクラゲおよびボールタイプクラゲからなる群より選ばれる少なくとも一種か
ら得られたコラーゲンを含むことを特徴とする、請求項7に記載のヒトリンパ球類培養用
コラーゲン。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−204248(P2006−204248A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23467(P2005−23467)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(590006398)マルトモ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】