説明

免震装置

【課題】装置の高さの低減化を可能にし、支持荷重を増幅出来、荷重変化に簡単に対応できる免震装置を提供する。
【解決手段】免震装置300は、基板302とこの基板302の上方に配置された上部テーブル304との間にあって、基板302に対する上部テーブル304の上下方向の変位を上下方向とは異なる方向の変位に拡大する変位拡大機構306と、この変位拡大機構306の変位に対して一定の荷重を与える定荷重機構310と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
免震装置には、水平方向の免震と鉛直方向の免震があるが、水平方向に対しては通常の状態で免震対象物に重力等の慣性が作用しないため、建物の一部を水平方向に柔らかくすることで構造物の周期を長くしこれにより地震時における水平方向の入力(応答加速度)を低減したり、さらにダンパーを設けることで地震エネルギーを吸収し地震入カエネルギーの内上部建物の損傷の原因となる成分を低減したりする等、非能動型(パッシブ)な制御でも比較的対応が容易である。これは、局所的な免震装置においても同様である。
【0003】
これに対し、鉛直方向の免震に関しては、通常の状態で慣性力である重力が免震対象物に作用するため、パッシブに制御しようとした場合、水平方向ほど簡単にはいかない。水平方向免震の場合と同様に一部を柔らかくするだけでは、上下方向の大きな静たわみを生じることになるからである。
【0004】
そこで、特許文献1、特許文献2に示すように、非線形弾性の復元力特性を利用することで、重力による大きな静たわみを避けた上で、長周期化を可能にすることを目指して種々の開発がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−157288号公報
【特許文献2】特開2008−69866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2においても、装置の背が高い、また、支持荷重が小さい、荷重変動の対応が難しい、支持荷重の変更に対しバランスウエイトや錘、バネの付加又は取外しのように段階的に対応せざるを得ない等の欠点が未だ解決できない状況である。
【0007】
そこで、この発明は、前記従来技術を考慮し、装置の高さの低減化を可能にし、支持荷重を増幅出来、荷重変化に簡単に対応できる免震装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、基板と該基板の上方に配置された上部テーブルとの間にあって、前記基板に対する前記上部テーブルの上下方向の変位を上下方向とは異なる方向の変位に拡大する変位拡大手段と、前記変位拡大手段の変位に対して一定の荷重を与える定荷重手段と、を有する免震装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記変位拡大手段は、前記基板及び前記上部テーブルの少なくともいずれか一方に垂直方向に設けられ、斜辺縁又は弧状縁を有する受け部材と、前記受け部材に沿って移動自在に設けられた可動部材と、を有し、前記定荷重手段は、前記可動部材の移動に対して一定の荷重を与える請求項1記載の免震装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記変位拡大手段は、前記上部テーブルの下面から垂下した平行な一対の略二等辺三角形状の垂片と、前記各垂片の一面と摺り合うように前記基板の上面に立設した平行な一対の略二等辺三角形状の立片と、を有し、前記定荷重手段は、前記垂片と立片とが摺り合わさった両側の斜辺縁又は弧状縁にそれぞれスライド自在に設けられた可動部材の間に渡るように設けられている請求項1記載の免震装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記基板及び前記上部テーブルの外周縁の各辺に設けられた蝶番構造体の両板の外端縁を、該基板及び該上部テーブルに回動自在に接続して、該基板及び該上部テーブルを相対的に上下に移動自在に支持する支持手段、をさらに有し、前記変位拡大手段は、対向する一対の前記蝶番構造体の蝶番軸箇所からそれぞれ回転自在に支持され、両側縁に先端側が大きく軸支持部幅が小さい凹湾状に切り欠いた弧状縁を有する作用板を有し、前記定荷重手段は、相対向する前記作用板の両側の各弧状縁に沿ってスライド自在に設けられた可動部材の間に渡るように設けられている請求項1記載の免震装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記基板の上方又は下方に設けられ、免震対象物への水平方向の震動に対応する水平免震機構、をさらに有する請求項1乃至4いずれか記載の免震装置である。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記水平免震機構は、下面に湾曲凹部を有する上板と、前記上板の下方に設けられ中央部に大径孔を有する下板と、前記下板に対して、前記上板が水平を維持して上下に移動自在とする免震作用体を備え、前記上板の四辺と前記下板の四辺とのそれぞれに両板を回転自在に接続して設けられた蝶番構造体と、前記下板を支持する平板と、前記平板上に載せられ、前記上板の湾曲凹部の山部形状に相応する湾曲形状の少なくとも上部を有するコマと、を有し、前記免震作用体を前記下板の大径孔に前記コマを通して被せ、該コマの上部が前記上板の湾曲凹部に接触し、該免震作用体に作用する振幅が一定値以内では該免震作用体が該コマを中心に湾曲凹部の範囲で移動し定位置に戻る構成であることを特徴とする請求項5記載の免震装置である。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記免震作用体に作用する振幅が一定値を超えた場合に、前記コマが該免震作用体とともに前記平板上を移動可能である請求項6記載の免震装置である。
【0015】
請求項8に係る発明は、前記可動部材が移動して変位する方向を変更する変更手段、をさらに有する請求項2乃至7いずれか記載の免震装置である。
【0016】
請求項9に係る発明は、前記定荷重手段は、前記可動部材の移動に対して一定の荷重を与える第一の荷重部と、前記第一の荷重が荷重を与える前記可動部材の移動範囲よりも狭い範囲で該可動部材の移動に対して一定の荷重を与える第二の荷重部と、を有し、前記基板及び前記上部テーブルの距離が予め定められた第一の距離以下となった場合に、免震対象物の重量よりも大きい復元力となるように一定の荷重を与え、前記基板及び前記上部テーブルの距離が第一の距離よりも大きく予め定められた第二の距離以上となった場合に免震対象物の重量よりも小さい復元力となるように一定の荷重を与える請求項2記載の免震装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明によれば、支持荷重を増幅しつつ免震対象物に作用する応答加速度を抑制することができる。
【0018】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る本発明の効果に加えて、装置自体の上下方向に占める範囲を抑制することができる。
【0019】
請求項3に係る本発明によれば、請求項1に係る本発明の効果に加えて、免震対象物に過大な応答加速度が生じることを回避して、免震対象物及びこれを支持する構成が破損に至る事態を有効に防止することができる。従って、建屋をはじめ、各種計測や制御用の精密機器を載せるための免震台や、美術品等を展示するための免震台等、種々の分野に広範に適用が可能となる。
【0020】
請求項4に係る本発明によれば、請求項1に係る本発明の効果に加えて、免震対象物に過大な応答加速度が生じることを回避して、免震対象物及びこれを支持する構成が破損に至る事態を有効に防止することができる。従って、建屋をはじめ、各種計測や制御用の精密機器を載せるための免震台や、美術品等を展示するための免震台等、種々の分野に広範に適用が可能となる。
【0021】
また、請求項3及び請求項4に係る本発明によれば、上部テーブルと基板との間に定荷重手段を横方向に設けているため、免震装置自体の高さを、従来の免震装置に比べて低くすることができ、さらに定荷重手段を設けることにより鉛直方向の免震のストロークを大きくとることができる。また、非線形弾性の復元力特性を持たせることで重力による過大な静たわみを回避した上で固有周期の長周期化が可能となり、共振が生じるおそれがない。また、斜辺縁又は孤状縁の形状を変更することで、支持荷重が大きいものにも対応できる効果を奏する。
【0022】
請求項5に係る本発明によれば、請求項1乃至4いずれかに係る本発明の効果に加えて、鉛直方向に加え水平方向に対しても免震効果を有する三次元免震となる。三次元免震によれば、免震対象物が倒れたり破損したりするのをより効果的に抑制することができる。
【0023】
請求項6に係る本発明によれば、請求項5に係る本発明の効果に加えて、装置自体の水平方向に占める範囲を抑制することができる。さらに、水平方向の免震装置の高さを低く抑えることができる。また、水平方向の免震機構のストロークを従来のものより大きくすることができる。
【0024】
請求項7に係る本発明によれば、請求項6に係る本発明の効果に加えて、免震装置の復元する限界を超えた振幅の大きな地震等の揺れに対しても免震対象物が転倒したりするおそれがない。
【0025】
請求項8に係る本発明によれば、請求項1乃至7いずれかに係る本発明の効果に加えて、支持荷重の増幅率を変更することができる。
【0026】
請求項9に係る本発明によれば、請求項2に係る本発明の効果に加えて、免震対象物に作用する力の範囲を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第一実施形態に係る鉛直免震機構の斜視図である。
【図2】この発明の第一実施形態に係る鉛直免震機構の正面図である。
【図3】この発明の第一実施形態に係る鉛直免震機構の側面図である。
【図4】この発明の第一実施形態に係る鉛直免震機構に上からの荷重がかかった状態の正面図である。
【図5】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の斜視図である。
【図6】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の遮断面図であり、図5のA−A線箇所の断面図である。
【図7】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の縦断面図であり、図5のB−B線箇所の断面図である。
【図8】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の上部テーブルを取り除いた概略構成平面図である。
【図9】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の作用板と第2横俸との係止構造を示す拡大要部平面図である。
【図10】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の原理を示すもので、(a)図は上部テーブルが通常の状態の立面図、(b)図は上部テーブルが最高の位置の状態の立面図、(c)図は上部テーブルが最低の位置の状態の立面図である。
【図11】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の原理を示すもので、(a)図は上部テーブルが通常の状態での作用板と第2横棒の関係を示す平面図、(b)図は上部テーブルに荷重がかかり、下がった状態での作用板と第2横棒の関係を示す平面図である。
【図12】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の上部テーブルの鉛直変位と支持荷重の復元力特性を示すグラフ図である。
【図13】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の耐荷重を増幅する例を示す図で、(a)図は上部テーブルが通常の状態での作用板と第2横棒の関係を示す平面図、(b)図は上部テーブルに荷重がかかり、下がった状態での作用板と第2横棒の関係を示す平面図である。
【図14】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の耐荷重を増幅する例を用いた場合の、上部テーブルの鉛直変位と支持荷重の復元力特性を示すグラフ図である。
【図15】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の作用板の孤状縁を二つの曲率の円孤から成るものにした拡大平面図である。
【図16】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の作用板の孤状縁を二つの曲率の円孤から成るものにした場合の上部テーブルの鉛直変位に対する支持荷重の復元力特性を示すグラフ図である。
【図17】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の作用板の孤状縁の曲線を変更することにより得られる、上部テーブルの鉛直変位に対する支持荷電の線形の復元力特性を示すグラフ図である。
【図18】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の荷重増減変更機能付き構成を示す原理図である。
【図19】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構の荷重増減変更機能付き構成における、三角枠の変化を示す説明図である。
【図20】この発明の第二実施形態に係る鉛直免震機構を耐荷重変化機能付き装置とするための定荷重バネと変速機を組み合わせた構成を示す説明図であり、(a)図は鉛直免震機構の側面立面図、(b)図は鉛直免震機構のC−C線断面図である。
【図21】この発明の一実施形態として用いられる水平免震機構の分解斜視図である。
【図22】この発明の一実施形態として用いられる水平免震機構の縦断面図である。
【図23】この発明の一実施形態として用いられる水平免震機構の作動状況を示す図で、(a)図は通常状態での水平免震機構の状態を示す正面図、(b)図は揺れた時の状態を示す正面図、(c)図は振幅が大きく揺れた時の状態を示す正面図である。
【図24】この発明の一実施形態として用いられる水平免震機構の水平変位と支持荷重の復元力特性を示すグラフ図であり、(a)図は免震作用体の湾曲凹部を円錐にした場合の復元特性を示すグラフ図、(b)図は免震作用体の湾曲凹部を2次曲面にした場合の復元特性を示すグラフ図である。
【図25】この発明の第三実施形態に係る鉛直免震機構の正面図である。
【図26】図26におけるD−D線断面図である。
【図27】この発明の第三実施形態に係る鉛直免震機構の変位方向変更部の制御機能の構成図である。
【図28】この発明の第三実施形態に係る鉛直免震機構により支持荷重が増幅される原理を説明する説明図である。
【図29】この発明の第三実施形態に係る鉛直免震機構の変位拡大機構及び定荷重機構の動作を正面からみた模式図である。
【図30】この発明の第三実施形態に係る鉛直免震機構の変位拡大機構及び定荷重機構の動作を上方からみた模式図である。
【図31】この発明の第三実施形態に係る鉛直免震機構における基板に対する上部テーブルの上下方向の変位と、復元力との関係を示すグラフである。
【図32】この発明の第三実施形態に係る鉛直免震機構の変位方向変更部の動作を説明する模式図である。
【図33】この発明の第四実施形態に係る鉛直免震機構の正面図である。
【図34】この発明の第四実施形態に係る鉛直免震機構により支持荷重が増幅される原理を説明する説明図である。
【図35】この発明の一実施形態として用いられる免震装置の全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図35は、本発明の一実施形態に係る免震装置200の全体概略図である。
【0029】
図35に示すように、免震装置200は、鉛直方向(上下方向)の震動(上下動)に対応する鉛直免震機構202と、この鉛直免震機構202の下方に設けられ水平方向の震動(水平動)に対応する水平免震機構204とにより構成される。
なお、鉛直免震機構202は、水平免震機構204の下方に設けるようにしてもよい。
【0030】
[第一実施形態]
次に、鉛直免震機構202の第一実施形態に係る鉛直免震機構Aについて、図に基づいて説明する。
図1は第一実施形態に係る鉛直免震機構Aの斜視図、図2は鉛直免震機構Aの正面図、図3は鉛直免震機構Aの側面図、図4は鉛直免震機構Aの上に免震の対象となる免震対象物を置いた状態を示す正面図である。
【0031】
鉛直免震機構Aは、基板1の上に、水平を維持しながら上下に移動自在な上部テーブル2を、これらの相対向する外側縁に設けた二つのリンク機構3により支持している。このリンク機構3は、両端の上下のリンク片3a、3aを回転自在に軸支し、かつ両端の各リンク片3a、3aの軸支部を横方向リンク片3bで回転自在に接続している。これにより、上部テーブル2は、基板1に対して、水平を維持しながら、近接又は離反自在となっている。なお、前記リンク機構3は、上部テーブル2又は基板1の相対向する一対の外側縁に設けたが、上部テーブル2等の四辺に設けても良い。また、鉛直方向に設置したリニアスライダーを前記リンク機構に組み合わせることや、前記リンク機構3をリニアスライダーに置き換えることも可能である。
【0032】
また、前記上部テーブル2の下面から平行な一対の略二等辺三角形状の垂片4(受け部材)を設け、また、前記基板1の上面に、前記垂片4と摺り合わさるように、平行な一対の略二等辺三角形状の立片5(受け部材)を立設している。そして、当該立片5は、前記垂片4を挾むように2枚の片から構成され、前記垂片4が2枚の片の間に挿入自在となっている。これらの垂片4と立片5との摺り合わさった両側の斜辺縁にそれぞれ可動部材として第1横棒6を設け、これらの二つの第1横棒6の間に、前記上部テーブル2の荷重を受ける定荷重機構として定荷重バネ7を渡して設けている。前記定荷重バネ7は伸びが微小な範囲では高い剛性を有し、伸びが微小な範囲を超えると、一定の引張力を支持する巻尺型のものである。
第一実施形態においては、垂片4、立片5、及び第1横棒6により変位拡大機構が構成される。
【0033】
そして、上部テーブル2に上方から荷重がかかると、図4に示す如く、上部テーブル2は水平を維持しながら下がり、これにより垂片4が立片5に深く挿入される。そして、垂片4及び立片5の両端の斜片縁に沿って第1横棒6が動き、定荷重バネ7は当該荷重に合わせて動く。この装置の減衰は、第1横棒6と垂片4及び立片5の斜辺縁との摩擦により生じる。
【0034】
この様に定荷重バネ7を用いることにより、地震等の振動に対し、免震することができる。なお、前記垂片4及び立片5は二等辺三角形としたが、この二辺の斜辺縁の勾配を適宜の値にすることで、免震装置の支持荷重を調整することができる。また、これらの垂片4及び立片5の斜辺縁を孤状縁もしくは折れ線縁とすることで、免震装置の復元力特性を調整することもできる。斜辺縁を二次関数の形状とすれば、免震装置は線形の復元力特性を持つ。また、斜辺縁を折れ線とすれば、免震装置は階段状の復元特性を持つ。
【0035】
[第二実施形態]
次に、鉛直免震機構202の第二実施形態に係る鉛直免震機構Bついて説明する。
第二実施形態は、第一実施形態の鉛直免震機構Aをさらに改良した鉛直方向の免震機構である。
図5は鉛直免震機構Bの斜視図、図6は図5のA−A線断面図、図7は図5のB−B線断面図、図8は鉛直免震機構Bの上部テーブルを取り除いた概略構成平面図、図9は鉛直免震機構Bの作用板と第2横棒の係止構造を示す拡大要部平面図である。
【0036】
この鉛直免震機構Bは、四辺形の基板11の上に、水平を維持しながら上下に移動自在な四辺形の上部テーブル12を、上部テーブル12と基板11の外周縁の各辺に設けた蝶番構造体13により支持している。この蝶番構造体13は、両板13a、13bの外端縁を上部テーブル12及び基板11の外縁に夫々回転自在に接続しており、これにより上部テーブル12を基板11に対して水平を維持しながら近接又は離反自在に支持している。
【0037】
また、これらの相対向する一対の蝶番構造体13の蝶番軸13c箇所から夫々回転自在に支持された作用板14を設け、当該各作用板14の両側縁を、先端幅が大きく軸支部の幅が小さく凹湾状に切り欠いた円孤縁14aとし、当該相対向する作用板14の両側の各円孤縁14aに、当該各円孤縁14aに沿って移動自在に両端を支持された可動部材として第2横棒15を設け、当該二つの第2横棒15の間に定荷重機構として複数の定荷重バネ16を渡して設けている。
第二実施形態においては、蝶番構造体13、作用板14、及び第2横棒15により変位拡大機構が構成される。
【0038】
前記各作用板14の円孤縁14aに対する第2横棒15の両端のスライド自在な係止は、図9に示すように、第2横棒15の一端に鉤型軸を突出させ、当該鉤型軸にローラ15aを回転自在に支持させたものである。これにより第2横棒15はその両端を各作用板14の円孤縁14aに沿ってスライド自在に係止される。また、この装置での減衰は、前記ローラ15aの車輪と車軸の摩擦、もしくは第2横棒15と定荷重バネ16の摩擦により生ずるものである。
【0039】
以下、当該鉛直免震機構Bの原理を図10及び11に基づいて説明する。
図10の(a)図は上部テーブル12が通常の状態の立面図を示し、(b)図は上部テーブル12が最高の位置の状態の立面図、(c)図は上部テーブル12が最低の位置の状態の立面図を示す。上部テーブル12に荷重がかかった場合の上部テーブル12の鉛直変位は、蝶番構造体の両板をHとすると、v = 2H (1−cosθ)となり、蝶番軸13cの水平変位はu = H sinθとなる。
【0040】
また、図11の(a)図は上部テーブル12が通常の状態での作用板14と第2横棒15の関係を示す平面図、(b)図は上部テーブル12に荷重がかかり、下がった状態での作用板14と第2横棒15の関係を示す平面図である。上部テーブル12が下がると、蝶番構造体13の働きにより、蝶番構造体13の両板13aと13aは相互により鋭角に折れ曲がり、両側の作用板14の間隔は開く。
【0041】
これにより、(a)図に示すように、各第2横棒15は伸びないため、その両端は各ローラ15aが作用板14の円孤縁14aに沿ってスライドし、2本の第2横棒15の間隔は伸びる。この2本の第2横棒15の間隔の伸び(2w)が2H (1−cosθ)となり、上部テーブル12の鉛直変位(v)と等しい。これらの第2横棒15の間に定荷重バネ16を渡してつないだものである。従って、定荷重バネ16の支持荷重(合計)N(一定値)と免震装置の復元力Fの間に、Fv = N (2w)の仕事式が成り立つ。v = 2wより、F = Nで上部テーブル12を支持している。
【0042】
また、図12は上部テーブル12の鉛直変位vと支持荷重Nの復元力Fの特性を示す図である。
【0043】
また、図13は耐荷重を増幅する例を示す。この場合、前記作用板14の円孤縁14aの形状を変更し、楕円孤縁14b(楕円長半径βH)とした。図13の(a)図は上部テーブル12が通常の状態での作用板14と第2横棒15の関係を示す平面図、(b)図は上部テーブル12に荷重がかかり、下がった状態での作用板14と第2横棒15の関係を示す平面図である。この様に、上部テーブル12に荷重がかかると第2横棒15は作用板14の楕円孤縁14bに沿って外方にスライドして二つの楕円孤縁14bの間隔は拡がる。
【0044】
この場合、2本の第2横棒15の間隔の伸び(2w)が上部テーブル12の鉛直変位(v)のβ倍となる。それ故、以下の仕事式Fv = N (2w)と、幾何学的開係式2w = βvが成り立つ。従ってF = βNとなり、定荷重バネ16の支持荷重(合計)Nのβ倍の力で上部テーブル12を支持することとなる。
【0045】
また、図14は、図13の場合の上部テーブル12の鉛直変位vと支持荷重Nの復元力Fの特性を示す図である。
【0046】
さらに、図15に示すように、前記作用板14の孤状縁の形状を2種類の長半径の楕円を接続した孤状縁14cとすることもできる(長半径αH、βH、α<β)。これにより図16に示すように階段状の復元力特性を得ることができる。また、前記孤状縁14cの曲線を適宜変更することで、図17に示すように、線形の復元力も設定可能である。
【0047】
また、鉛直免震機構Bは耐荷重変化の構造を持つこともできる。その一例として、図18に示すように、前記各第2横棒15の中央部に二等辺三角形から成る三角枠17を夫々設け、当該三角枠17の各斜辺にスライド自在に第3横棒18を係止し、当該二つの第3横棒18間に定荷重バネ19をつないだものである。そして、前記各三角枠17の長辺17aをねじ切り棒とし、当該ねじ切り棒(長辺17a)を伸ばすことにより、図19に示すように、斜辺17bが伸縮アンテナの構造と同様な構造を有して伸び、傾斜が変化する構成となっている。前記ねじ切り俸状の長辺17aは自動又は手動で伸縮自在となっており、これに相応して斜辺17bが伸縮する。この様に荷重増減が変更出来る構成とすることもで
きる。
【0048】
また、他の例として、前記図18及び図19の構成に代えて、定荷重バネと無段階変速機にすることもでき、これにより耐荷重変化の構造を持つことができる。この場合は、定荷重バネ16を図18に示すように90度向きを変える必要はない。
【0049】
図20は鉛直方向の復元力Fwの最大値を容易に変更したり大きくしたりするために、変速機を利用する構成を示す。図20の(a)図は装置の側面立面図であり、同(b)図は装置のC−C線断面図である。この装置は、柱101、スプロケット102、チェーン103、ギア104、定トルクバネ105、装置底板106、ワイヤー107、上部ホイール108、下部ホイール109により構成されている。この様にギア104や変速機を介して定トルクバネ105とワイヤー107を接続することで、ワイヤー107に作用する張力Fの値を変更することや、Fの値を定トルクバネ105の支持荷重の数倍に大きくすることができる。
【0050】
上部ホイール108と下部ホイール109のギア比が一定であれば、ギア104と下部ホイール109の半径の比が大きいほどFの値を大きくすることができるが、定トルクバネ105に要求されるストロークも大きくなる。また、復元力特性を連続的に変化させたい場合においては、自動車や自転車等に用いられる無断変速機を用いると効果的である。
【0051】
次に、水平免震機構204の詳細について説明する。
図21は水平免震機構204の一実施形態である水平免震機構Cの分解斜視図、図22は水平免震機構Cの縦断面図である。
【0052】
この水平免震機構Cは、下面に円錐型凹部21aを有する上板21の四辺と、中央部に大径孔22aを有する下板22の四辺に夫々蝶番構造体23とを設け、各蝶番構造体23は、両板23aの外端縁を上板21及び下板22に回転向在に接続し、前記下板22に対して、上板21が、水平を維持しながら上下に移動向在とした免震作用体24を設けている。
【0053】
この免震作用体24の下板22を支持する平板25を用意し、当該平板25上にコマ26を載せ、当該コマ26を前記免震作用体24の下板22の大径孔22aを通して前記上板21の円錐型凹部21aにその上部を当接させている。コマ26の上部は当該円錐型凹部21aに相応する円錐形状であり、下部は円柱形状となっている。
【0054】
従って、当該免震作用体24に作用する揺れが一定値以内のストロークであれば、図23の(b)図に示すように、静止したコマ26を中心に免震作用体24が円錐型凹部21aの範囲で平板25上を移動し、また、免震作用体24にかかる上からの荷重により、図23の(a)図に示すように、円錐型凹部21aにガイドされて免震作用体24は円錐型凹部21aの中央部がコマ26の位置まで戻る。つまり原点に復帰する構成となっている。また、この水平免震機構Cに載せる搭載物の重さに関係なく上記作用は行われる。また、減衰は、コマと免震作用体の上板の円錐型凹部との摩擦により行われ、付加的な滅衰装置は不要である。
【0055】
そして、前記免震作用体24に作用する揺れのストロークが一定値を超えた場合は、免震作用体24はコマ26を中心に円錐型凹部21aの端まで移動し、更に、図23の(c)図に示すように、コマ26を平板25上で動かす。そして、図示はしていないが、コマ26は静止して、円錐型凹部21aにガイドされて円錐型凹部21aの中央部がコマ26の位置に戻る。
【0056】
水平免震機構Cではコマ26の形状を上部が円錐形状、下部が円柱形状としているが、これに限らず、球体、又は変形可能で復元力のある球体等にしても良く、球体等にすれば、さらにストロークが大きくなる。また、前記円錐型凹部21aは、他の形状でもよく、二次曲面等、適宜の湾曲凹部であれば良い。
【0057】
図24はこの水平免震機構Cの水平変位と支持荷重の復元力特性を示すグラフ図であり、(a)図は免震作用体の湾曲凹部を円錐にした場合の復元特性を示し、(b)図は免震作用体の湾曲凹部を2次曲面にした場合の復元特性を示す図である。
【0058】
これは、従来、免震台は平行を維持するため、4個の免震台が必要であり、1片Lの正方形の免震台の場合、片振幅L / 4が限界であった。しかし、大地震時にはより大きいストロークが可能な免震台が要求されている。そこで、特許第3394766号等において片振幅L / 2(通常の2倍)の振幅の装置が提案されている。
【0059】
この水平免震機構Cのものは、免震作用体24の上面が常に水平を保持する構造であるため、1台で済む。従って、前記従来のものに比べ倍のストロークが可能である。従って、前記特許第3394766号と比較して同程度のストロークにも関わらず、機構が大幅に簡素化されており、その上、コマ26を上述のように球体等にすれば、前記特許第3394766号のものよりさらにストロークが大きいものになる。しかも、この水平免震機構Cは高さを低く抑えることができ、構造の簡素化と相まって、低コストで製造することができる。
【0060】
また、従来の免震装置では、地震等の揺れが装置の復元する振幅を超えると、衝突が発生し、免震台上の器物が転倒する。しかし、この水平免震機構Cではこのような復元する振幅の限界を超えた場合でも、コマ26が平板25上を滑り、免震台の上の器物は転倒しない。
【0061】
水平免震機構204としては、転がり支承や滑り支承を用いた構成のものであってもよい。
【0062】
[第三実施形態]
次に、鉛直免震機構202の第三実施形態に係る鉛直免震機構300について説明する。
図25は、鉛直免震機構300の正面図を示す。
図26は、図26におけるD−D線断面図を示す。
【0063】
鉛直免震機構300は、基板(下部部材)302と、上部テーブル(上部部材)304と、変位拡大機構306と、定荷重機構308と、変位方向変更部310とを備える。
【0064】
基板302は、例えば平坦な板状に形成され、水平免震機構204の上部等に固定される。
上部テーブル304は、例えば平坦な板状に形成されており、その上面に免震の対象とする対象物(「免震対象物」と称する)が載置されるようになっている。上部テーブル304は、実質的に水平な姿勢を維持しながら基板302に対して相対的に上下動自在に配置されている。本実施形態においては、基板302が水平となるように配置されており、上部テーブル304はこの基板302と実質的に平行となるように構成されている。
なお、基板302及び上部テーブル304には、これら基板302と上部テーブル304とを相対的に上下動自在に案内するリンク機構3等の支持部材を設けるようにしてもよい。
【0065】
変位拡大機構306は、基板302と上部テーブル304との間にあって、この基板302に対する上部テーブル304の上下方向の変位を上下方向とは異なる方向の変位に拡大する。
変位拡大機構306は、本実施形態においては、基板302の四隅に垂直方向にそれぞれ設けられた下部受け部材320と、上部テーブル304の四隅に垂直方向にそれぞれ設けられた上部受け部材322と、左側及び右側(図25において左右方向)にそれぞれ設けられた二つの可動部材324とを備える。
【0066】
四つの下部受け部材320はそれぞれ、左右方向及び前後方向(図26において上下方向)に対して対称となるように配置されている。同様に、四つの上部受け部材322はそれぞれ、左右方向及び前後方向に対して対称となるように配置されている。
下部受け部材320と上部受け部材322とは、上下方向については対称となり、前後方向については下部受け部材320が上部受け部材322よりも外側となるように配置されている。
【0067】
下部受け部材320はそれぞれ、基板302に固定された下部固定部材330と、この下部固定部材330に対して軸330aを介して回転自在に設けられた下部傾斜部材332とを備える。下部傾斜部材332は、基板302及び上部テーブル304に対し所定の角度をなすように配置されている。
下部傾斜部材332の上面(上部テーブル304側の面)には、斜辺縁332aが形成されており、この斜辺縁332aには溝332bが設けられている。
なお、左右に配置された下部固定部材330には、それぞれを接続して固定する補強部材を設けるようにしてもよい。
【0068】
上部受け部材322はそれぞれ、上部テーブル304に固定された上部固定部材340と、この上部固定部材340に対して軸340aを介して回転自在に設けられた上部傾斜部材342とを備える。上部傾斜部材342は、基板302及び上部テーブル304に対し所定の角度をなすように配置されている。
上部傾斜部材342の下面(基板302側の面)には、斜辺縁342aが形成されており、この斜辺縁342aには溝342bが設けられている。
なお、左右に配置された上部固定部材340には、それぞれを接続して固定する補強部材を設けるようにしてもよい。
【0069】
可動部材324は、本実施形態においては、下部受け部材320と上部受け部材322とに挟まれるように、左右に二つ設けられている。可動部材324は軸部材(シャフト)350を備え、この軸部材350の両端それぞれには第一の回転支持部材352と、この第一の回転支持部材352の前後方向内側それぞれに位置する第二の回転支持部材354とが設けられている。
第一の回転支持部材352及び第二の回転支持部材354は、例えば、外周に摩擦抵抗(転がり抵抗)を低減する処理の施されたベアリングにより構成され、軸部材350に対し回転自在となっている。
【0070】
第一の回転支持部材352は、下部受け部材320の斜辺縁332aの溝332bに嵌り、この溝332bに案内されて移動するようになっている。また、第二の回転支持部材354は、上部受け部材322の斜辺縁342aの溝342bに嵌り、この溝342bに案内されて移動するようになっている。このように、軸部材350は、第一の回転支持部材352及び第二の回転支持部材354を介して、斜辺縁332a及び斜辺縁342aに沿って移動自在に設けられている。
【0071】
定荷重機構308は、変位拡大機構306の変位に対して一定の荷重を与える。
定荷重機構308は、本実施形態においては、左右に設けられた二つの可動部材324
を接続するように設けられ、これらの可動部材324の移動に対して一定の荷重を与える。定荷重機構308は、第一の定荷重部360と、第二の定荷重部362とにより構成される。
【0072】
第一の定荷重部360は、巻尺型で一定引張力を与える第一の定荷重バネ370を備える。第一の定荷重バネ370の一端は、一方(例えば左側)の可動部材324の軸部材350に巻き取られるように固定され、他端は、他方(例えば右側)の可動部材324の軸部材350に巻き取られるように固定されている。
第一の定荷重部360は、可動部材324の移動に対して一定の荷重を与える。
【0073】
第二の定荷重部362は、巻尺型で一定引張力を与える第二の定荷重バネ380と、例えばコイルバネ等からなる弾性部材382と、これら第二の定荷重バネ380と弾性部材382とを連結する連結部材384とを備える。連結部材384は、例えばひも状の部材等であり、引張時には連結する両者の距離の変化が生じないように抵抗し、圧縮時には柔軟に追従するものにより構成される。
第二の定荷重バネ380の一端は、一方(例えば左側)の可動部材324の軸部材350に巻き取られるように固定され、他端は、連結部材384を介して弾性部材382に接続されている。弾性部材382の一端は、連結部材384を介して第二の定荷重バネ380に接続され、他端は、第二の定荷重バネ380が固定された可動部材324とは異なる側(例えば右側)の可動部材324の軸部材350に固定されている。
第二の定荷重部362は、第一の定荷重部360が荷重を与える可動部材324の移動範囲よりも狭い範囲でこの可動部材324の移動に対して一定の荷重を与える
【0074】
変位方向変更部310は、可動部材324が移動して変位する方向を変更する。
変位方向変更部310は、本実施形態においては、下部受け部材320の斜辺縁332a及び上部受け部材322の斜辺縁342aそれぞれの上下方向に対する傾斜の角度を変更する。変位方向変更部310は、基板302側に設けられた下部変更部402と、上部テーブル304側に設けられた上部変更部404とを備える。
【0075】
下部変更部402は、下部受け部材320の斜辺縁332aの傾斜の角度を変更する。具体的には、下部変更部402は、下部直動駆動機構412と、第一の下部移動部材414と、第二の下部移動部材416とを備える。
【0076】
下部直動駆動機構412は、基板302の左右方向に渡るようにして設けられた下部リニアシャフト420と、この下部リニアシャフト420に沿って移動する第一の下部直動部材424及び第二の下部直動部材426とを備える。第一の下部直動部材424と第二の下部直動部材426とは、下部リニアシャフト420の回転に伴ってそれぞれが反対方向に移動するように構成されている。
【0077】
第一の下部移動部材414は第一の下部直動部材424に固定され、左側に設けられた二つの下部受け部材320を接続するように前後方向に渡って配置されている。第一の下部移動部材414は、第一の下部直動部材424の動作に伴って移動するようになっている。
第一の下部移動部材414の前後方向両端にはそれぞれ、第一の下部接続部材434の一端が軸414aを介して回転自在に設けられている。第一の下部接続部材434の他端は、軸332cを介して下部受け部材320の下部傾斜部材332に回転自在に設けられている。
第一の下部移動部材414の移動に伴って、この第一の下部移動部材414に接続された左側の下部傾斜部材332の傾斜角度が変更するようになっている。
【0078】
第二の下部移動部材416は第二の下部直動部材426に固定され、右側に設けられた二つの下部受け部材320を接続するように前後方向に渡って配置されている。第二の下部移動部材416は、第二の下部直動部材426の動作に伴って移動するようになっている。
第二の下部移動部材416の前後方向両端にはそれぞれ、第二の下部接続部材436の一端が軸416aを介して回転自在に設けられている。第二の下部接続部材436の他端は、軸332cを介して下部受け部材320の下部傾斜部材332に回転自在に設けられている。
第二の下部移動部材416の移動に伴って、この第二の下部移動部材416に接続された右側の下部傾斜部材332の傾斜角度が変更するようになっている。
【0079】
上部変更部404は、上部受け部材322の斜辺縁342aの傾斜の角度を変更する。具体的には、上部変更部404は、上部直動駆動機構442と、第一の上部移動部材444と、第二の上部移動部材446とを備える。
【0080】
上部直動駆動機構442は、上部テーブル304の左右方向に渡るようにして設けられた上部リニアシャフト450と、この上部リニアシャフト450に沿って移動する第一の上部直動部材454及び第二の上部直動部材456とを備える。第一の上部直動部材454と第二の上部直動部材456とは、上部リニアシャフト450の回転に伴ってそれぞれが反対方向に移動するように構成されている。
【0081】
第一の上部移動部材444は第一の上部直動部材454に固定され、左側に設けられた二つの上部受け部材322を接続するように前後方向に渡って配置されている。第一の上部移動部材444は、第一の上部直動部材454の動作に伴って移動するようになっている。
第一の上部移動部材444の前後方向両端にはそれぞれ、第一の接続部材464の一端が軸444aを介して回転自在に設けられている。第一の接続部材464の他端は、軸342cを介して上部受け部材322の上部傾斜部材342に回転自在に設けられている。
第一の上部移動部材444の移動に伴って、この第一の上部移動部材444に接続された左側の上部傾斜部材342の傾斜角度が変更するようになっている。
【0082】
第二の上部移動部材446は第二の上部直動部材456に固定され、右側に設けられた二つの上部受け部材322を接続するように前後方向に渡って配置されている。第二の上部移動部材446は、第二の上部直動部材456の動作に伴って移動するようになっている。
第二の上部移動部材446の前後方向両端にはそれぞれ、第二の接続部材466の一端が軸446aを介して回転自在に設けられている。第二の接続部材466の他端は、軸342cを介して上部受け部材322の上部傾斜部材342に回転自在に設けられている。
第二の上部移動部材446の移動に伴って、この第二の上部移動部材446に接続された右側の上部傾斜部材342の傾斜角度が変更するようになっている。
【0083】
図27に示すように、変位方向変更部310は、重量検出部502と、駆動部504と、制御部506とを備える。
重量検出部502は、上部テーブル304に載置された免震対象物の重量を検出する。
駆動部504は、例えばモータ等により構成され、下部変更部402の下部リニアシャフト420及び上部変更部404の上部リニアシャフト450を回転駆動させる。
制御部506は、重量検出部502が検出した免震対象物の重量に基づいて、駆動部504の駆動を制御する。
なお、下部リニアシャフト420及び上部リニアシャフト450は、駆動部504に代えて手動により回転するようにしてもよいし、駆動部504による回転駆動と手動による回転駆動とが選択自在な構成としてもよい。
【0084】
次に、鉛直免震機構300により支持荷重が増幅される原理について説明する。
図28は、鉛直免震機構300により支持荷重が増幅される原理を説明する説明図を示す。以下、説明を簡略化するため、鉛直免震機構300を構成する部材の重量は無視するものとする。
【0085】
図28において、上部テーブル304に載置された免震対象物の重量を「mg(m:免震対象物の質量、g:重力加速度)」、定荷重機構308による荷重を「N」、下部受け部材320の下部傾斜部材332と基板302とのなす角度、及び、上部受け部材322の上部傾斜部材342と上部テーブル304とのなす角度これらを同一の「θ」とし、二つの可動部材324は鉛直方向に対して同一の高さに位置しているとする。
【0086】
この場合、可動部材324に対して下部受け部材320の下部傾斜部材332から作用する力について考えると、垂直方向上向きに「mg / 2」の力が作用し、水平方向外向きに「N / 2」の力が作用する(上部受け部材322の上部傾斜部材342からも水平方向外向きの力が作用するため)。これらの関係から以下の式(1)が成り立ち、式(2)が導かれる。
【0087】


【0088】
このように、鉛直免震機構300によれば、式(2)に示す「1 / tanθ」の分、支持荷重が増幅されることとなる(以下、式(2)中における「1 / tanθ」を、「増幅率α」と称する)。
【0089】
次に、変位拡大機構306と定荷重機構308との動作の詳細について説明する。
図29は、変位拡大機構306及び定荷重機構308の動作を正面からみた模式図を示し、図30は、変位拡大機構306及び定荷重機構308の動作を上方からみた模式図を示す。
図29(a)、図30(a)は、基板302に対して上部テーブル304が上方に移動(変位)している状態(以下、「上昇状態」と称する場合がある)を、図29(b)、図30(b)は、基板302に対して上部テーブル304が基準位置(静的釣合位置)にある状態(以下、「基準状態」と称する場合がある)を、図29(c)、図30(c)は、基板302に対して上部テーブル304が下方に移動している状態(以下、「下降状態」と称する場合がある)を、それぞれ示す。
図31は、基板302に対する上部テーブル304の上下方向の変位と、抵抗力との関係を示すグラフである。
【0090】
図29〜図31において、基板302に対する上部テーブル304の上下方向の変位であって基準位置(静的釣合位置)を原点とし鉛直方向下向きを正とするものを「w」、免震対象物を基準位置に復帰させるようにこの免震対象物に作用する復元力を「Rw」とする。
復元力Rwは、免震対象物に作用する鉛直方向上向きの抵抗力「Fw」と免震対象物の重量「mg」との差(Rw = Fw - mg)として表される。基準状態(w = 0)において復元力「Rw = 0」となり、上昇状態(w < 0)において復元力「Rw < 0」(鉛直方向下向きに作用)となり、下降状態(w > 0)において復元力「Rw > 0」(鉛直方向上向きに作用)となる。
【0091】
また、図29〜図31において、第一の定荷重部360の荷重を「N1」とし、第二の定荷重部362の荷重を「N2」とする。
【0092】
基準状態においては、第二の定荷重部362の初期剛性が復元力Rwとして作用するようになっている(図31参照)。
具体的には図29(b)、図30(b)に示すように、第一の定荷重部360においては、第一の定荷重バネ370の荷重が可動部材324に作用する。一方、第二の定荷重部362においては、第二の定荷重バネ380と弾性部材382とを連結する連結部材384が延びた(遊びがない)状態となる。つまり、基準状態においては、弾性部材382の剛性による荷重が可動部材324に作用する。
このため、基準状態から比較的変位の小さい範囲においては、弾性部材382の剛性による復元力Rwが作用することとなる。これにより、通常時において発生することが想定される程度の比較的小さな上下動に対して、免震対象物に過剰な変位wが発生することが抑制される。
【0093】
上昇状態においては、第一の定荷重部360が可動部材324に与える荷重N1が復元力Rwとして作用するようになっている(図31参照)。
具体的には図29(a)、図30(a)に示すように、第一の定荷重部360においては、第一の定荷重バネ370が初期剛性の範囲を超えて、可動部材324に一定の荷重N1を与える。一方、第二の定荷重部362においては、連結部材384が緩んだ状態となる。つまり、上昇状態においては、第二の定荷重部360は可動部材324に荷重N2を与えない。
このため、上昇状態においては、鉛直方向下向きの復元力「Rw = αN1 - mg」が作用することとなる。
基準状態から上昇状態にかけて、変位拡大機構306は、基板302に対する上部テーブル304の上向きの変位を、可動部材324の水平方向内向きの変位に拡大する。
【0094】
下降状態においては、第一の定荷重部360が可動部材324に与える荷重N1及び第二の定荷重部362が可動部材324に与える荷重N2これらが抵抗力Fwとして作用するようになっている(図31参照)。
具体的には、図29(c)、図30(c)に示すように、第一の定荷重部360においては、第一の定荷重バネ370が可動部材324に一定の荷重N1を与える。一方、第二の定荷重部362においては、連結部材384が引っ張られた(遊びがない)状態となるとともに弾性部材382が最大限に延びた状態となる。つまり、下降状態においては、第二の定荷重バネ380は荷重がかかる状態にあり、第二の定荷重部360は可動部材324に荷重N2を与える。
このため、下降状態においては、鉛直方向上向きの復元力「Rw = α(N1+N2) - mg」が作用することとなる。
基準状態から下降状態にかけて、変位拡大機構306は、基板302に対する上部テーブル304の下向きの変位を、可動部材324の水平方向外向きの変位に拡大する。
【0095】
免震対象物に生じる上下方向の変位が、変位拡大機構306により上下方向とは異なる方向の変位とされ、この変位に伴う復元力Rwが予め定められた範囲内となるように構成されているため、この免震対象物に作用する応答加速度が抑制される。ここで、応答加速度とは、鉛直免震機構300に地震動等が作用した場合の、この鉛直免震機構300の動作(揺れ)に伴う免震対象物の応答の加速度を示す。
【0096】
鉛直免震機構300において、免震対象物に伝達される復元力Rwは以下の式(3)に示す範囲となる。また、免震対象物に伝達される復元力とこの免震対象物の重量との関係は式(4)に示すようになる。
このように、鉛直免震機構300は、免震対象物に作用する復元力Rwが予め定められた範囲内となるように構成されている。
【0097】


【0098】
次に、変位方向変更部310の動作の詳細について説明する。
図32は、変位方向変更部310の動作を説明する模式図を示す。なお、下部変更部402及び上部変更部404は、傾斜の角度を変更する対象が異なるのみで同様の構成となっているため、以下、下部変更部402を用いて説明する。
図32(a)は、下部受け部材320の下部傾斜部材332と基板302のなす角度(以下、「傾斜角度」と称する場合がある)が「θ1」である場合を示し、図32(b)は、傾斜角度が「θ1」よりも大きい「θ2」である場合を示し、図32(c)は、傾斜角度が「θ2」よりも大きい「θ3」である場合を示す。
【0099】
図32(b)に示すように、傾斜角度が「θ2」である状態においては、第一の下部移動部材414及び第二の下部移動部材416は、左右方向に移動自在な箇所に位置している。
【0100】
傾斜角度「θ2」の状態から、駆動部504により下部リニアシャフト420を回転(例えば右回転)すると、第一の下部移動部材414は左方向に移動し、第二の下部移動部材416は右方向に移動する。
図32(a)に示すように、第一の下部移動部材414が左方向に移動すると、これに伴ってこの第一の下部移動部材414に設けられた第一の下部接続部材434が左方向に移動する。第一の下部接続部材434の左方向への移動に従い左側の下部傾斜部材332が押し上げられ、この下部傾斜部材332の傾斜角度が減少する(「θ1」となる)ように変更される。
同様に、第二の下部移動部材416が右方向に移動すると、これに伴ってこの第二の下部移動部材416に設けられた第二の下部接続部材436が右方向に移動する。第二の下部接続部材436の右方向への移動に従い右側の下部傾斜部材332が押し上げられ、この下部傾斜部材332の傾斜角度が減少する(「θ1」となる)ように変更される。
【0101】
傾斜角度「θ2」の状態から、駆動部504により下部リニアシャフト420を回転(傾斜角度を減少させた場合とは反対方向に回転、例えば左回転)すると、第一の下部移動部材414は右方向に移動し、第二の下部移動部材416は左方向に移動する。
図32(c)に示すように、第一の下部移動部材414が右方向に移動すると、これに伴ってこの第一の下部移動部材414に設けられた第一の下部接続部材434が右方向に移動する。第一の下部接続部材434の右方向への移動に従い伴って左側の下部傾斜部材332が引き下げられ、この下部傾斜部材332の傾斜角度が増加する(「θ3」となる)ように変更される。
同様に、第二の下部移動部材416が左方向に移動すると、これに伴ってこの第二の下部移動部材416に設けられた第二の下部接続部材436が左方向に移動する。第二の下部接続部材436の左方向への移動に従い右側の下部傾斜部材332が引き下げられ、この下部傾斜部材332の傾斜角度が増加する(「θ3」となる)ように変更される。
【0102】
このように、変位方向変更部310は、下部傾斜部材332の傾斜角度を「θ1」〜「θ3」の間で変更するようになっている。傾斜角度を変更することで、上述した式(2)に示す増幅率αが変更されることとなる。
【0103】
本実施形態においては、免震対象物の重量「mg」が上述した式(4)を満たすように、増幅率α(すなわち傾斜角度「θ」)が決定される。
具体的には、制御部506は、重量検出部502が検出した免震対象物の重量「mg」に基づいて、式(4)を満たすように下部リニアシャフト420及び/又は上部リニアシャフト450を回転駆動するよう駆動部504を制御する。
例えば、重量「mg」が上昇状態の抵抗力「Fw = αN1」よりも小さい場合、増減率αを小さくする(すなわち傾斜角度「θ」を大きくする)ように、制御部506は駆動部504を制御する。
一方、重量「mg」が下降状態の抵抗力「Fw = α(N1+N2)」よりも大きい場合、増減率αを大きくする(すなわち傾斜角度「θ」を小さくする)ように、制御部506は駆動部504を制御する。
【0104】
[第四実施形態]
次に、鉛直免震機構202の第四実施形態に係る鉛直免震機構600について説明する。
第三実施形態に係る鉛直免震機構300においては、上部テーブル304に上部受け部材322を設けていたのに対し、第四実施形態に係る鉛直免震機構600においては、上部テーブル304に水平受け部材620を設けている点で、両者の構成は異なる。
図33は、鉛直免震機構600の正面図を示す。
【0105】
鉛直免震機構600は、基板(下部部材)302と、上部テーブル(上部部材)304と、変位拡大機構606と、定荷重機構308と、変位方向変更部310とを備える。第三実施形態に係る鉛直免震機構300と実質的に共通する構成については、説明を省略する。
【0106】
鉛直免震機構600の変位拡大機構606は、基板302の四隅に垂直方向にそれぞれ設けられた下部受け部材320と、上部テーブル304の四隅に垂直方向にそれぞれ設けられた水平受け部材620と、左側及び右側(図33において左右方向)にそれぞれ設けられた二つの可動部材324とを備える。
なお、水平受け部材620は、左右の水平受け部材620を一体とした一つの部材として構成し、上部テーブル304の前後に平行に設けられるようにしてもよい。
【0107】
水平受け部材620はそれぞれ、上部テーブル304に固定された固定部材640を備える。固定部材640の下部には水平縁640aが形成されており、この水平縁640aは水平となるように配置されている。水平縁640aには溝642bが設けられている。
【0108】
可動部材324は、第四実施形態においては、下部受け部材320と水平受け部材620とに挟まれるように、左右に二つ設けられている。
第一の回転支持部材352は、下部受け部材320の斜辺縁332aの溝332bに嵌り、この溝332bに案内されて移動するようになっている。また、第二の回転支持部材354は、水平受け部材620の水平縁640aの溝642bに嵌り、この溝642bに案内されて移動するようになっている。
このように、軸部材350は、第一の回転支持部材352及び第二の回転支持部材354を介して、斜辺縁332a及び水平縁640aに沿って移動自在に設けられている。第四実施形態においては、水平縁640aが水平に配置されているため、第二の回転支持部材354には、水平受け部材620から鉛直方向の力が作用するものの、水平方向の力が実質的に作用しない構成となっている。
【0109】
変位方向変更部310は、第四実施形態においては、下部受け部材320下部受け部材320の斜辺縁332aの上下方向に対する傾斜の角度を変更する下部変更部402を備える。
【0110】
次に、鉛直免震機構600により支持荷重が増幅される原理について説明する。
図34は、鉛直免震機構600により支持荷重が増幅される原理を説明する説明図を示す。以下、説明を簡略化するため、鉛直免震機構600を構成する部材の重量は無視するものとする。
【0111】
図34において、上部テーブル304に載置された免震対象物の重量を「mg」、定荷重機構308による荷重を「N」、下部受け部材320の下部傾斜部材332と基板302とのなす角度を「θ」とし、二つの可動部材324は鉛直方向に対して同一の高さに位置しているとする。
【0112】
この場合、可動部材324に対して下部受け部材320の下部傾斜部材332から作用する力について考えると、垂直方向上向きに「mg / 2」の力が作用し、水平方向外向きに「N」の力が作用する(水平受け部材620の固定部材640から水平方向外向きの力が作用しないため)。これらの関係から以下の式(5)が成り立ち、式(6)が導かれる。
【0113】


【0114】
このように、鉛直免震機構600によれば、式(6)に示す「2 / tanθ」の分、支持荷重が増幅されることとなる(増幅率2α)。すなわち、第四実施形態に係る鉛直免震機構600の増幅率は、第三実施形態に係る鉛直免震機構300の増幅率αの2倍となる。
【0115】
なお、鉛直免震機構202の第一実施形態〜第四実施形態それぞれでは、巻尺型の定荷重バネを用いた構成について説明したが、これに限らず、一部にバネを含み全体として定荷重特性を示すものや、バネ以外の要素によって定荷重特性を示すもの等を用いるようにしてもよい。
【0116】
鉛直免震機構A、鉛直免震機構B、鉛直免震機構300、鉛直免震機構600、及び水平免震機構Cはいずれも、建屋の免震装置は勿論のこと、文化財や美術品を展示するための免震台、コンピュータサーバーやキュービクル内のトランス等の電気機器、測定機器や精密機械器具の免震台又は免震床、工場の安全機器等の免震台等、種々の振動絶縁が要求されている場面に適用可能である。
【符号の説明】
【0117】
2 上部テーブル
3 リンク機構
4 垂片
5 立片
6 横棒
7 定荷重バネ
11 基板
12 上部テーブル
13 蝶番構造体
14 作用板
15 横捧
16 定荷重バネ
17 三角枠
18 横棒
19 定荷重バネ
21 上板
22 下板
23 蝶番構造体
24 免震作用体
25 平板
26 コマ
200 免震装置
202 鉛直免震機構
204 水平免震機構
300 鉛直免震機構
302 基板
304 上部テーブル
306 変位拡大機構
308 定荷重機構
310 変位方向変更部
320 第一の受け部材
322 第二の受け部材
324 可動部材
352 第一の回転支持部材
354 第二の回転支持部材
360 第一の定荷重部
362 第二の定荷重部
370 第一の定荷重バネ
380 第二の定荷重バネ
402 第一の変更部
404 第二の変更部
502 重量検出部
504 駆動部
506 制御部
600 鉛直免震機構
606 変位拡大機構
620 水平受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と該基板の上方に配置された上部テーブルとの間にあって、前記基板に対する前記上部テーブルの上下方向の変位を上下方向とは異なる方向の変位に拡大する変位拡大手段と、
前記変位拡大手段の変位に対して一定の荷重を与える定荷重手段と、
を有する免震装置。
【請求項2】
前記変位拡大手段は、
前記基板及び前記上部テーブルの少なくともいずれか一方に垂直方向に設けられ、斜辺縁又は弧状縁を有する受け部材と、
前記受け部材に沿って移動自在に設けられた可動部材と、
を有し、
前記定荷重手段は、前記可動部材の移動に対して一定の荷重を与える
請求項1記載の免震装置。
【請求項3】
前記変位拡大手段は、
前記上部テーブルの下面から垂下した平行な一対の略二等辺三角形状の垂片と、
前記各垂片の一面と摺り合うように前記基板の上面に立設した平行な一対の略二等辺三角形状の立片と、
を有し、
前記定荷重手段は、
前記垂片と立片とが摺り合わさった両側の斜辺縁又は弧状縁にそれぞれスライド自在に設けられた可動部材の間に渡るように設けられている
請求項1記載の免震装置。
【請求項4】
前記基板及び前記上部テーブルの外周縁の各辺に設けられた蝶番構造体の両板の外端縁を、該基板及び該上部テーブルに回動自在に接続して、該基板及び該上部テーブルを相対的に上下に移動自在に支持する支持手段、
をさらに有し、
前記変位拡大手段は、
対向する一対の前記蝶番構造体の蝶番軸箇所からそれぞれ回転自在に支持され、両側縁に先端側が大きく軸支持部幅が小さい凹湾状に切り欠いた弧状縁を有する作用板を有し、
前記定荷重手段は、
相対向する前記作用板の両側の各弧状縁に沿ってスライド自在に設けられた可動部材の間に渡るように設けられている
請求項1記載の免震装置。
【請求項5】
前記基板の上方又は下方に設けられ、免震対象物への水平方向の震動に対応する水平免震機構、
をさらに有する請求項1乃至4いずれか記載の免震装置。
【請求項6】
前記水平免震機構は、
下面に湾曲凹部を有する上板と、
前記上板の下方に設けられ中央部に大径孔を有する下板と、
前記下板に対して、前記上板が水平を維持して上下に移動自在とする免震作用体を備え、前記上板の四辺と前記下板の四辺とのそれぞれに両板を回転自在に接続して設けられた蝶番構造体と、
前記下板を支持する平板と、
前記平板上に載せられ、前記上板の湾曲凹部の山部形状に相応する湾曲形状の少なくとも上部を有するコマと、
を有し、
前記免震作用体を前記下板の大径孔に前記コマを通して被せ、該コマの上部が前記上板の湾曲凹部に接触し、該免震作用体に作用する振幅が一定値以内では該免震作用体が該コマを中心に湾曲凹部の範囲で移動し定位置に戻る構成であることを特徴とする請求項5記載の免震装置。
【請求項7】
前記免震作用体に作用する振幅が一定値を超えた場合に、前記コマが該免震作用体とともに前記平板上を移動可能である請求項6記載の免震装置。
【請求項8】
前記可動部材が移動して変位する方向を変更する変更手段、
をさらに有する請求項2乃至7いずれか記載の免震装置。
【請求項9】
前記定荷重手段は、
前記可動部材の移動に対して一定の荷重を与える第一の荷重部と、
前記第一の荷重バネが荷重を与える前記可動部材の移動範囲よりも狭い範囲で該可動部材の移動に対して一定の荷重を与える第二の荷重部と、
を有し
前記基板及び前記上部テーブルの距離が予め定められた第一の距離以下となった場合に、免震対象物の重量よりも大きい復元力となるように一定の荷重を与え、前記基板及び前記上部テーブルの距離が第一の距離よりも大きく予め定められた第二の距離以上となった場合に免震対象物の重量よりも小さい復元力となるように一定の荷重を与える請求項2記載の免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2012−215298(P2012−215298A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76213(P2012−76213)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(507281339)
【出願人】(391038822)ヘルツ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】