説明

入力検出装置、入力検出方法、プログラム、および記録媒体

【課題】入力検出面の傾きに応じて変化する入射光による座標ずれを補正する。
【解決手段】本発明の入力検出装置は、入力検出面を備えており、当該入力検出面において検出された対象物の像を生成する画像生成手段と、重力方向と垂直な面に対する該入力検出面の角度を検出する角度検出手段と、検出された角度に基づき、上記生成された画像の座標を補正する座標補正手段とをさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出型の入力検出装置、入力検出方法、プログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光検出型の入力検出装置は、画面上に入力された位置情報を処理してユーザが指定した動作を行うものである。この種の光検出型の入力検出装置には、検出面の対象物の影像によって動作するものや、バックライト光等の対象物への反射光によって動作するものがある。
【0003】
このような入力検出装置において、指入力の場合、入力検出装置が認識できる位置情報は、入力検出面を照射する光(すなわち、入射光)と、タッチパネルの角度、および環境光により、微量なずれを伴うことが多い。たとえば、入力検出装置を操作する指像が入射光の傾きによって変化し、入力検出装置が認識する指の画像が欠けてしまう場合がある。このような場合、入力検出装置は、正しい位置情報を取得することができず、結果的に、誤操作を招く可能性がある。
【0004】
ずれてしまった位置情報を、正しい位置情報に補正する技術は、まだ知られていない。
特許文献1には、投射型入力検出装置の角度検出結果による補正の技術が開示されているが、上述のようなタッチパネルにおける位置情報の補正には応用できない。
【特許文献1】特開2005−86648(2005年3月31日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来のタッチパネルでは、タッチパネルの角度に応じて変化する入射光による位置情報のずれが生じる場合がある。具体的にいえば、この位置情報は、タッチパネルにおける絶対座標である。ここで、パネルの角度の基準(すなわち0度)は、タッチパネルが光軸に対して垂直な状態にあるときの角度である。たとえば、タッチパネルの角度が0度のときに比べ、当該角度が45度の場合、回折光の影響をより多く受ける。換言すれば、タッチパネルは、指腹の部分より指先の部分に、より多くの入射光を受ける。このため、タッチパネルが認識する指の画像は、指先の部分が欠けた画像になる。したがって、指の画像の認識座標は、実際に指がパネルに接触している部分から座標ずれを生じてしまう。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ユーザからの入力情報から得られた画像の座標を補正し、ユーザの意図した入力座標を正確に取得する光検出型の入力検出装置、入力検出方法、プログラム、および記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(入力検出装置)
入力検出面を有した光検出型の入力検出装置であって、
上記入力検出面において検出された対象物の像を生成する画像生成手段と、
重力方向と垂直な面に対する上記入力検出面の角度を検出する角度検出手段と、
上記検出された角度に基づき、上記生成された画像の座標を補正する座標補正手段とをさらに備えていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、入力検出装置は、入力検出面を備えている。入力検出面とは、たとえば光センサを内蔵した液晶パネルのことである。
【0009】
また、本入力検出装置は、重力方向と垂直な面に対する入力検出面の角度を検出する角度検出手段を備えている。ここでいう重力方向と垂直な面とは、地面に平行な面と同義である。この構成により、本入力検出装置は、重力方向と垂直な面に対する入力検出面の角度を検出することができる。
【0010】
本入力検出装置はさらに、検出された角度に基づき、画像の座標を補正する座標補正手段を備えている。これにより、検出された角度に応じて必要な量だけ座標を補正することが可能となる。したがって、ユーザが意図した入力座標を正確に取得することが可能である。すなわち、入力検出面に対する誤操作を回避する効果を奏する。
【0011】
(入力検出面の角度と補正量のテーブル)
上記座標補正手段は、
上記入力検出面の角度と当該角度に応じた上記座標の補正量とを関連付けて予め格納したテーブルから、上記検出された角度に応じた補正量を取得し、当該取得した補正量を用いて上記座標を補正することが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、本入力検出装置は、入力検出面の角度と当該角度に応じた上記座標の補正量とを関連付けて予め格納したテーブルから、検出された角度に応じた補正量を取得し、当該取得した補正量を用いて座標を補正する。このように、予め用意した補正量の基準値を取得することが可能であるため、入力検出面に差し込む環境光や、角度検出手段の精度に応じて基準値を基に補正量の調整が可能である。
【0013】
(中心座標)
また、本発明に係る入力検出装置では、さらに、
上記物の画像から、当該画像の中心座標を検出する中心座標検出手段をさらに備え、
上記座標補正手段は、上記中心座標を補正することが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、本入力検出装置は、中心座標を検出する中心座標検出手段をさらに備えており、検出した中心座標を補正する。これにより、入力検出面が検出した物の中心点を検出することができる。したがって、物の画像の中心座標を補正することが可能となる。
【0015】
(入力検出面における照度検出)
また、本発明に係る入力検出装置では、さらに、
上記角度検出手段は、上記入力検出面における複数箇所の受光照度に基づき、外部光源から上記入力検出面に向かう光の光軸に対する角度を検出することが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、本入力検出装置は、入力検出面における複数箇所の受光照度に基づき、外部光源から入力検出面に向かう光の光軸に対する該入力検出面の垂直な面に対する、当該入力検出面の角度を検出する。これにより、光軸に対して入力検出面がどれだけ傾いているかを検出することが可能である。
【0017】
ここでいう、複数箇所の受光照度は具体的には、たとえば入力検出面に内蔵された光センサが受けた照度である。複数の光センサが感知する照度量から、外部光源から上記入力検出面に向かう光の光軸に対する該入力検出面の垂直な面に対する、当該入力検出面の角度が求められる。複数の照度量に基づき、より正確な角度を検出することができる。したがって、本入力検出装置は、より正確な座標の補正量を取得することが可能となる。
【0018】
(外付け照度センサ)
また、本発明に係る入力検出装置では、さらに、
上記角度検出手段は、上記入力検出面の周囲に設置された複数の照度センサによって検出される受光照度に基づき、上記入力検出面の角度を検出することが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、本入力検出装置は、入力検出面の周囲に設置された複数の照度センサによって検出される受光照度に基づき、入力検出面の角度を検出する。ここでいう、複数の照度センサは、たとえば、入力検出面周囲の四方に設置された照度センサである。複数の光センサが感知する照度量から、光軸に対する入力検出面の垂直な面に対する、入力検出面の角度が求められる。複数の照度量に基づき、より正確な角度を検出することができる。したがって、本入力検出装置は、より正確な座標の補正量を取得することが可能となる。
【0020】
(補正方向)
また、本発明に係る入力検出装置では、さらに、
上記検出された角度に基づき、上記座標を補正する方向を特定する補正方向特定手段をさらに備えており、
上記座標補正手段は、
上記座標を、上記方向に沿って補正することが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、本入力検出装置は、検出された角度に基づき、座標を補正する方向を特定する補正方向特定手段をさらに備えている。これにより、座標を補正する方向が特定できる。さらに、本入力検出装置は当該特定された方向に沿って補正することから、ユーザが意図した入力点に限りなく近い方向への座標の補正が可能となる。すなわち、間違った方向への誤補正を低減する効果を奏する。
【0022】
(補正方法)
本発明に係る入力検出方法は、上記の課題を解決するために、
入力検出面を有した光検出型の入力検出装置が実行する入力検出方法であって、
上記入力検出面において検出された物の画像を生成する画像生成ステップと、
重力方向と垂直な面に対する上記入力検出面の角度を検出する角度検出ステップと、
上記検出された角度に基づき、上記生成された画像の座標を補正する座標補正ステップとを含んでいることを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、上述した入力検出装置と同様の作用、効果を奏する。
【0024】
(プログラムおよび記録媒体)
なお、本発明に係る入力検出装置は、コンピュータによって実現してもよい。この場合、コンピュータを上記各手段として動作させることにより入力検出装置をコンピュータにおいて実現するプログラム、およびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る入力検出装置は、入力検出面の角度を検出し、当該角度に基づき対象物の像の座標を補正する。これにより、検出された角度に応じて必要な量だけ、座標を補正することが可能となる。したがって、ユーザが意図した入力座標を正確に取得することが可能である。すなわち、入力検出面に対する誤操作を回避する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の入力検出装置の実施形態について、図1〜図12を参照して以下に説明する。
【0027】
(入力検出装置1の構成)
まず、本発明の実施形態に係る入力検出装置の要部構成について図1を参照して説明する。
【0028】
図1は本発明の実施形態に係る入力検出装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示すように、入力検出装置1は、入力検出部2、画像処理部3、ホスト4、角度検出部14、照度検出部15、および照度センサ16を備えている。入力検出部2は、さらに画素回路5を含む。画素回路5はさらに光センサ6を含む。各部材の詳細については後述する。
【0029】
(画像処理部3の構成)
図1に示すように、画像処理部3は、パネル駆動回路7、画像生成部8、対象画像認識部9、補正方向特定部10、中心座標検出部11、座標補正量特定部12、および座標補正部13を含む。各部材の詳細については後述する。
【0030】
(入力検出部2の構成)
次に本実施形態に係る入力検出部2について説明する。本実施形態に係る入力検出部2は、光検出型の入力検出部であり、入力検出装置1の入力検出面として動作する。光検出型の入力検出部とは、入力検出部に光センサを内蔵し、入力検出部における受光量により、ユーザからの入力情報を認識する方式のパネルである。
【0031】
図2は入力検出部2の要部構成と一画素における画素回路5を示す図である。
【0032】
図2の下側の点線で囲まれた部分は、入力検出部2の要部構成を示す。入力検出部2は、ゲートドライバ20、ソースドライバ21、VDD22、センサ列選択ドライバ23、センサ行選択ドライバ24、およびピクセルマトリックス25を含む。ピクセルマトリックスとは複数の画素回路が縦横(行と列)に並んで構成されているものである。本実施形態では、縦320ピクセル×横480ピクセルのサイズのものを使用する。しかし、サイズはこれに限るものではない。
【0033】
この図が示すように、入力検出部2において、ピクセルマトリックス25の周囲の三辺を囲むように、一辺の脇に、ゲートドライバ20、対向する一辺の脇に、センサ行選択ドライバ24、そしてもう一辺の脇に、ソースドライバ21が配置されている。それぞれは、ピクセルマトリックス25と各種信号を入出力できるように接続されている。VDD22はソースドライバ21に隣接しており、ピクセルマトリックス25からの配線に接続している。ソースドライバ21の入力検出部2と接続する側の反対側に、センサ列選択ドライバ23が配置されており、ソースドライバ21と接続している。各部の処理については後述する。
【0034】
また、図2における上側の円における回路は、ピクセルマトリックス25を構成する一画素における画素回路5を拡大した図である。この図で示すように、光センサ6は、コンデンサ28と接続しており、双方はさらに、センサプリアンプ27に接続する。各部の詳細な処理については後述する。
【0035】
(入力検出部2の駆動)
入力検出部の駆動について、図1を参照して以下に説明する。
【0036】
入力検出装置1において、ホスト4は画像処理部3のパネル駆動回路7へ表示系信号(表示制御信号+表示データ)を出力する。ここでいう、表示制御信号とは、上述のピクセルマトリックス25において、色を表示させる画素を示す行と列の情報のことである。一方、表示データとは、画素回路5において、RGBのいずれかの色を表示させるための信号のことである。
【0037】
画像処理部3のパネル駆動回路7は、入力検出部2の画素回路5へ表示系信号および光センサ駆動系信号を出力する。入力検出部2は、入力された表示系信号と光センサ駆動系信号とに基づき、画素回路5において色を表示し、光センサ6を駆動する。入力検出部2の内部の処理については後述する。
【0038】
(表示系信号の処理)
入力検出部2の内部における、表示系信号の処理について、図2を参照して以下に説明する。
【0039】
画像処理部3から出力された表示系信号は、センサ列選択ドライバ23に、ゲートドライバ20、およびセンサ行選択ドライバ24に出力される。センサ列選択ドライバ23は表示系信号をソースドライバ21に出力し、ソースドライバ21は、ピクセルマトリックス25に表示系信号を出力する。同時に、ゲートドライバ20、およびセンサ行選択ドライバ24も、表示系信号をピクセルマトリックス25に出力する。ピクセルマトリックス25において、入力された表示系信号に基づき画像が表示される。
【0040】
(センシングデータの読出し)
入力検出部2における、センシングデータの読出しについて、図3および図4を参照して以下に説明する。
【0041】
図3は、入力検出部2、センサ出力アンプ30、および画像処理部3の位置を示し、各画素回路5における光センサ6が感知する光のデータが、画像処理部3に出力されるまでに通る回路を拡大して示した図である。左上の図は、入力検出部2、センサ出力アンプ30、および画像処理部3の位置関係を示している。一方、右下の回路は、入力検出部2における各画素回路5における光センサ6が感知する光のデータが、画像処理部3に出力されるまでに通る回路を拡大して示した図である。この図に示すように、センサ出力アンプ30は、センサ列選択ドライバ23の中に配置されている。
【0042】
図4は、光センサ6が光のセンシングを開始し、光のデータを画像処理部へ出力するまでの流れを示したフローチャートである。
【0043】
まず、入力検出部2は、各画素回路5における光センサ6を駆動し、センシングを開始する(ステップS1)。次に、光センサ6はセンシングデータを光電変換し、センサプリアンプ27に出力する(ステップS2)。センサプリアンプ27は、入力されたセンシングデータを増幅する。センサプリアンプ27は、増幅したセンシングデータをセンサ出力アンプ30に出力する(ステップS4)。センサ出力アンプ30は、画像処理部3へ出力する(ステップS5)。これにより、画像処理部3は、画像生成の処理を開始することができる。なお、ここで画像処理部3に出力されるデータは、入力検出部2において既にAD変換(すなわち、アナログデータからデジタルデータに変換)されているものとする。AD変換のタイミングと、AD変換する部材の位置は任意であり、入力検出部2に含まれていてもよいし、外部に配置されていてもよい。ここでは特定しない。
【0044】
(画像生成と認識)
次に、画像処理部3における画像生成の処理について、再び図1を参照して説明する。画像生成部8は、入力検出部2から出力されたデジタルデータから、画像(320×480ピクセル)を生成する。画像生成部8は、生成した画像を対象画像認識部9に出力する。
【0045】
続いて、対象画像認識部9は、入力された画像に、対象物として認識できる像が含まれるか否かの認識処理を行う。本実施形態における対象物とは、入力検出部2の画面を操作する指である。したがって、対象画像認識部9は、具体的には、指像が認識できるかどうかを判断する。本実施形態では、上述したように指を対象物として説明するが、対象物はこれに限らない。指以外の物、たとえば、ペン、爪、ポインタ等も対象物として認識される。なお、入力検出部2は光検出型であるため、対象物が入力検出面に直接触れていない場合でも、対象物として認識する可能性がある。たとえば、入力検出装置1のバックライトの光が物に反射する光によって検出される場合である。
【0046】
(指画像の例)
ここで、対象画像認識部9が認識できる指の画像の例を、図5および図6を参照して、以下に説明する。
【0047】
図5は、光源50から放射される光の光軸に対して入力検出部2の垂直な面に対する、入力検出部2の角度が0度のときの状態を示す図である。このように本実施形態では、光源50から放射される光の光軸に対して、入力検出部2が垂直方向にあるときを、入力検出部2の角度は0度であるとする。
【0048】
図5に示すように、この状態では通常、入力検出部2の操作対象となる面の真上方向に光源は位置している。入力検出部2は、指51の真上方向から放射光を受ける。
【0049】
(中心座標の検出)
図6は、光軸に対して入力検出部2の垂直な面に対する、入力検出部2の角度が0度のときの、指の画像、指として認識される範囲、および、その中心座標を示す図である。すなわち、図5の状態において対象画像認識部9が指の画像を生成すると、図6に示すような画像となる。対象画像認識部9は、対象画像(以降、指の画像と記載)を認識した場合、その旨を中心座標検出部11に通知する。
【0050】
中心座標検出部11はこの通知を受け、画像生成部8から指の画像を取得し、当該指の画像の中心座標を検出する。図6における、破線の円60は、中心座標検出部11が指として認識する範囲である。中心座標検出部11は、指として認識する範囲60の中心点を、中心座標として検出する。矢印61が示す点は、中心座標検出部11が検出した、この指の画像の中心座標である。中心座標検出部11は、当該中心座標の情報を座標補正部13に出力する。これにより、入力検出装置1は、指の画像の中心座標を取得し、補正することが可能となる。
【0051】
(座標のずれ)
ここでさらに、座標に生じるずれについて、図7および図8を参照し、図5および図6の場合と比較して、以下に説明する。
【0052】
図7は、光軸に対して入力検出部2の垂直な面に対する、入力検出部2の角度が45度のときの状態を示す図である。
【0053】
図7に示すように、光源50から放射される光の光軸に対して入力検出部2の操作対象となる垂直な面が45度傾いている。この状態では、図5の場合と異なり、入力検出部2は、指51の指腹の部分より指先の部分に、より多くの放射光を受ける。
【0054】
図8は、光軸に対して入力検出部2の垂直な面に対する、入力検出部2の角度が45度のときの、指の画像、その中心座標、および、0度のときに取得した指の画像の中心座標からのずれを示す図である。すなわち、図7の状態において対象画像認識部9が指の画像を生成すると、図8に示すような画像となる。
【0055】
図8に示すように、画像生成部8が生成した画像は、指先の部分が欠けている。これは、上述したように、入力検出部2が光源に対して垂直ではなく傾いているため、指51の指腹の部分より指先の部分により多くの光源からの放射光の影響を受けるためである。
【0056】
このとき、指先の部分が欠けた画像であっても、対象画像認識部9は、指の画像を認識し、その旨を中心座標検出部11に通知する。
【0057】
中心座標検出部11はこの通知を受け、画像生成部8から指の画像を取得し、当該指の画像の中心座標を検出する。図8における破線の円60は、図6の場合と比較するために示したものである。61の点は同様に、図6で示した中心座標検出部11が検出した、入力検出部2の角度が0度のときに押下された指の画像の中心座標である。
【0058】
このとき、図6の場合と異なるのは、81の点である。この点は、入力検出部2の角度が45度のときに、中心座標検出部11が実際に検出する中心座標である。この図で示されるように、本来検出されるはずの正しい中心座標61は検出されず、誤った中心座標81が検出されてしまう。これは、上述した指先が欠けた指の画像によって、中心座標検出部11が指として認識する範囲が、正しい指認識範囲60より下にずれてしまうからである。したがって、検出される中心座標81も、正しい中心座標61より下にずれている。
【0059】
以上のように、本実施形態における、座標の“ずれ”とは、正しい中心座標61と、誤って検出される中心座標81との間の距離のことである。
【0060】
本実施形態に係る入力検出装置1は、タッチパネル2の角度に基づいて、上述の座標ずれを補正する方向を特定し、同時に、補正する量も決定する。これらの処理の詳細を以下に説明する。
【0061】
(入力検出部2の角度検出)
まず、角度検出の方法について図1、図2、および図5を参照して説明する。
【0062】
図2を参照して説明したように、各画素回路5における光センサ6は、ピクセルマトリックス25に複数個配置されている。入力検出装置1は、入力検出部2における複数の光センサ6から受光照度を取得し、入力検出部2の角度を検出する。光源に近いほど、光センサ6の受光照度量は多くなる。
【0063】
この受光照度量の情報は、入力検出部2における複数の光センサ6から、角度検出部14に出力される。角度検出部14は、入力された受光照度量の情報に基づき、光源から放射される光の光軸に対する入力検出部2の垂直な面に対する角度を検出する。具体的には、図5に示すように、光源50(外部光源)から入力検出部2に向かう光の光軸に対する入力検出部2の垂直な面に対する、入力検出部2の角度を検出する。
【0064】
また、入力検出装置1は、他の方法で入力検出部2の照度を取得し、角度を検出してもよい。たとえば、入力検出装置1の周りに複数の照度センサを配置して、照度を取得してもよい。
【0065】
図12は、入力検出部2の周囲に設置された複数の照度センサを示す図である。図2に示すように、照度センサ16、および16aから16gの合計8つの照度センサが入力検出部2の周囲に配置されている。
【0066】
以下に示す表1は、これら8つの照度センサが受けた受光照度量の例である。
【0067】
【表1】

【0068】
照度検出部15は、上記の受光照度量を基に、光源の位置を特定し、光源から放射される光の光軸に対するタッチパネル2の垂直な面に対する角度を検出する。
【0069】
(補正方向の特定)
ここで、図9、図10および図1を参照して、検出された角度から補正方向を特定する過程について説明する。
【0070】
図9は、本発明の実施形態に係る入力検出装置1をユーザが左手で持つときの、入力検出装置1の状態を示す図である。この場合、ユーザが入力検出装置1を持つ手90によって、入力検出装置1が光軸に対して入力検出部2の面が垂直な状態より傾いているとする。図9で示す状態では、45度傾いているとする。
【0071】
図10は、図9の状態で入力検出部2を操作する指の状態を示す図である。角度102は、上述の45度の傾きを示す。指100は通常指を操作する向きは、指100のような向きで操作する。一方、指101は、想定外の向きで操作している様子を示している。
【0072】
このとき、上述したように入力検出部2は45度傾いている。すなわち、図8を参照して既に説明したように、中心座標検出部11が検出する座標は、本来の正しい座標よりも下にずれているはずである。補正方向特定部10は、現在検出されている座標よりも上の方向に補正すると判断し、当該方向の情報を座標補正部13に出力する。これにより、入力検出装置1は当該特定された方向に沿って補正できることから、指が入力検出部2を押下したときの、指が指す向きに沿った方向と同じか、または限りなく近い方向への座標の補正が可能となる。すなわち、間違った方向への誤補正を低減できる。
【0073】
(中心座標の特定)
図10の状態において、中心座標検出部11は、中心座標の候補を複数検出する場合がある。この例について図11を参照して説明する。
【0074】
図11は、入力検出部2に押下された指100の画像における中心座標の候補を示す図である。この図に示すように、指100の画像110における中心座標の候補、111と112の2点が示されている。この場合、中心座標検出部11は、補正方向特定部10が特定した方向に従って、中心座標を特定する。この場合は上述したとおり、上の方向に補正すると判断されているので、中心座標検出部11は、座標112より上に位置する座標111を中心座標として特定する。これにより、ユーザが意図して入力した座標と同じ、もしくは限りなく近い座標を中心座標として特定することが可能である。
【0075】
(補正量の特定)
次に、座標ずれ量の特定について、図1と表2を参照して説明する。
【0076】
以下に示す表2は、入力検出部2の角度に応じた座標のずれ量(すなわち、補正すべき量)とを関連付けて予め格納した表である。
【0077】
【表2】

【0078】
本実施形態に係る入力検出装置1は、表2で示したような入力検出部2の角度に応じた座標ずれ量のデータを保持している。角度検出部14が検出した角度に基づき、座標補正量特定部12は、検出された角度に応じた補正量を表から取得し、座標ずれを補正する量として特定する。したがって、座標補正量特定部12は、当該補正量の情報を座標補正部13に出力する。このように、入力検出装置1は、予め用意した補正量の基準値を取得することが可能であるため、入力検出部2に差し込む環境光や角度検出手段の精度に応じて基準値を基に補正量の調整が可能である。
【0079】
(座標補正)
これまでの説明で、入力検出装置1は、座標補正の際に必要な3つの情報を取得している。3つの情報とは、上述した、中心座標、補正方向、および、補正量である。入力検出装置1は、これらの情報を基に座標の補正を行う。具体的には、入力検出装置1は座標補正部13において、中心座標を基点として、補正方向に補正量の分だけ座標を補正し、補正座標を取得する。画像処理部3は、ホスト4に出力し、ホスト4は補正座標に基づき必要な処理を行う。
【0080】
以上のように、入力検出装置1は、入力検出部2を押下したユーザが意図した入力座標を正確に取得することが可能である。したがって、入力検出部2に対する誤操作を回避する効果を奏する。
【0081】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。当業者は、請求項に示した範囲内において、本発明をいろいろと変更できる。すなわち、請求項に示した範囲内において、適宜変更された技術的手段を組み合わせれば、新たな実施形態が得られる。
【0082】
たとえば、角度検出部14は、重力方向と垂直な面に対する入力検出部2の角度を検出してもよい。ここでいう重力方向と平行な面とは、地面に垂直な面と同義である。当該角度を検出する場合、重力方向と垂直に置かれた状態の入力検出部2(入力検出面)の角度が0度になる。また、重力方向と平行に置かれた状態の入力検出部2(入力検出面)の角度が90度となる。角度検出部2は、公知のジャイロセンサ等を利用して、重力方向と平行な面に対する入力検出部2の角度を検出することができる。
【0083】
(プログラムおよび記録媒体)
最後に、入力検出装置1に含まれている各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成すればよい。または、次のように、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0084】
すなわち入力検出装置1は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、このプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、上記プログラムを実行可能な形式に展開するRAM(Random Access Memory)、および、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)を備えている。この構成により、本発明の目的は、所定の記録媒体によっても、達成できる。
【0085】
この記録媒体は、上述した機能を実現するソフトウェアである入力検出装置1のプログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録していればよい。入力検出装置1に、この記録媒体を供給する。これにより、コンピュータとしての入力検出装置1(またはCPUやMPU)が、供給された記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し、実行すればよい。
【0086】
プログラムコードを入力検出装置1に供給する記録媒体は、特定の構造または種類のものに限定されない。すなわちこの記録媒体は、たとえば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などとすることができる。
【0087】
また、入力検出装置1を通信ネットワークと接続可能に構成しても、本発明の目的を達成できる。この場合、上記のプログラムコードを、通信ネットワークを介して入力検出装置1に供給する。この通信ネットワークは入力検出装置1にプログラムコードを供給できるものであればよく、特定の種類または形態に限定されない。たとえばインターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等であればよい。
【0088】
この通信ネットワークを構成する伝送媒体も、プログラムコードを伝送可能な任意の媒体であればよく、特定の構成または種類のものに限定されない。たとえばIEEE1394、USB(Universal Serial Bus)、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、入力検出部を備えた入力検出装置として、幅広く利用できる。たとえば携帯電話装置の端末、PDA(パーソナル デジタル アシスタント)、PMP(ポータブル ムービー プレーヤ)、デジタルカメラ、カーナビゲーション・システム等に搭載され動作する入力検出装置として実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施形態に係る入力検出装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】図2は入力検出部の要部構成と一画素における画素回路を示す図である。
【図3】入力検出部、センサ出力アンプ、および画像処理部の位置を示し、各画素回路における光センサが感知する光のデータが、画像処理部に出力されるまでに通る回路を拡大して示した図である。
【図4】光センサが光のセンシングを開始し、光のデータを画像処理部へ出力するまでの流れを示したフローチャートである。
【図5】光軸に対して入力検出部の垂直な面に対する、入力検出部の角度が0度のときの状態を示す図である。
【図6】光軸に対して入力検出部の垂直な面に対する入力検出部の角度が0度のときの、指の画像、指として認識される範囲、および、その中心座標を示す図である。
【図7】光軸に対して入力検出部の垂直な面に対する、入力検出部の角度が45度のときの状態を示す図である。
【図8】光軸に対して入力検出部の垂直な面に対する、入力検出部の角度が45度のときの、指の画像、その中心座標、および、0度のときに取得した指の画像の中心座標からのずれを示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る入力検出装置をユーザが左手で持つときの、入力検出装置の状態を示す図である。
【図10】図9の状態で入力検出部を操作する指の状態を示す図である。
【図11】入力検出部に押下された指の画像における中心座標の候補を示す図である。
【図12】入力検出部の周囲に設置された複数の照度センサを示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 入力検出装置
2 入力検出部(入力検出面)
3 画像処理部
4 ホスト
5 画素回路
6 光センサ
7 パネル駆動回路
8 画像生成部(画像生成手段)
9 対象画像認識部
10 補正方向特定部(補正方向特定手段)
11 中心座標検出部(中心座標検出手段)
12 座標補正量特定部
13 座標補正部(座標補正手段)
14 角度検出部(角度検出手段)
15 照度検出部
16 照度センサ
20 ゲートドライバ
21 ソースドライバ
22 VDD
23 センサ列選択ドライバ
24 センサ行選択ライバ
25 ピクセルマトリックス
27 センサプリアンプ
28 コンデンサ
30 サンサ出力アンプ
50 光源
51 指
60 指認識範囲
61、81 中心座標
90 手
100、101 指
102 角度
110 画像
111、112 座標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力検出面を有した光検出型の入力検出装置であって、
上記入力検出面において検出された対象物の像を生成する画像生成手段と、
重力方向と垂直な面に対する上記入力検出面の角度を検出する角度検出手段と、
上記検出された角度に基づき、上記生成された画像の座標を補正する座標補正手段とをさらに備えていることを特徴とする入力検出装置。
【請求項2】
上記座標補正手段は、
上記入力検出面の角度と当該角度に応じた上記座標の補正量とを関連付けて予め格納したテーブルから、上記検出された角度に応じた補正量を取得し、当該取得した補正量を用いて上記座標を補正することを特徴とする請求項1に記載の入力検出装置。
【請求項3】
上記物の画像から、当該画像の中心座標を検出する中心座標検出手段をさらに備え、
上記座標補正手段は、上記中心座標を補正することを特徴とする請求項1に記載の入力検出装置。
【請求項4】
上記角度検出手段は、上記入力検出面における複数箇所の受光照度に基づき、外部光源から上記入力検出面に向かう光の光軸に対する上記角度を検出することを特徴とする請求項1に記載の入力検出装置。
【請求項5】
上記角度検出手段は、上記入力検出面の周囲に設置された複数の照度センサによって検出される受光照度に基づき、上記入力検出面の角度を検出することを特徴とする請求項1に記載の入力検出装置。
【請求項6】
上記検出された角度に基づき、上記座標を補正する方向を特定する補正方向特定手段をさらに備えており、
上記座標補正手段は、
上記座標を、上記方向に沿って補正することを特徴とする請求項1に記載の入力検出装置。
【請求項7】
入力検出面を有した光検出型の入力検出装置が実行する入力検出方法であって、
上記入力検出面において検出された物の画像を生成する画像生成ステップと、
重力方向と垂直な面に対する上記入力検出面の角度を検出する角度検出ステップと、
上記検出された角度に基づき、上記生成された画像の座標を補正する座標補正ステップとを含んでいることを特徴とする入力検出方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の入力検出装置を動作させるプログラムであって、コンピュータを上記の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−39790(P2010−39790A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202337(P2008−202337)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】