説明

入力装置及びその製造方法

【課題】 特に、ロール・ツー・ロール方式により製造でき、良好なセンサ感度を備えた薄型の入力装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のタッチパネル(入力装置)1は、可撓性の透明基材2と、前記透明基材2の第1の面2aに形成された透明電極4と、前記透明基材2の前記第1の面2aに対して反対側の第2の面2bに形成された加飾層3と、前記透明基材2の前記第2の面2b側にて前記透明基材2と光学透明粘着層10を介して貼着された透明パネル(ガラスパネル5)と、を有することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等と組み合わせて用いられる入力装置(タッチパネル)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、例えば特許文献1に示すように、透明な表層パネル(透明基板23)と、表層パネル下の加飾領域に形成される加飾層(遮光層24)と、表層パネル及び加飾層の下面全域に形成される透明な平坦化層(オーバーコート層25)と、前記平坦化層の下面に形成される透明電極(透明導電層26)等を有して構成される。
【0003】
特許文献1では、感光性のアクリル樹脂等の透明な樹脂をスピンコートして平坦化層を形成している。
【0004】
しかしながら、このように平坦化層を、スピンコートによる樹脂層で形成する構成では、特に表層パネルと加飾層との間の段差等により平坦化層の平坦化度が低くなり、そのため、透明電極を平坦化面に形成できずセンサ感度が低下するといった問題があった。
【0005】
また特許文献1には特に入力装置の製造方法について具体的記載はないが、ガラスの個片化された表層パネルに加飾層、平坦化層及び透明電極を積層していく製造プロセスを用いる必要があるため、生産性が低く、各タッチパネル間で品質のばらつきも大きくなる問題があった。
【0006】
また製造プロセスにロール・ツー・ロール方式を採用しようとした場合、特許文献1の構成では、表層パネルにガラスを用いることができず、あるいはガラスを用いたとしても、加飾層との密着性や後で個片化するためにガラスの材質が制限され、強化ガラス等を用いることができないといった不具合が生じた。
【0007】
特許文献2に記載されたタッチパネルにおいても、表層パネル(単一基板11)下の加飾領域に加飾層(マスク層12)、平坦化層(平滑層15)及び透明電極(センス回路13)を積層しており、上記特許文献1と同様の問題が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−301767号公報
【特許文献2】特開2009−193587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、ロール・ツー・ロール方式により製造でき、良好なセンサ感度を備えた薄型の入力装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における入力装置は、
可撓性の透明基材と、前記透明基材の第1の面に形成された透明電極と、前記透明基材の前記第1の面に対して反対側の第2の面に形成された加飾層と、前記透明基材の前記第2の面側にて前記透明基材と光学透明粘着層を介して貼着された透明パネルと、を有することを特徴とするものである。
【0011】
また本発明における入力装置の製造方法は、
ロール・ツー・ロールで可撓性の透明基材を搬送しながら前記透明基材の第1の面に透明電極を形成し、前記透明基材の第1の面とは反対側の第2の面に加飾層を形成する工程、
前記透明電極及び前記加飾層が形成された前記透明基材を個片化する工程、
個片化された各透明基材の第2の面側に、光学透明粘着層を介して透明パネルを貼着する工程、
を有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、加飾層及び透明電極を夫々、透明基材の平坦化面(第1の面と第2の面)にロール・ツー・ロール方式で形成することができ、良好なセンサ感度を有する入力装置を生産性良く形成できる。また透明パネルを、透明基材に光学透明粘着層を介して貼り付けた構成としたことで、透明パネルに対する材質の制限を無くすことができ、高い生産性と透明パネルの材質に対する高い自由度を兼ね備えることが可能である。
【0013】
本発明では、前記第1の面に、前記透明電極の表面を覆う透明保護層を設けることが可能である。これにより透明電極を保護でき好適である。
【0014】
また本発明では、前記透明電極を、1層構造で構成できる。これにより、入力装置の薄型を促進できる。
【0015】
また本発明では、強化ガラス等、特に材質を制限することなくガラスパネルを適用できる。
【0016】
また本発明では、前記透明基材に、PETフィルムを用いることができる。これにより、入力装置を安価に製造でき、またロール・ツー・ロール方式に適切に適用することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の入力装置及びその製造方法によれば、加飾層及び透明電極を夫々、透明基材の平坦化面(第1の面と第2の面)にロール・ツー・ロール方式で形成することができ、良好なセンサ感度を有する入力装置を生産性良く形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態における静電容量式のタッチパネル(入力装置)の平面図、
【図2】図1に示すA−A線に沿って切断し矢印方向から見たタッチパネルの縦断面図、
【図3】本実施形態におけるタッチパネルの製造方法を示す一工程図(模式図)、
【図4】図3の次に行われる一工程図(模式図)、
【図5】図4の次に行われる一工程図(部分拡大縦断面図)、
【図6】図5の次に行われる一工程図(縦断面図)、
【図7】図2とは別の実施形態におけるタッチパネルの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態における静電容量式のタッチパネル(入力装置)の平面図、図2は、図1に示すA−A線に沿って切断し矢印方向から見たタッチパネルの縦断面図である。
【0020】
タッチパネル1は、可撓性の透明基材2、加飾層3、透明電極4、及びガラスパネル5等を有して構成される。ここで、「透明」、「透光性」とは可視光線透過率が60%以上(好ましくは80%以上)の状態を指す。更にヘイズ値が6以下であることが好適である。
【0021】
可撓性の透明基材2には例えばPETフィルムが好ましく適用される。透明基材2の下面(第1の面)2aに透明電極4が形成されている。図1に示すように透明電極4は、タッチパネル1の透明入力領域1aに形成される。透明入力領域1aは、タッチパネル1の中央の広範囲にわたって設けられている。この実施形態では透明入力領域1aが矩形状で構成されているが形状を限定するものでない。
【0022】
図1に示すように透明電極4は、夫々、分離形成された第1の透明電極4aと第2の透明電極4bとを一組として、Y方向に間隔を空けて複数組、形成されている。本実施形態では、第1の透明電極4a及び第2の透明電極4bの各形状を限定するものでないが、第1の透明電極4a及び第2の透明電極4bはX方向に向けてY方向への幅寸法が変化するように形成されている。
【0023】
透明電極4は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料をスパッタや蒸着して成膜されたものであり、図1に示す形状となるようにフォトリソグラフィ技術を用いてパターン形成されている。
【0024】
図1に示すように、各第1の透明電極4a及び各第2の透明電極4bのX方向の端部から配線層6が延出して形成されている。
【0025】
図1に示すように、配線層6は、透明入力領域1aの周囲を囲む加飾領域1b内に延出形成される。後述のように加飾領域1bには加飾層3が形成されるので、実際には図1のようにタッチパネル1の操作面9側から配線層6を見ることはできないが、図1では、加飾層3を透視して配線層6を図示した。
【0026】
図2に示すように配線層6の形成位置には透明電極4と同じ透明導電材料からなる透明導電層4cが設けられており、この透明導電層4cの表面(図2では下面)に配線層6が形成される。透明導電層4cは、透明電極4をエッチングしてパターン化する際に、配線層6と重なる位置に残されたものである。なお透明導電層4cが形成されず、配線層6が透明電極4と同じ透明基材2の下面(第1の面)2aに形成されてもよい。
【0027】
配線層6は、Ag、Cu、Cu合金、Al、Mo、CuNi合金、Ni等の金属材料を有して形成され、例えばAgペーストを印刷して形成される。
【0028】
図1に示すように、各配線層6は、加飾領域1b内にて引き回されてフレキシブルプリント基板(図示しない)と接続する部分に集められる。各配線層6の先端は、フレキシブルプリント基板(図示しない)と電気的に接続される外部接続部6aを構成している。
【0029】
また図2に示すように、透明電極4及び配線層6の下面に透明保護層8が設けられている。透明保護層8により透明電極4及び配線層6を保護することができる。ただし透明保護層8は図1に示す外部接続部6aの位置には設けられておらず、外部接続部6aをフレキシブルプリント基板に接続できるようになっている。
【0030】
透明保護層13は、例えば、薄いPET基材の表面にウレタンアクリレート樹脂等のハードコート層が形成されたハードコートフィルム(透明保護層)であり、透明保護層13を透明電極4及び配線層6の下面に図示しない光学透明粘着層(OCA)を介して貼着する。
【0031】
図2に示すように、透明基材2の上面(第2の面)2bには、有色の加飾層3が形成されている。加飾層3は、透明入力領域1aの周囲を囲む加飾領域1bに形成されている。加飾層3は例えばスクリーン印刷で形成される。加飾層3の形成された加飾領域1bは、非透光性となり、透明入力領域1aは透光性となっている。よって配線層6は加飾層3により操作面9側から見えなくなっている。
【0032】
図2に示すように、透明基材2の第2の面2b側には光学透明粘着層10を介してガラスパネル(透明パネル)5が貼着されている。光学透明粘着層(OCA)10は、アクリル系粘着剤、両面粘着テープ等である。
【0033】
図2に示すガラスパネル5は、タッチパネル1の表層に位置し、表面が操作面9となっている。操作者が例えば指を操作面9上に接触あるいは近接させると指に近い第1の透明電極4aとの間、及び指に近い第2の透明電極4bとの間の静電容量が変化する。そしてこの静電容量変化に基づいて指の操作位置を算出することが可能である。
【0034】
ガラスパネル5は平板状に限定されず湾曲した形状等であってもよい。またガラス以外の透明パネルであってもよく、透明パネルは筐体の一部を構成していてもよい。
【0035】
図3ないし図6は本実施形態のタッチパネル1の製造方法を示す工程図である。
図3(模式図)に示すように、PETフィルム等からなる可撓性の透明基材11をロール状にし、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)で透明基材11を各工程へ搬送する。
【0036】
まず図3に示す矢印(1)の工程では、透明基材11の第1の面11aにITO等の透明導電材料をスパッタや蒸着により成膜する。続いて、透明導電膜が全面に形成された透明基材11を次工程に送り、矢印(2)の工程では、フォトリソグラフィ技術を用いて図1に示す形状の透明電極4をパターン形成する。(1)工程と(2)工程との間、あるいは(2)工程の後に、配線層6をスクリーン印刷する。(1)工程と(2)工程の間に、配線層6を形成する場合、配線層6を透明導電膜表面に形成することになり、(2)工程のフォトリソグラフィ技術により配線層6と重なる透明導電層4c(図2参照)を残すことが出来る。
【0037】
続いて、透明電極4及び配線層6が形成された透明基材11を次工程に送り、矢印(3)の工程では、薄いPET基材の表面にウレタンアクリレート樹脂等のハードコート層が形成されたハードコートフィルム(透明保護層)13を、前記透明電極4及び配線層6の表面に貼着する。
【0038】
図3では、(1)〜(3)の各工程を連続する一回のロール・ツー・ロールで行っているが、各工程(1)〜(3)ごとに透明基材11を巻き取って、各工程(1)〜(3)を別々のロール・ツー・ロールで行うこともできる。
【0039】
図3の各工程(1)〜(3)を施してなる透明基材11を巻き取った後、図4にて、再び、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)で透明基材11を各工程に搬送する。
【0040】
今度は、透明基材11の第2の面11bに、矢印(4)、(5)に示す各工程を施す。
まず矢印(4)の工程では、透明基材11の第2の面11bに加飾層3をスクリーン印刷する。図1,図2で説明したように、加飾層3を加飾領域1bに印刷形成する。
【0041】
続いて、加飾層3が形成された透明基材11を次工程に送り、矢印(5)の工程では、例えば両面粘着テープ14からなる光学透明粘着層(OCA)を加飾層3の表面及び透明基材11の透明入力領域上の全域に貼り付ける。両面粘着テープ14の表面(外側の面)には剥離シートがあるため、両面粘着テープ14が貼り付けられた透明基材11を巻き取ることができる。
【0042】
図3と図4の各工程をすべて一回のロール・ツー・ロールで行うことも出来るし、複数回のロール・ツー・ロールにした場合、どの工程からどの工程までを一回分のロール・ツー・ロールとするかを任意に決めることが出来る。
また、図4の工程を先に行った後、図3の工程を後に行うことも可能である。
【0043】
図5に示すように帯状に長い透明基材11の第1の面11a側には複数個のタッチパネル1に対応する複数組の透明電極4及び配線層6と、第1の面11aの全域に設けられた透明保護層13とを有し、第2の面11b側には複数個のタッチパネル1に対応する複数組の加飾層3と、第2の面11bの全域に設けられた両面粘着テープ(光学透明粘着層)14とを有する。
【0044】
図5に示す工程(部分縦断面図)では、帯状に長い透明基材11を点線に沿って切断して各透明基材2に個片化する。
【0045】
そして図6に示すように各透明基材2の第2の面2b側に光学透明粘着層10を介してガラスパネル5を貼着する。
【0046】
本実施形態では、上記に示したように、加飾層3及び透明電極4を夫々、透明基材2の平坦化面(第1の面2aと第2の面2b)にロール・ツー・ロール方式で形成することができ、良好なセンサ感度を有するタッチパネル1を生産性良く形成できる。また表層に位置する透明パネルを、透明基材2に光学透明粘着層10を介して貼り付けた構成としたことで、透明パネルに対する材質の制限を無くすことができ、高い生産性と透明パネルの材質に対する高い自由度を兼ね備えることが可能である。
【0047】
本実施形態では、透明パネルに強化ガラス等のガラスパネル5を自由に選択することが出来る。また透明パネルが湾曲した形状であっても、ロール・ツー・ロール方式で形成した加飾層3及び透明電極4を有する透明基材11を透明パネルに容易に貼り合わせることが可能である。
【0048】
また本実施形態では、透明基材2には、安価でロール・ツー・ロールに適したPETフィルムを用いることが可能である。
【0049】
本実施形態では、図7に示すように、2層の透明電極15,16を透明絶縁層17を介して積層した積層構造とすることが可能である。このとき、例えば、透明電極15は、X方向に向けて延出し、Y方向に間隔を空けた複数本で構成され、透明電極16はY方向に向けて延出し、X方向に間隔を空けた複数本で構成される。
【0050】
ただし本実施形態では、図1,図2に示すように、透明電極4を1層構造で構成することが可能であり、これによりタッチパネル1の薄型化を促進することができて好適である。
【0051】
本実施形態におけるタッチパネル1は静電容量式であり、タッチパネル1の下面側には液晶ディスプレイ(LCD)(図示しない)が配置されている。液晶ディスプレイの表示形態をタッチパネル1の透明入力領域1aから見ることができ、また本実施形態では透明入力領域1aに映し出された表示形態を見ながら入力操作を可能としている。
【0052】
本実施形態におけるタッチパネル(入力装置)は、携帯電話機、デジタルカメラ、PDA、ゲーム機、カーナビゲーション等に使用される。
【符号の説明】
【0053】
1 タッチパネル
1a 透明入力領域
1b 加飾領域
2、11 透明基材
2a、11a 第1の面
2b、11b 第2の面
3 加飾層
4、4a、4b、15、16 透明電極
4c 透明導電層
5 ガラスパネル
6 配線層
8、13 透明保護層
9 操作面
10 光学透明粘着層(OCA)
14 両面粘着テープ(光学透明粘着層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の透明基材と、前記透明基材の第1の面に形成された透明電極と、前記透明基材の前記第1の面に対して反対側の第2の面に形成された加飾層と、前記透明基材の前記第2の面側にて前記透明基材と光学透明粘着層を介して貼着された透明パネルと、を有することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記第1の面には、前記透明電極の表面を覆う透明保護層が設けられている請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記透明電極は、1層構造で構成される請求項1又は2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記透明パネルはガラスパネルである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項5】
前記透明基材は、PETフィルムである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項6】
ロール・ツー・ロールで可撓性の透明基材を搬送しながら前記透明基材の第1の面に透明電極を形成し、前記透明基材の第1の面とは反対側の第2の面に加飾層を形成する工程、
前記透明電極及び前記加飾層が形成された前記透明基材を個片化する工程、
個片化された各透明基材の第2の面側に、光学透明粘着層を介して透明パネルを貼着する工程、
を有することを特徴とする入力装置の製造方法。
【請求項7】
前記透明電極を形成した後、前記第1の面側に前記透明電極の表面を覆う透明保護層を形成する工程を有する請求項6記載の入力装置の製造方法。
【請求項8】
前記透明電極とガラスパネルとを貼り合わせる請求項6又は7に記載の入力装置の製造方法。
【請求項9】
前記透明基材にPETフィルムを用いる請求項6ないし8のいずれか1項に記載の入力装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−247813(P2012−247813A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72493(P2011−72493)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】