説明

入力装置

【課題】操作者が自ら行った操作を直接的に把握することができる入力部を備えた入力装置を提供する。
【解決手段】入力装置は、エアーコンディショナとオーディオとを操作するための入力操作が行われる入力部10を備える。入力部10は、操作者の入力操作によって弾性変形する軟質弾性材料により形成された軟質弾性部12がその一部に設けられ、軟質弾性部の変形を検出する圧力センサ15を備え、圧力センサ15の検出に基づく検出信号を制御装置へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力装置に係り、操作対象を操作する際に、操作者によって入力操作が行われる入力部に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、オーディオ、エアーコンディショナ、ナビゲーション等の車載機器を操作する際に操作者によって入力操作が行われる入力部を備えた入力装置が設けられている。例えば、入力部がジョイスティックである入力装置では、ジョイスティックの操作ノブが操作されると、同操作ノブの傾き角を検出し、操作対象であるオーディオ、エアーコンディショナ、ナビゲーション等を操作している(例えば、特許文献1参照。)。また、入力部がスライドスイッチである入力装置では、スライドスイッチの操作部を指でスライドさせている時間を検出し、操作対象であるオーディオ、エアーコンディショナ、ナビゲーション等を操作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−258782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
つまり、入力部に対して行った操作によって操作対象であるオーディオ、エアーコンディショナ、ナビゲーション等の状態が変化したことを操作者が認識しながら入力部を操作している。そのため、操作者は自らが行った操作を入力部から直接把握することができない。
【0005】
そこで、入力部を目視することによって入力部に対して行った操作を認識することも考えられるが、目視で把握することが難しく、運転中においては凝視することは安全上好ましくない。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作者が自ら行った操作を直接的に把握することができる入力部を備えた入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、操作対象を操作するための入力操作が行われる入力部を備えた入力装置であって、入力部は操作者の入力操作によって弾性変形する軟質弾性材料により形成された軟質弾性部が少なくともその一部に設けられ、複数種の前記入力操作による前記軟質弾性部の複数種の変形を検出する検出手段を備え、同検出手段の検出に基づく検出信号を制御装置へ出力することをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、入力部の少なくとも一部が軟質弾性材料によって形成されるため操作者の入力操作により変形させることによって、自らが行った操作を触覚を通じて、直接的に把握することができる。操作者が行った操作による軟質弾性材料の変形を検出手段によって検出し、その検出信号を制御装置へ出力することにより、操作対象を操作することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の入力装置において、前記検出手段は、前記入力部の軸を基準として前記複数種の変形を検出することをその要旨としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作者が自ら行った操作を直接的に把握することができる入力部を備えた入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)入力部の正面図、(b)入力部の側面図。
【図2】入力装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】(a)〜(d)入力部の変形例を示す図。
【図4】入力部に対する入力操作とその入力操作に対応する操作対象との組み合わせを示す図。
【図5】(a)〜(d)入力部の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる入力装置を車室内に設け、車両のエアーコンディショナ、及びオーディオの操作装置として具体化した第1の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
【0013】
図1(a)及び(b)に示されるように、入力装置の入力部10は、円筒状の基台11の先端に操作者の入力操作によって変形する軟質弾性材料からなる円筒状の軟質弾性部12の末端が接着され、同軟質弾性部12の先端に半円状の先端部13が接着されている。軟質弾性材料とは、シリコンゴムや発砲材(スポンジ)等である。軟質弾性部12の両端がそれぞれ基台11と先端部13とに接着されているため、基台11に対して先端部13が変位されると、軟質弾性部12は先端部13の変位に伴い変形することとなる。また、操作者が軟質弾性部12自体に入力操作を行うことによって軟質弾性部12が変形される。
【0014】
入力部10の基台11及び軟質弾性部12の内側には、軟質弾性部12の変形を検出する検出手段としての圧力センサ15が備えられている。圧力センサ15は、軟質弾性部12の変形を検出することによって、入力部10に対する操作者の入力操作を検出し、図示しない制御装置に出力する。
【0015】
次に、入力装置1について図2を参照して説明する。
図2に示されるように、入力装置1は、入力部10と、同入力部10からの検出信号が入力される制御装置2と、操作対象を切り替える切替スイッチ3とを備えている。
【0016】
入力部10に設けられる圧力センサ15は軟質弾性部12の圧力変化を検出すると検出信号Spを制御装置2へ出力する。制御装置2は、入力された検出信号Spに基づいて操作対象であるエアーコンディショナ20とオーディオ21とをそれぞれ制御する。切替スイッチ3は、操作者による入力部10への入力操作が入力対象であるエアーコンディショナ20とオーディオ21とのどちらに対する操作であるか切り替えるスイッチである。言い換えれば、切替スイッチ3によって、入力部10によって操作される操作対象がエアーコンディショナ20とオーディオ21との間で切り替わる。
【0017】
次に、操作者による入力部10への入力操作について図3を参照して説明する。
図3(a)は、親指ftと人差し指fiとによって先端部13を上下から挟持し、入力部10の軸において先端部13を基台11から離間させることによって、軟質弾性部12を伸ばす操作を示している。
【0018】
図3(b)は、親指ftと人差し指fiとによって先端部13を上下から挟持し、上側の人差し指fiを先端部13に当接させたままで、入力部10の軸において基台11から離間させることによって、軟質弾性部12を軸から傾ける操作を示している。
【0019】
図3(c)は、親指ftと人差し指fiとによって軟質弾性部12を上下から挟持して軟質弾性部12の内側へつぶす操作を示している。同操作を繰り返すと揉む操作となる。
図3(d)は、親指ftと人差し指fiとによって先端部13を上下から挟持し、軟質弾性部12をねじる操作を示している。
【0020】
上記以外に、親指ftと人差し指fiとによって先端部13を上下から挟持し、入力部10の軸において先端部13を基台11へ近接させることによって、軟質弾性部12を縮ませる操作や、親指ftと人差し指fiとによって軟質弾性部12を上下から挟持して軟質弾性部12の表面をなでる操作がある。さらに、これらの入力操作による軟質弾性部12の形状変化の時間を変えることによって、この時間に対応した操作を行う。
【0021】
次に、前述のように構成された入力部10への入力操作と操作対象との組み合わせについて図4を参照して説明する。
軟質弾性部12が伸ばされたり、縮まされたりする入力操作は、エアーコンディショナ20の風量調節と、オーディオ21の音量調節とに対応する。軟質弾性部12が傾けられる入力操作は、エアーコンディショナ20の吹出向き調節と、オーディオ21の選曲とに対応する。軟質弾性部12が揉まれる入力操作は、エアーコンディショナ20の吹出口選択と、オーディオ21のモード選択とに対応する。軟質弾性部12がねじられる入力操作は、温度調節と、オーディオ21の左右音量バランスとに対応する。
【0022】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)入力部10の一部である軟質弾性部12が軟質弾性材料によって形成されるため操作者の入力操作により変形させることによって、自らが行った操作を直接認識することができる。操作者が行った操作による軟質弾性部12の変形を検出手段である圧力センサ15によって検出し、制御装置2へ出力することにより、操作対象であるエアーコンディショナ20及びオーディオ21を操作することができる。
【0023】
(2)入力部10が円筒状に形成されることにより操作者が容易に掴むことができる。また、軟質弾性材料が外周面に形成されることにより、複雑な形状になることがなく、入力操作の種類が絞られ、検出が容易である。
【0024】
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる入力装置を車室内に設け、車両のエアーコンディショナ、及びオーディオの操作装置として具体化した第2の実施形態について、図2及び図5を参照して説明する。この実施形態の入力部は、軟質弾性部の形状が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0025】
図5(a)に示されるように、入力装置の入力部30は、円筒状の基台31の先端に操作者の入力操作によって変形する軟質弾性材料からなる略球状の軟質弾性部32の末端が接着されている。軟質弾性材料とは、シリコンゴムや発砲材(スポンジ)等である。また、操作者が軟質弾性部32自体に入力操作を行うことによって軟質弾性部32が変形される。本実施形態の軟質弾性部32は、一部が固定された球状であるため操作者の入力操作によって種々の形を模すことができる。詳しくは、図5(b)に示されるように軟質弾性部32の中央を入力部30の軸方向において基台31側へ押し潰したり、図5(c)に示されるように親指ftと人差し指fiとによって軟質弾性部32の先端を上下から挟持し、軟質弾性部32を伸ばしながらねじったり、図5(d)に示されるように五本の指ft,fi,fm,fr,flで軟質弾性部32を掴んで、特に人差し指fiと中指fmと薬指frとに力を入れることによって、断面形状がピースサインを模したりすることができる。軟質弾性部32の変形は、上記に限らずその他にすることが可能である。
【0026】
入力部30の基台31及び軟質弾性部32の内側には、軟質弾性部32の変形を検出する検出手段としての圧力センサ15に加え、軟質弾性部32が変形された種々の形を検出するためにカメラ18が備えられている。
【0027】
入力部30に設けられる圧力センサ15は軟質弾性部32の圧力変化を検出すると検出信号Spを、カメラ18は軟質弾性部32全体の変形や軟質弾性部32に対する操作者の指の移動を検出すると検出信号Scを制御装置2へ出力する。制御装置2は、入力された検出信号Sp,Scに基づいて操作対象であるエアーコンディショナ20とオーディオ21とをそれぞれ制御する。
【0028】
次に、前述のように構成された入力部30への入力操作と操作対象との組み合わせについて説明する。
例えば、図5(b)に示されるように、軟質弾性部32が押し潰される入力操作は、エアーコンディショナ20の電源ONと、オーディオ21の電源ONとに対応する。軟質弾性部32が伸ばされる入力操作は、エアーコンディショナ20の風量調節と、オーディオ21の選曲とに対応する。また、軟質弾性部32がねじられる入力操作は、エアーコンディショナ20の温度調節と、オーディオ21の音量調節とに対応する。そのため、図5(c)に示されるように、軟質弾性部32が伸ばされながらねじられると、エアーコンディショナ20の風量調節を行いながら温度調節を行い、オーディオ21の選曲を行いながら音量調節を行うことができる。さらに、図5(d)に示されるように、軟質弾性部32がピースサインを模した形の入力操作は、エアーコンディショナ20を空気清浄モードへの設定と、オーディオ21をお気に入りの曲への設定とに対応する。
【0029】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(3)複数の検出手段としての圧力センサ15及びカメラ18によって軟質弾性部32の変形を検出するため、軟質弾性部32のより複雑な変形を検出することができる。
【0030】
(4)軟質弾性部32が略球状であるので、操作者の入力操作によっていろいろな形状とすることができ、操作者が自らの入力操作をより直接的に把握することができるようになる。そして、軟質弾性部32の形状そのものをカメラ18等の検出手段によって検出させることによって、操作対象を操作することができる。
【0031】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記第1の実施形態では円筒状の軟質弾性部12を入力部10に備え、上記第2の実施形態では球状の軟質弾性部32を入力部30に備えたが、軟質弾性部12,32の形は円筒状や球状に限らず角状等の他の形にしてもよい。
【0032】
・上記第1の実施形態では検出手段として圧力センサ15を備え、第2の実施形態ではさらに検出手段としてカメラ18を備えた。しかしながら、図3(c)に示されるように、親指ftと人差し指fiとによって軟質弾性部12を上下から挟持して軟質弾性部12の内側へつぶす操作の速度を検出して、操作対象であるエアーコンディショナ20とオーディオ21とに対応させたければ、図2に示されるように加速度センサ16を備え、加速度センサ16から検出信号Saを制御装置2へ出力するようにしてもよい。また、軟質弾性部12,32の表面をなでる入力操作を検出したければ、図2に示されるように赤外線センサ17を備え、赤外線センサ17から検出信号Siを制御装置2へ出力するようにしてもよい。
【0033】
・上記実施形態において示した入力操作によるピースサイン等の形状に限らず、その他の形状によって操作対象を操作するようにしてもよい。
・上記実施形態では、エアーコンディショナ20においては温度調節等を入力操作に応じて行うようにしたが、実施形態に示した風量調節、吹出口選択、吹出向き調節に限らず、その他の操作を行うようにしてもよい。
【0034】
・上記実施形態では、オーディオ21においては音量調節等を入力操作に応じて行うようにしたが、実施形態に示した選曲、モード選択、左右音量バランスに限らず、その他の操作を行うようにしてもよい。
【0035】
・上記実施形態では、エアーコンディショナ20の温度調節等と、オーディオ21の温度調節等との操作装置の入力装置としたが、エアーコンディショナ20及びオーディオ21に限らず、ナビゲーション等の車載機器の入力装置として用いてもよい。
【0036】
・上記実施形態において、軟質弾性部12,32を伸ばしたり、縮めたりするその入力操作の速度又はその入力操作の操作量(伸縮量)に対応させて操作対象の操作速度を変化させてもよい。例えば、ナビゲーションのスクロール操作において、入力操作の速度又は入力操作の操作量(伸縮量)に対応させてそのスクロール速度を変化させる。
【0037】
・上記実施形態において、軟質弾性部12,32をつぶす入力操作の強弱に対応させて操作対象に対する操作を変更してもよい。例えば、初期設定においてナビゲーションに対して入力操作を行うようになっていた場合に、強くつぶす入力操作を行うと、エアーコンディショナ20に対して入力操作を行うように変更し、弱くつぶす入力操作を行うと、オーディオ21に対して入力操作を行うように変更してもよい。なおここでの強弱は、つぶす入力操作において、所定値以上の場合に強くつぶす入力操作として検出し、所定値未満の場合に弱くつぶす入力操作として検出する。
【0038】
・上記実施形態において、第一の入力操作を行った後に所定期間、例えば二秒以内に第二の入力操作を行った場合には、その第一の入力操作及び第二の入力操作の組み合わせに基づいて、操作対象を操作するようにしてもよい。
【0039】
・上記実施形態において、軟質弾性部12,32に対する入力操作とそれぞれの操作対象との組み合わせは、適宜変更してもよい。
・また、車載機器に限らず、ゲーム機や家電製品のコントローラ等の入力装置として用いてもよい。
【0040】
次に、前記実施形態から把握できる請求項記載の発明以外の技術的思想をその効果と共に記載する。
(a)請求項1〜3のいずれか一項に記載の入力装置において、前記操作対象が多数ある場合に、同操作対象を切り替える切替スイッチを備えることを特徴とする入力装置。
【0041】
同構成によれば、操作対象が多数ある場合に、操作対象を切り替える切替スイッチを備えるため、入力部の変形の種類に対して操作対象の数量が上回る際に、操作対象を切り替えることでより多くの操作対象の入力装置として機能させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…入力装置、2…制御装置、10…入力部、11…基台、12…軟質弾性部、13…先端部、15…圧力センサ、16…加速度センサ、17…赤外線センサ、18…カメラ、20…エアーコンディショナ、21…オーディオ、30…入力部、31…基台、32…軟質弾性部、fi…人差し指、ft…親指、fm…中指、fr…薬指、fl…小指、Sa,Sc,Si,Sp…検出信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作対象を操作するための入力操作が行われる入力部を備えた入力装置であって、
入力部は操作者の入力操作によって弾性変形する軟質弾性材料により形成された軟質弾性部が少なくともその一部に設けられ、
複数種の前記入力操作による前記軟質弾性部の複数種の変形を検出する検出手段を備え、同検出手段の検出に基づく検出信号を制御装置へ出力する
ことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力装置において、
前記検出手段は、前記入力部の軸を基準として前記複数種の変形を検出する
ことを特徴とする入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−4129(P2012−4129A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169158(P2011−169158)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【分割の表示】特願2007−102057(P2007−102057)の分割
【原出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】