説明

入退場管理システム

【課題】蓄電手段の残量が不足していてもすぐに識別デバイスと受信装置との間で通信可能な入退場管理システムを提供する。
【解決手段】識別デバイス1は、太陽電池5および蓄電手段6を具備した主電源部4の他、受信装置から非接触で電力供給を受ける補助電源部7を有し、通信機能部3に対して主電源部4と補助電源部7との両方から駆動電力を供給可能とする。通信機能部3は、リード装置の周囲に設定された通信可能エリア内に識別デバイスが存在する状態でのみ、受信装置に対して識別情報を送信可能になる。補助電源部7は、受信装置の周囲に設定された通信可能エリアよりも狭い給電可能エリア内に識別デバイス1が存在する状態でのみ、受信装置から電力供給を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別デバイスから受信装置に識別情報が送信されると、受信装置が識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて前記対象領域への入退場を許可するか否かを決定する入退場管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル等においてオフィスなどの対象領域の出入口に配置された受信装置と、ユーザが携帯可能な薄型の識別デバイスとを用いた入退場管理システムが普及している。この入退場管理システムでは、識別デバイスから受信装置に識別情報を無線通信にて送信し、受信装置において、識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて対象領域への入退場を許可するか否かを決定することにより、扉の解錠動作、あるいは自動ドア、自動改札機等の開閉動作を制御する。
【0003】
この種の入退場管理システムは、受信装置から送られてきた搬送波の電力を利用して送信する機能を識別デバイスに備えた受動型RFタグ(パッシブタグ)方式を採用することが一般的であるため、通信可能距離が比較的短く、受信装置に識別デバイスをかざす行為が求められる。
【0004】
これに対して、識別デバイス自身に電池を電源として具備し、当該電池からの電力供給を受けてデータ送信する機能を識別デバイスに備えた能動型RFタグ(アクティブタグ)方式を採用することで利便性を向上させることも提案されている。すなわち、自身に電源を備えた識別デバイスでは、受動型RFタグ方式に比べて受信装置との通信距離を長く(たとえば10m)することが可能である。これにより、受信装置に識別デバイスをかざす行為が不要となり、識別デバイスを所持(携帯)しているユーザが受信装置に近づくだけで受信装置−識別デバイス間の通信が可能になる。
【0005】
ところで、識別デバイスに一次電池を具備する場合、定期的に電池交換等のメンテナンスが必要になるという不都合があるので、この種の識別デバイスにおいては、光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池を電源として用いることが考えられる(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
また、識別デバイスに電源として太陽電池を備え、識別デバイスに設けた表示部を太陽電池で生成された電力により駆動して当該表示部に諸情報を表示させるということも考えられている(たとえば特許文献2、3参照)。
【0007】
ただし、太陽電池を用いる場合、太陽電池に光が入射しているときのみ太陽電池からの電力供給が可能であるとすれば、たとえば夜間などで太陽電池への入射光強度が低下する環境下で、識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなることがある。そこで、二次電池やキャパシタ等の蓄電手段を太陽電池と併せて用いることで、太陽電池に対する入射光強度が低下した環境下でも、安定した電力供給を継続的に行う構成とすることが好ましい。つまり、この構成によれば、太陽電池に光が入射していなくても、蓄電手段に蓄えられた電力を活用することで識別デバイスと受信装置との間の通信が可能となる。
【0008】
ところで、上述したように太陽電池と蓄電手段とを併用した識別デバイスであっても、識別デバイスが薄暗い屋内(室内)で使用される場合など、長時間に亘って太陽電池に十分な光が入射しない状態で識別デバイスが使用される場合、蓄電手段の残量は徐々に減少する。蓄電手段の残量が不足すると、識別デバイスと受信装置との間の通信が成立せず、入退場管理システムが正常に機能しなくなる(ユーザが入退場できなくなる)おそれがある。この場合、太陽電池を一定時間光に晒すことで蓄電手段を充電すれば、蓄電手段の残量不足により識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなることは回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−24551号公報
【特許文献2】特開2002−32728号公報
【特許文献3】特開平10−240873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、蓄電手段の残量が一旦不足すると、太陽電池に光を当てて蓄電手段がある程度充電されるまで待たなければ識別デバイスと受信装置との間の通信を復旧することができず、当該通信の復旧に時間がかかるという問題がある。そのため、ユーザにおいてはすぐに入退場することができず、入退場管理システムの利便性がよくない。特に、夜間などで周囲が暗く太陽電池に電力を生成させるのに十分な光が届かない環境下では、すぐに蓄電手段を充電することはできず、識別デバイスと受信装置との間の通信が復旧するまでに比較的長い時間を要することがある。
【0011】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであって、蓄電手段の残量が不足していてもすぐに識別デバイスと受信装置との間で通信可能な入退場管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、対象領域の出入口に配置された受信装置と、ユーザに所持され受信装置と無線通信可能な識別デバイスとを備え、識別デバイスから受信装置に識別情報が送信されると、受信装置が識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて前記対象領域への入退場を許可するか否かを決定する入退場管理システムであって、識別デバイスが、識別情報を電気情報として担持する情報保持部と、受信装置と無線通信を行うことにより識別情報を受信装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池および太陽電池の生成した電力を蓄電する蓄電手段を含み通信機能部に駆動電力を供給する主電源部と、少なくとも蓄電手段の残量減少により通信機能部の駆動電力が不足したときに、受信装置から非接触で電力供給を受けて通信機能部の駆動電力を生成する補助電源部とを有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、識別デバイスは、主電源部と補助電源部とを有し、主電源部と補助電源部との両方から通信機能部に駆動電力を供給可能である。そのため、主電源部に含まれる蓄電手段の残量不足により主電源部からの駆動電力で通信機能部を駆動できなくなっても、補助電源部からの駆動電力で通信機能部を駆動すれば、識別デバイスと受信装置との間で通信を行って識別情報を受信装置に送信することができる。ここで、補助電源部は、受信装置から非接触で電力供給を受けて通信機能部の駆動電力を生成するので、識別デバイスが受信装置からの電力供給を受けられれば、周囲の明るさなどに関係なく、すぐに通信機能部の駆動電力を生成することができる。したがって、蓄電手段の残量が不足していても、すぐに識別デバイスと受信装置との間で通信を行うことが可能である。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記識別デバイスが前記受信装置から所定距離以下の通信可能エリア内にあるときに当該受信装置と無線通信可能であって、前記補助電源部が、識別デバイスが受信装置から前記通信可能エリアより狭い給電可能エリア内にあるときに受信装置から非接触で電力供給を受けることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、主電源部における蓄電手段の残量が十分にある場合には、主電源部から通信機能部に駆動電力が供給されることで、識別デバイスが給電可能エリア内になくても通信可能エリア内にあれば、識別情報を受信装置に送信することができる。一方、蓄電手段の残量が不足している場合には、識別デバイスが給電可能エリア内にあれば、補助電源部から通信機能部に駆動電力が供給されることで、識別情報を受信装置に送信することができる。すなわち、ユーザにおいては、蓄電手段の残量不足により識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しない場合、識別デバイスを通信可能エリアより狭い給電可能エリアまで受信装置に近づけることで、識別デバイスと受信装置との間の通信を成立させることができる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記受信装置が、前記通信機能部との無線通信および前記補助電源部への電力供給をそれぞれ間欠的に行っており、通信機能部との無線通信を行う時間間隔が補助電源部への電力供給を行う時間間隔に比べて短く設定されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、主電源部における蓄電手段の残量が十分にある場合には、主電源部から通信機能部に駆動電力が供給されることで、識別情報を受信装置に送信することができる。一方、蓄電手段の残量が不足している場合には、受信装置から補助電源部に電力供給されるタイミングで、補助電源部から通信機能部に駆動電力が供給されることにより、識別情報を受信装置に送信することができる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記補助電源部が、電磁誘導により前記受信装置から非接触で電力供給を受けることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、受信装置から補助電源部への電力供給に電磁誘導を利用しているから、効率よく補助電源部に給電できるという利点がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、主電源部と補助電源部との両方から通信機能部に駆動電力を供給可能としたことで、主電源部に含まれる蓄電手段の残量不足により主電源部からの駆動電力で通信機能部を駆動できなくなっても、補助電源部が受信装置から非接触で電力供給を受けて通信機能部を駆動すれば、識別デバイスと受信装置との間で通信を行うことができる。したがって、蓄電手段の残量が不足していても、すぐに識別デバイスと受信装置との間で通信を行うことが可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1の識別デバイスを示す概略ブロック図である。
【図2】同上の入退場管理システムの適用例を示す概略図である。
【図3】同上の入退場管理システムを示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
本実施形態の入退場管理システムは、図2に示すように対象空間としての部屋Rへの入退室管理に用いられるものであって、部屋Rの出入口の扉D付近の壁に設置された受信装置100と、ユーザHに携帯され当該受信装置100と無線通信する薄型(ここではカード型)の識別デバイス1とを構成要素として備えている。ここで、受信装置100は商用電源から電力供給を受けて動作するものとする。
【0023】
この入退場管理システムにおいては、識別デバイス1と受信装置100との間で電磁波を媒体とした無線通信を行うことにより、識別デバイス1を所有する各個人の認証を行うのであって、当該認証結果に応じて部屋への入退場を許可するか否かを決定する。
【0024】
すなわち、識別デバイス1には、各個人(識別デバイス1の所有者)を識別するための識別情報(ID)が電気情報として格納された情報保持部2(図1参照)が搭載されており、受信装置100との通信時に当該識別情報を受信装置100に送信する。そして、受信装置100は、受け取った識別情報を予め登録されているデータ(正規の識別情報)と照合し、認証に成功すれば扉Dを解錠し、認証に失敗すれば扉Dの施錠状態を維持するように扉Dの解錠動作を制御する。そのため、上記入退場管理システムを用いれば、ユーザHに識別デバイス1を所持させておくだけで当該ユーザHの入退室管理等が可能となる。
【0025】
識別デバイス1は、図1に示すように識別情報を記憶するメモリからなる情報保持部2と、受信装置100との間で無線通信を行う通信機能部3と、通信機能部3に対して電力供給を行う主電源部4および補助電源部7の2つの電源部とを備えている。この識別デバイス1は、少なくとも情報保持部2に記憶した識別情報を、通信機能部3を介して受信装置100に発信する機能を有する。なお、情報保持部2はメモリに限らず、たとえばディップスイッチの接点の開閉状態によって表される識別情報を担持するものであってもよい。
【0026】
主電源部4は、受信装置100との通信に必要な電力を供給するものであって、外部から照射する光エネルギを電気エネルギに変換する光電変換素子である太陽電池5を有している。したがって、太陽電池5に対して十分な光量の光が照射する環境を確保することで、電池交換や充電等のメンテナンスを行うことなく、長期間に亘って安定した電力供給を実現することができる。ここでは、識別デバイス1の通常の使用形態において太陽電池5に光を照射できるように、識別デバイス1をたとえば名札のように周囲の人に視認されやすい形態でユーザHに所持されるものとする。
【0027】
また、主電源部4においては、二次電池やキャパシタ等の蓄電手段6を太陽電池5と併せて用いることで、太陽電池5に対して光が照射しない環境下においても、通信機能部3に対して安定した電力供給を継続的に行う構成としてある。この構成によれば、太陽電池5に光が入射していなくても、蓄電手段6に蓄えられた電力を活用することで、識別デバイス1と受信装置100との間の通信が可能となる。そのため、太陽電池5の発電効率が高い日中に太陽電池5の出力で蓄電手段6を充電し、太陽電池5の発電効率が低下する夜間には蓄電手段6に蓄えた電力を活用することで、太陽電池5の出力を有効に利用できる。
【0028】
ここで、本実施形態の識別デバイス1は、太陽光が照射する屋外のみならず、太陽光に比べて低照度となる屋内(室内)においても太陽電池5で十分な電力を生成可能とするため、太陽電池5として、増感作用を持つ物質と電荷を輸送する電子輸送部および正孔輸送部とを有したものを用いている。増感作用を持つ物質は、光を吸収することにより電子(負の電荷)と正孔(正の電荷)とを別々の物質に振り分ける機能を持ち、このことが光電変換効果の発現の要因となる。ここで、増感作用を持つ物質より電子を受け取る材料部が電子輸送部であり、増感作用を持つ物質より正孔を受け取る材料部が正孔輸送部である。
【0029】
増感作用を持つ物質と電荷輸送部(電子輸送部および正孔輸送部)とを有した太陽電池5としては、色素増感太陽電池、量子ドット増感太陽電池、色素増感有機太陽電池等が知られているが、本実施形態では色素増感太陽電池を太陽電池5として採用することとする。色素増感型の太陽電池5は、基板を透明材料から形成することで全体として透過性を有した構成とすることができ、さらに、基板を可撓性のある樹脂フィルム等で形成すれば全体として可撓性を有した構成とすることが可能である。
【0030】
ところで、本実施形態のように太陽電池5と蓄電手段6とを併用した識別デバイス1であっても、識別デバイス1が薄暗い屋内(室内)で使用される場合など、長時間に亘って太陽電池5に十分な光が入射しない状態で識別デバイス1が使用される場合、蓄電手段6の残量は徐々に減少する。蓄電手段6の残量が不足すると、太陽電池5に光が照射しない状態で通信機能部3に十分な電力が供給されなくなるため、識別デバイス1と受信装置100との間の通信が成立せず、入退場管理システムが正常に機能しなくなる(ユーザHが入退室できなくなる)おそれがある。
【0031】
そこで、本実施形態では、識別デバイス1に補助電源部7を設け、通信機能部3に対して主電源部4と補助電源部7との両方から駆動電力を供給可能とすることで、蓄電手段6の残量不足により識別デバイス1と受信装置100との間の通信が成立しなくなることを回避可能としている。すなわち、通信機能部3は、蓄電手段6の残量が十分にある定常状態では、蓄電手段6を含む主電源部4から電力供給を受けて動作するが、蓄電手段6の残量が減少して閾値を下回った残量不足状態では、補助電源部7からの電力供給を受けて動作する。
【0032】
ここで、補助電源部7は、受信装置100から非接触で電力供給を受けて通信機能部3の駆動電力を生成する。具体的に説明すると、補助電源部7は、受信装置100に設けられている非接触給電部109(図3参照)と磁気結合した状態で、電磁誘導により非接触給電部109から非接触で電力供給を受ける。補助電源部7と非接触給電部109との磁気結合は、識別デバイス1が受信装置100から所定距離(たとえば数cm程度)の比較的狭い範囲に設定された給電可能エリア8(図2参照)内にある状態で行われる。そのため、補助電源部7は、受信装置100の周囲に設定された給電可能エリア8内に識別デバイス1が存在する状態でのみ、受信装置100からの電力供給を受けることができる。ここに、非接触給電部109から補助電源部7への給電は、識別デバイス1が給電可能エリア8内に入ることで自動的に開始される。
【0033】
一方、通信機能部3は、識別デバイス1が受信装置100から所定距離(たとえば数m程度)の範囲に設定された通信可能エリア9(図2参照)内にある状態で、受信装置100に対して識別情報を送信可能となる。つまり、識別デバイス1と受信装置100との間で通信が可能となるのは、双方間で送受信される信号が届く範囲に限られるが、当該信号が届く範囲は当該信号を送信する際の送信電力の大きさ等によって制限される。そのため、識別デバイス1から受信装置100への信号の送信が可能になるのは、受信装置100の周囲に設定された通信可能エリア9内に識別デバイス1が存在する場合に限られる。
【0034】
ここにおいて、本実施形態では、蓄電手段6の残量が十分にある定常状態で、通信機能部3が主電源部4からの電力供給を受けて識別情報を送信する能動型RFタグ(アクティブタグ)方式を採用しているので、通信可能エリア9は比較的広く設定されている。そして、給電可能エリア8は通信可能エリア9よりも狭く設定されている。
【0035】
そのため、主電源部4の蓄電手段6に通信機能部3を駆動するのに十分な残量がある場合、識別デバイス1が受信装置100の周囲に設定された通信可能エリア9内にあれば、通信機能部3は、主電源部4からの電力供給を受けて識別情報を受信装置100に送信することができる。このとき、補助電源部7からの電力供給は不要であるから、識別デバイス1が通信可能エリア9内に設定されている給電可能エリア8内に入っている必要はない。したがって、識別デバイス1を所持するユーザHにおいては、受信装置100に識別デバイス1をかざす必要がなく、受信装置100に近づくだけで識別情報の認証が為されて入退場が可能になる。
【0036】
これに対して、主電源部4の蓄電手段6の残量不足により主電源部4からの電力供給で通信機能部3を動作させることができない場合、通信機能部3から識別情報を受信装置100に送信するためには、補助電源部7からの電力供給が必要である。そのため、識別デバイス1が通信可能エリア9内に入っているだけでなく、通信可能エリア9内に設定されている給電可能エリア8内に入っている必要がある。したがって、識別デバイス1を所持するユーザHにおいては、受信装置100に識別デバイス1をかざすなどして識別デバイス1を給電可能エリア8内に入れることにより、識別情報の認証が為されて入退場が可能になる。
【0037】
以上説明した構成によれば、主電源部4の蓄電手段6の残量が不足して主電源部4からの電力供給では通信機能部3が動作不能となっても、補助電源部7から通信機能部3に電力供給を行うことで、識別デバイス1と受信装置100との間で通信を行い受信装置100に識別情報を送信することができる。しかも、補助電源部7は受信装置100から非接触で電力供給を受けるので、太陽電池5に光を当てて蓄電手段6を充電する場合のように受信装置100との通信が可能となるまでに時間がかかることもない。したがって、蓄電手段6の残量不足が生じても識別デバイス1と受信装置100との間の通信が成立しなくなることはなく、すぐに識別デバイス1と受信装置100との間の通信を確保することが可能である。
【0038】
要するに、蓄電手段6の残量が十分にある定常状態では、通信機能部3は主電源部4からの電力供給を受けて能動型RFタグ(アクティブタグ)方式により識別情報を送信する。対して、蓄電手段6の残量が不足した状態では、通信機能部3は受信装置100から補助電源部7に供給される電力を利用して受動型RFタグ(パッシブタグ)方式により識別情報を送信する。その結果、定常状態ではユーザHが受信装置100に近づくだけで当該受信装置100に識別情報が送信され、また、蓄電手段6の残量不足が生じても、ユーザHが識別デバイス1を受信装置100にかざすことによって当該受信装置100に識別情報が送信される。
【0039】
以下、上記実施形態の入退場管理システムの具体例について、図3を参照して説明する。
【0040】
部屋Rの出入口に設置された受信装置100は、LF帯(長波帯:30〜300kHz)の第1の通信方式にて識別デバイス1と通信するためのLF帯送信部101およびLFアンテナ102と、UHF帯(極超短波帯:300MHz〜3GHz)の第2の通信方式にて識別デバイス1と通信するためのRF送受信部103およびRFアンテナ104と、LF帯送信部101およびRF送受信部103を制御する制御部105とを受信機能部110に備え、制御部105に接続された液晶ディスプレイ等からなる表示部106およびブザー107を具備する。さらに、受信装置100は、識別情報の認証用のデータ(正規の識別情報)が格納された記憶部108と、補助電源部7への給電用の非接触給電部109とを有する。
【0041】
ユーザに所持される識別デバイス1は、上記第1の通信方式にて受信装置100と通信するためのLF帯受信部31およびLFアンテナ32と、上記第2の通信方式にて受信装置100と通信するためのRF送受信部33およびRFアンテナ34と、LF帯受信部31およびRF送受信部33を制御する制御部35とを通信機能部3に備えている。ここで、LFアンテナ32はたとえば通信機能部3の基板(図示せず)上に形成されたループアンテナからなり、RFアンテナ33は前記基板上に形成されたパッチアンテナからなる。
【0042】
次に、上述した入退場管理システムの動作例を示す。
【0043】
受信装置100は、制御部105で生成した起動信号を、LF帯送信部101において増幅してLFアンテナ102から第1の通信方式(LF)にて、一定周期で間欠的に発信する。これにより、受信装置100の周囲(部屋Rの出入口付近)には前記起動信号が届く範囲内で通信可能エリア9が形成される。
【0044】
識別デバイス1を所持したユーザHが上記通信可能エリア9内に入ると、識別デバイス1は、受信装置100からの起動信号をLFアンテナ32で受信した後に、LF帯受信部31が制御部35を起動し、制御部35にて情報保持部2内の識別情報を含む応答信号(識別信号)を生成し、RF送受信部33からRFアンテナ34を介して第2の通信方式(UHF)にて応答信号を受信装置100に返信する。ここにおいて、識別デバイス1は、起動信号を受信するまでは、通信機能部3のうちLF帯受信部31のみに主電源部4から電力供給を行いLF帯受信部31以外の各部(RF送受信部33、制御部35)への電力供給を行わない低消費電力モードで動作しており、起動信号を受信することで初めてLF帯受信部31以外の各部にも電力供給が行われる通常モードで動作する。
【0045】
このとき、主電源部4の蓄電手段6に十分な残量があれば、通信機能部3への電力供給は主電源部4から行われるが、主電源部4の残量が閾値を下回る状態では、通信機能部3への電力供給は補助電源部7から行われることになる。補助電源部7から電力供給を行う場合、識別デバイス1を所持したユーザHは通信可能エリア9内の給電可能エリア8まで受信装置100に識別デバイス1を近づける必要がある。
【0046】
受信装置100は、応答信号をRFアンテナ104を介してRF送受信部103で受信し、当該応答信号に含まれる識別情報と記憶部108内のデータとの照合を行う。そして、当該識別情報が正規の識別情報であると判断されて認証が正常に完了した場合には、受信装置100の制御部105は、認証完了した識別情報を含む確認信号(ACK信号)をRF送受信部103からRFアンテナ104を介して識別デバイス1に送信する。また、受信装置100の制御部105は、識別情報の認証が正常に完了すれば表示部106やブザー107によってその旨を報知するとともに、部屋Rの出入口の扉Dを解錠するための制御を行なう一方で、識別情報の認証に失敗した場合には、表示部106やブザー107によって警告を行うとともに、部屋Rの出入口の扉Dの施錠を維持するための制御を行う。なお、受信装置100の機能の一部を受信装置100に接続される他装置に持たせ、応答信号を受信装置100から前記他装置に転送するようにし、識別情報の照合を前記他装置にて行う構成としてもよい。
【0047】
識別デバイス1は、前記確認信号をRF送受信部33で受信すると、応答信号の送信を終了する。なお、受信装置100からの確認信号の送信に代えて、認証完了した識別情報を次回の起動信号に含むようにしてもよく、この場合、識別デバイス1は自己の識別情報を含む起動信号をLF帯受信部31にて受信することで、応答信号の送信を終了する。
【0048】
このように、識別デバイス1がLF帯の起動信号で起動し、UHF帯の応答信号を返信させることにより、前記通信可能エリア9をたとえば1.5〜2mの範囲に正確に規定することができる。ここにおいて、識別デバイス1のRF送受信部33からRFアンテナ34を介して送信される応答信号の送信電力が、蓄電手段6の残量が少なくなるに連れて低下し、識別デバイス1から応答信号が届く範囲は蓄電手段6の残量に応じて変化する可能性がある。ただし、本実施形態では受信装置100からの起動信号が届く範囲内で通信可能エリア9を形成しているため、蓄電手段6の残量変化に伴って通信可能エリア9が変化することはない。
【0049】
また、UHF帯の無線通信を行うRF送受信部33においては、消費電力が10〜20mAと大きいのに対して、LF帯の無線通信を行うLF帯受信部31においては、数μA程度の微弱な電力で起動するので、待機状態にてRF送受信部33への電力供給を行わない低消費電力モードを採用することによって、識別デバイス1の待機電力を低く抑えることが可能である。
【0050】
なお、上述の例では受信装置100が識別情報の認証結果に応じて扉Dの解錠動作を制御する構成を示したが、この例に限らず、受信装置100が自動ドア、自動改札機等の開閉動作を制御する構成としてもよい。また、無線通信は基本的に電磁波を媒体とする通信を意味するが、識別デバイス1は電磁誘導を利用して受信装置100と通信(無線通信)を行うものであってもよい。
【0051】
(実施形態2)
本実施形態の入退場管理システムは、受信装置100が、識別デバイス1との無線通信(起動信号の送信)および識別デバイス1への非接触給電をそれぞれ間欠的に行っている点が実施形態1の入退場管理システムと相違する。
【0052】
本実施形態では、受信装置100が識別デバイス1の通信機能部3と無線通信を行う時間間隔は、受信装置1が識別デバイス1の補助電源部7へ非接触給電を行う時間間隔に比べて短く設定されている。一例として、前記無線通信を1秒間隔で行い、補助電源部7への給電は5秒間隔で行うものとする。さらに、ここでは給電可能エリア8は通信可能エリア9と略同一範囲となるように、比較的広く設定されている。
【0053】
この構成により、通信機能部3は、基本的には主電源部4からの電力供給により動作し、蓄電手段6の残量不足が生じた際に、補助電源部7からの電力供給により動作する。すなわち、ユーザHが通信可能エリア9に入ることで、通信機能部3は主電源部4の電力を優先的に使用するが、蓄電手段6の残量が不足している場合でも、次回の非接触給電のタイミングには通信機能部3は補助電源部7の電力供給により動作する。したがって、識別デバイス1を所持するユーザHにおいては、蓄電手段6の残量不足時に、次回の非接触給電のタイミングまで若干の待ち時間(5秒間隔で非接触給電を行う場合は最大でも5秒)が生じることはあるものの、受信装置100に識別デバイス1をかざす必要がなく、受信装置100に近づくだけで識別情報の認証が為されて入退場が可能になる。
【0054】
なお、その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0055】
(実施形態3)
本実施形態の入退場管理システムは、補助電源部7が受信装置100から送られてきた搬送波の電力を利用して通信機能部3に電力供給するように構成されている点が実施形態1の入退場管理システムと相違する。ここでは、受信装置100から周期的に送信される起動信号の搬送波の電力を用いて補助電源部7に非接触で電力供給が為されるものとする。
【0056】
この構成により、電磁誘導を利用する場合のように受信装置100と補助電源部7とを磁気結合することなく、受信装置100から起動信号の届く範囲であれば補助電源部7に電力供給することができる。しかして、受信装置100から起動範囲の届く範囲が給電可能エリア8となり、補助電源部7は、当該給電可能エリア8内に識別デバイス1が存在する状態で、受信装置100からの電力供給を受けることができる。ここに、受信装置100からの起動信号が届く範囲内で通信可能エリア9を形成しているので、給電可能エリア8と通信可能エリア9とは互いに一致する。
【0057】
本実施形態においては、識別デバイス1が通信可能エリア9内に入り受信装置100からの起動信号を受信すると、まず、主電源部4からの電力供給によって通信機能部3を駆動して応答信号の送信を試みる。このとき蓄電手段6の残量不足により通信機能部3が動作しなければ、補助電源部7からの電力供給によって通信機能部3を駆動して応答信号の送信を行う。つまり、識別デバイス1は、主電源部4からの電力供給を優先し、蓄電手段6の残量が閾値を下回った場合にのみ補助電源部7からの電力供給を行うように構成される。
【0058】
以上説明した構成の入退室管理システムでは、通信可能エリア9に識別デバイス1が入ると、主電源部4あるいは補助電源部7からの電力供給により、通信機能部3が識別情報を受信装置100に送信するので、蓄電手段6の残量不足が生じても識別デバイス1と受信装置100との間の通信が成立しなくなることはない。ここで、給電可能エリア8と通信可能エリア9とは互いに一致するので、蓄電手段6の残量が不足した状態であっても蓄電手段6の残量が十分にある状態と同様に、ユーザHが識別デバイス1を受信装置100にかざす必要はなく、受信装置100に近づくだけで当該受信装置100に識別情報を送信できるという利点がある。
【0059】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0060】
ところで、以上説明した構成の入退場管理システムを用いれば、たとえば不特定多数の来訪者のある管理領域への出入口に受信装置100を設置し、正規の(アポイントのある)来訪者には識別デバイス1を予め渡しておくことで、面識の有無に関わらず正規の来訪者を識別して前記管理領域への入場を許可することが可能となる。さらに、保育施設や介護施設等で集団行動が必要となる状況下において、各個人に識別デバイス1を携帯させることにより、点呼に代えて各個人の存在確認のために活用することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 識別デバイス
2 情報保持部
3 通信機能部
4 主電源部
5 太陽電池
6 蓄電手段
7 補助電源部
8 給電可能エリア
9 通信可能エリア
100 受信装置
H ユーザ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域の出入口に配置された受信装置と、ユーザに所持され受信装置と無線通信可能な識別デバイスとを備え、識別デバイスから受信装置に識別情報が送信されると、受信装置が識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて前記対象領域への入退場を許可するか否かを決定する入退場管理システムであって、識別デバイスは、識別情報を電気情報として担持する情報保持部と、受信装置と無線通信を行うことにより識別情報を受信装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池および太陽電池の生成した電力を蓄電する蓄電手段を含み通信機能部に駆動電力を供給する主電源部と、少なくとも蓄電手段の残量減少により通信機能部の駆動電力が不足したときに、受信装置から非接触で電力供給を受けて通信機能部の駆動電力を生成する補助電源部とを有することを特徴とする入退場管理システム。
【請求項2】
前記識別デバイスは前記受信装置から所定距離以下の通信可能エリア内にあるときに当該受信装置と無線通信可能であって、前記補助電源部は、識別デバイスが受信装置から前記通信可能エリアより狭い給電可能エリア内にあるときに受信装置から非接触で電力供給を受けることを特徴とする請求項1記載の入退場管理システム。
【請求項3】
前記受信装置は、前記通信機能部との無線通信および前記補助電源部への電力供給をそれぞれ間欠的に行っており、通信機能部との無線通信を行う時間間隔が補助電源部への電力供給を行う時間間隔に比べて短く設定されていることを特徴とする請求項1記載の入退場管理システム。
【請求項4】
前記補助電源部は、電磁誘導により前記受信装置から非接触で電力供給を受けることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の入退場管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−165314(P2010−165314A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9192(P2009−9192)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】