説明

公共交通機関内用警報装置

【課題】公共交通機関内での緊急事態に際し、声を出すことなく、躊躇せずに周囲に援助を求めることができ、さらには、痴漢行為や暴行等の迷惑行為に対する抑止効果を十分に発揮できる警報装置を提供する。
【解決手段】少なくとも、視覚的警報発生手段、聴覚的警報発生手段またはそれらの組み合わせのいずれかの警報発生手段;および警報発生手段を作動させるためのスイッチ手段を含み、ここに、前記スイッチ手段は公共交通機関に用いるつり革用スリーブに設置されている警報装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車、地下鉄、モノレール、バス等の公共交通機関内用の警報装置に関する。より詳しくは、公共交通機関内の部材、特に、つり革に設置することができる警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電車、地下鉄、モノレール、バス等の不特定多数の人が利用する公共交通機関内で周囲の人々に援助を求めたい事態が起こっても、援助を求めることが困難な場合がある。例えば、電車内で急病になっても発声できない場合や痴漢や暴行等の迷惑行為の被害に遭っても抵抗できず、怖さから声を出すことすらできない場合がある。特に、痴漢行為を受けたときには、えん罪の可能性を考えると対応に躊躇することもある。
【0003】
そこで、例えば、特開平9−293186号公報(特許文献1)には、防犯ブザー付き痴漢撃退レコーダーが開示されている。このレコーダーは、痴漢行為を抑制または阻止する内容の言葉を録音することができる。最初は、痴漢および周囲の数名程度が聞こえる程度の音量で注意を促す内容の音声を再生し、段階的に音量を増大させて、警告することができる。最終的に悪質な痴漢を撃退するために、このレコーダーには防犯ブザーが取り付けられている。
また、特開2001−243570号公報(特許文献2)には、常時携帯することが容易な指輪状の警報装置が開示され、この警報装置は親指だけで警報装置を作動させることができるため、痴漢行為の被害者が、加害者や周囲人に知られずに、心理的なプレッシャーを受けることなく、容易に警報音を発生させることができる。
さらに、特開2002−83378号公報(特許文献3)には、痴漢行為に対する警戒、拒絶および告発の意思を示す痴漢撃退の言葉を順次派生させることができる音声再生装置が開示されている。この音声再生装置は、防止ブザー、身装具、玩具、鞄、携帯電話等の携帯用小物に組み込まれるとされている。
【0004】
しかしながら、上記の装置は、個人が携帯することを意図したものであり、所有者しか使用することができなかった。特に、痴漢行為に対しては、警報を作動させた者が特定されることもあって、えん罪を考慮すると、その使用が躊躇されることが大半であった。さらに、重要なことは、被害に遭ってからの対処に使用することしかできず、抑止効果が考慮されていないことである。
そのため、迷惑行為に対して、抑止効果が十分にあり、かつ、現実に被害に遭った際に、被害者が声を出せなくても、周囲に知らせることが可能なシステムが求められていた。
【特許文献1】特開平9−293186号公報
【特許文献2】特開2001−243570号公報
【特許文献3】特開2002−83378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かくして、本発明の課題は、公共交通機関内での緊急事態に際し、声を出すことなく、躊躇せずに周囲に援助を求めることができ、さらには、痴漢行為や暴行等の迷惑行為に対する抑止効果を十分に発揮できる警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、個人が携帯する装置ではなく、公共交通機関内の部材、特に、つり革に作動手段を組み込んだ警報装置を提供する。
【0007】
本発明者は、電車やバスなどの公共交通機関の車両全域に、100個以上のつり革が設置され、これらつり革の各々に、スリーブが取り付けられていることに着目し、このつり革用スリーブに警報装置の作動手段を装着すれば、多数の人々が使用できると考え、本発明を完成した。
【0008】
より具体的には、本発明は、少なくとも、視覚的警報発生手段、聴覚的警報発生手段またはそれらの組み合わせのいずれかの警報発生手段;および警報発生手段を作動させるためのスイッチ手段を含み、ここに、前記スイッチ手段は公共交通機関に用いるつり革用スリーブに設置されている警報装置を提供する。
【0009】
本発明において、つり革用スリーブは、電車、地下鉄、モノレールまたはバスなどの公共交通機関に使用するつり革に用いるためのものである。
図3に示すように、通常のつり革4は、柄41および握り部42からなり、さらに、柄41には、スリーブ43がはめ込まれている。このスリーブ43は、握り部42同様に把持するための部材であり、通常、約3cm幅×約10cm長の角形筒状のものであるが、この形状に限られず、様々な形態にすることも可能である。
【0010】
本発明の警報装置は、作動させるためのスイッチ手段がつり革用スリーブに設置されていることを特徴とする。
本発明の警報装置において、視覚的警報発生手段または聴覚的警報発生手段は、スリーブに設置することもできるし、視覚的警報発生手段または聴覚的警報発生手段を車両のドア、壁面、天井その他のスリーブ以外の箇所、運転室や車掌室に別途設置して、視覚的警報発生手段または聴覚的警報発生手段とスイッチ手段とを無線通信で連絡することもできる。
【0011】
すなわち、本発明の第1の形態の警報装置は、警報を作動させるためのスイッチ手段のみがつり革用スリーブに設置され、視覚的警報発生手段または聴覚的警報発生手段またはそれら双方が、車内のつり革用スリーブ以外の箇所に設置されていることを特徴とする。
本発明の第2の形態の警報装置は、警報を作動するためのスイッチ手段および、視覚的警報発生手段または聴覚的警報発生手段のいずか一方が、つり革用スリーブに設置され、視覚的警報発生手段または聴覚的警報発生手段の他方が、車内のつり革用スリーブ以外の箇所に設置されていることを特徴とする。
本発明の第3の形態の警報装置は、警報を作動するためのスイッチ手段および、視覚的警報発生手段または聴覚的警報発生手段またはそれら双方が、つり革用スリーブに設置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明において、視覚的警報発生手段は、液晶表示装置または発光表示装置である。発光表示装置として、電球や発光ダイオードを用いた表示装置、CRT、プラズマ表示装置、蛍光表示装置、発光ダイオード発光装置などがあげられる。例えば、単一の電球や発光ダイオードを有する表示装置を用いて、点灯または点滅によって警報を発生することもでき、複数の電球や発光ダイオードを有する表示装置または、液晶表示装置を用いて、警告または緊急事態を知らせる内容の文字表示によって警報を発生することもできる。また、これらの表示装置には、警報を発生するとき以外は、広告を表示する広告媒体や運行状況等の情報提供媒体として用いることもできる。
【0013】
本発明において、聴覚的警報発生手段は、ブザー、チャイムまたは音声の発生装置である。例えば、ブザーを用いることができ、または、スピーカーを記憶装置と組み合わせて用いることができる。ここで、警報音は、前記記憶装置に録音された人間の音声やチャイム音、または格納された合成音声等のいずれもでもよい。
【0014】
本発明において、音量の調整や表示箇所の設置場所の選定によって、警報の伝達範囲を制御することができる。また、文字や音声の内容を変更することができるので、痴漢行為等の迷惑行為に対する警報のみならず、急病を知らせる等の他の用途にも使用可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電車やバス等の公共交通機関内全域に多数設置されるつり革に警報装置の作動手段を取り付けるため、誰もが使用することができる。したがって、警報の意思を持つ者だけでなく、異変に気づいた周囲の人が警報を発することもできる。また、警報の伝達範囲を広げれば、警報の作動者が特定されることを防止し、痴漢行為に対しても、えん罪の可能性を考慮して躊躇することなく、警報を発して、牽制することができる。一方、警報の伝達範囲を狭めれば、警報の作動者を特定できるので、迷惑行為の犯人や急病人を迅速に発見することができる。
少なくとも、誰もが使用可能な警報装置が車内に設置されていることにより、従来、痴漢行為等の迷惑行為を受けてからの対処ではなく、抑止効果により、犯罪の発生を防止することができる。
また、つり革は、単に把持する部材としてだけではなく、有力な広告媒体としても用いられているため、企業広告料に本発明の警報装置の設置費用を含ませることによって、交通機関の経済的負担を軽減するとともに、企業側は犯罪防止に貢献する姿勢を示せるのでイメージアップにもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第1の形態の警報装置1を図1に示す。第1の形態の警報装置1は、つり革用スリーブ11および警報発生手段12からなる。
つり革用スリーブ11には、警報を作動するためのスイッチ111および無線通信用の送信部112を含む回路が組み込まれている。スイッチの誤動作を防止するために、スリーブ11に凹部領域を設け、その底部にスイッチボタンを設けることもできる。また、スイッチ手段を複数個設け、異なる内容の警報を発生するように設定することもできる。
【0017】
警報発生手段12には、ブザーやスピーカー等の聴覚的警報発生手段121および液晶表示装置等の視覚的警報発生手段122および無線通信用の受信部123を含む回路が組み込まれている。
警報発生手段12は車内のいずれの箇所にも設置可能であり、スイッチ111を押すと、作動信号が送信部112から受信部123に伝送され、警報発生装置が作動する。
【0018】
この図において、聴覚的警報発生手段121の前面の設けられた複数のスピーカー孔からなる開口部が図示されている。また、警報発生手段12には、視覚的警報発生手段および聴覚的発生手段の双方が組み込まれているが、いずれか一方でもよい。さらに、送信部112および受信部123は、電波による無線通信のためのアンテナとして図示されているが、赤外線による無線通信のためには、それぞれ、発光部および受光部であってもよい。
【0019】
本発明の第2の形態の警報装置2は、図示しないが、つり革用スリーブ21および警報発生装置22からなり、つり革用スリーブ21にはスイッチ手段211、視覚的警報発生手段または聴覚的警報発生手段いずれか一方の警報発生手段212および無線通信用の送信部213を含む回路が組み込まれ、警報発生装置22には、スリーブに組み込まれていない警報発生手段221および無線通信用の受信部222が組み込まれている。
その他の構成については、第1の形態の警報装置1と同様である。
【0020】
本発明の第3の形態の警報装置3を図2に示す。第3の形態の警報装置3において、つり革用スリーブ31に、警報を作動するためのスイッチ311、聴覚的警報発生手段312、および視覚的警報発生手段313を含む回路が組み込まれている。スイッチの誤動作を防止するために、スリーブ31に凹部領域を設け、その底部にスイッチボタンを設けることもできる。また、スイッチ手段を複数個設け、異なる内容の警報を発生するように設定することもできる。
この図において、聴覚的警報発生手段32の前面の設けられた複数のスピーカー孔からなる開口部が図示されている。
また、スイッチ311を押すと、警報発生装置が作動する。
つり革用スリーブ31には、視覚的警報発生手段および聴覚的発生手段の双方が組み込まれているが、いずれか一方でもよい。
【0021】
なお、この図においては、説明の便宜上、スイッチ手段、視覚的警報発生手段および聴覚的警報発生手段の全てが、つり革用スリーブの同一面上に設けられているが、異なる面に設けてもよい。また、用途に応じて、これらの手段を複数個設けてもよい。
【0022】
いずれの形態の警報装置においても、警報を作動させるためには、通常の警報装置に用いられる回路を組み込めばよく、特別な回路は必要としない。
警報発生手段をつり革用スリーブ以外の箇所に設置する場合には、その大きさに制限がないが、スリーブに設置する場合、視覚的警報発生手段としては、例えば、発光ダイオード等の半導体素子を用いることが好ましく、聴覚的警報発生手段としては、例えば、電子ブザーまたは、ダイナミックスピーカーもしくは圧電セラミクス等の圧電素子を用いた圧電スピーカーなどの小型スピーカーをICメモリー等の小型記憶装置と組み合わせて用いることができる。
さらに、つり革用スリーブには、広告媒体として使用可能なように、広告を搭載する手段を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来のつり革の概略図。
【図2】本発明の警報装置の概略図
【図3】本発明の別の形態の警報装置の概略図。
【符号の説明】
【0024】
1・・・第1の形態の警報装置、
11・・・スリーブ、
111・・・スイッチ、
112・・・送信部、
12・・・警報発生手段、
121・・・聴覚的警報発生手段、
122・・・視覚的警報発生手段、
123・・・受信部、
2・・・第2の形態の警報装置、
3・・・第3の形態の警報装置、
31・・・スリーブ、
311・・・スイッチ、
312・・・聴覚的警報発生手段、
313・・・視覚的警報発生手段、
4・・・つり革、
41・・・柄、
42・・・握り部、
43・・・スリーブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、視覚的警報発生手段、聴覚的警報発生手段またはそれらの組み合わせのいずれかの警報発生手段;および警報発生手段を作動させるためのスイッチ手段を含み、ここに、前記スイッチ手段は公共交通機関に用いるつり革用スリーブに設置されている警報装置。
【請求項2】
公共交通機関が、電車、地下鉄、モノレールまたはバスであることを特徴とする請求項1に記載の警報装置。
【請求項3】
視覚的警報発生手段が、液晶表示装置または半導体発光素子表示装置であることを特徴とする請求項1に記載の警報装置。
【請求項4】
聴覚的警報発生手段が、ブザー、チャイムまたは音声の発生装置であることを特徴とする請求項1に記載の警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−95021(P2007−95021A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315383(P2005−315383)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(505403603)
【Fターム(参考)】