説明

六方晶フェライト材料の製造方法

【課題】低い温度で合成することが可能で、透磁率が高く、かつ、高いQを備えた六方晶フェライト材料を効率よく製造することが可能な六方晶フェライト材料の製造方法を提供する。
【解決手段】Z型フェライトを主相とする六方晶フェライト材料を製造するにあたって、仮焼後にフェライトを構成する主成分原料100重量部に対し、SiO2および/またはBi23を0.1〜1.0重量部配合して調製した配合原料を,所定の条件で仮焼し、得られた仮焼物を、比表面積が10〜25m2/gになるように粉砕した粉砕物を所定の形状に成形した成形体を焼成して六方晶フェライト材料の焼結体を得る。
仮焼物にSiO2を0.1〜1.0重量部配合した後、粉砕工程に供する。
仮焼物におけるZ型結晶相の生成率を50%以上にする。
焼結体におけるZ型結晶相の生成率を90%以上にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体材料および磁性体材料の製造方法に関し、詳しくは、インダクタのコア部材などの用途に用いられるフェライト系の磁性体材料および磁性体材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高周波化にともない、その構成部品についても高周波化への対応が求められている。
【0003】
このような構成部品の中で、インダクタなどのコイル部品においても高周波化への対応の必要性が強まっている。
【0004】
そして、高周波化への対応性に優れたインダクタのコア部材用材料として、高周波数領域で透磁率(実部)が低下しない磁性体材料が望まれている。そこで、このような要求に応える材料として、六方晶系酸化物磁性体材料、たとえば、Z型六方晶フェライトが検討されている。
【0005】
しかし、Z型六方晶フェライトを合成する場合、その生成温度が高温であるため、異相のY型、M型などの六方晶フェライトが生成しやすいという問題点がある。また、Y型、M型などの結晶相が生成すると、透磁率が低下するという問題点がある。
【0006】
このような状況下、下記のような、フェライト系材料およびその製造方法が提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0007】
まず、特許文献1には、六方晶系フェライトのZ相のピーク強度比がX線回折において30%以上であり(請求項10)、960℃以下での低温焼成が可能な磁性フェライト材料が開示されている。
【0008】
そして、特許文献1では、このような磁性フェライト材料は、Z型の六方晶フェライト材料を構成する原料粉末を混合し、この混合物を1250〜1330℃の温度で仮焼し(段落0019)、仮焼した原料を比表面積で5m2/g以上となるように粉砕し、さらに焼結助剤であるBi23系ガラスを0.5〜12wt%の範囲で添加することにより得ることができるとしている。
【0009】
しかし、特許文献1では、仮焼温度が1250〜1330℃と高いため、仮焼中に粒成長を起こし、粒径が大きくなってしまうばかりでなく、仮焼後に得られる仮焼粉が硬いものになってしまうため、仮焼粉の粉砕が困難であるという問題点がある。さらに、仮焼粉が十分に粉砕されない場合、その後の焼成工程において結晶粒径が大きくなってしまい、得られる磁性フェライト材料において、高いQが得られないという問題点がある。
【0010】
また、特許文献1においては、Z相のピーク強度比が30%以上とされているが、実施例(段落0031)によれば、41.93%であり、異相であるY型、M型フェライト結晶相が残りを占めることから、透磁率μ’が小さく、高い透磁率μ’を有する磁性体を得るという見地からは好ましくないものと考えられる。
【0011】
また、特許文献2には、Z型フェライト、Y型フェライトまたはW型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末100重量部に対し、炭酸バリウム粒子粉末又は炭酸ストロンチウム粒子粉末を0.3〜7重量部と二酸化ケイ素粒子粉末0.1〜5重量部、酸化ビスマス粒子粉末1〜20重量部および酸化銅粒子粉末0.3〜7重量部とを配合した軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末が開示されている(請求項1)。
【0012】
この特許文献2では、実施例によれば、炭酸バリウムや二酸化ケイ素、酸化ビスマスなどの添加物を、仮焼後に添加するようにしており、仮焼前にはこれらの添加物は添加されておらず、1250℃と高い温度で仮焼を行うようにしているため、上述の特許文献1の場合と同様の問題点がある。すなわち、高温での仮焼中に粒成長を起こして粒径が大きくなるとともに、高温で仮焼されることから仮焼粉が硬くなり、粉砕が困難で、その後の焼成工程で粒成長して結晶粒径が大きくなり、得られる磁性フェライト材料において、高いQが得られないという問題点がある。
【0013】
また、仮焼前に低温焼成を促進するための添加物を添加していないため、仮焼後に添加すべき添加物の量が多くなり、焼成工程を経て得られる磁性体材料の透磁率μ’が低くなるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−252109号公報
【特許文献2】特開2003−243218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するものであり、低い温度で合成することが可能で、透磁率が高く、かつ、高いQを備えた六方晶フェライト材料を効率よく製造することが可能な六方晶フェライト材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の磁性体材料は、
Z型フェライトを主相とする六方晶フェライト材料の製造方法であって、
仮焼後にフェライトを構成する主成分原料100重量部に対し、SiO2および/またはBi23を0.1〜1.0重量部配合して配合原料を調製する原料調製工程と、
前記配合原料を、所定の条件で仮焼して仮焼物を得る仮焼工程と、
前記仮焼物を、比表面積が10〜25m2/gになるように粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、
前記粉砕物を所定の形状に成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成して六方晶Z型フェライトを主相とする焼結体を得る焼成工程と
を備えることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の六方晶フェライト材料の製造方法においては、前記仮焼工程で仮焼することにより得られる前記仮焼物にSiO2を0.1〜1.0重量部の範囲で配合した後、前記粉砕工程に供することが好ましい。
【0018】
また、前記仮焼工程で仮焼することにより得られる前記仮焼物における六方晶Z型フェライト結晶相の生成率が50%以上であることが好ましい。
【0019】
また、前記焼成工程で焼成することにより得られる前記焼結体における六方晶フェライトZ型結晶相の生成率が90%以上であることが好ましい。
【0020】
前記仮焼工程における仮焼温度は1050〜1150℃とすることが好ましい。
【0021】
また、前記焼成工程における焼成温度は1050〜1150℃とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の六方晶フェライト材料の製造方法は、Z型フェライトを主相とする六方晶フェライト材料を製造するにあたって、仮焼後にフェライトを構成する主成分原料100重量部に対し、SiO2および/またはBi23を0.1〜1.0重量部配合して調製した配合原料を、所定の条件で仮焼し、得られた仮焼物を、比表面積が10〜25m2/gになるように粉砕した粉砕物を所定の形状に成形した成形体を焼成して六方晶Z型フェライトを主相とする焼結体を得るようにしているので、透磁率が高く、かつ、高いQを備えた六方晶フェライト材料を効率よく製造することができる。
【0023】
すなわち、調合時に所定量のBi23および/またはSiO2の焼結助剤を添加することにより、例えば、1000〜1200℃(好ましくは1050〜1150℃)の低温で仮焼した場合にも、仮焼段階での六方晶Z型フェライト結晶相の生成率を高くする(例えば、50%以上とする)ことができる。
また、仮焼温度を低くできることから、仮焼物が硬くなり過ぎることがなく、比表面積が10〜25m2/gとなるように微粉砕することができるため、焼成時の粒成長を抑制して、結晶粒径を小さくする(例えば、焼結体の平均結晶粒径を0.05〜3.0μmとする)ことが可能になる。
また、結晶が微粒化することから、Q値を高くすることが可能になる。
【0024】
また、本発明の六方晶フェライト材料の製造方法においては、仮焼することにより得られる仮焼物に、SiO2を0.1〜1.0重量部の範囲で配合した後、粉砕工程に供することにより、仮焼物にSiO2を十分に分散させることが可能になり、仮焼物が微粉砕されることと相俟って、焼成時の粒成長をより抑制することが可能になる。
【0025】
また、仮焼することにより得られる仮焼物における六方晶Z型フェライト結晶相の生成率を50%以上とすることにより、その後の焼成工程でさらにZ型結晶相が生成することから、最終的に得られる六方晶フェライト材料中の六方晶Z型フェライト結晶相の割合を十分に高めて、透磁率が高く、かつ、高いQを備えた六方晶フェライト材料を効率よく製造することができる。なお、本発明によれば、特に高温で仮焼することを必要とせずに、六方晶Z型フェライト結晶相の生成率が50%以上の仮焼物を得ることができる。
【0026】
また、焼成工程で焼成することにより得られる焼結体における六方晶Z型フェライト結晶相の生成率が90%以上となるようにした場合、透磁率が高く、かつ、高いQを備えた六方晶フェライト材料を効率よく製造することができる。なお、本発明によれば、特に高温で焼成することを必要とせずに、六方晶Z型フェライト結晶相の生成率が90%以上の焼結体を得ることができる。
【0027】
本発明においては、1050〜1150℃の比較的低い温度で仮焼することが可能で、これにより、粒成長を抑制しつつ、六方晶Z型フェライト結晶相の生成率が高く、粉砕が容易な仮焼物を確実に得ることが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0028】
また、本発明においては、1050〜1150℃の比較的低い温度で焼成することにより、仮焼後の粉砕粉末を、粒成長を抑制しつつ、六方晶Z型フェライト結晶相をさらによく生成させることが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0030】
[試料の作製]
(1)比表面積が2〜20m2/gであるBaCO3,Co34,Fe23,Bi23,SiO2の原料粉末を準備し、主成分がBa3Co2Fe2441となるように秤量して主成分原料粉末とした。
なお、本発明の六方晶フェライト材料の主成分組成は、通常、組成式Ba3+XCo2+YFe2441-δ(δは酸素欠陥を表す)で表したとき、0≦X≦0.8,−0.3≦Y≦0.3の範囲とするのが好ましい。
Xが0を下回る場合、透磁率μ’が小さく、Qも低くなることから0以上とすることが好ましい。また、Xが0.8を超える場合も、透磁率μ’が小さく、Qも低くなることから0.8以下とすることが好ましい。Yが−0.3を下回る場合、Qが低くなることから−0.3以上とすることが好ましい。また、Yが0.3を超える場合は、透磁率μ’が小さく、Qも低くなることから0.3以下とするのことが好ましい。
【0031】
(2)それから、上記主成分原料粉末中の主成分(Ba3Co2Fe2441で表される物質)100重量部に対して、Bi23,SiO2を表1の比率になるように添加することにより配合原料を得た。それから、この配合原料を純水およびPSZ(部分安定化ジルコニア)ボールと共にボールミルに入れ、湿式で8時間混合粉砕した。そして、これを蒸発乾燥させた後、表1に示す温度で2〜5時間仮焼することにより、仮焼物(仮焼粉)を得た。
【0032】
(3)次に、得られた仮焼物(仮焼粉)を、純水、分散剤およびPSZボールと共にボールミルに入れ、湿式で表1に示す時間(8〜80時間)混合粉砕した。
なお、表1の試料番号22〜25については、仮焼物(仮焼粉)に、さらにSiO2を添加し、同じように純水、分散剤およびPSZボールと共にボールミルに入れ、湿式で表1に示す時間混合粉砕した。
なお、試料番号22では、仮焼後に仮焼物(仮焼粉)100重量部に対して、SiO2を0.1重量部、
試料番号23,25では、仮焼物(仮焼粉)100重量部に対して、SiO2を0.5重量部、
試料番号24では、仮焼物(仮焼粉)100重量部に対して、SiO2を1.0重量部添加した。
それから、混合粉砕された配合物(スラリー)に、さらにバインダーとしてPVA(ポリビニルアルコール)を所定量添加して、さらに約30分間混合した後、スプレー造粒し、造粒体を得た。
【0033】
(4)次に、得られた造粒体をプレス成型して、1150℃で1〜10時間焼成することにより、焼結体を得た。なお、表1の試料番号1については1300℃で焼成した。
【0034】
(5)得られた焼結体をJIS規格C−2560−2の附属書に示されているように、外径が10mm、内径が6mm、厚みが2mmのリング形状に加工して、特性評価用の試料とした。
【0035】
[特性の評価]
(イ)上記(2)の工程で得た仮焼物(仮焼粉)を少量分取し、乳鉢で粉砕して、X線回折を行った。そして、測定データをリートベルト解析することにより、仮焼物(仮焼粉)の結晶構造の成分比を算出し、六方晶Z型フェライト結晶相の生成比率(Z型生成比率)を求めた。その結果を表1に併せて示す。
【0036】
(ロ)また、上記(3)の工程で、仮焼物を粉砕した後の粉末(仮焼後粉砕粉末)のSSA(比表面積)を次のようにして測定した。
すなわち、バインダー混合前の、混合粉砕された配合物(スラリー)を抜き取って乾燥させ、分散剤等を400℃、2hの条件で脱脂した。そして、このようにして得た粉末について、マウンテック社のBET計にてSSA(比表面積)を測定した。その結果を表1に併せて示す。
【0037】
(ハ)また、上記(4)の工程で得た焼結体についても、X線回折を行った。そして、測定データをリートベルト解析することにより、焼結体の結晶構造の成分比を算出し、六方晶Z型フェライト結晶相の生成比率(Z型生成比率)を求めた。その結果を表1に併せて示す。
【0038】
(ニ)また、上記(4)の工程で得た焼結体を研磨し、1000℃で熱エッチングした後、表面をSEM観察した。そして、JIS規格R1670の長径を結晶粒径として求めた。その結果を表1に併せて示す。
【0039】
(ホ)また、得られた焼結体について、ICP−AES法(誘導結合プラズマ発光分光分析法)により、ZrO2量を測定した。その結果を表1に併せて示す。なお、このZrO2は、粉砕メディアから混入したものである。
【0040】
(へ)さらに、上記(5)の工程で得たリング状の試料について、アジレント・テクノロジー社製のインピーダンスアナライザ(型番E4991A)を用いて透磁率μ’(実部)、μ”(虚部)を測定した。また、各試料の透磁率μ’(実部)、μ”(虚部)の値からQ値(=μ’/μ”)を求めた。
周波数250MHzのときの透磁率μ’と、Q(=μ’/μ”)を表1に併せて示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の試料番号1の試料は、調合時にBi23やSiO2を添加していない組成のものであり、合成反応を十分に行わせるためには高温で仮焼することが必要な試料であることから、1300℃の高温で仮焼したものである。しかしながら、試料番号1の試料はそのような高温で仮焼したにもかかわらず、仮焼粉末のZ型結晶相の生成比率(Z型生成比率)は50%と低いことが確認された。
【0043】
また、高温で仮焼していることから、仮焼時に粒成長するとともに、仮焼粉が硬くなってしまうことから、粉砕が困難になり、80時間粉砕しても比表面積が5m2/g程度と、十分に粉砕できないことが確認された。その結果、その後の焼成工程で粒成長してしまうため、Q値が低下することが確認された。
【0044】
また、試料番号2,3,10の試料は、調合時にBi2O3またはSiO2を添加していない、もしくは添加量が本発明において規定している割合よりも少ない組成のものである。この試料番号2,3,10の試料の場合、1150℃と低い温度で仮焼しているので、粉砕しやすい仮焼物を得ることはできるものの、仮焼段階で、六方晶Z型フェライト結晶相が生成しなかったり、その生成率が低かったりすることが確認された。また、焼成後の段階においても六方晶Z型フェライト結晶相の生成率が低く、透磁率μ’が低くなることが確認された。
【0045】
また、試料No.9,14は、調合時に添加するBi23やSiO2の添加量が1.0重量部を超える、本発明の範囲を外れた試料であり、Bi23やSiO2自体が異相となり、粒成長してしまうため、Q値が低下することが確認された。
【0046】
また、試料番号15の試料は、調合時に添加するBi23の量は本発明の範囲内であるが、仮焼物を粉砕した粉末の比表面積5m2/gと、粉砕が十分でない、本発明の範囲外の試料であり、焼成時に粒成長を起こしてQ値が低くなり、好ましくないことが確認された。
【0047】
また、試料番号19の試料は、調合時に添加するBi23の量が本発明の範囲内にあるが、仮焼物の粉砕時間を長くしたことから、仮焼物を粉砕した粉末の比表面積が30m2/gと大きくなっているものの、粉砕時間が長いため、粉砕メディアに由来するZrO2の混入量が多くなり、透磁率μ’が低くなることが確認された。また、粉砕時間が長いため、スラリーの粘度が上がりすぎて成形が困難になるため、所望の成形体を形成することが事実上不可能になるという問題点がある。なお、粉砕メディアであるPSZボールに由来するコンタミネーションとして混入するZrO2は、粉砕時間が長くなればそれだけ多く混入することになる。ZrO2は、通常は、粉砕時間の関係により、粉砕後の粉体中に0.1〜0.5重量%含まれる。
【0048】
また、試料番号20,21の試料は、主成分原料の調合時に、Bi23とSiO2量の両方を、表1の割合で添加した試料である。この試料番号20,21の試料のように、Bi23とSiO2量の両方を添加した場合にも、いずれか一方を主成分原料100重量部に対し0.1〜1.0重量部の範囲内で添加した場合と同様に、良好な結果が得られることが確認された。
【0049】
また、試料番号22は、仮焼後にSiO2を仮焼物100重量部に対して0.1重量部の割合で、試料番号23,25は0.5重量部の割合で、試料番号24は1.0重量部の割合で添加した後、粉砕を行った試料であり、仮焼後にSiO2を添加したことを除いて、試料番号6および試料番号12の試料と同様にして作製された試料である。
この試料番号22,23,24,25の試料のように、仮焼後にSiO2を所定の割合で添加した後に粉砕することにより、焼成時の粒成長をより抑制して、高いQを得ることができる。
【0050】
本発明において、仮焼温度は1050〜1150℃の範囲が好ましい。1050〜1150℃の低温で仮焼することにより、仮焼時の粒成長を抑制するとともに、仮焼物が硬くなることを抑制することが可能になり、仮焼物の微粉砕が可能になる。
【0051】
また、仮焼物のZ型結晶相の生成率は50%以上であることが好ましい。焼成段階で、これを核にしてよりZ型結晶相の生成率が高まるので、透磁率μ’を高くすることができる。
【0052】
また、仮焼物の粉砕は、粉砕後の比表面積で10〜25m2/gの範囲となるようにすることが好ましい。10m2/gを下回ると、焼成時に粒成長を起こし、Q値が低くなる。また、25m2/gを超えると、メディアからのZrO2の混入量が0.5重量%を超え、透磁率μ’が低くなる。
【0053】
また、仮焼物にSiO2を0.1〜1.0重量部の範囲で配合することが好ましい。仮焼物の微粉砕と相俟って、焼成時の粒成長をより抑制できる。
【0054】
また、焼結体の平均粒径は0.05〜3μmの範囲が好ましい。焼結体の平均粒径をこの範囲とすることにより、高いQ値が得られる。
【0055】
また、焼成温度も1050〜1150℃の範囲が好ましい。1050〜1150℃の低温で焼成することにより、粒成長を抑制して、高いQを実現することができる。
【0056】
なお、本発明の方法により製造される六方晶フェライト材料料は、透磁率μ’が大きく、高いQを有することから、例えば、インダクタのコア部材として用いることにより、特性の良好なインダクタを得ることが可能になり、特に有意義である。
【0057】
本発明は、さらにその他の点においても、上記実施例に限定されるものではなく、六方晶フェライト材料の製造に用いられる原料粉末の種類、製造工程における仮焼工程やその後の焼成工程における具体的な条件などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z型フェライトを主相とする六方晶フェライト材料の製造方法であって、
仮焼後にフェライトを構成する主成分原料100重量部に対し、SiO2および/またはBi23を0.1〜1.0重量部を配合して配合原料を調製する原料調製工程と、
前記配合原料を、所定の条件で仮焼して仮焼物を得る仮焼工程と、
前記仮焼物を、比表面積が10〜25m2/gになるように粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、
前記粉砕物を所定の形状に成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成して六方晶Z型フェライトを主相とする焼結体を得る焼成工程と
を備えることを特徴とする六方晶フェライト材料の製造方法。
【請求項2】
前記仮焼工程で仮焼することにより得られる前記仮焼物にSiO2を0.1〜1.0重量部の範囲で配合した後、前記粉砕工程に供することを特徴とする請求項1記載の六方晶フェライト材料の製造方法。
【請求項3】
前記仮焼工程で仮焼することにより得られる前記仮焼物における六方晶Z型フェライト結晶相の生成率が50%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の六方晶フェライト材料の製造方法。
【請求項4】
前記焼成工程で焼成することにより得られる前記焼結体における六方晶Z型フェライト結晶相の生成率が90%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の六方晶フェライト材料の製造方法。
【請求項5】
前記仮焼工程における仮焼温度を1050〜1150℃とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の六方晶フェライト材料の製造方法。
【請求項6】
前記焼成工程における焼成温度を1050〜1150℃とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の六方晶フェライト材料の製造方法。

【公開番号】特開2012−82083(P2012−82083A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227712(P2010−227712)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】