共振デバイス、通信モジュール、通信装置、共振デバイスの製造方法
【課題】圧電薄膜共振子を積層することによって共振デバイスを小型化する際に、積層された複数の圧電薄膜共振子間の振動の干渉を完全に排除する。
【解決手段】圧電薄膜共振子を積層構造とすることで、圧電薄膜共振子を形成する基板における占有面積を縮小することができ、共振デバイスを小型化することができる。また、第1の圧電薄膜共振子3及び第2の圧電薄膜共振子2のメンブレン領域は物理的に分離しているため、一方の共振子における振動が他方の共振子に伝わることがなく、両共振子間の振動の干渉を無くすことができる。
【解決手段】圧電薄膜共振子を積層構造とすることで、圧電薄膜共振子を形成する基板における占有面積を縮小することができ、共振デバイスを小型化することができる。また、第1の圧電薄膜共振子3及び第2の圧電薄膜共振子2のメンブレン領域は物理的に分離しているため、一方の共振子における振動が他方の共振子に伝わることがなく、両共振子間の振動の干渉を無くすことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電薄膜による電気信号とバルク弾性波の変換作用を利用した圧電薄膜共振子を備えた共振デバイスに関する。また、そのような共振デバイスを備えた通信モジュール、通信装置に関する。また、共振デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線機器の急速な普及により、小型で軽量な共振子およびこれを組み合わせて構成したフィルタの需要が増大している。これまでは主として誘電体フィルタと表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタが使用されてきたが、最近では、特に高周波領域で低損失、高耐電力性、ESD特性が良好で、かつモノリシック化が可能な素子である圧電薄膜共振子を用いて構成されたフィルタが注目されつつある。
【0003】
このような圧電薄膜共振子の一つとして、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)タイプの共振子が知られている。これは、基板上に、主要構成要素として下部電極と圧電膜と上部電極からなる積層構造体を有し、下部電極と上部電極が対向する部分(メンブレン領域)の下部電極下には空隙(バイアホールあるいはキャビティ)が形成されている。
【0004】
上部電極と下部電極の間に高周波の電気信号を印加すると、上部電極と下部電極に挟まれた圧電膜内部に逆圧電効果によって弾性波が励振される。この弾性波による歪は、圧電効果によって電気信号に変換される。この弾性波は、上部電極と下部電極がそれぞれ空気に接している面で全反射されるため、厚み方向の主変位を持つ厚み縦振動波となる。この構造では空隙上に形成された上部電極/圧電膜/下部電極を主要構成要素とする薄膜構造部分の合計膜厚Hが、弾性波の1/2波長の整数倍(n倍)になる周波数において共振が起こる。材料によって決まる弾性波の伝搬速度をVとすると、共振周波数Fは、
F=nV/2H
となる。この共振現象を利用して膜厚Hによって共振周波数を制御することにより、所望の周波数特性を有する共振子が作製される。また、複数の共振子を接続することによりフィルタが作製される。
【0005】
電極としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、チタン(Ti)等、あるいはこれらを組み合わせた積層材料を用いることができる。
【0006】
基板としては、シリコン、ガラス、ガリウムヒ素(GaAs)等を用いることができる。空隙は、素子基板として用いられているSi基板自身の裏面からのエッチング(ウェットエッチングやドライエッチィング)、あるいは、Si基板の表面に設けた犠牲層のウェットエッチング等によって形成されている。これ以降、基板の裏面から基板表面まで貫通している穴を「バイアホール」、基板の表面近傍で下部電極直下に存在する空隙を「キャビティ」と呼ぶことにする。従来の圧電薄膜共振子は、バイアホールタイプとキャビティタイプとに分けられる。
【0007】
図25は、例えば非特許文献1に開示されているバイアホールタイプの一例の構成を示す断面図である。この構造では、熱酸化膜(SiO2)を有する(100)Si基板上に、下部電極としてAu−Cr、圧電膜として酸化亜鉛(ZnO)、上部電極としてアルミニウム(Al)が形成されている。バイアホール106は、Si基板101の裏面側からKOH水溶液、あるいは、EDP水溶液(エチレンジアミン+ピロカテコール+水)を用いた異方性エッチングを施して形成したものである。
【0008】
一方、キャビティタイプは、犠牲層上に主構成要素として上部電極/圧電膜/下部電極を形成し、最後に犠牲層をエッチングして除去することによりキャビティを形成したものである。図26は、特許文献1に開示されたキャビティタイプの圧電薄膜共振子の断面図を示す。この例では、犠牲層として島状のZnOによる犠牲層パターンを作り、その上に、誘電体膜205/上部電極202/圧電膜204/下部電極/誘電体膜203の構造を作製し、犠牲層を酸で除去してキャビティ206(エアーブリッジ構造)を形成している。
【0009】
また、図27は、特許文献2に開示されたキャビティタイプの圧電薄膜共振子の断面図を示す。この構成は、上部電極302/圧電膜304/下部電極303が重なりあう領域の下方に、基板表面に凹部306が設けられた圧電薄膜共振子である。図27に示す圧電薄膜共振子は、予め形成した凹部306に犠牲層を堆積して基板表面を平坦化した後、上部電極302/圧電膜304/下部電極303を形成して、最後に犠牲層をエッチングして除去することによりキャビティが形成される。
【0010】
圧電膜としては、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO3)等を用いることができるが、実用的には、音速、温度特性、Q値および成膜技術の容易性の観点からAlNが用いられていることが多い。特に、c軸(下部電極表面に対して垂直方向)配向した結晶性の高いAlN膜の形成が共振特性を決める重要な要因の一つであり、結合係数やQ値に直接影響を及ぼしている。一方で、c軸配向した結晶性の高いAlN膜の形成には、その成膜時に高いエネルギーを印加する必要があり、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)では1000℃以上、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)でもプラズマの電力に加えて400℃以上の基板加熱を必要とし、スパッタ技術を用いても絶縁膜のスパッタによる基板温度上昇が知られている。このため、一般的にAlN膜は強い膜応力を有することとなる。
【0011】
特許文献3では、上下電極およびAlNの応力を制御し、空隙上の上下電極およびAlNが重なっている領域(以下、メンブレン領域と称する)を膨らませ、数百nm程度の犠牲層でも数μm程度のキャビティを形成できることが開示されている。
【0012】
図28Aは、特許文献3に開示された圧電薄膜共振子の構成を説明するための平面図で、図28Bは図28AのA−Aに沿う断面図である。ここでは、基板41には、平坦主面を持つSi基板を使用している。下部電極43は、Ru膜(260nm)で構成されている。圧電膜44は、AlN膜(1200nm)で構成されている、上部電極45は、Ru膜(260nm)で構成されている。
【0013】
圧電膜44を挟み上部電極45と下部電極43が対向するメンブレン領域の下部電極43の下側と基板41の表面の間には、ドーム形状の膨らみを有する空隙46が形成されている。空隙46の形状は、図28Aに示すように楕円で、上部電極45と下部電極43とが重なりあった部分の形状を概ね楕円としている。この空隙46は、下部電極43の下に予めパターンニングされた犠牲層(不図示)を除去することにより形成することができる。また、基板41には、犠牲層をエッチングして空隙を形成するために用いる犠牲層エッチング用のエッチング液導入孔47aが設けられている。
【0014】
図29A〜図29Cは、図28A及び図28Bに示した圧電薄膜共振子の製造プロセスを説明するための断面図であり、これらの図は何れも、図28AにおけるA−A部に沿った断面図である。
【0015】
先ず、図29Aに示すように、Siで形成された基板41(あるいは石英基板)上に、犠牲層膜50となるMgO(20〜100nm程度)をスパッタリング法や真空蒸着法により成膜する。次に、フォトリソグラフィー技術とエッチングとにより、犠牲層50を所望の形状にパターニングする。
【0016】
次に、図29Bに示すように、下部電極43、圧電膜44、および上部電極45を順次形成する。下部電極43は、0.6〜1.2Paの圧力下のArガス雰囲気中でスパッタリング成膜され、さらにフォトリソグラフィー技術とエッチングにより下部電極43を所望の形状にパターニングする。これに続いて、圧電膜44であるAlNを、約0.3Paの圧力のAr/N2混合ガス雰囲気中でAlターゲットを用いてスパッタリング成膜する。そして、上部電極45のRu膜を、0.6〜1.2Paの圧力のArガス雰囲気中でスパッタリング成膜する。このようにして成膜された圧電薄膜共振子にフォトリソグラフィー技術とエッチング(ウェットエッチングまたはドライエッチング)を施し、上部電極45と圧電膜44とを所望の形状にパターニングする。ここで、下部電極43、圧電膜44、上部電極45からなる圧電薄膜共振子の応力が圧縮応力となるように設定している。また、メンブレン領域に接する上部電極45の引出部分の中央部は、この次の工程で形成する空隙40の上に形成され、上部電極45の引出部分の両端部は空隙40の外側になるように形成している。
【0017】
次に、図29Cに示すように、下部電極43に対して、レジストパターニングによるフォトリソグラフィー技術によりエッチング液導入孔49(図28A参照)を形成する。このエッチング液導入孔49からエッチング液を導入して、犠牲層50をエッチング除去することで空隙40を形成する。ここで、下部電極43、圧電膜44および上部電極45からなる圧電薄膜共振子の応力が圧縮応力となるように設定されおり、この応力条件を満足することにより、犠牲層50のエッチング終了時点で、圧電薄膜共振子が膨れ上がり下部電極43と基板41との間にドーム形状の空隙40が形成される。犠牲層50のエッチング液の導入孔に関しては、特許文献4に開示されているように、メンブレン領域の中央部に設けても良い。
【0018】
以上の特徴を有する圧電薄膜共振子であるが、搭載機器の小型化に伴って、さらなる小型化が要求されている。
【0019】
圧電薄膜共振子も、弾性表面波デバイスと同様に、一般的には二次元的な配列でフィルタを構成している。そのため、フィルタを構成する基板サイズは基板上の圧電薄膜共振子の占める面積および配線で決まってしまう。そこで、基板サイズを小型化するためには、共振子を積層し、基板平面上における圧電薄膜共振子の占有面積を減らす方法が考えられる。このような積層型の共振子として、特許文献5では、減結合スタック型バルク音響共振器の帯域フィルタが開示されている。特許文献5の図5Bに示すように、下側の圧電薄膜共振子110の上に音響減結合材料130を介して上側の圧電薄膜共振子120を積層している。
【0020】
上下の共振子の間に音響減結合材料を導入することで、特許文献5に従来技術として図3に示された単純に積み重ねた圧電薄膜共振子(SBAR:stacked thin-film bulk acoustic resonator)では、上下の圧電薄膜共振子が過度に結合されてしまうという問題を改善する構造である。
【特許文献1】特公平6−40611号公報
【特許文献2】特開2000−69594号公報
【特許文献3】特開2005−347898号公報
【特許文献4】特開2007−208728号公報
【特許文献5】特表2007−510383号公報
【非特許文献1】Electron. Lett., 17(1981), pp.507〜509"
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、特許文献5に開示された構成では、上下の共振子の振動領域は物理的に接触しているため、両者の影響を低減することは難しいという課題があった。すなわち、一方の共振子の振動が他方の共振子に伝わってしまい、共振特性に悪影響が出てしまう。
【0022】
本発明の目的は、圧電薄膜共振子を積層することによって共振デバイスを小型化する際に、積層された複数の圧電薄膜共振子間の振動の干渉を低減することができる共振デバイス、通信モジュール、通信装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の共振デバイスは、基板と、前記基板上に形成された下部電極と、前記基板上および前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極とを備えた第1の圧電薄膜共振子とを備えた共振デバイスであって、前記第1の圧電薄膜共振子の上部に、下部電極と圧電膜と上部電極とを積層して備えた第2の圧電薄膜共振子を備え、前記第1の圧電薄膜共振子における前記圧電膜を挟み前記上部電極と前記下部電極とが対向するメンブレン領域と、前記第2の圧電薄膜共振子におけるメンブレン領域とは、空隙を介して積層構造となっているものである。
【0024】
本発明の通信モジュールは、上記共振デバイスを備えたものである。
【0025】
本発明の通信装置は、上記通信モジュールを備えたものである。
【0026】
本発明の共振デバイスの製造方法は、基板上におけるメンブレン領域に第1の犠牲層を形成し、前記基板及び前記第1の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とからなる第1の圧電薄膜共振子を形成し、前記第1の圧電薄膜共振子上におけるメンブレン領域に第2の犠牲層を形成し、前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の犠牲層上に第2の圧電薄膜共振子を形成し、前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを同時に除去して空隙を形成するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、圧電薄膜共振子を積層構造とすることで、基板における圧電薄膜共振子の占有面積を縮小し、共振デバイスの小型化ができる。さらに、積層された圧電薄膜共振子の少なくともメンブレン領域を物理的に分離することで、複数の圧電薄膜共振子間において振動の干渉が生じることを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の共振デバイスは、基板と、前記基板上に形成された下部電極と、前記基板上および前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極とを備えた第1の圧電薄膜共振子とを備えた共振デバイスであって、前記第1の圧電薄膜共振子の上部に、下部電極と圧電膜と上部電極とを積層して備えた第2の圧電薄膜共振子を備え、前記第1の圧電薄膜共振子における前記圧電膜を挟み前記上部電極と前記下部電極とが対向するメンブレン領域と、前記第2の圧電薄膜共振子におけるメンブレン領域とは、空隙を介して積層構造となっているものである。
【0029】
本発明の共振デバイスは、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。すなわち、本発明の共振デバイスにおいて、前記第2の圧電薄膜共振子は、複数の圧電薄膜共振子で構成されている構成とすることができる。
【0030】
また、前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極と前記第2の圧電薄膜共振子の下部電極との間において、メンブレン領域以外の領域の一部に絶縁膜が配されている構成とすることができる。
【0031】
また、前記第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域が、前記第1の圧電薄膜共振子のメンブレン領域よりも大きく形成した構成とすることができる。
【0032】
また、前記メンブレン領域は、外形が楕円状である構成とすることができる。
【0033】
本発明の共振デバイスの製造方法は、基板上におけるメンブレン領域に第1の犠牲層を形成し、前記基板及び前記第1の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第1の圧電薄膜共振子を形成し、前記第1の圧電薄膜共振子上におけるメンブレン領域に第2の犠牲層を形成し、前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第2の圧電薄膜共振子を形成し、前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを除去して空隙を形成するものである。
【0034】
(実施の形態)
〔1.共振デバイスの構成〕
(実施例1)
図1は、本実施の形態の共振デバイスの構成を示す上面図である。図2は、図1におけるA−A部の断面図である。
【0035】
図1に示すように、基板1は、平坦主面を持つSi基板で構成されている。基板1上には、上部電極3a、下部電極3b、圧電膜3cが積層して構成された第1の圧電薄膜共振子3が配されている。また、第1の圧電薄膜共振子3の上部には、絶縁膜4を挟んで、上部電極2a、下部電極2b、圧電膜2cが積層して構成された第2の圧電薄膜共振子2が配されている。下部電極2b及び3bは、Ru膜で構成されている。圧電膜2c及び3cは、AlN膜で構成されている、上部電極2a及び3aは、Ru膜で構成されている。
【0036】
圧電膜2cを挟み上部電極2aと下部電極2bとが対向するメンブレン領域の下部電極2bの下側と、第1の圧電薄膜共振子3の上部電極3aの表面との間には、ドーム形状の膨らみを有する空隙5aが形成されている。また、圧電膜3cを挟み上部電極3aと下部電極3bとが対向するメンブレン領域の下部電極3bの下側と、基板1の表面との間には、ドーム形状の膨らみを有する空隙5bが形成されている。空隙5a及び5bの形状は、上側から見た時に図1に示すように楕円形状であり、上部電極2a及び3aと下部電極2b及び3bとが重なりあった領域の形状を概ね楕円としている。また、第2の圧電薄膜共振子2と第1の圧電薄膜共振子3のメンブレン領域は、空隙5aによってそれぞれ物理的に分離されている。この空隙5a及び5bは、共振デバイスを作製する際に下部電極2b及び3bの下に予め犠牲層(不図示)をパターンニングし、作製後に犠牲層を除去することにより、形成することができる。
【0037】
また、図1に示すように、基板1には、犠牲層をエッチングして空隙5a及び5bを形成するために用いる犠牲層エッチング用のエッチング液導入孔6a及び6bが形成されている。
【0038】
次に、本実施の形態の共振デバイスの製造方法について説明する。
【0039】
図3A〜図8は、本実施の形態の共振デバイスの製造プロセスを説明するための図である。図3A、図4A、図5A、図6A、図7Aは上面図である。図3B、図4B、図5B、図6B、図7Bは上面図におけるA−A部の断面図である。
【0040】
先ず、図3A及び図3Bに示すように、シリコン(Si)からなる基板1(あるいは石英基板)上に、犠牲層膜8aとなるMgO(20〜100nm程度)をスパッタリング法や真空蒸着法により成膜する。次に、フォトリソグラフィー技術とエッチングとにより、犠牲層8aを所望の形状にパターニングする。この時、空隙形成用の犠牲層エッチング液導入孔のパターン7a及び7bも形成する。
【0041】
次に、図4A及び図4Bに示すように、基板1上に下部電極3b、圧電膜3c、および上部電極3aを順次形成する。下部電極3bは、0.6〜1.2Paの圧力下のArガス雰囲気中でスパッタリング成膜され、さらにフォトリソグラフィー技術とエッチングにより下部電極3bを所望の形状にパターニングする。これに続いて、圧電膜3cであるAlNを、約0.3Paの圧力のAr/N2混合ガス雰囲気中でAlターゲットを用いてスパッタリング成膜する。そして、上部電極3aのRu膜を、0.6〜1.2Paの圧力のArガス雰囲気中でスパッタリング成膜する。このようにして成膜された圧電薄膜共振子にフォトリソグラフィー技術とエッチング(ウェットエッチングまたはドライエッチング)を施し、上部電極3aと圧電膜3cとを所望の形状にパターニングする。ここで、下部電極3b、圧電膜3c、上部電極3aからなる第1の圧電薄膜共振子3の応力が圧縮応力となるように設定している。
【0042】
以上により、第1の圧電薄膜共振子3を形成することができる。
【0043】
次に、図5A及び図5Bに示すように、犠牲層8aおよび導入孔のパターン7a,7bを除去しないままで、絶縁膜4(SiO2)をプラズマCVDあるいはスパッタリング法などの方法で成膜後、ドライエッチングでパターニングを行う。
【0044】
次に、図6A及び図6Bに示すように、上部電極3a及び絶縁膜4上に犠牲層8bを形成する。形成方法は、犠牲層8aの形成方法と同様である。
【0045】
次に、図7A及び図7Bに示すように、絶縁膜4及び犠牲層8b上に下部電極2b、圧電膜2c、上部電極2aを形成する。形成方法は、上部電極3a、下部電極3b、圧電膜3cの形成方法と同様である。
【0046】
次に、図8に示すように、空隙形成用に形成した導入孔6a及び6b(図1参照)から、犠牲層を除去するためのエッチング液を導入して、犠牲層8a及び8bを除去し、空隙5a及び5bを形成する。犠牲層8a及び8bの除去の手順としては、まず犠牲層8bを除去し、第2の圧電薄膜共振子2側のメンブレン領域を膨らませ、その後、犠牲層8aを除去して第1の圧電薄膜共振子3側のメンブレン領域を膨らませるようにする。この順番で犠牲層を除去することにより、第2の圧電薄膜共振子2側のメンブレン領域と第1の圧電薄膜共振子3側のメンブレン領域とが接触しにくくなる。
【0047】
また、第2の圧電薄膜共振子2側のメンブレン領域と第1の圧電薄膜共振子3側のメンブレン領域の大きさを調整することにより、第2の圧電薄膜共振子2側のメンブレン領域と第1の圧電薄膜共振子3側のメンブレン領域とが膨らんだ後に、メンブレン領域同士が互いに接触しないようにすることができる。具体的には、メンブレン領域に相当する上部電極、下部電極、圧電膜、および、犠牲層の面積を第2の圧電薄膜共振子2と第1の圧電薄膜共振子3とで調整する。一般にメンブレン領域が大きいほど膨らみが大きくなるので、犠牲層8bを犠牲層8aよりも広くする方が望ましい。
【0048】
ここで、メンブレン領域およびそれを構成する上部電極などの「面積」とは、図1などに示すように共振デバイスを上方から見たときの各領域の面積を指している。したがって、図6Aに示すように犠牲層8bを上方から見たときの面積を、図3Aに示すように犠牲層8aを上方から見たときの面積よりも広くすることで、図1Bに示すように空隙5aを空隙5bよりも大きくすることができる。
【0049】
以上のように本実施の形態によれば、第2の圧電薄膜共振子2と第1の圧電薄膜共振子3とを積層構造とすることで、基板1における圧電薄膜共振子の占有面積を縮小することができ、共振デバイス全体を小型化することができる。
【0050】
また、第2の圧電薄膜共振子2と第1の圧電薄膜共振子3との間に空隙5aを備え、メンブレン領域において両者が物理的に結合しない構成としたことにより、第2の圧電薄膜共振子2と第1の圧電薄膜共振子3との間で振動の干渉が生じることを防ぐことができる。
【0051】
(実施例2)
なお、積層した圧電薄膜共振子を並列に接続する場合には、図1に示すように上下の圧電薄膜共振子を絶縁膜4で電気的に絶縁する必要はなくなり、図9A及び図9Bのような構成にすることができる。すなわち、図9Cの回路図に示すように、第1の圧電薄膜共振子13と第2の圧電薄膜共振子12とを並列に接続する場合、図9Bに示すように第2の圧電薄膜共振子12の上部電極12aの一部を、第1の圧電薄膜共振子13の下部電極13bに接続する。また、第2の圧電薄膜共振子12の下部電極12bの一部を、第1の圧電薄膜共振子13の上部電極13aに接続する。この構成の場合も、第2の圧電薄膜共振子12と第1の圧電薄膜共振子13との間には空隙5aが形成され、第1の圧電薄膜共振子13と基板1との間には空隙5bが形成されている。
【0052】
図9A及び図9Bに示す共振デバイスの製造方法は、図10A〜図17に示すようになる。まず、図10A及び図10Bに示すように基板1上に犠牲層8aを形成する。次に、図11A及び図11Bに示すように基板1及び犠牲層8a上に第1の圧電薄膜共振子13を形成する。次に、図12A及び図12Bに示すように第1の圧電薄膜共振子13の上部電極13a上に犠牲層8bを形成する。次に、図13A及び図13Bに示すように第2の圧電薄膜共振子12の下部電極12bを形成する。次に、図14A及び図14Bに示すように圧電膜12cを形成する。次に、図15A及び図15Bに示すように圧電膜12cをパターンニングし、下部電極13bが露出する凹部12dを形成する。次に、図16A及び図16Bに示すように上部電極12aを形成する。次に、図17に示すように、犠牲層8a及び8bを除去することで、空隙5a及び5bを形成する。これにより、第2の圧電薄膜共振子12及び第1の圧電薄膜共振子13が並列接続された共振デバイスを作製することができる。
【0053】
このような構成とすることにより、第2の圧電薄膜共振子12と第1の圧電薄膜共振子13との間に絶縁膜を形成する必要がないため、絶縁膜の形成工程およびパターニング工程を減らせるという利点がある。
【0054】
また、本構成においても、第2の圧電薄膜共振子12及び第1の圧電薄膜共振子13を積層構造としているため、基板上における圧電薄膜共振子の占有面積を縮小することができるので、共振デバイスを小型化することができる。
【0055】
また、第2の圧電薄膜共振子12及び第1の圧電薄膜共振子13のメンブレン領域は物理的に分離しているため、第2の圧電薄膜共振子12と第1の圧電薄膜共振子13との間で振動の干渉が生じることを防ぐことができる。
【0056】
(実施例3)
図18Aに示す構成は、第2の圧電薄膜共振子22と第1の圧電薄膜共振子23とを直列接続した構成である。すなわち、図18Bに示すように第2の圧電薄膜共振子22と第1の圧電薄膜共振子23とを直列接続する場合は、図18Aに示すように第2の圧電薄膜共振子22の下部電極22bと第1の圧電薄膜共振子23の上部電極23aとを電気的に接続する。なお、本実施例の共振デバイスの製造方法は、実施例1に示す製造方法とほとんど同様であるため(絶縁膜4の有無が異なるのみ)、説明は省略する。
【0057】
このような構成とすることにより、第2の圧電薄膜共振子22と第1の圧電薄膜共振子23との間に絶縁膜を形成する必要がないため、絶縁膜の形成工程およびパターニング工程を減らせるという利点がある。
【0058】
また、本構成においても、第2の圧電薄膜共振子22及び第1の圧電薄膜共振子23を積層構造としているため、基板上における圧電薄膜共振子の占有面積を縮小することができるので、共振デバイスを小型化することができる。
【0059】
また、第2の圧電薄膜共振子22及び第1の圧電薄膜共振子23のメンブレン領域は物理的に分離しているため、第2の圧電薄膜共振子22と第1の圧電薄膜共振子23との間で振動の干渉が生じることを防ぐことができる。
【0060】
(実施例4)
図19は、圧電薄膜共振子のメンブレン領域が開口している構造を示す。図19に示す共振デバイスは、図2に示す共振デバイスにおける第2の圧電薄膜共振子2のメンブレン領域上にもエッチング孔5cが形成された構成である。このような構成とすることで、共振デバイスの作製時、犠牲層を除去する工程において、空隙5aに配されている犠牲層が早く除去され、確実に空隙5aに配されている犠牲層を除去することが可能となる。
【0061】
図20は、第2の圧電薄膜共振子2のメンブレン領域にエッチング孔5cが形成され、第1の圧電薄膜共振子3のメンブレン領域にエッチング孔5dが形成された構成である。エッチング孔5c及び5dは、互いに重なる位置に形成されている。また、本実施例のようにエッチング孔5cの内径をエッチング孔5dの内径よりも大きくすることで、空隙5aにおける犠牲層が早く除去されるので好ましい。
【0062】
図21は、第2の圧電薄膜共振子2のメンブレン領域に形成されたエッチング孔5cに対して、第1の圧電薄膜共振子3のメンブレン領域に形成されたエッチング孔5e及び5fの位置を基板1の面方向にずらせて配置した構成である。
【0063】
なお、エッチング孔の開口箇所は複数あっても良く、エッチング条件およびメンブレン領域の膨らみの順番に応じて調整されてもよい。
【0064】
〔2.デュープレクサの構成〕
携帯電話端末、PHS(Personal Handy-phone System)端末、無線LANシステムなどの移動体通信(高周波無線通信)には、デュープレクサが搭載されている。デュープレクサは、通信電波などの送信機能及び受信機能を持ち、送信信号と受信信号の周波数が異なる無線装置において用いられる。
【0065】
図22は、本実施の形態の共振デバイスを備えたデュープレクサの構成を示す。デュープレクサ52は、位相整合回路53、受信フィルタ54、および送信フィルタ55を備えている。位相整合回路53は、送信フィルタ55から出力される送信信号が受信フィルタ54側に流れ込むのを防ぐために、受信フィルタ54のインピーダンスの位相を調整するための素子である。また、位相整合回路53には、アンテナ51が接続されている。受信フィルタ54は、アンテナ51を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、受信フィルタ54には、出力端子56が接続されている。送信フィルタ55は、入力端子57を介して入力される送信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、送信フィルタ55には、入力端子57が接続されている。ここで、受信フィルタ54及び送信フィルタ55には、本実施の形態における共振デバイスが含まれている。
【0066】
以上のように本実施の形態の共振デバイスを受信フィルタ54及び送信フィルタ55に備えることで、デュープレクサを小型化することができる。
【0067】
〔3.通信モジュールの構成〕
図23は、本実施の形態の共振デバイスまたは図22に示すデュープレクサを備えた通信モジュールの一例を示す。図23に示すように、デュープレクサ62は、受信フィルタ62aと送信フィルタ62bとを備えている。また、受信フィルタ62aには、例えばバランス出力に対応した受信端子63a及び63bが接続されている。また、送信フィルタ62bは、パワーアンプ64を介して送信端子65に接続している。ここで、受信フィルタ62a及び送信フィルタ62bには、本実施の形態における共振デバイスまたはデュープレクサが含まれている。
【0068】
受信動作を行う際、受信フィルタ62aは、アンテナ端子61を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、受信端子63a及び63bから外部へ出力する。また、送信動作を行う際、送信フィルタ62bは、送信端子65から入力されてパワーアンプ64で増幅された送信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、アンテナ端子61から外部へ出力する。
【0069】
以上のように本実施の形態の共振デバイスまたはデュープレクサを、通信モジュールの受信フィルタ62a及び送信フィルタ62bに備えることで、通信モジュールを小型化することができる。
【0070】
なお、図23に示す通信モジュールの構成は一例であり、他の形態の通信モジュールに本発明の弾性境界波デバイスを搭載しても、同様の効果が得られる。
【0071】
〔4.通信装置の構成〕
図24は、本実施の形態の共振デバイス、デュープレクサ、または通信モジュールを備えた通信装置の一例として、携帯電話端末のRFブロックを示す。また、図24に示す構成は、GSM(Global System for Mobile Communications)通信方式及びW−CDMA(Wideband Code Divition Multiple Access)通信方式に対応した携帯電話端末の構成を示す。また、本実施の形態におけるGSM通信方式は、850MHz帯、950MHz帯、1.8GHz帯、1.9GHz帯に対応している。また、携帯電話端末は、図24に示す構成以外にマイクロホン、スピーカー、液晶ディスプレイなどを備えているが、本実施の形態における説明では不要であるため図示を省略した。ここで、受信フィルタ73a、77、78、79、80、および送信フィルタ73bには、本実施の形態における共振デバイスが含まれている。
【0072】
まず、アンテナ71を介して入力される受信信号は、その通信方式がW−CDMAかGSMかによってアンテナスイッチ回路72で、動作の対象とするLSIを選択する。入力される受信信号がW−CDMA通信方式に対応している場合は、受信信号をデュープレクサ73に出力するように切り換える。デュープレクサ73に入力される受信信号は、受信フィルタ73aで所定の周波数帯域に制限されて、バランス型の受信信号がLNA74に出力される。LNA74は、入力される受信信号を増幅し、LSI76に出力する。LSI76では、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御する。
【0073】
一方、信号を送信する場合は、LSI76は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ75で増幅されて送信フィルタ73bに入力される。送信フィルタ73bは、入力される送信信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。送信フィルタ73bから出力される送信信号は、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0074】
また、入力される受信信号がGSM通信方式に対応した信号である場合は、アンテナスイッチ回路72は、周波数帯域に応じて受信フィルタ77〜80のうちいずれか一つを選択し、受信信号を出力する。受信フィルタ77〜80のうちいずれか一つで帯域制限された受信信号は、LSI83に入力される。LSI83は、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御する。一方、信号を送信する場合は、LSI83は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ81または82で増幅されて、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0075】
以上のように本実施の形態の共振デバイス、デュープレクサ、または通信モジュールを通信装置に備えることで、通信装置を小型化することができる。
【0076】
なお、図24に示す通信装置の構成は一例である。
【0077】
〔5.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、圧電薄膜共振子を積層構造とすることで、圧電薄膜共振子を形成する基板における占有面積を縮小することができ、共振デバイスを小型化することができる。また、共振デバイスを小型化することにより、それを備えたフィルタ、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置を小型化することができる。
【0078】
また、第1の圧電薄膜共振子及び第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域は物理的に分離しているため、一方の共振子における振動が他方の共振子に伝わることがなく、両共振子間の振動の干渉を無くすことができる。
【0079】
なお、本発明の効果を得るにあたって、基板、電極膜、圧電膜、絶縁膜の各材料は、本実施の形態に限定されず、他の材料を使用してもよい。
【0080】
また、本実施の形態では、第1の圧電薄膜共振子と第2の圧電薄膜共振子の2つの共振子を積層構造とする構成としたが、3つの共振子を積層構造とする構成であっても本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
(付記1)
基板と、
前記基板上に形成された下部電極と、前記基板上および前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極とを備えた第1の圧電薄膜共振子とを備えた共振デバイスであって、
前記第1の圧電薄膜共振子の上部に、下部電極と圧電膜と上部電極とを積層して備えた第2の圧電薄膜共振子を備え、
前記第1の圧電薄膜共振子における前記圧電膜を挟み前記上部電極と前記下部電極とが対向するメンブレン領域と、前記第2の圧電薄膜共振子におけるメンブレン領域とは、空隙を介して積層構造となっている、共振デバイス。
【0082】
(付記2)
前記第2の圧電薄膜共振子は、複数の圧電薄膜共振子で構成されている、付記1記載の共振デバイス。
【0083】
(付記3)
前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極と前記第2の圧電薄膜共振子の下部電極との間において、メンブレン領域以外の領域の一部に絶縁膜が配されている、付記1記載の共振デバイス。
【0084】
(付記4)
前記絶縁膜は、SiO2で形成されている、付記3記載の共振デバイス。
【0085】
(付記5)
前記第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域が、前記第1の圧電薄膜共振子のメンブレン領域よりも大きい、付記1記載の共振デバイス。
【0086】
(付記6)
前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の圧電薄膜共振子のそれぞれに、メンブレン領域直下に空隙を形成する際に犠牲層を除去するエッチング液を導入するエッチング液導入孔を備え、
前記第1の圧電薄膜共振子に形成されたエッチング液導入孔と前記第2の圧電薄膜共振子に形成されたエッチング液導入孔とは、連続した空間で形成されている、付記1記載の共振デバイス。
【0087】
(付記7)
前記第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域の一部が開口あるいは切り欠きなどの構造を有し、
前記第2の圧電薄膜共振子の上部電極から前記基板側を見たときに、前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極の一部が露出している、付記1記載の共振デバイス。
【0088】
(付記8)
前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域の少なくとも一部に開口部が形成されている、付記7記載の共振デバイス。
【0089】
(付記9)
前記第1の圧電薄膜共振子に形成された開口部と、前記第2の圧電薄膜共振子に形成された開口部とは、互いに位置がずれている、付記8記載の共振デバイス。
【0090】
(付記10)
前記第1の圧電薄膜共振子と前記第2の圧電薄膜共振子とが電気的に直列に接続されている、付記1記載の共振デバイス。
【0091】
(付記11)
前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極のメンブレン以外の領域の一部の直上に、前記第2の圧電薄膜共振子の下部電極が配置されている、付記10記載の共振デバイス。
【0092】
(付記12)
前記第1の圧電薄膜共振子と前記第2の圧電薄膜共振子とが電気的に並列に接続されている、付記1記載の共振デバイス。
【0093】
(付記13)
前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極のメンブレン以外の領域の一部の直上に、前記第2の圧電薄膜共振子の下部電極が配置されており、かつ、前記第2の圧電薄膜共振子の上部電極と前記第1の圧電薄膜共振子の下部電極とが電気的に接触している、付記12記載の共振デバイス。
【0094】
(付記14)
前記圧電膜は、窒化アルミニウムを主成分とする材料で形成されている、付記1から13のいずれか一項に記載の共振デバイス。
【0095】
(付記15)
前記メンブレン領域は、外形が楕円状である、付記1から14のいずれか一項記載の共振デバイス。
【0096】
(付記16)
付記1〜15のいずれか一項に記載の共振デバイスを備えたフィルタ。
【0097】
(付記17)
付記1〜15のいずれか一項に記載の共振デバイスを備えたデュープレクサ。
【0098】
(付記18)
付記1〜15のいずれか一項に記載の共振デバイスを備えた通信モジュール。
【0099】
(付記19)
付記18に記載の通信モジュールを備えた通信装置。
【0100】
(付記20)
基板上におけるメンブレン領域に第1の犠牲層を形成し、
前記基板及び前記第1の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第1の圧電薄膜共振子を形成し、
前記第1の圧電薄膜共振子上におけるメンブレン領域に第2の犠牲層を形成し、
前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第2の圧電薄膜共振子を形成し、
前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを除去して空隙を形成する、共振デバイスの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施の形態における圧電薄膜共振子の構成を示す平面図(実施例1)
【図2】図1におけるA−A部の断面図
【図3】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図4】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図5】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図6】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図7】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図8】実施の形態における圧電薄膜共振子の構成を示す断面図
【図9A】実施の形態における圧電薄膜共振子の構成を示す平面図(実施例2)
【図9B】図9AにおけるA−A部の断面図
【図9C】圧電薄膜共振子を並列接続した構成を示す回路図
【図10】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図11】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図12】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図13】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図14】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図15】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図16】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図17】圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための断面図
【図18A】実施の形態における圧電薄膜共振子の構成を示す断面図(実施例3)
【図18B】圧電薄膜共振子を直列接続した構成を示す回路図
【図19】実施の形態における圧電薄膜共振子の他の構成例を示す断面図
【図20】実施の形態における圧電薄膜共振子の他の構成例を示す断面図
【図21】実施の形態における圧電薄膜共振子の他の構成例を示す断面図
【図22】本実施の形態におけるデュープレクサの構成を示すブロック図
【図23】本実施の形態における通信モジュールの構成を示すブロック図
【図24】本実施の形態における通信装置の構成を示すブロック図
【図25】バイアホールタイプの従来の圧電薄膜共振子の概略構成を示す断面図
【図26】キャビティタイプの従来の圧電薄膜共振子の概略構成を示す断面図
【図27】キャビティタイプの従来の圧電薄膜共振子の概略構成を示す断面図
【図28A】空隙直上のメンブレンが膨らむタイプの圧電薄膜共振子の構造を示す平面図
【図28B】図28AにおけるA−A部の断面図
【図29】A〜Cは、空隙直上のメンブレンが膨らむタイプの圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための断面図
【符号の説明】
【0102】
1 基板
2、12、22 第2の圧電薄膜共振子
3、13、23 第1の圧電薄膜共振子
4 絶縁膜
5a、5b 空隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電薄膜による電気信号とバルク弾性波の変換作用を利用した圧電薄膜共振子を備えた共振デバイスに関する。また、そのような共振デバイスを備えた通信モジュール、通信装置に関する。また、共振デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線機器の急速な普及により、小型で軽量な共振子およびこれを組み合わせて構成したフィルタの需要が増大している。これまでは主として誘電体フィルタと表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタが使用されてきたが、最近では、特に高周波領域で低損失、高耐電力性、ESD特性が良好で、かつモノリシック化が可能な素子である圧電薄膜共振子を用いて構成されたフィルタが注目されつつある。
【0003】
このような圧電薄膜共振子の一つとして、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)タイプの共振子が知られている。これは、基板上に、主要構成要素として下部電極と圧電膜と上部電極からなる積層構造体を有し、下部電極と上部電極が対向する部分(メンブレン領域)の下部電極下には空隙(バイアホールあるいはキャビティ)が形成されている。
【0004】
上部電極と下部電極の間に高周波の電気信号を印加すると、上部電極と下部電極に挟まれた圧電膜内部に逆圧電効果によって弾性波が励振される。この弾性波による歪は、圧電効果によって電気信号に変換される。この弾性波は、上部電極と下部電極がそれぞれ空気に接している面で全反射されるため、厚み方向の主変位を持つ厚み縦振動波となる。この構造では空隙上に形成された上部電極/圧電膜/下部電極を主要構成要素とする薄膜構造部分の合計膜厚Hが、弾性波の1/2波長の整数倍(n倍)になる周波数において共振が起こる。材料によって決まる弾性波の伝搬速度をVとすると、共振周波数Fは、
F=nV/2H
となる。この共振現象を利用して膜厚Hによって共振周波数を制御することにより、所望の周波数特性を有する共振子が作製される。また、複数の共振子を接続することによりフィルタが作製される。
【0005】
電極としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、チタン(Ti)等、あるいはこれらを組み合わせた積層材料を用いることができる。
【0006】
基板としては、シリコン、ガラス、ガリウムヒ素(GaAs)等を用いることができる。空隙は、素子基板として用いられているSi基板自身の裏面からのエッチング(ウェットエッチングやドライエッチィング)、あるいは、Si基板の表面に設けた犠牲層のウェットエッチング等によって形成されている。これ以降、基板の裏面から基板表面まで貫通している穴を「バイアホール」、基板の表面近傍で下部電極直下に存在する空隙を「キャビティ」と呼ぶことにする。従来の圧電薄膜共振子は、バイアホールタイプとキャビティタイプとに分けられる。
【0007】
図25は、例えば非特許文献1に開示されているバイアホールタイプの一例の構成を示す断面図である。この構造では、熱酸化膜(SiO2)を有する(100)Si基板上に、下部電極としてAu−Cr、圧電膜として酸化亜鉛(ZnO)、上部電極としてアルミニウム(Al)が形成されている。バイアホール106は、Si基板101の裏面側からKOH水溶液、あるいは、EDP水溶液(エチレンジアミン+ピロカテコール+水)を用いた異方性エッチングを施して形成したものである。
【0008】
一方、キャビティタイプは、犠牲層上に主構成要素として上部電極/圧電膜/下部電極を形成し、最後に犠牲層をエッチングして除去することによりキャビティを形成したものである。図26は、特許文献1に開示されたキャビティタイプの圧電薄膜共振子の断面図を示す。この例では、犠牲層として島状のZnOによる犠牲層パターンを作り、その上に、誘電体膜205/上部電極202/圧電膜204/下部電極/誘電体膜203の構造を作製し、犠牲層を酸で除去してキャビティ206(エアーブリッジ構造)を形成している。
【0009】
また、図27は、特許文献2に開示されたキャビティタイプの圧電薄膜共振子の断面図を示す。この構成は、上部電極302/圧電膜304/下部電極303が重なりあう領域の下方に、基板表面に凹部306が設けられた圧電薄膜共振子である。図27に示す圧電薄膜共振子は、予め形成した凹部306に犠牲層を堆積して基板表面を平坦化した後、上部電極302/圧電膜304/下部電極303を形成して、最後に犠牲層をエッチングして除去することによりキャビティが形成される。
【0010】
圧電膜としては、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO3)等を用いることができるが、実用的には、音速、温度特性、Q値および成膜技術の容易性の観点からAlNが用いられていることが多い。特に、c軸(下部電極表面に対して垂直方向)配向した結晶性の高いAlN膜の形成が共振特性を決める重要な要因の一つであり、結合係数やQ値に直接影響を及ぼしている。一方で、c軸配向した結晶性の高いAlN膜の形成には、その成膜時に高いエネルギーを印加する必要があり、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)では1000℃以上、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)でもプラズマの電力に加えて400℃以上の基板加熱を必要とし、スパッタ技術を用いても絶縁膜のスパッタによる基板温度上昇が知られている。このため、一般的にAlN膜は強い膜応力を有することとなる。
【0011】
特許文献3では、上下電極およびAlNの応力を制御し、空隙上の上下電極およびAlNが重なっている領域(以下、メンブレン領域と称する)を膨らませ、数百nm程度の犠牲層でも数μm程度のキャビティを形成できることが開示されている。
【0012】
図28Aは、特許文献3に開示された圧電薄膜共振子の構成を説明するための平面図で、図28Bは図28AのA−Aに沿う断面図である。ここでは、基板41には、平坦主面を持つSi基板を使用している。下部電極43は、Ru膜(260nm)で構成されている。圧電膜44は、AlN膜(1200nm)で構成されている、上部電極45は、Ru膜(260nm)で構成されている。
【0013】
圧電膜44を挟み上部電極45と下部電極43が対向するメンブレン領域の下部電極43の下側と基板41の表面の間には、ドーム形状の膨らみを有する空隙46が形成されている。空隙46の形状は、図28Aに示すように楕円で、上部電極45と下部電極43とが重なりあった部分の形状を概ね楕円としている。この空隙46は、下部電極43の下に予めパターンニングされた犠牲層(不図示)を除去することにより形成することができる。また、基板41には、犠牲層をエッチングして空隙を形成するために用いる犠牲層エッチング用のエッチング液導入孔47aが設けられている。
【0014】
図29A〜図29Cは、図28A及び図28Bに示した圧電薄膜共振子の製造プロセスを説明するための断面図であり、これらの図は何れも、図28AにおけるA−A部に沿った断面図である。
【0015】
先ず、図29Aに示すように、Siで形成された基板41(あるいは石英基板)上に、犠牲層膜50となるMgO(20〜100nm程度)をスパッタリング法や真空蒸着法により成膜する。次に、フォトリソグラフィー技術とエッチングとにより、犠牲層50を所望の形状にパターニングする。
【0016】
次に、図29Bに示すように、下部電極43、圧電膜44、および上部電極45を順次形成する。下部電極43は、0.6〜1.2Paの圧力下のArガス雰囲気中でスパッタリング成膜され、さらにフォトリソグラフィー技術とエッチングにより下部電極43を所望の形状にパターニングする。これに続いて、圧電膜44であるAlNを、約0.3Paの圧力のAr/N2混合ガス雰囲気中でAlターゲットを用いてスパッタリング成膜する。そして、上部電極45のRu膜を、0.6〜1.2Paの圧力のArガス雰囲気中でスパッタリング成膜する。このようにして成膜された圧電薄膜共振子にフォトリソグラフィー技術とエッチング(ウェットエッチングまたはドライエッチング)を施し、上部電極45と圧電膜44とを所望の形状にパターニングする。ここで、下部電極43、圧電膜44、上部電極45からなる圧電薄膜共振子の応力が圧縮応力となるように設定している。また、メンブレン領域に接する上部電極45の引出部分の中央部は、この次の工程で形成する空隙40の上に形成され、上部電極45の引出部分の両端部は空隙40の外側になるように形成している。
【0017】
次に、図29Cに示すように、下部電極43に対して、レジストパターニングによるフォトリソグラフィー技術によりエッチング液導入孔49(図28A参照)を形成する。このエッチング液導入孔49からエッチング液を導入して、犠牲層50をエッチング除去することで空隙40を形成する。ここで、下部電極43、圧電膜44および上部電極45からなる圧電薄膜共振子の応力が圧縮応力となるように設定されおり、この応力条件を満足することにより、犠牲層50のエッチング終了時点で、圧電薄膜共振子が膨れ上がり下部電極43と基板41との間にドーム形状の空隙40が形成される。犠牲層50のエッチング液の導入孔に関しては、特許文献4に開示されているように、メンブレン領域の中央部に設けても良い。
【0018】
以上の特徴を有する圧電薄膜共振子であるが、搭載機器の小型化に伴って、さらなる小型化が要求されている。
【0019】
圧電薄膜共振子も、弾性表面波デバイスと同様に、一般的には二次元的な配列でフィルタを構成している。そのため、フィルタを構成する基板サイズは基板上の圧電薄膜共振子の占める面積および配線で決まってしまう。そこで、基板サイズを小型化するためには、共振子を積層し、基板平面上における圧電薄膜共振子の占有面積を減らす方法が考えられる。このような積層型の共振子として、特許文献5では、減結合スタック型バルク音響共振器の帯域フィルタが開示されている。特許文献5の図5Bに示すように、下側の圧電薄膜共振子110の上に音響減結合材料130を介して上側の圧電薄膜共振子120を積層している。
【0020】
上下の共振子の間に音響減結合材料を導入することで、特許文献5に従来技術として図3に示された単純に積み重ねた圧電薄膜共振子(SBAR:stacked thin-film bulk acoustic resonator)では、上下の圧電薄膜共振子が過度に結合されてしまうという問題を改善する構造である。
【特許文献1】特公平6−40611号公報
【特許文献2】特開2000−69594号公報
【特許文献3】特開2005−347898号公報
【特許文献4】特開2007−208728号公報
【特許文献5】特表2007−510383号公報
【非特許文献1】Electron. Lett., 17(1981), pp.507〜509"
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、特許文献5に開示された構成では、上下の共振子の振動領域は物理的に接触しているため、両者の影響を低減することは難しいという課題があった。すなわち、一方の共振子の振動が他方の共振子に伝わってしまい、共振特性に悪影響が出てしまう。
【0022】
本発明の目的は、圧電薄膜共振子を積層することによって共振デバイスを小型化する際に、積層された複数の圧電薄膜共振子間の振動の干渉を低減することができる共振デバイス、通信モジュール、通信装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の共振デバイスは、基板と、前記基板上に形成された下部電極と、前記基板上および前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極とを備えた第1の圧電薄膜共振子とを備えた共振デバイスであって、前記第1の圧電薄膜共振子の上部に、下部電極と圧電膜と上部電極とを積層して備えた第2の圧電薄膜共振子を備え、前記第1の圧電薄膜共振子における前記圧電膜を挟み前記上部電極と前記下部電極とが対向するメンブレン領域と、前記第2の圧電薄膜共振子におけるメンブレン領域とは、空隙を介して積層構造となっているものである。
【0024】
本発明の通信モジュールは、上記共振デバイスを備えたものである。
【0025】
本発明の通信装置は、上記通信モジュールを備えたものである。
【0026】
本発明の共振デバイスの製造方法は、基板上におけるメンブレン領域に第1の犠牲層を形成し、前記基板及び前記第1の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とからなる第1の圧電薄膜共振子を形成し、前記第1の圧電薄膜共振子上におけるメンブレン領域に第2の犠牲層を形成し、前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の犠牲層上に第2の圧電薄膜共振子を形成し、前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを同時に除去して空隙を形成するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、圧電薄膜共振子を積層構造とすることで、基板における圧電薄膜共振子の占有面積を縮小し、共振デバイスの小型化ができる。さらに、積層された圧電薄膜共振子の少なくともメンブレン領域を物理的に分離することで、複数の圧電薄膜共振子間において振動の干渉が生じることを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の共振デバイスは、基板と、前記基板上に形成された下部電極と、前記基板上および前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極とを備えた第1の圧電薄膜共振子とを備えた共振デバイスであって、前記第1の圧電薄膜共振子の上部に、下部電極と圧電膜と上部電極とを積層して備えた第2の圧電薄膜共振子を備え、前記第1の圧電薄膜共振子における前記圧電膜を挟み前記上部電極と前記下部電極とが対向するメンブレン領域と、前記第2の圧電薄膜共振子におけるメンブレン領域とは、空隙を介して積層構造となっているものである。
【0029】
本発明の共振デバイスは、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。すなわち、本発明の共振デバイスにおいて、前記第2の圧電薄膜共振子は、複数の圧電薄膜共振子で構成されている構成とすることができる。
【0030】
また、前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極と前記第2の圧電薄膜共振子の下部電極との間において、メンブレン領域以外の領域の一部に絶縁膜が配されている構成とすることができる。
【0031】
また、前記第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域が、前記第1の圧電薄膜共振子のメンブレン領域よりも大きく形成した構成とすることができる。
【0032】
また、前記メンブレン領域は、外形が楕円状である構成とすることができる。
【0033】
本発明の共振デバイスの製造方法は、基板上におけるメンブレン領域に第1の犠牲層を形成し、前記基板及び前記第1の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第1の圧電薄膜共振子を形成し、前記第1の圧電薄膜共振子上におけるメンブレン領域に第2の犠牲層を形成し、前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第2の圧電薄膜共振子を形成し、前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを除去して空隙を形成するものである。
【0034】
(実施の形態)
〔1.共振デバイスの構成〕
(実施例1)
図1は、本実施の形態の共振デバイスの構成を示す上面図である。図2は、図1におけるA−A部の断面図である。
【0035】
図1に示すように、基板1は、平坦主面を持つSi基板で構成されている。基板1上には、上部電極3a、下部電極3b、圧電膜3cが積層して構成された第1の圧電薄膜共振子3が配されている。また、第1の圧電薄膜共振子3の上部には、絶縁膜4を挟んで、上部電極2a、下部電極2b、圧電膜2cが積層して構成された第2の圧電薄膜共振子2が配されている。下部電極2b及び3bは、Ru膜で構成されている。圧電膜2c及び3cは、AlN膜で構成されている、上部電極2a及び3aは、Ru膜で構成されている。
【0036】
圧電膜2cを挟み上部電極2aと下部電極2bとが対向するメンブレン領域の下部電極2bの下側と、第1の圧電薄膜共振子3の上部電極3aの表面との間には、ドーム形状の膨らみを有する空隙5aが形成されている。また、圧電膜3cを挟み上部電極3aと下部電極3bとが対向するメンブレン領域の下部電極3bの下側と、基板1の表面との間には、ドーム形状の膨らみを有する空隙5bが形成されている。空隙5a及び5bの形状は、上側から見た時に図1に示すように楕円形状であり、上部電極2a及び3aと下部電極2b及び3bとが重なりあった領域の形状を概ね楕円としている。また、第2の圧電薄膜共振子2と第1の圧電薄膜共振子3のメンブレン領域は、空隙5aによってそれぞれ物理的に分離されている。この空隙5a及び5bは、共振デバイスを作製する際に下部電極2b及び3bの下に予め犠牲層(不図示)をパターンニングし、作製後に犠牲層を除去することにより、形成することができる。
【0037】
また、図1に示すように、基板1には、犠牲層をエッチングして空隙5a及び5bを形成するために用いる犠牲層エッチング用のエッチング液導入孔6a及び6bが形成されている。
【0038】
次に、本実施の形態の共振デバイスの製造方法について説明する。
【0039】
図3A〜図8は、本実施の形態の共振デバイスの製造プロセスを説明するための図である。図3A、図4A、図5A、図6A、図7Aは上面図である。図3B、図4B、図5B、図6B、図7Bは上面図におけるA−A部の断面図である。
【0040】
先ず、図3A及び図3Bに示すように、シリコン(Si)からなる基板1(あるいは石英基板)上に、犠牲層膜8aとなるMgO(20〜100nm程度)をスパッタリング法や真空蒸着法により成膜する。次に、フォトリソグラフィー技術とエッチングとにより、犠牲層8aを所望の形状にパターニングする。この時、空隙形成用の犠牲層エッチング液導入孔のパターン7a及び7bも形成する。
【0041】
次に、図4A及び図4Bに示すように、基板1上に下部電極3b、圧電膜3c、および上部電極3aを順次形成する。下部電極3bは、0.6〜1.2Paの圧力下のArガス雰囲気中でスパッタリング成膜され、さらにフォトリソグラフィー技術とエッチングにより下部電極3bを所望の形状にパターニングする。これに続いて、圧電膜3cであるAlNを、約0.3Paの圧力のAr/N2混合ガス雰囲気中でAlターゲットを用いてスパッタリング成膜する。そして、上部電極3aのRu膜を、0.6〜1.2Paの圧力のArガス雰囲気中でスパッタリング成膜する。このようにして成膜された圧電薄膜共振子にフォトリソグラフィー技術とエッチング(ウェットエッチングまたはドライエッチング)を施し、上部電極3aと圧電膜3cとを所望の形状にパターニングする。ここで、下部電極3b、圧電膜3c、上部電極3aからなる第1の圧電薄膜共振子3の応力が圧縮応力となるように設定している。
【0042】
以上により、第1の圧電薄膜共振子3を形成することができる。
【0043】
次に、図5A及び図5Bに示すように、犠牲層8aおよび導入孔のパターン7a,7bを除去しないままで、絶縁膜4(SiO2)をプラズマCVDあるいはスパッタリング法などの方法で成膜後、ドライエッチングでパターニングを行う。
【0044】
次に、図6A及び図6Bに示すように、上部電極3a及び絶縁膜4上に犠牲層8bを形成する。形成方法は、犠牲層8aの形成方法と同様である。
【0045】
次に、図7A及び図7Bに示すように、絶縁膜4及び犠牲層8b上に下部電極2b、圧電膜2c、上部電極2aを形成する。形成方法は、上部電極3a、下部電極3b、圧電膜3cの形成方法と同様である。
【0046】
次に、図8に示すように、空隙形成用に形成した導入孔6a及び6b(図1参照)から、犠牲層を除去するためのエッチング液を導入して、犠牲層8a及び8bを除去し、空隙5a及び5bを形成する。犠牲層8a及び8bの除去の手順としては、まず犠牲層8bを除去し、第2の圧電薄膜共振子2側のメンブレン領域を膨らませ、その後、犠牲層8aを除去して第1の圧電薄膜共振子3側のメンブレン領域を膨らませるようにする。この順番で犠牲層を除去することにより、第2の圧電薄膜共振子2側のメンブレン領域と第1の圧電薄膜共振子3側のメンブレン領域とが接触しにくくなる。
【0047】
また、第2の圧電薄膜共振子2側のメンブレン領域と第1の圧電薄膜共振子3側のメンブレン領域の大きさを調整することにより、第2の圧電薄膜共振子2側のメンブレン領域と第1の圧電薄膜共振子3側のメンブレン領域とが膨らんだ後に、メンブレン領域同士が互いに接触しないようにすることができる。具体的には、メンブレン領域に相当する上部電極、下部電極、圧電膜、および、犠牲層の面積を第2の圧電薄膜共振子2と第1の圧電薄膜共振子3とで調整する。一般にメンブレン領域が大きいほど膨らみが大きくなるので、犠牲層8bを犠牲層8aよりも広くする方が望ましい。
【0048】
ここで、メンブレン領域およびそれを構成する上部電極などの「面積」とは、図1などに示すように共振デバイスを上方から見たときの各領域の面積を指している。したがって、図6Aに示すように犠牲層8bを上方から見たときの面積を、図3Aに示すように犠牲層8aを上方から見たときの面積よりも広くすることで、図1Bに示すように空隙5aを空隙5bよりも大きくすることができる。
【0049】
以上のように本実施の形態によれば、第2の圧電薄膜共振子2と第1の圧電薄膜共振子3とを積層構造とすることで、基板1における圧電薄膜共振子の占有面積を縮小することができ、共振デバイス全体を小型化することができる。
【0050】
また、第2の圧電薄膜共振子2と第1の圧電薄膜共振子3との間に空隙5aを備え、メンブレン領域において両者が物理的に結合しない構成としたことにより、第2の圧電薄膜共振子2と第1の圧電薄膜共振子3との間で振動の干渉が生じることを防ぐことができる。
【0051】
(実施例2)
なお、積層した圧電薄膜共振子を並列に接続する場合には、図1に示すように上下の圧電薄膜共振子を絶縁膜4で電気的に絶縁する必要はなくなり、図9A及び図9Bのような構成にすることができる。すなわち、図9Cの回路図に示すように、第1の圧電薄膜共振子13と第2の圧電薄膜共振子12とを並列に接続する場合、図9Bに示すように第2の圧電薄膜共振子12の上部電極12aの一部を、第1の圧電薄膜共振子13の下部電極13bに接続する。また、第2の圧電薄膜共振子12の下部電極12bの一部を、第1の圧電薄膜共振子13の上部電極13aに接続する。この構成の場合も、第2の圧電薄膜共振子12と第1の圧電薄膜共振子13との間には空隙5aが形成され、第1の圧電薄膜共振子13と基板1との間には空隙5bが形成されている。
【0052】
図9A及び図9Bに示す共振デバイスの製造方法は、図10A〜図17に示すようになる。まず、図10A及び図10Bに示すように基板1上に犠牲層8aを形成する。次に、図11A及び図11Bに示すように基板1及び犠牲層8a上に第1の圧電薄膜共振子13を形成する。次に、図12A及び図12Bに示すように第1の圧電薄膜共振子13の上部電極13a上に犠牲層8bを形成する。次に、図13A及び図13Bに示すように第2の圧電薄膜共振子12の下部電極12bを形成する。次に、図14A及び図14Bに示すように圧電膜12cを形成する。次に、図15A及び図15Bに示すように圧電膜12cをパターンニングし、下部電極13bが露出する凹部12dを形成する。次に、図16A及び図16Bに示すように上部電極12aを形成する。次に、図17に示すように、犠牲層8a及び8bを除去することで、空隙5a及び5bを形成する。これにより、第2の圧電薄膜共振子12及び第1の圧電薄膜共振子13が並列接続された共振デバイスを作製することができる。
【0053】
このような構成とすることにより、第2の圧電薄膜共振子12と第1の圧電薄膜共振子13との間に絶縁膜を形成する必要がないため、絶縁膜の形成工程およびパターニング工程を減らせるという利点がある。
【0054】
また、本構成においても、第2の圧電薄膜共振子12及び第1の圧電薄膜共振子13を積層構造としているため、基板上における圧電薄膜共振子の占有面積を縮小することができるので、共振デバイスを小型化することができる。
【0055】
また、第2の圧電薄膜共振子12及び第1の圧電薄膜共振子13のメンブレン領域は物理的に分離しているため、第2の圧電薄膜共振子12と第1の圧電薄膜共振子13との間で振動の干渉が生じることを防ぐことができる。
【0056】
(実施例3)
図18Aに示す構成は、第2の圧電薄膜共振子22と第1の圧電薄膜共振子23とを直列接続した構成である。すなわち、図18Bに示すように第2の圧電薄膜共振子22と第1の圧電薄膜共振子23とを直列接続する場合は、図18Aに示すように第2の圧電薄膜共振子22の下部電極22bと第1の圧電薄膜共振子23の上部電極23aとを電気的に接続する。なお、本実施例の共振デバイスの製造方法は、実施例1に示す製造方法とほとんど同様であるため(絶縁膜4の有無が異なるのみ)、説明は省略する。
【0057】
このような構成とすることにより、第2の圧電薄膜共振子22と第1の圧電薄膜共振子23との間に絶縁膜を形成する必要がないため、絶縁膜の形成工程およびパターニング工程を減らせるという利点がある。
【0058】
また、本構成においても、第2の圧電薄膜共振子22及び第1の圧電薄膜共振子23を積層構造としているため、基板上における圧電薄膜共振子の占有面積を縮小することができるので、共振デバイスを小型化することができる。
【0059】
また、第2の圧電薄膜共振子22及び第1の圧電薄膜共振子23のメンブレン領域は物理的に分離しているため、第2の圧電薄膜共振子22と第1の圧電薄膜共振子23との間で振動の干渉が生じることを防ぐことができる。
【0060】
(実施例4)
図19は、圧電薄膜共振子のメンブレン領域が開口している構造を示す。図19に示す共振デバイスは、図2に示す共振デバイスにおける第2の圧電薄膜共振子2のメンブレン領域上にもエッチング孔5cが形成された構成である。このような構成とすることで、共振デバイスの作製時、犠牲層を除去する工程において、空隙5aに配されている犠牲層が早く除去され、確実に空隙5aに配されている犠牲層を除去することが可能となる。
【0061】
図20は、第2の圧電薄膜共振子2のメンブレン領域にエッチング孔5cが形成され、第1の圧電薄膜共振子3のメンブレン領域にエッチング孔5dが形成された構成である。エッチング孔5c及び5dは、互いに重なる位置に形成されている。また、本実施例のようにエッチング孔5cの内径をエッチング孔5dの内径よりも大きくすることで、空隙5aにおける犠牲層が早く除去されるので好ましい。
【0062】
図21は、第2の圧電薄膜共振子2のメンブレン領域に形成されたエッチング孔5cに対して、第1の圧電薄膜共振子3のメンブレン領域に形成されたエッチング孔5e及び5fの位置を基板1の面方向にずらせて配置した構成である。
【0063】
なお、エッチング孔の開口箇所は複数あっても良く、エッチング条件およびメンブレン領域の膨らみの順番に応じて調整されてもよい。
【0064】
〔2.デュープレクサの構成〕
携帯電話端末、PHS(Personal Handy-phone System)端末、無線LANシステムなどの移動体通信(高周波無線通信)には、デュープレクサが搭載されている。デュープレクサは、通信電波などの送信機能及び受信機能を持ち、送信信号と受信信号の周波数が異なる無線装置において用いられる。
【0065】
図22は、本実施の形態の共振デバイスを備えたデュープレクサの構成を示す。デュープレクサ52は、位相整合回路53、受信フィルタ54、および送信フィルタ55を備えている。位相整合回路53は、送信フィルタ55から出力される送信信号が受信フィルタ54側に流れ込むのを防ぐために、受信フィルタ54のインピーダンスの位相を調整するための素子である。また、位相整合回路53には、アンテナ51が接続されている。受信フィルタ54は、アンテナ51を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、受信フィルタ54には、出力端子56が接続されている。送信フィルタ55は、入力端子57を介して入力される送信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、送信フィルタ55には、入力端子57が接続されている。ここで、受信フィルタ54及び送信フィルタ55には、本実施の形態における共振デバイスが含まれている。
【0066】
以上のように本実施の形態の共振デバイスを受信フィルタ54及び送信フィルタ55に備えることで、デュープレクサを小型化することができる。
【0067】
〔3.通信モジュールの構成〕
図23は、本実施の形態の共振デバイスまたは図22に示すデュープレクサを備えた通信モジュールの一例を示す。図23に示すように、デュープレクサ62は、受信フィルタ62aと送信フィルタ62bとを備えている。また、受信フィルタ62aには、例えばバランス出力に対応した受信端子63a及び63bが接続されている。また、送信フィルタ62bは、パワーアンプ64を介して送信端子65に接続している。ここで、受信フィルタ62a及び送信フィルタ62bには、本実施の形態における共振デバイスまたはデュープレクサが含まれている。
【0068】
受信動作を行う際、受信フィルタ62aは、アンテナ端子61を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、受信端子63a及び63bから外部へ出力する。また、送信動作を行う際、送信フィルタ62bは、送信端子65から入力されてパワーアンプ64で増幅された送信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、アンテナ端子61から外部へ出力する。
【0069】
以上のように本実施の形態の共振デバイスまたはデュープレクサを、通信モジュールの受信フィルタ62a及び送信フィルタ62bに備えることで、通信モジュールを小型化することができる。
【0070】
なお、図23に示す通信モジュールの構成は一例であり、他の形態の通信モジュールに本発明の弾性境界波デバイスを搭載しても、同様の効果が得られる。
【0071】
〔4.通信装置の構成〕
図24は、本実施の形態の共振デバイス、デュープレクサ、または通信モジュールを備えた通信装置の一例として、携帯電話端末のRFブロックを示す。また、図24に示す構成は、GSM(Global System for Mobile Communications)通信方式及びW−CDMA(Wideband Code Divition Multiple Access)通信方式に対応した携帯電話端末の構成を示す。また、本実施の形態におけるGSM通信方式は、850MHz帯、950MHz帯、1.8GHz帯、1.9GHz帯に対応している。また、携帯電話端末は、図24に示す構成以外にマイクロホン、スピーカー、液晶ディスプレイなどを備えているが、本実施の形態における説明では不要であるため図示を省略した。ここで、受信フィルタ73a、77、78、79、80、および送信フィルタ73bには、本実施の形態における共振デバイスが含まれている。
【0072】
まず、アンテナ71を介して入力される受信信号は、その通信方式がW−CDMAかGSMかによってアンテナスイッチ回路72で、動作の対象とするLSIを選択する。入力される受信信号がW−CDMA通信方式に対応している場合は、受信信号をデュープレクサ73に出力するように切り換える。デュープレクサ73に入力される受信信号は、受信フィルタ73aで所定の周波数帯域に制限されて、バランス型の受信信号がLNA74に出力される。LNA74は、入力される受信信号を増幅し、LSI76に出力する。LSI76では、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御する。
【0073】
一方、信号を送信する場合は、LSI76は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ75で増幅されて送信フィルタ73bに入力される。送信フィルタ73bは、入力される送信信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。送信フィルタ73bから出力される送信信号は、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0074】
また、入力される受信信号がGSM通信方式に対応した信号である場合は、アンテナスイッチ回路72は、周波数帯域に応じて受信フィルタ77〜80のうちいずれか一つを選択し、受信信号を出力する。受信フィルタ77〜80のうちいずれか一つで帯域制限された受信信号は、LSI83に入力される。LSI83は、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御する。一方、信号を送信する場合は、LSI83は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ81または82で増幅されて、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0075】
以上のように本実施の形態の共振デバイス、デュープレクサ、または通信モジュールを通信装置に備えることで、通信装置を小型化することができる。
【0076】
なお、図24に示す通信装置の構成は一例である。
【0077】
〔5.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、圧電薄膜共振子を積層構造とすることで、圧電薄膜共振子を形成する基板における占有面積を縮小することができ、共振デバイスを小型化することができる。また、共振デバイスを小型化することにより、それを備えたフィルタ、デュープレクサ、通信モジュール、通信装置を小型化することができる。
【0078】
また、第1の圧電薄膜共振子及び第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域は物理的に分離しているため、一方の共振子における振動が他方の共振子に伝わることがなく、両共振子間の振動の干渉を無くすことができる。
【0079】
なお、本発明の効果を得るにあたって、基板、電極膜、圧電膜、絶縁膜の各材料は、本実施の形態に限定されず、他の材料を使用してもよい。
【0080】
また、本実施の形態では、第1の圧電薄膜共振子と第2の圧電薄膜共振子の2つの共振子を積層構造とする構成としたが、3つの共振子を積層構造とする構成であっても本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
(付記1)
基板と、
前記基板上に形成された下部電極と、前記基板上および前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極とを備えた第1の圧電薄膜共振子とを備えた共振デバイスであって、
前記第1の圧電薄膜共振子の上部に、下部電極と圧電膜と上部電極とを積層して備えた第2の圧電薄膜共振子を備え、
前記第1の圧電薄膜共振子における前記圧電膜を挟み前記上部電極と前記下部電極とが対向するメンブレン領域と、前記第2の圧電薄膜共振子におけるメンブレン領域とは、空隙を介して積層構造となっている、共振デバイス。
【0082】
(付記2)
前記第2の圧電薄膜共振子は、複数の圧電薄膜共振子で構成されている、付記1記載の共振デバイス。
【0083】
(付記3)
前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極と前記第2の圧電薄膜共振子の下部電極との間において、メンブレン領域以外の領域の一部に絶縁膜が配されている、付記1記載の共振デバイス。
【0084】
(付記4)
前記絶縁膜は、SiO2で形成されている、付記3記載の共振デバイス。
【0085】
(付記5)
前記第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域が、前記第1の圧電薄膜共振子のメンブレン領域よりも大きい、付記1記載の共振デバイス。
【0086】
(付記6)
前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の圧電薄膜共振子のそれぞれに、メンブレン領域直下に空隙を形成する際に犠牲層を除去するエッチング液を導入するエッチング液導入孔を備え、
前記第1の圧電薄膜共振子に形成されたエッチング液導入孔と前記第2の圧電薄膜共振子に形成されたエッチング液導入孔とは、連続した空間で形成されている、付記1記載の共振デバイス。
【0087】
(付記7)
前記第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域の一部が開口あるいは切り欠きなどの構造を有し、
前記第2の圧電薄膜共振子の上部電極から前記基板側を見たときに、前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極の一部が露出している、付記1記載の共振デバイス。
【0088】
(付記8)
前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域の少なくとも一部に開口部が形成されている、付記7記載の共振デバイス。
【0089】
(付記9)
前記第1の圧電薄膜共振子に形成された開口部と、前記第2の圧電薄膜共振子に形成された開口部とは、互いに位置がずれている、付記8記載の共振デバイス。
【0090】
(付記10)
前記第1の圧電薄膜共振子と前記第2の圧電薄膜共振子とが電気的に直列に接続されている、付記1記載の共振デバイス。
【0091】
(付記11)
前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極のメンブレン以外の領域の一部の直上に、前記第2の圧電薄膜共振子の下部電極が配置されている、付記10記載の共振デバイス。
【0092】
(付記12)
前記第1の圧電薄膜共振子と前記第2の圧電薄膜共振子とが電気的に並列に接続されている、付記1記載の共振デバイス。
【0093】
(付記13)
前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極のメンブレン以外の領域の一部の直上に、前記第2の圧電薄膜共振子の下部電極が配置されており、かつ、前記第2の圧電薄膜共振子の上部電極と前記第1の圧電薄膜共振子の下部電極とが電気的に接触している、付記12記載の共振デバイス。
【0094】
(付記14)
前記圧電膜は、窒化アルミニウムを主成分とする材料で形成されている、付記1から13のいずれか一項に記載の共振デバイス。
【0095】
(付記15)
前記メンブレン領域は、外形が楕円状である、付記1から14のいずれか一項記載の共振デバイス。
【0096】
(付記16)
付記1〜15のいずれか一項に記載の共振デバイスを備えたフィルタ。
【0097】
(付記17)
付記1〜15のいずれか一項に記載の共振デバイスを備えたデュープレクサ。
【0098】
(付記18)
付記1〜15のいずれか一項に記載の共振デバイスを備えた通信モジュール。
【0099】
(付記19)
付記18に記載の通信モジュールを備えた通信装置。
【0100】
(付記20)
基板上におけるメンブレン領域に第1の犠牲層を形成し、
前記基板及び前記第1の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第1の圧電薄膜共振子を形成し、
前記第1の圧電薄膜共振子上におけるメンブレン領域に第2の犠牲層を形成し、
前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第2の圧電薄膜共振子を形成し、
前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを除去して空隙を形成する、共振デバイスの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施の形態における圧電薄膜共振子の構成を示す平面図(実施例1)
【図2】図1におけるA−A部の断面図
【図3】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図4】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図5】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図6】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図7】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図8】実施の形態における圧電薄膜共振子の構成を示す断面図
【図9A】実施の形態における圧電薄膜共振子の構成を示す平面図(実施例2)
【図9B】図9AにおけるA−A部の断面図
【図9C】圧電薄膜共振子を並列接続した構成を示す回路図
【図10】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図11】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図12】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図13】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図14】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図15】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図16】Aは圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための平面図、BはA図における断面図
【図17】圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための断面図
【図18A】実施の形態における圧電薄膜共振子の構成を示す断面図(実施例3)
【図18B】圧電薄膜共振子を直列接続した構成を示す回路図
【図19】実施の形態における圧電薄膜共振子の他の構成例を示す断面図
【図20】実施の形態における圧電薄膜共振子の他の構成例を示す断面図
【図21】実施の形態における圧電薄膜共振子の他の構成例を示す断面図
【図22】本実施の形態におけるデュープレクサの構成を示すブロック図
【図23】本実施の形態における通信モジュールの構成を示すブロック図
【図24】本実施の形態における通信装置の構成を示すブロック図
【図25】バイアホールタイプの従来の圧電薄膜共振子の概略構成を示す断面図
【図26】キャビティタイプの従来の圧電薄膜共振子の概略構成を示す断面図
【図27】キャビティタイプの従来の圧電薄膜共振子の概略構成を示す断面図
【図28A】空隙直上のメンブレンが膨らむタイプの圧電薄膜共振子の構造を示す平面図
【図28B】図28AにおけるA−A部の断面図
【図29】A〜Cは、空隙直上のメンブレンが膨らむタイプの圧電薄膜共振子の製造方法を説明するための断面図
【符号の説明】
【0102】
1 基板
2、12、22 第2の圧電薄膜共振子
3、13、23 第1の圧電薄膜共振子
4 絶縁膜
5a、5b 空隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された下部電極と、前記基板上および前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極とを備えた第1の圧電薄膜共振子とを備えた共振デバイスであって、
前記第1の圧電薄膜共振子の上部に、下部電極と圧電膜と上部電極とを積層して備えた第2の圧電薄膜共振子を備え、
前記第1の圧電薄膜共振子における前記圧電膜を挟み前記上部電極と前記下部電極とが対向するメンブレン領域と、前記第2の圧電薄膜共振子におけるメンブレン領域とは、空隙を介して積層構造となっている、共振デバイス。
【請求項2】
前記第2の圧電薄膜共振子は、複数の圧電薄膜共振子が積層されて構成されている、請求項1記載の共振デバイス。
【請求項3】
前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極と前記第2の圧電薄膜共振子の下部電極との間において、メンブレン領域以外の領域の一部に絶縁膜が配されている、請求項1記載の共振デバイス。
【請求項4】
前記第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域が、前記第1の圧電薄膜共振子のメンブレン領域よりも大きい、請求項1記載の共振デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の共振デバイスを備えた通信モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の通信モジュールを備えた通信装置。
【請求項7】
基板上におけるメンブレン領域に第1の犠牲層を形成し、
前記基板及び前記第1の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第1の圧電薄膜共振子を形成し、
前記第1の圧電薄膜共振子上におけるメンブレン領域に第2の犠牲層を形成し、
前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第2の圧電薄膜共振子を形成し、
前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを除去して空隙を形成する、共振デバイスの製造方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された下部電極と、前記基板上および前記下部電極上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極とを備えた第1の圧電薄膜共振子とを備えた共振デバイスであって、
前記第1の圧電薄膜共振子の上部に、下部電極と圧電膜と上部電極とを積層して備えた第2の圧電薄膜共振子を備え、
前記第1の圧電薄膜共振子における前記圧電膜を挟み前記上部電極と前記下部電極とが対向するメンブレン領域と、前記第2の圧電薄膜共振子におけるメンブレン領域とは、空隙を介して積層構造となっている、共振デバイス。
【請求項2】
前記第2の圧電薄膜共振子は、複数の圧電薄膜共振子が積層されて構成されている、請求項1記載の共振デバイス。
【請求項3】
前記第1の圧電薄膜共振子の上部電極と前記第2の圧電薄膜共振子の下部電極との間において、メンブレン領域以外の領域の一部に絶縁膜が配されている、請求項1記載の共振デバイス。
【請求項4】
前記第2の圧電薄膜共振子のメンブレン領域が、前記第1の圧電薄膜共振子のメンブレン領域よりも大きい、請求項1記載の共振デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の共振デバイスを備えた通信モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の通信モジュールを備えた通信装置。
【請求項7】
基板上におけるメンブレン領域に第1の犠牲層を形成し、
前記基板及び前記第1の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第1の圧電薄膜共振子を形成し、
前記第1の圧電薄膜共振子上におけるメンブレン領域に第2の犠牲層を形成し、
前記第1の圧電薄膜共振子及び前記第2の犠牲層上に下部電極と圧電膜と上部電極とを含む第2の圧電薄膜共振子を形成し、
前記第1の犠牲層と前記第2の犠牲層とを除去して空隙を形成する、共振デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【公開番号】特開2010−28371(P2010−28371A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186175(P2008−186175)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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