説明

共振素子、高周波フィルタ、無線システム

【課題】複数の共振素子を伝送路で接続する場合における損失を低減し、低損失な特性を実現可能な共振素子を提供することにある。
【解決手段】実施の形態の共振素子は、高周波の信号を伝送する共振素子であって、第1の基板と、第2の基板と、第1の基板に形成される第1の回路素子と、第2の基板に形成される第2の回路素子と、第1の回路素子と第2の回路素子を結合する伝送路とを有し、第1の回路素子と第2の回路素子とが同位相で共振する偶モード共振のピークが伝送信号の帯域内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークが帯域外にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は共振素子、高周波フィルタ、無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線または有線で情報通信を行う通信機器は、アンプ、ミキサ、フィルタなどの各種の高周波部品から構成されている。この中で、帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタ:BPF)は、共振素子を複数個並べて必要な特定の周波数帯の信号(所望波)のみを通過させる機能を有する。
【0003】
今日の通信システムにおいては、周波数の有効利用および干渉除去の観点からフィルタ特性は、使用可能な帯域幅が最大限使用できるよう、シャープな遮断特性を持ち低損失であることが望まれる。このフィルタ特性を実現するためには、複数の共振素子を電磁界にて相互に結合させる必要があり、フィルタの回路定数は各共振素子の共振周波数fi、共振素子器間結合Mij、および外部との結合Qeから構成される。
【0004】
フィルタの急峻性を上げるためには共振素子の数を増やし多段にすることが必要であるが、一般に共振素子の数が増えるにつれ、挿入損失も大きくなるためこれらはトレードオフの関係となる。更に、多段フィルタを構成する際に構造上の制約等がある場合、各共振素子をケーブル等の伝送路で接続し多段化する方法がある。また、複数の共振素子からなるグループを作り、それらをケーブル等の伝送路で接続しフィルタを構成する方法もある。
【0005】
しかし、いずれの場合においても接続に用いるケーブル等の損失が影響しフィルタ特性を悪化させる。特に、低損失な特性を特徴としている超電導フィルタの場合、この接続ロスがフィルタの特性を大きく悪化させる。したがって、共振素子を低損失で接続する方法が要求されている。
【0006】
また、近年開発が進んでいる無線による電力伝送においても、コイルや共振素子を用いて結合させることで電力伝送を行っている。しかが、素子間の距離が離れるにつれて結合量が小さくなり、これが伝送効率の低下の原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−141704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に述べたように、従来技術では複数の共振素子を伝送路で接続する場合に伝送路の損失が信号の伝送特性に影響する問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、複数の共振素子を伝送路で接続する場合における損失を低減し、低損失な特性を実現可能な共振素子、これを用いた高周波フィルタ、無線システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施の形態の共振素子は、高周波の信号を伝送する共振素子であって、第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板に形成される第1の回路素子と、前記第2の基板に形成される第2の回路素子と、前記第1の回路素子と前記第2の回路素子を結合する伝送路とを有し、前記第1の回路素子と前記第2の回路素子とが同位相で共振する偶モード共振のピークが伝送信号の帯域内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークが前記帯域外にある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態の共振素子および高周波フィルタの模式図である。
【図2】線路結合による4段帯域通過フィルタの例を示す模式上面図である。
【図3】線路結合による4段帯域通過フィルタの例を示す模式上面図である。
【図4】図2および図3の4段フィルタの周波数特性の計算結果を示す図である。
【図5】周波数特性の計算を行ったパターンを示す模式上面図である。
【図6】周波数特性の計算を行ったパターンを示す模式上面図である。
【図7】図5、図6のそれぞれのパターンにおける周波数特性の計算結果を示す図である。
【図8】図7の共振ピークの電流分布を示す模式図である。
【図9】図1の高周波フィルタの周波数特性の計算結果を示す図である。
【図10】第2の実施の形態の高周波フィルタの模式上面図である。
【図11】第2の実施の形態の変形例の高周波フィルタの模式上面図である。
【図12】第3の実施の形態の高周波フィルタの模式上面図である。
【図13】第3の実施の形態の変形例の高周波フィルタの模式上面図である。
【図14】第4の実施の形態の高周波フィルタの模式上面図である。
【図15】第5の実施の形態の無線システムの模式図である。
【図16】第6の実施の形態の無線システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面中、同一または類似の部分については、同一の番号を付している。
【0013】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の共振素子は、高周波の信号を伝送する共振素子であって、第1の基板と、第2の基板と、第1の基板に形成される第1の回路素子と、第2の基板に形成される第2の回路素子と、第1の回路素子と第2の回路素子を結合する伝送路とを有し、第1の回路素子と第2の回路素子とが同位相で共振する偶モード共振のピークが伝送信号の帯域内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークが帯域外にある。
【0014】
また、本実施の形態の高周波フィルタは、第1の基板と、第2の基板と、第1の基板に形成される第1の回路素子と、第2の基板に形成される第2の回路素子と、第1の回路素子と第2の回路素子を結合する伝送路とを有し、第1の回路素子と第2の回路素子とが同位相で共振する偶モード共振のピークがフィルタ回路の帯域幅内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークが帯域幅外にある第1の共振素子と、第1の基板に形成され第1の共振素子に結合する第2の共振素子と、第2の基板に形成され第1の共振素子に結合する第3の共振素子と、を備える。
【0015】
本実施の形態は、2つの異なる基板に配置したほぼ同一の周波数で共振する回路素子間を伝送路にて接続する。そして、この伝送路の電気長を所定の範囲に設け、結合した周波数特性の偶モード共振部を選択的に用いることで、1つの共振素子とみなして用いる。この結果、伝送路に流れる電流を下げることが可能となり、共振素子での損失を低減することができる。
【0016】
図1は、本実施の形態の共振素子および高周波フィルタの模式図である。図1(a)は上面図、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。
【0017】
本実施の形態の高周波フィルタ100は、3帯域通過フィルタである。高周波フィルタ100は、第1の誘電体基板10aと、第2の誘電体基板10bとを備える。そして、第1の誘電体基板10aに形成される第1の回路素子14と、第2の誘電体基板10bに形成される第2の回路素子16と、第1の回路素子14と第2の回路素子16とを結合する伝送路18で構成される第1の共振素子20を備える。そして、第1の回路素子14と第2の回路素子16が同位相で共振する偶モード共振のピークが高周波フィルタ100の帯域幅内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークがこの帯域幅外にあるよう構成されている。
【0018】
さらに、第1の誘電体基板10aに形成され第1の共振素子20に結合する第2の共振素子22と、第2の誘電体基板10bに形成され第1の共振素子20に結合する第3の共振素子24と、を備える。
【0019】
本実施の形態では、それぞれの共振素子は回路の構造としてマイクロストリップライン構造を用いている。その構造は誘電体基板の片面に地導体30を有し、反対面に線路導体32をそなえる。
【0020】
高周波フィルタ100には、入力線路34と、出力線路36が設けられる。入力線路34は、1段目の共振素子となる第2の共振素子22に結合する。第2の共振素子22は、2段目の共振素子となる第1の共振素子20に結合する。第1の共振素子20は、3段目の共振素子となる第3の共振素子24に結合する。そして、第3の共振素子24は、出力線路36と結合する。
【0021】
第2の共振素子22および第3の共振素子24は、1/2波長の単一のヘアピン型共振素子を用いている。第1の共振素子20は、1/2波長の2つのヘアピン型共振素子、すなわち、第1の回路素子14と第2の回路素子16を、結合線路17と同軸ケーブルの伝送路18で結合させ、単一の共振素子として用いている。
【0022】
第1の共振素子20は、第1の回路素子14と第2の回路素子16とが同位相で共振する偶モード共振のピークが高周波フィルタ100の帯域幅内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークがこの帯域幅外にあるよう構成されている
【0023】
高周波フィルタの場合、高周波フィルタ100の中心周波数がf、帯域幅がBWで表される場合に、伝送路18の電気長φが下記(式1)を充足することで上記条件が充足される。
【数1】


(nは正の整数)
【0024】
地導体30および線路導体32の導電性材料は、例えば、銅や金等の金属、ニオブまたはニオブすずといった超電導体、またはY系銅酸化物高温超電導体である。特に本実施の形態は、導電性材料として超電導体のように低損失な導体を用い、伝送路との損失に大きく差がある場合に効果が大きい。
【0025】
誘電体基板10a、10bは、例えば、酸化マグネシウム、サファイアまたはアルミン酸ランタンである。例えば、厚さ約0.43mm、比誘電率約10の酸化マグネシウム基板上に超電導マイクロストリップ線路を形成する。ここで、マイクロストリップ線路の超電導体は、厚さ約500nmのY系銅酸化物高温超電導薄膜を用い、ストリップ線路導体の線路幅は約0.4mmである。酸化マグネシウム基板の裏面にも、例えば、厚さ約500nmのY系銅酸化物高温超電導薄膜の地導体が形成される。
【0026】
また、良質なY系銅酸化物超電導膜を得るために、誘電体基板と超電導膜の間にはバッファ層を設けてもよい。バッファ層としては、CeOやYSZ等がある。超電導薄膜は、レーザー蒸着法、スパッタ法、共蒸着法あるいはMOD法などにより形成することができる。
【0027】
また、フィルタ構造としては、マイクロストリップ線路の他に、ストリップ線路、コプレーナ線路、導波管、同軸線路といった多様な構造とすることができる。更に、共振素子の形状は、ヘアピン型に限らず様々な共振構造をとることができる。更に、上記に限らず、誘電体共振素子や空洞共振素子などさまざまな共振素子を用いることができる。
【0028】
次に、本実施の形態の共振素子および高周波フィルタの作用・効果について説明する。
【0029】
一般に、帯域通過フィルタを構成する共振素子間の結合には、共振素子間の空間を介して結合させるギャップ結合と、結合線路を介して結合させる線路結合が考えられる。
【0030】
図2および図3はそれぞれ線路結合による4段帯域通過フィルタの例を示す模式上面図である。共振素子として1/2波長のヘアピン型共振素子40a〜40dを用いている。ここで、図2は一枚の誘電体基板10上に伝送線路42をパターニングした例である。すなわち、伝送路が低損失伝送路の場合である。
【0031】
また、図3は異なる誘電体基板上にパターニングした2つのヘアピン型共振素子からなる誘電体基板10a、10b間を、同軸ケーブル18で線路結合させた例である。すなわち、伝送路が高損失伝送路の場合である。
【0032】
図2の場合は、用いる誘電体基板内に4つの共振素子を収める必要がある。一方、図3の場合には2枚の誘電体基板にそれぞれ共振素子を分けて配置するため、基板サイズは半分ですむという利点がある。しかし、図3の場合、誘電体基板間を接続するのに使う同軸ケーブル18の損失が問題となる場合がある。
【0033】
図4は、図2および図3の4段フィルタの周波数特性の計算結果を示す図である。横軸は信号の周波数、縦軸は信号の減衰量である。図2の低損失伝送路の場合は無損失で計算した。一方、図3の高損失伝送路の場合は、導体パターンは無損失で、同軸ケーブルは損失を考慮し計算を行った。
【0034】
この結果、図2の特性は挿入損失が小さく理想的なフィルタ特性が得られているのに対し、図3の特性は損失の影響により大きく特性が崩れていることがわかる。
【0035】
そこで、この特性悪化の原因を探るため、別のパターンで計算を行った。図5および図6は周波数特性の計算を行った2つのパターンを示す模式上面図である。図5のパターンは1/2波長の直線共振素子44a、44b間を同一誘電体基板10内に配置した無損失の線路結合42にて結合させた例である。すなわち、伝送路が低損失伝送路の場合である。ここで、外部回路との結合はギャップ結合としてある。
【0036】
一方、図6のパターンは2枚の異なる誘電体基板10a、10b上にそれぞれ直線共振素子44a、44bを配置し、その間を損失のある同軸ケーブル18にて接続している。すなわち、伝送路が高損失伝送路の場合である。
【0037】
図7は、図5、図6のそれぞれのパターンにおける周波数特性の計算結果を示す図である。横軸は信号の周波数、縦軸は信号の減衰量である。
【0038】
この結果、損失のある同軸ケーブルを用いた場合、低域側のピークが大きく下がっている結果を得た。一方、高域側のピークについてはピーク値がほとんど変化していないことが分かる。
【0039】
したがって、損失のある伝送路の影響は、低域側の共振ピークに有意に現れ、高域側のピークにはほとんど影響していないことがわかった。
【0040】
図8は、図7の共振ピークの電流分布を示す模式図である。図7(a)が低域側の共振ピーク、図7(b)が高域側の共振ピークの場合である。白矢印が電流の流れる方向と大きさを模式的に示している。
【0041】
この結果、図7(a)の伝送路の損失の影響を大きく受ける共振ピークでは、2つの共振素子が逆位相で共振し、奇モード共振をなっていることがわかる。その結果、伝送路に流れる電流が増大し、伝送路の損失の影響を大きく受ける。
【0042】
一方、図7(b)では2つの共振素子が同位相で共振する偶モード共振をしており、この結果、伝送路に流れる電流が押えられ、損失の影響が小さくなっている。
【0043】
以上の結果より、この偶モード共振のみを選択的に用いることができれば、伝送路に損失がある場合においても、その損失の影響を低減することが可能となる。つまり、図1に示す本実施の形態のように、2つの共振素子と、その間を偶モード結合させる伝送路とを1つの共振素子とみなして使用することで伝送路の損失の影響を低減することができる。
【0044】
図9は、図1の高周波フィルタの周波数特性の計算結果を示す図である。図1で示す3段フィルタについて伝送路に損失がない場合とある場合それぞれの場合、すなわち、低損失伝送路の場合と高損失伝送路の場合での周波数特性の計算結果を示す。この結果、伝送線路の損失がある場合とない場合でほぼ同様の特性が得られ、図4のように大きく特性が悪化しないことがわかる。
【0045】
以上より、第1の回路素子と第2の回路素子とが同位相で共振する偶モード共振のピークが高周波フィルタの帯域幅内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークが帯域幅外にあるよう構成し、偶モード共振のみを選択的に用いることで、伝送路の損失の影響を低減することが可能となる。
【0046】
したがって、例えば、サイズの大きい基板の供給が困難であったり、構造上の制約により大きな基板が使えなかったりして、異なる基板を用いて多段フィルタを形成する場合であっても、伝送路の損失によるフィルタ特性への影響を低減することができる。
【0047】
よって、本実施の形態によれば、複数の共振素子を伝送路で接続する場合における損失を低減し、低損失なフィルタを実現可能な共振素子、これを用いた高周波フィルタを実現できる。
【0048】
なお、本実施の形態では、図1の第1の共振素子20の構成を高周波用フィルタの共振素子に用いる場合を例に説明したが、この共振素子の構成を単独の共振器として用いることも可能である。この場合、第1の回路素子14と第2の回路素子16とが同位相で共振する偶モード共振のピークが伝送信号の帯域内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークが帯域外にあるよう構成される。
【0049】
そして、単独の共振器として用いる場合には、伝送信号の中心周波数f、伝送信号の帯域幅がBWで表せる場合、伝送路18の電気長φが下記(式1)を充足することで上記条件が充足される。
【数2】


(nは正の整数)
【0050】
この形態によれば低損失な共振器が実現される。
【0051】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の高周波フィルタは、第1の実施の形態の高周波フィルタを多段化する以外、すなわち共振素子の数以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0052】
図10は、本実施の形態の高周波フィルタの模式上面図である。高周波フィルタ200は、2枚の異なる誘電体基板10a、10b上にそれぞれ共振素子を4個、すなわち、誘電体基板10a上にヘアピン型共振素子40a〜40d、誘電体基板10b上にヘアピン型共振素子40e〜40hを配置する。そして、ヘアピン型共振素子40dとヘアピン型共振素子40e間を同軸ケーブル18による伝送路で結合させている。
【0053】
同軸ケーブル18での損失の影響を低減するため、同軸ケーブル18で接合されるヘアピン型共振素子(第1の回路素子)40dとヘアピン型共振素子(第2の回路素子)40eは、偶モード結合するひとつの共振素子(第1の共振素子)20として動作する。したがって、本実施の形態の高周波フィルタは7段の帯域通過フィルタとなっている。
【0054】
本実施の形態によれば、共振素子を多段化することにより、第1の実施の形態に比較しシャープな遮断特性を備える高周波フィルタを実現することが可能となる。
【0055】
図11は、本実施の形態の変形例の高周波フィルタの模式上面図である。高周波フィルタ201は、高周波フィルタ200に対して、ヘアピン型共振素子40a〜40hの配置とそれぞれの結合方法が異なっている。
【0056】
高周波フィルタ201では、ヘアピン型共振素子40bと40c、ヘアピン型共振素子40fと40g間が低損失な結合線路46となっている。もっとも、例えば、基板のサイズが限られる場合において多段フィルタを実現するためには、本変形例のように、複数の基板上にパターンニングされた共振素子の一部を同軸ケーブル18のような損失のある線路で接続する必要がある。
【0057】
本実施の形態によっても、共振素子を多段化することにより、第1の実施の形態に比較しQ値が高くシャープな遮断特性を備える高周波フィルタを実現することが可能となる。
【0058】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の共振素子および高周波フィルタは、第3の基板をさらに備え、第3の基板に伝送路が形成され、第1の回路素子と伝送路、第2の回路素子と伝送路が空隙により結合される以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0059】
図12は、本実施の形態の高周波フィルタの模式上面図である。
【0060】
本実施の形態の高周波フィルタ300は、3帯域通過フィルタである。高周波フィルタ300は、第1の誘電体基板10aと、第2の誘電体基板10bとを備える。そして、第1の誘電体基板10aに形成される第1の回路素子14と、第2の誘電体基板10bに形成される第2の回路素子16と、を備える。
【0061】
そして、第1の回路素子14と第2の回路素子16は、マイクロストリップライン基板(第3の基板)48にパターニングされた線路50を用いて結合される。すなわち、本実施の形態では伝送路がマイクロストリップ基板にパターニングされた線路となっている。
【0062】
そして、第1の回路素子14と線路48、第2の回路素子16と線路48が空隙52により結合される。すなわち、ギャップ結合させることで必要な結合をとっている。
【0063】
さらに、第1の回路素子14と第2の回路素子16が同位相で共振する偶モード共振のピークが高周波フィルタ300の帯域幅内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークがこの帯域幅外にあるよう構成されている。
【0064】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態同様、低損失な高周波フィルタを実現することが可能となる。
【0065】
図13は、本実施の形態の変形例の高周波フィルタの模式図である。図13(a)は上面図、図13(b)は、図13(a)のB−B断面図である。高周波フィルタ301は、マイクロストリップライン基板48を、この基板に形成される線路50が、第1の回路素子14および第2の回路素子16の線路導体32に空隙(ギャップ)52を介して対向するよう配置する。このように、第1の回路素子14および第2の回路素子16と、線路50をギャップ結合させることで必要な結合をとっている。
【0066】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態同様、低損失な高周波フィルタを実現することが可能となる。また、第1の回路素子14および第2の回路素子16と、線路50との距離を変えることで、結合度を調整することが容易となる。
【0067】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の共振素子および高周波フィルタは、第1の回路素子と第2の回路素子を結合する伝送路の一部が導波管であること以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0068】
図14は、本実施の形態の高周波フィルタの模式上面図である。
【0069】
本実施の形態の高周波フィルタ400は、3帯域通過フィルタである。高周波フィルタ300は、第1の誘電体基板10aと、第2の誘電体基板10bとを備える。そして、第1の誘電体基板10aに形成される第1の回路素子14と、第2の誘電体基板10bに形成される第2の回路素子16と、を備える。
【0070】
そして、第1の回路素子14と第2の回路素子16は、導波管54と、第1の誘電体基板10aおよび第2の誘電体基板10bと導波管54を接続するコネクタ54で、互いに結合される。すなわち、本実施の形態では伝送路の一部が導波管54となっている。
【0071】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態同様、低損失な高周波フィルタを実現することが可能となる。また、伝送路を導波管とすることで、同軸ケーブルを用いる第1の実施の形態より低損失な結合を実現することができる。
【0072】
(第5の実施の形態)
本実施の形態の無線システムは、第1ないし第4の実施の形態の高周波フィルタを備える無線システムである。したがって、第1ないし第4の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0073】
図15は、本実施の形態の無線システムの模式図である。本実施の形態の無線システムは、無線通信装置である。図16は、無線通信装置の送信部の概略を示している。
【0074】
無線通信装置は、信号処理回路62、周波数変換器(ミキサ)64、ローカル信号発生器66、電力増幅器68、帯域通過フィルタ70、およびアンテナ72を備えている。
【0075】
送信すべきデータは信号処理回路62に入力され、ディジタル−アナログ変換、符号化及び変調などの処理が施されることにより、ベースバンドあるいは中間周波数(Intermediate Frequency;IF)帯の送信信号が生成される。信号処理回62からの送信信号は周波数変換器(ミキサ)64に入力され、ローカル信号発生器66からのローカル信号と乗算されることによって、無線周波数(Radio Frequency;RF)帯の信号に周波数変換、すなわちアップコンバートされる。
【0076】
ミキサ64から出力されるRF信号は電力増幅器68によって増幅された後、帯域通過フィルタ70に入力され、このフィルタ70で帯域制限を受けて不要な周波数成分が除去された後、アンテナ72に供給される。ここで、帯域制限フィルタ70に第1ないし第4の実施の形態の高周波フィルタのフィルタが用いられる。
【0077】
本実施の形態によれば、低損失な高周波フィルタを用いることで、低損失な無線通信装置が実現される。
【0078】
(第6の実施の形態)
本実施の形態の無線システムは、無線電力伝送に用いられ、高周波の信号を伝送する共振素子であって、第1の回路素子群と、第2の回路素子群と、第1の回路素子群に形成される第1の回路素子と、第2の回路素子群に形成される第2の回路素子と、第1の回路素子と第2の回路素子を結合する伝送路とを有し、第1の回路素子と第2の回路素子が同位相で共振する偶モード共振のピークが伝送信号の帯域内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークが帯域外にあることを特徴とする共振素子を用いた無線システムである。以下、第1ないし第4の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0079】
図16は、本実施の形態の無線システムの模式図である。本実施の形態の無線システムは、無線電力伝送システムである。
【0080】
本実施の形態の無線電力伝送システムは、信号源80、増幅器82、帯域通過フィルタ84、および負荷86を備えている。
【0081】
帯域通過フィルタ84は、4つの空洞共振素子88a、88b、88c、88dを備えている。空洞共振素子88a、88bが第1の回路素子群を構成し、空洞共振素子88c、88dが第2の回路素子群を構成する。そして、2番目の空洞共振素子(第1の回路素子)88bと3番目の空洞共振素子(2の回路素子)88cは、送り手側90および受け手側92からなる結合伝送路により結合される。
【0082】
結合伝送路部分は電力が伝送できればよいため、空洞共振素子88bに接続した結合線路送り手側90の部分と、空洞共振素子88cに接続した結合線路受け手側92の部分は完全に接続されてなくても良い。たとえば、送り手側90と受け手側92は導波管接続におけるチョーク構造のようになっていてもよい。また、空隙(ギャップ)を介しての結合でもよい。
【0083】
そこで、送り手側90と受け手側92を分離し、信号源80〜送り手側90を送信部、受け手側92〜負荷86を受信部とすることで無線電力伝送システムを構築される。無線電力伝送においては、送信部と受信部間の無線接続部においての損失が伝送効率に大きな影響を与える。
【0084】
このため、本実施の形態によれば、2番目の空洞共振素子(第1の回路素子)88bと3番目の空洞共振素子(2の回路素子)88cとの間を結合伝送路にて偶モード結合させることで損失の影響を低減することが可能となる。また、本実施の形態では帯域通過フィルタ84の一部が電力伝送に寄与するため、別途フィルタを設ける必要がなくシステムが簡略化できるという利点がある。
【0085】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、共振素子、フィルタ、無線システム等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる共振素子、フィルタ、無線システム等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0086】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての共振素子、フィルタ、無線システムが、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0087】
10 誘電体基板
10a 誘電体基板
10b 誘電体基板
14 第1の回路素子
16 第2の回路素子
18 伝送路
20 第1の共振素子
22 第2の共振素子
24 第3の共振素子
54 導波管
100 高周波フィルタ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波の信号を伝送する共振素子であって、
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板に形成される第1の回路素子と、
前記第2の基板に形成される第2の回路素子と、
前記第1の回路素子と前記第2の回路素子を結合する伝送路とを有し、
前記第1の回路素子と前記第2の回路素子とが同位相で共振する偶モード共振のピークが伝送信号の帯域内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークが前記帯域外にあることを特徴とする共振素子。
【請求項2】
前記伝送信号の中心周波数がf、前記伝送信号の帯域幅がBWで表される場合に、
前記伝送路の電気長φが下記(式1)を充足することを特徴とする請求項1記載の共振素子。
【数3】


(nは正の整数)
【請求項3】
前記伝送路の一部が同軸ケーブルであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の共振素子。
【請求項4】
第3の基板をさらに備え、
前記第3の基板に前記伝送路が形成され、前記第1の回路素子と前記伝送路、前記第2の回路素子と前記伝送路が空隙により結合されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の共振素子。
【請求項5】
前記伝送路の一部が導波管であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の共振素子。
【請求項6】
前記第1の回路素子、前記第2の回路素子の一部が超電導体で形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の共振素子。
【請求項7】
前記伝送路の一部が超電導体で形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の共振素子。
【請求項8】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板に形成される第1の回路素子と、前記第2の基板に形成される第2の回路素子と、前記第1の回路素子と前記第2の回路素子を結合する伝送路とを有し、前記第1の回路素子と前記第2の回路素子とが同位相で共振する偶モード共振のピークが前記フィルタ回路の帯域幅内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークが前記帯域幅外にある第1の共振素子と、
前記第1の基板に形成され前記第1の共振素子に結合する第2の共振素子と、
前記第2の基板に形成され前記第1の共振素子に結合する第3の共振素子と、
を備えることを特徴とする高周波フィルタ。
【請求項9】
前記フィルタ回路の中心周波数がf、帯域幅がBWで表される場合に、
前記伝送路の電気長φが下記(式1)を充足することを特徴とする請求項8記載の高周波フィルタ。
【数4】


(nは正の整数)
【請求項10】
前記請求項1ないし請求項7いずれか一項記載の共振素子を有する無線システム。
【請求項11】
高周波の信号を伝送する共振素子であって、
第1の回路素子群と、
第2の回路素子群と、
前記第1の回路素子群に形成される第1の回路素子と、
前記第2の回路素子群に形成される第2の回路素子と、
前記第1の回路素子と前記第2の回路素子を結合する伝送路とを有し、
前記第1の回路素子と前記第2の回路素子とが同位相で共振する偶モード共振のピークが伝送信号の帯域内にあり、逆位相で共振する奇モード共振のピークが前記帯域外にあることを特徴とする共振素子。
【請求項12】
前記伝送信号の中心周波数がf、前記伝送信号の帯域幅がBWで表される場合に、
前記伝送路の電気長φが下記(式1)を充足することを特徴とする請求項11記載の共振素子。
【数5】


(nは正の整数)
【請求項13】
前記第1の回路素子および前記第2の回路素子が空洞共振素子であることを特徴とする請求項11または請求項12記載の共振素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−74559(P2013−74559A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213692(P2011−213692)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】