説明

共重合体組成物とその製造方法

【課題】高硬度水下でのクレイ分散性と鉄沈着抑制能とを高レベルで両立できる、洗剤用添加剤に好適な、共重合体組成物とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の共重合体組成物は、重量平均分子量が10000〜50000であり、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位を30〜60mol%含む、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)由来の構造単位とモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位とエステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)由来の構造単位とを含む共重合体(P)と、酸に換算したときの含有量が12000ppm未満の残存モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体組成物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤用添加剤として、アクリル酸(塩)由来の構造単位/マレイン酸(塩)由来の構造単位/エステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(好ましくは、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)(以下、HAPSと称することがある))由来の構造単位の構成を有する共重合体、アクリル酸(塩)由来の構造単位/マレイン酸(塩)由来の構造単位/スルホエチルメタクリレート(以下、SEMSと称することがある)由来の構造単位の構成を有する共重合体、アクリル酸(塩)由来の構造単位/マレイン酸(塩)由来の構造単位/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)(以下、AMPSと称することがある)由来の構造単位の構成を有する共重合体が優れた性能を有することが知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
洗剤用添加剤の性能として、洗浄力を向上するためには、クレイ分散性や鉄沈着抑制能を向上させることが重要であることが知られている(特許文献3参照)。
【0004】
しかし、SEMSやAMPSを用いた共重合体は、洗剤用添加剤として用いた場合、エステル結合やアミド結合が加水分解してしまうという問題があり、十分な性能を発揮できない。
【0005】
したがって、クレイ分散性や鉄沈着抑制能を向上させるためには、アクリル酸(塩)由来の構造単位/マレイン酸(塩)由来の構造単位/エステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(以下、HAPS等と称することがある)由来の構造単位の構成を有する共重合体を洗剤用添加剤として用いることが好ましい。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のアクリル酸(塩)由来の構造単位/マレイン酸(塩)由来の構造単位/HAPS等由来の構造単位の構成を有する共重合体は、分子量が低く(実施例において重量平均分子量が9000以下)、クレイ分散性、特に、高硬度水下でのクレイ分散性が十分に満足できるレベルに達していない。
【0007】
また、重量平均分子量が36000のアクリル酸(塩)由来の構造単位/マレイン酸(塩)由来の構造単位/HAPS等由来の構造単位の構成を有する共重合体が開示されている(特許文献4参照)。しかし、マレイン酸(塩)由来の構造単位の含有割合が少なく(実施例8では10mol%)、鉄沈着抑制能が十分に満足できるレベルに達していない。
【0008】
また、アクリル酸(塩)由来の構造単位/HAPS等由来の構造単位/疎水性を示す構造単位の構成を有する共重合体が開示されている(特許文献5参照)。しかし、マレイン酸(塩)由来の構造単位を有しておらず、鉄沈着抑制能が十分に満足できるレベルに達していない。
【0009】
そこで、アクリル酸(塩)由来の構造単位/マレイン酸(塩)由来の構造単位/HAPS等由来の構造単位の構成を有する共重合体であって、重量平均分子量を高くし、マレイン酸(塩)由来の構造単位の含有割合を高くした共重合体を得ようとすると、特許文献1に記載の方法によれば、残存マレイン酸(塩)の量が多くなってしまい、鉄沈着抑制能が劣るという問題がある。
【0010】
また、残存マレイン酸(塩)の量を低減させるアクリル酸(塩)由来の構造単位/マレイン酸(塩)由来の構造単位/AMPS由来の構造単位の構成を有する共重合体の製造方法が開示されている(特許文献6参照)。しかし、反応性が高いAMPSに比べてHAPS等は反応性が低いため、特許文献6の製造方法をアクリル酸(塩)由来の構造単位/マレイン酸(塩)由来の構造単位/HAPS等由来の構造単位の構成を有する共重合体の製造方法に適用しても、残存マレイン酸(塩)の量が低減せず、鉄沈着抑制能が劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−355615号公報
【特許文献2】特開平3−234713号公報
【特許文献3】特開2004−189785号公報
【特許文献4】特開平2−129020号公報
【特許文献5】特開2007−231263号公報
【特許文献6】特開昭62−218407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高硬度水下でのクレイ分散性と鉄沈着抑制能とを高レベルで両立できる、洗剤用添加剤に好適な、共重合体組成物とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の共重合体組成物は、重量平均分子量が10000〜50000であり、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位を30〜60mol%含む、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)由来の構造単位とモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位とエステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)由来の構造単位とを含む共重合体(P)と、酸に換算したときの含有量が12000ppm未満の残存モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体とを含む。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記エステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)が、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)単量体である。
【0015】
本発明の別の局面によれば、共重合体組成物の製造方法が提供される。本発明の製造方法は、重合用単量体として、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)、およびエステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)を用い、本発明の共重合体組成物を製造する方法であって、
(1)水を80重量%以上含む水性溶媒中で、
(2)モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)を、該単量体(a)の全使用量に対して80重量%以上を初期仕込みし、残りを滴下し、
(3)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)を、該単量体(b)の全使用量に対して90重量%以上を滴下し、残りを初期仕込みし、
(4)重合開始剤として、過酸化水素および過硫酸塩を、それぞれ、使用量の80重量%以上を滴下し、残りを初期仕込みし、該過酸化水素および該過硫酸塩の滴下を、最も早く滴下が開始される該重合用単量体の滴下開始時から、該重合用単量体の総滴下時間の3分の1以内に開始し、
(5)初期仕込み終了後、初期仕込みした該重合用単量体由来の酸全量に対しての中和度を50〜95mol%に調整し、その後、重合を開始し、重合反応中の反応物の固形分濃度を40〜70重量%に調整し、
(6)重合用単量体の全量の滴下が終了後、反応物のpHを4〜10、固形分濃度を40〜60重量%に調整し、重合温度を80℃以上とする。
【0016】
好ましい実施形態においては、上記過硫酸塩の全使用量の25重量%以上を、上記重合用単量体の全量の滴下が終了した後に滴下する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高硬度水下でのクレイ分散性と鉄沈着抑制能とを高レベルで両立できる、洗剤用添加剤に好適な、共重合体組成物とその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪共重合体組成物≫
本発明の共重合体組成物は、重量平均分子量が10000〜50000であり、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位を30〜60mol%含む、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)由来の構造単位とモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位とエステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)由来の構造単位とを含む共重合体(P)と、酸に換算したときの含有量が12000ppm未満の残存モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体とを含む。
【0019】
本明細書において、「塩」とは、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩;等が挙げられる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。好ましくは、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩であり、特に好ましくはナトリウム塩である。また、本明細書において、「単量体由来の構造単位」とは、単量体が重合した場合に得られる重合体中の、該単量体に由来する構造単位部分を意味する。
【0020】
モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)としては、任意の適切なモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)を採用し得る。例えば、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸等、及びこれらの塩、無水物の形を有するものはその無水物が挙げられる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、本発明の効果が損なわれない範囲で、これら例示の化合物等の誘導体を使用することができる。特に好ましくは、マレイン酸(塩)またはマレイン酸無水物である。
【0021】
モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)としては、任意の適切なモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)を採用し得る。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸等、及びこれらの塩が挙げられる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、本発明の効果が損なわれない範囲で、これら例示の化合物等の誘導体を使用することができる。特に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの塩である。
【0022】
エステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)(HAPS等)としては、不飽和結合(炭素−炭素二重結合)を有し、エステル結合とアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体であり、例えば、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)、3−メタロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、ビニルスルホン酸(塩)、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、スチレンスルホン酸(塩)が挙げられる。これらの中でも、水酸基を有することに起因して、より優れた鉄沈着抑制能を有し得ることから、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)、3−メタロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)が好ましく、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)がより好ましい。
【0023】
3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)としては、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、及びこの塩が挙げられる。これらは1種のみ用いても良いし、2種を併用しても良い。
【0024】
本発明の共重合体組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体由来の構造単位とモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体由来の構造単位とエステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位以外の、その他の単量体(d)由来の構造単位を有していても良い。その他の単量体(d)としては、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体、エステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(HAPS等)と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体であれば、任意の適切な単量体を採用し得る。その他の単量体(d)としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコールとそのアルキレンオキサイド付加物、(イソ)プレノールとそのアルキレンオキサイド付加物、3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)アルキレンオキサイドエーテルプロパン、3−(メタ)アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン酸(塩)、2−アクリルアミドメチル−2−プロパンスルホン酸(塩)、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、スルホメチル(メタ)アクリルアミド、などが挙げられる。
【0025】
本発明の共重合体組成物における、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)由来の構造単位とモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位とエステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)由来の構造単位とその他の単量体(d)由来の構造単位の含有比率((b)/(a)/(c)/(d))は、mol比で、30〜60/30〜60/5〜16/0〜5であり、合計100mol%である。好ましくは、35〜55/35〜55/5〜16/0〜5であり、合計100mol%である。より好ましくは、40〜50/40〜50/5〜16/0〜5であり、合計100mol%である。
【0026】
本発明の共重合体組成物においては、特に、共重合体中におけるモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位の含有比率が30〜60mol%であること、好ましくは35〜55mol%であること、より好ましくは40〜50mol%であることが重要である。共重合体中におけるモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位の含有比率が上記範囲内であることによって、十分な鉄沈着抑制能が得られ、十分な耐ゲル化能を発揮でき、高硬度水下における高いクレイ分散能を発現できる。
【0027】
本発明の共重合体組成物において、共重合体中におけるモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)由来の構造単位の含有比率が上記範囲内であることによって、一層十分な鉄沈着抑制能を得ることが可能となり、高硬度水下における一層高いクレイ分散能を発現することが可能となる。
【0028】
本発明の共重合体組成物において、共重合体中におけるエステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)由来の構造単位の含有比率が上記範囲内であることによって、一層十分な鉄沈着抑制能を得ることが可能となり、一層十分な耐ゲル化能を発揮することが可能となる。
【0029】
本発明の共重合体組成物において、共重合体中におけるその他の単量体(d)由来の構造単位の含有比率が上記範囲内であることによって、一層十分な鉄沈着抑制能を得ることが可能となり、高硬度水下における一層高いクレイ分散能を発現することが可能となる。
【0030】
本発明の共重合体組成物において、共重合体の重量平均分子量は10000〜50000であり、好ましくは11000〜30000、より好ましくは12000〜20000である。共重合体の重量平均分子量が上記範囲内であることによって、高硬度水下における高いクレイ分散能を発現できる。
【0031】
本発明の共重合体組成物において、共重合体は水溶性を有することが好ましい。共重合体が水溶性であることにより、一層十分な鉄沈着抑制能を得ることが可能となる。
【0032】
本発明の共重合体組成物においては、残存モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体の含有量が、酸に換算したときに、固形分換算で12000ppm未満である。好ましくは9500ppm未満、より好ましくは7000ppm未満である。残存モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体の酸に換算したときの含有量が上記範囲内であることによって、十分な鉄沈着抑制能が得られる。
【0033】
本発明の共重合体組成物は、クレイ分散能が、好ましくは1.00以上、より好ましくは1.10以上である。クレイ分散能の測定方法については後述する。
【0034】
本発明の共重合体組成物は、鉄沈着抑制能が、好ましくは92.5以上、より好ましくは93.0以上である。鉄沈着抑制能の測定方法については後述する。
【0035】
≪共重合体組成物の製造方法≫
本発明の共重合体組成物の製造方法は、重合用単量体として、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)、およびエステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)を用い、本発明の共重合体組成物を製造する方法であって、
(1)水を80重量%以上含む水性溶媒中で、
(2)モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)を、該単量体(a)の全使用量に対して80重量%以上を初期仕込みし、残りを滴下し、
(3)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)を、該単量体(b)の全使用量に対して90重量%以上を滴下し、残りを初期仕込みし、
(4)重合開始剤として、過酸化水素および過硫酸塩を、それぞれ、使用量の80重量%以上を滴下し、残りを初期仕込みし、該過酸化水素および該過硫酸塩の滴下を、最も早く滴下が開始される該重合用単量体の滴下開始時から、該重合用単量体の総滴下時間の3分の1以内に開始し、
(5)初期仕込み終了後、初期仕込みした該重合用単量体由来の酸全量に対しての中和度を50〜95mol%に調整し、その後、重合を開始し、重合反応中の反応物の固形分濃度を40〜70重量%に調整し、
(6)重合用単量体の全量の滴下が終了後、反応物のpHを4〜10、固形分濃度を40〜60重量%に調整し、重合温度を80℃以上とする。
【0036】
<溶媒>
本発明の製造方法に用い得る溶媒としては、水を80重量%以上含む水性溶媒であり、好ましくは水である。重合に用いる単量体の溶媒への溶解性向上のため、必要に応じて重合に悪影響を及ぼさない範囲で有機溶媒を適宜加えても良い。
【0037】
上記有機溶媒としては、任意の適切な有機溶媒を採用し得る。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類等が挙げられる。これらは1種のみ用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0038】
<単量体の添加方法>
本発明の製造方法における単量体の添加方法について順に説明する。
【0039】
(モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a))
単量体(a)は、該単量体(a)の全使用量に対して80重量%以上、好ましくは全量を初期仕込みし、残りを滴下する。初期仕込み量が上記範囲内であることによって、重合後半における未反応物が低減でき、共重合体中に単量体(a)を均等に導入でき、十分な鉄沈着抑制能が得られ、十分な耐ゲル化能を発揮できる。
【0040】
(モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b))
単量体(b)は、該単量体(b)の全使用量に対して90重量%以上、好ましくは全量を、実質的に連続的に滴下することにより反応系に添加する。残りを初期仕込みする。滴下の割合が上記範囲内であることによって、重合初期における単量体(b)のブロック的な重合を抑制でき、高分子量化も防ぐことができ、十分な鉄沈着抑制能が得られ、十分な耐ゲル化能を発揮でき、高硬度水下における高いクレイ分散能を発現できる。単量体(b)の滴下時間は、好ましくは30〜240分間、より好ましくは60〜180分間、さらに好ましくは90〜150分間である。滴下時間が上記範囲内であることによって、単量体(b)のブロック的な重合を一層抑制でき、一層十分な鉄沈着抑制能が得られ、一層十分な耐ゲル化能を発揮でき、高硬度水下における一層高いクレイ分散能を発現できる。
【0041】
(エステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)及びその他の単量体(d))
単量体(c)及び単量体(d)については、添加方法に関して特に限定されない。単量体の反応性に鑑み、初期仕込み量と滴下量の割合、滴下を行う場合は滴下時間を、それぞれ適宜設定すれば良い。
【0042】
(初期仕込みした単量体の中和度)
初期仕込みした単量体の中和度は、初期仕込みした単量体(a)〜(d)由来の酸の合計量に対して、初期仕込み終了後、すなわち、重合開始剤の投入前の段階で、50〜95mol%である。中和度が上記範囲内であることによって、単量体(a)のブロック的な重合を抑制でき、単量体(a)の導入効率が良くなり、十分な鉄沈着抑制能が得られ、十分な耐ゲル化能を発揮できる。単量体の中和剤としては、任意の適切な中和剤を採用し得る。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩;等が挙げられる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物であり、特に好ましくは、水酸化ナトリウムである。
【0043】
重合中(即ち単量体滴下中)の中和度は、後述するpHの条件範囲内であれば、任意の適切な中和度を設定し得る。例えば、単量体の反応性を考慮し、中和剤により適宜中和度を設定しても良い。
【0044】
<重合開始剤>
本発明の製造方法における重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤を用い、具体的には、過酸化水素および過硫酸塩を用いる。場合により、連鎖移動剤、開始剤の分解促進剤として多価金属イオンを併用しても良い。以下、具体的に説明する。
【0045】
過硫酸塩としては、任意の適切な過硫酸塩を採用し得る。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムが挙げられる。これらは、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0046】
ラジカル重合開始剤の使用量としては、合計で単量体1molあたり、好ましくは2g〜10gであり、より好ましくは2.5g〜8gである。ラジカル重合開始剤の使用量が上記範囲内であることによって、単量体の残存量を低減することが可能となり、経済的に有利であり、得られる共重合体の純分量を向上することが可能となり、一層十分な鉄沈着抑制能が得られ、一層十分な耐ゲル化能を発揮でき、高硬度水下における一層高いクレイ分散能を発現できる。
【0047】
ラジカル重合開始剤の添加方法としては、過酸化水素および過硫酸塩を実質的に連続的に滴下する量が、それぞれのラジカル重合開始剤の使用量の80重量%以上であり、全量を滴下することがより好ましい。残りを初期仕込みする。過酸化水素および過硫酸塩を実質的に連続的に滴下する量が上記範囲内であることによって、十分な鉄沈着抑制能が得られ、十分な耐ゲル化能を発揮でき、高硬度水下における高いクレイ分散能を発現できる。
【0048】
ラジカル重合開始剤の滴下時間としては、過酸化水素および過硫酸塩の滴下を、最も早く滴下が開始される重合用単量体の滴下開始時から、該重合用単量体の総滴下時間の3分の1以内に開始することが重要であり、好ましくは4分の1以内、より好ましくは5分の1以内である。過酸化水素および過硫酸塩の滴下を上記範囲内で行うことによって、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)の残存を抑制することができる。
【0049】
ラジカル重合開始剤の滴下時間として、過酸化水素の滴下は、重合用単量体の滴下終了時間よりも10分以上早く終了することが好ましく、20分以上早く終了することがより好ましい。過酸化水素の滴下を上記範囲内で行うことによって、添加したラジカル重合開始剤が重合終了時までに過剰に残存することが抑制され、かつ、ラジカル重合開始剤としての効果を十分に得ることが可能となり、ラジカル重合開始剤の残存量を低減することが可能となり、得られる共重合体の熱的安定性が向上し得る。
【0050】
過硫酸塩の滴下は、過硫酸塩の全使用量の25重量%以上を、重合用単量体の全量の滴下が終了した後に滴下することが好ましい。重合用単量体の全量の滴下が終了した後に滴下する過硫酸塩の量は、該過硫酸塩の全使用量に対して、好ましくは25〜65重量%、より好ましくは27.5〜62重量%、さらに好ましくは30〜60重量%である。重合用単量体の全量の滴下が終了した後に滴下する過硫酸塩の量が上記範囲内であることによって、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)の残存量を低減することが可能となり、経済的に有利であり、得られる共重合体の純分量を向上することが可能となり、一層十分な鉄沈着抑制能が得られ、一層十分な耐ゲル化能を発揮でき、高硬度水下における一層高いクレイ分散能を発現できる。
【0051】
<連鎖移動剤>
必要に応じ、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、共重合体の分子量調整剤として、ラジカル重合開始剤と併用して連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、次亜リン酸塩が挙げられる。これらは1種のみ用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0052】
連鎖移動剤の使用量としては、重量比で、ラジカル重合開始剤量の2倍以内であることが好ましい。2倍を越えて使用しても、添加効果は現れず、共重合体の純分の低下を招くおそれがある。また、連鎖移動剤の添加方法あるいは滴下時間は、任意の適切な方法や時間を採用し得る。
【0053】
<多価金属イオン>
必要に応じ、ラジカル重合開始剤の分解促進剤として多価金属イオンを併用しても良い。使用できる有効な多価金属イオンとしては、例えば、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Cu、V2+、V3+、VO2+が挙げられる。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0054】
上記多価金属イオンの添加方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、重合用単量体の滴下終了前までに添加することが好ましく、全量を初期仕込みすることがより好ましい。
【0055】
上記多価金属イオンの使用量としては、任意の適切な量を採用し得る。例えば、反応液全量に対して100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましい。上記多価金属イオンの使用量が上記範囲内にあると、経済的にも添加効果向上にも優れた効果が得られる。
【0056】
上記多価金属イオンの供給形態としては、任意の適切な形態を採用し得る。好ましくは、重合反応系内でイオン化するものである。このような金属化合物や金属としては、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジウム、硫酸バナジウム、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NHSO・VSO・6HO]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH)V(SO・12HO]、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性金属塩、五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄などの金属酸化物、硫化銅(II)、硫化鉄などの金属硫化物;銅粉末;鉄粉末;等が挙げられる。
【0057】
<他の添加剤>
本発明の製造方法においては、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の各添加剤以外のその他の添加剤等を含んでいても良い。
【0058】
<その他の重合条件>
本発明の製造方法におけるその他の重合条件としては、例えば、pH、温度、濃度、圧力が挙げられる。これらについて順に具体的に説明する。
【0059】
(pH)
初期仕込み終了後の時点で(即ち、滴下により添加する重合用単量体の滴下開始直前、あるいは、ラジカル重合開始剤を重合用単量体の滴下前に滴下開始する場合は該ラジカル重合開始剤の滴下開始直前)で、好ましくは、8〜12である。その後、重合を開始し、重合が進行するにつれ徐々にpHが低下するように設定するのが好ましく、重合用単量体の全量の滴下が終了後、反応物のpHを4〜10に調整することが好ましい。
【0060】
一般的に、単量体(b)に比べ単量体(a)の方が、重合性が非常に悪い。このため、初期仕込みの段階で単量体(a)を多く添加するのであるが、その場合、重合初期では単量体(a)の濃度が単量体(b)に比べ圧倒的に多くなるため、単量体(a)がブロック的に重合してしまうおそれがある。そこで、本発明の製造方法では、単量体(a)の重合性を制御すべくpHの調整が必要と考え、上記の範囲に設定した。単量体(a)はジカルボン酸を有する単量体であり、カルボキシル基の双方ともが酸型、片方が酸型、双方とも中和型の3通り存在する。その中で、片方が酸型、即ち半中和タイプが最も重合性に富み、そのため単量体(a)の半中和タイプの存在量を制御することにより、単量体(a)の重合性を制御することができる。即ち、重合初期段階では、ある程度、この半中和タイプの存在量を抑制し、重合が進行して単量体(a)そのものの濃度が低減していくと重合性も低減していくので、半中和タイプの量を増大させていく必要がある。これらのことを考慮して、上記pHの設定に至った。
【0061】
なお、pHの調整剤としては、単量体の添加方法で記載した「中和剤」を必要に応じて適宜使用すれば良い。なお、最終的なpHは、重合終了後に必要に応じて「中和剤」を適宜用いて所望のpHに設定すれば良い。
【0062】
(重合温度)
重合時における温度としては、重合用単量体あるいはラジカル重合開始剤の滴下開始による重合開始時から重合終了時(すなわち、重合用単量体、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等の全ての滴下が終了し、場合により滴下終了後にさらに熟成時間を設定する時はその終了時まで)は、80℃以上が好ましく、重合溶媒の沸点近傍がより好ましく、重合溶媒の沸点がさらに好ましい。
【0063】
重合温度が上記範囲内であることによって、ラジカル重合開始剤の分解効率を向上することが可能となり、得られる共重合体における重合用単量体の残存量を低減し得る。また、重合溶媒の沸点近傍(好ましくは重合溶媒の沸点)で重合を行うことは、温度制御が非常に容易となり、重合の再現性が良く、得られる共重合体においても品質的に非常に安定したものとなり、好ましい。
【0064】
(重合濃度)
重合時における重合用単量体の濃度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な濃度を採用し得る。例えば、初期仕込み時の濃度は、好ましくは35〜75重量%、より好ましくは40〜70重量%、さらに好ましくは45〜60重量%である。初期仕込み時の濃度が上記範囲内にあることによって、単量体(a)の反応性が向上し得るとともに、生産性も向上し得る。また、重合用単量体の水溶性を維持でき、反応液がスラリー状となったり反応液に沈殿物が生じたりすることを抑制でき、均一重合とすることができる。
【0065】
(重合反応中の反応物の固形分濃度)
重合反応中の反応物の固形分濃度は、40〜70重量%の間で調整する。この固形分濃度が上記範囲内にあることによって、本発明の効果を発揮できる共重合体組成物を効果的に得ることが可能となる。
【0066】
(重合用単量体の全量の滴下が終了後の反応物の固形分濃度)
重合用単量体の全量の滴下が終了後の反応物の固形分濃度は、40〜60重量%の間で調整する。この固形分濃度が上記範囲内にあることによって、本発明の効果を発揮できる共重合体組成物を効果的に得ることが可能となる。
【0067】
(重合圧力)
重合時における圧力は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な圧力を採用し得る。例えば、加圧、常圧(大気圧)、減圧のいずれでも良い。
【0068】
≪共重合体組成物の用途≫
【0069】
<洗剤組成物>
本発明の共重合体組成物は、洗剤組成物に用いることが特に好適である。すなわち、本発明の洗剤組成物は、本発明の共重合体組成物を含む。
【0070】
本発明の洗剤組成物は、本発明の共重合体組成物の配合量が、洗剤組成物全体に対して、好ましくは1〜20重量%である。共重合体組成物の配合量が上記範囲内にあることによって、添加した効果が十分に発現でき、添加した効果が洗浄力の向上に十分に寄与でき、経済的にも有利となり得る。
【0071】
本発明の洗剤組成物には、必要に応じて、任意の適切な界面活性剤、酵素、アルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、蛍光剤、漂白剤、漂白助剤、香料、起泡剤、消泡剤、抗菌剤、腐食防止剤、着色剤等の洗剤組成物に常用される成分を配合してもよい。また、ゼオライトを配合してもよい。
【0072】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを使用することができる。
【0073】
アニオン界面活性剤としては、任意の適切なアニオン界面活性剤を採用し得る。例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等が挙げられる。
【0074】
ノニオン界面活性剤としては、任意の適切なノニオン界面活性剤を採用し得る。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0075】
両性界面活性剤としては、任意の適切な両性界面活性剤を採用し得る。例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0076】
カチオン界面活性剤としては、任意の適切なカチオン界面活性剤を採用し得る。例えば、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0077】
本発明の洗剤組成物に配合される酵素としては、任意の適切な酵素を採用し得る。
【0078】
上記酵素としては、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が挙げられる。特に、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼおよびアルカリセルラーゼが好ましい。
【0079】
アルカリビルダーとしては、任意の適切なアルカリビルダーを採用し得る。例えば、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
【0080】
キレートビルダーとしては、任意の適切なキレートビルダーを採用し得る。例えば、ジグリコール酸(塩)、オキシカルボン酸(塩)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン六酢酸)、クエン酸(塩)、3−ヒドロキシ−2,2´−イミノジコハク酸(塩)、L−アスパラギン酸ジ酢酸(塩)、メチルグリシンジ酢酸(塩)、L−グルタミンジ酢酸(塩)等が挙げられる。
【0081】
<無機顔料分散剤>
本発明の共重合体組成物は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0082】
上記無機顔料分散剤中における、本発明の共重合体組成物の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0083】
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0084】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0085】
<水処理剤>
本発明の共重合体組成物は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
【0086】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0087】
<繊維処理剤>
本発明の共重合体組成物は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の共重合体組成物を含む。
【0088】
上記繊維処理剤における本発明の共重合体組成物の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0089】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0090】
本発明の共重合体組成物と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の共重合体組成物1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0091】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0092】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明の共重合体組成物と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の共重合体組成物と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0094】
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値である。
測定装置:昭和電工製「Shodex SYSTEM−21」
カラム:昭和電工製「Asahipak GF−710 HQ」および「Asahipak GF−310 HQ」をこの順で接続したもの
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=7/3(体積比)
流速:0.5mL/分
温度:40℃
検量線:ポリアクリル酸標準サンプル(創和科学株式会社製)を用いて作成
検出器:RI
【0095】
<固形分測定方法>
重合終了時の共重合体を含む反応液の固形分は、当該反応液を170℃の熱風乾燥機で1時間処理した後に残存した不揮発分を固形分とすることにより算出した。
【0096】
<クレイ分散能>
(1)まず、グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、1mol/LのNaOH水溶液60mlに、イオン交換水を加え、600gのグリシン緩衝液を調製した。
(2)塩化カルシウム2水和物を0.817g、(1)の調製液60gに、純水を加えて、1000gとし、分散液を調製した。また、固形分換算で0.1%の重合体水溶液を調製した。
(3)約30ccの実験に用いる一般的な試験管に、JIS試験用粉体I、11種(関東ローム、微粒、日本粉体工業技術協会)のクレイ0.3gを入れ、(2)で調製した分散液27gと固形分換算で0.1%の重合体水溶液3gを添加した。このとき、試験液のカルシウム濃度は、炭酸カルシウム換算500ppmとなっている。
(4)試験管をパラフィルムで密封した後、クレイが全体に分散するように軽く振り、さらに上下に20回振った。この試験管を直射日光に当らないところに6時間静置した後、分散液の上澄みをホールピペットで5ml採取した。
(5)この液を、UV分光光度計(島津製作所製、UV−1200)を用いて、波長380nmの条件で1cmのセル吸光度(ABS)を測定し、この値を高硬度水でのクレイ分散能とした。
【0097】
<鉄沈着抑制能>
鉄沈着抑制能は以下の手順で測定した。
まず、測定サンプルの水溶液を調製した。すなわち、固形分換算で0.05%のサンプル水溶液を150g調製した(A液)。
次に、鉄イオン水溶液を次のように調製した。すなわち、塩化鉄(III)6水和物を2g取り、純水を加えて1000gとした(B液)。
さらに、水酸化ナトリウム水溶液を次のように調製した。すなわち、48%水酸化ナトリウム水溶液3.0gを取り、純水を加えて1000gとした(C液)。
A液、B液、C液を100gずつ、この順に混合し、10分間撹拌した後、2時間静置した。5C濾紙(55mm)およびブフナーロートを用いて吸引濾過した後、1時間、真空デシケータで乾燥させた。分光式色差計(日本電色工業(株)製、SE−2000)によって測定した濾紙のL値をブランクに対する百分率で示した値を鉄沈着抑制能とした。
【0098】
<残存マレイン酸量の測定>
高速液体クロマトグラフィー((株)日立製作所製、L−7100型ポンプ、L−7300型カラムオーブン、L−7200型オートサンプラー、L−7400型UV検出器)を用い、以下の条件で測定した。
カラム:昭和電工(株)製、ShodexRSpak DE−413
溶離液:0.1重量%リン酸水溶液
流量:1ml/分
温度:40℃
検出波長:200nm
【0099】
〔実施例1〕
単量体(a)としてマレイン酸(以下、MAと略す)、単量体(b)としてアクリル酸(以下、AAと略す)、単量体(c)として2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロパンスルホン酸ナトリウム(以下、HAPSと略す)を用い、モル比で(a)/(b)/(c)=45/45/10の共重合体を合成した。
すなわち、温度計、撹拌機、および還流冷却管を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、イオン交換水(以下、純水と記す)334.9g、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHと略す)432.3g、無水MA344.0g、および40%HAPS水溶液425.1gを初期仕込みし、撹拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下、還流状態を維持しながら、80%AA水溶液315.9gを重合開始から120分間にわたって、15%過硫酸ナトリウム(以下、15%NaPSと略す)66.6gを重合開始から120分間にわたって、純水117.0gを重合開始50分から80分間にわたって、15%NaPS33.3gを重合開始120分から20分間にわたって、35%過酸化水素水溶液(以下、35%Hと略す)26.8gを重合開始から50分間にわたって、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに、全ての滴下終了後、30分間にわたって、沸点還流状態を維持して、重合を完了した。
重合終了後、48%NaOHでpHおよび濃度調整を行い、pH7.3、固形分濃度46%の共重合体(1)を得た。
重量平均分子量Mwは13000であり、残存MA量は固形分換算で6300ppmであった。
結果を表1に示す。
【0100】
〔実施例2〕
単量体(a)としてMA、単量体(b)としてAA、単量体(c)としてHAPSを用い、モル比で(a)/(b)/(c)=45/45/10の共重合体を合成した。
すなわち、温度計、撹拌機、および還流冷却管を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、純水334.9g、48%NaOH432.3g、無水MA344.0g、および40%HAPS水溶液425.1gを初期仕込みし、撹拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下、還流状態を維持しながら、80%AA水溶液315.9gを重合開始から120分間にわたって、15%NaPS109.2gを重合開始から140分間にわたって、純水117.0gを重合開始50分から80分間にわたって、35%H26.8gを重合開始から50分間にわたって、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに、全ての滴下終了後、30分間にわたって、沸点還流状態を維持して、重合を完了した。
重合終了後、48%NaOHでpHおよび濃度調整を行い、pH7.3、固形分濃度46%の共重合体(2)を得た。
重量平均分子量Mwは11000であり、残存MA量は固形分換算で5000ppmであった。
結果を表1に示す。
【0101】
〔実施例3〕
単量体(a)としてMA、単量体(b)としてAA、単量体(c)としてHAPSを用い、モル比で(a)/(b)/(c)=45/45/10の共重合体を合成した。
すなわち、温度計、撹拌機、および還流冷却管を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、純水334.9g、48%NaOH432.3g、無水MA344.0g、および40%HAPS水溶液425.1gを初期仕込みし、撹拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下、還流状態を維持しながら、80%AA水溶液315.9gを重合開始から120分間にわたって、15%NaPS66.6gを重合開始10分から110分間にわたって、純水117.0gを重合開始50分から80分間にわたって、15%NaPS33.3gを重合開始120分から20分間にわたって、35%H26.8gを重合開始から50分間にわたって、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに、全ての滴下終了後、30分間にわたって、沸点還流状態を維持して、重合を完了した。
重合終了後、48%NaOHでpHおよび濃度調整を行い、pH7.3、固形分濃度46%の共重合体(3)を得た。
重量平均分子量Mwは13000であり、残存MA量は固形分換算で6700ppmであった。
結果を表1に示す。
【0102】
〔比較例1〕
単量体(a)としてMA、単量体(b)としてAA、単量体(c)としてHAPSを用い、モル比で(a)/(b)/(c)=45/45/10の共重合体を合成した。
すなわち、温度計、撹拌機、および還流冷却管を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、純水334.9g、48%NaOH432.3g、無水MA344.0g、および40%HAPS水溶液425.1gを初期仕込みし、撹拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下、還流状態を維持しながら、80%AA水溶液315.9gを重合開始から120分間にわたって、15%NaPS70.2gを重合開始50分から90分間にわたって、純水117.0gを重合開始50分から80分間にわたって、35%H26.8gを重合開始から50分間にわたって、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに、全ての滴下終了後、30分間にわたって、沸点還流状態を維持して、重合を完了した。
重合終了後、48%NaOHでpHおよび濃度調整を行い、pH7.5、固形分濃度45%の共重合体(C1)を得た。
重量平均分子量Mwは13000であり、残存MA量は固形分換算で15000ppmであった。
結果を表2に示す。
【0103】
〔比較例2〕
単量体(a)としてMA、単量体(b)としてAA、単量体(c)としてHAPSを用い、モル比で(a)/(b)/(c)=45/45/10の共重合体を合成した。
すなわち、温度計、撹拌機、および還流冷却管を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、純水43.9g、48%NaOH375.0g、無水MA264.6g、および25%HAPS水溶液523.2gを初期仕込みし、撹拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下、還流状態を維持しながら、80%AA水溶液243.0gを重合開始から120分間にわたって、15%NaPS48.0gを重合開始50分から80分間にわたって、純水87.4gを重合開始50分から80分間にわたって、35%H51.4gを重合開始から50分間にわたって、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに、全ての滴下終了後、30分間にわたって、沸点還流状態を維持して、重合を完了した。
重合終了後、48%NaOHでpHおよび濃度調整を行い、pH7.3、固形分濃度46%の共重合体(C2)を得た。
重量平均分子量Mwは7500であり、残存MA量は固形分換算で5200ppmであった。
結果を表2に示す。
【0104】
〔比較例3〕
単量体(b)としてAA、単量体(c)としてHAPSを用い、モル比で(a)/(b)/(c)=0/90/10の共重合体を合成した。
すなわち、温度計、撹拌機、および還流冷却管を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、純水182.9g、および40%HAPS水溶液272.5gを初期仕込みし、撹拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下、還流状態を維持しながら、80%AA水溶液405.0gを重合開始から120分間にわたって、48%NaOH337.5gを重合開始から120分間にわたって、15%NaPS180.0gを重合開始から120分間にわたって、15%NaPS90.0gを重合開始120分から20分間にわたって、35%H51.4gを重合開始から50分間にわたって、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに、全ての滴下終了後、30分間にわたって、沸点還流状態を維持して、重合を完了した。
重合終了後、48%NaOHでpHおよび濃度調整を行い、pH7.3、固形分濃度46%の共重合体(C3)を得た。
重量平均分子量Mwは13000であり、残存MA量は固形分換算で0ppmであった。
結果を表2に示す。
【0105】
〔比較例4〕
単量体(a)としてMA、単量体(b)としてAA、単量体(c)としてHAPSを用い、モル比で(a)/(b)/(c)=70/10/20の共重合体を合成した。
すなわち、温度計、撹拌機、および還流冷却管を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、純水100.0g、48%NaOH66.7g、無水MA49.0g、および40%HAPS水溶液545.0gを初期仕込みし、撹拌下、該水溶液を沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下、還流状態を維持しながら、80%AA水溶液315.0gを重合開始から120分間にわたって、15%NaPS133.3gを重合開始から120分間にわたって、純水60.0gを重合開始50分から80分間にわたって、15%NaPS66.7gを重合開始120分から20分間にわたって、35%H17.1gを重合開始から50分間にわたって、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに、全ての滴下終了後、30分間にわたって、沸点還流状態を維持して、重合を完了した。
重合終了後、48%NaOHでpHおよび濃度調整を行い、pH7.3、固形分濃度46%の共重合体(C4)を得た。
重量平均分子量Mwは36000であり、残存MA量は固形分換算で0ppmであった。
結果を表2に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
表1、2によれば、以下のことが判る。
(1)実施例1〜3は、本発明の製造方法で製造した本発明の共重合体組成物を用いた例である。実施例1〜3いずれにおいても、高硬度水下でのクレイ分散性と鉄沈着抑制能とを高レベルで両立できるとともに、残存マレイン酸が極めて少ない。なお、実施例1,3におけるAA滴下後の過硫酸塩滴下量(33重量%)は、実施例2におけるAA滴下後の過硫酸塩滴下量(22重量%)よりも多い。このことによって、実施例1,3は実施例2に比べて、残存マレイン酸が多少多くなっており、鉄沈着抑制能が多少低くなっている。
(2)比較例2は、特許文献1(特開2000−355615号公報)の実施例1−2に記載の製造方法に準じて製造した共重合体に相当する共重合体組成物を用いた例である。比較例2によれば、重量平均分子量が7500であり、本発明の共重合体組成物の範囲を外れている。また、過硫酸塩の滴下を、AAの滴下開始時から滴下時間の3分の1以内に開始していない。比較例2においては、高硬度水下でのクレイ分散性が低いという問題がある。
(3)比較例1は、AA滴下後の過硫酸塩滴下量を22重量%に上げ、重量平均分子量を12000とした以外は、比較例2と同様である。比較例2においては、高硬度水下でのクレイ分散性は良好であるが、残存マレイン酸が多いという問題、鉄沈着抑制能が低いという問題がある。
(4)比較例3は、MAを用いずにAA/HAPS=90/10(モル比)の構造を有する共重合体を用いた以外は実施例1と同様である。比較例3においては、高硬度水下でのクレイ分散性は良好であり、MAを用いていないので残存マレイン酸はないが、鉄沈着抑制能が低いという問題がある。
(5)比較例4は、特許文献4(特開平2−129020号公報)の実施例8に記載の共重合体に相当する共重合体組成物を用いた例である。比較例4においては、高硬度水下でのクレイ分散性は良好であり、MAの含有割合が少ない(10mol%)ので残存マレイン酸は少ないが、鉄沈着抑制能が低いという問題がある。
【0109】
以上のことから、本発明の共重合体組成物、本発明の製造方法で製造した共重合体組成物は、高硬度水下でのクレイ分散性と鉄沈着抑制能とを高レベルで両立できる、洗剤用添加剤に好適な、共重合体組成物であることが判る。このように、本発明の共重合体組成物、本発明の製造方法で製造した共重合体組成物は、従来の、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)由来の構造単位/モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位/エステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)由来の構造単位を含む共重合体では達成できなかった性能を有する。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の共重合体組成物は、洗剤組成物に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が10000〜50000であり、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位を30〜60mol%含む、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)由来の構造単位とモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位とエステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)由来の構造単位とを含む共重合体(P)と、
酸に換算したときの含有量が12000ppm未満の残存モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体と
を含む、共重合体組成物。
【請求項2】
前記エステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)が、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)単量体である、請求項1に記載の共重合体組成物。
【請求項3】
重合用単量体として、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)、およびエステル結合またはアミド結合を有さないスルホン酸(塩)基含有単量体(c)を用い、請求項1または2に記載の共重合体組成物を製造する方法であって、
(1)水を80重量%以上含む水性溶媒中で、
(2)モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)単量体(a)を、該単量体(a)の全使用量に対して80重量%以上を初期仕込みし、残りを滴下し、
(3)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(b)を、該単量体(b)の全使用量に対して90重量%以上を滴下し、残りを初期仕込みし、
(4)重合開始剤として、過酸化水素および過硫酸塩を、それぞれ、使用量の80重量%以上を滴下し、残りを初期仕込みし、該過酸化水素および該過硫酸塩の滴下を、最も早く滴下が開始される該重合用単量体の滴下開始時から、該重合用単量体の総滴下時間の3分の1以内に開始し、
(5)初期仕込み終了後、初期仕込みした該重合用単量体由来の酸全量に対しての中和度を50〜95mol%に調整し、その後、重合を開始し、重合反応中の反応物の固形分濃度を40〜70重量%に調整し、
(6)重合用単量体の全量の滴下が終了後、反応物のpHを4〜10、固形分濃度を40〜60重量%に調整し、重合温度を80℃以上とする、
共重合体組成物の製造方法。
【請求項4】
前記過硫酸塩の全使用量の25重量%以上を、前記重合用単量体の全量の滴下が終了した後に滴下する、請求項3に記載の共重合体組成物の製造方法。

【公表番号】特表2011−503246(P2011−503246A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517626(P2010−517626)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/JP2008/070366
【国際公開番号】WO2009/060965
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】