説明

共重合体組成物及びその製造方法

【課題】優れた耐熱性、耐油性及び耐寒性を示す加硫物を与える共重合体組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】エチレン(X)と、下記一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)と、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有し、(X)、(Y)及び(Z)の割合が、三相図中以下の座標で囲まれる範囲である。(X,Y,Z)=(13,24,63)=(33,62,5)=(50,45,5)=(30,20,50)





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた耐熱性を持ちながら、耐油性、及び耐寒性を示す加硫物を与える共重合体組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来アクリル酸エステルに代表される極性オレフィンより得られるアクリルゴムは、耐熱性、及び耐油性に優れている。アクリルゴムは自動車関連の分野などで広く用いられており、近年のエンジンの高出力化、及び小型化に伴い、アクリルゴム部品に対しても高度の耐熱性が要求されている。潤滑油が接触する部品に対して耐油性を保ちながら同時に広範囲の温度における安定な動作を目的に、耐寒性に対する要求も高くなってきている。
【0003】
耐油性アクリルゴム10〜90重量部と酢酸ビニル含量50重量%以上の酢酸ビニルーエチレン系共重合体90〜10重量部とからなるエラストマー組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、実施例において例示されている酢酸ビニルーエチレン系共重合体の中の酢酸ビニル含量は一定であり、これらの組成物を加硫しても耐熱性、耐油性及び耐寒性の点で問題がある。
【0005】
また、カルボキシル基含有アクリルゴムとエポキシ基含有オレフィンービニルエステル共重合体とからなるアクリルゴム組成物が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、これらの組成物についても加硫物の耐熱性、及び耐寒性の点で問題点がある。
【0007】
【特許文献1】特開昭55−98236号公報
【特許文献2】特開2002−265736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、優れた耐熱性を持ちながら耐油性、及び耐寒性を示す加硫物を与える共重合体組成物及びその製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明者等が検討を行った結果、特定の組成を持つ共重合体組成物について、優れた耐熱性を持ちながら耐油性、及び耐寒性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、エチレン(X)と、カルボン酸ビニル(Y)と、特定の一般式で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は特定の一般式で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体組成物であって、共重合体組成物中の(X)、(Y)及び(Z)の割合が、三相図中の特定の座標で囲まれる範囲であることを特徴とする共重合体組成物、及びその製法である。
【0010】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明の共重合体組成物は、エチレン(X)と、下記一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)と、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体組成物であって、共重合体組成物中の(X)、(Y)及び(Z)の割合が、三相図中以下の座標で囲まれる範囲である。
【0012】
(X,Y,Z)=(13,24,63)
=(33,62,5)
=(50,45,5)
=(30,20,50)
【0013】
【化1】

(式中、Rはメチル基又はエチル基を表す。)
【0014】
【化2】

(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0015】
【化3】

(式中、Rは水素またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシアルキル基を表す。)
本発明の共重合体組成物中のエチレンの含有量は13〜50重量%であり、好ましくは16〜50重量%である。
【0016】
本発明の共重合体組成物中の一般式(1)で表されるカルボン酸ビニルの含有量は20〜62重量%であり、好ましくは20〜57重量%である。
【0017】
本発明の共重合体組成物中の一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルの共重合体の含有量は5〜63重量%であり、好ましくは5〜60重量%である。
【0018】
以上から本発明の共重合体組成物は、図1に示す通り、エチレン(X)と、一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)と、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体組成物であって、共重合体組成物中の(X)、(Y)及び(Z)の割合が三相図中以下の座標で囲まれる範囲であることが必要である。これらの範囲をはずれると、共重合体組成物を加硫しても高い耐熱性、耐寒性、及び耐油性を示す加硫物が得られないものである。
【0019】
(X,Y,Z)=(13,24,63)
=(33,62,5)
=(50,45,5)
=(30,20,50)
本発明の共重合体組成物は、耐熱性のより高い耐油ゴムを得るためには、図2に示す通り、(X)、(Y)及び(Z)の割合が三相図中以下の座標で囲まれる範囲であることが好ましい。
【0020】
(X,Y,Z)=(16,24,60)
=(38,57,5)
=(50,45,5)
=(30,20,50)
一般式(1)で表されるカルボン酸ビニルの具体的な例としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
【0021】
一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルの具体的な例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル等が挙げられる。
【0022】
一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルの具体的な例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシプロピル等が挙げられる。
【0023】
本発明の共重合体組成物は、圧縮永久歪改善のため、示差走査熱量計による−120〜150℃の測定範囲において窒素雰囲気下10℃/分の昇温条件にて測定したエチレン結晶の融解熱が35mJ/mg以下であることが好ましく、25mJ/mg以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の共重合体組成物は、共重合体組成物100重量部に対して、エチレン含有量が13〜50重量%、カルボン酸ビニル含有量が20〜62重量%であるエチレン(X)及び一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)を含有する共重合体と、(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル含有量が5〜63重量%である一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体を、30〜200℃の温度で混合することにより製造することができる。
【0025】
本発明の共重合体組成物は、共重合体組成物100重量部に対して、エチレン含有量が13〜50重量%、(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル含有量が5〜63重量%である、エチレン(X)並びに下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体と、カルボン酸ビニル含有量が20〜62重量%である下記一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)を含有する共重合体を、30〜200℃の温度で混合することによっても製造することができる。
【0026】
【化4】

(式中、Rはメチル基又はエチル基を表す。)
【0027】
【化5】

(式中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0028】
【化6】

(式中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシアルキル基を表す。)
上記したように、共重合体組成物100重量部に対して、エチレン含量が13〜50重量%、カルボン酸ビニル含量が20〜62重量%、(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル含量が5〜63重量%であることにより、優れた耐熱性、耐油性及び耐寒性を示す加硫物を与える共重合体組成物を製造することができるものであり、これらの範囲を外れると、目的とする共重合体組成物を製造することができない。
【0029】
上記の温度が30℃未満の場合は耐熱性、耐油性、及び耐寒性を兼備えた共重合体組成物を得ることができない。また、温度が200℃を超えた場合についても目的とする性能を有する共重合体組成物を得ることができない。好ましくは、35〜180℃である。
【0030】
混合については、例えば、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法を用いることができる。
【0031】
上記で使用される共重合体は、各々1種使用しても良く、2種以上使用しても良い。
【0032】
ここに、エチレン(X)及び一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)を含有する共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を例示することができる。エチレン(X)並びに一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等を例示することができる。一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体としては、例えば、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体(具体的には、例えば、アクリルゴム等が挙げられる)、一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)並びに一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体(具体的には、例えば、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる)等を例示することができる。一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)を含有する共重合体としては、例えば、エチレン(X)及び一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)を含有する共重合体(具体的には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる)、一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)並びに一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体(具体的には、例えば、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる)等を例示することができる。
【0033】
本発明の製造方法において用いられるエチレン(X)及び一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)を含有する共重合体、エチレン(X)並びに一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体、一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)を含有する共重合体等を合成する際に、その他共重合可能な単量体を使用することができる。
【0034】
必要に応じて使用できる単量体としては(メタ)アクリル酸メチル、メタアクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸1−シアノエチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸4−シアノブチル、(メタ)アクリル酸6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸8−シアノオクチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、メタアクリル酸n−プロポキシプロピル、メタアクリル酸n−ブトキシプロピル等を例示することができる。
【0035】
さらに、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロエチル、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸1,1,5−トリヒドペルフルオロヘキシル、(メタ)アクリル酸1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸1,1,7−トリヒドロペルフルオロヘプチル、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロデシル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エステル類以外の成分としてはメチルビニルケトン等のアルキルビニルケトン化合物、ビニルエチルエーテル等のアルキルビニルエーテル化合物、アリルメチルエーテル等のアリルエーテル化合物、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどのビニル芳香族化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル化合物、アクリルアミド、プロピレン、ブダジエン、イソプレン、ペンタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、プロピオン酸ビニル、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等を例示することができる。共重合体組成物から得られる加硫物の耐熱性を向上させるため、必要に応じて好ましくは共重合体組成物中20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下の割合で加えることができる。
【0036】
本発明の製造方法で使用されるエチレン(X)及び一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)を含有する共重合体、エチレン(X)並びに一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体は、圧縮永久歪改良のため、示差走査熱量計による−120〜150℃の測定範囲において窒素雰囲気下10℃/分の昇温条件にて測定したエチレン結晶の融解熱が35mJ/mg以下であることが好ましく、25mJ/mg以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の共重合体組成物は、必要に応じて加硫促進剤、補強剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、安定剤等を配合しても良い。
【0038】
本発明の共重合体組成物は、通常のゴム工業において知られている同様の方法で加硫することが可能である。本発明の共重合体組成物の加硫は、必要に応じて加硫促進剤、補強剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、安定剤等を配合して行われる。
【0039】
本発明における共重合体組成物は加硫により、優れた耐熱性を持ちながら耐油性、及び耐寒性を示す加硫物を得ることができ、自動車用燃料ホース、シール材等の高い耐熱性が求められ、かつ耐油性及び耐寒性が要求される用途に使用することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の共重合体組成物により得られる加硫物は、優れた耐熱性を示しつつかつ耐油性及び耐寒性のバランスに優れており、自動車用燃料ホース、シール材等の高い耐熱性及び耐油性が要求される各種の用途に使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに制限されるものではない。
【0042】
なお、以下の実施例等で用いた値は以下の測定法で行ったものである。
【0043】
<エチレン結晶融解熱>
エチレン結晶融解熱はセイコー電子工業(株)社製示差走査熱量計 SSC5000にて−120℃から150℃の範囲にて窒素雰囲気下10℃/分の昇温条件にて測定した。
【0044】
<引張強さ、伸び>
引張強さ、伸びはJIS K6251に準拠して、ダンベル状3号形試験片にて500±50mm/minの引張速度にて測定した。
【0045】
<硬さ>
硬さは、JIS K6253に準拠して、デュロメーター硬さ試験タイプAにて測定した。
【0046】
<耐熱性>
JIS K6257に準拠し、180℃72時間暴露後の硬度変化ΔHs、伸び変化率ΔEBとして評価した。圧縮永久歪みはJIS K6262に準拠し、試験条件を180℃72時間とした。
【0047】
<耐油性>
耐油性はJIS K6258に準拠し、加硫ゴムをIRM903号油中150℃で3日浸漬後の体積変化率を測定することにより評価した。
【0048】
<耐寒性>
耐寒性の指標としたゲーマン捻り試験のガラス転移温度(Tg:℃)は、JIS K6261に準拠して、(株)上島製作所製ゲーマン捻り試験機TM−2531にて測定することにより評価した。
【0049】
<試験片の作製>
混練は8インチロールを用い、170℃にて20分プレス加硫を行い、更に170℃にて4時間ギアーオブン中にて二次加硫を行って試験片を作製した。
【0050】
引張強さ、伸び、硬さ、圧縮永久歪み、耐油性、及び耐寒性の評価には表1の配合にて試験片を作製した。
【0051】
【表1】

実施例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)40重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14、アクリル酸エチル−アクリル酸ブチル−アクリル酸メトキシエチル共重合体)60重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(16,24,60)]。評価結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

実施例2
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン400HV、酢酸ビニル含量40重量%、エチレン結晶融解熱=25mJ/mg)50重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)50重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(30,20,50)]。評価結果を表2に示す。
【0053】
実施例3
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン400HV、酢酸ビニル含量40重量%、エチレン結晶融解熱=25mJ/mg)33重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)62重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)5重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(45,50,5)]。評価結果を表2に示す。
【0054】
実施例4
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)45重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)55重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(18,27,55)]。評価結果を表2に示す。
【0055】
実施例5
エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製:ウルトラセン760、酢酸ビニル含量42重量%、エチレン結晶融解熱=22mJ/mg)36重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン800HV、酢酸ビニル含量80重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)59重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)5重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(33,62,5)]。評価結果を表2に示す。
【0056】
実施例6
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)95重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)5重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(38,57,5)]。評価結果を表2に示す。
【0057】
実施例7
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン400HV、酢酸ビニル含量40重量%、エチレン結晶融解熱=25mJ/mg)45重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン800HV、酢酸ビニル含量80重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)40重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)15重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(35,50,15)]。評価結果を表2に示す。
【0058】
実施例8
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)70重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)30重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(28,42,30)]。評価結果を表2に示す。
【0059】
実施例9
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)50重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)50重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(20,30,50)]。評価結果を表2に示す。
【0060】
実施例10
エチレン−アクリル酸メチル共重合体(デュポン社製:エチレン含量41重量%、アクリル酸メチル55重量%、その他カルボキシル基含有モノマー4重量%)からなる共重合体(エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)30重量部、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)70重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(41,42,17)]。評価結果を表3に示す。
【0061】
【表3】

実施例11
エチレン−アクリル酸メチル共重合体(デュポン社製:エチレン含量41重量%、アクリル酸メチル55重量%、その他カルボキシル基含有モノマー4重量%)からなる共重合体(エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)13重量部、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)87重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(40,53,7)]。評価結果を表3に示す。
【0062】
実施例12
エチレン−アクリル酸メチル共重合体(デュポン社製:エチレン含量41重量%、アクリル酸メチル55重量%、その他カルボキシル基含有モノマー4重量%)からなる共重合体(エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)18重量部、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)82重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(40,50,10)]。評価結果を表3に示す。
【0063】
比較例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製:ウルトラセン760、酢酸ビニル含量42重量%、エチレン結晶融解熱=22mJ/mg)98重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)2重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(57,41,2)]。評価結果を表4に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐熱性及び耐油性が実施例に対して劣っていた。
【0064】
【表4】

比較例2
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)98重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)2重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(39,59,2)]。評価結果を表4に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐熱性及び耐油性が実施例に対して劣っていた。
【0065】
比較例3
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン400HV、酢酸ビニル含量40重量%、エチレン結晶融解熱=25mJ/mg)10重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン800HV、酢酸ビニル含量80重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)20重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)70重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(10,20,70)]。評価結果を表4に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐熱性が実施例に対して劣っていた。
【0066】
比較例4
エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製:ウルトラセン750、酢酸ビニル含量32重量%、エチレン結晶融解熱=41mJ/mg)28重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製:ウルトラセン760、酢酸ビニル含量42重量%、エチレン結晶融解熱=22mJ/mg)19重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)53重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(30,17,53)]。評価結果を表4に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐熱性及び耐油性が実施例に対して劣っていた。
【0067】
比較例5
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)3重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)97重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(1,2,97)]。評価結果を表4に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐熱性が実施例に対して劣っていた。
【0068】
比較例6
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)20重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)80重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(8,12,80)]。評価結果を表4に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐熱性が実施例に対して劣っていた。
【0069】
比較例7
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)30重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン800HV、酢酸ビニル含量80重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)30重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)40重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(18,42,40)]。評価結果を表4に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐熱性が実施例に対して劣っていた。
【0070】
比較例8
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)40重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン800HV、酢酸ビニル含量80重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)40重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)20重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(24,56,20)]。評価結果を表4に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐熱性が実施例に対して劣っていた。
【0071】
比較例9
エチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン400HV、酢酸ビニル含量40重量%、エチレン結晶融解熱=25mJ/mg)80重量部、及びアクリルゴム(日本ゼオン社製:NipolAR−14)20重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(48,32,20)]。評価結果を表4に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐油性が実施例に対して劣っていた。
【0072】
比較例10
エチレン−アクリル酸メチル共重合体(デュポン社製:エチレン含量41重量%、アクリル酸メチル55重量%、その他カルボキシル基含有モノマー4重量%)からなる共重合体(エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)71重量部、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)29重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(42,18,40)]。評価結果を表5に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐熱性が実施例に対して劣っていた。
【0073】
【表5】

比較例11
エチレン−アクリル酸メチル共重合体(デュポン社製:エチレン含量41重量%、アクリル酸メチル55重量%、その他カルボキシル基含有モノマー4重量%)からなる共重合体(エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)79重量部、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(ランクセス社製:レバプレン600HV、酢酸ビニル含量60重量%、エチレン結晶融解熱=0mJ/mg)21重量部を表1の配合に従い、40℃に加熱した8インチロールにて混練し、共重合体組成物を得た[(X,Y,Z)=(42,13,45)]。評価結果を表5に示す。得られた共重合体組成物の加硫物は、耐熱性が実施例に対して劣っていた。
【0074】
比較例12
実施例1と同様の配合にて25℃の8インチロールにて混練したが、混練中にエチレン−酢酸ビニル共重合体に起因する塊が生成し、均一な共重合体組成物を得ることができなかった。
【0075】
比較例13
実施例1と同様の配合にて220℃の8インチロールにて混練したが、加硫物を得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の請求項1に記載の共重合体組成物の三相図を示す図である。
【図2】本発明の請求項2に記載の共重合体組成物の三相図を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン(X)と、下記一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)と、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体組成物であって、共重合体組成物中の(X)、(Y)及び(Z)の割合が、三相図中以下の座標で囲まれる範囲であることを特徴とする共重合体組成物。
(X,Y,Z)=(13,24,63)
=(33,62,5)
=(50,45,5)
=(30,20,50)
【化1】

(式中、Rはメチル基又はエチル基を表す。)
【化2】

(式中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【化3】

(式中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシアルキル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の共重合体組成物において、(X)、(Y)及び(Z)の割合が、三相図中以下の座標で囲まれる範囲であることを特徴とする共重合体組成物。
(X,Y,Z)=(16,24,60)
=(38,57,5)
=(50,45,5)
=(30,20,50)
【請求項3】
示差走査熱量計による−120℃から150℃の測定範囲において窒素雰囲気下10℃/分の昇温条件にて測定したエチレン結晶の融解熱が35mJ/mg以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の共重合体組成物。
【請求項4】
共重合体組成物100重量部に対して、エチレン含有量が13〜50重量%、カルボン酸ビニル含有量が20〜62重量%であるエチレン(X)及び下記一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)を含有する共重合体と、(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル含有量が5〜63重量%である下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体を、30〜200℃の温度で混合することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の共重合体組成物の製造方法。
【化4】

(式中、Rはメチル基又はエチル基を表す。)
【化5】

(式中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【化6】

(式中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシアルキル基を表す。)
【請求項5】
共重合体組成物100重量部に対して、エチレン含有量が13〜50重量%、(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル含有量が5〜63重量%である、エチレン(X)並びに下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(Z)を含有する共重合体と、カルボン酸ビニル含有量が20〜62重量%である下記一般式(1)で表されるカルボン酸ビニル(Y)を含有する共重合体を、30〜200℃の温度で混合することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の記載の共重合体組成物の製造方法。
【化7】

(式中、Rはメチル基又はエチル基を表す。)
【化8】

(式中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【化9】

(式中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシアルキル基を表す。)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−100765(P2010−100765A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274755(P2008−274755)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】