説明

内容物噴射用ベンチュリー機構およびエアゾール式製品

【課題】放出される噴射剤の流れによって内容物容器から内容物を吸引・放出する内容物噴射用ベンチュリー機構において、内容物容器からの漏洩を防止するとともに、内容物の放出性状や、内容物容器の着脱操作性も改善する。
【解決手段】内容物容器5の内容物放出口7hに対する内容物放出弁7g、8aおよび外気連通口3jに対する外気流入弁7e、11を設けて、噴射剤容器1の噴射剤放出弁2a、2bを含む各弁を操作部4の単一操作で開状態に設定できるようにした。また、噴射剤放出口を、内容物放出口7hの周りに位置する環状の態様で形成することで、噴射剤容器1の内部圧力を抑えながらも噴射された噴射剤で吸い出された内容物がより細かなキリ状態で放出されるようにした。内容物容器5を簡単な操作で環状保持部7nに着脱できる機構7rも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出対象の内容物(原液など)とその噴射剤(液化ガスなど)とを別々の容器に収納して当該容器(内容物容器および噴射剤容器)を一体化した状態で使用されるベンチュリー機構、すなわち噴射剤放出口の近くに内容物放出口を設け、噴射剤の放出流によって生じる吸引作用で内容物をその収納容器から吸い上げて外部空間に放出(噴射)させるタイプの内容物噴射用ベンチュリー機構に関する。
【0002】
所定の内部圧力で使用される噴射剤容器にはその操作部に応動した開閉作用を呈する噴射剤放出弁が備えられている。
【0003】
内容物のこぼれ防止を考慮すれば、内容物容器側に内容物放出弁と外気流入弁を設けて、当該各弁および噴射剤放出弁の開閉動作を単一操作で簡単,確実に設定できることが望ましい。
【0004】
そして、噴射剤容器の内部圧力を高くしなくても内容物容器の内容物が細かなキリ状態で放出されることが望ましい。さらには、内容物容器を簡単な操作,作業で噴射剤容器側に着脱できることが望ましく、本発明はこれらの要請に応えるものである。
【0005】
なお、本明細書においては噴射剤放出口や内容物放出口の側を「前」と記し、それとは反対側の噴射剤容器の操作ボタン側を「後」と記す。
【背景技術】
【0006】
本件出願人などは、内容物(塗料など)の粒子の細かさや噴射内容物の液だれ,固化の程度などの内容物噴射性状の向上化を図ることを目的とした内容物噴射用ベンチュリー機構をすでに提案している(特許文献1参照)。
【0007】
この提案済みの内容物噴射用ベンチュリー機構では内容物容器の内容物放出弁および外気吸入用弁を設けない態様をとっている。
【0008】
また、内容物放出口および噴射剤放出口の各径の大きさや当該放出口同士の位置関係を特定の範囲に設定したものであって、内容物放出口から噴射される内容物は噴射剤放出流に沿った下側空間部分で当該放出流を追従する形になっている。
【0009】
また、内容物容器を噴射剤容器から取り外すさいには、それぞれの容器を吊り下げるような形で保持しているホルダーの二股部分から当該内容物容器を横方向(当該二股部分の開口側)に取り出す形になっている。
【特許文献1】特開2005−329341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した内容物噴射用ベンチュリー機構の内容物容器(原液容器)の内容物放出口および外気連通口にはいわゆるシール作用弁(内容物放出弁および外気流入弁)が設けられていない。そのため当該ベンチュリー機構を備えたエアゾール式製品が横倒しなどした場合には内容物容器の原液がこぼれてしまうといった点で改善の余地を残している。
【0011】
また、内容物放出口および噴射剤放出口それぞれの径の大きさや当該放出口同士の位置関係を特定の範囲に設定するのとは別の手法で、同じように内容物噴射性状の向上化を図れないかといった点で改善の余地を残している。
【0012】
さらには、内容物容器をその重さを利用して噴射剤容器から簡単に外せるようにできないかといった点でも改善の余地を残している。
【0013】
そこで本発明では、内容物容器の内容物放出口に対する内容物放出弁および外気連通口に対する外気流入弁を設けて、噴射剤容器の噴射剤放出弁を含む各弁を単一操作で開状態に設定できるようにすることにより、横倒しなどの場合にも内容物容器の原液などの中身がこぼれるのを防止して、製品使用上での利便性を高めることを目的とする。
【0014】
また、噴射剤容器の内部圧力を抑えながらも内容物がより細かなキリ状態で放出されるようにしたり、内容物容器をより簡単な操作で着脱できるようにしたりすることにより、内容物の放出性状や、内容物容器の着脱操作性(着脱作業性)のいっそうの向上化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以上の課題を次の内容物噴射用ベンチュリー機構を用いて解決する。
(1)放出対象の内容物とその噴射剤とを別々に収納した内容物容器(例えば後述の内容物容器5)および噴射剤容器(例えば後述の噴射剤容器1)を一体化した状態で使用され、かつ、当該噴射剤容器の操作部(例えば後述のボタン4)の作動にともなって噴射剤放出弁(例えば後述のステム2の孔部2aとステムガスケット2bからなる噴射剤放出弁)が開くことにより噴射剤放出口(例えば後述の直立筒状外周面7vと前側内周面12bとの間の空間域)から放出される噴射剤の流れに基づく吸引作用で、内容物容器の内容物が吸い上げられて内容物放出口(例えば後述の小径開口部7h)から外部空間に放出される内容物噴射用ベンチュリー機構において、
前記噴射剤放出口を、前記内容物放出口の周りに位置する環状の態様で形成し、
前記内容物容器と前記内容物放出口との間の内容物通路に内容物放出弁(例えば後述のジョイント7の開口内縁部分7gとニードル8のテーパ面8aからなる内容物放出弁)を設け、
前記内容物容器と外部空間との間の外気通路に外気流入弁(例えば後述のジョイント7の溝状部7eなどとOリング11とからなる外気流入弁)を設け、
前記操作部の作動に応じて前記内容物放出弁および前記外気流入弁を静止モードの閉状態から作動モードの開状態に移行させる弁制御部材(例えば後述のニードル8)を備えたものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記弁制御部材は、
前記操作部の作動モード設定操作と連動し、かつ、前記内容物放出弁の構成要素(例えば後述のニードル8のテーパ面8a)および前記外気流入弁の構成要素(例えば後述のOリング11)をそれぞれ備えたものを用いる。
(3)上記(1)において、
前記内容物容器および前記噴射剤容器を一体化するための結合部材(例えば後述のジョイント7)を備え、
前記結合部材の一部に、前記内容物容器の取外し用操作部(例えば後述の取外し用操作部7r)を、当該内容物容器に対して係合保持するとともに当該係合保持の解除操作により当該内容物容器が下方へ取り出される状態に変位する形で設けたものを用いる。
【0016】
本発明は、以上の構成からなる内容物噴射用ベンチュリー機構および、これを備えたエアゾール式製品を対象としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明はこのように、内容物容器に関する内容物放出弁および外気流入弁を設けるとともに、噴射剤容器の噴射剤放出弁を含む各弁が噴射剤容器での単一操作によって開状態に設定される形になっているので、横倒しなどの場合にも内容物容器の内容物がこぼれるのを防止し、製品使用上での利便性を高めることができる。
【0018】
また、噴射剤放出口を内容物放出口の周りに形成して内容物が噴射剤の放出流にいわば包みこまれるような内容物放出態様とし、これにより噴射剤容器の内部圧力が「1.0kgf/cm2〜2.0kgf/cm2」といった程度の低圧の場合にも内容物がより細かなキリ状態で放出されるようにしているので、内容物の噴射性状のいっそうの向上化を図ることができる。
【0019】
また、内容物容器および噴射剤容器の結合部材に設けた取外し用操作部の操作に基づいて当該結合部材と当該内容物容器との係合状態を解除し、これにより内容物容器が下方へ取り出されるようにしているので、内容物容器の取り外し作業についてその重みも利用した形の簡単化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1乃至図5を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0021】
ここで、
図1は、内容物噴射用ベンチュリー機構の静止モードを示し、
図2は、ボタン押下げ操作の初期段階である作動開始状態を示し、
図3は、ボタン押下げ操作の定常段階(最終段階)である作動モードを示し、
図4は、内容物噴射用ベンチュリー機構の平面図を示し、
図5は、内容物噴射用ベンチュリー機構の斜視図(一部断面)の概要を示している。
【0022】
以下に用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えばマウンティングキャップ1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば噴射剤容器1)の一部であることを示している。
【0023】
なお、数字のみの参照番号を付した構成要素は、噴射剤容器1,ステム2,アクチュエータ3,ボタン4,内容物容器5,チューブ6,ジョイント7,ニードル8,コイルスプリング9,Oリング10,11,ノズルピース12である。
【0024】
図1〜図5において、
1はエアゾール式製品の場合と同様のマウンティングキャップ,ハウジングなどを備え、噴射剤としてのガス(液化ガス)が収納されている噴射剤容器,
1aは当該噴射用容器の構成要素であって容器本体開口部分にクリンチ固定されたマウンティングキャップ,
をそれぞれ示している。
【0025】
2は噴射剤容器1のハウジング(図示省略)に設けられて周知の噴射剤放出弁および筒状噴射剤通路部分を備えたステム,
2aは当該噴射剤放出弁を構成する噴射剤通過用の孔部,
2bは当該孔部との接離作用により噴射剤放出弁として作用するステムガスケット,
を示している。
【0026】
3は噴射剤容器1の開口側外周面の凹状部に嵌合し、かつ、ステム2に保持されて当該ステムからその下流側に続く筒状の噴射剤通路域を備えたアクチュエータ,
3aはステム2の上端側部分と係合して保持される縦鞘状部,
3bは当該縦鞘状部からその下流側に続く筒状部材であって、作動モードおよび静止モード間の切り換わりに際しいわば撓る態様で変位する(図3参照)横通路部,
3cは噴射剤容器1に保持されて一部が当該横筒状部と連続している縦筒状部,
3dは当該縦筒状部の内周面下端側に形成されてマウンティングキャップ1aの下端部分と当接した状態の環突状部,
3eは縦筒状部3cの内側周方向の一部に形成された段状天面部分,
3fは縦筒状部3cの内周面に複数形成されてマウンティングキャップ1aの上端部分と当接するリブ,
3gは後述のジョイント7の外側横筒状部7aと嵌合した筒状の結合部,
3hは当該結合部の内周面に形成された嵌合用の環突状部,
3jは縦筒状部3cの前側上部分に形成されてその中を介して後述のニードル8が前後方向に移動する孔部,
3kは当該孔部の回りの縦筒状部外周面に形成された内側起立部と外側起立部との間からなる環状部分であって後述のジョイント7の内側横筒状部7dと結合する環溝状部,
をそれぞれ示している。
【0027】
4は利用者の押下げ操作(図2,図3参照)に基づき、縦鞘状部3aの上面部分と当接しながら、アクチュエータ3の段状天面部分3eとの係合箇所を軸にする形で図示時計方向に回動して、静止モードのステム2および後述のニードル8をそれぞれ作動モード位置に移行させる機能を備えたボタン,
4aは縦鞘状部3aの上面部分と当接する突状部,
4bは当該ボタンの前側周面部分に形成されて後述のニードル8の環凹状部8dを跨ぐ形でこれと係合する逆U字状の上側切欠状部,
4cは当該上側切欠状部の下方に続き、これより幅広であってアクチュエータ3の横通路部3bを跨ぐ形に設定された下側切欠状部,
4dは当該下側切欠状部の下端域の各横側にそこから外延する態様で形成されて作動モード設定操作の際、アクチュエータ3の段状天面部分3eに係合して当該ボタンの回動中心となる一対のフック状部,
4eはアクチュエータ3の縦鞘状部3aの外周面部分を挟み込む平行な態様(図5参照)で当該ボタンの天面部分および後側内周面部分からそれぞれ延びて、当該ボタンの当該縦鞘状部に対する(図1の面と直交する方向への)傾きや位置ずれを防止するための一対の垂下板状リブ,
をそれぞれ示している。
【0028】
5は放出対象物である後述の各種内容物(原液)が収納されている内容物容器,
5aは当該内容物容器の開口筒状部,
5bは当該開口筒状部の外周面に形成されて後述のジョイント7の容器保持部7tと係合する突状の被保持部,
5cは当該被保持部の上方(開口筒状部の外周面)に形成されて後述の取外し用操作部7rの図示時計方向への回動を許容するための窪み状部分,
5dは開口筒状部5aの下方に続き、当該内容物容器が噴射剤容器1と一体化されたときに当該噴射剤容器の外周面の一部と合致する曲面部分と、当該曲面部分の周方向両端部から「くの字状」の横断面の形で延びる面部分と、を備えた周面形状からなる胴部(図4,図5参照),
をそれぞれ示している。
【0029】
6は噴射剤の放出にともなうベンチュリー作用によって吸引される原液が通過するチューブ,
を示している。
【0030】
7は噴射剤容器1と内容物容器5とを一体化させるための結合部材であって噴射剤,内容物および外気の各通路域を個別に設定するジョイント,
7aは噴射剤の通路域構成要素として作用する外側横筒状部,
7bは当該外側横筒状部の後側外周面に形成されてアクチュエータ3の環突状部3hと嵌合した状態の環状段部,
7cは外側横筒状部7aの内周面に形成されて後述のノズルピース12の環凸状部12dと嵌合した状態の環凹状部,
7dは噴射剤および外気の通路域構成要素として作用する内側横筒状部,
7eは当該内側横筒状部の少なくとも下側内周面の後部分に形成されて作動モード(図3参照)の外気流入用通路域を構成する溝状部,
7fは内側横筒状部7dの出力側(前部分)に形成された筒状出力部,
7gは当該筒状出力部の流入口であって噴射剤放出弁を構成する開口内縁部分,
7hは筒状出力部7fの前端側であって内容物の放出口として作用する小径開口部,
7jは筒状出力部7fの前側外周面を構成するテーパ面,
7kは内側横筒状部7dの周面部分から下方に延びてチューブ6にいたる内容物流出用の縦筒状部,
7mは内側横筒状部7dの周面部分から下方に延びて内容物容器5の空間域にいたる外気流入用の縦筒状部,
7nは内容物容器5を着脱自在な形で保持する環状保持部,
7pは当該環状保持部を構成する外側垂下部分,
7qは当該外側垂下部分の前側外周面部分に形成された切欠状部,
7rは当該切欠状部に配設されて利用者が内容物容器5の取付け,取外しを行う際に用いる取外し用操作部,
7sは当該取外し用操作部の表面上側に形成された凸状の操作対象部分,
7tは当該取外し用操作部の裏面下側に形成されて内容物容器5の被保持部5bと係合する容器保持部,
7uは取外し用操作部7rに対する図示反時計方向の弾性付勢力を備えた性状のものであって、当該取外し用操作部と外側垂下部分7pとを連結する接続片部,
7vはテーパ面7jから続く開口端側の直立筒状外周面,
をそれぞれ示している。
【0031】
8はジョイント7(内側横筒状部7d)の内部に配設されて当該内側横筒状部との間に内容物容器5への外気流入用通路域を画定し、また、内容物放出弁および外気流入弁として作用する鞘状のニードル,
8aは前端側に形成されてジョイント7の開口内縁部分7gとの間で噴射剤放出弁を構成するテーパ面,
8bは当該テーパ面より後側の外周面部分に形成されて後述のOリング10の取付け部として作用する前側環溝状部,
8cは当該前側環溝状部より後側の外周面部分に形成されて後述のOリング11の取付け部として作用する後側環溝状部,
8dはアクチュエータ3の縦筒状部3cの内側空間域に露出する外周面部分に形成されてボタン4の上側切欠状部4bの保持部として作用する環凹状部,
をそれぞれ示している。
【0032】
9はアクチュエータ3の縦筒状部3cとニードル8との各段部間に配設されて内容物放出弁および外気流入弁を閉状態に設定する、すなわち当該ニードルを前方向に付勢するためのコイルスプリング,
を示している。
【0033】
10はニードル8の前側環溝状部8bに取り付けられてジョイント7の内側横筒状部7dの内周面とのシール作用を呈するOリング,
11はニードル8の後側環溝状部8cに取り付けられてジョイント7の内側横筒状部7dの内周面とのシール作用(静止モード)および、溝状部7eとの間の外気流入弁作用を呈するOリング,
をそれぞれ示している。
【0034】
12はジョイント7の外側横筒状部7aの開口部分に取り付けられて当該ジョイントの内側横筒状部7dの前側部分との間に外部空間への噴射剤通路域を画定する筒状のノズルピース,
12aはジョイント7の出力側の小径開口部7hを取り囲む態様で当該開口部の前方に設定された噴射剤放出用および内容物放出用の大径開口部,
12bはジョイント7のテーパ面7jおよび直立筒状外周面7vと対向する形で設定されたコーン状の前側内周面,
12cは当該前側内周面に続く後側内周面に複数形成された横方向のリブ状部,
12dはジョイント7の環凹状部7cと嵌合した状態の環凸状部,
をそれぞれ示している。
【0035】
Aは噴射剤容器1からノズルピース12の大径開口部12aまでの噴射剤の流れ,
Bは外部空間への噴射剤流出にともなうベンチュリー作用によって内容物容器5からチューブ6経由で吸引される内容物の小径開口部7hまでの流れ,
Cは周辺境界部分がいわばラッパ状(スカート状)の形となって大径開口部12aから外部空間に放出される噴射剤の流れ,
Dは噴射剤の流れCに包み込まれるような混在状態となって、細かなキリ状態で外部空間に放出される内容物の流れ、
Eは外部空間への内容物流出にともなって内容物容器5に供給される外気の流れ,
をそれぞれ示している。
【0036】
上述のステム2,アクチュエータ3,ボタン4,内容物容器5,チューブ6,ジョイント7,ニードル8,ノズルピース12はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂製のものであり、所定の可撓性(弾性)を備えている。
【0037】
また、噴射剤容器1は金属製のものであり、コイルスプリング9は金属製や合成樹脂製のものであり,Oリング10,11はゴム製や合成樹脂製のものである,
【0038】
図示の内容物噴射用ベンチュリー機構の基本的特徴は、
(11)ステム2の噴射剤放出弁,ジョイント7の開口内縁部分7gとニードル8のテーパ面8aからなる内容物放出弁および、ジョイント7の溝状部7eなどとOリング11からなる外気流入弁のそれぞれが、ボタン4の作動モードの設定操作(およびこれに基づくニードル8の後方への移動)によって静止モードの閉状態から開状態に移行し、また、当該設定操作の解除によってこれら各弁が閉状態に復帰し、
(12)内容物が、ジョイント7の小径開口部7hの周りから放出される噴射剤の流れCに包み込まれるような形になって、細かなキリ状態で放出され、
(13)ジョイント7の取外し用操作部7rの押圧回動操作により内容物容器5を当該ジョイントから簡単に取外して、当該容器に内容物を補充し、また当該容器を他の内容物容器と交換したりできる、
ことなどである。
【0039】
なお、噴射剤容器1に収納された液ガスの圧力は「1.0kgf/cm2〜2.0kgf/cm2」といった程度の低圧である。
【0040】
図1の静止モードでは、ステムは例えば周知のコイルスプリング(図示省略)の弾性作用によって上方向に付勢され、また、ニードル8はコイルスプリング9によって前方向に付勢されている。
【0041】
その結果、ステム2の孔部2aとステムガスケット2bとからなる噴射剤放出弁,ジョイント7の開口内縁部分7gとニードル8のテーパ面8aとからなる内容物放出弁および、ジョイント7の溝状部7eなどとOリング11とからなる外気流入弁は、いずれも閉状態となっている。
【0042】
そしてボタン4はいわばフリーの状態でアクチュエータ3およびニードル8に保持されている。すなわち、突状部4aが縦鞘状部3aの上面部分に当接し、上側切欠状部4bの上近傍の内周面部分が環凹状部8dとその後側外周面との境界縁域に当接し、下側切欠状部4cの両側(フック状部材4dの上方の脚部分)の外面部分が縦筒状部3cと段状天面部分3eとの境界縁域に当接している。
【0043】
静止モードのボタン4が図2の矢印方向に押圧されると、当該ボタンは、先ずその突状部4aでステム2を押しげながら、当該突状部と縦鞘状部3a(上面部分)との当接部分を中心にして図示時計方向に回動する。
【0044】
このボタン4の回動にともなって、環凹状部8dが上側切欠状部4bの近傍内周面にいわば係止された状態のニードル8はコイルスプリング9の弾性付勢力に抗する形で後方にスライドし、また、一対のフック状部4dがアクチュエータ3の段状天面部分3eに当接して、その後はこの当接部分がボタン4の回動中心となる(図2参照)。
【0045】
そしてボタン4が図2の状態からさらに図示時計方向に回動することにより、ステム2は下方に移動し、かつ、ニードル8は環凹状部8dと上側切欠状部4bとの係止作用で後方にさらに移動する。このステム2およびニードル8の移動によって、内容物噴射用ベンチュリー機構は図3の作動モードに移行する。
【0046】
ここでステム2の下方への移動に際しては、アクチュエータ3の横通路部3bがその弾性に抗する態様で図3のように変形する。すなわち横通路部3bの縦鞘状部側が下方に変位した形になっている。
【0047】
なお、ボタン4の回動にともない、ニードル8の環凹状部8dが係止される上側切欠状部4bの近傍内周面は初期(静止モード)の上近傍域から横近傍域へと変化していく。
【0048】
図3の作動モードでは、
(21)ステム2の孔部2aがステムラバー2bから離間し、
(22)ニードル8のテーパ面8aがジョイント7の開口内縁部分7gから離間し、
(23)Oリング11がジョイント7の溝状部7eの部分に移動した、
状態になっている。
【0049】
すなわち、噴射剤放出弁,内容物放出弁および外気流入弁のそれぞれが静止モードの閉状態から開状態へと切り換わる。
【0050】
ここで、噴射剤放出弁が開くことにより先ず噴射剤容器2の噴射剤(液化ガス)が流れAのルートでノズルピース12の大径開口部12aへと流れて気化ガスの形で外部空間に放出される。
【0051】
噴射剤は、ジョイント7のテーパ面7jおよび直立筒状外周面7vと、ノズルピース12の前側内周面12bとの間の環状空間域を通過して、高速ガス流の形で放出される。
【0052】
そして、このテーパ面7jおよび直立筒状外周面7vに沿った形の環状空間域は滑り台状の断面を有しているので、外部空間へ放出される噴射剤の全体流はいわばラッパ状(スカート状)の流れ(高速ガス流)Cとなる。
【0053】
この高速ガス流Cの発生により、当該ガス流が通過する部分が内容物容器5の内部空間よりも負圧化される。すなわち、内容物の放出口であるジョイント7の小径開口部7hの近傍部分が高速ガス流Cにともなうベンチュリー作用によって負圧化される。
【0054】
その結果、内容物容器5の内容物は流れBの経路により小径開口部7hへと吸引されて外部空間に放出される。外部空間での内容物(流れD)は、噴射剤の流れCに包み込まれるような形の細かなキリ状態になっている。
【0055】
内容物容器5の内容物が外部空間に放出されるのに応じて、流れEの経路で外気が当該容器内部に流入する。この外気流入により内容物容器5の負圧化を防止している。
【0056】
ボタン4に対する押下げ操作が終わると、ステム2は周知のコイルスプリング(図示省略)の弾性作用により上方に復帰し、また、ニードル8はコイルスプリング9の弾性作用により前方に復帰する。すなわち噴射剤放出弁,内容物放出弁および外気流入弁のそれぞれが閉状態に移行した、図1の作動モードに復帰する。
【0057】
アクチュエータ3,ボタン4,ジョイント7,ニードル8,コイルスプリング9,Oリング10,11およびノズルピース12を一体化するには、例えば、
(31)ジョイント7の外側横筒状部7aにノズルピース12を取り付け、
(32)ニードル8の前側環溝状部8bにOリング10を、後側環溝状部8cにOリング11をそれぞれ取り付け、
(33)このOリング10,11が取り付けられたニードル8と、コイルスプリング9をジョイント7の内側横筒状部7bの中に入れ、
(34)このニードル8などが入れられたジョイント7をアクチュエータ3の結合部3gおよび環溝状部3kに取り付け、
(35)このジョイント7がアクチュエータ3に取り付けられた後、ボタン4を、その上側切欠状部4bおよび下側切欠状部4cの部分が縦筒状部3cの前側内周面(段状天面部分3eの上方に続く平面部分:図5参照)に強く押し付けられながら環凹状部8dや横通路部3bを跨ぐ形で、ニードル8の露出部分の上方から入れていく。
【0058】
なお、上記(35)においてボタン4のフック状部4dは、全体がその弾性に抗する形で図示反時計方向に変形しながら縦筒状部3cの前側内周面(段状天面部分3eの上方に続く平面部分)に沿って下動する。当該前側内周面を通過したフック状部4dは図示の初期状態に復帰する。
【0059】
内容物容器5は、ジョイント7に対し、開口筒状部5aと環状保持部7nとが着脱自在な態様で取り付けられている。
【0060】
図示の取付け状態では、環状保持部7nの一部を構成する取外し用操作部7rの容器保持部7tが開口筒状部5aの被保持部5bと係合している。
【0061】
このとき、内容物容器5の胴部5dで取外し用操作部7rの反対側曲面部分(=横断面が「くの字状」でない部分)の上端側を除く部分の略全体が噴射剤容器1の外周面に当接する。そのため容器内容物5は、ぐらつくことなしに、ジョイント7の環状保持部7nに安定的に保持される。
【0062】
内容物容器5をジョイント7の環状保持部7nから取り外すにはその操作対象部分7sを押圧すればよい。この押圧操作にともなって取外し用操作部7rが接続片部7uを中心に図示時計方向に回動し、当該取外し用操作部の容器保持部7tと開口筒状部5aの被保持部5bとの係合状態が解除される。この解除を継続したまま内容物容器5を下方に引けば、当該容器はジョイント7から取り外される。
【0063】
なお、操作対象部分7sを押圧することにより接続片部7uが自らの弾性力に抗する形でいわばよじれていき、当該押圧操作を止めると当該接続片部(およびこれと一体の取外し用操作部7r)は図示の初期状態に弾性復帰する。
【0064】
また、内容物容器5をジョイント7に取り付ける場合には、取外し用操作部7rは押圧することなくそのままにして、当該内容物容器を下方から環状保持部7nに入れていけばよい。
【0065】
このときジョイント7の取外し用操作部7rは、被保持部5bの上側斜面部分と容器保持部7tとの当接作用によりいったん時計方向に(接続片部7uの弾性に抗する形で)回動して当該被保持部が通過できるようにし、かつ、この通過後に接続片部7uの弾性作用で初期状態に復帰して内容物容器5の被保持部5bと図示のように係合する。
【0066】
本発明が、図示のキャップ構造に限定されないことは勿論であって例えば、
(41)ジョイント7の直立筒状外周面7vを省略する、
(42)内容物容器5としてその横断面が円形状のものを用いる、
ようにしてもよい。
【0067】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0068】
内容物容器に収納される内容物としては、液状,クリーム状,ゲル状など種々のものを用いる。内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0069】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。
例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロースや、これらの混合物などを用いる。
【0070】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0071】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0072】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0073】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0074】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0075】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0076】
噴射剤としては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】内容物噴射用ベンチュリー機構の静止モードを示す説明図である。
【図2】ボタン押下げ操作の初期段階である作動開始状態を示す説明図である。
【図3】ボタン押下げ操作の定常段階(最終段階)である作動モードを示す説明図である。
【図4】内容物噴射用ベンチュリー機構の平面を示す説明図である。
【図5】内容物噴射用ベンチュリー機構の斜視図(一部断面)の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1:噴射剤容器
1a:マウンティングキャップ
2:ステム
2a:噴射剤通過用の孔部
2b:ステムガスケット
3:アクチュエータ
3a:縦鞘状部
3b:横通路部
3c:縦筒状部
3d:環突状部
3e:段状天面部分
3f:リブ
3g:筒状の結合部
3h:嵌合用の環突状部
3j:孔部
3k:環溝状部
4:ボタン
4a:突状部
4b:上側切欠状部
4c:下側切欠状部
4d:一対のフック状部
4e:一対の垂下板状リブ
5:内容物容器
5a:開口筒状部
5b:被保持部
5c:窪み状部分
5d:胴部
6:チューブ
7:ジョイント
7a:外側横筒状部
7b:環状段部
7c:環凹状部
7d:内側横筒状部
7e:溝状部
7f:筒状出力部
7g:開口内縁部分
7h:小径開口部
7j:テーパ面
7k:縦筒状部
7m:縦筒状部
7n:環状保持部
7p:外側垂下部分
7q:切欠状部
7r:取外し用操作部
7s:操作対象部分
7t:容器保持部
7u:接続片部
7v:直立筒状外周面
8:鞘状のニードル
8a:テーパ面
8b:前側環溝状部
8c:後側環溝状部
8d:環凹状部
9:コイルスプリング
10:Oリング
11:Oリング
12ノズルピース
12a:大径開口部
12b:コーン状の前側内周面
12c:横方向のリブ状部
12d:環凸状部
A:噴射剤の流れ
B:内容物の流れ,
C:外部空間に放出された噴射剤の流れ,
D:外部空間に放出された内容物の流れ、
E:流入外気の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出対象の内容物とその噴射剤とを別々に収納した内容物容器および噴射剤容器を一体化した状態で使用され、かつ、当該噴射剤容器の操作部の作動にともなって噴射剤放出弁が開くことにより噴射剤放出口から放出される噴射剤の流れに基づく吸引作用で、内容物容器の内容物が吸い上げられて内容物放出口から外部空間に放出される内容物噴射用ベンチュリー機構において、
前記噴射剤放出口を、前記内容物放出口の周りに位置する環状の態様で形成し、
前記内容物容器と前記内容物放出口との間の内容物通路に内容物放出弁を設け、
前記内容物容器と外部空間との間の外気通路に外気流入弁を設け、
前記操作部の作動に応じて前記内容物放出弁および前記外気流入弁を静止モードの閉状態から作動モードの開状態に移行させる弁制御部材を備えている、
ことを特徴とする内容物噴射用ベンチュリー機構。
【請求項2】
前記弁制御部材は、
前記操作部の作動モード設定操作と連動し、かつ、前記内容物放出弁の構成要素および前記外気流入弁の構成要素をそれぞれ備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物噴射用ベンチュリー機構。
【請求項3】
前記内容物容器および前記噴射剤容器を一体化する結合部材を備え、
前記結合部材の一部に、前記内容物容器の取外し用操作部を、当該内容物容器に対して係合保持するとともに当該係合保持の解除操作により当該内容物容器が下方へ取り出される状態に変位する形で設けた、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物噴射用ベンチュリー機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の内容物噴射用ベンチュリー機構を備え、かつ、前記内容物容器に内容物が収納され、前記噴射剤容器に噴射剤が収納されている、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−195790(P2009−195790A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38547(P2008−38547)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】