説明

内燃機関に用いられる、複数部分から成る冷却されるピストン

内燃機関に用いられる、複数部分から成る冷却されるピストン(1)であって、ピストン上側部分(2)と、ピストン下側部分(6)とから成っているピストン(1)が提案される。ピストン下側部分(6)が、ピストン上側部分(2)と一緒に、環状の内側のクーリングチャンネル(11)とを形成しており、この内側のクーリングチャンネル(11)は、ピストン下側部分(6)の上部の領域(31)により覆われている。この領域(31)が、肉薄に形成されているので、この領域(31)は皿ばね状に変形可能である。ピストン上側部分(2)をピストン下側部分(6)に簡単に迅速に組み付け、両ピストン部分の固い確実なねじ締結を得るためには、ピストン上側部分(2)の下面に、雌ねじ山(28)を有する、同心的でかつピストン軸線(25)に対して同軸的に配置された盲孔(26)が設けられており、ピストン下側部分(6)の上部の領域(31)に、雄ねじ山(30)を有する、同心的でかつピストン軸線(25)に対して同軸的に配置されかつ上方に向けられたねじ山付きピン(29)が設けられていて、前記雌ねじ山(28)が前記雄ねじ山(30)に適合するので、ピストン上側部分(2)が、盲孔(26)およびねじ山付きピン(29)を介して、ピストン下側部分(6)と螺合可能なようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の、内燃機関に用いられる、複数部分から成る冷却されるピストンであって、該ピストンが、リング部分を有する環状壁を備えたピストン上側部分と、2つのピンボスを有するボックス形のピストンスカートを備えたピストン下側部分とから成っており、ピストン下側部分が、ピストン上側部分と共に、環状の外側のクーリングチャンネルと、該外側のクーリングチャンネルに対して同心的に配置された環状の内側のクーリングチャンネルとを形成しており、内側のクーリングチャンネルが、ピストン下側部分の上部の領域により覆われていて、該領域が皿ばね状に変形可能となるように、該領域が、肉薄に形成されている形式のものに関する。
【0002】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10257022号明細書から、内燃機関に用いられる、複数部分から成る冷却されるピストンが公知である。このピストンは、ピストン上側部分とピストン下側部分とから成っている。ピストン上側部分の下面には、ボルト状のねじ山付きピンが配置されていて、ピストン下側部分の上部の領域には、ねじ山付き穴が設けられているので、上下両ピストン部分は、ねじ山付きピンとねじ山付き穴とを介して互いに螺合可能である。この場合、ピストン下側部分の上部の領域は肉薄に形成されていて、この上部の領域がピストン上側部分とピストン下側部分との螺合時に皿ばね状に変形するようになっているので、ねじ山付きピンとねじ山付き穴とにはプリロード(予荷重)がかけられ、このプリロードは、これにより形成されたねじ締結を強固にし、確実なものにする。この場合に不都合となるのは、ピストン下側部分の上部の領域の変形時に、ねじ山付き穴の近傍に応力に基づいた亀裂が発生する恐れがあることである。この亀裂によってねじ締結は解離され、ピストンの損傷、ひいてはこのピストンが組み込まれているエンジンの損傷を招く恐れがある。
【0003】
上記公知先行技術から出発して、本発明の根底を成す課題は、公知先行技術の上記欠点を排除することである。本発明の課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴、つまりピストン上側部分の下面に、雌ねじ山を備えた、同心的でかつピストン軸線に対して同軸的に配置された盲孔が設けられており、ピストン下側部分の前記上部の領域が、雄ねじ山を備えた、同心的でかつピストン軸線に対して同軸的に配置されかつ上方に向けられたねじ山付きピンを有しており、前記雌ねじ山が、前記雄ねじ山に螺合して、ピストン上側部分が、盲孔とねじ山付きピンとを介してピストン下側部分にねじ締結可能であることによって解決される。
【0004】
ピストン下側部分の皿ばね状に変形可能な肉薄の領域に、ねじ山付きピンが一体成形されていることにより、ピストンの組立て時に、かつこれに伴う、ピストンヘッドの方向に向かう前記領域の変形時に、この際に発生する周方向引張り応力(Zugumfangsspannungen)が低減される。これによってこの領域における応力もしくは歪みに基づいた亀裂は十分に阻止される。
【0005】
以下に本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明によるピストンの2つの半部から成る断面図であって、左半部はピストンピンに平行な方向で見たピストンの半断面図であり、右半部はスラスト−反スラスト方向で見たピストンの半断面図である。
【0007】
図1には、複数部分から成る冷却されるピストン1が示されている。このピストン1は、ピストン上側部分2と、ピストン下側部分6とから成っている。ピストン上側部分2は、燃焼キャビティ3と、リング部分5を有する環状壁4とを備えていて、ピストン下側部分6は、ボックス形のピストンスカート7と、該ピストンスカート7に結合された2つのピンボス8とを備えている。両ピンボス8は、ピストンピン(図示せず)を収容するためのそれぞれ1つのピン孔9を有している。ピストン上側部分2とピストン下側部分6とは、環状の外側の冷却通路もしくはクーリングチャンネル10と、この外側のクーリングチャンネル10に対して同心的に配置された内側のクーリングチャンネル11とを画定している。外側のクーリングチャンネル10は、冷却オイルを導入するための少なくとも1つの流入開口12を有していて、少なくとも1つのオーバフローチャンネル13を介して内側のクーリングチャンネル11に接続されている。オーバフローチャンネル13は、孔として形成されていてよい。内側のクーリングチャンネル11は、少なくとも1つの流出孔14を有していて、冷却オイルは、この流出孔14を介して内側のクーリングチャンネル11から流出することができる。ピストン上側部分2とピストン下側部分6とは、スチールから製造することができる。
【0008】
ピストン上側部分2は、第1にその下面に配置された環状の載置面15を介して、ピストン下側部分6に設けられた環状の支持リブ17の上部の載置面16上に支承され、第2に環状壁4の下面に位置する横断面18を介して、ピストン下側部分6に設けられた環状の支持ウェブ20の上部の横断面19上に支承されている。この場合、両載置面15,16は、平坦でかつ水平に配置されているか、もしくはルーフ形または皿形に形成された1つの内側の載置部21を形成し、両横断面18,19は、内側の載置部21に対して同軸的に配置されかつ水平に位置しているか、もしくは同じくルーフ形または皿形に形成された1つの外側の載置部22を形成している。
【0009】
支持ウェブ20は、断面で見て、半径方向内方かつ上方に向けられた段部として形成されているので、ピストン上側部分2は、環状壁4の下端部の内面に設けられた、支持ウェブ20に対して相補的に成形された切欠き23を介して、ピストン下側部分6に対してセンタリングされ得る。このことは、ピストン上側部分2の環状壁4の切欠き23が、ピストン下側部分6の支持ウェブ20に被せ嵌められることによって行われる。この場合、切欠き23の内径は、ピストン下側部分6へのピストン上側部分2の問題のない組付け装着が保証されるようにするために、支持ウェブ20の円筒形の端面24の外径よりも、規定の公差寸法だけ大きく形成されることが必要である。
【0010】
ピストン上側部分2の下面は、同心的でかつピストン軸線25に対して同軸的に配置された盲孔26を有している。この盲孔26は、雌ねじ山28を有している。ピストン上側部分2と一緒に内側のクーリングチャンネル11を画定している、ピストン下側部分6の環状の支持リブ17の間の領域31は、比較的肉薄に形成されており、その真ん中に、ピストン軸線25に対して同軸的に配置されかつ上方に向けられたねじ山付きピン29を備えている。このねじ山付きピン29の上端部27は雄ねじ山30を有していて、この雄ねじ山30は、盲孔26の雌ねじ山28に螺合する。
【0011】
ピストン1の組立て時では、ピストン上側部分2が、切欠き23と支持ウェブ20とを介してピストン下側部分6に対してセンタリングされ、次いでピストン軸線25を中心にして回転させられ、このとき盲孔26が、ねじ山付きピン29に被さって螺合される。この場合、比較的肉薄の領域31の弾性により、この領域31はピストン上側部分2とピストン下側部分6との螺合時に皿ばねのように変形する、つまり領域31の、ねじ山付きピン29を備えた内側の中心部が、ピストン上側部分2に向かって膨出するようになる。組立て時に、ねじ山付きピン29のねじ山なしの軸部32に加えられた引っ張り応力は付加的に、軸部29の弾性的な伸長をも生ぜしめる。領域31の変形も、ねじ山付きピン29の軸部32の変形も、ねじ締結部(28,30)にプリロード(予荷重)を加える。このプリロードは、特にエンジン作動時にピストン上側部分2とピストン下側部分6との間の固いねじ締結を保証する。
【符号の説明】
【0012】
1 ピストン
2 ピストン上側部分
3 燃焼キャビティ
4 環状壁
5 リング部分
6 ピストン下側部分
7 ピストンスカート
8 ピンボス
9 ピン孔
10 外側のクーリングチャンネル
11 内側のクーリングチャンネル
12 流入開口
13 オーバフローチャンネル、孔
14 流出孔
15 ピストン上側部分2の載置面
16 ピストン下側部分6の載置面
17 支持リブ
18 ピストン上側部分2の横断面
19 ピストン下側部分6の横断面
20 支持ウェブ
21 内側の載置部
22 外側の載置部
23 環状壁4の切欠き
24 支持ウェブ20の端面
25 ピストン軸線
26 盲孔
27 ねじ山付きピン29の端部
28 盲孔26の雌ねじ山
29 ねじ山付きピン
30 ねじ山付きピン29の雄ねじ山
31 支持リブ17の間の領域
32 ねじ山付きピン29の軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に用いられる、複数部分から成る冷却されるピストン(1)であって、該ピストン(1)が、リング部分(5)を有する環状壁(4)を備えたピストン上側部分(2)と、2つのピンボス(8)を有するボックス形のピストンスカート(7)を備えたピストン下側部分(6)とから成っており、ピストン下側部分(6)が、ピストン上側部分(2)と共に、環状の外側のクーリングチャンネル(10)と、該外側のクーリングチャンネル(10)に対して同心的に配置された環状の内側のクーリングチャンネル(11)とを形成しており、内側のクーリングチャンネル(11)が、ピストン下側部分(6)の上部の領域(31)により覆われていて、該領域(31)が皿ばね状に変形可能となるように、該領域(31)が、肉薄に形成されている形式のものにおいて、
ピストン上側部分(2)の下面に、雌ねじ山(28)を備えた、同心的でかつピストン軸線(25)に対して同軸的に配置された盲孔(26)が設けられており、ピストン下側部分(6)の前記上部の領域(31)が、雄ねじ山(30)を備えた、同心的でかつピストン軸線(25)に対して同軸的に配置されかつ上方に向けられたねじ山付きピン(29)を有しており、前記雌ねじ山(28)が、前記雄ねじ山(30)に螺合して、ピストン上側部分(2)が、盲孔(26)とねじ山付きピン(29)とを介してピストン下側部分(6)にねじ締結可能であることを特徴とする、複数部分から成る冷却されるピストン。

【図1】
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【公表番号】特表2009−540201(P2009−540201A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514633(P2009−514633)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/DE2007/001015
【国際公開番号】WO2007/143969
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(506292974)マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26−46, D−70376 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】