説明

内燃機関のためのオイルパン

【課題】内燃機関のための、隔壁を備えたオイルパンを改良して、隔壁に配置されているフラップのシール機能が改良されている、内燃機関のためのオイルパンを提供する。
【解決手段】保持装置(6)にフラップ(4)を設けるために、該フラップ(4)に複数の取付け開口(7)が設けられており、該取付け開口(7)が種々異なる横断面を有しているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のためのオイルパンであって、オイルパン内においてオイル吸込み室が、複数の貫通開口と少なくとも1つのフラップとを備えた隔壁を配置することにより形成されており、隔壁に少なくとも1つの保持装置が設けられており、保持装置にフラップが支承されており、且つ/又は取り付けられている、内燃機関のためのオイルパンに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の内燃機関の運転時にはオイルパンの内側にオイル隔離ケースが設けられている。オイル隔離ケースにおいてフラップにより制御される開口を介して、潤滑油がオイル吸込み室内に侵入する前に、内燃機関の内部の使用個所から戻し案内された潤滑油は、一般的にはオイル吸込み室の外側の領域に戻し案内される。
【0003】
DE10139709A1においてオイルパンが公知となっており、このオイルパンでは2つのオイル隔壁がオイルパン内に挿入されている。この構成において、2つのオイル隔壁にはそれぞれ2つの窓状の貫通孔が備え付けられている。2つの窓状の貫通孔は、それぞれ逆止弁として機能する2つの流れフラップにより制御されている。オイル隔壁に流れフラップを取り付けるために、取付け保持ピンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE10139709A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的にオイルパンの内側でのオイル隔離ケースの機能のために、フラップはエラストマ材料から製造されている。フラップは潤滑油との常時接触の結果、拡幅される。従ってこの種のフラップのシール機能は膨張性に基づきもはや保証されていない。このような膨張過程においてフラップは全方向に伸長するので、この種のフラップのシール機能を損なうフラップの撓みが生じる。
【0006】
従って本発明の課題は、内燃機関のための、隔壁を備えたオイルパンを改良して、隔壁に配置されているフラップのシール機能を改良する、内燃機関のためのオイルパンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る内燃機関のためのオイルパンは、保持装置にフラップを設けるために、フラップに複数の取付け開口が設けられており、取付け開口が種々異なる横断面を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るオイルパンは、好ましくは、複数の取付け開口が並列に配置されており、少なくとも1つの中央に配置された取付け開口が、少なくとも1つの残りの取付け開口の横断面より小さな横断面を有している。
【0009】
好ましくは、中央に配置された取付け開口から離間された少なくとも1つの取付け開口が、長孔として形成されている。
【0010】
好ましくは、中央に配置された取付け開口から離間されている複数の取付け開口が、種々異なる長さを有する長孔として形成されている。
【0011】
好ましくは、保持装置が当付け区分を有しており、当付け区分にフラップが支承されており、取付け開口の横断面が当付け区分の横断面よりも大きく寸法設定されている。
【0012】
好ましくは、保持装置が当付け区分の端部に保持区分を有しており、隔壁に対する保持区分の離間量が、フラップの厚さよりも大きく寸法設定されている。
【0013】
好ましくは、隔壁に沿って複数の保持装置が設けられており、保持装置の保持区分が種々異なる横断面を有している。
【0014】
好ましくは、保持装置が隔壁と一体に形成されている。
【発明の効果】
【0015】
取付け開口の種々異なる大きさにより、潤滑油内でのフラップ材料の膨張性に基づくフラップの伸長に対抗する作用がもたらされる。有利には、フラップはエラストマ材料から製造されている。取付け開口の種々異なる横断面によって遊び補償が行われる。これにより保持装置の内側もしくは保持装置同士間における圧潰が起こることなく、フラップはエラストマ材料の膨張性に基づき各方向に拡幅することができる。フラップのこの種の圧潰は撓みに繋がる。撓みは貫通開口におけるフラップのシール機能の悪化に繋がる。
【0016】
本発明の一構成において、取付け開口は並列して配置されている。この構成では中央に配置された少なくとも1つの取付け開口は、少なくとも1つの残りの取付け開口の横断面よりも小さな横断面を有している。つまり、中央に配置された取付け開口の横断面は、複数の残りの取付け開口の横断面よりも少なくとも小さく寸法設定されている。本発明によれば、中央に配置された開口は所定の横断面を有していて、所定の横断面は、この所定の横断面に対して設けられている当付け区分の横断面にほぼ対応しているので、フラップの位置におけるフラップのセンタリングは保証されている。つまりフラップはエラストマ材料に起こる膨張過程に基づきフラップの中央の領域から出発して拡幅される。従って水平方向における撓みは回避される。なぜならば複数の開口は前記水平方向において、保持装置の横断面もしくは厚さよりも大きいからである。
【0017】
本発明の別の構成において、中央に配置された取付け開口から離間されている少なくとも1つの取付け開口は長孔状に形成されている。従ってフラップは撓むことなく横方向もしくは水平方向において拡幅できる。これによりフラップは膨張過程においても隔壁に接触している。
【0018】
本発明の更に別の有利な構成では、中央に配置された取付け開口から離間されている取付け開口は、種々異なる長さを有する長孔として形成されている。本発明による構成によって、適切な遊び補償を水平方向において最適に行うことができ、その結果、エラストマ材料の膨張性にもかかわらず、隔離ケース内におけるフラップのシール機能は保証されている。
【0019】
本発明の更に別の構成では、保持装置は当付け区分を有している。当付け区分においてフラップは支承されているか、もしくは当付けられている。この構成では取付け開口の横断面は当付け区分の横断面よりも大きく、つまり当付け区分は、取付け開口の横断面よりも小さな横断面を備えている。有利には、当付け区分の厚さもしくは直径は、取付け開口の厚さ又は最小の直径よりも小さい。保持装置もしくはフラップの取付け開口の本発明に基づく構成により、フラップもしくはエラストマ材料のあらゆる膨張過程時に適切な遊び補償が行われる。
【0020】
本発明の更に別の構成では、保持装置は当付け区分の端部に保持区分を有している。隔壁に対する保持区分の離間量はフラップの厚さよりも大きい。有利には、隔壁に沿って複数の保持装置が設けられている。複数の保持装置の保持区分は種々異なる横断面を有している。保持装置の上記構成によって、フラップと複数の保持装置との持続的な接触が内燃機関の運転中に保証されることが確保される。
【0021】
本発明の更に別の構成によれば、保持装置は隔壁と一体に形成されている。これにより、特に隔壁がプラッスチックから製造されている場合、隔壁内に保持装置を組み込むことができるので、隔離ケースの廉価な製造が可能になる。
【0022】
上記特徴及び以下で更に説明する特徴は、本発明の枠を越えずに、それぞれ上記組合せにおいてだけでなく、別の組合せ又は単独で使用可能であると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】内燃機関のための、隔離ケースを備えたオイルパンの斜視図である。
【図2】図1の隔離ケースの斜視図である。
【図3】図3aは隔壁に設けられているフラップの概略図であり、図3bは図3a記載のフラップの取付け開口の拡大図である。
【図4】図4aは保持装置を備えた隔壁の側面図であり、図4bは図4a記載の保持装置の拡大図である。
【図5】図4bの保持装置を詳細に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1に記載されたオイルパン1は内燃機関の下側に配置されている。オイルパン1内で内燃機関の運転中に潤滑油は戻し案内されるか、もしくはオイルパン1において溜められる。内燃機関の内部の特定の使用個所の潤滑は潤滑油により行われる。潤滑油はオイルポンプ(図示せず)によってオイル通路(図示せず)を介して潤滑個所に供給される。内燃機関の運転中に潤滑油はオイルパン1の中央の領域10から吸込み口(図示せず)により吸い込まれる。潤滑油は内燃機関の内部において対応するオイル管路を介して分配される。
【0026】
本実施の形態では、オイルパン1の内側に隔離ケース2が配置されている。隔離ケース2によってオイルパン1は3つの領域に分割されている。外側の両縁領域もしくはオイル溜め室11内に、通常オイルパン1における潤滑油は戻る。潤滑油は部分的にシリンダヘッドもしくはクランクケーシングにおける特定の領域からオイルパン1へと戻し案内される。本実施の形態ではオイル吸込み室10と呼ばれているオイルパン1の中央の領域は、隔離ケース2により画成もしくは規定されている。隔離ケース2は少なくとも2つの隔壁5から形成されている。2つの隔壁5には貫通開口3と、少なくとも1つのフラップ4とが備え付けられている。本実施の形態において2つの隔壁5は2つの結合区分12により互いに結合されている。オイル侵入はフラップ4により制御される。従って、フラップ4は逆止弁として機能するので、オイル溜め室11からオイル吸込み室10へのオイル侵入は可能であり、オイル吸込み室10からオイル溜め室11へのオイル侵入は可能ではない。つまり潤滑油の流れはフラップ4の配置により一方向でのみ可能となるので、例えばカーブ走行中における、オイル吸込み室10からオイル溜め室11への潤滑油の流入は妨げられる。これにより隔離ケース2の内側では、内燃機関のあらゆる走行状態においてオイル吸込み口に十分に潤滑油が留まっている。従ってオイルポンプによる空気の吸込みは防止される。
【0027】
有利には、フラップ4はエラストマ材料から製造されている。エラストマ材料は内燃機関の運転中に潤滑油との常時接触により伸長する、もしくは膨張傾向にある。本発明によれば、エラストマ材料の膨張性に基づくフラップ4のシール機能を保証するために、フラップ4の取付け開口3に特別な構成が設けられている。図2及び図4bによれば、フラップ4の取付けのために隔壁5に保持装置6が配置されている。保持装置6は、ピン、コネクタピン又は保持ピンの形式において構成されている。本発明の意図では、保持装置6は隔壁5に設けることができるか、又は隔壁5に一体に形成することができる。
【0028】
図4bもしくは図5に示すように保持装置6は当付け区分8と保持区分9とを有している。当付け区分8にフラップ4が支承されている。フラップ4は保持区分9により内燃機関の運転中に保持装置6に取り付けられたままとなる。図3aに示されているように、フラップ4における取付け開口7は種々異なる横断面を備えている。この場合、中央に配置された取付け開口7は他の取付け開口7よりも小さな横断面を有しているので、これによってフラップ4の位置におけるフラップ4のセンタリングは保証されている。取付け開口7の種々異なる横断面は、エラストマ材料の膨張に対するために水平方向Zにおける遊び補償をもたらす。つまり、水平方向Zにおけるフラップ4の撓みの回避のために、フラップ4における開口7は水平方向Zにおいて、当付け区分8の横断面もしくは厚さよりも広幅であるように形成されている。従ってフラップ4は撓みを被ることなく水平方向Zにおいて拡幅できる。この場合、本発明によれば隔壁5におけるフラップ4のセンタリングのために、中央に配置された取付け開口7には最小の横断面が備え付けられている。
【0029】
フラップ4における取付け開口7は種々異なる横断面を備えているので、保持区分9はフラップ4を定位置に保持するために、適切に種々異なった大きさで構成されている。従って比較的大きな取付け開口7に対して、より大きな保持装置ヘッド9もしくは適切に寸法設定された保持区分9が設けられている。従って図2に示すように保持区分9は種々異なる横断面を備えているか、もしくは種々異なって寸法設定されている。中央に配置された取付け開口7のために保持装置ヘッド9は、中央から離間された保持装置ヘッド9よりも小さく寸法設定されている。
【0030】
更に図5に示すように本発明は、保持装置6の横方向Qにおける遊び補償を行うようになっている。遊び補償の際、フラップ4は、保持装置ギャップ13の内側において圧潰されずに隔壁5と保持区分9もしくは保持装置ヘッド9との間においてエラストマ材料の膨張性に基づき拡幅できる。このために保持装置6の保持装置ギャップ13はフラップ4の厚さDよりも大きく寸法設定されている。長手方向Lにおける遊び補償は、開口7の高さもしくは直径が、当付け区分8の横断面もしくは厚さよりも大きく寸法設定されていることにより達成される。
【0031】
フラップ4の本発明による構成によって、長手方向L、水平方向Z及び横方向Qにおいて適切な遊び補償が達成され、その結果、エラストマ材料の膨張性にもかかわらず、隔離ケース2の内側におけるフラップ4のシール機能は保証されている。オイルパン1の内側における隔離ケース2の本発明による配置によって、フラップ4の確実なシールが隔壁5にもたらされる。隔壁5と保持装置6との一体の構成は、隔離ケース2の廉価な製造を可能にする。
【符号の説明】
【0032】
1 オイルパン、 2 隔離ケース、 3 貫通開口、 4 フラップ、 5 隔壁、 6 保持装置、 7 取付け開口、 8 当付け区分、 9 保持区分、保持装置ヘッド、 10 中央の領域、オイル吸込み室、 11 オイル溜め室、 12 結合区分、 13 保持装置ギャップ、 L 長手方向、 Q 横方向、 Z 水平方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のためのオイルパン(1)であって、該オイルパン(1)内においてオイル吸込み室(10)が、複数の貫通開口(3)と少なくとも1つのフラップ(4)とを備えた隔壁(5)の配置により形成されており、該隔壁(5)に少なくとも1つの保持装置(6)が設けられており、該保持装置(6)にフラップ(4)が支承されており、且つ/又は取り付けられている、内燃機関のためのオイルパンにおいて、
保持装置(6)にフラップ(4)を設けるために、該フラップ(4)に複数の取付け開口(7)が設けられており、該取付け開口(7)が種々異なる横断面を有していることを特徴とする、内燃機関のためのオイルパン。
【請求項2】
複数の取付け開口(7)が並列に配置されており、少なくとも1つの中央に配置された取付け開口(7)が、少なくとも1つの残りの取付け開口(7)の横断面より小さな横断面を有している、請求項1記載のオイルパン。
【請求項3】
中央に配置された取付け開口(7)から離間された少なくとも1つの取付け開口(7)が、長孔として形成されている、請求項1又は2記載のオイルパン。
【請求項4】
中央に配置された取付け開口(7)から離間されている複数の取付け開口(7)が、種々異なる長さを有する長孔として形成されている、請求項1から3までのいずれか一項記載のオイルパン。
【請求項5】
保持装置(6)が当付け区分(8)を有しており、該当付け区分(8)にフラップ(4)が支承されており、取付け開口(7)の横断面が当付け区分(8)の横断面よりも大きく寸法設定されている、請求項1から4までのいずれか一項記載のオイルパン。
【請求項6】
保持装置(6)が当付け区分(8)の端部に保持区分(9)を有しており、隔壁(5)に対する保持区分(9)の離間量が、フラップ(4)の厚さ(D)よりも大きく寸法設定されている、請求項1から5までのいずれか一項記載のオイルパン。
【請求項7】
隔壁(5)に沿って複数の保持装置(6)が設けられており、該保持装置(6)の保持区分(9)が種々異なる横断面を有している、請求項1から6までのいずれか一項記載のオイルパン。
【請求項8】
保持装置(6)が隔壁(5)と一体に形成されている、請求項1から7までのいずれか一項記載のオイルパン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−270577(P2009−270577A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111288(P2009−111288)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】