説明

内燃機関のための排気ターボチャージャ

本発明は、排気ガス案内区間(3)、空気案内区間(28)、およびベアリング区間(29)を有するハウジング(2A)と、複数のブレード(10)を備えるタービンホイール(5)、コンプレッサホイール(30)、およびタービンホイール(5)をコンプレッサホイール(30)と回動不能に結合するシャフト(31)を含むロータリーアセンブリ(2B)とを有する、内燃機関(100)用の排気ターボチャージャに関するものであり、ここで、タービンホイール(5)は排気ガス案内区間(3)に、コンプレッサホイール(30)は空気案内区間(28)に回転可能に収容されており、シャフト(31)はベアリング区間(29)に回転可能に支承されており、タービンホイール(5)には、内燃機関(100)からの排気ガスを装填可能であり、コンプレッサホイール(30)はシャフト(31)を介してタービンホイール(5)により、空気吸入および圧縮のために駆動可能であり、タービンホイール(5)に装填される排気ガスを調整するために、スリーブ型変位エレメント(14)が排気ガス案内区間(3)に位置決めされている。本発明によれば、前記スリーブ型変位エレメント(14)が、タービンホイール(5)のブレード外側輪郭(12)を最大でも部分的に受容するように構成されている。ホイール外側輪郭領域およびホイール排出口領域を簡単に変更できることにより、従来の調整装置とともに、タービンホイール前方で完全可変タービンが可能になる。これにより圧入能力が小さくても、大きい場合と同じように、タービンの動作点における最適に応答度を調整することができる。本発明は、商用車製造にも乗用車製造にも使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による内燃機関のための排気ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
排気ターボチャージャを用いて過給される内燃機関の、とりわけNOx排出およびすす排出の排出限界値を連続的に低減することにより、排気ターボチャージャの構造的特性値および熱力学的特性値が調整される。効率的な排気ガス還元のために、内燃機関の中央負荷領域でも使用するべきである高過給圧は、排気ターボチャージャのタービンの幾何形状の小型化を要求する。なぜなら、小型化により得られるタービンの保持性能の向上、ないしは圧入性能の縮小のため、高いタービン出力が低回転でもすでに達成可能だからである。
【0003】
加えて、タービンに後置接続された粒子フィルタはタービンの下流の圧力を上昇させるが、この圧力上昇は高タービン出力を相応に達成するために、タービンの上流での圧力を上昇させることによって補償可能である。この圧力上昇も同じように、タービンの幾何形状の小型化によって達成可能である。
【0004】
特許文献1に、内燃機関のための排気ターボチャージャが開示されており、ここでは排気ターボチャージャが、排気ガス案内区間と、空気案内区間と、ベアリング区間とを備えるハウジングを有する。多数のブレードを備えるタービンホイールと、コンプレッサホイールと、タービンホイールをコンプレッサホイールと共回転するように結合するシャフトとを含むロータアセンブリが、ハウジングの中に配置されており、タービンホイールは排気ガス案内区間に、コンプレッサホイールは空気案内区間に回転可能に格納され、シャフトはベアリング区間に回転可能に支承されている。タービンホイールには内燃機関からの排気ガスを装填することができ、コンプレッサホイールはタービンホイールのシャフトを介して、空気を吸入し、圧縮するために駆動することができる。タービンホイールに装填される排気ガスを調整するために、スリーブ型変位エレメントが排気ガス案内区間に位置決めされている。
【0005】
このスリーブ型変位エレメントはタービンホイールの上流に、排気ガス案内区間においてスパイラルダクトに割り当てられた流れの通流横断面が可変であるように位置決めされている。この変位エレメントによって、通流媒体、この場合は排気ガスのタービンホイールにおけるエンタルピー勾配を調整することができる。ここでエンタルピー勾配は、タービンホイール前方のエンタルピーとタービンホイール後方のエンタルピーとの差として表される。したがってスリーブ型変位エレメントによって、タービンホイール前方でのエンタルピーを調整することができる。
【0006】
排気ターボチャージャのタービンの特性値は、タービンのいわゆる反応度であり、以下ではタービン反応度として示す。このタービン反応度は、タービンホイールでの通流速度変化と、タービンの全体エンタルピー勾配との比率に関連している。通例、タービンを最適化するために、流れまたは渦流、そして後続のノズルの通流横断面がタービンホイール排出口の通流横断面に適合される。この適合は、通流媒体のエクセルギーの最初の半分がタービンホイールの前方で速度エネルギーに変換され、エクセルギーの第2の半分が、それぞれ2つのタービンブレードにより画定されるタービンホイールブレードダクトで速度エネルギーに変換されるように行われる。ここでエネルギーの成分はエンタルピーである。
【0007】
排気ターボチャージャの加速特性または過渡特性への要求が高いので、過去におけるタービンの開発は、例えばスリーブ型変位エレメントまたは回転可能な案内ブレードのような可変エレメントを、タービンホイールの上流に使用して、タービンホールの前方で速度に変換される通流媒体のエクセルギーの成分が、タービンホイールブレードダクトで速度エネルギーに変換されるエクセルギーの成分よりも大きな値を有するようにする傾向がある。このようにして現在の、とりわけ自動車製造業で使用されるタービンのタービン応答度は、通例、0.5より下の値にある。もちろん最高のタービン効率は、0.5のタービン応答度の領域で達成すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4776168号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、タービン効率が改善され、同時にタービン応答度の可変性も、タービンホイールブレードダクトで速度エネルギーに変換されるエクセルギーを調整することによって達成される排気ターボチャージャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は本発明により、請求項1の特徴を備える排気ターボチャージャによって解決される。適切で、重要な改善形態による有利な実施形態は、それぞれ従属請求項に記載されている。
【0011】
過渡特性が改善され、同時にタービン応答度が、タービンホイールブレードダクトで速度エネルギーに変換されるエクセルギーの調整によって変化される排気ターボチャージャが、本発明によれば、スリーブ型変位エレメントが、タービンホイールのブレード外側輪郭を、最大でも部分的に受容するように形成されていることによって達成される。したがって自由通流横断面が、タービンホイールブレードダクトで調整可能である。タービンホイールブレードダクト内の自由通流横断面は、幾何学的パラメータであり、これによってタービンホイールブレードダクト内および前方での熱力学量、例えば圧力、速度を調整することができる。これにより、タービンホイールブレードダクトで速度エネルギーに変換可能であるエクセルギーの成分に影響を及ぼすことができ、したがってタービン応答度をタービンホイールブレードダクトでの速度を介して変化することができる。タービン応答度が、少なくとも0.5の値を有するように調整することができる。したがって有利には小型のタービンを内燃機関の運転に使用することができ、これにより排気ターボチャージャの加速特性を向上させることができ、例えばよく知られている「ターボラグ」が低減される。これによりシステム全体、すなわち排気ターボチャージャ付き内燃機関の効率が上昇し、これにより内燃機関の燃料消費の低減を達成することができる。燃焼装置が排気ガス還元装置を有している場合、内燃機関が高負荷の場合でも、十分な新鮮空気を、タービンによって駆動される排気ターボチャージャのコンプレッサによって供給しながら、同時に効率的な排気ガス還元が可能であり、ここでも内燃機関の消費低減が達成可能である。
【0012】
1つの実施形態では、スリーブ型変位エレメントが、タービンホイールの排出口領域においてブレード外側輪郭を受容することができるように形成されており、これによりタービン応答度のさらなる向上を達成することができる。
【0013】
別の実施形態では、タービンホイール横断面の最も狭い領域で排気ガスが調整可能であるように、スリーブ型変位エレメントが排気ガス案内区間に位置決めされている。最も狭いタービンホイール横断面はタービンのスループット能力に重要である。なぜならここでタービンホイールでの音波通過が行われるからである。有利にはこれによりタービン応答度を、そしてタービン応答度によりタービン圧入特性を実質的に調整することができ、内燃機関のチャージ交互工程に影響を及ぼすことができる。最も狭いタービンホイール横断面を開放することによって、チャージ交互工程を低減することができる。
【0014】
さらなる有利な実施形態では、スリーブ型変位エレメントが自由通流横断面を有し、この自由通流横断面は第1の長さにわたって組み込まれた、ノズルに対応する円錐台の形に形成されており、第1の通流横断面は運動スリットの分だけ第1のタービンホイール排出口直径よりも大きく、第2の通流横断面は運動スリットの分だけ第2のタービンホイール排出口直径よりも大きく、第1のタービンホイール排出口直径は第2のタービンホイール排出口直径に対して互いに第1の比にあり、第1の比の二乗は1.1より大きい値を有する。第1の長さにわたって組み込まれた円錐台の形に形成された変位エレメントの通流横断面は、通流横断面変化に対して特徴的なタービンホイールの排出口直径を擬似的に変化することができ、対応するタービンホイール排出口直径は排気ターボチャージャの動作点に対応して適合可能であり、タービン効率の上昇が、タービン応答度の上昇の結果として、例えば機関回転数が低く、負荷が高くても達成可能である。
【0015】
別の実施形態では、第2のタービンホイール排出口直径がタービンホイール吸入口直径に対して互いに第2の比にあり、この第2の比の二乗は0.66より小さい値を有し、これによりタービンの比直径に対して、全体タービン勾配および排気ガス排出容積流量の関数としてポジティブに影響することができ、そこから効率の向上が達成可能である。
【0016】
別の有利な実施形態では、スリーブ型変位エレメントの通流横断面が、変位エレメントの長手軸に沿ってラバルノズル型に形成されており、これにより通流媒体をタービンホイールの排出口で調整することができ、通流媒体がタービンホイールから排出される際の流れ損失を低減することができる。
【0017】
別の実施形態では、スリーブ型変位エレメントの閉鎖位置で、比較的小さな自由通流横断面が、タービンホイールの外側であって第2のタービンホイール排出口直径のすぐ近くに位置決めされている。これにより通流媒体の軸方向の流れが、最も狭いタービンホイール横断面の領域で維持される。このようにして機械的問題を回避するために、排気ガスの質量流量が大きい場合でも、流れの有利なヘリカル分布を慣性系において許容するタービンホイールブレード形状が可能である。好ましくはタービンホイールブレード形状は半径方向に配向されており、これにより曲げモーメントを回避することができ、したがって寿命の延長を達成することができる。
【0018】
別の実施形態では、タービンホイールに流れるようにするため、排気ガス案内区間が第1のスパイラルダクトと第2のスパイラルダクトを有し、これにより排気ターボチャージャの動作特性を、とりわけ4気筒以上の内燃機関において改善することができる。変位エレメントによって、スループットが大きい場合でも、少なくとも0.5のタービン応答度を、第1のスパイラルダクトと第2のスパイラルダクトを備える排気ターボチャージャに対して達成することができる。
【0019】
別の実施形態では、有利には第1のスパイラルダクトと第2のスパイラルダクトとが非対称に構成されており、ここで第1のスパイラルダクトの第1の流れと、第2のスパイラルダクトの第2の流れとは異なる通流横断面を有する。スパイラルダクトの非対称構成によって、スパイラルダクトをその最大スループットに応じて使用することができる。例えば排気ガスの流量が少ない場合には、排気ガスを比較的小さいスパイラルダクトを通して導けば高い排気ターボチャージャ回転数を達成することができる。変位エレメントによって、タービン応答度を各流れに対して適合することができ、これにより内燃機関の消費値および放出値を改善することができる。
【0020】
別の実施形態では、第1のスパイラルダクトまたは第2のスパイラルダクトが排気ガス還元管路と接続されている。排気ガス還元を改善するために、通例、2つの流れの小さい方が使用される。ここでは構成に起因して小さな通流横断面が達成され、その流れの損失は通流速度が高いため、もっぱらスパイラルダクトの壁での摩擦により生じる。変位エレメントを用いることによって、この流れの損失をタービンハウジングの相応の構成によって低減することができ、したがって排気ガス還元の場合にも、内燃機関の消費値および放出値を改善することができる。
【0021】
別の実施形態では、排気ターボチャージャの応答特性と排気ガス還元機能を改善するために、第1のスパイラルダクトおよび/または第2のスパイラルダクトが、タービンホイールをセグメント形態で含むように構成されている。
【0022】
別の実施形態では、スリーブ型変位エレメントが好ましくは調整および制御ユニットによって調整可能であり、これにより変位エレメントの位置決めをプログラミングすることができ、自動的に調整することができる。
【0023】
別の有利な実施形態では、スリーブ型変位エレメントが、有利には機関動作パラメータに依存して調整可能である。制御は例えば、コンプレッサの下流に生じるチャージ圧、および/またはタービンホイールの上流に生じるタービン吸入圧に依存して行うことができる。
【0024】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、複数の実施形態の以下の説明に基づき、ならびに図面に基づいて得られる。図面中で、同じ要素または同じ機能の要素には同じ参照符合が付してある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の排気ターボチャージャのタービンの縦断面図である。
【図2】第1の変形実施形態における本発明の排気ターボチャージャのタービンの縦断面図である。
【図3】第2の変形実施形態の本発明の排気ターボチャージャを備える内燃機関の基本図である。
【図4】図2の本発明の排気ターボチャージャのタービンの流量特性マップを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の排気ターボチャージャ2の、図1に示されたタービン1は、好ましくはオットー機関またはディーゼル機関である内燃機関100(図3に示されるように)用のものであり、ホイールチャンバ4付きの排気ガス案内区間3を備えるハウジング2Aを有する。このホイールチャンバ4には、回転軸6を備えるタービン1のタービンホイール5が回転可能に収容されている。排気ターボチャージャ2はさらにハウジング2Aの部分として、空気案内区間28とベアリング区間29、ならびにロータアセンブリ2Bを有し、ロータアセンブリ2Bは、タービンホイール5、コンプレッサホイール30、およびタービンホイール5をコンプレッサホイール30と回動不能に結合するシャフト31を含む。コンプレッサホイール30は空気案内区間28に回転可能に収容されており、シャフト31はベアリング区間29に回転可能に支承されている。タービンホイール5には、内燃機関100からの排気ガスを装てんすることができ、これによりタービンホイール5は回転運動され、コンプレッサホイール30が、タービンホイール5に結合するシャフト31によって空気の吸入および圧縮のために駆動される。
【0027】
ホイールチャンバ4の上流では、排気ガス案内区間3に、図1では詳細に図示しない第1のスパイラルダクト8の第1の流れ7がある。ホイールチャンバ4の下流に、排気ガス案内区間3は排出ダクト9を有する。多数のタービンブレード10がタービンホイール5のハブ11上に配置されており、タービンホイール5のブレード外側輪郭は、ホイールチャンバ4の領域で排気ガス案内区間4の壁13によってもっぱら画定されている。
【0028】
タービンホイール5、またはそれぞれ2つのタービンブレード10の間に形成されたタービンホイールブレードダクト23には、矢印の方向でガス状の通流媒体、この場合は内燃機関100の排気ガスが通流することができる。スリーブ型変位エレメント14は、排出ダクト9の領域でブレード外側輪郭12を部分的に収容可能に構成されており、ここでスリーブ型変位エレメント14は、タービンホイール5の排出領域にブレード外側輪郭12を収容可能に構成されている。スリーブ型変位エレメント14は軸方向に変位可能である。
【0029】
図1には、スリーブ型変位エレメント14の中間位置が示されており、ここではリング状の横断面15が、排気ガス案内区間3に向いて位置決めされた変位エレメント14の軸方向端部と排気ガス案内区間3との間に形成されている。変位エレメント14の閉鎖位置は、このリング状の横断面15が、変位エレメント14の軸方向に運動により、タービンホイール5の方向に閉鎖された場合にセットされる。完全な開放位置は、リング状の横断面15がブレード外側輪郭12を完全に解放していることにより特徴付けられる。すなわち変位エレメント14は、タービンホイール5とは反対側の軸運動により、排出ダクト9へ位置決めされている。
【0030】
図2には、本発明の排気ターボチャージャ2の第1の変形実施形態が示されており、ここでは排気ガス案内区間3が第1のスパイラルダクト8、ならびに第2のスパイラルダクト16を有する。スパイラルダクト8,16は、この実施例ではとりわけ効率的な排気ガス還元のために、非対称に構成されている。2つのスパイラルダクト8,16のうち小さい方の第2のスパイラルダクト16は、図3に基本的に示されているように、排気ガス還元管路17A、排気ガス還元弁17B、ならびに排気ガスクーラー17Cを含む排気ガス還元装置17と接続されている。ここではスリーブ型変位エレメント14が、タービンホイール横断面18の最も狭い領域で排気ガスが調整可能であるように排気ガス案内区間3に位置決めされている。
【0031】
スリーブ型変位エレメント14はこの実施例では、好ましく形成された内側輪郭19を有し、スリーブ型変位エレメント14の自由通流横断面20は、変位エレメント14の長手軸21に沿ってラバルノズル型に形成されている。通流横断面20は、まず長手軸21に沿って変位エレメント14の第1の長さL1まで、好ましくは連続的に狭くなるよう形成されており、これにより通流横断面20は第1の長さL1にわたって組み込まれた円錐台の形に構成されている。この第1の長さL1から、通流横断面20は同様に好ましくは連続的に、第2の長さL2にわたって拡がるように形成されている。第1の長さL1と第2の長さL2の和は、変位エレメント14の全長Lに相当する。流れに有利なように、通流横断面20は第1の長さL1にわたって組み込まれ、鈍角の円錐台の形に形成されている。
【0032】
さらに第1のタービンホイール排出口直径D2maxは、最も小さいタービンホイール排出口直径に相当する第2のタービンホイール排出口直径D2minに対して互いに第1の比V1にあり、この第1の比V1の二乗は1.4の値を有する。好ましくはこの第1の比は、1.1より大きい値を有するべきである。
【0033】
さらにこの実施例では、タービンホイール5の第2のタービンホイール排出口直径D2minがタービンホイール5のタービンホイール吸入口直径D1に対して互いに第2の比V2にあり、この第2の比V2の二乗は0.6の値を有する。好ましくは本発明の排気ターボチャージャ2は、0.66よりも小さい値の第2の比V2を有するべきである。
【0034】
図2には、変位エレメント14の2つの異なる位置が図示されている。回転軸6の上方では、変位エレメント14がその閉鎖位置で図示されており、最小の自由通流横断面S2が、第2のタービンホイール排出口直径D2minを有するタービンホイール5の排出領域のすぐ近くに、すなわち最小のタービンホイール排出口直径のすぐ近くに位置決めされている。ここで最小の自由通流横断面S2は、第2のタービンホイール排出口直径D2minを有する通流横断面にほぼ相当し、ここではタービンホイール5が回転運動するので、最小の自由通流横断面S2は運動スリットの面の分だけ大きくなければならない。なぜならそうでないと、排気ターボチャージャ2の運転中に閉鎖位置で、摩擦または衝突が発生し得るからである。矢印で示した排気ガスの流れは、第2のタービンホイール排出口直径D2minから初めて、タービンブレードダクト23から排出ダクト9へ軸方向に流れることができる。
【0035】
回転軸6の下方には、変位エレメント14がその完全な開放位置で図示されている。ここでは、排気ガス案内区間3の壁13からダクト外側輪郭12が解放されると流れがすぐに排出ダクト9に流れることができるように、または第1のタービンホイール排出口直径D2maxから流れがタービンブレード23からすぐに排出ダクト9に流れることができるように、変位エレメント14がタービンホイール5から軸方向に離れるように変位して位置決めされている。
【0036】
図示の実施例では、変位エレメント14の外側輪郭24が、タービンホイール5の方向への最大変位を制限するために、リング状の段の形の安全機構25を有し、このリング状の段25は排気ガス案内区間3の壁13に対応して排出ダクト9の領域に形成されている。この段25によって、タービンホイール5の方向への変位エレメント14の最大変位が簡単に保証される。
【0037】
別の実施例では、第1のスパイラルダクト8が、図3に基本的に示すようにセグメント形態に構成されている。排気ガス後処理のために内燃機関100には、内燃機関100の排気ガス系統101で、内燃機関100の排気ガス系統101に配置されたタービン3の下流に排気ガス後処理ユニット102が配設されている。ここで個々のセグメント間の切替えは、送風切替装置26によって行われる。内燃機関100は、制御および調整のために制御および調整ユニット27を有しており、これによりとりわけ送風切替装置26が調整可能であり、変位エレメント14が軸方向に変位可能である。好ましくは変位エレメント14は、機関動作パラメータに依存して調整可能である。図示のセグメント型タービンの代わりに、従来の調整可能な案内グリルをタービンホイールの前方に備えるワンフロー型のタービンも考えられ、これによりホイール吸入口と、本発明によりホイール排出口でも、タービンの最適な応答度選択のための完全な可変性が可能となる。
【0038】
図4には例として、本発明の排気ターボチャージャ2のタービン1の流量特性マップが示されており、スループットパラメータがタービン圧縮比の上にプロットされている。曲線LD1は、流れ7が閉鎖されたとき、すなわち例えば流量が小さいときに、内燃機関100の動作中の予想されるスループットパラメータである。第2のスパイラルダクト16が閉鎖されると、または排気ガスが通流しないと、タービンホイール5には、もっぱら第1のスパイラルダクト8からの排気ガスだけが装てんされる。ここで変位エレメント14が閉鎖位置にあると、スループットパラメータとしてタービン圧縮比の上に曲線LD2による値が生じる。リング状の横断面15を開放するための変位エレメント14の軸方向変位により、曲線LD3によるスループットパラメータが生じる。2つのスパイラルダクト8,16に同時に装てんされ、変位エレメント14が閉鎖位置に位置決めされることによって、曲線LD4によるスループットパラメータが生じる。ここで変位エレメント14がリング状の横断面15を開放するために軸方向に変位すると、曲線LD5によるスループットパラメータが生じ、スループットパラメータは格段に上昇する。
【0039】
コストの掛かる複雑な変位エレメント14の制御装置を開発するほかに、コスト上の理由から非常に簡単な調整装置を変位エレメントの位置決めのために、例えば従来の安価な圧力セルを利用して用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス案内区間(3)、空気案内区間(28)、およびベアリング区間(29)を有するハウジング(2A)と、複数のブレード(10)を備えるタービンホイール(5)、コンプレッサホイール(30)、およびタービンホイール(5)をコンプレッサホイール(30)と回動不能に結合するシャフト(31)を含むロータリーアセンブリ(2B)とを有する、内燃機関(100)用の排気ターボチャージャであって、タービンホイール(5)は排気ガス案内区間(3)に、コンプレッサホイール(30)は空気案内区間(28)に回転可能に収容されており、シャフト(31)はベアリング区間(29)に回転可能に支承されており、タービンホイール(5)には、内燃機関(100)からの排気ガスが装填可能であり、コンプレッサホイール(30)はシャフト(31)を介してタービンホイール(5)により、空気吸入および圧縮のために駆動可能であり、タービンホイール(5)に装填される排気ガスを調整するために、スリーブ型変位エレメント(14)が排気ガス案内区間(3)に位置決めされている排気ターボチャージャにおいて、
前記スリーブ型変位エレメント(14)が、タービンホイール(5)のブレード外側輪郭(12)を最大でも部分的に受容するように構成されている、ことを特徴とする排気ターボチャージャ。
【請求項2】
前記スリーブ型変位エレメント(14)がブレード外側輪郭(12)を、タービンホイール(5)の排出領域で受容するように構成されている、ことを特徴とする、請求項1に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項3】
スリーブ型変位エレメント(14)が、タービンホイール横断面(18)の最も狭い領域で排気ガスが調整可能であるように排気ガス案内区間(3)に位置決めされている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項4】
スリーブ型変位エレメント(14)が自由通流横断面(20)を有し、該自由通流横断面は第1の長さ(L1)にわたって組み込まれた円錐台の形に形成されており、
第1の通流横断面(S1)は運動スリット横断面だけ、第1のタービンホイール排出口直径(D2max)を備える通流横断面よりも大きく、第2の通流横断面(S2)は運動スリット横断面だけ、第2のタービンホイール排出口直径(D2min)を備える通流横断面よりも大きく、第1のタービンホイール排出口直径(D2max)は第2のタービンホイール排出口直径(D2min)に対して互いに第1の比(V1)にあり、第1の比(V1)の二乗は1.1より大きい値を有する、ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項5】
第2のタービンホイール排出口直径(D2min)はタービンホイール吸入直径(D1)に対して互いに第2の比(V2)にあり、第2の比(V2)の二乗は0.66より小さい値を有する、ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項6】
スリーブ型変位エレメント(14)の自由通流横断面(20)は、変位エレメント(14)の長手軸(21)に沿ってラバルノズル型に構成されている、ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項7】
閉鎖位置では、スリーブ型変位エレメント(14)の最小の自由通流横断面(S2)が、第2のタービンホイール排出口直径(D2min)のすぐ近くに位置決めされている、ことを特徴とする請求項6に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項8】
排気ガス案内区間(3)は、タービンホイール(5)に気体が流れるようにするため、第1のスパイラルダクト(8)と第2のスパイラルダクト(16)を有する、ことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項9】
第1のスパイラルダクト(8)と第2のスパイラルダクト(16)は、非対称に構成されている、ことを特徴とする請求項8に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項10】
第1のスパイラルダクト(8)または第2のスパイラルダクト(16)は、排気ガス還元管路(17A)と接続されている、ことを特徴とする請求項8または9に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項11】
第1のスパイラルダクト(8)および/または第2のスパイラルダクト(16)は、タービンホイール(5)をセグメント形態で含むように構成されている、ことを特徴とする請求項8から10までのいずれか1項に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項12】
スリーブ型変位エレメント(14)の外側輪郭(24)は、スリーブ型変位エレメント(14)の最大変位を制限するために安全機構(25)を有する、ことを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項13】
安全機構(25)は、リング状の段の形に形成されており、該段は排気ガス案内区間(3)の壁と対応可能に構成されている、ことを特徴とする請求項12に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項14】
スリーブ型変位エレメント(14)は、制御および調整ユニット(27)により調整可能である、ことを特徴とする請求項1から13までのいずれか1項に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項15】
スリーブ型変位エレメント(14)は、機関動作パラメータに依存して調整可能である、ことを特徴とする請求項14に記載の排気ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−504202(P2012−504202A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528209(P2011−528209)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006550
【国際公開番号】WO2010/040437
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】