説明

内燃機関のカバー構造

【課題】リブとタイミングチェーンの干渉を防止しつつ、潤滑油を確実に流すことができる内燃機関のカバー構造を提供する。
【解決手段】エンジンEのカバー構造は、カム用タイミングチェーン24を覆うチェーンケース30を備える。チェーンケース30は、側縁部31,32に設けられエンジン本体10に締結されるボルト挿通孔31a,31bと、壁部33からエンジン本体10側に突出しカム用タイミングチェーン24の内側に設けられ、シリンダ軸線方向に沿って延在する第1リブ35と、壁部33からエンジン本体10側に突出し側縁部32及び第1リブ35の間に設けられ、第1リブ35に向かうほどシリンダ軸線方向下方に位置するように傾斜する第2リブ36と、を有する。第1リブ35は、第2リブ36よりも高く形成され、下端部がクランクスプロケット21のシリンダ軸線方向上方に位置する。第2リブ36は、上端部が長さ方向途中部よりも高く形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のカバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンのクランクシャフトの回転をカムシャフトに伝達するタイミングチェーンを覆うチェーンケースには、当該チェーンケースを補強するためのリブが設けられる。
【0003】
ところで、エンジン駆動時のチェーンケース内には、タイミングチェーンを潤滑するための多量の潤滑油が飛散しており、この潤滑油が滞留すると、潤滑性能の低下等の不具合を生じることから、潤滑油を確実に流すことが望ましい。そこで、従来、補強用のリブを利用して潤滑油を流すことが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、チェーンケースの両側縁内面から中心に向けて斜め下方に延出した後、クランクシャフトに向けて下方に延出する一対のメインリブを形成し、かつメインリブの間に配設されたリブの高さをメインリブの高さよりも小さくすることによって、メインリブの間にオイル案内通路を設ける発明が開示されている。
【0005】
そして、チェーンケースの両側縁内面等に沿って流れてきた潤滑油が、メインリブを伝ってオイル案内通路に集められた後、タイミングチェーンとクランクスプロケットとの噛み合い部に導かれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3111845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記特許文献1に記載の発明では、チェーンケースの幅方向及び長さ方向に比較的大きな寸法を有する一対のメインリブを形成しているため、メインリブとタイミングチェーンの干渉が生じる虞があった。そこで、メインリブの高さを小さくする必要があるが、そうするとメインリブが潤滑油を案内する機能を十分に発揮できなくなってしまい、潤滑油を確実に流すことができない虞があった。
【0008】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、リブとタイミングチェーンの干渉を防止しつつ、潤滑油を確実に流すことができる内燃機関のカバー構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明は、内燃機関本体に設けられた駆動輪及び従動輪と、前記駆動輪及び前記従動輪に掛け渡された無端状のタイミングチェーンと、前記内燃機関本体との間でタイミングトレーン室を形成して前記タイミングチェーンを覆うカバー部材と、を備えた内燃機関のカバー構造であって、前記カバー部材は、互いに離間する一対の側縁部に設けられ、前記内燃機関本体に締結される締結部と、前記一対の側縁部を繋ぐ壁部の内面から前記内燃機関本体に向けて突出し、前記タイミングチェーンの内側に設けられ、シリンダ軸線方向に沿って延在する第1リブと、前記壁部の内面から前記内燃機関本体に向けて突出し、前記一対の側縁部の両方又はいずれか一方と前記第1リブとの間に設けられ、前記第1リブに向かうほどシリンダ軸線方向下方に位置するように傾斜する第2リブと、を有し、前記第1リブは、前記第2リブよりも高く形成され、かつシリンダ軸線方向下方の端部が前記駆動輪のシリンダ軸線方向上方に位置し、前記第2リブは、前記側縁部側の端部が長さ方向途中部よりも高く形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、シリンダ軸線方向に沿って延在する第1リブと、一対の側縁部の両方又はいずれか一方との間に第2リブが設けられるため、カバー部材の側縁部に沿って流れてきた潤滑油は、第2リブに確実に導かれる。また、第2リブは、第1リブに向かうほどシリンダ軸線方向下方に位置するように傾斜し、かつ第1リブは、第2リブよりも高く形成されるため、第2リブに導かれた潤滑油は、その自重により第2リブを伝って第1リブに確実に導かれる。更に、第1リブは、シリンダ軸線方向下方の端部が駆動輪のシリンダ軸線方向上方に位置するため、第1リブに導かれた潤滑油は、その自重により第1リブを伝って駆動輪に確実に導かれる。
したがって、第1リブ及び第2リブによって、カバー部材の側縁部に沿って流れてきた潤滑油を、駆動輪に確実に流すことができる。
【0011】
また、本発明によれば、第1リブは、タイミングチェーンの内側に設けられるため、第1リブとタイミングチェーンの干渉を防止できる。そして、両者の干渉を防止できるため、第1リブの高さを自由に設定できる。
また、第2リブは、側縁部側の端部が長さ方向途中部よりも高く形成されるため、第2リブの長さ方向途中部を通過するようにタイミングチェーンを配設することによって、第2リブとタイミングチェーンの干渉を防止できる。
【0012】
また、本発明は、前記タイミングチェーンに摺接して所定の張力を付与する摺接部材と、前記摺接部材に当接する当接部を有し、前記摺接部材を前記タイミングチェーンに向けて付勢する付勢部材と、を更に備え、前記一対の側縁部のいずれか一方の近傍には、油圧制御弁のドレン部に連通するドレン油路が設けられ、前記当接部は、前記ドレン油路のシリンダ軸線方向下方に設けられ、前記第2リブは、前記ドレン油路のシリンダ軸線方向上方に設けられるように構成するのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、摺接部材に当接する付勢部材の当接部は、制御弁のドレン部に連通するドレン油路のシリンダ軸線方向下方に設けられ、かつ第2リブは、ドレン油路のシリンダ軸線方向上方に設けられるため、ドレン油路からカバー部材内へ流出した潤滑油は、第2リブに導かれることなく、当接部に導かれやすくなる。これにより、摺接部材と当接部との間が潤滑され、ひいては駆動輪と当接部とに潤滑油を分配して潤滑することができる。
【0014】
また、前記カバー部材は、前記一方の側縁部から前記当接部側に向けて突出し、前記ドレン油路のシリンダ軸線方向下方に設けられた第3リブを更に有するように構成するのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、側縁部から当接部側に向けて突出し、ドレン油路のシリンダ軸線方向下方に設けられた第3リブを有することによって、ドレン油路からカバー部材内へ流出した潤滑油は、第3リブを伝って当接部により一層導かれやすくなる。これにより、摺接部材と当接部との間がより一層潤滑されやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リブとタイミングチェーンの干渉を防止しつつ、潤滑油を確実に流すことができる内燃機関のカバー構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】内燃機関のカバー構造を備えるエンジンの概略構成図であり、(a)は、側面図であり、(b)は、正面図である。
【図2】エンジンからチェーンケースを外した状態を示す側面図である。
【図3】(a)は、チェーンケースの背面図であり、(b)は、(a)のI−I線断面図である。
【図4】チェーンケースをシリンダ軸線方向斜め下方から見た状態を示す斜視図である。
【図5】チェーンケースの一部省略正面図である。
【図6】図3(a)の第1オイル通路用ボス部の周辺を示す部分拡大斜視図である。
【図7】図3(a)の可変バルブ用ボス部及び第2オイル通路用ボス部の周辺を示す部分拡大斜視図である。
【図8】図5のストレーナー取付部の周辺を示す部分拡大斜視図である。
【図9】図5のII−II線断面図である。
【図10】クランクスプロケットの周辺を拡大してエンジン本体側から見た状態を示す一部省略斜視図である。
【図11】チェーンケース側から見た潤滑油の流れを模式的に示した側面図である。
【図12】エンジン本体側から見た潤滑油の流れを模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、本発明を自動車のエンジンに適用した場合を例にとって説明する。また、方向を説明する場合は、図1に示す車両の前後上下左右に基づいて説明する。
【0019】
なお、本実施形態では、上下方向は、鉛直方向に一致し、シリンダ軸線方向は、上下方向(鉛直方向)に対し前側に所定角度傾斜しているものとする。また、軸方向は、クランクシャフト及びカムシャフトの回転中心に平行な方向であるものとする。更に、直交方向は、軸方向から見たとき、シリンダ軸線方向に直交する方向であるものとする。そして、シリンダ軸線方向に直交する平面であるシリンダ直交平面に対して、上側となる方を上方、下側となる方を下方という。
【0020】
図1は、内燃機関のカバー構造を備えるエンジンEの概略構成図であり、(a)は、側面図であり、(b)は、正面図である。図2は、エンジンEからチェーンケース30を外した状態を示す側面図である。
図1(a)及び(b)に示すように、エンジンEは、例えば、車体に横置きされたDOHC形式の直列型エンジンである。エンジンEは、エンジン本体10と、タイミングトレーン機構20と、チェーンケース30と、を主に備える。
【0021】
<エンジン本体>
エンジン本体10は、図2に示すように、シリンダブロック11と、ロアブロック12と、シリンダヘッド13と、ヘッドカバー14と、オイルパン15と、を有する。
【0022】
<シリンダブロック>
シリンダブロック11は、図示は省略するが、主にシリンダボアとクランクケースとを構成する部材である。シリンダブロック11の内部には、ピストン、コンロッド、クランクシャフト16等が収容される。
【0023】
<ロアブロック>
ロアブロック12は、シリンダブロック11と共にクランクケースを構成する部材であり、シリンダブロック11の下方に配置される。クランクシャフト16の端部は、シリンダブロック11の側壁11aとロアブロック12の側壁12aとの間に回転可能に挟持される。
【0024】
<シリンダヘッド>
シリンダヘッド13は、シリンダブロック11と共に燃焼室を構成する部材であり、シリンダブロック11の上方に配置される。シリンダヘッド13の内部には、図示は省略するが、燃焼室に連通する吸気ポート及び排気ポートが形成されると共に、吸気ポート及び排気ポートを開閉するための吸気バルブ及び排気バルブやロッカアーム等が配置される。また、シリンダヘッド13の上方には、2本のカムシャフト17が配置される。カムシャフト17は、吸気側カムシャフト18及び排気側カムシャフト19を構成する。吸気側カムシャフト18及び排気側カムシャフト19は、互いに軸方向が平行となるように並設される。
【0025】
なお、シリンダブロック11の側壁11a、ロアブロック12の側壁12a、及びシリンダヘッド13の側壁13aの幅方向両端部には、その延在方向に沿って、複数のボルト挿通孔10a,10aが間隔を空けて形成される。また、シリンダヘッド13の側壁13aには、チェーンケース30内へオイルを供給するオイル落し部10bが開口する。
【0026】
<ヘッドカバー>
ヘッドカバー14は、シリンダヘッド13の上部を閉塞して動弁室を構成する蓋状の部材であり、シリンダヘッド13の上方に配置される。吸気側カムシャフト18及び排気側カムシャフト19の端部は、ヘッドカバー14の側壁14aに回転可能に固定される。
【0027】
<オイルパン>
オイルパン15は、エンジンE内の各部を潤滑して落下してくるオイルを受け止めるための部材であり、ロアブロック12の下方に配置される。オイルパン15の内部には、エンジンE内の各部にオイルを圧送するためのオイルポンプ15aが配置される。オイルポンプ15aのポンプ駆動軸15bの一端側は、オイルパン15の側壁15cから突出している。
【0028】
なお、クランクシャフト16は、駆動軸として機能するものであり、吸気側カムシャフト18、排気側カムシャフト19、及びポンプ駆動軸15bは、それぞれ従動軸として機能するものである。
【0029】
<タイミングトレーン機構>
タイミングトレーン機構20は、クランクシャフト16の回転力をポンプ駆動軸15bとカムシャフト17とに伝達する機構である。
タイミングトレーン機構20は、クランクスプロケット21と、カムスプロケット22A,22Bと、オイルポンプ用スプロケット23と、カム用タイミングチェーン24と、オイルポンプ用タイミングチェーン25と、可動シュー26Aと、第1固定シュー26Bと、第2固定シュー26Cと、第1油圧式テンショナ装置27と、シュー28と、第2油圧式テンショナ装置29と、を主に備える。
【0030】
<クランクスプロケット>
駆動輪であるクランクスプロケット21は、エンジン本体10の側面から突出したクランクシャフト16の一端側に固定され、クランクシャフト16と一体的に回転可能に構成された歯車部材である。クランクスプロケット21は、径の大きい第1ギア部21aと、径の小さい第2ギア部21bと、を備える。第1ギア部21aは、第2ギア部21bよりもエンジン本体10側に配設される。なお、本実施形態では、クランクスプロケット21(クランクシャフト16)は、図2における時計回り方向に回転する。
【0031】
<カムスプロケット>
従動輪であるカムスプロケット22A,22Bは、エンジン本体10の側面から突出した2本のカムシャフト17の一端側に夫々固定され、カムシャフト17と一体的に回転可能に構成された歯車部材である。カムスプロケット22Aは、吸気側カムシャフト18に連結され、カムスプロケット22Bは、排気側カムシャフト19に連結される。カムスプロケット22A,22Bの回転に伴って、吸気側カムシャフト18及び排気側カムシャフト19が回転することにより、吸気バルブ及び排気バルブが所定のタイミングで開閉する。
【0032】
<カム用タイミングチェーン>
タイミングチェーンたるカム用タイミングチェーン24は、クランクシャフト16の回転力をカムシャフト17に伝達する無端状のチェーンであり、クランクスプロケット21の第2ギア部21bとカムスプロケット22A,22Bとの間に掛け渡される。
【0033】
<可動シュー>
摺接部材たる可動シュー26Aは、カム用タイミングチェーン24の緩み側(図2の左側)に摺接し、カム用タイミングチェーン24をガイドする弓状の長尺部材である。可動シュー26Aは、上端側がシリンダヘッド13の側壁13aに揺動自在に固定される。可動シュー26Aの下端側は、第1油圧式テンショナ装置27によってカム用タイミングチェーン24に向かって付勢される。
【0034】
<第1固定シュー>
第1固定シュー26Bは、カム用タイミングチェーン24の張り側の部位(図1の右側の部位)に摺接し、カム用タイミングチェーン24をガイドする直線状の長尺部材である。第1固定シュー26Bは、シリンダブロック11の側壁11a及びシリンダヘッド13の側壁13aに跨って複数のボルトB,Bで固定される。
【0035】
<第2固定シュー>
第2固定シュー26Cは、カムスプロケット22A,22Bの上方に配置され、カム用タイミングチェーン24に摺接し、カム用タイミングチェーン24をガイドする直線状の部材である。第2固定シュー26Cは、ヘッドカバー14に固定される。
【0036】
<第1油圧式テンショナ装置>
第1油圧式テンショナ装置27は、可動シュー26Aをカム用タイミングチェーン24に向かって付勢することにより、カム用タイミングチェーン24の張力を略一定に調節する装置である。第1油圧式テンショナ装置27は、可動シュー26Aに当接する当接部27aと、ロアブロック12の側壁12aに固定されたハウジング27bと、ハウジング27bから突出して当接部27aを押圧するプランジャ27cと、を有する。
【0037】
当接部27aは、可動シュー26Aの下端側に配置された略三角形状の部材である。当接部27aは、内側下端部がシリンダブロック11の側壁11aに揺動自在に固定される。当接部27aの外側下端部は、プランジャ27cによって可動シュー26Aに向かって付勢される。
【0038】
ハウジング27bには、エンジン本体10のオイル供給油路(図示省略)から高圧のオイルが供給される。この場合、ハウジング27bから押し出されたプランジャ27cによって当接部27aが可動シュー26Aに向かって押圧されると(図2の時計回り方向に揺動すると)、当接部27aを介して可動シュー26Aがカム用タイミングチェーン24に向かって押圧され、カム用タイミングチェーン24の張力が略一定に調節される。
【0039】
<オイルポンプ用スプロケット>
オイルポンプ用スプロケット23は、オイルパン15の側壁15cから突出したポンプ駆動軸15bに固定された歯車部材である。この場合、オイルポンプ用スプロケット23の回転に伴ってポンプ駆動軸15bが回転することにより、オイルポンプ15aが駆動し、高圧のオイルがオイル供給通路(図示省略)を通ってエンジン本体10内の各所に供給される。
【0040】
<オイルポンプ用タイミングチェーン>
オイルポンプ用タイミングチェーン25は、クランクシャフト16の回転力をポンプ駆動軸15bに伝達する無端状のチェーンであり、クランクスプロケット21の第1ギア部21aとオイルポンプ用スプロケット23との間に掛け渡される。
【0041】
<シュー>
シュー28は、オイルポンプ用タイミングチェーン25の緩み側(図2の右側)に当接する部材である。シュー28の下端部は、第2油圧式テンショナ装置29に揺動自在に固定される。
【0042】
<第2油圧式テンショナ装置>
第2油圧式テンショナ装置29は、シュー28をオイルポンプ用タイミングチェーン25に向かって付勢することにより、オイルポンプ用タイミングチェーン25の張力を略一定に調節する装置である。第2油圧式テンショナ装置29は、ロアブロック12の側壁12aに固定されたハウジング29aと、ハウジング29aから突出してシュー28を押圧するプランジャ29bと、ハウジング29aに形成される中空部(図示省略)に収容されるリリーフバルブ29cと、を備える。
【0043】
ハウジング29aは、第2油圧式テンショナ装置29のボディを構成する部材であり、その内部に油路や高油圧室等を備える。ハウジング29aの高油圧室には、エンジン本体10のオイル供給通路(図示省略)から高圧のオイルが供給される。この場合、ハウジング29aから押し出されたプランジャ29bによって、シュー28がオイルポンプ用タイミングチェーン25に向かって押圧され、オイルポンプ用タイミングチェーン25の張力が略一定に調節される。
【0044】
リリーフバルブ29cは、ハウジング29aの高油圧室の油圧が所定値以上になったときにリリーフ孔29c1からオイルを排出するとともに、排出したオイルを利用してタイミングトレーン機構20を潤滑する機能を有する。リリーフバルブ29cのリリーフ孔29c1は、ハウジング29aの上側後方に貫通して形成される。リリーフ孔29c1は、ハウジング29aの任意の位置に設けることができる。本実施形態では、リリーフ孔29c1の軸線J1の延長線上に、クランクスプロケット21、カム用タイミングチェーン24、及びオイルポンプ用タイミングチェーン25の噛み合い部が配置されるように、リリーフ孔29c1の軸線J1の向きが調節される。
【0045】
<チェーンケース>
図1に戻り、カバー部材たるチェーンケース30は、エンジン本体10の一側面に固定されており、カム用タイミングチェーン24を外側から覆う部材である。すなわち、チェーンケース30は、エンジン本体10との間でタイミングトレーン室S(図1(b)参照)を形成し、カム用タイミングチェーン24を覆っている。
【0046】
図3(a)は、チェーンケース30の背面図であり、(b)は、(a)のI−I線断面図である。図4は、チェーンケース30をシリンダ軸線方向斜め下方から見た状態を示す斜視図である。なお、図3(a)では、説明の便宜上、クランクシャフト16、クランクスプロケット21の第2ギア部21b、及びカム用タイミングチェーン24を描いている。
チェーンケース30は、図3(a)及び図4に示すように、断面視コ字状を呈する部材であって、幅方向(前後方向)に互いに離間する一対の側縁部31,32と、側縁部31,32を繋ぐ壁部33と、を主に備える。
【0047】
<側縁部>
側縁部31,32は、壁部33の幅方向両端部からエンジン本体10に向けて突出して形成され、エンジン本体10に当接固定される部分である。側縁部31,32には、その延在方向に沿って、複数のボルト挿通孔31a,32aが間隔を空けて貫通して形成される。締結部たるボルト挿通孔31a,32aは、エンジン本体10のボルト挿通孔10a(図2参照)に対応する位置に設けられる。
【0048】
<壁部>
図5は、チェーンケース30の一部省略正面図である。
壁部33は、図3(a)及び図5に示すように、油圧制御弁取付部33aと、第1オイル通路用ボス部33bと、可変バルブ用ボス部33cと、ストレーナー取付部33dと、第2オイル通路用ボス部33eと、3つの締結用ボス部33f1−33f3と、複数のリブ34,34と、を主に有する。
【0049】
<油圧制御弁取付部>
油圧制御弁取付部33aは、図5に示すように、壁部33の外面33gの上部側であって、側縁部32の近傍に設けられ、油圧制御弁(図示省略)が取り付けられる部分である。油圧制御弁取付部33aは、壁部33の外面33gから所定長だけ突出して形成される。油圧制御弁取付部33aには、3つの円形状の孔部33a1−33a3が貫通して形成される。孔部33a1は、油圧制御弁のオイル供給路に連通し、孔部33a2は、油圧制御弁のオイル排出路に連通し、孔部33a3は、油圧制御弁のドレン部に連通する。
【0050】
<第1オイル通路用ボス部>
図6は、図3(a)の第1オイル通路用ボス部33bの周辺を示す部分拡大斜視図である。
図6に示すように、第1オイル通路用ボス部33bは、壁部33の内面(エンジン本体10に対向する面)33hからエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成される。第1オイル通路用ボス部33bの突出端面は、エンジン本体10の一側面に当接する。
第1オイル通路用ボス部33bは、オイル供給用ボス部33b1と、オイル排出用ボス部33b2と、から構成される。
【0051】
オイル供給用ボス部33b1は、同心円状でかつ径の異なる円筒部を内外二重に配置して構成された部分である。内側の円筒部には、油圧制御弁取付部33aの孔部33a1(図5参照)及びエンジン本体10のオイル通路(図示省略)に連通する孔部33b3が形成される。
【0052】
オイル排出用ボス部33b2は、同心円状でかつ径の異なる円筒部を内外二重に配置して構成された部分と、外側の円筒部の外周面に連続して略四角筒状に構成された部分と、を有する。内側の円筒部には、油圧制御弁取付部33aの孔部33a2(図5参照)及びエンジン本体10のオイル通路(図示省略)に連通する孔部33b4が形成される。略四角筒状の部分には、油圧制御弁取付部33aの孔部33a3に連通する孔部33b5が形成される。
【0053】
この場合、孔部33a1及び孔部33b3は、エンジン本体10から油圧制御弁へオイルを供給するオイル供給油路として機能し、孔部33a2及び孔部33b4は、油圧制御弁からエンジン本体10へオイルを排出するオイル排出油路として機能する。また、孔部33a3及び孔部33b5は、油圧制御弁のドレン部からチェーンケース30内へオイルを供給するドレン油路Dとして機能する。なお、ドレン油路Dは、図3(a)に示すように、側縁部32の内面32bの一部のシリンダ軸線方向上方に配置される。これにより、ドレン油路Dから供給されたオイルの一部は、側縁部32の内面32bを伝って確実に流れることとなる。また、ドレン油路Dは、当接部27a及び可動シュー26Aの当接箇所のシリンダ軸線方向上方に配置される(図2及び図3(a)参照)。これにより、ドレン油路Dから供給されたオイルを、当接部27a及び可動シュー26Aの当接箇所に導くことができる。
【0054】
<可変バルブ用ボス部>
図7は、図3(a)の可変バルブ用ボス部33c及び第2オイル通路用ボス部33eの周辺を示す部分拡大斜視図である。
図7に示すように、可変バルブ用ボス部33cは、可変バルブタイミング機構を制御する制御弁(図示省略)が挿入される略卵状の孔部33c1を有する部分である。可変バルブ用ボス部33cは、壁部33の上部側であって、幅方向中央部に設けられる。可変バルブ用ボス部33cは、壁部33の内面33hからエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成され、その突出端面がエンジン本体10の一側面に当接する。なお、制御弁は、可変バルブ用ボス部33cの孔部33c1を介して、シリンダヘッド13(図2参照)に取り付けられる。
【0055】
<第2オイル通路用ボス部>
第2オイル通路用ボス部33eは、図7に示すように、可変バルブ用ボス部33cの外周に連続して形成された部分である。第2オイル通路用ボス部33eは、壁部33の内面33hからエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成され、その突出端面がエンジン本体10の一側面に当接する。第2オイル通路用ボス部33eには、所定の容積を有する略四角筒状の凹部33e1及び円筒状の孔部33e2が形成される。凹部33e1及び孔部33e2は、エンジン本体10のオイル通路(図示省略)に連通する。なお、孔部33e2は、ストレーナー取付部33dの孔部33d2に連通する(図7及び図8参照)。
【0056】
<ストレーナー取付部>
図8は、図5のストレーナー取付部33dの周辺を示す部分拡大斜視図である。
図8に示すように、ストレーナー取付部33dは、可変バルブ用ボス部33cの下方に設けられ、ストレーナー(図示省略)が取り付けられる部分である。ストレーナー取付部33dは、壁部33の外面33gから所定長だけ突出して形成される。ストレーナー取付部33dには、所定の容積を有する略四角筒状の凹部33d1及び円筒状の孔部33d2が形成される。凹部33d1及び孔部33d2は、ストレーナーに連通する。
【0057】
図9は、図5のII−II線断面図である。
図5及び図9に示すように、第2オイル通路用ボス部33eの凹部33e1は、ストレーナー取付部33dの凹部33d1に対し幅方向に位置をずらして設けられる。凹部33e1及び凹部33d1の間には、図9に示すように、連通路33iが形成される。連通路33iの一端は、凹部33e1の側面に開口する一方、他端は、凹部33d1の底面に開口する。
【0058】
この場合、凹部33e1、連通路33i、及び凹部33d1は、エンジン本体10からストレーナーへオイルを供給するオイル供給油路として機能し、孔部33d2及び孔部33e2は、ストレーナーからエンジン本体10へオイルを戻すオイル戻り油路として機能する。また、凹部33e1は、チャンバーとしても機能する。
【0059】
<締結用ボス部>
締結用ボス部33f1−33f3は、図7に示すように、エンジン本体10の一側面にボルト(図示省略)で固定される円筒状の部分である。締結用ボス部33f1−33f3は、壁部33の内面33hからエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成され、その突出端面がエンジン本体10の一側面に当接する。締結用ボス部33f1−33f3は、可変バルブ用ボス部33c及び第2オイル通路用ボス部33eの周囲に互いに間隔を空けて設けられる。
【0060】
<リブ>
リブ34は、図3(a)及び図4に示すように、壁部33の内面33hからエンジン本体10へ突出しており、シリンダ軸線方向、直交方向、上下方向、及び前後方向等に沿って複数形成される。
リブ34は、第1リブ35と、第2リブ36と、第3リブ37と、第4リブ38と、第5リブ39と、を主に有する。
【0061】
第1リブ35は、上端部(一端部)が締結用ボス部33f3に連続し、下端部(他端部)がクランクスプロケット21の近傍(直上)に位置してシリンダ軸線方向に沿って延在するリブである。第1リブ35は、図3(a)に示すように、カム用タイミングチェーン24の内側(つまりカム用タイミングチェーン24に囲まれた領域)に設けられる。第1リブ35は、図4に示すように、高リブ部35a,35aと、高リブ部35aよりも高さが低い中リブ部35bと、中リブ部35bよりも高さが低い低リブ部35cと、を有する。本実施形態の高リブ部35a及び中リブ部35bの高さは、その他のリブ34よりも高く形成される。
【0062】
高リブ部35aは、第1リブ35の長さ方向中間部及び下端部に形成され、エンジン本体10の一側面に当接する部分である。中リブ部35bは、締結用ボス部33f3及び上側の高リブ部35aの間に形成される部分である。低リブ部35cは、高リブ部35a,35aの間に形成され、所定長だけ切り欠いて形成される部分である。低リブ部35cは、シリンダ軸線方向において、可動シュー26Aの揺動側(当接部27a側)に近い部位に設けられる。この低リブ部35cを形成することにより、カム用タイミングチェーン24に伸びが発生し、第1油圧式テンショナ装置27及び可動シュー26Aによって押圧されたときに、カム用タイミングチェーン24と第1リブ35が干渉するのを回避できる(図2及び図3(a)参照)。
【0063】
なお、第1リブ35をカム用タイミングチェーン24の張り側(第1固定シュー26B側)に配置し、第1リブ35とカム用タイミングチェーン24の緩み側(可動シュー26A)との間隔を十分に確保できる場合には、低リブ部35cを省略し、低リブ部35cに相当する部分の高さを高くしてもよい。これにより、クランクスプロケット21、カム用タイミングチェーン24、及びオイルポンプ用タイミングチェーン25の噛み合い部に向かってオイルをより一層確実に流すことができる。
【0064】
第2リブ36は、図3(a)に示すように、側縁部32の内面32bと第1リブ35の中リブ部35bとの間に設けられる直線状のリブである。第2リブ36は、第1リブ35に向かうほどシリンダ軸線方向下方に位置するように傾斜している。第2リブ36は、図3(b)に示すように、第1リブ35の中リブ部35bよりも低く形成される。第2リブ36は、図4に示すように、高リブ部36a,36aと、高リブ部36aよりも高さが低い低リブ部36bと、を有する。
【0065】
高リブ部36aは、第2リブ36の上下端部に形成される部分であり、第1オイル通路用ボス部33bのドレン油路Dに対しシリンダ軸線方向上方に配置される。この高リブ部36aを形成することにより、側縁部32に沿って流れてきた潤滑油を第2リブ36に円滑に導き、かつ第2リブ36から第1リブ35へ確実に導くことができる。低リブ部36bは、高リブ部35a,35aの間(つまり第2リブ36の長さ方向途中部)に形成され、所定長だけ切り欠いて形成される部分である。この低リブ部36bを形成することにより、カム用タイミングチェーン24と第2リブ36が干渉するのを回避できる(図3(a)参照)。
【0066】
第3リブ37は、図3(a)に示すように、第1オイル通路用ボス部33bのドレン油路Dに対しシリンダ軸線方向下方に配置され、側縁部32の内面32bから第1油圧式テンショナ装置27の当接部27a側(図2参照)に向けて突出する直線状のリブである。第3リブ37は、当接部27aに向かうほどシリンダ軸線方向下方に位置するように傾斜している。
【0067】
第4リブ38は、図3(a)に示すように、クランクスプロケット21寄りに配置され、側縁部31の内面31bから第1リブ35の低リブ部35cに向けて突出する直線状のリブである。第4リブ38は、図3(a)及び図4に示すように、第1リブ35に向かうほどシリンダ軸線方向下方に位置するように傾斜し、かつその高さが漸減するように形成される。この第4リブ38を形成することにより、側縁部31に沿って流れてきた潤滑油を第1リブ35に導くことができる。
【0068】
第5リブ39は、図3(a)及び図4に示すように、チェーンケース30の幅方向中央下部に設けられたクランクシャフト挿入孔30Aの周囲に形成されるリブである。第5リブ39は、クランクシャフト挿入孔30Aの略外周を囲うように形成された略環状の環状リブ39aと、環状リブ39aに略直交(交差)し、クランクシャフト挿入孔30Aに対し放射状に形成された複数の放射状リブ39b,39bと、から主に構成される。
【0069】
図10は、クランクスプロケット21の周辺を拡大してエンジン本体10側から見た状態を示す一部省略斜視図である。
図10に示すように、環状リブ39aのうち、リリーフ孔29c1の軸線J1の延長線上の部分には、略矩形状の切欠部39a1が切り欠いて形成される。これにより、クランクシャフト挿入孔30Aの周囲を補強しつつ、クランクスプロケット21、カム用タイミングチェーン24、及びオイルポンプ用タイミングチェーン25の噛み合い部に、リリーフ孔29c1から噴射される潤滑油を確実に噴きかけることができる。
なお、クランクシャフト挿入孔30Aの前方には、第1油圧式テンショナ装置27(図1(a)参照)を視認可能な開口部30Bが貫通して形成される。
【0070】
本実施形態に係る内燃機関のカバー構造を備えたエンジンEは、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、図11及び図12を参照して、その動作及び作用効果について説明する。図11は、チェーンケース30側から見た潤滑油の流れを模式的に示した側面図であり、図12は、エンジン本体10側から見た潤滑油の流れを模式的に示した側面図である。
なお、図11では、説明の便宜上、第1リブ35−第4リブ38等を、エンジン本体10に投影して描いている。図12では、説明の便宜上、クランクシャフト16、クランクスプロケット21の第2ギア部21b、及びカム用タイミングチェーン24を描いている。
【0071】
図11に示すように、エンジンEの起動によりクランクシャフト16が回転すると、クランクシャフト16に取り付けられたクランクスプロケット21が回転し、その回転がカム用タイミングチェーン24によってカムスプロケット22A,22Bに伝達され、カムスプロケット22A,22Bの回転に伴って2本のカムシャフト17が回転する。これにより、図示しない吸気バルブ及び排気バルブが所定のタイミングで開閉する。
【0072】
一方、クランクスプロケット21の回転は、オイルポンプ用タイミングチェーン25によって、オイルポンプ用スプロケット23に伝達され、オイルポンプ用スプロケット23の回転に伴ってポンプ駆動軸15bが回転する。これにより、オイルポンプ15aが駆動して、オイルパン15のオイルが汲み上げられ、エンジンEの各部にオイルが供給される。
【0073】
そして、オイルの一部は、カムスプロケット22A及びカム用タイミングチェーン24の噛み合い部、オイル落し部10b、及びドレン油路D等を介して、チェーンケース30内に供給される。
【0074】
図12に示すように、チェーンケース30内に供給されたオイルは、側縁部31,32の内面31b,32b及び壁部33の内面33hに沿って下方に流れる。
このうち、側縁部32及び壁部33に沿って流れてきたオイルが第2リブ36に達すると、第2リブ36を伝って第1リブ35に向かって流れる。
【0075】
このとき、第2リブ36は、側縁部32側の端部に高リブ部36aを有するため、側縁部32に沿って流れてきたオイルを第2リブ36に確実に導くことができる。
また、第2リブ36は、第1リブ35に向かうほどシリンダ軸線方向下方に位置するように傾斜し、かつ第1リブ35は、第2リブ36よりも高く形成されるため、第2リブ36を伝って流れてきたオイルを第1リブ35に確実に導くことができる。
【0076】
続いて、図11に示すように、第2リブ36を伝って流れてきたオイルが第1リブ35に達すると、第1リブ35を伝ってクランクスプロケット21、カム用タイミングチェーン24、及びオイルポンプ用タイミングチェーン25の噛み合い部に向かって流れる。これにより、当該噛み合い部を好適に潤滑することができる。
【0077】
また、図12に示すように、ドレン油路Dから供給されたオイルは、側縁部32の内面32b及び壁部33の内面33hに沿って下方に流れる。
【0078】
このとき、ドレン油路Dは、側縁部32の内面32bの一部のシリンダ軸線方向上方に配置されるため、ドレン油路Dから供給されたオイルの一部は、側縁部32の内面32bに沿って確実に流れる。
また、ドレン油路Dは、図11に示すように、当接部27a及び可動シュー26Aの当接箇所のシリンダ軸線方向上方に配置されるため、ドレン油路Dから供給されたオイルの一部は、側縁部32の内面32b及び壁部33の内面33hに沿って、当接部27a及び可動シュー26Aの当接箇所に向かって流れる。
【0079】
そして、図11及び図12に示すように、側縁部32の内面32b及び壁部33の内面33hに沿って流れてきたオイルが第3リブ37に達すると、第3リブ37を伝って第1油圧式テンショナ装置27の当接部27a及び可動シュー26Aの当接箇所に向かって流れる。
【0080】
このとき、第3リブ37は、側縁部32の内面32bから第1油圧式テンショナ装置27の当接部27a側に向けて突出し、かつ当接部27aに向かうほどシリンダ軸線方向下方に位置するように傾斜しているため、側縁部32を伝って流れてきたオイルを当接箇所に確実に導くことができる。これにより、当接箇所を好適に潤滑することができる。
【0081】
更に、図12に示すように、側縁部31の内面31b及び壁部33の内面33hに沿って流れてきたオイルが第4リブ38に達すると、一部のオイルは、第4リブ38を伝って第1リブ35に向かって流れる。
【0082】
このとき、第4リブ38は、側縁部31の内面31bから第1リブ35に向けて突出し、かつ第1リブ35に向かうほどシリンダ軸線方向下方に位置するように傾斜しているため、側縁部31の内面31bを伝って流れてきたオイルを第1リブ35に好適に導くことができる。
【0083】
続いて、図11に示すように、第4リブ38を伝って流れてきたオイルが第1リブ35に達すると、第1リブ35を伝ってクランクスプロケット21、カム用タイミングチェーン24、及びオイルポンプ用タイミングチェーン25の噛み合い部に向かって流れる。これにより、当該噛み合い部をより一層好適に潤滑することができる。
【0084】
以上説明した本実施形態によれば、第1リブ35及び第2リブ36によって、側縁部32の内面32b及び壁部33の内面33hに沿って流れてきたオイルを、クランクスプロケット21、カム用タイミングチェーン24、及びオイルポンプ用タイミングチェーン25の噛み合い部に確実に導くことができる。
また、第4リブ38によって、側縁部31の内面31b及び壁部33の内面33hに沿って流れてきたオイルを、クランクスプロケット21、カム用タイミングチェーン24、及びオイルポンプ用タイミングチェーン25の噛み合い部に導くことができる。
更に、ドレン油路Dの下方には、当接部27a及び可動シュー26Aの当接箇所が配置される一方、第2リブ36は、ドレン油路Dの上方に配置されるため、ドレン油路Dから供給されて側縁部32の内面32b及び壁部33の内面33hに沿って流れてきたオイルを、第1油圧式テンショナ装置27の当接部27a及び可動シュー26Aの当接箇所に導くことができる。特に、本実施形態では、第3リブ37がドレン油路Dの下方に配置されるため、当接部27a及び可動シュー26Aの当接箇所により一層導くことができる。
したがって、チェーンケース30内のオイルが滞留することなく、前記噛み合い部と当接箇所とにオイルを分配して好適に潤滑することができる。
【0085】
本実施形態によれば、リブ34のうち最も高い第1リブ35は、カム用タイミングチェーン24の内側に設けられるため、第1リブ35とカム用タイミングチェーン24の干渉を防止できる。そして、両者の干渉を防止できるため、第1リブ35の高さを自由に設定できる。
また、リブ34のうち比較的高い第2リブ36は、長さ方向途中に低リブ部36bを有するため、低リブ部36bを通過するようにカム用タイミングチェーン24を配設することによって、第2リブ36とカム用タイミングチェーン24の干渉を防止できる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0087】
本実施形態では、自動車用のエンジンEに本発明を適用したが、船舶や汎用機等の自動車以外のエンジンに適用してもよい。
【0088】
本実施形態では、直列形式のエンジンEに本発明を適用したが、他の形式のエンジン(例えばV型エンジン等)に本発明を適用してもよい。
【0089】
本実施形態では、シリンダ軸線方向は、上下方向(鉛直方向)に対し前側に所定角度傾斜している構成としたが、シリンダ軸線方向は、上下方向に対し後側に所定角度傾斜する構成としてもよいし、上下方向(鉛直方向)に一致する構成としてもよい。
【0090】
本実施形態では、第1リブ35は、高さの異なる3つの高リブ部35a、中リブ部35b、及び低リブ部35cを有する構成としたが、第1リブ35の高さは適宜設定してよく、例えば、高さの異なる2つのリブ部を有する構成としてもよい。
【0091】
本実施形態では、第2リブ36は、高さの異なる2つの高リブ部36a及び低リブ部36bを有する構成としたが、第2リブ36の高さは適宜設定してよく、例えば、高さの異なる3つのリブ部を有する構成としてもよい。
【0092】
本実施形態では、側縁部32と第1リブ35との間に第2リブ36を設ける構成としたが、側縁部31と第1リブ35との間に第2リブ36を設ける構成としてもよいし、側縁部31,32と第1リブ35との間の両方に第2リブ36を設ける構成としてもよい。
【0093】
本実施形態では、第1油圧式テンショナ装置27が当接部27aを有し、当接部27aを可動シュー26Aに当接する構成としたが、当接部27aを省略し、プランジャ27cを可動シュー26Aに当接する構成としてもよい。
この場合、ドレン油路Dから供給されたオイルが、プランジャ27c及び可動シュー26Aの当接箇所に導かれるように、可動シュー26A、プランジャ27c、ドレン油路D、及び第4リブ38の位置が適宜調節される。
【符号の説明】
【0094】
E エンジン(内燃機関)
10 エンジン本体(内燃機関本体)
21 クランクスプロケット(駆動輪)
22A,22B カムスプロケット(従動輪)
24 カム用タイミングチェーン(タイミングチェーン)
26A 可動シュー(摺接部材)
27 第1油圧式テンショナ装置(付勢部材)
27a 当接部
30 チェーンケース(カバー部材)
31,32 側縁部
31a,32a ボルト挿通孔(締結部)
33 壁部
33h 内面
34 リブ
35 第1リブ
36 第2リブ
37 第3リブ
38 第4リブ
D ドレン油路
S タイミングトレーン室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関本体に設けられた駆動輪及び従動輪と、前記駆動輪及び前記従動輪に掛け渡された無端状のタイミングチェーンと、前記内燃機関本体との間でタイミングトレーン室を形成して前記タイミングチェーンを覆うカバー部材と、を備えた内燃機関のカバー構造であって、
前記カバー部材は、
互いに離間する一対の側縁部に設けられ、前記内燃機関本体に締結される締結部と、
前記一対の側縁部を繋ぐ壁部の内面から前記内燃機関本体に向けて突出し、前記タイミングチェーンの内側に設けられ、シリンダ軸線方向に沿って延在する第1リブと、
前記壁部の内面から前記内燃機関本体に向けて突出し、前記一対の側縁部の両方又はいずれか一方と前記第1リブとの間に設けられ、前記第1リブに向かうほどシリンダ軸線方向下方に位置するように傾斜する第2リブと、を有し、
前記第1リブは、前記第2リブよりも高く形成され、かつシリンダ軸線方向下方の端部が前記駆動輪のシリンダ軸線方向上方に位置し、
前記第2リブは、前記側縁部側の端部が長さ方向途中部よりも高く形成されることを特徴とする内燃機関のカバー構造。
【請求項2】
前記タイミングチェーンに摺接して所定の張力を付与する摺接部材と、
前記摺接部材に当接する当接部を有し、前記摺接部材を前記タイミングチェーンに向けて付勢する付勢部材と、を更に備え、
前記一対の側縁部のいずれか一方の近傍には、油圧制御弁のドレン部に連通するドレン油路が設けられ、
前記当接部は、前記ドレン油路のシリンダ軸線方向下方に設けられ、
前記第2リブは、前記ドレン油路のシリンダ軸線方向上方に設けられることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のカバー構造。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記一方の側縁部から前記当接部側に向けて突出し、前記ドレン油路のシリンダ軸線方向下方に設けられた第3リブを更に有することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関のカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−113166(P2013−113166A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258261(P2011−258261)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】