説明

内燃機関の制御装置及び内燃機関の制御システム

【課題】内燃機関の吸気通路に設けられるキャブレータのメーンノズルとフロートチャンバとの間の燃料の流通経路を連通及び遮断するノーマリーオープン型の燃料カットソレノイドバルブについて、その通電の異常の有無を予め診断することが困難なこと。
【解決手段】ハイサイドスイッチ52がオン状態となることでバッテリ50から電磁ソレノイドSLへと電流が流れ、燃料カットソレノイドバルブが閉弁状態となる。異常診断に際しては、バッテリ50よりも電圧の低い基準電源72を利用して通電操作がなされる。この際、コネクタ54及び電磁ソレノイドSL間の電気経路の断線時や地絡時には、コンパレータ60,62からなるウィンドウコンパレータの出力が論理「L」となる一方、正常時には、論理「H」となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気通路に設けられる気化装置の燃料噴射口と燃料貯蔵手段との間の燃料の流通経路を連通及び遮断するノーマリーオープン型の燃料カット手段を電気的に操作する内燃機関の制御装置及びこれを搭載する内燃機関の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃料供給装置として、気化装置(キャブレータ)を備えるものにあっては、内燃機関の吸気通路にその流路面積を絞るためのベンチュリを設けることで、吸気の流速を速め、負圧を発生させている。これにより、ベンチュリ近傍に設けられた噴射口を介して燃料が霧状になって吸い出され、微粒化しつつ空気と混合し点火プラグの点火に伴って燃焼に供される。ただし、内燃機関の回転速度が過度に上昇する際には、燃焼制御を停止させるべく点火プラグの点火が停止されるとともに、燃料貯蔵手段(フロートチャンバ)と噴射口との間の燃料の流通経路を連通及び遮断させる燃料カットソレノイドバルブに対する通電操作によって燃料の気化を停止させる。
【0003】
なお、従来の電磁弁としては、他にも例えば下記特許文献1に記載されるものがある。
【特許文献1】特開平10−267983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料カットソレノイドバルブと駆動回路との間の電気経路が断線したり、この電気経路が接地とショート(地絡)したりする場合には、燃料カットソレノイドバルブを閉弁状態とすることができないため、フロートチャンバと噴射口との間を遮断することができない。しかし、燃料カットソレノイドバルブは、内燃機関の回転速度が過度に高くなる場合等において初めて使用されるものであるため、上記断線や地絡が生じている場合には、燃料カットソレノイドバルブによって燃料をカットしたい状況下になって初めて断線や地絡の異常が生じていることが発覚する事態となる可能性がある。そしてこの場合には、点火プラグによる点火については停止できるものの、燃料カットソレノイドバルブによって燃料をカットすることができない。このため、気化装置から内燃機関の吸気通路へと燃料が多量に供給され続けるおそれがある。
【0005】
一方、近年、気化装置を備える内燃機関にあっても、排気を浄化すべく排気通路に排気浄化装置が設けられるようになってきている。この場合、上記内燃機関の回転速度が過度に高回転となることで点火プラグの点火を停止する状況下、燃料カットソレノイドバルブによって燃料をカットすることができないと、多量の未燃燃料が排気浄化装置に流れ込み、ひいては排気浄化装置の信頼性の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、内燃機関の吸気通路に設けられる気化装置の燃料噴射口と燃料貯蔵手段との間の燃料の流通経路を連通及び遮断するノーマリーオープン型の燃料カット手段について、その異常の有無を好適に診断することのできる内燃機関の制御装置及び制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、内燃機関の吸気通路に設けられる気化装置の燃料噴射口と燃料貯蔵手段との間の燃料の流通経路を連通及び遮断するノーマリーオープン型の燃料カット手段を電気的に操作する内燃機関の制御装置において、前記流通経路を導通状態に維持しつつ前記燃料カット手段に対する通電操作を行う操作手段と、前記通電操作によって前記燃料カット手段に実際に通電がなされるか否かを判断する判断手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、流通経路を導通状態に維持しつつ通電操作を行うことで燃料カット手段に実際に通電がなされているか否かを判断する。このため、燃料カット手段によって流通経路を遮断する必要がない場合であっても通電がなされているか否かを判断することができ、ひいては燃料カット手段の異常の有無を好適に診断することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記燃料カット手段は、電磁ソレノイドに対する通電によって前記流通経路を遮断するものであり、前記操作手段は、前記電磁ソレノイドに対する通電量を制限することで前記流通経路を導通状態に維持しつつ通電操作を行うことを特徴とする。
【0011】
電磁ソレノイドが生成する電磁力は、通電電流量に依存する。詳しくは、通電量が多いほど、電磁力が大きくなる。上記発明では、この点に着目することで、通電量の制限によって流通経路を導通状態に維持することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記操作手段は、前記流通経路を遮断状態とする場合に使用する電源よりも電圧の低い低電圧電源を利用して通電操作を行うことを特徴とする。
【0013】
低電圧電源を用いる場合、これよりも高い電圧の電源を用いる場合と比較して、電磁ソレノイドに流れる電流量が小さくなる。上記発明では、この点に着目し、通電量を適切に制限することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記判断手段は、前記燃料カット手段の両端に並列接続された抵抗体の電圧及びその相当値のいずれかが第1の電圧及び該第1の電圧よりも高い第2の電圧の間にない場合に前記実際に通電がなされていないと判断することを特徴とする。
【0015】
上記抵抗体に印加される電圧は、同抵抗体から電磁ソレノイドまでの給電経路の断線、地絡の有無に応じて変化する。詳しくは、上記給電経路が正常である場合の電圧と比較して、断線時には高電圧となり、地絡時には低電圧となる。このため、第2の電圧を断線時の高電圧よりも低圧に設定するとともに第1の電圧を地絡時の低電圧よりも高圧に設定することで、断線、地絡の有無を判断することができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記操作手段は、前記燃料カット手段に対する通電操作時間を制限することで通電操作を行うことを特徴とする。
【0017】
電磁ソレノイドを流れる電流は、通電開始からの時間発展に応じて漸増する。このため、電磁ソレノイドの電流の最大値は、通電継続時間に依存すると考えられる。上記発明では、この点に着目し、通電操作時間を制限することで、通電量を適切に制限することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記判断手段は、前記燃料カット手段に電流を出力する端子の電位が、前記流通経路を遮断する際の電圧に対して所定以上低いか否かに応じて前記実際に通電がなされていないか否かを判断することを特徴とする。
【0019】
燃料カット手段に電流を出力する端子と電磁ソレノイドとの間の通電経路が地絡している場合には、上記端子の電位は常時低い値をとる。これに対し、通電経路が正常である場合、通電操作によって電磁ソレノイドに電流が流れるために、上記端子の電圧は、断線時よりも高くなると考えられる。上記発明では、この点に着目することで、異常の有無を適切に診断することができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記内燃機関の排気通路には、排気浄化装置が設けられていることを特徴とする。
【0021】
上記発明では、燃料カット手段による燃料カット制御が所望される状況下、燃料をカットすることができない場合には、気化装置から排気浄化装置へと多量の未燃燃料が流れ込み、ひいては、排気浄化装置の信頼性の低下を招く事態が生じ得る。このため、上記状況となる以前に異常の有無を診断することが特に望まれる。したがって、上記発明によれば、上記操作手段及び判断手段の利用価値が特に高い。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置と、
前記気化装置とを備えることを特徴とする内燃機関の制御システムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる内燃機関の制御装置及び内燃機関の制御システムを自動2輪車に適用した第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に、本実施形態のシステム構成を示す。図示される内燃機関10は、火花点火式内燃機関である。内燃機関10の吸気通路12は、吸気バルブ14の開弁に伴って燃焼室16と連通される。燃焼室16には、点火プラグ18が突出しており、点火プラグ18によって、燃焼室16内の空気と燃料(ガソリン等)の混合気が着火し、燃焼エネルギが生じる。この燃焼エネルギは、ピストン20を介して内燃機関10の出力軸(クランク軸22)から出力される。一方、燃焼室16は、排気バルブ24の開弁に伴って排気通路26に連通され、これにより、燃焼室16において燃焼に供された混合気が排気として排気通路26に排出される。この排気は、排気通路26に設けられた排気浄化装置(触媒28)によって浄化され、外部に放出される。
【0025】
上記吸気通路12には、気化装置(キャブレータ30)が設けられている。キャブレータ30は、図示しない燃料タンクから供給される燃料を一時的に貯蔵するフロートチャンバ32を備えている。フロートチャンバ32内には、燃料に浮かぶフロート34が設けられている。そして、フロートチャンバ32内の燃料残量に応じてフロート34が燃料タンク及びフロートチャンバ32間の燃料の流動経路を機械的に連通及び遮断する。これにより、フロートチャンバ32内に貯蔵される燃料量が略一定とされる。
【0026】
フロートチャンバ32内の燃料は、メーンノズル36を介して吸気通路12内へと霧状になって吸い出される。フロートチャンバ32及びメーンノズル36間には、フロートチャンバ32内の燃料がメーンノズル36へと流出することを禁止するための燃料カットソレノイドバルブ38が設けられている。燃料カットソレノイドバルブ38は、電磁ソレノイドSLに対する通電によって、フロートチャンバ32からメーンノズル36へと流出する経路を遮断状態とするノーマリーオープン型の電磁弁である。
【0027】
燃料カットソレノイドバルブ38は、駆動回路40を介して中央処理装置(CPU42)によって操作される。CPU42では、内燃機関10のクランク軸22の回転速度が過度に大きくなる状況下、点火プラグ18の点火を停止するとともに、燃料カットソレノイドバルブ38を閉弁させる。ただし、電磁ソレノイドSLに対する通電経路に異常がある場合には、フロートチャンバ32からメーンノズル36に燃料を流出させる経路を遮断状態とすることができない。そして、この場合には、フロートチャンバ32から流出した燃料が未燃燃料として触媒28に多量に流入し、触媒28の信頼性を低下させるおそれがある。
【0028】
そこで本実施形態では、燃料カットソレノイドバルブ38の使用に先立って、燃料カットソレノイドバルブ38の電磁ソレノイドSLに電流を流すことができるか否かを診断する。以下、これについて詳述する。
【0029】
図2に、上記駆動回路40の内部構成を示す。図示されるように、駆動回路40は、バッテリ50と電磁ソレノイドSLとを導通及び遮断するハイサイドスイッチ52を備えている。詳しくは、バッテリ50は、ハイサイドスイッチ52、及びコネクタ54を介して電磁ソレノイドSLと接続されている。このハイサイドスイッチ52は、CPU42によって操作されるものであり、ハイサイドスイッチ52がオン状態とされることで、電磁ソレノイドSLに電流が流れ、ひいては燃料カットソレノイドバルブ38が閉弁状態となる。
【0030】
駆動回路40は、更に、燃料カットソレノイドバルブ38を開弁状態に維持しつつも、電磁ソレノイドSLに通電可能か否かを診断するための回路を備えている。まず、上記バッテリ50の電圧VBに基づき、これよりも低い電圧Vrefを生成する基準電源72を備えている。基準電源72は、バイポーラトランジスタ74のエミッタ及びコレクタ、抵抗体76、並びにダイオード78を介して電磁ソレノイドSLに接続されている。バイポーラトランジスタ74のベース電流は、CPU42によって操作される。これにより、CPU42によって、基準電源72を利用した電磁ソレノイドSLの通電操作がなされることとなる。
【0031】
基準電源72を利用して電磁ソレノイドSLに通電操作がなされる場合、燃料カットソレノイドバルブ38を開弁状態に維持することができる。すなわち、電磁ソレノイドSLに生じる電磁力は電磁ソレノイドSLに流れる電流量が多いほど大きくなるのであるが、電磁ソレノイドSLに流れる電流は、電磁ソレノイドSL及び抵抗体76に印加される電圧に応じて変化する。このため、電磁ソレノイドSLの通電操作に用いる電圧と燃料カットソレノイドバルブ38の動作との間には、図3に示す関係があることとなる。図3では、閾値電圧Vthとなることで、燃料カットソレノイドバルブ38が動作し、閉弁状態となることを示している。以上から、基準電源72の電圧Vrefを、バッテリ50の電圧よりも低くすることで、基準電源72を利用した電磁ソレノイドSLの通電操作を、燃料カットソレノイドバルブ38を開弁状態に維持しつつ行うことができる。
【0032】
駆動回路40は、更に、基準電源72を利用した通電操作に際して、駆動回路40及び電磁ソレノイドSL間の電気経路が断線したり、地絡したりする異常の有無を診断するための回路を備えている。ここで、電気経路の断線としては、例えばコネクタ54部分の接触不良やコネクタ54及び電磁ソレノイドSL間のワイヤの断線が考えられる。また、電気経路の地絡としては、コネクタ54及び電磁ソレノイドSL間のワイヤの皮膜が破れて車体に接触する場合等が考えられる。
【0033】
上記電磁ソレノイドSLの通電の有無は、電磁ソレノイドSLに並列接続された抵抗体56,58によって分圧された電圧Vdによって判断される。すなわち、上記電気経路が断線している場合には、基準電源72から抵抗体56,58に電流が流れるものの、電磁ソレノイドSLには電流が流れないために、抵抗体56,58の電圧が正常時と比較して高くなり、ひいては電圧Vdも高くなる。一方、上記電気経路が地絡している場合には、抵抗体56,58の両端の電圧も接地レベルとなるため、正常時と比較して低くなる。本実施形態では、この点に着目し、正常時の電圧Vdの領域のみ論理「H」となるウィンドウコンパレータによって、異常の有無を判断する。
【0034】
すなわち、上記バッテリ50を給電手段とする電源64の電圧Vccを、抵抗体66、68、70によって分圧することで、閾値電圧VthH及び閾値電圧VthL(<VthH)を生成する。そして、コンパレータ60の非反転入力端子及びコンパレータ62の反転入力端子に電圧Vdを印加するとともに、コンパレータ60の反転入力端子に閾値電圧VthLを、コンパレータ62の非反転入力端子に閾値電圧VthHをそれぞれ印加する。そして、これらコンパレータ60,62の出力端子を短絡させ、CPU42への信号の出力端子とする。これにより、CPU40には、電圧Vdが閾値電圧VthH及び閾値電圧VthL間にある間のみ論理「H」となる信号が出力されることとなる。
【0035】
図4に、本実施形態にかかる異常の有無の判断手法を示す。詳しくは、図4(a)にバイポーラトランジスタ74の状態の推移を示し、図4(b)に電圧Vdの推移を示し、図4(c)にCPU入力(駆動回路40での異常の有無の判断結果)の推移を示し、図4(d)にCPU42内での異常の有無の判定結果を示す。
【0036】
図示されるように、電気経路の正常時にあっては、バイポーラトランジスタ74をオン状態とする通電操作をすることで、電圧Vdは、閾値電圧VthL以上且つ閾値電圧VthH以下の値に上昇する。このため、上記ウィンドウコンパレータの出力は、論理「H」となり、CPU42においても正常判定がなされる。これに対し、電気経路が断線している場合(オープン状態)、バイポーラトランジスタ74をオン状態とする通電操作をすると、正常時と比較して電圧Vdが上昇し、閾値電圧VthHを上回る。これにより、上記ウィンドウコンパレータの出力は、論理「L」となり、CPU42においても異常判定がなされる。また、電気経路が地絡している場合、バイポーラトランジスタ74をオン状態とする通電操作しても、正常時と比較して電圧Vdは低下したままであり、閾値電圧VthLを下回る。これにより、上記ウィンドウコンパレータの出力は、論理「L」となり、CPU42においても異常判定がなされる。
【0037】
このように、本実施形態によれば、正常時と異常時とで、上記ウィンドウコンパレータの出力を相違させることができ、ひいてはCPU42が異常の有無を把握することができる。
【0038】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0039】
(1)燃料カットソレノイドバルブ38を開弁状態に維持しつつ電磁ソレノイドSLに対する通電操作を行い、この通電操作によって電磁ソレノイドSLに実際に通電がなされるか否かを判断した。これにより、燃料カットソレノイドバルブ38を閉弁させる必要がない場合であっても通電がなされているか否かを判断することができ、ひいては燃料カットソレノイドバルブ38の異常の有無を好適に診断することができる。
【0040】
(2)電磁ソレノイドSLに対する通電量を制限することで、燃料カットソレノイドバルブ38を開弁状態に維持しつつ通電操作を行った。これにより、電磁ソレノイドSLの通電時において燃料カットソレノイドバルブ38を開弁状態に維持することができる。
【0041】
(3)異常の有無の診断に際して、燃料カットソレノイドバルブ38を閉弁状態とする場合に使用する電源(バッテリ50)よりも電圧の低い低電圧電源(基準電源72)を利用して通電操作を行った。これにより、異常の有無の診断に際して、通電量を適切に制限することができる。
【0042】
(4)電圧Vdが閾値電圧VthH及び閾値電圧VthLの間にない場合に電磁ソレノイドSLに実際に通電がなされていないと判断した。これにより、断線、地絡の有無を判断することができる。
【0043】
(5)内燃機関10の排気通路26に排気浄化装置(触媒28)を設けた。このため、燃料カット制御が所望される状況下、燃料をカットすることができない場合には、触媒28の信頼性の低下を招く事態が生じ得る。このため、上記異常診断の利用価値が特に高い。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0045】
図5に、本実施形態にかかる駆動回路40の構成を示す。なお、図5において、先の図2に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0046】
本実施形態では、バッテリ50とバイポーラトランジスタ80のエミッタとを接続し、バイポーラトランジスタ80のコレクタを、抵抗体86,88を介して接地する。また、バイポーラトランジスタ80のエミッタ及びベース間には、抵抗体82が接続されており、バイポーラトランジスタ80のベースは、抵抗体84を介して、ハイサイドスイッチ52の出力端子側(コネクタ54側)に接続されている。そして、抵抗体86,88の接続点には、バイポーラトランジスタ92のベースが接続されている。バイポーラトランジスタ92のコレクタには、抵抗体90を介して基準電源72が接続されており、エミッタは接地されている。こうした構成によれば、抵抗体86、88による分圧に応じて、バッテリ50及びソレノイドSL間の電気経路の異常の有無を診断することができ、ひいては、バイポーラトランジスタ92のコレクタ電位をCPU42に出力することで、CPU42においても異常の有無を把握することができる。
【0047】
図6に、本実施形態にかかる異常の有無の判断手法を示す。詳しくは、図6(a)にハイサイドスイッチ52の状態の推移を示し、図6(b)にCPU入力(駆動回路40での異常の有無の判断結果)の推移を示し、図4(c)にCPU42内での異常の有無の判定結果を示す。
【0048】
図示されるように、電気経路が正常である場合には、ハイサイドスイッチ52がオフ状態である場合、電磁ソレノイドSLに微少な電流が流れるために、バイポーラトランジスタ80がオン状態となり、上記分圧が接地電位よりも高くなる。このため、バイポーラトランジスタ92の出力がオン状態となり、CPU42の入力信号は論理「L」となっている。一方、ハイサイドスイッチ52がオン状態となると、バイポーラトランジスタ80がオフ状態となるため、抵抗体86,88の分圧が接地レベルに低下する。これにより、バイポーラトランジスタ92がオフ状態となるため、CPU42の入力信号は論理「H」となる。
【0049】
これに対し、電気経路が断線している場合には、ハイサイドスイッチ52の状態にかかわらず、コネクタ54から電流が流出しないため、バイポーラトランジスタ80がオフ状態となり、抵抗体86,88の分圧は、接地レベルとなる。これにより、バイポーラトランジスタ92がオフ状態となり、CPU42の入力信号は、常時論理「H」となる。また、上記電気経路が地絡する場合には、ハイサイドスイッチ52の状態にかかわらず、バッテリ50からコネクタ54を介して外部に常時電流が流れるため、バイポーラトランジスタ80は常時オン状態となり、抵抗体86,88の分圧は、接地よりも上昇する。これにより、バイポーラトランジスタ92がオン状態となり、CPU42の入力信号は常時論理「L」となる。
【0050】
このため、ハイサイドスイッチ52がオフ状態であるにもかかわらず、CPU42の入力信号が論理「H」となる期間が所定時間継続する場合には、断線である旨判断することができる。また、ハイサイドスイッチ52をオン状態としたにもかかわらず、CPU42の入力信号が論理「L」のままである場合には、地絡であると判断することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、正常であるか地絡であるかを識別するためにハイサイドスイッチ52をオン状態とする期間を極短時間にすることで、燃料カットソレノイドバルブ38を開弁状態に維持する。すなわち、図7(a)に示すように、通電時間が長いほど電磁ソレノイドSLの電流が大きくなる。そして、図7(b)に示すように、燃料カットソレノイドバルブ38が閉弁状態となるためには、電磁ソレノイドSLに流れる電流が閾値電流Ithを超えなければならないため、通電時間を図7(a)に示した閾値時間Tth以下とすることで、燃料カットソレノイドバルブ38を閉弁状態とすることなく、通電操作を行うことができる。
【0052】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)、(2)、(5)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0053】
(6)電磁ソレノイドSLの通電操作時間を制限した。これにより、電磁ソレノイドSLに流れる電流を適切に制限することができ、ひいては燃料カットソレノイドバルブ38の開弁状態を維持しつつ通電操作を行うことができる。
【0054】
(7)コネクタ54の電位が、燃料カットソレノイドバルブ38を閉弁する際の電圧に対して所定以上低いか否かに応じて実際に通電がなされていないか否かを判断した。これにより、異常の有無を適切に診断することができる。
【0055】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0056】
・上記第1の実施形態では、電磁ソレノイドSLの両端に並列接続された抵抗体56,58の電圧の相当値である電圧Vdを用いて異常の有無を判断したが、これに限らず、抵抗体56,58の両端の電圧を用いてもよい。
【0057】
・上記第1の実施形態では、ウィンドウコンパレータを構成する一対のコンパレータ60,62によって、電圧Vdが閾値電圧VthL及び閾値電圧VthH間に入るか否かを判断し、この判断結果に基づきCPU42内で異常判定をしたがこれに限らない。例えば電圧VdをCPU42内に取り込み、その値が正常か否かをソフトウェア処理によって判断するようにしてもよい。
【0058】
・先の図2において、CPU出力2に基づき電磁ソレノイドSL及び基準電源72間を導通及び遮断するスイッチング素子としては、電流制御型のスイッチング素子(バイポーラスイッチング素子)に限らず、例えばMOSトランジスタ等の電圧制御型のスイッチング素子であってもよい。
【0059】
・上記第2の実施形態では、ハイサイドスイッチ52がオフ状態であるときに、CPU入力が所定時間論理「H」状態となることでオープン状態を判断したがこれに限らない。例えば、ハイサイドスイッチ52をオンした後オフしてもCPU入力が論理「H」状態のままである場合にオープン状態である旨判断してもよい。
【0060】
・先の図5において、抵抗体86,88の分圧値をCPU42に直接出力するようにし、CPU42において分圧値に基づき異常の有無をソフトフェア処理によって判断するようにしてもよい。
【0061】
・上記各実施形態では、駆動回路40の電源として、バッテリ50を用いたが、これに限らない。例えばバッテリレス車において、発電機の出力電圧を電源としてもよい。
【0062】
・燃料カットソレノイドバルブ38の配置としては、先の図1に例示したものに限らない。例えば、メーンノズル36を開閉するものであっても、フロートチャンバ32及びメーンノズル36の先端部(噴射口)間を遮断することはできる。
【0063】
・内燃機関10としては、自動2輪車に搭載されるものに限らず、例えば自動4輪車に搭載されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる駆動回路の構成を示す回路図。
【図3】同実施形態にかかる動作原理を示す図。
【図4】同実施形態にかかる駆動回路の動作を示すタイムチャート。
【図5】第2の実施形態にかかる駆動回路の構成を示す回路図。
【図6】同実施形態にかかる駆動回路の動作を示すタイムチャート。
【図7】同実施形態にかかる動作原理を示す図。
【符号の説明】
【0065】
30…キャブレータ、38…燃料カットソレノイドバルブ(燃料カット手段の一実施形態)、40…駆動回路(操作手段、判断手段の一実施形態)、42…CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に設けられる気化装置の燃料噴射口と燃料貯蔵手段との間の燃料の流通経路を連通及び遮断するノーマリーオープン型の燃料カット手段を電気的に操作する内燃機関の制御装置において、
前記流通経路を導通状態に維持しつつ前記燃料カット手段に対する通電操作を行う操作手段と、
前記通電操作によって前記燃料カット手段に実際に通電がなされるか否かを判断する判断手段とを備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記燃料カット手段は、電磁ソレノイドに対する通電によって前記流通経路を遮断するものであり、
前記操作手段は、前記電磁ソレノイドに対する通電量を制限することで前記流通経路を導通状態に維持しつつ通電操作を行うことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記操作手段は、前記流通経路を遮断状態とする場合に使用する電源よりも電圧の低い低電圧電源を利用して通電操作を行うことを特徴とする請求項2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記燃料カット手段の両端に並列接続された抵抗体の電圧及びその相当値のいずれかが第1の電圧及び該第1の電圧よりも高い第2の電圧の間にない場合に前記実際に通電がなされていないと判断することを特徴とする請求項3記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記操作手段は、前記燃料カット手段に対する通電操作時間を制限することで通電操作を行うことを特徴とする請求項2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記燃料カット手段に電流を出力する端子の電位が、前記流通経路を遮断する際の電圧に対して所定以上低いか否かに応じて前記実際に通電がなされていないか否かを判断することを特徴とする請求項5記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関の排気通路には、排気浄化装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置と、
前記気化装置とを備えることを特徴とする内燃機関の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−127575(P2009−127575A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305271(P2007−305271)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】